説明

光シート体およびその製造方法、並びに光カードおよび複合メモリカード

【課題】 光ファイバを用いることなく、光導波路および非光導波路を備えた光カードを廉価に製造すること。
【解決手段】 光カード1は、コア層2Aが低屈折率の表面層2Bおよび裏面層2Cで挟まれた構成の本体シート2の表面2aにV溝5および遮光用のV溝7を形成し、この上に、紫外線硬化型レジンを塗布し、表面保護シート4を積層し、紫外線を照射して紫外線硬化型レジンを硬化させることにより得られる。V溝5で仕切られている各区画部分6(n)のうち、遮光用の溝7のない区画部分が光導波路として機能し、溝7が形成されている区画部分が非光導波路として機能する。本体シート2の表面にV溝を形成し、表面保護シート4で覆うという簡単な工程により、光ファイバを用いることなく、光導波路、非光導波路の組み合わせパターンにより情報を担持可能な光メモリを製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路および非光導波路により情報を担持可能な光シート体およびその製造方法に関するものである。また、本発明はかかるシート体を用いた光カードおよび複合メモリカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
磁気カードは、各種のクレジットカード、会員カード、あるいはテレホンカード、パチンコカード等のプリペイドカードとして各方面で利用されている。しかし、近年においては、磁気ストライプに担持されている情報が不正に読み取られて、変造、改竄された偽造磁気カードの不正使用が多発し、磁気カードの信頼性が疑問視されている。
【0003】
磁気カードの信頼性を高めるために、本願人の一方は、磁気カードに多数本の光ファイバを埋め込み、これらの幾つかを切断あるいは押し潰しておくことにより、光の透過および遮断の組み合わせからなる光学式記憶領域を磁気カードに形成した構成のメモリカードを提案している(特許文献1、2)。このメモリカードは、断面形状が円形または角型の複数本の光ファイバを平面上に整列させて接着剤で一体化することによりコア材を形成し、このコア材の両面にプラスチック製の保護シートを接着した構造となっている。
【0004】
光ファイバは一旦切断あるいは押し潰されると、その部分を修復して元の光透過特性を得ることが実質的に不可能である。したがって、磁気カードに、かかる光学式記憶領域が形成された構成のメモリカードは、変造、改竄が困難であり、磁気記憶領域および光学式記憶領域に記憶保持されている情報を二重にチェックすることにより偽造カードであるか否かを簡単に判別できる。よって、かかるメモリカードは極めて信頼性が高い。
【特許文献1】特許第2682542号公報
【特許文献2】特許第2737841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかるメモリカードは、光ファイバを用いて光の透過および遮断の組み合わせからなる光学式記憶領域が形成されているので次のような問題点がある。
【0006】
まず、30〜200本程度の多数本の光ファイバを、一枚のカード内においてその平面方向に等ピッチで精度良く整列させた状態で接着固定することは、困難な作業である。よって、メモリカードの生産効率が悪い。
【0007】
また、光ファイバ同士の接合強度は接着剤強度に依存するので、光ファイバの接合強度が実用上不十分になる可能性が高い。特に、メモリカードが曲げ変形するような力が作用した場合に、光ファイバが平面方向に接着固定された構造のコア材が壊れ易い。
【0008】
さらに、光ファイバは一般に高価であり、これを多数本用いて光学式記憶領域が形成されているメモリカードも高価になり、実用的でない。
【0009】
そこで、本願人は、これらの問題点を解消するために、PCT/JP03/15496において、光ファイバを用いることなく光学式記憶領域が形成された光シート体およびその製造方法と、かかる新しい光シート体を用いた光カードおよび複合メモリカードを提案している。
【0010】
本発明は、上記提案の光シート体、並びに光カードおよび複合メモリカードの改良に関するものであり、その課題は、光シート体、光カードおよび複合メモリカードを簡単な工程により廉価に製造可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の光シート体は、
所定厚さのプラスチック製の本体シートと、
前記本体シートの表面に形成された複数本の第1の溝と、
前記第1の溝に充填された状態で前記本体シートの表面を覆っている所定厚さの表面保護層とを有し、
前記本体シートは、所定厚さの透明なコア層と、このコア層の表面に形成されている表面側クラッド層と、前記コア層の裏面に形成されている裏面側クラッド層とを備え、
前記第1の溝の深さ寸法は前記本体シートの厚さ寸法よりも小さく、
隣接する前記第1の溝の間に形成された前記コア層の区画部分がそれぞれ光導波路として機能することを特徴としている。前記第1の溝の深さ寸法は、前記本体シートの厚さ寸法の70〜80%にすればよい。
【0012】
本発明の光シート体では、裏面に裏面側クラッド層が一体形成されているコア層を備えた本体シートに、複数本の第1の溝を形成することにより、これらの第1の溝の間にそれぞれ区画部分が形成される。第1の溝の深さは本体シートの厚さよりも浅いので、裏面側クラッド層の裏面側の部分は連続した状態のまま残る。したがって、各区画部分は、表面側クラッド層として機能する表面保護層と裏面側クラッド層によって外周が覆われており、その一端から入射した光を他端に導く光導波路として機能する。よって、光ファイバを用いることなく光学式記憶領域を形成できる。
【0013】
このように、本発明では、本体シートとして、予め裏面に屈折率の異なる層、すなわちクラッド層が一体形成されたものを用いると共に、第1の溝の深さを本体シート厚さよりも浅くしているので、本体シートの裏面側にはクラッド層として機能する部分が連続した状態で残っている。よって、本体シートの裏面側にクラッド層を形成する工程が不要となるので、製造工程を簡単化でき、製造コストも低減できる。なお、本体シートとして、その裏面だけでなく表面にも屈折率の異なる層が一体形成された構成のものを用いることができる。
【0014】
本体シートの表面に積層した表面保護層は表面側クラッド層として機能するので、前記光導波路に通す使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なるようにすると共に、光の漏洩を防止するために、当該使用光を吸収可能な光学特性を備えたものとすることが望ましい。
【0015】
ここで、前記表面保護層は、接着剤、着色塗料、または接着剤および着色塗料の混合材料から形成することができる。
【0016】
光シート体の強度、剛性を高めるために、前記表面保護層に表面保護シートを積層する場合には、前記表面保護層として接着剤を用いることが望ましい。
【0017】
次に、本体シートとしては接着性に優れたポリエチレンテレフタレート系の樹脂シート(PETシート)を用いることが望ましい。
【0018】
この構成の光シート体において、光を通さない非光導波路を形成するためには、前記区画部分に、実質的に前記第1の溝に対応する深さの遮光用の第2の溝を、隣接する前記第1の溝の間に架け渡すように形成すればよい。当該区画部分の一方の端面から入射した光は、遮光用の第2の溝によって遮断され、他方の端面に導かれることがない。よって、光導波路および非光導波路の組み合わせからなる、情報を担持可能な光学式記憶領域を形成できる。
【0019】
次に、本発明の光シート体では、第1の溝が本体シートの厚さよりも浅く、その本体シートの裏面側の部分が連続したまま残っている。したがって、区画部分には、ここを通って隣接する区画部分に光が漏洩することを確実に防止することが望ましい。また、光シート体の裏面から不要光が各区画部分に侵入することを確実に防止することが望ましい。
【0020】
このような光の漏洩あるいは侵入を防止するためには、前記本体シートの裏面側から不要光遮断用の第3の溝を形成することが望ましい。この場合、本体シートの側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に当該第3の溝の底部分が重なるように、当該第3の溝の深さを設定すれば、光の漏洩を確実に阻止できる。
【0021】
特に、隣接した区画部分に光が漏洩することを防止するためには、前記第3の溝を、各第1の溝の両側あるいは片側位置において当該第1の溝に平行に形成すればよい。
【0022】
また、本体シートの裏面側から不要光が各区画部分に侵入することを防止するためには、前記第3の溝を、各第1の溝に交差する方向に複数本形成すればよい。
【0023】
さらに、非光導波路を形成している前記第2の溝が形成された非光導波路においても、これら第2の溝の下側に残っている本体シートの連続部分を通って光が通ってしまう可能性がある。これを確実に防止するためには、前記第3の溝を、前記第2の溝の両側あるいは片側位置において当該第2の溝に平行に形成しておけばよい。
【0024】
ここで、第3の溝が形成されている本体シートの裏面には接着剤を塗布して、第3の溝に接着剤を充填すればよい。接着剤としては使用光を吸収可能で、本体シートのコア層とは屈折率が異なる光学特性を備えたものを用いればよい。
【0025】
次に、前記第1、第2および第3の溝としてはそれぞれV溝を採用することができる。また、一般には、前記第1溝を所定間隔で平行に延びる直線状の溝として形成して、各溝によって区画された一定幅の直線状の光導波路および非光導波路を形成すればよい。さらに、前記本体シートの輪郭形状は一般には矩形形状とすればよい。勿論、円形、多角形などの輪郭形状とすることも可能である。
【0026】
一方、本発明の光シート体においては、上記構成の本体シートを多層に積層した構成とし、多段構成の光導波路および非光導波路が形成された構成とすることも可能である。
【0027】
次に、本発明の光カードは、上記構成の矩形形状の光シート体を有し、前記光導波路および前記非光導波路の両端面が、前記光シート体における長辺側の両端面、あるいは短辺側の両端面に位置していることを特徴としている。
【0028】
また、本発明の複合カードは、かかる構成の光カードと、磁気記憶部とを有していることを特徴としている。磁気カードの代わりに、あるいはこれと共にICメモリチップを備えた構成とすることもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の光シート体では、PETシートなどの本体シートに、その表面から溝を形成し、溝の間の区画部分を光導波路として利用している。また、各区画部分に選択的に遮光溝を形成して非光導波路を形成している。したがって、高価な光ファイバを平面方向に整列して接着固定することにより光導波路および非光導波路を形成する従来のメモリカードに比べて、簡単かつ廉価に、しかも精度良く製造できる。
【0030】
特に、本発明では、裏面または表裏両面に屈折率の異なる層が一体形成されている本体シートの表面から、当該本体シートの厚さよりも浅い寸法の溝を形成することにより、裏面側の屈折率の異なる層の少なくとも一部を連続した状態のまま残し、これを裏面側のクラッド層として利用している。したがって、裏面側に別途、クラッド層を形成する工程が不要となるので、製造工程が簡単になり、また、製造コストも低減できるという利点がある。
【0031】
さらに、本発明の光シート体では、その裏面側に第3の溝を形成しているので、光導波路からの光の漏洩、光導波路への不要光の侵入、非光導波路における光の通過あるいは不要光の侵入を確実に防止できる。よって、S/N比の高い検出信号を生成可能な光カードを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に、図面を参照して、本発明の各実施の形態を説明する。
【0033】
(光カード)
図1(a)および(b)は、本発明を適用した光カードを示す斜視図および内部構造を示す説明図であり、図2は光カードの本体シートを示す平面図である。
【0034】
光カード1は長方形の薄い二層構造の光シート体からなり、光シート体は、一定厚さの本体シート2と、本体シート2の表面2aに、一定厚さの接着剤層3(表面保護層)を介して積層接着された一定厚さの表面保護シート4とを備えている。本体シート2は、一定厚さのコア層2Aと、コア層2Aの表面側に一体形成されている(コア層の屈折率よりも低い屈折率を備えた)低屈折率の表面層2Bと、コア層2Aの裏面側に一体形成されている低屈折率の裏面層2Cとからなるプラスチック製のシートである。
【0035】
本体シート2の表面2aには、一定の間隔でシート短辺方向に延びる多数本の第1のV溝5が形成されている。各第1のV溝5の両端5a、5bはそれぞれ本体シート2の長辺側のシート端面2c、2dに露出している。各第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート2の厚さの約70〜80%の範囲内の値とされている。したがって、本体シート2の表面層2Bは各第1のV溝5によって完全に分断されているが、裏面層2Cの一部は、第1のV溝5によって分断されずに連続状態のまま残っている。
【0036】
第1のV溝5の深さ寸法は、本体シート2の曲げ強度などを所定以上に保持でき、また、連続した部分を介しての光の漏れ量が実用上、支障を来たすことのない範囲とする必要がある。典型的には、本体シート厚さの70〜80%の範囲内とすればよいが、本体シートの素材の特性(光学特性や機械的特性など)に応じて、65%程度あるいは90%程度でも良い場合もある。
【0037】
各第1のV溝5の間に形成された本体シート2の区画部分6(1)、6(2)、6(3)・・・・6(n)(n:正の整数)のうち、例えば、区画部分6(1)、6(3)・・・には、隣接する第1のV溝5の間に架け渡されるように、これらの第1のV溝5に直交する方向に第2のV溝(遮光溝)7が形成されている。
【0038】
各区画部分6(n)は、その表面側が、本体シート2の表面層2Bと、この表面に積層されていると共に溝5に充填されている接着剤層3によって覆われている。また、それらの裏面側は、分断されずに連続した状態で残っている本体シート2の裏面層2Cの部分によって覆われている。換言すると、表面層2Bおよび接着剤層3は区画部分6(n)の表面側を覆う表面側クラッド層として機能し、連続状態で残っている裏面層2Cの部分は裏面側クラッド層として機能する。
【0039】
よって、遮光用の第2のV溝7が形成されていない区画部分6(2)、6(4)・・・は光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光を他方のシート端面2dに導く。これに対して、遮光用の第2のV溝7が形成されている区画部分6(1)、6(3)・・・は非光導波路として機能し、一方のシート端面2cから入射した光は、遮光用の第2のV溝7によって通過が遮られ、他方のシート端面2dまで導かれることがない。
【0040】
したがって、光導波路および非光導波路を所定の配列パターンに従って形成しておき、検出光をシート端面2cから各区画部分6(1)〜6(n)に入射し、他方のシート端面2dの側に設置した光検出器によって各区画部分6(1)〜6(n)からの射出光の有無を検出すれば、光カード1に形成されている配列パターン(記憶情報あるいは担持情報)を読み取ることができる。
【0041】
本例では、本体シート2はPETシートであり、その表面部分および裏面部分には熱処理が施されて、中心部分とは光学特性が異なっている。例えば、東洋紡株式会社製造のものを用いることができる。接着剤層3としては、クラッド層として機能するようにPETシートの中心部分とは屈折率が異なり、また、使用光を吸収可能な特性を備えた紫外線硬化型レジンを用いている。さらに、第1のV溝5は1mmピッチで形成されており、両側の傾斜面のなす角度が約60度であり、その深さは先に述べたように本体シート2の厚さの70〜80%とされている。第1のV溝5が浅すぎると、その下側の連続している部分を介して、隣接する区画部分6(n)の間で光の漏洩が発生するので好ましくない。第1のV溝5が深すぎると、本体シート2の曲げ強度が低下してしまうので好ましくない。
【0042】
第1のV溝5に直交している第2のV溝7も同一寸法であり、非光導波路として機能する各区画部分6(1)、6(3)・・・において、シート端面2cの側に2mmピッチで5本形成され、他方のシート端面2dの側に同じく2mmピッチで5本形成されている。このように各区画部分6(1)、6(3)・・・における両端側に複数本の第2のV溝7を形成しておくと、入射光を完全に遮断可能な非光導波路を形成できる。すなわち、シート端面2cから入射した光は最初の5本の第2のV溝7で拡散して殆ど減衰し、次の5本の第2のV溝7によって完全に遮断される。
【0043】
このように、本例の光カード1では、高価な光ファイバを用いることなく、光導波路および非光導波路を形成できるので、廉価に製造できる。また、光ファイバを平面方向に等ピッチで接着固定した構成のメモリカードに比べて、簡単かつ精度良く光導波路および非光導波路を形成できる。
【0044】
特に、本例では、表裏両面に低屈折率の層が一体形成された本体シート2を用いると共に、第1のV溝5の深さを本体シート2の厚さの70〜80%程度としてある。したがって、本体シート2の裏面層2Cをクラッド層としてそのまま利用できるので、本体シート2の裏面側にクラッド層を別途形成する必要がない。よって、製造工程を簡略化でき、製造コストを低減できるという利点が得られる。
【0045】
(光カードの製造方法)
図3(a)、(b)および(c)は、光カード1の製造工程を示す説明図である。まず、図3(a)に示すように、本体シート素材20を用意する。つぎに、図3(b)に示すように、本体シート素材20の表面20aに第1のV溝5および遮光用の第2のV溝7を彫り込むことにより、光導波路および非光導波路として機能する区画部分6(1)〜6(n)を備えた本体シート2が得られる。
【0046】
この後は、図3(c)に示すように、本体シート2の表面2aに紫外線硬化型レジン3aを塗布する。紫外線硬化型レジン3aは本体シート2の表面2aに形成されているV溝5、7に充填された状態で、当該本体シート2の表面2aに一定の厚さとなるように塗布される。次に、その上に半透明な表面保護シート4を積層する。しかる後に、表面保護シート4の表面側から紫外線を照射する。紫外線が表面保護シート4を透過して紫外線硬化型レジン3aに照射するので、当該紫外線硬化型レジン3aが硬化して、接着剤層3が形成され、この接着剤層3aを介して、本体シート2の表面側に表面保護シート4が積層接着された状態になる。このようにして、光カード1が完成する。
【0047】
なお、図4はV溝5、7を形成するために用いるのに適したロータリダイの例を示す説明図である。ロータリダイ11には、刃先角度60度、長さ80mm、ピッチ1mmで平行に延びる32本の整列刃12がエッチングより形成されている。これらの整列刃12によりV溝5が形成される。また、整列刃12の間に直交方向に架け渡された状態で、ピッチ2mmで同一寸法の5本の直交刃13が同じくエッチングより形成されている。これらの直交刃13によりV溝7が形成される。この構成のロータリダイ11を用いて、本体シート素材20の表面20aから、整列刃11および直交刃12を、当該本体シート素材20の厚さ分だけ押し込むことにより、溝5、7が形成される。
【0048】
このように、本例の光カード1では、表面および裏面に高屈折率の表面層および裏面層が一体形成された構成の本体シート2を用いると共に、接着剤層3を紫外線硬化型レジンを用いて形成している。したがって、製造工程においては、本体シート2の表面2aの側から、V溝5、7の形成と、紫外線硬化型レジンの塗布および紫外線照射による硬化作業を行うことができる。よって、少ない工程で光カード1を製造することができ、また、製造コストも低減できる。さらには、ロータリダイを用いることにより、V溝5、7を精度良く、しかも効率良く形成することができる。ロータリダイを用いる代わりに、レーザーカットによりV溝5、7を形成することもできる。
【0049】
また、本例では本体シート2として、表面および裏面に高屈折率の部分を備えたものを用いている。この代わりに、裏面側にのみ高屈折率の部分が形成されたPETシートなどのプラスチックシートを用いることも可能である。
【0050】
(光カードの別の実施形態)
次に、上記構成の光カード1は、第1の溝5が本体シート2の厚さよりも浅く、その本体シート2の裏面側の部分が連続したまま残っている。この部分を通って不要な光が隣接する区画部分6(n)に漏れることを確実に防止するためには、図5に示すように、光カード1の裏面側に不要光遮断の溝を形成することが望ましい。
【0051】
すなわち、図5に示す光カード1Aにおいては、その本体シート2の裏面2bにおいて、表面側の第1の溝5の隣接位置において溝5に平行に延びる第3のV溝8が形成されている。第3のV溝8の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝8の深さが設定されている。すなわち、本体シート2の側方から見た場合に、双方の溝の底部分が重なる状態に形成されている。また、第3のV溝8には接着剤8aが充填されている。接着剤8aは、使用光を吸収可能であり、しかも、本体シートのコア層2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものである。接着剤8aの代わりに、光カード1Aの仕上げ工程において本体シート2の裏面2bに所定の印刷を行うために用いるインクを用いて、第3の溝8を充填してもよい。この場合においても、使用するインクとしては、使用光を吸収可能であると共に、コア層2Aとは異なる屈折率を備えた光学特性のものを用いればよい。
【0052】
ここで、図5(b)において実線のV溝8および想像線のV溝8Aで示すように、第1のV溝5の両側に第3のV溝を形成してもよい。なお、第2のV溝7と第3のV溝8は交差して、交差部分においては本体シート2に貫通部分が形成される。この貫通部分は接着剤層3が充填されて封止されることになる。これ以外の構成は図1、2に示す光カード1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0053】
次に、光カード1において、その裏面側から不要光が光導波路に侵入することを確実に防止するためには、図6に示すように、光カード1の裏面に、第1の溝5に交差する状態に1本、好ましくは複数本の溝を形成することが望ましい。すなわち、図6の光カード1Bでは、その本体シート2の裏面2bにおいて、その長辺側の端面2a、2bの側に、それぞれ3本ずつの第3のV溝9を形成してある。この場合においても、第3のV溝9の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝9の深さを設定する。また、第3の溝9には接着剤9aが充填される。接着剤9aの光学特性は上記の接着剤8aと同様であり、接着剤9aの代わりに裏面仕上げ用のインクを用いても良い。第1のV溝5と第3のV溝9の交差部分では、本体シート2に貫通部分が形成されるが、この貫通部分には接着剤層3あるいは裏面側から充填した接着剤9aが充填されて封鎖される。これらのV溝9を形成しておくことにより、裏面2bからの不要光の侵入を確実に阻止することが可能である。なお、これ以外の光カード1Bの構成は図1、2の光カード1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0054】
一方、光カード1における本体シート2では、区画部分を非光導波路6(1)、6(3)・・・とするために形成した第2のV溝7の下側部分も繋がっている。この部分を光が通ってしまうことを確実に防止するためには、図7に示すように、本体シート2の裏面2bの側に、第2の溝7の隣接位置に第3の溝10を形成しておくことが望ましい。この場合においても、第3のV溝10の底が第1のV溝5の底よりも表面側に位置するように、当該第3のV溝10の深さを設定する。また、図7(c)に示すように、各第3のV溝10は、隣接するV溝5の間に形成する。溝10には接着剤10aが充填される。接着剤10の光学特性は上記の接着剤8a、9aと同様であり、接着剤10aの代わりに、裏面仕上げ用のインクを充填してもよい。これらのV溝10を形成しておくことにより、第2のV溝7の下側を光が通過してしまうことを確実に阻止することが可能である。第3のV溝10を、各第2のV溝7の両側に形成してもよい、なお、これ以外の光カード1Cの構成は図1、2の光カード1と同一であるので、それらの説明は省略する。
【0055】
ここで、上記の図5、図6および図7の構成の2つ、あるいは全てを組み合わせた構成を採用して、不要光の侵入を防止するようにしてもよいことは勿論である。
【0056】
(多層光カードの例)
図8は、図6に示す構成の光カード1Bの本体シート2を3層に積層した構成を示してある。この多層本体シート50は、図6の本体シート2を接着層51を挟み積層接着したものである。この多層本体シート50の上面52には表面保護層53を介して、表面保護シート4が積層接着されて、多層光カードが得られる。
【0057】
光カードを多層構成とすることにより、多段の光導波路および非光導波路を備えた、記憶容量が大きくセキュリティの高い光カードを実現できる。
【0058】
(複合メモリカード)
図9には上記の光カード1、1A、1Bあるいは1Cを用いた複合メモリカードの構成例を示してある。図9(a)に示す複合メモリカード30は、光カード1(1A、1B、1C)と、その表面1aに、長辺方向に一定幅で印刷された磁気ストライプ31とを備えた構成となっている。この複合メモリカード30は例えばIDカード、プリペイドカードなどとして用いることができる。
【0059】
図9(b)に示す複合メモリカード40は、光カード1(1A、1B、1C)の本体シートと表面保護シートの間にCPU付きICチップ41が埋設された構造のものである。この複合メモリカード40は、記憶情報の多い電子マネーカード、保険証、運転免許証などとして用いることができる。
【0060】
(その他の実施の形態)
なお、上記の例は本発明の一例を示すものであり、本発明の光シート体および製造方法、並びに、光カードおよび複合メモリカードの構成は、上記の例の形状、構造、素材に限定されるものではない。例えば、光シート体としては長方形輪郭ではなく、円形あるいは多角形輪郭であってもよい。また、V溝の代わりに、U溝などの異なる断面形状の溝を用いることもできる。さらに、接着剤層として、紫外線硬化型接着剤以外の接着剤を用いることも可能である。さらにまた、本体シートの素材としてPET以外の樹脂を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】(a)および(b)は、本発明を適用した光カードを示す斜視図および内部構造を示す説明図である。
【図2】図1の本体シートの平面図である。
【図3】(a)、(b)および(c)は、図1に示す光カードの製造工程を示す説明図である。
【図4】V溝を形成するために用いるロータリダイを示す説明図である。
【図5】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図および部分断面図である。
【図6】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図および裏面図である。
【図7】第3のV溝を備えた光カードの例を示す内部構造を示す説明図、そのb−b線で切断した部分を示す部分断面図、およびc−c線で切断した部分を示す部分断面図である。
【図8】本発明を適用した多層光カードを示す説明図である。
【図9】本発明による複合メモリカードの二例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1、1A、1B、1C 光カード
2 本体シート
2a 本体シートの表面
2b 本体シートの裏面
2c、2d 本体シートの端面
2A コア層
2B 表面層
2C 裏面層
3 接着剤層
4 表面保護シート
5 第1のV溝
7 第2のV溝
8、9、10 第3のV溝
8a、9a、10a 接着剤
5a、5b V溝の端
6(n) 区画部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定厚さのプラスチック製の本体シートと、
前記本体シートの表面に形成された複数本の第1の溝と、
前記第1の溝に充填された状態で前記本体シートの表面を覆っている所定厚さの表面保護層とを有し、
前記本体シートは、所定厚さの透明なコア層と、当該コア層の裏面に形成されている裏面側クラッド層とを備え、
前記第1の溝の深さ寸法は前記本体シートの厚さ寸法よりも小さく、
隣接する前記第1の溝の間に形成された前記コア層の区画部分がそれぞれ光導波路として機能する光シート体。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の溝の深さ寸法は、前記本体シートの厚さ寸法の70〜80%であることを特徴とする光シート体。
【請求項3】
請求項2において、
前記表面保護層は、前記光導波路に通す使用光を吸収可能であると共に、当該使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なっていることを特徴とする光シート体。
【請求項4】
請求項3において、
前記表面保護層は、接着剤、着色塗料、または接着剤および着色塗料の混合材料から形成されていることを特徴とする光シート体。
【請求項5】
請求項4において、
前記表面保護層は少なくとも接着剤から形成されており、
当該表面保護層を挟み表面保護シートが積層接着されていることを特徴とする光シート体。
【請求項6】
請求項1ないし5のうちのいずれかの項において、
前記本体シートはポリエチレンテレフタレート系の樹脂シートである光シート体。
【請求項7】
請求項1ないし6のうちのいずれかの項において、
少なくとも一つの前記区画部分に形成された少なくとも一本の遮光用の第2の溝を有し、
前記第2の溝の深さは、実質的に前記光導波路を規定している前記第1の溝の深さに対応する深さであり、
当該第2の溝は、隣接する前記第1の溝の間に架け渡されており、
当該第2の溝が形成された前記区画部分が非光導波路となっている光シート体。
【請求項8】
請求項1ないし7のうちのいずれかの項において、
前記本体シートの裏面に形成した不要光遮断用の第3の溝と、
前記本体シートの裏面において、少なくとも前記第3の溝に充填されている裏面保護層とを有し、
前記本体シートの側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されていることを特徴とする光シート体。
【請求項9】
請求項8において、
前記第3の溝は、各第1の溝の両側あるいは片側位置において当該第1の溝に平行に延びていることを特徴とする光シート体。
【請求項10】
請求項8において、
前記第3の溝は、各第1の溝に交差する方向に延びる複数本の溝であることを特徴とする光シート体。
【請求項11】
請求項7において、
前記本体シートの裏面に形成した不要光遮断用の第3の溝と、
前記本体シートの裏面において、少なくとも前記第3の溝に充填されている裏面保護層とを有し、
前記本体シートの側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されており、
当該第3の溝は、前記第2の溝の両側あるいは片側位置において当該第2の溝に平行に延びていることを特徴とする光シート体。
【請求項12】
請求項7ないし11のうちのいずれかの項において、
前記裏面保護層は、前記光導波路に通す使用光を吸収可能であると共に、当該使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なっていることを特徴とする光シート体。
【請求項13】
請求項12において、
前記裏面保護層は、接着剤、着色塗料、または接着剤および着色塗料の混合材料から形成されていることを特徴とする光シート体。
【請求項14】
請求項13において、
前記裏面保護層は、前記本体シートの裏面に積層した少なくとも接着剤からなる層であり、
当該裏面保護層を挟み裏面保護シートが積層接着されていることを特徴とする光シート体。
【請求項15】
厚さ方向に積層された複数枚の本体シートと、
各本体シートの表面に形成した第1の溝と、
各本体シートの間に配置され、上下の本体シートを積層接着している接着剤層と、
最も上側の本体シートの表面に積層されている表面保護層と、
最も下側の本体シートの裏面に積層されている裏面保護層とを有し、
各本体シートは、所定厚さの透明なコア層と、当該コア層の裏面に形成されている裏面側クラッド層とを備え、
前記第1の溝の深さ寸法は前記本体シートの厚さ寸法よりも小さく、
各本体シートにおいて、隣接する前記第1の溝の間に形成された前記コア層の区画部分がそれぞれ光導波路として機能する光シート体。
【請求項16】
請求項15において、
前記第1の溝の深さ寸法は、前記本体シートの厚さ寸法の70〜80%であることを特徴とする光シート体。
【請求項17】
請求項16において、
前記表面保護層、前記裏面保護層および前記接着剤層は、前記光導波路を通す使用光を吸収可能であると共に、当該使用光に対する屈折率が前記コア層とは異なっていることを特徴とする光シート体。
【請求項18】
請求項17において、
前記表面保護層および前記裏面保護層は、接着剤、着色塗料、または接着剤および着色塗料の混合材料から形成されていることを特徴とする光シート体。
【請求項19】
請求項18において、
前記表面保護層および前記裏面保護層は、少なくとも接着剤から形成されており、
前記表面保護層を挟み表面保護シートが積層接着されており、
前記裏面保護層を挟み裏面保護シートが積層接着されていることを特徴とする光シート体。
【請求項20】
請求項16ないし19のうちのいずれかの項において、
前記本体シートはポリエチレンテレフタレート系の樹脂シートである光シート体。
【請求項21】
請求項15ないし20のうちのいずれかの項において、
少なくとも一つの前記区画部分に形成された少なくとも一本の遮光用の第2の溝を有し、
前記第2の溝の深さは、実質的に前記光導波路を規定している前記第1の溝の深さに対応する深さであり、
当該第2の溝は、隣接する前記第1の溝の間に架け渡されており、
当該第2の溝が形成された前記区画部分が非光導波路となっている光シート体。
【請求項22】
請求項15ないし21のうちのいずれかの項において、
各本体シートの裏面に形成した不要光遮断用の第3の溝を有し、
最も下側の本体シートにおいては、当該第3の溝に充填した状態で前記裏面保護層が形成されており、それ以外の本体シートにおいては、前記第3の溝に充填した状態で各接着剤層が形成されており、
前記本体シートの側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されていることを特徴とする光シート体。
【請求項23】
請求項22において、
前記第3の溝は、各第1の溝の両側あるいは片側位置において当該第1の溝に平行に延びていることを特徴とする光シート体。
【請求項24】
請求項22において、
前記第3の溝は、各第1の溝に交差する方向に延びる複数本の溝であることを特徴とする光シート体。
【請求項25】
請求項21において、
前記本体シートの裏面に形成した不要光遮断用の第3の溝を有し、
最も下側の本体シートにおいては、当該第3の溝に充填した状態で前記裏面保護層が形成されており、それ以外の本体シートにおいては、前記第3の溝に充填した状態で各接着剤層が形成されており、
前記本体シートの側方から見た場合に、前記第1の溝の底部分に前記第3の溝の底部分が重なるように、前記第3の溝の深さが設定されており、
当該第3の溝は、前記第2の溝の両側あるいは片側位置において当該第2の溝に平行に延びていることを特徴とする光シート体。
【請求項26】
請求項1ないし25のうちのいずれかの項において、
前記第1、第2および第3の溝はそれぞれV溝であることを特徴とする光シート体。
【請求項27】
請求項26において、
前記第1の溝は所定間隔で直線状に平行に延びる溝であることを特徴とする光シート体。
【請求項28】
請求項1ないし27のうちのいずれかの項において、
前記本体シートは矩形形状のものであることを特徴とする光シート体。
【請求項29】
請求項28に記載の光シート体を有し、
前記光導波路および前記非光導波路の両端面が、前記光シート体における長辺側の両端面、あるいは短辺側の両端面に位置していることを特徴とする光カード。
【請求項30】
請求項28に記載の光カードと、
磁気記憶部と
を有していることを特徴とする複合メモリカード。
【請求項31】
請求項28に記載の光カードと、
ICメモリチップと
を有していることを特徴とする複合メモリカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−39974(P2006−39974A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−219453(P2004−219453)
【出願日】平成16年7月28日(2004.7.28)
【出願人】(591236172)株式会社ハタ研削 (20)
【出願人】(591018327)株式会社ヱムパイヤ・エアポート・サービス (1)
【Fターム(参考)】