説明

光ディスク装置、フォーカスオフセット調整方法

【課題】PRML方式の再生機能を利用して、簡単な構成により、フォーカスの最適点に精度良く調整することを可能にする。
【解決手段】光ディスク装置は、光ピックアップヘッド11から出力された信号が、RFアンプ13、A/Dコンピュータを介して信号処理部14に入力される。信号処理部14は、等化誤差生成回路によって入力された信号に対してPRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により信号処理し、この信号をもとにして等化誤差信号を生成して制御器18に出力する。制御器18は、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値をもとにして、光ピックアップヘッド11のフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに記録された信号をPRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により再生する光ディスク装置、及び光ディスク装置のフォーカスオフセット調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置は、光ピックアップから光スポットを光ディスクのトラックに最適な状態でフォーカシングさせるために、例えば、フォーカスオフセットを再生信号(RF信号)の振幅が最大となるように調整している。このフォーカスオフセットを調整する処理をフォーカスオフセット調整処理という。これにより、レンズや光ピックアップ等の構成にバラツキがあったとしても、フォーカスオフセットを調整することで、光ディスクからの反射光を効率よく受光することができる。
【0003】
しかし、ディスクが高記録密度化されて、ディスク上でのピットが短く、またピット間の間隔が短くなると、ディスクから読み取られるRF信号の振幅が減衰する。このため、フォーカスオフセットの調整に対して、RF信号の振幅が敏感に反応しなくなり、RF信号が最大振幅となる最適のフォーカスオフセットを検出することが困難となる。
【0004】
従来では、ディスクを高密度化した場合において、エラーの少ない安定した記録再生を実現するために、パーシャルレスポンス(PR)処理後の信号を利用してフォーカスオフセット調整をする装置が特許文献1に開示されている。
【0005】
特許文献1に記載された装置では、光ディスクから検出された再生信号をデジタルデータに変換し、このデータをパーシャルレスポンス(PR)処理し、PR処理後の信号の品位を示す度数分布をもとめ、この度数分布からPR処理後の信号の分散値を求める。そしてこの装置は、分散値が極小となるときのフォーカスオフセット値によりフォーカスを調整する。
【0006】
また、PRML処理を用いてフォーカスオフセット量を調整する光ディスク装置が特許文献2に開示されている。
【0007】
特許文献2に記載された光ディスク装置は、PRML信号処理により復号された信号を用いて適応的に制御される適応等化器を設け、この適応等化器の制御結果を用いてサーボオフセットの最適点を求めて、サーボオフセットの設定値を変更する。フォーカスオフセットが最適点からずれている場合、光ディスクの情報記録面でのビームの強度分布が歪み、ビームの強度分布が広がる。ビームの強度分布が広がると再生信号中の高周波数成分が減少するため、適応等化器は、フォーカスオフセットが最適点からずれていることに起因して失われた高周波数成分を取り戻すような等化器特性になるよう制御される。
【特許文献1】特開2002−319231号公報
【特許文献2】特開2004−152445号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように特許文献1に記載された装置では、パーシャルレスポンス(PR)処理後の信号を用いて度数分布と分散値を求めるなど、数値的な統計量によって制御を行うため、比較的複雑な統計処理を実行することができるハードウェアあるいはソフトウェアが必要となり、装置構成を簡単にすることが困難となっている。
【0009】
また、特許文献2に記載された装置では、PRML信号処理により復号された信号を用いて適応的に制御される適応等化器を設け、この適応等化器の制御結果を用いてサーボオフセットの最適点を求める必要がある。この場合、適応等化器の等化係数を用いてフォーカスオフセットの最適点が求められるため、比較的複雑な処理が必要となる。
【0010】
本発明の課題は、PRML方式の再生機能を利用して、簡単な構成により、フォーカスの最適点に精度良く調整することが可能な光ディスク装置、フォーカスオフセット調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態における光ディスク装置は、光ディスクに光ビームを照射し、その反射光を受光して前記反射光に応じた信号を出力する光ピックアップと、前記光ピックアップから出力された信号に対して、PRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により信号処理するPRML処理手段と、前記PRML処理手段により処理された信号と、前記光ピックアップから出力された信号との差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定手段と、前記フォーカスオフセット設定手段により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の実施形態における光ディスク装置は、光ディスクに光ビームを照射し、その反射光を受光して前記反射光に応じた信号を出力する光ピックアップと、前記光ピックアップから出力された信号を波形等化する等化手段と、前記等化手段により等化された信号に対して、PRML方式により信号処理するPRML処理手段と、前記PRML処理手段により処理された信号をもとに理想波形の信号を発生する理想波形発生手段と、前記理想波形発生手段により発生された信号と、前記等化手段により波形等化された信号との差分値を検出する差分手段と、前記差分手段により検出された差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定手段と、前記フォーカスオフセット設定手段により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御手段とを具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ディスク装置によれば、PRML方式による再生機能を利用して、PRML処理された理想的な信号と実際に検出された信号との差分(等化誤差)をもとにしてフォーカスオフセット値を設定することで、簡単な構成により、フォーカスの最適点に精度良く調整することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本実施形態における光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0016】
記録媒体としての光ディスク10は、表面にスパイラル状のトラックが形成されており、スピンドルモータ22によって回転駆動される。光ディスク10に対する情報の記録、再生は、光ピックアップヘッド(PUH)11から出力されるレーザ光によって行われる。
【0017】
光ピックアップヘッド11には、レーザダイオード、コリメータレンズ、ビームスプリッタ、対物レンズ、シリンカドリカルレンズ、フォトディテクタ、レンズポジションセンサ等が含まれている。
【0018】
レーザダイオードは、レーザ制御部(図示せず)による駆動制御によりレーザ光を出力する。レーザダイオードから出力されたレーザ光は、コリメータレンズ、ビームスプリッタ、対物レンズを介して光ディスク10上に照射される。光ディスク10からの反射光は、対物レンズ、ビームスプリッタ、及びシリンカドリカルレンズを介して、フォトディテクタに導かれる。フォトディテクタは、例えば4分割の光検出セルから成り、これら光検出セルの検知信号をRFアンプ13に出力する。
【0019】
RFアンプ13は、PUH11からの信号を処理して出力するもので、レーザ光のビームスポット中心とトラック中心との誤差を示すトラッキングエラー信号、ジャストフォーカスからの誤差を示すフォーカスエラー信号、例えばPUH11の4分割の光検出セルから出力される信号を加算した全加算信号(RF信号)などを生成して出力する。RFアンプ13により生成されたRF信号は、信号処理部14、振幅測定器16、及びシンメトリ検出器17に出力される。
【0020】
信号処理部14には、RFアンプ13から出力された信号に対する各種処理を行う機能が設けられている。信号処理部14に含まれる機能には、RFアンプ13から出力されたRF信号に対してPRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により信号処理して再生信号を出力する機能が含まれている。また、信号処理部14には、PRML処理された信号を利用してフォーカスオフセット値を調整するために等化誤差生成回路が設けられている。等化誤差生成回路は、PRML処理された信号とRFアンプ13から出力されたRF信号との差分を示す信号(等化差分値)を出力する。詳細については後述する(図2参照)。
【0021】
復調器15は、信号処理部14においてPRML処理された信号を復調して出力する。
【0022】
振幅測定器16は、RFアンプ13から出力されるRF信号の振幅を測定し、その振幅値を制御器18に出力する。
【0023】
シンメトリ検出器17は、RFアンプ13から出力されるRF信号に基づきシンメトリ値を検出する。シンメトリ検出器17は、ACカップリングされた後のRF信号のトップピーク値A及びボトムピーク値Bを検出し、これらに基づいてシンメトリ値βを次式に基づいて検出する。A,Bの値は、無信号時のレベルを0として測定する。シンメトリ検出器17により検出されるシンメトリ値は、後述する第4実施形態におけるフォーカスオフセット調整処理において用いられる。
【0024】
β=(A+B)/(A−B)
なお、シンメトリ検出器17に代わって、β値やγ値を検出する検出器を置き、シメントリ値の代わりにβ値やγ値を、後述する第4実施形態におけるフォーカスオフセット調整処理に用いてもよい。つまり、シメントリ値やβ値やγ値のような記録パワー値特性を用いることでいずれの場合も同様の処理が可能である。以下では、図1の構成に基づきシメントリ値を用いた場合について説明する。
【0025】
RFアンプ13から出力されるトラッキングエラー信号及びフォーカスエラー信号は、スピンドルモータ22、スレッドモータ(図示せず)、フォーカス駆動機構23を制御するためのサーボ制御回路(図示せず)に供給される。
【0026】
サーボ制御回路は、フォーカスエラー信号に応じて、DSP(Digital Signal Processor)21によりフォーカス駆動機構23を駆動させて、光ピックアップヘッド11から出力されるレーザ光が光ディスク10の記録膜上にジャストフォーカスとなるようにフォーカスサーボを実行する。
【0027】
また、サーボ制御回路は、RFアンプ13から出力されるトラッキングエラー信号に応じて、DSP21によりトラッキングアクチュエータおよび/またはスレッドモータを駆動させて、光ピックアップヘッド11から出力されるレーザ光が光ディスク10上に形成されたトラック上を常にトレースするようにトラッキングサーボを実行する。
【0028】
DSP21は、サーボ制御回路の制御のもとで、光ディスク10を回転させるスピンドルモータ22、光ピックアップヘッド11を半径方向(トラッキング方向)に移動させるスレッドモータ、及び光ピックアップヘッド11の対物レンズをフォーカシング方向(レンズの光軸方向)およびトラッキング方向(光ディスクの半径方向)に移動させるフォーカス駆動機構23を駆動する。
【0029】
制御器18は、メモリ19内のRAMを作業エリアとして使用して装置全体を総合的に制御するもので、メモリ19内のROMに記録されたプログラムに基づいて各部を制御する。制御器18は、メモリ19に記憶されたフォーカスオフセット調整プログラムを実行することで、信号処理部14から出力される等化誤差値を用いたフォーカスオフセット調整(フォーカスオフセット調整処理)を実行する。制御器18は、フォーカスオフセット調整処理を実行する場合、フォーカスオフセット値を所定量ずつ更新しながら、各フォーカスオフセット値と、各フォーカスオフセット値の時に信号処理部14から出力される等化誤差(差分値)とを対応付けて記憶するための等化誤差リストをメモリ19に記録する。
【0030】
図2には、信号処理部14における等化誤差生成回路の詳細な構成を示している。
図2に示すように、等化誤差生成回路には、等化器30、PRML処理器31、理想波形発生器32、差分器33、及び絶対値平均器34が含まれている。
等化器30は、光ピックアップヘッド11から出力された信号を、RFアンプ13、A/Dコンバータ(図示せず)を介して入力し、A/Dコンバータによりデジタル化されたRF信号に対して符号間干渉を取り除き、SN比を改善するための波形等化処理を行う。
【0031】
PRML処理器31は、等化器30によって波形等化された信号に対して、PRML方式により信号処理するもので、再生信号と目標信号を比較しながら、最も確からしいビット列に2値化する。
【0032】
理想波形発生器32は、PRML処理器31により処理された信号をもとに理想波形の信号を発生して出力する。
【0033】
差分器33は、PRML処理器31によってPRML処理された信号と、等化器30により波形等化された後の信号との差分値を検出し、その差分値を表す信号を出力する。
【0034】
絶対値平均器34は、差分器33から出力される信号の電圧値の絶対値を平均化して出力する。なお、絶対値平均器34は、電圧値の絶対値を平均化して出力する他に、電圧値を2乗平均化して出力するようにしても良い。以下、絶対値平均器34から出力される信号を等化誤差信号として説明する。
【0035】
等化誤差とは、PRMLの原理に従い入力波形から最も可能性の高いデータ系列を推測し、その推測データ系列から理想的な入力波形を発生し、現実波形(入力波形)との誤差を求めたものである。制御器18は、絶対値平均器34から出力される等化誤差信号が示す等化誤差値(差分値)をもとにして、フォーカスオフセット値を設定し、フォーカス駆動機構23の駆動を制御するためのフォーカスオフセット制御信号をDSP21に対して出力する。
【0036】
次に、フォーカスオフセット値に対する等化誤差値とRF信号の振幅の関係について図3を参照しながら説明する。
RF信号の振幅は、光ディスク10が高密度化されることにより、光ディスク10から検出されるRF信号の振幅が小さくなるため、フォーカスオフセット値の変化に対して敏感に反応しなくなる。従って、図3に示すように、フォーカスオフセット値のある程度の範囲において、RF信号の振幅が大きくなる。このRF信号の振幅が大きくなる範囲でフォーカスオフセット値を設定した場合、必ずしも最適なフォーカスオフセット値とはならない。
【0037】
これに対して、等化誤差値は、フォーカスオフセット値の変化に対して、RF信号よりも変化が大きい。すなわち、フォーカスオフセット値の変化に対する応答の感度が高い。従って、等化誤差値をもとにしてフォーカスオフセット値を求めることで、簡単な構成により、フォーカスの最適点に精度良く調整することが可能となる。
【0038】
等化誤差値が最も低い時のフォーカスオフセット値を理想的なフォーカスオフセット値とするが、必ずしも、理想的なフォーカスオフセット値を求める必要はない。以下の説明では、理想的なフォーカスオフセット値に近い、光ディスク装置に要求される精度のフォーカスオフセット値が設定できれば良いものとする。この理想的なフォーカスオフセット値に近いフォーカスオフセット値を最適なフォーマット値として説明する。
【0039】
次に、本発明の実施形態における光ディスク装置のフォーカスオフセット調整処理について説明する。
【0040】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について、図4に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0041】
第1実施形態のフォーカスオフセット調整処理は、フォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ変化させて、等化誤差値の直前の値との差分が減少する方向を判別し、その方向で誤差絶対値が所定値より小となったフォーカスオフセット値を求める。
【0042】
まず、制御器18は、フォーカスオフセット値をRFアンプ13から出力されるRF信号をもとに調整する(ステップA1)。
【0043】
例えば、制御器18は、振幅測定器16によって測定されるRF信号の振幅値が所定値を超えるまで、サーボ制御回路(図示せず)によりフォーカスサーボ及びトラッキングサーボを実行する。そして、振幅測定器16により測定されるRF信号の振幅が予め設定された所定値より大きくなった場合に、制御器18は、この時のフォーカスオフセット値を設定する。なお、RF信号の振幅を判定するための所定値は、信号処理部14における等化誤差信号の生成に必要な振幅の信号が得られたことを判別される値に設定されるものとする。
【0044】
また、例えば、制御器18は、最適のフォーカスオフセット値が確実に含まれるように予め設定している範囲の上限あるいは下限のフォーカスオフセット値を設定するようにしても良い。この場合、RF信号の振幅が信号処理部14における等化誤差信号の生成に必要な振幅となっていなくても良い。また、最適のフォーカスオフセット値が確実に含まれるように予め設定される範囲は、後述する処理の時間を短くするため、狭くする方が好ましい。
【0045】
制御器18は、RF信号をもとに調整されたフォーカスオフセット値に応じて、フォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力する。DSP21は、制御器18からのフォーカスオフセット制御信号に応じたフォーカスオフセットを加えて、フォーカス駆動機構23を駆動してフォーカスを調整する。
【0046】
信号処理部14は、RFアンプ13から出力されるRF信号に対して、等化誤差生成回路により等化誤差信号を生成して、制御器18に出力する。制御器18は、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値を、その時のフォーカスオフセット値と対応付けてメモリ19に記録する(ステップA2)。
【0047】
図5には、等化誤差値とフォーカスオフセット値とを対応付けて記憶するための等化誤差リスト19aを示している。等化誤差リスト19aには、フォーカスオフセット値と、同フォーカスオフセット値を用いてフォーカス調整された時に信号処理部14により検出される等化誤差値とが、順次、対応付けて記憶される。
【0048】
以下、制御器18は、ステップA1において設定された初期のフォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新しながら、更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時に検出される各等化誤差値を等化誤差リスト19aに記録していく。
【0049】
ここでは、例えば制御器18は、フォーカスオフセット値を所定量、増加させるものとする(ステップA3)。制御器18は、フォーカスオフセット値を更新した時に、信号処理部14から出力される等化誤差信号が示す等化誤差値を、フォーカスオフセット値と対応付けて等化誤差リスト19aに記録する(ステップA4)。
【0050】
なお、フォーカスオフセット値を更新するための所定値は、等化誤差値をもとにして最適なフォーカスオフセット値を判定することができる分解能が得られる値が予め設定されているものとする。所定量を小さくすることで、最適なフォーカスオフセット値を正確に求めることができるが、処理時間が長くなる。従って、必要以上の分解能が得られるように所定量を決めることにより処理時間の遅延を招かないように、光ディスク装置に必要とされる精度で最適なフォーカスオフセット値が検出されるように所定量(分解能)が決められるものとする(以下に説明する第2〜第5実施形態も同じ)。
【0051】
制御器18は、等化誤差リスト19aに等化誤差値を記録すると、直前に等化誤差リスト19aに記録された等化誤差値との差分を演算して求める(ステップA5)。この時、等化誤差値が減少している場合、等化誤差値の差分の符号を負(マイナス)とする。
【0052】
次に、制御器18は、等化誤差値が予め設定された所定値(以下、誤差判定値と称する)より小さくなっているかを判別する(ステップA6)。
【0053】
図3に示すように、等化誤差値が最も低い時のフォーカスオフセット値を理想的なフォーカスオフセット値としている。誤差判定値は、理想的なフォーカスオフセット値に近い最適なフォーカスオフセット値を判定することが可能な値に設定されているものとする。すなわち、等化誤差値の最低値を必ずしも判別する必要はなく、光ディスク装置に要求される精度のフォーカスオフセット値に対応する等化誤差値が判別できれば良い。
【0054】
ここで、等化誤差値が誤差判定値より小さくない場合(ステップA6、No)、制御器18は、差分の符号が正(プラス)であるか判別する。
【0055】
差分の符号が正でない場合(ステップA7、No)、制御器18は、ステップA3に戻り、フォーカスオフセット値を所定量更新して(ステップA3)、前述と同様の処理を実行する(ステップA4〜A7)。すなわち、フォーカスオフセット値の更新に伴って等化誤差値が減少している場合には、最適なフォーカスオフセット値に近づくように、フォーカスオフセット値を更新していることになるので、同じ処理を継続して実行する。
【0056】
これに対し、差分の符号が正であった場合(ステップA7、Yes)、フォーカスオフセット値の更新に伴って等化誤差値が増加していることになる。すなわち、フォーカスオフセット値を所定量ずつ更新することにより、最適なフォーカスオフセット値から離れていることになる。この場合、制御器18は、フォーカスオフセット値を更新する方向を逆転する(ステップA8)。前述した説明ではフォーカスオフセット値を増加させる方向に更新しているため、ここではフォーカスオフセット値を所定量ずつ減少させるようにする。これにより、フォーカスオフセット値を更新することにより、最適なフォーカスオフセット値に近づくことになる。
【0057】
制御器18は、ステップA3に戻り、フォーカスオフセット値を所定量更新して(ステップA3)、前述と同様の処理を実行する(ステップA4〜A7)。
【0058】
この結果、誤差判定値より小さい等化誤差値が判定された場合(ステップA6、Yes)、制御器18は、等化誤差値が誤差判定値よりも小さいと判定された時のフォーカスオフセット値を、フォーカス制御に用いるフォーカスオフセット値として設定する(ステップA9)。これにより、フォーカスオフセット調整処理を終了する。
【0059】
制御器18は、フォーカスオフセット調整処理により設定されたフォーカスオフセット値に応じたフォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力し、光ピックアップヘッド11に対するフォーカスを制御する。
【0060】
このようにして、第1実施形態のフォーカスオフセット調整処理では、フォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新しながら、信号処理部14から出力される等化誤差値をもとにして最適なフォーカスオフセット値を求める。これにより、PRML方式の再生機能を利用して、簡単な構成により、フォーカスの最適点に精度良く調整することが可能となる。この際、フォーカスオフセット値の更新により等化誤差値が良い方向に変化する場合、すなわち等化誤差が減少する場合には、その方向でフォーカスオフセット値の更新を適用し、悪い方向に変化する場合、すなわち等化誤差値が増加する場合には、フォーカスオフセット値を更新する方向を逆転させることで、良い方向に変化するようにする。第1実施形態では、最初に設定されるフォーカスオフセット値から所定量を増加あるいは減少の何れの方向で行っても、最適なフォーカスオフセット値を設定することが可能となる。そして、フォーカスオフセット値の変更に対して感度が高い等化誤差値のみを用いて最適なフォーカスオフセット値を設定するので、設定を誤る可能性を低減できる。
【0061】
なお、この第1実施形態の処理では、何度測定しても等化誤差値が所定値より小さくならない場合が考えられる。この状況を想定し以下の処置を併用する。図4の処理を実施する時間を計測し、所定の時間内に処理(フォーカスオフセットの設定)が終了しなかった場合には処理を強制的に終了する。あるいはステップA8を通過する回数をカウントし、これが所定回数(例えば2回)以上となった場合に処理を強制停止する。そして停止後測定済みのリストから最も等化誤差が小さくなるフォーカスオフセット値を最終的な設定値とする。
【0062】
なお、前述した説明では、ステップA3において、フォーカスオフセット値を更新する所定値を一定としているが、この所定値を処理途中で変更するようにしても良い。例えば、処理のはじめの段階では、比較的、更新量を大きくする。そして、ステップA5において求められる等化誤差値の差分値が、予め決められた基準値以下となった場合に、更新量を小さくする。また、更新量は、複数段階で変更するようにしても良い。こうして、フォーカスオフセット値を更新する所定値を段階的に変更することで、処理時間を必要以上に長くすることなく、かつ光ディスク装置に必要とされる精度で最適なフォーカスオフセット値を検出することが可能となる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について、図6に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0064】
第2実施形態のフォーカスオフセット調整処理は、フォーカスオフセット値を初期値から所定量ずつ所定回数変化させて、各フォーカスオフセット値の時の等化誤差値を検出し、その中から等化誤差値が最小となるフォーカスオフセット値を求めて設定する。
【0065】
まず、制御器18は、フォーカスオフセット値を調整開始値(初期値)に調整する(ステップB1)。
【0066】
例えば、制御器18は、最適のフォーカスオフセット値が確実に含まれるように予め設定している範囲の上限あるいは下限のフォーカスオフセット値を設定するようにしても良い。この場合、最適のフォーカスオフセット値が確実に含まれるように予め設定される範囲は、後述する処理の時間を短くするため、狭くする方が好ましい。
【0067】
ここでは、最適のフォーカスオフセット値が確実に含まれるように設定された範囲の下限値を調整開始値として設定したものとする。
【0068】
制御器18は、調整開始値(初期値)に調整されたフォーカスオフセット値に応じて、フォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力する。DSP21は、制御器18からのフォーカスオフセット制御信号に応じたフォーカスオフセットを加えて、フォーカス駆動機構23を駆動してフォーカスを調整する。
【0069】
信号処理部14は、RFアンプ13から出力されるRF信号に対して、等化誤差生成回路により等化誤差信号を生成して、制御器18に出力する。制御器18は、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値を、その時のフォーカスオフセット値と対応付けてメモリ19(等化誤差リスト19a)に記録する(ステップB2)。
【0070】
ここで、制御器18は、ステップB1において設定された初期のフォーカスオフセット値を所定量更新する(ステップB3)。前述した説明では、フォーカスオフセット値の調整開始値を、最適なフォーカスオフセット値を含む範囲の下限値に設定しているので、制御器18は、フォーカスオフセット値を所定量、増加させる方向で更新する。
【0071】
ここで、制御器18は、フォーカスオフセット値に対する更新回数が予め設定された所定回数に到達したかを判別する。すなわち、最適なフォーカスオフセット値を含む範囲の下限値から上限値まで、フォーカスオフセット値を所定量更新しながら、各フォーカスオフセット値に対応する等化誤差値の検出を完了したか判定する。
【0072】
所定回数の更新が完了していない場合(ステップB4、No)、制御器18は、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値を、その時のフォーカスオフセット値と対応付けてメモリ19(等化誤差リスト19a)に記録する(ステップB2)。
【0073】
以下、同様にして、フォーカスオフセット値に対する更新回数が所定回数となるまで、フォーカスオフセット値を所定量ずつ更新しながら、各フォーカスオフセット値によりフォーカスを制御した時に信号処理部14から出力される等化誤差値を、フォーカスオフセット値と対応付けて等化誤差リスト19aに記録する(ステップB2〜B4)。
【0074】
そして、所定回数の更新が完了すると(ステップB4、Yes)、制御器18は、等化誤差リスト19aから最小の等化誤差値を選択し、この等化誤差値に対応するフォーカスオフセット値を、フォーカス制御に用いるフォーカスオフセット値として設定する(ステップB5)。これにより、フォーカスオフセット調整処理を終了する。
【0075】
制御器18は、フォーカスオフセット調整処理により設定されたフォーカスオフセット値に応じたフォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力し、光ピックアップヘッド11に対するフォーカスを制御する。
【0076】
このようにして、第2実施形態の光ディスク装置では、フォーカスオフセット値を予め決められた値だけ、予め決められた回数に分けて段階的に変化させ、各フォーカスオフセット値において検出される等化誤差値を等化誤差リスト19aに記録しておき、全ての等化誤差値から最も良好な(最小値の)等化誤差値に対応するフォーカスオフセット値を選択することができる。第2実施形態のフォーカスオフセット調整処理では、フォーカスオフセット値に対して所定回数のみ更新を行うので、常に同じ時間で処理を完了させることができる。
【0077】
なお、前述した説明では、フォーカスオフセット値を所定量ずつ増加させるものとして説明しているが、フォーカスオフセット値を所定量ずつ減少させる方向で更新するようにしても良い。
【0078】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について、図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0079】
第3実施形態のフォーカスオフセット調整処理は、フォーカスオフセット値を初期値から所定量ずつ所定回数変化させてそれぞれの等化誤差値を検出していき、等化誤差値の変化が悪化した時点のフォーカスオフセット値を求めて設定する。
【0080】
なお、図7のフローチャートに示すステップC1〜C3は、第2実施形態で説明した図6に示すフローチャートのステップB1〜B3と同様の処理を実行するものとして説明を省略する。
【0081】
制御器18は、フォーカスオフセット値を更新すると(ステップC3)、その時に、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値を、その時のフォーカスオフセット値と対応付けてメモリ19(等化誤差リスト19a)に記録する(ステップC4)。
【0082】
制御器18は、等化誤差リスト19aに等化誤差値を記録すると、直前に等化誤差リスト19aに記録された等化誤差値との差分を演算して求める(ステップC5)。この時、等化誤差値が減少している場合、等化誤差値の差分の符号を負(マイナス)とする。
【0083】
ここで、制御器18は、差分の符号が正(プラス)であるか判別する。差分の符号が正でない場合(ステップC6、No)、制御器18は、ステップC3に戻り、フォーカスオフセット値を所定量更新して(ステップC3)、前述と同様の処理を実行する(ステップC4〜C6)。すなわち、フォーカスオフセット値の更新に伴って等化誤差値が減少している場合には、最適なフォーカスオフセット値に近づくように、フォーカスオフセット値を更新していることになるので、同じ処理を継続して実行する。
【0084】
これに対し、差分の符号が正であった場合(ステップC6、Yes)、フォーカスオフセット値の更新に伴って等化誤差値が増加していることになる。すなわち、フォーカスオフセット値を所定量ずつ更新することにより、最適なフォーカスオフセット値を超えたことになる。
【0085】
制御器18は、等化誤差値の差分の符号が正となった時のフォーカスオフセット値を、フォーカス制御に用いるフォーカスオフセット値として設定する(ステップC7)。これにより、フォーカスオフセット調整処理を終了する。
【0086】
制御器18は、フォーカスオフセット調整処理により設定されたフォーカスオフセット値に応じたフォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力し、光ピックアップヘッド11に対するフォーカスを制御する。
【0087】
このようにして、第3実施形態のフォーカスオフセット調整処理では、フォーカスオフセット値を更新することにより等化誤差値が悪化(増加)する場合には、その時点で処理を終了して、フォーカスオフセット値を設定することで、処理時間の短縮を図ることが可能となる。
【0088】
なお、最初に等化誤差値を増加させる方向でフォーカスオフセット値を更新した場合には、直ちに等化誤差値の差分の符号が正と判定される。この場合には、フォーカスオフセット値に対する更新の方向を逆転させて、再度、フォーカスオフセット調整処理を開始するものとする。
【0089】
なお、フォーカスオフセット値の調整開始値は、最適なフォーカスオフセット値に近い方がより有効であり、処理時間を短縮できる可能性が高くなる。
【0090】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について、図8に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0091】
第4実施形態のフォーカスオフセット調整処理は、シンメトリ値を利用してフォーカスオフセット値を更新する変化方向(増加または減少)を決定し、その方向でフォーカスオフセット値を変化させながら等化誤差値が最小となるフォーカスオフセット値を求めて設定する。
【0092】
まず、制御器18は、フォーカスオフセット値を調整開始値(初期値)に調整する(ステップD1)。第4実施形態では、フォーカスオフセット値の調整開始値(初期値)は、フォーカスオフセット調整処理を実行する度に、任意に設定することができる。
【0093】
制御器18は、調整開始値(初期値)に調整されたフォーカスオフセット値に応じて、フォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力する。DSP21は、制御器18からのフォーカスオフセット制御信号に応じたフォーカスオフセットを加えて、フォーカス駆動機構23を駆動してフォーカスを調整する。
【0094】
シンメトリ検出器17は、RFアンプ13から出力されるRF信号に対するシンメトリ値を検出して、制御器18に出力する(ステップD2)。なお、ここでは3T以上のシンメトリ値が用いられるものとする。
【0095】
制御器18は、フォーカスオフセット値を調整開始値に設定した時に検出されるシンメトリ値と、予め設定された基準値とを比較して、何れの値が大きいかを判別する。ここで、予め設定される基準値は、最良のフォーカスオフセット値とした時に検出されると想定されるシンメトリ値を示している。
【0096】
図9には、フォーカスオフセット値に対する等化誤差値とシンメトリの関係を示している。図9において、シンメトリのA点に示す値が基準値として設定されているものとする。
【0097】
ここで、制御器18は、調整開始値におけるシンメトリ値と基準値とを比較した結果、調整開始値におけるシリアル値の方が大きいと判定したしたとする。この場合、制御器18は、シンメトリ値を基準値に近づけるために、フォーカスオフセット値を増加させる方向で更新するように設定する。
【0098】
例えば、図9に示すように、シンメトリのB点に対応するフォーカスオフセット値が調整開始として設定されている場合、B点のシンメトリ値の方がA点のシンメトリ値(基準値)よりも大きい。この場合、調整開始値から増加する方向へのフォーカスオフセット値を更新することで、最良のフォーカスオフセット値に近づけることができる。
【0099】
逆に、図9に示すように、シンメトリのC点に対応するフォーカスオフセット値が調整開始として設定されている場合、C点のシンメトリ値の方がA点のシンメトリ値(基準値)よりも小さい。この場合、調整開始値から減少する方向へのフォーカスオフセット値を更新することで、最良のフォーカスオフセット値に近づけることができる。
【0100】
制御器18は、調整開始値のシンメトリ値と基準値との比較によって、フォーカスオフセット値を変化させる方向(増加、減少)を判別すると、その方向でフォーカスオフセット値を更新させながら等化誤差値をもとにして最適なフォーカスオフセット値を設定する(ステップD5)。なお、ステップD5における処理は、第2実施形態または第3実施形態において説明したフォーカスオフセット調整処理と同様にして実行することが可能であるため、詳細な説明については省略する。
【0101】
このようにして、等化誤差値だけではフォーカスオフセット値の設定の良し悪しを評価するだけであるのに対して、シンメトリ値を利用することで、最適なフォーカスオフセット値に近づけることができる更新方向(増加あるいは減少)を判別することができる。
【0102】
シンメトリ値を用いることで、フォーカスオフセット値を更新する方向を簡単に判別することができるので、フォーカスオフセット値の調整開始値(初期値)が任意に設定されるとしても、フォーカスオフセット調整処理を速やかに実行することができる。
【0103】
図10は、フォーカスオフセット調整処理を利用した記録処理を説明するためのフローチャートである。
【0104】
図10に示す記録処理では、例えば図11に示すように、光ディスク10に対して所定範囲の領域に対してデータを記録すると(ステップE1)(図11(1))、この記録済みの領域の一部からデータを読み取る(ステップE2)(図11(2))。そして、記録済みの領域に対する読み取り結果をもとにして、次の所定範囲の領域に対する記録の調整(例えば、記録パワーの調整、ストラテジの変更等)を実行する。
【0105】
こうした、記録処理において、記録済みの領域の読み取りを行う際に(図11(2)(4)(6)…)、フォーカスオフセット調整処理を実行して、フォーカス制御を行う。これにより、最適なフォーカスでデータの読み取りが可能となる。
【0106】
一般に、光ディスク10に対してデータを記録する場合、シンメトリチェックが行われる。従って、シンメトリチェックのために検出されるシンメトリ値を利用して、前述したフォーカスオフセット調整処理を短時間で行うことができる。このため、図11に示すような、データの記録と読み取りを繰り返して行う記録処理において、全体の処理時間の短縮を図ることができる。
【0107】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について、図12に示すフローチャートを参照しながら説明する。
第5実施形態のフォーカスオフセット調整処理は、RF信号の振幅が所定値より大きくなった範囲でフォーカスオフセット値を所定量変化させながら最小となるフォーカスオフセット値を求めて設定する。
【0108】
まず、制御器18は、フォーカスオフセット値を調整開始値(初期値)に調整する(ステップF1)。
【0109】
制御器18は、調整開始値(初期値)に調整されたフォーカスオフセット値に応じて、フォーカスオフセット制御信号をDSP21に出力する。DSP21は、制御器18からのフォーカスオフセット制御信号に応じたフォーカスオフセットを加えて、フォーカス駆動機構23を駆動してフォーカスを調整する。
【0110】
振幅測定器16は、RFアンプ13から出力されるRF信号の振幅を測定して、制御器18に出力する(ステップF2)。
【0111】
制御器18は、振幅測定器16により測定されたRF信号の振幅が、予め設定され所定値より大きいかを判別する。ここで、RF信号の振幅が所定値より大きくない場合(ステップF3、No)、制御器18は、フォーカスオフセット値を所定量更新する。フォーカスオフセット値を増加あるいは減少させる何れの方向で更新するかは、第4実施形態の方法を用いて判定するようにしても良い。
【0112】
なお、フォーカスオフセット値を更新する所定量は、後述するステップF6においてフォーカスオフセット値を更新するための所定量と異なっていても良い。例えば、ステップF6において用いる所定量よりも大きな値とする。すなわち、等化誤差値が安定して出力される状態となったことをRF信号の振幅によって判別するための処理であるので、処理時間を長くする精度の高い調整が不要である。
【0113】
以下、同様にして、制御器18は、振幅測定器16によって測定されるRF信号の振幅値が所定値より大きくなるまで、フォーカスオフセット値を更新する。そして、振幅測定器16により測定されるRF信号の振幅が所定値より大きくなった場合に(ステップF3、Yes)、制御器18は、信号処理部14から出力された等化誤差信号が示す等化誤差値を、その時のフォーカスオフセット値と対応付けてメモリ19(等化誤差リスト19a)に記録する(ステップF5)。
【0114】
以下、ステップF5〜F8の処理については、第2実施形態において説明した図6に示すフローチャートのステップB2〜B5と同様の処理を実行するものとして詳細な説明を省略する。
【0115】
このようにして、第5実施形態におけるフォーカスオフセット調整処理では、RF信号が所定値より大きくなり、等化誤差値が正しく得られる状態となってから、等化誤差値をもとにしたフォーカスオフセット値の調整を行うことができる。これにより、最適なフォーカスオフセット値を求めるために有効な範囲のみを対象として処理することになり、無駄な処理時間を低減することができる。
【0116】
なお、第5実施形態においても、第4実施形態で説明したシンメトリを用いた処理が可能である。
【0117】
また、ステップF7において所定回数の更新が終了したと判別された場合に、フォーカスオフセット値に対する更新を終了しているが、フォーカスオフセット値に対する更新によって、振幅測定器16により測定されるRF信号の振幅が所定値より低くなったことが検出された場合に、フォーカスオフセット値に対する更新を終了するようにしても良い。
【0118】
さらに、上記実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の実施形態における光ディスク装置の構成を示すブロック図。
【図2】本実施形態における信号処理部14における等化誤差生成回路の詳細な構成を示す図。
【図3】フォーカスオフセット値に対する等化誤差値とRF信号の振幅の関係について説明するための図。
【図4】第1実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について説明するためのフローチャート。
【図5】等化誤差値とフォーカスオフセット値とを対応付けて記憶するための等化誤差リスト19aを説明するための図。
【図6】第2実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について説明するためのフローチャート。
【図7】第3実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について説明するためのフローチャート。
【図8】第4実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について説明するためのフローチャート。
【図9】フォーカスオフセット値に対する等化誤差値とシンメトリの関係を説明するための図。
【図10】本実施形態におけるフォーカスオフセット調整処理を利用した記録処理を説明するためのフローチャート。
【図11】記録処理を説明するための図。
【図12】第5実施形態におけるフォーカスオフセット(FOF)調整処理について説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
【0120】
10…光ディスク、11…光ピックアップヘッド(PUH)、13…RFアンプ、14…信号処理部、15…復調器、16…振幅測定器、17…シンメトリ検出器、18…制御器、19…メモリ、21…DSP、22…スピンドルモータ、23…フォーカス駆動機構、30…等化器、31…PRML処理器、32…理想波形発生器、33…差分器、34…絶対値平均器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに光ビームを照射し、その反射光を受光して前記反射光に応じた信号を出力する光ピックアップと、
前記光ピックアップから出力された信号に対して、PRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により信号処理するPRML処理手段と、
前記PRML処理手段により処理された信号と、前記光ピックアップから出力された信号との差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定手段と、
前記フォーカスオフセット設定手段により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御手段と
を具備したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
光ディスクに光ビームを照射し、その反射光を受光して前記反射光に応じた信号を出力する光ピックアップと、
前記光ピックアップから出力された信号を波形等化する等化手段と、
前記等化手段により等化された信号に対して、PRML(Partial Response and Maximum Likelihood)方式により信号処理するPRML処理手段と、
前記PRML処理手段により処理された信号をもとに理想波形の信号を発生する理想波形発生手段と、
前記理想波形発生手段により発生された信号と、前記等化手段により波形等化された信号との差分値を検出する差分手段と、
前記差分手段により検出された差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定手段と、
前記フォーカスオフセット設定手段により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御手段と
を具備したことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
前記差分手段により検出された差分値の絶対値平均を検出する絶対値平均手段とをさらに具備し、
前記フォーカスオフセット設定手段は、前記絶対値平均手段により検出された前記絶対値平均をもとに、フォーカスオフセット値を設定することを特徴とする請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記フォーカスオフセット設定手段は、
フォーカスオフセット値を所定値に設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたフォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新するフォーカス値更新手段と、
前記フォーカス値更新手段により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分手段により検出された各差分値を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された差分値が前記フォーカス値更新手段によりフォーカス値が更新されるのに伴って増加している場合に、前記フォーカス値更新手段によるフォーカスオフセット値を更新する方向を逆転させる更新方向逆転手段と、
前記記録手段により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記フォーカスオフセット設定手段は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定手段と、
前記設定手段により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ所定回数分更新するフォーカス値更新手段と、
前記フォーカス値更新手段により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分手段により検出された各差分値を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項6】
前記フォーカスオフセット設定手段は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定手段と、
前記設定手段により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ更新するフォーカス値更新手段と、
前記フォーカス値更新手段により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分手段により検出された各差分値を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された差分値が前記フォーカス値更新手段によりフォーカス値が更新されるのに伴って増加した場合に、この時の前記フォーカス値更新手段により更新されたフォーカスオフセット値を、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値として選択するフォーカスオフセット値選択手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項7】
前記光ピックアップから出力された信号をもとに記録パワー値特性を検出する記録パワー値特性検出手段をさらに具備し、
前記フォーカスオフセット設定手段は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたフォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記記録パワー値特性検出手段により検出される記録パワー値特性と予め設定された基準値とを比較する記録パワー値特性比較手段と、
前記比較手段による比較結果に基づいて、前記設定手段により設定されたフォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新するフォーカス値更新手段と、
前記フォーカス値更新手段により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分手段により検出された各差分値を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項8】
前記光ピックアップから出力された信号の振幅を測定する振幅測定手段とをさらに具備し、
前記フォーカスオフセット設定手段は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定手段と、
前記設定手段により設定されたフォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記振幅測定手段により測定された振幅と予め設定された基準値とを比較する振幅比較手段と、
前記振幅比較手段により前記振幅測定手段により測定された振幅が前記基準値より大きいことが判別された場合に、前記設定手段により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ所定回数分更新するフォーカス値更新手段と、
前記フォーカス値更新手段により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分手段により検出された各差分値を記録する記録手段と、
前記記録手段により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択手段とを有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の光ディスク装置。
【請求項9】
光ディスクに対する光ピックアップのフォーカスを調整するフォーカスオフセット調整方法であって、
光ピックアップから出力された信号に対して、PRML方式により信号処理するPRML処理行程と、
前記PRML処理行程により処理された信号と、前記光ピックアップから出力された信号との差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定行程と、
前記フォーカスオフセット設定行程により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御行程とを有するフォーカスオフセット調整方法。
【請求項10】
光ディスクに対する光ピックアップのフォーカスを調整するフォーカスオフセット調整方法であって、
前記光ピックアップから出力された信号を波形等化する行程と、
前記等化行程により等化された信号に対して、PRML方式により信号処理するPRML処理行程と、
前記PRML処理行程により処理された信号をもとに理想波形の信号を発生する理想波形発生行程と、
前記理想波形発生行程により発生された信号と、前記等化行程により等化された信号との差分値を検出する差分行程と、
前記差分行程により検出された差分値をもとにして、前記光ピックアップのフォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を設定するフォーカスオフセット設定行程と、
前記フォーカスオフセット設定行程により設定されたフォーカスオフセットに応じて、前記光ピックアップのフォーカスを制御するフォーカス制御行程とを有するフォーカスオフセット調整方法。
【請求項11】
前記フォーカスオフセット設定行程は、
フォーカスオフセット値を所定値に設定する設定行程と、
前記設定行程により設定されたフォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新するフォーカス値更新工程と、
前記フォーカス値更新工程により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分行程により検出された各差分値を記録する記録行程と、
前記記録行程により記録された差分値が前記フォーカス値更新行程によりフォーカス値が更新されるのに伴って増加している場合に、前記フォーカス値更新行程によるフォーカス値を更新する方向を逆転させる更新方向逆転行程と、
前記記録行程により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択行程とを含むことを特徴とする請求項10記載のフォーカスオフセット調整方法。
【請求項12】
前記フォーカスオフセット設定行程は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定工程と、
前記設定工程により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ所定回数分更新するフォーカス値更新工程と、
前記フォーカス値更新工程により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分工程により検出された各差分値を記録する記録工程と、
前記記録工程により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択工程とを含むことを特徴とする請求項10記載のフォーカスオフセット調整方法。
【請求項13】
前記フォーカスオフセット設定工程は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定工程と、
前記設定工程により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ更新するフォーカス値更新工程と、
前記フォーカス値更新工程により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分行程により検出された各差分値を記録する記録行程と、
前記記録行程により記録された差分値が前記フォーカス値更新行程によりフォーカス値が更新されるのに伴って増加した場合に、この時の前記フォーカス値更新行程により更新されたフォーカスオフセット値を、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値として選択するフォーカスオフセット値選択行程とを有することを特徴とする請求項10記載のフォーカスオフセット調整方法。
【請求項14】
前記フォーカスオフセット設定行程は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定行程と、
前記設定行程により設定されたフォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記光ピックアップから出力された信号をもとに記録パワー値特性を検出する記録パワー値特性検出行程と、
前記記録パワー値特性検出行程により検出される記録パワー値特性と予め設定された基準値とを比較する記録パワー値特性比較行程と、
前記比較行程による比較結果に基づいて、前記設定行程により設定されたフォーカスオフセット値を増加あるいは減少の何れかの方向に所定量ずつ更新するフォーカス値更新行程と、
前記フォーカス値更新行程により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分行程により検出された各差分値を記録する記録行程と、
前記記録行程により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択行程とを有することを特徴とする請求項10記載のフォーカスオフセット調整方法。
【請求項15】
前記フォーカスオフセット設定行程は、
フォーカスオフセット値を調整開始値に設定する設定行程と、
前記設定行程により設定されたフォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記光ピックアップから出力された信号の振幅を測定する振幅測定行程と、
前記振幅測定行程により測定された振幅と予め設定された基準値とを比較する振幅比較行程と、
前記振幅比較行程により前記振幅測定行程により測定された振幅が前記基準値より大きいことが判別された場合に、前記設定行程により調整開始値に設定されたフォーカスオフセット値を所定量ずつ所定回数分更新するフォーカス値更新行程と、
前記フォーカス値更新行程により更新された各フォーカスオフセット値によりフォーカスが制御された時の前記差分行程により検出された各差分値を記録する記録行程と、
前記記録行程により記録された差分値をもとに、フォーカシングに用いるフォーカスオフセット値を選択するフォーカスオフセット値選択行程とを有することを特徴とする請求項10記載のフォーカスオフセット調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−207294(P2007−207294A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−22531(P2006−22531)
【出願日】平成18年1月31日(2006.1.31)
【出願人】(504224854)東芝サムスン ストレージ・テクノロジー株式会社 (74)
【Fターム(参考)】