説明

光コード

【課題】本発明は、芯線対照が可能であり、かつ、外部からの紫外線の照射による樹脂層の劣化を防止することができる光コードの提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係るコード91は、光を伝搬する光ファイバ11と、光ファイバ11の側面を覆い、光ファイバ11を伝搬する特定波長の光を透過する樹脂層12と、樹脂層12の外周を覆い、樹脂層12への外部からの紫外線の照射を防止する紫外線防止層13と、紫外線防止層13の少なくとも一部に設けられ、前記特定波長の光を紫外線防止層13の外部に漏洩させる漏洩窓14と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた通信システムにおいて、芯線対照を可能とする光コードに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信網を建設・保守するにあたり、マンホール内のクロージャや構内のキャビネットの光ファイバを作業現場で特定する必要がある。すなわち、光ファイバ通信網の建設・保守を行う際には、複数の光ファイバのなかから作業を行う1本の光ファイバを選択して特定する必要がある。この作業は、芯線対照と呼ばれている。
【0003】
図12は、芯線対照の作業の一例を示した模式図である。OLT(Optical Line Terminal)211と加入者宅222に設置されているONU(Optical Network Unit)216が光ファイバ214で接続されており、その中間地点221にて光ファイバ214を特定する例について説明する。光ファイバ214の下部側では、曲げ部215を用いて光ファイバ214に曲げを加えながら、対照光を光ファイバ214の側面から放射させ、これを受光器223で検出する。なお曲げ部215は、凸部材215a、凹部材215b、215cで構成されている。又、対照光は、基地局220に配置された光源212から、光カプラ213を介して光ファイバ214に入射された光である。
【0004】
この方法をサービス芯線に適用する場合、通信品質を劣化させずに対照しなげればならないため、長波長側の光ほど漏洩しやすいという特徴を利用して、現在は通信波長1.31μm/1.55μmに対して、それらより長波長側の1.6μm帯を対照光として用いている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
中間地点221は、例えば、マンホール内のクロージャや構内のキャビネットである。光ファイバ214は通常樹脂層で覆われており、この樹脂層は紫外線が照射されると劣化する。このため、基地局220から中間地点221に至るまでの光ファイバ214や、中間地点221から加入者宅222に設置されているONU216までの光ファイバ214は、紫外線を防止することのできる外皮で樹脂層の周囲が覆われている。すなわち、曲げ部215に配置される光ファイバ214を除いては、炭素等の紫外線を防止することのできる物質を含む外皮が樹脂層の周囲を覆っている(例えば、特許文献2参照。)。しかし、クロージャやキャビネット内に設置される光ファイバ214は、曲げ部215として利用するために、遮光性のある外皮が被覆されていなかった。
【特許文献1】特開平6−221958号公報
【特許文献2】特開平11−60286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クロージャやキャビネットに収容されている光コードは、遮光性のある外皮が被覆されていないが、従来は、クロージャやキャビネットを開ける機会が少なかったので、光コードをこれらに収容することで樹脂層の劣化を防ぐことができていた。
【0007】
しかし、光ファイバを用いた通信システムのサービスの多様化に伴い、クロージャやキャビネットを開ける機会が増加している。芯線対照の作業中は、クロージャやキャビネットを開放する。このため、クロージャやキャビネットに収容されている光コードのほぼ全体に紫外線が照射されるので、光コードが劣化する速度が速まっている。
【0008】
そこで、本発明は、芯線対照が可能であり、かつ、外部からの紫外線の照射による樹脂層の劣化を防止することができる光コードの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る光コードは、樹脂層の周囲を覆う紫外線防止層の少なくとも一部に、対照光を漏洩する漏洩窓を設けて、そこから対照光を受光することを特徴とする。
【0010】
具体的には、本発明に係る光コードは、光を伝搬する光ファイバと、前記光ファイバの側面を覆い、前記光ファイバを伝搬する特定波長の光を透過する樹脂層と、前記樹脂層の外周を覆い、前記樹脂層への外部からの紫外線の照射を防止する紫外線防止層と、前記紫外線防止層の少なくとも一部に設けられ、前記特定波長の光を前記紫外線防止層の外部に漏洩させる漏洩窓と、を備えることを特徴とする。
【0011】
ここで、光コードは、クラッドの周囲を樹脂で覆った光ファイバ芯線を含む。又、クラッドの周囲を樹脂及びシースで覆った光ファイバコードを含む。又、クラッドの周囲を樹脂で覆ったものを複数有する光ファイバテープ芯線を含む。又、クラッドの周囲を樹脂及びシースで覆った光ファイバコードを複数有する光ファイバテープコードを含む。
【0012】
本発明に係る光コードでは、前記漏洩窓が、前記樹脂層の外周の周方向の一部を覆うように設けられていることが好ましい。漏洩窓の面積を小さくすれば、外部から照射される紫外線にさらされる樹脂層の面積を小さくすることができる。
【0013】
本発明に係る光コードでは、前記漏洩窓を覆い、前記漏洩窓への外部からの紫外線の照射を妨げ、かつ、移動することで前記漏洩窓を露出可能な遮光カバーをさらに備えることが好ましい。遮光カバーを設けることで、芯線対照を行わないときにおける漏洩窓からの樹脂層への紫外線の照射を防止することができる。
【0014】
本発明に係る光コードでは、前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周を取り巻く筒状体であり、前記筒状体が前記光ファイバの長手方向に移動することで、前記漏洩窓が露出することが好ましい。遮光カバーを漏洩窓の配置されている部分からずらすことができるので、漏洩窓を曲げやすくすることができる。又、遮光カバーが筒状体であるので、遮光カバーが光コードから脱落することがなく、遮光カバーの紛失を防ぐことができる。
【0015】
本発明に係る光コードでは、前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周の周方向の一部を覆う半筒状体であり、前記半筒状体が前記光ファイバの長手方向に移動することで、前記漏洩窓が露出することが好ましい。漏洩窓が樹脂層の外周の周方向の一部を覆う場合は、半筒状体の遮光カバーにて漏洩窓を覆うことができる。遮光カバーが半筒状体であることで、紫外線防止層の外周への取り付けが容易になる。又、遮光カバーが半筒状体であることで、1つの紫外線防止層の内側に複数の光ファイバが配置される場合であっても、光ファイバごとに漏洩窓を露出させることができる。
【0016】
本発明に係る光コードでは、前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周の周方向の一部を覆う半筒状体であり、前記半筒状体が前記光ファイバの長手方向を中心軸として回転移動することで、前記漏洩窓が露出することが好ましい。漏洩窓が樹脂層の外周の周方向の一部を覆う場合は、半筒状体の遮光カバーにて漏洩窓を覆うことができる。遮光カバーを光ファイバの長手方向へ移動させる必要がないので、漏洩窓と遮光カバーを一体化することができる。このため光コードの作製が容易である。又、光コードの外径を均一にすることができるので、光コードの収容などの取り扱いが容易になる。
【0017】
本発明に係る光コードでは、前記遮光カバーの一端を前記紫外線防止層に接続する接続部をさらに備え、前記接続部を支点として前記遮光カバーの他端が回転移動することで、前記漏洩窓が露出することが好ましい。接続部で紫外線防止層と一体化されているので、遮光カバーの装着や交換が容易である。また、遮光カバーの一端が紫外線防止層に接続されているので、遮光カバーが光コードから脱落することがなく、遮光カバーの紛失を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光コードは、漏洩窓以外は紫外線防止層で覆われているので、クロージャやキャビネットに収容されている光ファイバを覆う樹脂層への紫外線の照射を防止することができる。漏洩窓が特定波長の光を漏洩するので、芯線対照を行うことができる。ここで、漏洩窓を設けることで、外部からの紫外線が照射される樹脂層の面積を少なくすることができる。また、紫外線を防止する道具を用いて簡単に漏洩窓からの樹脂層への紫外線の照射を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0020】
(実施形態1)
図1は、本実施形態に係る光コードの第1形態を示す模式図である。図1に示す光コード91は、光コード91の長手方向の側面と、その一部の縦断面を示す。光コード91は、光を伝搬する光ファイバ11と、光ファイバ11の側面を覆い、光ファイバ11を伝搬する特定波長の光を透過する樹脂層12と、樹脂層12の外周を覆い、樹脂層12への外部からの紫外線の照射を防止する紫外線防止層13と、紫外線防止層13の少なくとも一部に設けられ、前記特定波長の光を紫外線防止層13の外部に漏洩させる漏洩窓14と、を備える。
【0021】
図2は、光コードの横断面図であり、(a)はA−A’断面を示し、(b)はB−B’断面を示す。樹脂層12は光ファイバ11の長手方向の側面の外周を覆い、紫外線防止層13は樹脂層12の外周を覆っている。紫外線防止層13が光コード91の外周面に配置されている。図2(b)に示すように、漏洩窓14は、紫外線防止層13に代わって配置されている。漏洩窓14と樹脂層12との間には層が設けられておらず、光ファイバ11から漏洩する光は、樹脂層12を介して直接漏洩窓14に透過される。なお、漏洩窓14と樹脂層12との間に樹脂層12とは異なる層を設ける場合は、その層は特定波長の光を透過することが好ましい。なお、本実施形態において透過とは、透過率が0%ではないことをいい、例えば10%以上100%以下であることが好ましい。以下においても同様である。
【0022】
図3は、光コードの具体例を示す横断面図である。図3に示す光コード200は、コア51の外周を、クラッド52、バッファ層53、被覆54、補強材55、シース56が順に覆っている。コア51及びクラッド52は、例えばガラスであり、コア51中で光が伝搬される。光ファイバ(図1の符号11)は、例えば、光が伝搬されるコア51であり、コア51中で光を伝搬させるクラッド52を含んでいてもよい。バッファ層53は、例えば、紫外線硬化樹脂であり、樹脂層(図1の符号12)がこれにあたる。
【0023】
被覆54は、例えば、柔軟性を有する樹脂である。柔軟性を有する樹脂としては、例えば、ナイロン樹脂、ポリエステルノンハロゲン樹脂、ポリアミド樹脂がある。補強材55は、所定の引張弾性率及び曲げ剛性を有するものであり、例えば、アルカリガラスローピング又はガラスローピング等のガラス系繊維、カーボンファイバー等の炭素系繊維、ケブラー(登録商標)等のアラミド繊維又はこれらの複合体がある。シース56は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエステルエラストマ又はポリアラミド等の熱可塑性樹脂である。
【0024】
被覆54、補強材55又はシース56或いはこれらの2以上の層が、紫外線防止層(図1の符号13)となる。例えば、シース56に紫外線を防止する成分が含まれていれば、シース56が紫外線防止層(図1の符号13)となる。又、補強材55に炭素繊維が含まれ、これによって紫外線を防止している場合には、補強材55が紫外線防止層(図1の符号13)となる。又、被覆54、補強材55及びシース56の2以上が渾然一体となった外皮としてバッファ層53を覆っており、外皮に紫外線を防止する機能を有するものが含まれている場合は、その外皮が紫外線防止層(図1の符号13)となる。
【0025】
本実施形態に係る光コードは、クラッド52の周囲をバッファ層53で覆った光ファイバ芯線を含む。又、本実施形態に係る光コードは、クラッド52の周囲をバッファ層53及びシース56で覆った光ファイバコードを含む。又、本実施形態に係る光コードは、クラッド52の周囲をバッファ層53で覆ったものを複数有する光ファイバテープ芯線を含む。又、本実施形態に係る光コードは、クラッド52の周囲をバッファ層53及びシース56で覆った光ファイバコードを複数有する光ファイバテープコードを含む。
【0026】
図1に示す光ファイバ11は、光を伝搬する。例えば、伝搬する光に対して透明なものであり、例えば、石英ガラス等の酸化物ガラス、樹脂又はセラミックスである。樹脂は、例えばフッ素樹脂又はアクリル樹脂がある。光ファイバ11は、さらに、対照光を伝搬するものである。対照光は、通信用の波長帯よりも長波長の光であり、例えば、通信用の波長帯が1.55μmの場合の1.6μm帯である。
【0027】
図1に示す樹脂層12は、光ファイバ11を伝搬する特定波長の光を透過する樹脂で形成された層である。特定波長の光は対照光である。樹脂は、例えば、紫外線硬化樹脂である。紫外線硬化樹脂としては、例えば、シリコン樹脂、エポキシ樹脂がある。又、光カチオン重合開始剤又は無機質微小粒径フィラーを主成分とする樹脂でもよい。
【0028】
図1に示す紫外線防止層13は、樹脂層12への外部からの紫外線の照射を防止するものである。例えば、紫外線を吸収又は反射する成分の含まれていることで、紫外線の透過を防止することができるものである。紫外線を吸収する成分は例えば黒色の物質があり、例えば、カーボンブラック、合成ゴム又はテフロン(登録商標)等の黒色の有機化合物がある。紫外線を反射する成分は、例えば、酸化チタン又は酸化亜鉛等の白色の物質がある。紫外線防止層13は、光コード91の外周面の層であることが好ましく、これにより樹脂層12以外の層についても紫外線による劣化を防ぐことができる。
【0029】
図1に示す漏洩窓14は、前記特定波長の光を紫外線防止層13の外部に漏洩させる。漏洩窓14は、例えば、紫外線防止層13で覆われていない、樹脂層12の露出した部分である。又、漏洩窓14は、紫外線を防止する成分が含まれておらず、特定波長の光を透過することのできる外皮であってもよい。又、漏洩窓14は特定波長の光を透過する光学部材が取り付けられていてもよい。光学部材としては、例えば、赤外線を透過する部材であり、このようなものに、Si、石英ガラス、Ge、ZnSe、ZnS又はMgF或いは赤外線を透過する樹脂がある。赤外線を透過する樹脂は、例えば、メタクリル樹脂がある。又、漏洩窓14は、特定波長を除く波長に対しては透明でないことが好ましく、例えば波長フィルタが設けられていることが好ましい。漏洩窓14は、傷がつきにくいことが好ましく、表面に硬質炭素(DLC:Diamond Like Carbon)が含まれていることが好ましい。又、芯線対照が可能な程度に柔軟であることが好ましい。
【0030】
図1に示す漏洩窓14は、紫外線防止層13の少なくとも一部に設けられている。例えば、光コード91の長手方向に1箇所設けられていてもよいし、複数箇所に設けられていてもよい。漏洩窓14は、光コード91の長手方向に一定間隔に設けられていてもよい。又、漏洩窓14の面積は小さいことが好ましい。
【0031】
本実施形態における光コードの製造方法の一例について説明する。まず、光ファイバ母材から線引して光ファイバ11を作製する。次に、液状の紫外線硬化樹脂が満たされたダイスに光ファイバ11を通し、紫外線硬化樹脂を硬化させて樹脂層12を形成する。次に、紫外線防止層13の原料となる液状の樹脂が満たされたダイスに、樹脂層12を形成したものを通し、ダイスの通過後のものを加熱して紫外線防止層13を硬化させる。次に、液状の紫外線防止層13の原料が満たされたダイスに樹脂層12を通し、樹脂層12の周囲に紫外線防止層13を形成する。漏洩窓14を設ける部分の紫外線防止層13を剥がして樹脂層12を露出させ、漏洩窓14を形成する。
【0032】
本実施形態における光コードの使用例について図4を用いて説明する。図4は、芯線対照の一例を示す模式図である。光コード91を漏洩窓14の設けられている部分で折り曲げ、漏洩窓14から漏洩した対照光101を受光素子102で受光する。このとき、漏洩窓14の設けられている透明な部分が受光素子102の位置となるように芯線対照器をセットすることで、対照光101の漏洩した漏洩光を受光素子102で受光することができる。
【0033】
図1に示す光コード91は、漏洩窓14以外は紫外線防止層13で覆われているので、漏洩窓14を除いて樹脂層12を紫外線から保護することができる。これにより、芯線対照の可能な光コード91であっても、樹脂層12の紫外線の照射による劣化を防ぐことができる。又、漏洩窓14を設けることで、外部からの紫外線が照射される樹脂層12の面積を少なくすることができる。紫外線によって劣化する部分を少なくすることができるので遮光性があるトレイに収容しやすく、芯線対照を行うとき以外は漏洩窓14のある透明部分はトレイに収容することで、光コード91の樹脂層12が紫外線に照射されることを防ぐことができる。また、漏洩窓14の面積が小さいので、遮光用のテープを用いて漏洩窓14を塞ぐなどして、樹脂層12への紫外線の照射を簡単に防止することができる。
【0034】
図5は、光コードの第2形態であり、(a)は模式図であり、(b)はC−C’断面図である。図5(a)に示す光コード92は、紫外線防止層13の外周のうちの周方向の一部に漏洩窓14が設けられている。漏洩窓14は、樹脂層12の周囲の全方向ではなく、樹脂層12の外周の周方向の一部を覆うように設けられている。漏洩窓14は、図5(b)に示すように、紫外線防止層13と漏洩窓14で形成される層が樹脂層12を取り巻いている。漏洩窓14は、図5(b)に示すように、樹脂層12の外周の半分以下を覆うように設けられていることが好ましい。漏洩窓14は、漏洩した対照光を導くレンズや光ガイド等の光学部品が設けられていてもよい。光学部品を設けることで、漏洩窓14の面積が小さいときでも、対照光を光コード92の外部まで導くことができる。
【0035】
漏洩窓14の設けられている透明な部分が受光素子(図4の符号102)の位置となるように芯線対照器をセットすることで、対照光が光コード92の外部に漏洩した漏洩光を受光素子(図4の符号102)で受光することができる。芯線対照を行わないときは、クロージャやキャビネット内に設けられている遮光性を有するトレイに漏洩窓14を収容することで、光コード92の樹脂層12を紫外線から保護することができる。
【0036】
光コードの第1形態に比べ、漏洩窓14の面積が小さいので、外部から照射される紫外線にさらされる樹脂層12の面積を小さくすることができる。又、紫外線から保護すべき部分を容易にトレイに収容することができる。なお、紫外線防止層13と漏洩窓14の厚みは均一であることが好ましく、これにより光コードの表面を滑らかにし、芯線対照を行う際の取り扱いを容易にすることができる。
【0037】
(実施形態2)
図1に示す光コード91及び図5(a)に示す光コード92では、漏洩窓14を覆い、漏洩窓14への外部からの紫外線の照射を妨げ、かつ、移動することで漏洩窓14を露出可能な遮光カバー(不図示)をさらに備えることが好ましい。遮光カバーは、紫外線を吸収又は反射して紫外線の透過を防止するものである。紫外線を吸収又は反射するものは、紫外線防止層13で説明したものがある。遮光カバーは、漏洩窓14を覆うものであり、漏洩窓14よりも広い範囲に配置されることが好ましい。すなわち漏洩窓14及び漏洩窓14の周囲の紫外線防止層13を覆うことが好ましい。このため、遮光カバーは、光コードの柔軟性を確保するため、柔軟な部材で形成されていることが好ましい。柔軟な部材としては、例えば、光コードの被覆(図3の符号54)又はシース(図3の符号56)に用いられる部材と同様の部材を用いることができる。遮光カバーを設けることで、漏洩窓14からの樹脂層12への紫外線の照射を防止することができる。遮光カバーは、開閉可能であることが好ましく、遮光カバーを開いて漏洩窓14を露出させ、遮光カバーを閉じて漏洩窓14を紫外線から保護する。ここで、露出とは、光ファイバを伝搬する特定波長の光を紫外線防止層13の外部に漏洩させることができる状態である。遮光カバーの具体例を以下に説明する。
【0038】
図6は、光コードの第3形態を示す模式図である。図6に示す光コード93は、図1に示す光コード91が、遮光カバーの第1形態である遮光カバー15をさらに備えている。遮光カバー15は、紫外線防止層13の外周の長手方向の一部のうち、周方向の全部を取り巻く筒状体である。遮光カバー15が方向Hに移動することで遮光カバー15’の位置に配置され、漏洩窓14を覆う。方向Hは、光コード93の長手方向すなわち光ファイバの長手方向である。そして、遮光カバー15が光ファイバの長手方向Hに移動することで遮光カバー15の位置に配置され、漏洩窓14を露出させる。遮光カバー15を漏洩窓14の配置されている部分からずらすことができるので、漏洩窓14を曲げやすくすることができる。また、遮光カバー15が筒状体であるので、遮光カバー15が光コード93から脱落することがなく、遮光カバーの紛失を防ぐことができる。
【0039】
芯線対照を行うときは、遮光性をもつ遮光カバー15を方向Hにスライドして開き、透明な漏洩窓14が受光素子の位置となるように芯線対照器をセットすることで、対照光が光コードの外部に漏洩した漏洩光を受光素子で受光することができる。芯線対照を行わないときは、遮光性をもつ遮光カバー15を遮光カバー15’の位置まで方向Hにスライドして、遮光カバー15を閉じることで、紫外線を遮光し、光コード93の樹脂層(図1の符号12)を紫外線から保護することができる。
【0040】
遮光カバー15を方向Hに移動しやすいよう、遮光カバー15の内径は紫外線防止層13の外径よりも大きいことが好ましい。又、遮光カバー15は、紫外線防止層13に固定ができるよう、内径が小さくなる方向に戻り力が働く弾性体であることが好ましい。例えば、筒状体は、円筒を形成する曲板であることが好ましい。筒状体が曲板で形成されることで、遮光カバー15を紫外線防止層13に容易に着脱することができる。又、方向Hへの遮光カバー15の移動を妨げる紫外線防止層13との固定手段を設けることが好ましい。
【0041】
図7は、光コードの第4形態であり、(a)は模式図であり、(b)はD−D’断面図である。図7(a)に示す光コード94は、図5(a)に示す光コード92が、遮光カバーの第1形態である遮光カバー15をさらに備えている。この場合、遮光カバー15は、図7(b)に示す遮光カバー15’のように、紫外線防止層13の外周の周方向の一部を覆う半筒状体であることが好ましい。例えば、図7(b)に示す遮光カバー15’のように、方向Hに沿ったスリット32が設けられており、紫外線防止層13の周囲の一部を取り囲む筒状体の一部となっていることが好ましい。ここで、方向Hは、光コード94の長手方向である。又、半筒状体は、例えば筒状体の周方向の半分である。半筒状体は、図7(b)に示すように、筒状体の周方向の半分以上であることが好ましく、これにより例えば遮光カバー15の形状によって光コードに固定することができる。又、半筒状体は、筒状体の周方向の半分以上であることが好ましく、これにより、例えば光ファイバテープ芯線や光ファイバテープコードのような1つの紫外線防止層13の内側に複数の光ファイバ(図1の符号11)が配置される場合であっても、光ファイバごとに漏洩窓14を露出させることができる。
【0042】
遮光カバー15は、弾性体で形成されており、方向Hの横断面の形状がC字形状となっていることが好ましい。遮光カバー15にスリット32が設けられていることで、スリット32から遮光カバー15の内側に図5(a)に示す光コード92の部分を差し込み、紫外線防止層13の外周を覆うように遮光カバー15を取り付けることができるので、光コード94の製造を容易にすることができる。
【0043】
図8は、光コードの第5形態であり、(a)は模式図であり、(b)はE−E’断面図である。図8(a)に示す光コード95は、図5(a)に示す光コード92が、遮光カバーの第2形態である遮光カバー16をさらに備えている。遮光カバー16は、紫外線防止層13の外周の周方向の一部を覆う半筒状体である。光コード95は、筒状体21の周方向の一部に特定の波長を透過する透過窓31を備え、遮光カバー16と透過窓31とで筒状体21を構成している。透過窓31は、例えば、特定波長の光に対して透明な部材で形成されているものである。透過窓31は、漏洩窓14と同じ光学部材を用いることができる。透過窓31は、何も配置されていない空隙であってもよい。
【0044】
光コード95では、筒状体21が方向Iに回転移動することで、漏洩窓14が露出することが好ましい。方向Iは、光コード95の長手方向すなわち光ファイバ(不図示)の長手方向を中心軸とする回転方向である。筒状体21の回転移動によって遮光カバー16を開閉するので、方向Hへ筒状体21を移動させる必要がない。ここで、方向Hは、光コード95の長手方向すなわち光ファイバの長手方向である。このため、漏洩窓14と遮光カバー16を一体化して取り付けることが容易になるので、光コード95の作製が容易である。又、光コード95の外径を均一にすることができるので、光コードの収容などの取り扱いが容易になる。
【0045】
光コード95では、さらに、筒状体21が、方向Hに移動することで、漏洩窓14が露出することが好ましい。方向Hは、光コード95の長手方向すなわち光ファイバの長手方向である。光コード95の動作は、図6に示す光コード93の動作と同様である。
【0046】
筒状体21は、紫外線防止層13との表面摩擦が少ないよう、筒状体21の内径は紫外線防止層13の外径よりも大きいことが好ましい。又、筒状体21は、紫外線防止層13に固定ができるよう、内径が小さくなる方向に戻り力が働く弾性体であることが好ましい。例えば、筒状体は、円筒形を形成する曲板であることが好ましい。筒状体21が曲板で形成されることで、筒状体21を紫外線防止層13に容易に着脱することができる。又、筒状体21に紫外線防止層13との固定手段を設けることが好ましい。
【0047】
図9は、光コードの第6形態を示す模式図である。図9に示す光コード96は、図1に示す光コード91が、遮光カバーの第3形態である遮光カバー17a及び遮光カバー17bをさらに備えている。光コード96は、遮光カバー17a及び遮光カバー17bの一端を紫外線防止層13に接続する接続部22をさらに備える。遮光カバー17a及び遮光カバー17bの一端は、例えば、図9に示す光コード96の長手方向の一端である。遮光カバー17a及び遮光カバー17bが遮光カバー17a’及び遮光カバー17b’の位置に配置されているとき、遮光カバー17a及び遮光カバー17bは漏洩窓14を覆う。そして、接続部22を支点として、接続部22と接続されていない遮光カバー17a及び遮光カバー17bの他端のそれぞれが、接続部22を支点として方向Jに回転移動することで、漏洩窓14が露出する。方向Jは、接続部22を回転中心とする、遮光カバー17a及び遮光カバー17bの他端のそれぞれが、紫外線防止層13の表面から、接続部22を通る光コード96の長手方向に垂直な面に向かう方向である。なお、遮光カバーの第3形態において、遮光カバーの数は1以上であればよく、漏洩窓14を1つの遮光カバーで覆ってもよい。又、漏洩窓14を3つ以上の遮光カバーで覆ってもよい。
【0048】
接続部22は、遮光カバー17a及び遮光カバー17bが紫外線防止層13に接続されている部分である。接続は、例えば、溶着又は接着によるものがある。又、固定具によるものがある。固定具としては、例えば、ネジ等の機械的な固定、内径が小さくなる方向に戻り力が働くバネによる固定、粘着テープによる固定がある。
【0049】
遮光カバー17a及び遮光カバー17bは、漏洩窓14を覆っている状態では、漏洩窓14が露出し難くなっていることが好ましい。例えば、遮光カバー17a及び遮光カバー17bは柔軟性を有する部材で形成されており、遮光カバー17a及び遮光カバー17bが紫外線防止層13に貼りつくことが好ましい。又、遮光カバー17a及び遮光カバー17bの少なくとも一部が重なっていることが好ましい。又、遮光カバー17aと遮光カバー17bが互いに固定可能であることが好ましい。又、遮光カバー17aと遮光カバー17bが円筒形状を形成し、紫外線防止層13の外周を覆うことが好ましい。
【0050】
芯線対照を行わないときは、遮光カバー17aと遮光カバー17bは遮光カバー17a’と遮光カバー17b’の位置に配置されている。芯線対照を行うときは、遮光性をもつ遮光カバー17aと遮光カバー17bを裂くようにして開き、漏洩窓14の設けられている透明な部分が受光素子(図4の符号102)の位置となるように芯線対照器をセットすることで、対照光が光コードの外部に漏洩した漏洩光を受光素子で受光することができる。芯線対照を行わないときは、遮光カバー17aと遮光カバー17bを遮光カバー17a’と遮光カバー17b’の位置まで方向Jに回転移動させて、遮光カバー17aと遮光カバー17bを閉じることで、紫外線を遮光し、光コード96内の樹脂層(図1の符号12)を紫外線から保護することができる。
【0051】
図10は、光コードの第7形態を示す模式図である。図10に示す光コード97は、図5(a)に示す光コード92が、遮光カバーの第3形態である遮光カバー17a及び遮光カバー17bをさらに備えている。光コード97は、漏洩窓14を除いては、図9に示す光コード96と同様である。
【0052】
図11は、光コードの第8形態であり、(a)は模式図であり、(b)はF−F’断面図である。図11(a)に示す光コード98は、図10に示す遮光カバー17aが漏洩窓14を覆っている。漏洩窓14は、樹脂層12の周囲の周方向の全部ではなく、周方向の一部を覆うように設けられている。このため、遮光カバー17aは、漏洩窓14の配置されている部分の周方向の全部を取り囲むことなく漏洩窓14を覆うことができる。遮光カバー17aは、光コードの第6形態のように紫外線防止層13の外周を周回させる必要がないので、製造が容易である。又、遮光カバー17aの設けられている部分が、漏洩窓14の配置されている部分の外周の周方向の一部であることで、テープコードのように1つのシース(図3の符号56)の中に複数の光ファイバ(図1の符号11)が配置されているときに、光ファイバごとに漏洩窓14を設けることができる。これにより、紫外線防止層13の内側に光ファイバが複数配置される場合であっても、芯線対照を行う光ファイバ以外の光ファイバの外周の樹脂層への紫外線の照射を防止することができる。
【0053】
なお、光コードの第1形態から光コードの第8形態において、光コードは、テープコードのように1つのシース(図3の符号56)の中に複数の光ファイバ(図1の符号11)が配置されていてもよい。この場合は、1つのシース(図3の符号56)の中に配置されている光ファイバごとに漏洩窓14を設けることが好ましい。複数の漏洩窓14に対して共通の遮光カバーとしてもよいし、漏洩窓14ごとに遮光カバーを設けてもよい。漏洩窓14ごとに遮光カバーを設ければ、紫外線防止層13の内側に光ファイバが複数配置される場合であっても、芯線対照を行う光ファイバ以外の光ファイバの外周の樹脂層(図1の符号12)への紫外線の照射を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は、紫外線から保護することができるので、紫外線の当たる可能性のある場所に配置することもできる。よって、光コードの屋内配線に応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る光コードの第1形態を示す模式図である。
【図2】光コードの横断面図であり、(a)はA−A’断面を示し、(b)はB−B’断面を示す。
【図3】光コードの具体例を示す横断面図である。
【図4】芯線対照の一例を示す模式図である。
【図5】光コードの第2形態であり、(a)は模式図であり、(b)はC−C’断面図である。
【図6】光コードの第3形態を示す模式図である。
【図7】光コードの第4形態であり、(a)は模式図であり、(b)はD−D’断面図である。
【図8】光コードの第5形態であり、(a)は模式図であり、(b)はE−E’断面図である。
【図9】光コードの第6形態を示す模式図である。
【図10】光コードの第7形態を示す模式図である。
【図11】光コードの第8形態であり、(a)は模式図であり、(b)はF−F’断面図である。
【図12】芯線対照の作業の一例を示した模式図である。
【符号の説明】
【0056】
11 光ファイバ
12 樹脂層
13 紫外線防止層
14 漏洩窓
15、16、17 遮光カバー
21 筒状体
22 接続部
31 透過窓
32 スリット
51 コア
52 クラッド
53 バッファ層
54 被覆
55 補強材
56 シース
91、92、93、94、95、96、97、98、200 光コード
H、I、J 遮光カバーの移動方向
101 対照光
102 受光素子
211 OLT
212 光源
213 光カプラ
214 光ファイバ
215 曲げ部
216 ONU
220 基地局
221 中間地点
222 加入者宅
223 受光器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝搬する光ファイバと、
前記光ファイバの側面を覆い、前記光ファイバを伝搬する特定波長の光を透過する樹脂層と、
前記樹脂層の外周を覆い、前記樹脂層への外部からの紫外線の照射を防止する紫外線防止層と、
前記紫外線防止層の少なくとも一部に設けられ、前記特定波長の光を前記紫外線防止層の外部に漏洩させる漏洩窓と、を備えることを特徴とする光コード。
【請求項2】
前記漏洩窓が、前記樹脂層の外周の周方向の一部を覆うように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の光コード。
【請求項3】
前記漏洩窓を覆い、前記漏洩窓への外部からの紫外線の照射を妨げ、かつ、移動することで前記漏洩窓を露出可能な遮光カバーをさらに備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の光コード。
【請求項4】
前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周を取り巻く筒状体であり、
前記筒状体が前記光ファイバの長手方向に移動することで、前記漏洩窓が露出することを特徴とする請求項3に記載の光コード。
【請求項5】
前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周の周方向の一部を覆う半筒状体であり、
前記半筒状体が前記光ファイバの長手方向に移動することで、前記漏洩窓が露出することを特徴とする請求項3に記載の光コード。
【請求項6】
前記遮光カバーは、前記紫外線防止層の外周の周方向の一部を覆う半筒状体であり、
前記半筒状体が前記光ファイバの長手方向を中心軸として回転移動することで、前記漏洩窓が露出することを特徴とする請求項3に記載の光コード。
【請求項7】
前記遮光カバーの一端を前記紫外線防止層に接続する接続部をさらに備え、
前記接続部を支点として前記遮光カバーの他端が回転移動することで、前記漏洩窓が露出することを特徴とする請求項3に記載の光コード。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−206367(P2007−206367A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−25023(P2006−25023)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】