説明

光ディスク装置並びにトラッキングおよびスライダ制御方法

【課題】偏心量が大きい粗悪な光ディスクに対しても安定したトラッキング制御を行い得る光ディスク装置及びトラッキング制御方法を提案する。
【解決手段】光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスクの偏心量を検出し、偏心による光ディスクの変位が最大となる回転角でトラック引込みを行なうと共に、引込み時点の光ディスクの変位方向を検出し、検出した変位方向に光ディスクの偏心量又ほぼ偏心量分だけスライダを移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置並びにトラッキングおよびスライダ制御方法に関し、例えば高速記録再生や高密度記録再生を行い得る光ディスク装置に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ディスクの偏心に対するトラッキング制御は、以下のように行なわれている。
【0003】
まず、トラッキングサーボをオフした状態で光ディスクの偏心によるトラック横断周波数を検出し、トラック横断周波数が最も低くなったタイミング(偏心によりトラックが光ディスクの内周側又は外周側に最大に変位したタイミング)で、かつ対物レンズが中立位置から変位していない状態でトラッキングサーボをオンにする、いわゆるトラック引込みを行なう。
【0004】
次いで、トラッキングアクチュエータを駆動して対物レンズをトラックに追随させて光ディスクの内周方向又は外周方向に変位させるトラッキング制御を開始し、この後、光ディスクの1回転分のトラッキングアクチュエータの駆動信号の平均値に基づいてスライダを駆動することにより、対物レンズの中立位置を光ディスクの偏心によるトラックの変位の中心位置に移動させる。
【0005】
そしてこの後は、対物レンズをトラックに追随するように変位させることによりトラッキング制御を行なう。
【特許文献1】特開2005−216441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述のような従来のトラッキング制御方法によると、トラック引込み後に光ディスクが1回転以上しなければ、対物レンズの中立位置を光ディスクの偏心によるトラックの変位の中心位置に移動させるための情報を取得することができないという問題があった。
【0007】
またかかる従来のトラッキング制御方法によると、光ディスクの偏心量が対物レンズの可動範囲(対物レンズが変位することができる範囲)内に収まるものであれば実用上十分に対応することができるものの、偏心量が対物レンズの可動範囲を超えるような粗悪な光ディスクの場合には、偏心に起因する光ディスクの振れに対物レンズの変位が追随できず、トラッキング制御を行なうことができなくなる問題があった。
【0008】
このような偏心量が大きい光ディスクに対するトラッキングサーボを安定化する方法として、上記特許文献1には、回転する光ディスクに対してトラッキングサーボをオフした状態でレーザ光を照射し、このときレーザ光のスポットが横断するトラック数とその周期とに基づいて光ディスクの偏心振幅と周期とを学習して記憶しておき、トラック引込み後に、記憶したかかる偏心振幅及び周期に基づいて光ピックアップを光ディスクの偏心に同期して移動させるようにスライダを駆動する方法が開示されている。
【0009】
しなしながら、この方法によると、光ディスクの高速記録再生時やBD(Blu-ray Disc)のような高密度ディスクに対する記録再生時には、光ディスクの偏心に同期してスライダを移動させる制御と、トラッキングアクチュエータを駆動することによるトラッキング制御とを並行して行なうことは制御処理が煩雑となり、トラッキングサーボが不安定となったり、トラッキング制御を行なうコントローラに大きな負荷を与える問題があった。
【0010】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、偏心量が大きい粗悪な光ディスクに対しても安定したトラッキング制御を行い得る光ディスク装置及びトラッキングおよびスライダ制御方法を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
かかる課題を解決するため本発明においては、所定のタイミングでトラッキングサーボをオンにするようにしてトラック引込みを行い、当該トラック引込み後は対物レンズを変位させるようにしてトラッキング制御を行い、前記対物レンズの変位に基づいてディスク半径方向にスライダの移動を行うトラッキングおよびスライダ制御とを有する光ディスク装置において、前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスクの偏心量を検出するディスク回転角学習処理部と、偏心による前記光ディスク上のトラックの変位が最大となる回転角で前記トラック引込みを行なうと共に、現在(そのとき)の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させるスライダ移動処理部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明においては、所定のタイミングでトラッキングサーボをオンにするようにしてトラック引込みを行い、当該トラック引込み後は対物レンズを変位させるようにしてトラッキング制御を行い、前記対物レンズの変位に基づいてディスク半径方向にスライダの移動を行うトラッキングおよびスライダ制御方法において、前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスクの偏心量を検出する第1のステップと、偏心による前記光ディスク上のトラックの変位が最大となる回転角で前記トラック引込みを行なうと共に、引き込み時点の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる第2のステップとを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トラック引込みによりトラッキングしているトラックの変位範囲の中心位置に対物レンズを移動させることができるため、トラックに追随する対物レンズの変位が当該対物レンズの可動範囲内で行なわれる。かくするにつき、偏心量が大きい粗悪な光ディスクに対しても安定したトラッキング制御を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0015】
(1)第1の実施の形態
(1−1)本実施の形態による光ディスク装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による光ディスク装置を示す。この光ディスク装置1は、ホストコンピュータ2からの要求に応じて、光ディスク4にデータを記録し又は光ディスクに記録されたデータを再生し得るようになされている。
【0016】
実際上、この光ディスク装置1の場合、ホストコンピュータ2から送信される各種コマンドは制御回路3に与えられる。制御回路3は、CPU(Central Processing Unit)及び各種制御プログラムが格納された内部メモリを備えたマイクロコンピュータ構成でなり、ホストコンピュータ2から与えられるコマンドや光ディスク装置1内の各種回路から与えられる各種情報に基づいて必要な制御処理や演算処理を実行する。
【0017】
例えば、制御回路3は、ホストコンピュータ2から記録コマンドが与えられた場合、スピンドルモータ5を駆動することにより、所定状態に装填された光ディスク4を回転させる。このときスピンドルモータ5に取り付けられたロータリエンコーダ6は、スピンドルモータ5の出力軸が所定角度(以下、10度とする)回転するごとにパルスを発生し、これをFG(Frequency Generator)信号としてFG信号検出回路7に送出する。
【0018】
FG信号検出回路7は、供給されるFG信号を二値化し、得られた二値化FG信号を制御回路3に送出する。かくして制御回路3は、この二値化FG信号に基づいて、装填された光ディスク4を当該光ディスク4の記録方式(例えばCAV方式又はCLV方式)に応じた回転状態で回転させるように、スピンドルモータ5を制御する。
【0019】
また制御回路3は、記録コマンドと共にホストコンピュータ2から与えられる記録対象のデータ(以下、これを記録対象データと呼ぶ)を変調回路8に送出する。変調回路8は、供給される記録対象データに対して(1,7)RLL(Run Length Limited)コード、(2,7)RLLコード又は(2,10)RLLコードによる変調処理等の所定の変調処理を施し、かくして得られた変調信号をレーザパワー制御回路9に送出する。
【0020】
レーザパワー制御回路9は、供給される変調信号を増幅処理し、かくして得られた信号レベルが調整された変調信号を駆動信号として光ピックアップ10内の図示しないレーザダイオードに印加する。この結果、かかる駆動信号に基づいて空間変調されたレーザ光L1がレーザダイオードから発射され、このレーザ光L1が対物レンズ11を介して光ディスク4の記録面上に集光される。また、このとき制御回路3は、スライダ機構12を駆動することにより、光ピックアップ10が固定されたスライダを所定速度で光ディスク4の径方向に移動させる。これにより記録対象データが光ディスク4に記録される。
【0021】
さらにレーザ光L1の光ディスク4における反射光L2は、対物レンズ11を介して光ピックアップ10内の図示しないフォトディテクタに導かれ、このフォトディテクタにおいて光電変換される。そして、この光電変換により得られたRF(Radio Frequency)信号が光ピックアップ10内の図示しないアナログ・ディジタル変換回路においてディジタル変換され、かくして得られたディジタルRF信号が再生信号復調回路13に与えられる。
【0022】
再生信号復調回路13は、供給されるディジタルRF信号に対して(1,7)RLLコード、(2,7)RLLコード又は(2,10)RLLコードに対する復調処理等の所定の復調処理を施し、得られた再生データを制御回路3に送出する。かくして制御回路3は、この再生データに基づいてレーザパワー制御回路9を制御することにより、そのときの記録パワーがAPC(Auto Power Control)制御用に予め設定された目標値となるように、レーザパワー制御回路9における変調信号の増幅率を調整する。
【0023】
また光ピックアップ10は、かかる光電変換により得られたサーボ用信号をサーボ用信号検出回路14に送出する。サーボ用信号検出回路14は、供給されるサーボ用信号に基づいてフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、フォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を光ピックアップ制御回路15に送出する。
【0024】
このとき光ピックアップ制御回路15には、製品間のフォーカス制御やトラッキング制御のばらつきを補正するため、フォーカス位置やトラッキング位置を基準位置からオフセットさせるためのフォーカスオフセット信号及びトラッキングオフセット信号がフォーカスオフセット可変回路16及びトラッキングオフセット可変回路17からそれぞれ与えられる。
【0025】
かくして光ピックアップ制御回路は、サーボ用信号検出回路14から供給されるフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号と、フォーカスオフセット可変回路16及びトラッキングオフセット可変回路17からそれぞれ与えられるフォーカスオフセット信号及びトラッキングオフセット信号とに基づいてフォーカスアクチュエータ駆動信号及びトラッキングアクチュエータ駆動信号を生成し、これらを光ピックアップ10内の図示しないフォーカスアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータに送出する。
【0026】
そしてフォーカスアクチュエータは、フォーカスアクチュエータ駆動信号に基づいて、対物レンズ11を光ディスク4に近接する方向又は離反する方向に移動させ、トラッキングアクチュエータは、トラッキングアクチュエータ駆動信号に基づいて、対物レンズを11を光ディスク4の外周方向又は内周方向に傾かせるように駆動する。これにより光ピックアップ10から発射されたレーザ光L1が光ディスク4の記録面においてジャストフォーカスすると共に、当該レーザ光L1のスポットが光ディスク4のトラック上を走査するようにフォーカス制御及びトラッキング制御が行なわれる。
【0027】
一方、制御回路3は、ホストコンピュータ2から再生コマンドが与えられた場合、上述の記録モード時と同様にして、所定状態に装填された光ディスク4を当該光ディスク4の記録方式に応じた回転状態で回転させる。
【0028】
また制御回路3は、レーザパワー制御回路9を制御して一定電圧レベルの駆動信号を光ピックアップ10内のレーザダイオードに印加させる。この結果、かかる駆動信号に基づいて所定パワーのレーザ光L1がレーザダイオードから発射され、このレーザ光L1が対物レンズ11を介して光ディスク4の記録面上に集光される。また、制御回路3は、スライダ機構12を制御することにより、スライダを所定速度で光ディスク4の径方向に移動させる。
【0029】
このときレーザ光L1の光ディスク4における反射光L2は、対物レンズ11を介して光ピックアップ10内のフォトディテクタに導かれる。そしてこの反射光L2をフォトディテクタにおいて光電変換することより得られたRF信号がディジタル変換されて、ディジタルRF信号として再生信号復調回路13及びミラー回路18に与えられる。
【0030】
再生信号復調回路13は、供給されるディジタルRF信号に対して記録モード時と同様の復調処理を施し、かくして得られた再生データを制御回路3に送出する。この結果、この再生データが制御回路3からホストコンピュータ2に送信される。
【0031】
またミラー回路18は、供給されるディジタルRF信号に基づいて、そのときレーザ光L1が走査しているトラックにデータが記録されているときには「L」に立ち下り、当該トラックにデータが記録されていないときには「H」に立ち上がるミラー信号(図5(B)及び図6(B)参照)を生成し、これを制御回路3に送出する。このミラー信号は、後述のように、偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる光ディスク4の回転角を学習する際に利用される。
【0032】
さらに光ピックアップ10は、かかる光電変換により得られたサーボ用信号をサーボ用信号検出回路14に送出する。かくしてこのサーボ用信号に基づいて、記録モード時と同様にして、サーボ用信号検出回路14においてフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号が生成され、これらフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号に基づいて、光ヘッド制御回路15によりフォーカス制御及びトラッキング制御が行なわれる。
【0033】
またサーボ用信号検出回路14において生成されたトラッキングエラー信号は、トラックゼロクロス信号生成回路19にも与えられる。トラックゼロクロス信号生成回路19は、供給されるトラッキングエラー信号の信号レベルが「0」となるタイミングで立ち上がり又は立ち下がるトラックゼロクロス信号(図5(D)及び図6(D)参照)を生成し、これを制御回路3に送出する。このトラックゼロクロス信号も、ミラー信号と同様に、後述のように、偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる光ディスク4の回転角を学習する際に利用される。
【0034】
(1−2)本実施の形態によるトラッキング制御方式
次にかかる光ディスク装置1に採用されたトラッキング制御方式について説明する。
【0035】
これに際して、まず、光ディスク4の「偏心量」について説明する。本実施の形態において、光ディスク4の「偏心量」とは、光ディスク4の回転中心が偏心している度合いをいう。この「偏心量」は、図2に示すように、レーザ光L1のスポットを中心とした光ディスク(トラック)の変位量に相当するものであり、光ディスク4が1/2回転したときの光ディスク4(トラック)の変位量をかかる「偏心量」として測定することができる。なお、光ディスク4が1回転した場合、外周方向の「偏心量(偏心量(+))」と、内周方向の「偏心量(偏心量(−))」が表れることになるが、これらは同じ大きさと考えてよい。
【0036】
図3は、偏心した光ディスク4を回転させ、トラッキングサーボをオフした状態で光ピックアップ10を光ディスク4と対向する位置に位置させときの、光ピックアップ4から見た光ディスク4の各トラックの位置(y軸)と時間(x軸)との関係を示している。
【0037】
この図3に示すように、光ディスク4が偏心している場合、光ディスク4の1回転周期で当該光ディスク4の偏心量に応じた変位がトラックに発生する。この結果、偏心によりトラックが最大に変位したタイミング(時刻t1,t2,……)でトラックの引込みを行なった場合、光ディスク4の1/2回転後には、引込みを行なったトラックが光ディスク4の偏心量の2倍に応じた大きさ分だけ離れた位置に変位する。なお、図3において、P1,P3はトラックの引込みを行なったポイント、P2,P4は光ディスクが1/2回転した後のそのポイントP1,P3の位置を表す。
【0038】
図4は、このときのトラッキングエラー信号(図4(A))及びトラッキングアクチュエータ駆動信号(図4(C))の波形と、対物レンズ11の変位量を表すレンズエラー信号(図4(B))の波形とを示している。レンズエラー信号は、対物レンズ11が中立位置から変位していないときに「0」で、対物レンズ11が光ディクス4の内周側に変位しているときにその変位量に応じた大きさの負の信号レベルをとり、また対物レンズ11が光ディスク4の外周側に変位しているときにその変位量に応じた大きさの正の信号レベルをとる信号である。
【0039】
この図4からも明らかなように、トラックの引込みが行なわれるまで(時刻t10以前)は、トラッキングサーボがオフしているため、トラッキングエラー信号が大きく乱れるのに対して、トラッキングアクチュエータ信号にはノイズ以外の乱れが生じない。しかしながら、時刻t10においてトラック引込みが行なわれた後は、トラッキングサーボがオンされるためにトラッキングエラー信号S1は安定し、逆にトラッキングアクチュエータ駆動信号に出力が生じる(楕円EL1で囲んだ部分を参照)。
【0040】
さらに、この後そのときトラッキングしているトラックが光ディスク4の偏心によって変動し、その変位量が対物レンズ11の可動範囲を超えると、トラッキングが外れてトラッキングエラー信号及びトラッキングアクチュエータ駆動信号の双方が大きく乱れる(楕円EL2で囲んだ部分を参照)。このトラッキングエラー信号の乱れは、かかるトラックが対物レンズ11の可動範囲内に戻ってきた段階でトラッキングが再開されるために安定するものの、このとき光ピックアップ10が元のトラックと異なるトラックをトラッキングしている可能性がある。
【0041】
このように、対物レンズ11の可動範囲を超えるような偏心が光ディスク4に生じている場合、トラッキングが外れて正確なトラッキング制御を行い得ない問題がある。
【0042】
そこで、本実施の形態による光ディスク装置1では、トラック引込み後のトラッキング制御を安定して行なうため、光ディスク4の偏心によるトラックの変位が内周側および内周側の最大となる回転角を学習すると共に、光ディスク4の偏心量を求める(ディスク回転角学習処理)。そして光ディスク装置1では、偏心による光ディスク4のトラックの変位が最大となる光ディスク4の回転角でトラック引込みを行なうと共に、このトラック引込み時点の光ディスク4のトラックの変位方向を検出し、その変位方向に光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分(例えば偏心量に対して±30%の誤差範囲。以下同じ)だけスライダを移動させるようにスライダ機構12を駆動する(スライダ移動処理)。
【0043】
すなわち、光ディスク4の偏心によるトラックの変位が最大となる位置では、かかるトラックの変位の方向が光ディスク4の内周側から外周側へ又は外周側から内周側へと切り替わる。この切り替わり後の光ディスク4のトラックの変位方向を判断するため、光ディスク4を一定速度で回転させながら、トラッキングサーボをオフした状態で光ピックアップ10からレーザ光L1を光ディスク4に照射する。そして、光ディスク4の偏心によるトラックの変位が最大となるタイミングを、かかるレーザ光L1のスポットが光ディスク4の変位によりトラックを横断する方向(以下、これをトラック横断方向と呼ぶ)が変化するタイミングとして検出する。
【0044】
この場合、かかるトラック横断方向が変化するタイミングを検出する手段として、レーザ光L1を光ディスク4に照射することにより得られるミラー信号及びトラッキングゼロクロス信号を利用することができる。これを図5及び図6を用いて説明する。
【0045】
図5は、トラック横断方向が光ディスク4の外周方向であるときのRF信号(図5(A))、ミラー信号(図5(B))、トラッキングエラー信号(図5(C))及びトラックゼロクロス信号(図5(D))をそれぞれ示し、図6は、トラック横断方向が光ディスク4の内周方向であるときのRF信号(図6(A))、ミラー信号(図6(B))、トラッキングエラー信号(図6(C))及びトラックゼロクロス信号(図6(D))をそれぞれ示している。
【0046】
これら図5及び図6からも明らかなように、トラック横断方向が光ディスク4の外周方向であるとき(図5)のミラー信号に対するトラッキングゼロクロス信号の位相と、トラック横断方向が光ディスク4の内周方向であるとき(図6)のミラー信号に対するトラッキングゼロクロス信号の位相とは異なる。
【0047】
つまり、トラック横断方向が光ディスク4の外周方向であるときには、ミラー信号が「H」に立ち上がった瞬間のトラッキングゼロクロス信号の論理レベルは「H」となり、トラック横断方向が光ディスク4の内周方向であるときには、ミラー信号が「H」に立ち上がった瞬間のトラッキングゼロクロス信号の論理レベルは「L」となる。
【0048】
そこで、光ディスク装置1は、上述のディスク回転角学習処理において、これらミラー信号及びトラッキングゼロクロス信号に基づいて、偏心に起因して図7(A)のようにトラックが変位する光ディスク4に対して、図7(B)及び図7(C)に示すように、レーザ光L1のスポットのトラック横断方向が光ディスクの外周方向の期間は「H」に立ち上がり、かかるレーザ光L1のスポットのトラック横断方向が内周方向の期間は「L」に立ち下がるトラック横断方向検出信号を生成する。
【0049】
また光ディスク装置1は、かかるトラック横断方向検出信号と、FG信号検出回路7(図1)から出力される二値化FG信号とに基づいて、図7(E)のようなディスク回転角マップ20を作成する。このディスク回転角マップ20は、ロータリエンコーダ6(図1)がパルスを出力するごと(つまり光ディスク4が10度回転するごと)にそのときのトラック横断方向検出信号の論理レベル(「L」又は「H」)をサンプリングし、得られた光ディスク4の1回転分(つまり36個分)のサンプリング値をその順番で並べたビットマップである。従って、このディスク回転角マップ20と、現在の光ディスク4の回転角とに基づいて、現在の対物レンズ11の変位方向(トラックの変位方向)を検出することができる。
【0050】
さらに光ディスク装置1は、上述のディスク回転角学習処理として、光ディスク4を回転させながら、トラッキングサーボをオフした状態で光ディスク4にレーザ光L1を照射し、そのスポットが光ディスク4の1回転中に横断したトラック数(以下、これを横断トラック数)に基づいて光ディスク4の偏心量を求める。具体的には、光ディスク4のトラックピッチは予め規格により定められているため、このトラックピッチをPH、かかる横断トラック数をNとして、次式
【数1】

により、かかる偏心量を求めることとなる。
【0051】
一方、光ディスク装置1は、この後トラック引込みを行なうと、上述のスライダ移動処理として、ディスク回転角学習処理により得られたディスク回転角マップ20に基づいて現在の光ディスク4の変位方向を判断する。
【0052】
そして光ディスク装置1は、このとき対物レンズ11が光ディスク4の内周方向に変位している(光ディスク4が内周方向に変位している)と判断した場合には、スライダ機構12を駆動してスライダと一体に光ピックアップ10を光ディスク4の内周方向に当該光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分だけ移動させ、対物レンズ11が光ディスク4の外周方向に変位している(光ディスク4が外周方向に変位している)と判断した場合には、スライダ機構12を駆動してスライダと一体に光ピックアップ10を光ディスク4の外周方向に当該光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分移動させるように、スライダ機構12(図1)を駆動する。
【0053】
この結果、このような一連の処理により、トラック引込みによりレーザ光L1がオントラックしたトラックの変位範囲の中心位置又はほぼ中心位置に対物レンズ11を移動させることができる。
【0054】
なお、光ディスク装置1は、上述ように光ピックアップ10を光ディスク4の外周方向又は内周方向に当該光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分だけ移動させた後は、このような一連の処理を再度実施しない。これは、かかる一連の処理の終了後には上述のように光ピックアップ10の対物レンズ11がオントラックしたトラックの変位範囲の中心位置又はほぼ中心位置に位置しており、その状態であればそのときトラッキングしているトラックが光ディスク4の偏心に応じて変位しても、これに追随して変化される対物レンズ11変位が当該対物レンズ11の可動範囲を超えることはないと考えられるからである。
【0055】
図8は、上述のような本実施の形態によるトラッキング制御方式におけるディスク回転角学習処理に関する制御回路3の具体的な処理内容を示すフローチャートである。制御回路3は、内部メモリに格納された対応する制御プログラムに従って、この図8に示すディスク回転角学習処理を実行する。
【0056】
すなわち制御回路3は、所定状態に装填された光ディスク4に対して最初にアクセスする際にこの処理を開始し、まず、光ピックアップ制御回路15(図1)を制御することによりトラッキングサーボをオフさせる(SP1)。
【0057】
続いて制御回路3は、かかる光ディスク4の偏心量を取得する(SP2)。具体的に、制御回路3は、スライダ機構12を駆動して光ピックアップ10を光ディスク4の記録面と対向する所定位置にまで移動させ、その後レーザパワー制御回路9(図1)を駆動して、光ピックアップ10から所定パワーのレーザ光L1を光ディスク4に照射させる。また制御回路3は、このときFG信号検出回路7(図1)から与えられる二値化FG検出信号と、サーボ用信号検出回路14(図1)から与えられるトラッキングエラー信号とに基づいて、かかるレーザ光L1のスポットが光ディスク4の1回転中に横断したトラック数をカウントし、このときのカウント値に基づき、上述の(2)式を用いて、光ディスク4の偏心量を算出する。
【0058】
次いで制御回路3は、ステップSP2において得られた光ディスク4の偏心量が、対物レンズを変位させることにより対応可能な偏心量の最大値として予め設定された閾値よりも大きいか否かを判断する(SP3)。そして制御回路3は、この判断において肯定結果を得るとこのディスク回転角学習処理を終了する。
【0059】
これに対して制御回路3は、この判断において否定結果を得ると、そのとき記憶している先行して行なったディスク回転角学習処理の学習結果(図7(E)について上述したディスク回転角マップ20)を初期化する(SP4)。
【0060】
そして制御回路3は、この後、このときミラー信号生成回路18(図1)から与えられるミラー信号と、トラックゼロクロス信号生成回路19(図1)から与えられるトラックゼロクロス信号とに基づいてトラック横断方向検出信号(図7(C))を生成し、当該トラック横断方向検出信号の論理レベルが「L」となるトラック横断方向を検出すると共に(SP5)、この検出結果に基づいて、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「L」から「H」に変化するタイミング(つまり光ディスク4の変位が最大となるタイミング)を検出する(SP6)。
【0061】
次いで制御回路3は、そのときの光ディスク4の回転角nを取得し、これをトラック横断方向検出信号の論理レベルが「L」から「H」に変化するディスク回転角として記憶する(SP7)。具体的に、制御回路3は、FG信号検出回路7(図1)から与えられる二値化FG信号に基づいて、光ディスク4が10度回転するごとにロータリエンコーダ6(図1)から出力されるパルスの数を、光ディスク4が1回転するごと(つまり「36」だけカウントするごと)にクリアしながら図示しないカウンタ(以下、これを回転角カウンタと呼ぶ)によりカウントしている。そして制御回路3は、かかるディスク回転角として、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「L」から「H」に変化したタイミングにおけるかかる回転角カウンタのカウント値を記憶する。
【0062】
続いて制御回路3は、ミラー信号及びトラックゼロクロス信号に基づき生成されるトラック横断方向検出信号の論理レベルが「H」となるトラック横断方向を検出する(SP8)と共に、この検出結果に基づいて、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「H」から「L」に変化するタイミング(つまり光ディスク4の変位が最大となるタイミング)を検出する(SP9)。
【0063】
また制御回路3は、そのときの光ディスク4の回転角mを取得し、これをトラック横断方向検出信号の論理レベルが「H」から「L」に変化するディスク回転角として記憶する(SP10)。なお、このときのディスク回転角も、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「H」から「L」に変化したタイミングにおける上述の回転角カウンタのカウント値を記憶することになる。
【0064】
続いて制御回路3は、ステップSP7及びステップSP10において記憶した各ディスク回転角に基づいて、図7(E)について上述したディスク回転角マップ20を作成する(SP11)。具体的に、制御回路3は、光ディスク4の1回転中にロータリエンコーダ6から出力されるパルスにそれぞれ対応させて設けられたディスク回転角マップの36個のビットのうち、ステップSP7において記憶したディスク回転角n(回転角カウンタのカウント値)に対応するビットからステップSP10において記憶したディスク回転角mに対応するビットの1つ前のビットまでの各ビットの値をそれぞれ「H」に設定し、残りのビットをそれぞれ「L」に設定することにより、かかるディスク回転角マップ20を作成することになる。そして制御回路3は、この後このディスク回転角学習処理を終了する。
【0065】
一方、図9は、スライダ移動処理に関する制御回路の具体的な処理内容を示すフローチャートである。制御回路3は、内部メモリに格納された対応する制御プログラムに従って、この図9に示すスライダ移動処理を実行する。
【0066】
すなわち制御回路3は、ディスク回転角学習処理の終了後にこのスライダ移動処理を開始し、まず、光ディスク4の変位が最大となったタイミングでサーボ用信号検出回路14(図1)を制御することにより、トラッキングサーボをオンさせる(SP20)。これにより制御回路3は、トラック引込みを行なう。
【0067】
続いて制御回路3は、現在(トラック引込み時点)の光ディスク4の回転角として、上述の回転角カウンタのカウント値を読み込み(SP21)、この後この回転角におけるトラック横断方向が、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「H」となる方向(光ディスク4の内周から外周に向かう方向)であるか否かをディスク回転角マップ20に基づいて判断する(SP22)。
【0068】
そして制御回路3は、この判断において否定結果を得ると、スライダ機構12を駆動して、光ピックアップ10を偏心量又はほぼ偏心量分だけ光ディスク4の外周方向に移動させるようにスライダを移動させる(SP23)。また制御回路3は、ステップSP22の判断において肯定結果を得ると、スライダ機構12を駆動して、光ピックアップ10を偏心量又はほぼ偏心量分だけ光ディスク4の内周方向に移動させるようにスライダを移動させる(SP24)。そして制御回路3は、この後、このスライダ移動処理を終了する。
【0069】
(1−3)本実施の形態の効果
以上のように本実施の形態による光ディスク装置1では、光ディスク4の偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる光ディスク4の回転角を学習すると共に光ディスク4の偏心量を求め、偏心による光ディスク4の変位が最大となる光ディスク4の回転角でトラック引込みを行なうと共に、このトラック引込み時点の光ディスク4の変位方向を検出し、その変位方向に光ピックアップ10を光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分だけ移動させるようにスライダ機構12を駆動しているため、トラック引込みによりレーザ光L1がトラッキングしているトラックの変位範囲の中心位置又はほぼ中心位置に対物レンズ11を移動させることができる。
【0070】
従って、この後はそのときトラッキングしているトラックがかかる対物レンズ11を中心として光ディスク4の外周方向及び内周方向に同じ距離だけ交互に変位することになるため、かかるトラックに追随する対物レンズ11の変位が当該対物レンズ11の可動範囲内で行なわれる。かくするにつき、本実施の形態による光ディスク装置1によれば、偏心量が大きい粗悪な光ディスク4に対しても、トラック引込み後に安定したトラッキング制御を行うことができる。
【0071】
実際上、図10に示すように、トラック引込み(時刻t20)後、レーザ光L1がオントラックしたトラックの変位範囲の中心位置に光ピックアップ10を移動(時刻t20〜t21)させるシミュレーションを行なったところ、光ピックアップ10の移動後(時刻t21)はトラッキングエラー信号の波形が乱れないことがなく、従って、本実施の形態によるトラッキング制御方式によって安定したトラッキング制御を行ない得ることが確認できた。
【0072】
(2)第2の実施の形態
図1において30は第2の実施の形態による光ディスク装置を示す。この光ディスク装置30は、ディスク回転角学習処理及びスライダ移動処理に関する制御回路31の処理内容が異なる点を除いて第1の実施の形態による光ディスク装置1と同様に構成されている。
【0073】
すなわち、第1の実施の形態による光ディスク装置1では、光ディスク4の偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角の学習を、トラック横断方向検出信号(図7(C))の論理レベルが変化するタイミングを捕らえることで行なっているが、図11(A)に示すように、トラック横断方向検出信号の論理レベルが変化するタイミング(すなわち光ディスク4の偏心による変位が最大となるタイミング)の前後において、トラッキングエラー信号の波形が乱れることがある。
【0074】
このような状態のときには、トラッキングエラー信号に基づいて生成されるトラッキングゼロクロス信号の波形も乱れるため、図11(B)に示すように、このトラッキングゼロクロス信号に基づき生成されるトラック横断方向検出信号の論理レベルもばらつくことになる。このような状態のときに図11(C)に示すようなロータリエンコーダ6がパルスを出力するタイミングでかかる光ディスク4の回転角の学習を行った場合、光ディスク4の回転角とトラック横断検出信号との関係を間違うおそれがある。なお、図11において楕円EL3で囲まれた部分の波形を拡大したものを図12に示す。
【0075】
そして、かかる光ディスク4の回転角とトラック横断検出信号との関係を間違って学習した場合、対物レンズ11が光ディスク4の内周方向に変位しているにも係らず光ピックアップ10を光ディスク4の外周方向に移動するようにスライダ機構12が駆動され、この途中で対物レンズ11の変位が当該対物レンズ11の可動範囲を超えてしまう問題がある。従って、この場合にはトラッキングが外れ、トラック引込み後のトラッキング制御が不安定となる。
【0076】
そこで、本実施の形態による光ディスク装置30では、このような事態を回避するため、図7(F)に示すようなスライダ送り動作指示マップ32を作成する。このスライダ送り動作指示マップ32は、ディスク回転角マップ20(図7(E))の各ビットにそれぞれ対応付けられた36個の領域32Aから構成されるマップである。そしてスライダ送り動作指示マップ32の各領域32Aには、ディスク回転角学習処理の処理結果に基づいて、それぞれそのタイミングでスライダ機構12をどのように駆動すべきかの指示でなる動作指示のコードが格納される。
【0077】
本実施の形態の場合、このような動作指示としては、学習結果が信頼できる回転位置にまで光ディスク4が回転するのを待つべきことを意味する「ディスク回転角度更新待ち指示」と、スライダ機構を駆動して光ピックアップ10を移動させても良いことを意味する「スライダ送り指示」と、スライダ機構12を駆動させないことを意味する「指示なし」の3つのパターンが用意されている。
【0078】
そして光ディスク装置1は、ディスク回転角マップ20を作成したときに、このディスク回転角マップ20を参照してスライダ送り動作指示マップ32を作成すると共に、トラック引込み後に光ピックアップ10をそのとき対象としているトラックの変位範囲の中心位置に移動させる際には、トラック引込み時点の光ディスク4の回転角に基づいてスライダ送り動作指示マップ32の対応する領域32Aから動作指示を読み出し、読み出した動作指示に従ってスライダ機構12を駆動する。
【0079】
図13は、このような第2の実施の形態によるトラッキング制御処理のうち、ディスク回転角学習処理に関する制御回路31の具体的な処理内容を示すフローチャートである。制御回路31は、内部メモリに格納された対応する制御プログラムに従って、この図13に示すディスク回転角学習処理を実行する。
【0080】
すなわち制御回路31は、所定状態に装填された光ディスク4に対して最初にアクセスする際にこの処理を開始し、ステップSP30〜ステップSP40までを、図8について上述した第1の実施の形態によるディスク回転角学習処理のステップSP1〜ステップSP11までと同様に処理する。
【0081】
そして制御回路31は、この後ステップSP40において作成したディスク回転角マップ20に基づいてスライダ送り動作指示マップ32を作成する(SP41)。具体的に制御回路31は、スライダ送り動作指示マップ32の雛形における、トラック横断方向検出信号の論理レベルが「L」から「H」へ又は「H」から「L」へと変化する光ディスク4の回転角の直前の2つ分の各領域32A及び直後の3つ分の各領域32Aにそれぞれ「ディスク回転角度更新待ち指示」のコードを格納する。また制御回路31は、かかる直後の3つ分の各領域32Aに続く6〜7つ分の各領域32Aにそれぞれ「スライダ送り指示」のコードを格納すると共に、これら以外の各領域32Aにそれぞれ「指示なし」のコードを格納するようにして、スライダ送り動作指示マップ32を作成する。
【0082】
一方、図14は、第2の実施の形態によるトラッキング制御処理のうち、スライダ移動処理に関する制御回路31の具体的な処理内容を示すフローチャートである。制御回路31は、内部メモリに格納された対応する制御プログラムに従って、この図14に示すスライダ移動処理を実行する。
【0083】
すなわち制御回路31は、ディスク回転角学習処理の終了後にこのスライダ移動処理を開始し、まず、図9について上述した第1の実施の形態によるスライダ移動処理のステップSP20及びステップSP21と同様にして、トラック引込みを行なうと共に(SP50)、現在(トラック引込み直後)の光ディスク4の回転角として上述の回転角カウンタのカウント値を読み込む(SP51)。
【0084】
続いて制御回路31は、ステップSP51において取得した現在の光ディスク4の回転角に基づいて、スライダ送り動作指示マップ32から対応する動作指示のコードを読み出し(SP52)、この後、読み出したコードが「ディスク回転角度更新待ち指示」のコードであるか否かを判断する(SP53)。
【0085】
そして制御回路31は、この判断において肯定結果を得ると、回転角カウンタが4つ分のカウントを行なうまで待つ(SP54)。そして制御回路31は、回転角カウンタがかかるタイミングから4つ分のカウントを行なうとステップSP51に戻り、この後同様の処理を実行する。
【0086】
これに対して制御回路31は、ステップSP53の判断において否定結果を得ると、ステップSP51においてスライダ送り動作指示マップ32から読み出したコードが「スライダ送り指示」のコードであるか否かを判断する(SP55)。
【0087】
そして制御回路31は、この判断において否定結果を得ると、このスライダ移動処理を終了する。これに対して制御回路31は、ステップSP55の判断において肯定結果を得ると、この後ステップSP56〜ステップSP58を、図9について上述した第1の実施の形態によるスライダ移動処理のステップSP22〜ステップSP24と同様に処理し、この後、このスライダ移動処理を終了する。
【0088】
以上のように本実施の形態による光ディスク装置30では、ディスク回転角マップ20を参照して、光ディスク4の回転角ごとの動作指示を規定したスライダ送り動作指示マップ32を作成すると共に、トラック引込み後にこのスライダ送り動作指示マップ32に格納された対応する動作指示に従ってスライダ機構12を駆動するようにしているため、光ディスク4の回転角とトラック横断検出信号との関係を間違って学習することを未然にかつ確実の防止することができる。
【0089】
かくするにつき、対物レンズ11が光ディスク4の内周方向に変位しているにも係らず光ピックアップ10を光ディスク4の外周方向に移動するようにスライダ機構12が駆動され、この途中で対物レンズ11の変位量が当該対物レンズ11の可動範囲を超えてしまうような事態が発生するのを防止することができ、かくして第1の実施の形態によるトラッキング制御方式と比べてより一層と安定したトラッキング制御を行うことができる。
【0090】
(3)他の実施の形態
なお上述の第1及び第2の実施の形態においては、本発明を図1のように構成された光ディスク装置1,30に適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他種々の構成の光ディスク装置に広く適用することができる。
【0091】
また上述の第1及び第2の実施の形態においては、光ディスク4の偏心による変位が最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスク4の偏心量を検出するディスク回転角学習処理部と、偏心による光ディスク4の変位が最大となる回転角でトラック引込みを行なうと共に、引込み時点の光ディスク4のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に光ディスク4の偏心量又はほぼ偏心量分だけスライダを移動させるスライダ移動処理部とを同じ1つの制御回路3,31により構成するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、これらディスク回転角学習処理部としての機能と、スライダ移動処理部としての機能とを異なる回路に持たせるようにしても良い。
【0092】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、ロータリエンコーダ6が出力するパルスに基づいて光ディスク4の回転角を検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、この他の方法を適用するようにしても良い。
【0093】
さらに上述の第1及び第2の実施の形態においては、光ディスク4が10度回転するごとにロータリエンコーダ6がパルスを出力するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、ロータリエンコーダ6がパルスを出力するタイミングとしては、この他のタイミングを広く適用することができる。
【0094】
さらに上述の第2の実施の形態においては、スライダ送り動作指示において規定する動作指示として、「ディスク回転角更新待ち指示」、「スライダ送り指示」及び「指示なし」の3つのパターンを規定した場合について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば回転角カウンタの更新が具体的に何回行なわれるまで待つかを規定するなど他のパターンを適用するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施の形態による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【図2】光ディスクの偏心量の説明に供する概念図である。
【図3】光ディスクの偏心によるトラックの時間的な変位の説明に供する波形図である。
【図4】(A)−(C)は、トラックの変位が対物レンズの可動範囲を超えたことに起因するトラッキングエラー信号の乱れの説明に供する波形図である。
【図5】(A)−(D)は、トラック横断方向と、ミラー信号及びトラッキングゼロクロス信号の位相関係との説明に供する波形図である。
【図6】(A)−(D)は、トラック横断方向と、ミラー信号及びトラッキングゼロクロス信号の位相関係との説明に供する波形図である。
【図7】(A)−(F)は、トラック横断方向検出信号、ディスク回転角マップ及びスライダ送り動作指示マップの説明に供する波形図及び概念図である。
【図8】第1の実施の形態によるディスク回転角学習処理の説明に供するフローチャートである。
【図9】第1の実施の形態によるスライダ移動処理の説明に供するフローチャートである。
【図10】(A)−(D)は、本実施の形態によるトラッキング制御方式の効果の説明に供する波形図である。
【図11】(A)−(C)は、トラック横断方向検出信号の論理レベルが変化するタイミングの前後におけるトラッキングエラー信号の乱れの説明に供する波形図である。
【図12】(A)−(C)は、トラック横断方向検出信号の論理レベルが変化するタイミングの前後におけるトラッキングエラー信号の乱れの説明に供する波形図である。
【図13】第2の実施の形態によるディスク回転角学習処理の説明に供するフローチャートである。
【図14】第2の実施の形態によるスライダ移動処理の説明に供するフローチャートである。
【符号の説明】
【0096】
1,30……光ディスク装置、2……ホストコンピュータ、3,31……制御回路、4……光ディスク、6……ロータリエンコーダ、7……FG信号検出回路、10……光ピックアップ、11……対物レンズ、12……スライダ機構、18……ミラー信号生成回路、19……トラッキングゼロクロス信号生成回路、20……ディスク回転角マップ、32……スライダ送り動作指示マップ、32A……領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のタイミングでトラッキングサーボをオンにするようにして光ディスク上のトラックに引込みを行い、当該トラック引込み後は対物レンズを前記ディスクの半径方向に変位させるようにしてトラッキングを行い、前記対物レンズの変位に基づいてディスク半径方向にスライダの移動を行うトラッキングおよびスライダ制御とを有する光ディスク装置において、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスクの偏心量を検出するディスク回転角学習処理部と、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が最大となる回転角で前記トラック引込みを行なうと共に、引込時点の光ディスクの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させるスライダ移動処理部と
を備えることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記ディスク回転角学習処理部は、
前記トラッキングサーボをオフした状態でレーザ光を光ディスクに照射し、前記光ディスクにおける前記レーザ光のスポットが前記光ディスクのトラックを横断する方向が変化するときの前記光ディスクの回転角を、前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角として検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記ディスク回転角学習処理部は、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習した学習結果として、前記光ディスクの所定の回転角ごとのトラックの変位方向をそれぞれ格納した第1のマップを作成し、
前記スライダ移動処理部は、
前記トラック引込み時点における前記光ディスクの回転角と、前記第1のマップとに基づいて、トラック引込み時点の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記スライダ移動処理部は、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位方向が切り替わった後、前記光ディスクが所定の回転角だけ回転した後に現在の前記光ディスク上のトラックの変位方向を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記スライダ移動処理部は、
前記光ディスクの偏心量が予め定められた閾値を超えたときに、前記トラック引込みを行なうと共に、トラック引込み時点の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる
ことを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項6】
所定のタイミングでトラッキングサーボをオンにするようにしてトラック引込みを行い、当該トラック引込み後は対物レンズを前記ディスクの半径方向に変位させるようにしてトラッキングを行い、前記対物レンズの変位に基づいてディスク半径方向にスライダの移動を行うトラッキングおよびスライダ制御方法において、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角を学習すると共に、当該光ディスクの偏心量を検出する第1のステップと、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が最大となる回転角で前記トラック引込みを行なうと共に、引込み時点の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる第2のステップと
を備えることを特徴とするトラッキングおよびスライダ制御方法。
【請求項7】
前記第1のステップでは、
前記トラッキングサーボをオフした状態でレーザ光を光ディスクに照射し、前記光ディスクにおける前記レーザ光のスポットが前記光ディスク上のトラックを横断する方向が変化するときの前記光ディスクの回転角を、前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が内周側および外周側の最大となる回転角として検出する
ことを特徴とする請求項6に記載のトラッキングおよびスライダ制御方法。
【請求項8】
前記第1のステップでは、
前記光ディスクの偏心によるトラックの変位が最大となる回転角を学習した学習結果として、前記光ディスクの所定の回転角ごとのトラックの変位方向をそれぞれ格納した第1のマップを作成し、
前記第2のステップでは、
前記トラック引込み時点における前記光ディスクの現在の回転角と、前記第1のマップとに基づいて、現在の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる
ことを特徴とする請求項6に記載のトラッキングおよびスライダ制御方法。
【請求項9】
前記第2のステップでは、
偏心による前記光ディスク上のトラックの変位方向が切り替わった後、前記光ディスクが所定の回転角だけ回転した後に現在の前記光ディスク上のトラックの変位方向を検出する
ことを特徴とする請求項6に記載のトラッキングおよびスライダ制御方法。
【請求項10】
前記第2のステップでは、
前記光ディスクの偏心量が予め定められた閾値を超えたときに、前記トラック引込みを行なうと共に、現在の光ディスク上のトラックの変位方向を検出し、検出した変位方向に前記光ディスクの偏心量又はほぼ偏心量分前記スライダを移動させる
ことを特徴とする請求項6に記載のトラッキングおよびスライダ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−299963(P2008−299963A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−145512(P2007−145512)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】