光ディスク装置及びトラック引き込み方法
【課題】光ディスク装置のサーボ制御において、トラック引き込み性能を向上させることである。
【解決手段】前記対物レンズをアクチュエータにより駆動し、前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力し、前記出力された電気信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記回転軸方向に駆動し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記光ディスク半径方向に駆動し、前記トラッキングエラー信号の周期が略一定となるようアクチュエータの速度制御を行い、前記速度制御を開始するよりも前に、前記対物レンズを半径方向に移動し、前記速度制御を開始した後に前記トラッキング制御信号をアクチュエータに供給し、トラック引き込みを行う。
【解決手段】前記対物レンズをアクチュエータにより駆動し、前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力し、前記出力された電気信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記回転軸方向に駆動し、前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記光ディスク半径方向に駆動し、前記トラッキングエラー信号の周期が略一定となるようアクチュエータの速度制御を行い、前記速度制御を開始するよりも前に、前記対物レンズを半径方向に移動し、前記速度制御を開始した後に前記トラッキング制御信号をアクチュエータに供給し、トラック引き込みを行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に光ディスクドライブにおいては、光ディスクは偏芯を持って回転しており、偏芯を持った光ディスクに対してシークやトラック引き込みといった制御を行う。
【0003】
ここで、偏芯が大きい光ディスクではトラック引き込み性能が劣化する。
【0004】
特許文献1によれば、その段落0005に、「光ディスクがディスク装置にローディングされたとき、光ディスクを回転させるスピンドルモータの回転により発生するFG信号を検出して光ディスクの回転角を検出して、検出された光ディスクの回転角に対するトラッククロス信号を計測し、計測された光ディスクの回転角に対するトラッククロス信号に基づいて光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とを検出して、検出された光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とを記憶し、光ディスクの再生時、記憶されている光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とに同期させて、光ピックアップを光ディスクの半径方向に往復移動させ、光ピックアップのトラッキングを制御して、光ピックアップのトラッキング引き込みを行う」との記載がある。
【0005】
特許文献2によれば、その段落0010に、「トラッキング引き込みを行なう際に、引き込もうとするディスクのトラック方向の移動速度と光ピックアップの移動速度との相対速度を検出し、検出した相対速度に対応してトラッキングアクチュエータに供給するアクチュエータ駆動電圧の極性及び電圧値を制御する」との記載がある。
【0006】
特許文献3によれば、その段落0014に、「前記対物レンズの移動速度を検出する速度検出手段と、前記トラッキングアクチュエータにキックパルス信号を供給するキック手段と、前記キック手段が作動した後、前記トラックの前記対物レンズに対する移動方向を検出する滑り方向検出手段と、前記滑り方向検出手段によって検出された滑り方向と同じ方向で、前記対物レンズの移動速度が略一定速度になるように、前記速度検出手段の出力に応じて前記トラッキングアクチュエータを駆動する一定速度制御手段と、前記一定速度制御手段が作動した後、前記トラッキング制御手段を作動させるトラッキングサーボ引き込み手段とを備える構成とする。」との記載がある。また、その段落0056に、「このようなキック動作の間に、今回測定したカウント信号COUTの周期(周波数検出回路13の出力)から前回測定したカウント信号COUTの周期(遅延回路14の出力)を差し引いた差分値を滑り方向検出回路16で求め、外周方向にキックしたときに滑り方向検出回路16により求まる差分値が正であれば対物レンズ3aに対しトラックは外周方向に流れており、滑り方向検出回路16により求まる差分値が負であれば対物レンズ3aに対しトラックは内周方向に流れている。このようにして流れ方向の検出を行い、トラックの流れ方向を確定する。」との記載がある。
【0007】
また、特許文献4によれば、その段落0008に、「レンズシフトによりレンズ2のアクチュエータ感度が変化する」との記載がある。また、その段落0016に、「上記位置制御手段と上記速度制御手段との切替えを段階的に行うよう上記切替手段を制御する」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−216441号公報
【特許文献2】特開2003−196849号公報
【特許文献3】特開2007−35080号公報
【特許文献4】特開2003−203363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、Blu−rayやDVD等の光ディスクでは、規格によって光ディスクに許容される偏芯量が規定されている。しかし、光ディスクのセンターホールの位置ずれによって、規格による規定以上の偏芯量を持つ光ディスクが存在する。また、光ディスクドライブには光ディスクをチャッキングするターンテーブルの位置ずれが存在する。光ディスクドライブでの制御時には、スピンドルモータの回転軸中心から光ディスクのセンターホールの位置ずれ、及びターンテーブルの位置ずれの要因によって偏芯量が決まる。このとき、光ディスクのチャッキング状態によって、センターホールの位置ずれの方向と、ターンテーブルの位置ずれの方向が変わるため、偏芯量は変化する。光ディスクドライブにおいては、偏芯量が最大となるチャッキング状態においても、各種性能を達成することが必要になる。
【0010】
次に、光ディスク装置においてトラッキング制御に用いるエラー信号である、トラッキングエラー信号(以下、TE信号と呼ぶ)について、説明する。
【0011】
フォーカス制御が定常的に動作している状態から対物レンズのディスク半径方向の位置を任意の位置に固定して、偏心がある光ディスクを回転させた場合のTE信号について、図20を用いて説明する。
【0012】
図20(a)のようにレーザの焦点がトラックをよぎった時に得られるTE信号を図20(b)に示す。図20(b)において、点Aから点Jは図20(a)における各点に対応している。
【0013】
図20の破線は光ディスクのトラックであり、螺旋状に形成されている。Oは螺旋状トラックの中心点である。これに対しO’は回転中心を示しており、図20に示すようにOとO’がずれている場合を考える。OとO’の距離ECCのことを、以後、偏芯量と呼ぶ。偏芯が存在する場合、レーザの焦点の軌跡は実線で示したようになる。
【0014】
螺旋状トラックの中心点Oと回転中心O’がずれていることにより、点Aに位置していたレーザ光の焦点は、光ディスクの回転に伴って、点Bから点Jまでの各位置でトラックの中心を横切る。なお、ここでは説明のために点AはOとOのズレの方向(図20における縦の方向)の延長線上の点としており、また点Kは該延長線とレーザ軌跡の交点のうち、点Aでない方の交点を示している。
【0015】
図20(b)において、Trotで示した時間は、回転周期である。このように、TE信号は半周期ごとに疎密を繰り返す。またTE信号が疎になるのは、偏芯が最小となるタイミングとなる点(図20のA点)及び偏芯が最大となるタイミング(図20のK点)である。更に、図20(a)、(b)からわかるように、1回転周期中にTE信号がゼロクロスする回数は、偏芯量ECCに比例するという特徴がある。
【0016】
また、偏芯、即ち対物レンズから見たトラックの変位の変化をプロットすると、図20(c)に示すようになる。偏芯量は回転周期と同じ周期で変化する正弦波となり、正弦波の振幅は偏芯量ECCとなる。
【0017】
このとき、対物レンズから見たトラックの移動速度をプロットすると、図20(d)に示すようになる。これは、回転周波数frotと所定の位相φを用いて偏芯波形yが
【0018】
【数1】
で表されるとき、速度は位置を微分して算出されるので、速度vは
【0019】
【数2】
と表されるためである。
【0020】
このように、トラックの速度は偏芯が最大となる点及び最小となる点でゼロになり、偏芯が最大となる点及び最小となる点の中間においてピークとなる。この速度の差が、TE信号における粗密に現れる。
【0021】
偏芯が最大となる点及び最小となる点ではこのように速度の正負が反転するので、以下、偏芯の折り返りと呼ぶ。この点は、TE信号において疎になる点と一致する。
【0022】
更に(数2)からわかるように、速度のピーク値は偏芯量ECCに比例するという特徴がある。即ち、図20(d)における速度のピーク値Vmaxは、偏芯量ECCに比例する。
【0023】
図20(e)は、更に偏芯が大きな光ディスクの場合のTE信号である。偏芯の大きな光ディスクの場合、TE信号は同一の回転周期Trotの期間において、より多くの回数、ゼロクロスする。この結果、TE信号が密なタイミングでのTE信号のよぎり周波数は、偏芯量ECCが大きいほど高くなる。
【0024】
一般に、トラック引き込みはTE信号の周期を監視して、TE信号の周期が所定の時間幅よりも長くなったことを検出した後にトラッキングサーボをオンし、トラックを引き込む。即ち、疎密を繰り返すTE信号に対して、トラックよぎりが疎になったタイミングを待って、トラック引き込みを実施する。
【0025】
これはトラッキングサーボの応答帯域が有限であるためである。即ち、トラックよぎりの周波数がサーボの応答帯域よりも高くなると、安定してトラック引き込みを行うことができず、トラック引き込みが失敗する。そのため、トラックよぎりの周波数がサーボの応答帯域よりも高いタイミングではトラック引き込みを行わないように、トラックよぎりが疎になったタイミングを待つ動作を行う。
【0026】
一方で、光ディスク装置の光ピックアップは一般に、レンズシフトによりトラッキングアクチュエータの感度が低下することが知られている。本明細書においては、これを視野特性と呼ぶ。図21は、レンズシフト量とトラッキングアクチュエータの感度の関係の一例を示す図である。ここでは、偏芯量ECCと同一のレンズシフトをした時のトラッキングアクチュエータの感度低下を−2dB、偏芯量ECCの2倍のレンズシフトをした時のトラッキングアクチュエータの感度低下を−6dBとする。
【0027】
ここで、従来手法によるトラック引き込み直後のレンズシフト量について、図22を用いて説明する。図22は、トラック引き込み後のレンズシフト量の遷移を示す波形図である。
【0028】
図22(a)は偏芯であり、(b)TE信号、(c)はレンズシフト量である。(d)及び(e)は説明のために設けた信号であり、(d)はトラッキングサーボの駆動時にHighレベルとなる信号、(e)はスライダの駆動時にHighレベルとなる信号を示している。
【0029】
時刻t=t_TrONはトラッキングサーボをオンした時刻を示しており、図22(b)においてTE信号のよぎりが祖になるタイミングである。TE信号のよぎりが祖になるタイミングは、偏芯が最大もしくは最小なるタイミングと一致する。図22(a)においては、時刻t=t_TrONは偏芯が最大となるタイミングと一致している。
【0030】
トラック引きこみが成功すると、その後、対物レンズは図22(a)に示す偏芯に沿って引き込んだトラックに追従する。そのため図22(c)に示すレンズシフト波形においては、トラック引き込みから半回転周期後に、偏芯量ECCの2倍のレンズシフトが発生する(Aで示す矢印)。
【0031】
時刻t=SldONはトラック引き込み後、スライダ駆動出力が開始される時刻を示している。ここでは、時刻t=SldONは時刻t=t_TrONから半回転周期後の時刻としている。
【0032】
一般にスライダ駆動はトラッキングサーボをオンした状態でのサーボループ中の信号を半回転周期以上の期間で平均化した信号を用いる。これは偏芯成分の影響を平均化するためである。そのため、トラック引き込みから半回転周期後にスライダ駆動を開始する図22の動作は、可能な限り早くスライダを駆動した場合を示している。
【0033】
トラック引き込み後、所定の時間(図22においては回転周期の半分)が経過するとスライダが駆動され始め(t=t_SldON)、十分時間が経過した後は、対物レンズはレンズシフトがゼロとなる位置を中心として遷移する。スライダ駆動出力が開始されてから十分時間が経過した後の状態のことを、スライダ定常状態と呼ぶ。
【0034】
図22からわかるように、スライダ定常状態のレンズシフト量は、±ECCの範囲である(Bで示す矢印)。そのため従来のトラック引き込み方法では、トラック引き込み後、スライダが駆動されるまでの期間において、レンズシフト量がスライダ定常状態における値、±ECCの範囲を超えて大きくなる。
【0035】
ここで、図21で示した視野特性を有する光ディスク装置の場合には、レンズシフト量が偏芯量ECCの2倍となるタイミングにおいてトラッキングアクチュエータの感度低下は−6dBである。そのため、トラッキングサーボのゲインが6dB低下していることになる。
【0036】
トラッキングサーボのゲイン低下は追従性能の低下を招き、最悪の場合、トラック外れを起こしてトラック引き込みが失敗するという課題があった。
【0037】
またトラック外れに至らない場合であっても、トラッキングサーボのゲイン低下によって偏芯やトラック歪みに対する抑圧が低下して残留誤差が大きくなるので、TE信号における偏芯やトラック歪み成分の振幅が大きくなる。通常、トラック引き込み処理においてトラッキングサーボをオンした後は、トラック引き込み判定を行う。これはトラック引き込みが成功したかどうかを判別する処理であり、その一例としては例えばTE信号のレベルを監視する方法がある。しかし残留誤差が大きいということは対物レンズがトラック上に位置していないということなので、トラック引き込みの判別方法が何であれ、トラック引き込み直後の残留誤差が大きいほど、トラック引き込み判定を誤判定する可能性が高くなる。そのため、トラック引き込み処理が失敗するという課題があった。
【0038】
トラック引き込み直後のトラッキングゲイン低下の問題は、レンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施できれば解決できるが、それはトラックよぎりが密になるタイミングである。偏芯の大きい光ディスクであるほどTE信号が密なタイミングでのTE信号のよぎり周波数は高くなり、サーボの応答周波数から乖離していくので、トラックが引き込めないことになる。
【0039】
このように本発明が解決しようとする第一の課題は、トラック引き込み直後にレンズシフトが一時的に大きくなってしまうことによる追従性能の劣化である。
【0040】
また、従来手法によるトラック引き込みにおいては、図22(c)からわかるように、トラック引き込み開始前はレンズシフトがゼロ、即ち対物レンズが静止した状態でトラッキングサーボをオンしてトラック引き込みを行う。一方で、トラックは偏芯を持っているため、対物レンズから見ると相対的に移動して見える。そのため、対物レンズの初速がゼロの状態でトラッキングサーボをオンして、移動しているトラックに対して追従制御を開始する。トラッキングサーボをオンするタイミングでの相対速度を小さくすることができれば、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0041】
この問題は、偏芯が大きい光ディスクの場合に特に問題になる。即ち、図20(b)及び(e)を比較してわかるように、トラックよぎりが疎となるタイミングのTE信号の周波数を比較すると、偏芯が大きい(e)の場合のTE信号の周波数の方が高い。サーボの応答周波数は偏芯によらず一定であるので、偏芯が大きいほどトラック引き込み時にトラックの周波数が高く抑圧しにくい周波数となってくる。そのため、トラックの歪みのような外乱や、サーボゲインの調整ばらつきがあった場合にトラック引き込み性能が劣化しやすいことになる。
【0042】
このように本発明が解決しようとする第二の課題は、トラッキングサーボをオンするタイミングでトラックと対物レンズの速度に差があることによるトラック引き込み性能の劣化である。
【0043】
以上で説明した第一及び第二の課題では、共に「トラック引き込み性能の劣化」という表現を用いた。第一の課題においては、一度トラッキングサーボをオンしてレーザスポットがトラックに追従を開始したのも関わらず直後のフォローイング動作中にトラック外れを引き起こしたり、トラック引き込み判定を誤判定してトラック引き込み処理が失敗したりすることをトラック引き込み性能の劣化としている。一方で第二の課題においては、トラッキングサーボをオンしたタイミングでレーザスポットがトラックに追従できないことをトラック引き込み性能の劣化としている。
【0044】
このようにそれぞれの課題で「トラック引き込み性能の劣化」として説明した現象の詳細には差異があるが、いずれもトラック引き込み処理を行った結果失敗に至る現象であるため、本明細書では「トラック引き込み性能の劣化」という共通の表現を用いている。
【0045】
特許文献1においては、予め学習しておいた偏芯量をトラッキング駆動出力に足し込むことで、対物レンズとトラックの相対変位を小さくしてトラック引き込み性能を向上させる手法が開示されている。この手法の場合、前記第一の課題を解決できない。また対物レンズとトラックの相対変位が小さくなるという点ではトラック引き込み性能は向上するが、初速がゼロの状態から移動しているトラックに追従する制御を開始する構成であるため、第二の課題についても解決されてはいない。
【0046】
特許文献2においては、対物レンズとトラックの相対速度を略一定に保つ制御を行ってトラック引き込みを行う手法が開示されている。本手法では第一の課題について考慮されておらず、レンズシフトがゼロの状態から相対速度を略一定に保つ制御を開始するため、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズが初期位置から移動していき、トラック引き込みタイミングではレンズシフトした状態になる。そのため、第一の課題を解決できない。
【0047】
特許文献3においても、キック手段による加速によってレンズシフトがゼロの状態から移動を開始し、その後に対物レンズとトラックの相対速度を略一定に保つ制御を行ってトラック引き込みを行う手法が開示されている。キック手段の目的としては、キック(加速)によるトラックよぎり周波数の変化からトラックの移動方向を検出するためである。しかし本手法の場合にも、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズが初期位置から移動していき、トラック引き込みタイミングではレンズシフトした状態になる。そのため、第一の課題を解決できない。
【0048】
また、特許文献4においては、粗シーク時に位置制御を行い、速度制御に段階的に切り替えることで、速度制御切り替え時のレンズ振動を抑制して速度制御が安定するまでの時間を短縮する手法が開示されている。前記特許文献2と比較すると、速度制御を行ってトラック引き込みを行う点は共通であるが、前記特許文献はトラック引き込みの単体動作時に速度制御を行うのに対して、本特許文献は粗シーク終了タイミングのトラック引き込み時に速度制御を行うという点が異なる。粗シークタイミングのトラック引き込み時の場合には、位置制御と速度制御の切り替え時のレンズ振動によって、トラック引き込みの単体動作時よりも速度制御の整定に時間がかかる。この結果として、トラック引き込み時に速度制御を行う場合よりも更にレンズシフトしてしまうため、本特許文献では位置制御と速度制御を段階的に切り替えている。この手法によって速度制御が安定するまでの時間が短縮される効果は、位置制御と速度制御の切り替え時のレンズ振動によって伸びた分である。即ち特許文献4の手法でも、特許文献2と同様、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズシフトしていくので、トラック引き込み実施タイミングではレンズシフトした状態になる。特許文献4は視野特性を考慮して速度制御整定時間を短縮しているが、本発明者はトラック引き込み単体動作で速度制御をした場合のレンズシフト量をも課題として捉え、更にトラック引き込み性能を向上させることを課題としている。
【0049】
また、ピックアップの設計という観点では、偏芯量ECCの光ディスクに対応しようとすると、偏芯量ECCの2倍のレンズシフト時の視野特性まで考慮しなければならず、レンズ径の小さい対物レンズを用いて小型化できない等、ピックアップ設計に制約があった。
【0050】
本発明の目的は、光ディスク装置におけるトラック引き込み性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0051】
上記課題を改善するために、本発明では一例として特許請求の範囲に記載の構成を用いる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、光ディスク装置におけるトラック引き込み性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1を示すブロック図である。
【図2】実施例1のサーボ制御信号生成回路を示す構成図である。
【図3】実施例1のMIRR信号生成回路及びTZC信号生成回路が出力する信号を説明する波形図である。
【図4】実施例1の速度制御回路を示す構成図である。
【図5】実施例1のレンズシフト電圧出力回路を示す構成図である。
【図6】実施例1のレンズシフト電圧出力回路の動作を説明する波形図である。
【図7】実施例1のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図8】実施例1のトラック引き込み処理を行った場合の動作を説明する波形図である。
【図9】実施例1の効果を説明する波形図である。
【図10】実施例2を示すブロック図である。
【図11】実施例2の速度制御回路を示す構成図である。
【図12】実施例2のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図13】実施例2のリトライ配列である。
【図14】実施例2の効果を説明する波形図である。
【図15】実施例3を示すブロック図である。
【図16】実施例3のサーボ制御信号生成回路を示す構成図である。
【図17】実施例3の速度制御回路を示す構成図である。
【図18】実施例3のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図19】実施例3の効果を説明する波形図である。
【図20】偏心がある光ディスクを回転させた場合のTE信号を説明する図である。
【図21】視野特性を説明する図である。
【図22】解決しようとする課題を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0055】
本発明における実施例1について、以下に説明する。
【0056】
図1は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0057】
信号処理回路103は光ディスク装置の各種の信号処理を行う回路であり、電位Vrefを基準として動作する。
【0058】
光ディスク101は、信号処理回路103に搭載されたシステム制御回路1031からの指令信号を受けたスピンドル制御回路1040から出力される制御信号に基づいてスピンドルモータ駆動回路109によりスピンドルモータ104が駆動され、所定の回転数で回転される。
【0059】
レーザ光源1022は、システム制御回路1031からピックアップ102に搭載されたレーザパワー制御回路1021への指示信号により所定のパワーでレーザ光を発光される。レーザ光源1022から発光されたレーザ光は、コリメートレンズ1023、ビームスプリッタ1024、立上ミラー1025、対物レンズ1027を通して光ディスク101の情報記録面に光スポットとして集光される。光ディスク101の情報記録面で反射した光はビームスプリッタ1024で分岐され、集光レンズ1028で光検出器1029に集光される。光検出器1029は、集光された光を電気信号に変換し、サーボエラー信号生成回路105、RF信号生成回路106に出力する。
【0060】
サーボエラー信号生成回路105は、フォーカス制御に使用するためのフォーカスエラー信号FES、トラッキング制御に使用するためのトラッキングエラー信号TES、及び、中立位置からの対物レンズ1027の変位(レンズシフト量)を示すレンズエラー信号LESを生成して出力する。なお、本実施例のLE信号の極性は、対物レンズ1027が外周側にレンズシフトした場合に正の電圧を示し、対物レンズ1027が内周側にレンズシフトした場合に負の電圧を示すものとする。また、各エラー信号は、基準電位Vrefを基準として出力されるものとする。
【0061】
またRF信号生成回路106は、光検出器1029で検出した電気信号に対してイコライズ処理を行いRF信号として出力する。
【0062】
フォーカス制御回路1032は、システム制御回路1031の指令信号により、フォーカス誤差信号FESに基づいてフォーカス駆動信号FODを出力する。
【0063】
アクチュエータ駆動回路107は、フォーカス駆動信号FODに従って対物レンズ1027と一体で動作するように構成されたアクチュエータ1026をディスク面に垂直な方向に駆動する。上記したようにフォーカス制御回路1032及びアクチュエータ駆動回路107が動作することで、光ディスク101に照射された光スポットが常に光ディスク101の情報記録面で合焦するようにフォーカス制御が行われる。
【0064】
フォーカス制御が動作して、光スポットがディスク1の情報記録面で合焦すると、サーボエラー信号生成回路105は、光スポットと情報記録面上のトラックとの位置のずれを示すトラッキングエラー信号TESを出力する。更にサーボエラー信号生成回路105は、対物レンズ1027のレンズシフト量を示すLE信号を出力する。
【0065】
トラッキング制御回路1033は、システム制御回路1031からの指令信号によりトラッキング誤差信号TESに基づいて、光ディスク101に照射された光スポットが情報記録面上のトラックを追従するように、対物レンズ1027をディスク半径方向に駆動するための信号を出力する。トラッキング制御回路1033から出力された信号は、スイッチ1034、加算器1035を介してアクチュエータ駆動回路107にトラッキング駆動信号TRDとして入力される。
【0066】
スイッチ1034は、システム制御回路1031の出力するTRON信号に基づき、トラッキング制御回路1033の出力信号もしくは基準電圧Vrefを選択して出力する。TRON信号としてHighレベルが入力されると、スイッチ1034は端子aを選択してトラッキング制御回路1033の出力信号がアクチュエータに出力される。一方でTRON信号としてLowレベルが入力されると、スイッチ1034は端子bを選択し、基準電圧Vrefを出力する。
【0067】
この結果、TRON信号はトラッキングサーボのオン・オフを指示する信号となる。またスイッチ1034は、トラッキングサーボのオン、オフを切り替えるスイッチとして機能する。TRON信号がLowからHighに切り替わると、スイッチ1034によってトラッキング制御回路1033の出力信号がアクチュエータに供給される。これによってトラッキングサーボがオンされることになり、この動作はトラック引き込み動作と呼ばれる。
【0068】
加算器1035は、スイッチ1034の出力信号と、後述する速度制御回路1037の出力するVCOUT信号と、後述するレンズシフト電圧出力回路1038の出力するVLS信号とを加算し、加算した信号をトラッキング駆動信号TRDとして出力する。
【0069】
アクチュエータ駆動回路107ではトラッキング駆動信号TRDに従ってアクチュエータ1026をディスク面に平行な方向に駆動することで対物レンズ1027がディスク半径方向に駆動される。トラッキング制御回路1033の出力信号に基づきアクチュエータが駆動されることで、光スポットが情報記録面上のトラックを追従する。このように、本実施例におけるアクチュエータ駆動回路107は、フォーカス方向に駆動する回路とトラッキング方向に駆動する回路を包含したものである。
【0070】
サーボ制御信号生成回路1036は、サーボエラー信号生成回路105の出力するTE信号とLE信号、及びRF信号生成回路106の出力するRF信号を入力として、各種制御信号を生成する。本実施例のサーボ制御信号生成回路1036は、MIRR信号、TZC信号、TROK信号、LSOK信号を生成して出力する。このうち、TROK信号、LSOK信号はシステム制御回路1031に出力される。
【0071】
速度制御回路1037は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号及びMIRR信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路1031からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またシステム制御回路1031からの信号VCONによって速度制御出力のオン・オフを制御する。
【0072】
またレンズシフト電圧出力回路1038は、システム制御回路1031から出力されるLSCTRL信号に基づき、対物レンズ1027を半径方向にレンズシフトさせるための電圧をVLS信号として出力する。
【0073】
また、スライダ制御回路1039は、システム制御回路1031からの指令信号を受けると、トラッキング制御回路1033の出力信号の平均値に基づいてスライダモータ111を駆動するスライダ駆動信号を出力する。このスライダ駆動信号に従ってスライダモータ駆動回路108がスライダモータ112を駆動することにより、トラックを追従し続けた場合であっても対物レンズ1027が常にレンズシフトがゼロとなる中立位置近傍で動作するように、光ピックアップ102がディスク半径方向に移送される。
【0074】
更に、光ディスク101上の半径の異なる位置へ光ピックアップ102を駆動するシーク動作においては、システム制御回路1031からのシーク動作の指令信号を受けてスライダ駆動回路1039がスライダ駆動信号を出力し、このスライダ駆動信号に従ってスライダモータ駆動回路108がスライダモータ112を駆動することでシーク動作を行う。
【0075】
次に、かかる光ディスク装置におけるサーボ制御信号生成回路1036の構成について、図2を用いて説明する。
【0076】
サーボ制御信号生成回路1036は、RF信号、TE信号、LE信号を入力とし、MIRR信号、TZC信号、TROK信号、LSOK信号を生成して出力する。サーボ制御信号生成回路1036は、MIRR信号生成回路201、TZC信号生成回路202、TROK信号生成回路203、及びLSON信号生成回路204から構成される。
【0077】
MIRR信号生成回路201は、下側エンベロープ検出回路2011、第一の閾値電圧出力回路2012、及び第一の比較器2013から構成される。
【0078】
下側エンベロープ検出回路2011はRF信号の下側エンベロープのレベルを出力する。
【0079】
第一の閾値電圧出力回路2012は所定の電圧レベルVthRFを出力する。
【0080】
第一の比較器2013は、下側エンベロープ検出回路2011の出力信号が第一の閾値電圧出力回路2012が出力する電圧レベルVthRFより大きいか否かをHigh、Lowの論理信号として生成し、MIRR信号として出力する。
【0081】
TZC信号生成回路202はTE信号を入力とする2値化回路2021である。2値化回路2021は、基準電圧Vrefを基準としてTE信号を2値化した信号を生成し、TZC信号として出力する。
【0082】
TROK信号生成回路203は、絶対値化回路2031、ピークホールド回路2032、第二の閾値電圧出力回路2033、第二の比較器2034から構成される。
【0083】
絶対値化回路2031は、TE信号の絶対値を取り、出力する。このとき、TE信号の絶対値はVrefを基準としたときのTE信号の絶対値を意味する。
【0084】
ピークホールド回路2032は、絶対値化回路2031の出力信号を所定の期間Tw_TRONの間、監視し、そのピーク値を保持して出力する。
【0085】
第二の閾値電圧出力回路2033は所定の電圧レベルVthTEを出力する。
【0086】
第二の比較器2034は、ピークホールド回路2032の出力信号が第二の閾値電圧出力回路2033が出力する電圧レベルVthTEより大きいか否かをHigh、Lowの論理信号として生成し、TROK信号として出力する。
【0087】
TROK信号は前記所定の期間Tw_TRONにおけるTE信号振幅の最大値を監視し、その値が閾値以上であればHighとなる信号である。ピークホールド回路2032で監視する期間Tw_TRONがトラックよぎり周期より長ければ、ピークホールド回路2032の出力信号はトラッキングサーボをオフした時のTE振幅となる。このことを利用して、TROK信号は、トラッキングが引き込んでいるかどうかを判定する信号として使うことができる。
【0088】
即ち、トラッキング引き込みが失敗した場合にはピークホールド回路2032の出力信号はトラッキングサーボをオフした時のTE振幅となる。一方、トラック引き込みが成功した場合にはTE信号はVref近辺の値となるので、ピークホールド回路2032の出力信号はTE振幅よりは小さな値となる。そのため、監視期間Tw_TRON及び電圧レベルVthTEを適切に設定すれば、TROK信号はトラック引き込みの成否判定に使用可能な信号となる。
【0089】
なお、ピークホールド回路2032はピーク値を保持するので、トラック引き込みに成功していてもフォローイング中に傷などを通過すると一時的にTROK信号はLowになる。そのため、トラック引き込み判定処理においては、例えば一例として、TROK信号を所定の期間監視し、該所定の期間のうちにTROK信号がHighになることがあればトラック引き込み成功と判定することで実現できる。
【0090】
LSOK信号生成回路204は正負判定回路2041、遅延子2042、XOR回路2043から構成される。
【0091】
正負判定回路2041はLE信号の正負を判定し、LE信号がVrefより大きければHighレベル、Vrefより小さければLowレベルを出力する。このように、正負判定回路2041における正負は、Vrefを基準としたときのLE信号の正負を意味する。
【0092】
遅延子2042は正負判定回路2041の出力信号を、所定の時間Tsだけ遅延させて出力する。
【0093】
XOR回路2043は正負判定回路2041の出力信号と遅延子2042の出力信号の排他的論理和をとった結果をHigh、Lowレベルの信号として出力する。
【0094】
この結果、LSOK信号生成回路204は、前記所定の時間Tsだけ前のLE信号の正負と、現在のLE信号の正負が異なっている場合にのみ、Highレベルを出力する。即ち、前記所定の時間Tsを適切に設定することで、LE信号が基準電圧Vrefを跨いだタイミングを検出する回路として機能する。またLSOK信号は、LE信号が基準電圧Vrefを跨いで単調に増加もしくは減少するとき、Vrefを跨ぐタイミングでTsの期間のみHighとなる信号となる。
【0095】
ここで、MIRR信号生成回路201及びTZC信号生成回路202が出力する信号について、図3を用いて説明する。図3は、トラッキングサーボをオフした状態でレーザがトラックをよぎった際の、トラックの模式図と、その時のMIRR信号生成回路201及びTZC信号生成回路202の各部における信号波形を示している。なお、図3(1)は対物レンズ1027から見たトラックの移動方向が内周方向のときの波形を示しており、図3(2)はトラックの移動方向が外周方向のときの波形を示している。
【0096】
図3(a)はトラックを模式的に示したものである。また、図3(b)はRF信号であり、(c)は下側エンベロープ検出回路2011の出力信号、(d)はMIRR信号、(e)はTE信号、(f)はTZC信号である。
【0097】
なお、本実施例ではグルーブ記録の光ディスクの場合を用いて説明する。また、ここでは偏芯によって対物レンズ1027の真上を移動するトラックがすべて記録部である場合を示している。
【0098】
この場合、RF信号は図3(a)に示すように、グルーブを通過するタイミングでRF信号の振幅が大きくなり、ランドを通過する期間はRF信号の振幅が小さくなる。
【0099】
図3(b)に示すように電圧レベルVthRFを適切に設定することによって、図3(c)のMIRR信号は対物レンズ1027の真上がランドとなる期間でHighレベルを示す信号となる。本実施例においては、VthRFは図3(c)に示すように適切なレベルに設定されるものとする。
【0100】
一方図3(f)に示すTZC信号は、図3(e)に示すTE信号を2値化した信号である。そのため、MIRR信号(d)とTZC信号(f)の位相は90度ずれた関係にある。
【0101】
更に図3(1)と図3(2)を比較してわかるように、MIRR信号とTZC信号の位相はトラックの移動方向によって180度反転することが、一般に知られている。そのため、MIRR信号とTZC信号の位相関係から、トラックの移動方向を検出することが可能である。
【0102】
次に、本実施例における速度制御回路1037の構成について図4を用いて説明する。速度制御回路1037は移動方向検出回路401、TZC周期計測回路402、速度制御駆動回路403、スイッチ404から構成される。
【0103】
移動方向検出回路401は、MIRR信号とTZC信号の位相関係からトラックの移動方向を検出し、その結果を移動方向情報MOVEDIRとして出力する。
【0104】
TZC周期計測回路402はTZC信号の周期を計測し、その結果をTZC周期情報TZCPRDとして出力する。
【0105】
速度制御駆動回路403は、移動方向情報MOVEDIRとTZC周期情報TZCPRDに基づき、TZC周期が所定の周期TGTRRDに保たれるように、半径方向にアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。また、TZC信号の目標周期TGTPRDはシステム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定される。
【0106】
速度制御回路404は、移動方向情報MOVEDIRからトラックの移動方向を取得して、トラックの移動方向と同じ方向に対物レンズ1027が駆動されるよう、駆動信号の極性(正負)を決定する。また、TZC周期情報TZCPRDに基づき現在のTZC周期と目標周期TGTPRDとを比較して、その差に応じた電圧を出力する。以上によりTZC周期を目標周期TGTRRDに保つ制御が行われるので、トラックと対物レンズ1027の相対速度が略一定に保たれる。なお、TZC周期を所定の目標周期に保つ、本実施例に記載の速度制御のことを、密シークと呼ぶこともある。
【0107】
スイッチ404は、システム制御回路1031の出力するVCON信号に基づき、速度制御駆動回路403の出力信号もしくは基準電圧Vrefを選択して、速度制御出力信号VCOUTとして出力する。VCON信号としてHighレベルが入力されると、スイッチ404は端子aを選択して速度制御駆動回路403の出力信号がVCOUT信号としてアクチュエータに出力される。一方でVCON信号としてLowレベルが入力されると、スイッチ404は端子bを選択し、基準電圧Vrefを出力する。この結果、スイッチ404は速度制御のオン、オフを切り替えるスイッチとして機能する。またVCON信号は速度制御のオン・オフを指示する信号となる。
【0108】
なお、移動方向情報MOVEDIRとTZC周期情報TZCPRDは、システム制御回路1031にも出力される。
【0109】
次に、本実施例におけるレンズシフト電圧出力回路1038の構成について、図5を用いて説明する。
【0110】
レンズシフト電圧出力回路1038は、レンズシフト電圧制御回路501、レンズシフト電圧生成回路502、及び可変ゲイン503から構成される。
【0111】
レンズシフト電圧制御回路501は、システム制御回路1031の出力するLSCTRL信号に基づき、後述するレンズシフト電圧生成回路502及び後述する可変ゲイン503を制御するための指令信号を出力する。レンズシフト電圧制御回路501は、例えば一般的なCPUを用いることができる。
【0112】
レンズシフト電圧生成回路502は、レンズシフト電圧制御回路501からの指令信号に基づき、所定の電圧レベルを出力する。
【0113】
また可変ゲイン503は、レンズシフト電圧制御回路501からの指令信号に基づき、レンズシフト電圧生成回路502の出力する電圧に所定のゲインをかけて、レンズシフト電圧VLSとして出力する。
【0114】
続いて本実施例におけるレンズシフト電圧出力回路1038の動作について、図6を用いて説明する。
【0115】
本実施例におけるLSCTRL信号は、レンズシフト電圧生成回路501
に設定する電圧を伝達する情報と、レンズシフト電圧出力回路1038の動作状態を変更する動作状態変更情報LSMODEとを含む。
【0116】
レンズシフト電圧出力回路1038は、LSMODEのレベルに応じて、所定の動作を開始する。それぞれの動作について、図6を用いて説明する。
【0117】
図6において、(1)、(2)、(3)は、レンズシフト電圧出力回路1038の状態が異なる3つ場合を示している。
【0118】
図6(a)はレンズシフト電圧出力回路1038の出力信号であるVLS信号の波形である。図6(b)はLSCTRL信号に含まれる動作状態変更情報LSMODEの遷移を示している。本実施例におけるLSMODEは3つの値をとるものとし、以下、Lowレベル、Middleレベル、Highレベルと呼ぶ。
【0119】
図6(1)の時刻t=tL0に示すように、LSMODEとしてHighレベルが入力されると、所定の電圧VLSiniの出力を開始する。以下、この動作のことをVLS信号の出力開始と呼ぶ。
【0120】
また時刻t=tL1に示すように、LSMODEとしてMiddleレベルが入力されると、VLS信号の振幅を時間の経過と共に徐々に減少させる動作を開始する。以下、この動作のことをVLS信号振幅の減少開始と呼ぶ。
【0121】
図6(1)は、時刻t=tL2においてVLS信号レベルが基準電圧Vrefにまで低下した場合を示しており、VLS信号レベルがVrefに至ると以後のVLS信号レベルは変化せずVrefを出力し続ける。
【0122】
ここで、VLS信号の振幅とは、VLS信号レベルをVref基準で見た振幅である。即ち、図6(1)においてはVLS信号レベルが低下したが、VLSiniがVrefより小さい値の場合には、図6(2)に示すようにVLS信号レベルは上昇する。いずれの場合も、VLS信号レベルをVrefに向かって徐々に近づける動作になる。
【0123】
また図6(3)は時刻t=tL3においてLSMODEとしてLowレベルが入力された場合を示している。図からわかるようにtL3はtL1以上tL2以下の数値であり、時刻t=tL1のVLS振幅の減少開始の後、VLS振幅が減少中に、システム制御回路1031からLSMODEとしてLowレベルが入力された場合を示している。
【0124】
図6(3)時刻t=tL3に示すように、LSMODEとしてLowレベルが入力されると、VLS信号レベルをVrefにする。以下、この動作のことをVLS信号のリセットと呼ぶ。
【0125】
以上の動作は例えば、レンズシフト電圧生成回路502において常にLSCTRL信号電圧VLSiniを出力し、LSMODEのレベルに応じて可変ゲイン503の値を変更することにより実現できる。
【0126】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0127】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS701)、システム制御回路1031は、速度制御回路1037の出力するMOVEDIR情報からトラックの移動方向を取得する(ステップS702)。
【0128】
続いて、移動方向が外周であるかを判別し(ステップS703)、それを受けて、LSCTRL信号をHighにしてVLS信号の出力を開始する。その際、VLS信号出力開始時の電圧VLSiniの電圧を、ステップS703での判別結果に応じて変える。
【0129】
即ち、移動方向が外周である場合(ステップS703でYesの場合)、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS704)。一方、移動方向が内周である場合(ステップS703でNoの場合)、VLSiniをVrefより小さな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS705)。
【0130】
これは、トラックの移動方向が外周であれば対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせ、またトラックの移動方向が内周であれば対物レンズ1027を内周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0131】
ステップS704、もしくはステップS705に続いて、速度制御回路1037の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS706)。
【0132】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS706でNoの場合)、再びステップS706に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0133】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS706でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS707)。
【0134】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS707でNoの場合)、再びステップS707に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0135】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS707でYesの場合)には、VCON信号をHighとして速度制御を開始する(ステップS708)。
【0136】
以上のステップS706からステップS707にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS706からステップS707にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0137】
ステップS708に続いて、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS709)。
【0138】
ステップS709に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS710)。
【0139】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS710でNoの場合)、再びステップS710に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0140】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS710でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS711)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS712)。
【0141】
ステップS712に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS713)。
【0142】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS714)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS714でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS715)。
【0143】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS714でNoの場合)、ステップS702に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0144】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理を行った場合の動作について、図8を用いて説明する。
【0145】
図8はトラック引き込み処理を行った場合の、各部の波形を示している。図8において、(a)はTE信号、(b)はVLS信号、(c)はVCON信号、(d)はLSOK信号、(e)はTRON信号であり、(f)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0146】
ここで、LE信号は対物レンズ1027のレンズシフト量を示す信号であるので、LE信号の波形は図8(f)の波形と同一の形状となる。そのため、縦軸の数値を無視すれば、図8(f)の波形はLE信号の波形と置き換えて見ることができる。
【0147】
時刻t1はトラック引き込み処理の開始時刻である。図8ではトラックの移動方向を図示していないが、ここでは時刻t1においてトラックが外周方向に移動している場合を示している。トラックが外周方向に移動していると判別したため、(b)においてVLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力が開始されている。この結果(f)において、対物レンズ1027が外周側へ移動してレンズシフトが発生する。(f)においてLSiniは、TRD信号として電圧VLSiniを与えたときに対物レンズ1027が最終的に移動する位置のレンズシフト量である。
【0148】
LSiniは、LE信号と対物レンズ1027のレンズシフト量との変換比をα[V/um]とすると、以下のように表される。
LSini=α・VLSini
図8(f)に示したように、対物レンズ1027はLSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0149】
時刻t2はTE信号の周期が最大となるタイミングであり、言い換えると偏芯が折り返るタイミングである。このとき、トラックの移動速度はゼロとなり、時刻t2以降ではトラックは移動方向を反転し、内周方向への移動を開始する。内周方向へ移動すると共にTE信号の周期は速くなるが、本実施例ではTZC周期を監視しており、偏芯の折り返りを検出するまで待つ。
【0150】
時刻t3は、偏芯の折り返りを検出したタイミングである(ステップS707でYesとなったタイミングに相当)。本実施例においては、TZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つことで偏芯の折り返りを検出するため、TZC周期がTh2より小さくなるまでの検出遅れが発生する。そのため、時刻t2と時刻t3は一致しない。
【0151】
時刻t3では、(c)においてVCONがHighとなり速度制御が開始されるとともに、(b)においてVLS振幅の減少が開始される。
【0152】
前述したようにトラックの移動方向は外周から内周に向かう方向であるので、速度制御した結果、対物レンズ1027も外周から内周に向かう方向に駆動される。速度制御回路はTE信号を2値化したTZC信号の周期を目標周期TGTPRDに一致させるように制御をするので、相対速度が略一定に保たれる。
【0153】
そのため、(a)のTE信号においてはTE信号が疎となるタイミングを超えても密にはならずにTE信号の周期が略一定になるとともに、(f)のレンズシフト量は減少する。ここで本実施例においては、予めLSiniだけ外周側にレンズシフトさせた状態で、トラックの移動方向が内周方向になった後に速度制御を開始したので、レンズシフト量はLSini近傍の値から、レンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0154】
時刻t4はVLS振幅が減少してVrefに至った時刻である。
【0155】
時刻t5はレンズシフト量が負になったタイミングである。このタイミングでは、(d)に示すようにLSOK信号がHighレベルとなり、これを受けて(c)でVCONをLowレベルにして速度制御を終了するとともに、TROMをHighとしてトラッキングサーボをオンする。その結果、(a)のTE信号ではトラック引き込みが成功している。
【0156】
次に本実施例の効果について、図9を用いて説明する。
【0157】
図9はトラック引き込み処理を行った場合の、各種波形を示している。図8では本実施例におけるトラック引き込み動作を説明するためにVCON信号やLSOK信号などの詳細な内部信号について記載したが、図9においては割愛している。
【0158】
図9(a)は偏芯であり、(b)はTE信号、(c)はTRON信号、(d)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0159】
時刻t1、t2、t3、t5は図8における時刻と同じであり、説明は省略する。
【0160】
本実施例におけるトラック引き込み処理においては、時刻t1において予めレンズシフトさせた上で、時刻t2の偏芯の折り返りを待って時刻t3から速度制御を開始する。そして時刻t5のレンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施する。
【0161】
時刻t=t5におけるトラック引きこみが成功すると、その後、対物レンズ1027は図9(a)に示す偏芯に沿って引き込んだトラックに追従する。そのため時刻t=t5以降のレンズシフトの推移としては、図9(d)に示すように、レンズシフトは±ECCの範囲内に収まる。これはレンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施しているためである。
【0162】
そのため本実施例の光ディスク装置によれば、従来技術ではトラック引き込みから半周期後に偏芯量ECCの2倍のレンズシフトが発生していた課題を解決できる。そのため、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0163】
なお、本実施例においてはステップS702においてまず移動方向を取得し、取得結果によってレンズシフトの方向を変え、その後ステップS706及びS707においてTE信号の周期が最大となるタイミングを検出する処理とした。しかし、図8の時刻t1にて予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行うことができれば、本実施例の処理方法に限定されるものではない。
【0164】
その一例として例えば、ステップS702における移動方向の取得を省く処理とすることも可能である。例えば、図8における時刻t1では必ず外周にレンズシフトさせる処理とし、続いて移動方向情報TRMOVEを監視し、トラックの移動方向が内周方向になるまでWaitする。トラックの移動方向が内周方向になったことをもって、図8における時刻t3で示した速度制御開始タイミングを決定してもよい。この場合にも、波形としては図8と同等の波形となる。
【0165】
いずれにしても、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う処理とすることにより、対物レンズはレンズシフトが小さくなる方向に速度制御される。この結果、レンズシフトがゼロとなるタイミングでのトラック引き込みが可能になり、トラック引き込み直後のレンズシフトを抑制できる。そのため本実施例の光ディスク装置によれば、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0166】
また、本実施例の光ディスク装置によれば、速度制御を行うことでトラックと対物レンズの相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0167】
以上の動作により、実施例1の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0168】
実施例2について、以下に説明する。
【0169】
図10は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。実施例1のブロック線図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0170】
本実施例における速度制御回路1041は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号及びMIRR信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またVCON信号によって駆動信号のオン・オフを制御する。
【0171】
次に、本実施例における速度制御回路1041の構成について図11を用いて説明する。実施例1の速度制御回路の構成図である図4と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0172】
速度制御出力可変ゲイン405は、速度制御駆動回路403の出力信号に対して所定のゲインVCGAINをかけて出力する。該ゲインVCGAINは、システム制御回路の出力するVCCTRL情報に基づき設定される。
【0173】
速度制御出力可変ゲイン405の出力信号はスイッチ404の端子aに接続され、VCONにHighレベルが入力されるとアクチュエータに出力されて速度制御が実施される。
【0174】
本実施例におけるVCCTRL信号は、TZC信号の目標周期TGTPRDに加え、速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINの情報を含む。
【0175】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0176】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS1201)、システム制御回路1031は、内部変数RetryNumをゼロに初期化する(ステップS1202)。変数RetryNumは、トラック引き込みのリトライ回数をカウントする変数である。
【0177】
ステップS1202の後、速度制御回路1041の出力するMOVEDIR情報からトラックの移動方向を取得する(ステップS1203)。続いて、速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINを、RetryNumに応じて、配列VcGainTblに従い変更する(ステップS1204)。配列VcGainTblの詳細については後述する。
【0178】
その後、移動方向が外周であるかを判別し(ステップS1205)、それを受けて、LSCTRL信号をHighにしてVLS信号の出力を開始する。その際、VLS信号出力開始時の電圧VLSiniの電圧を、ステップS1205での判別結果に応じて変える。
【0179】
即ち、移動方向が外周である場合(ステップS1205でYesの場合)、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1206)。一方、移動方向が内周である場合(ステップS1205でNoの場合)、VLSiniをVrefより小さな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1207)。
【0180】
これは、トラックの移動方向が外周であれば対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせ、またトラックの移動方向が内周であれば対物レンズ1027を内周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0181】
ステップS1206、もしくはステップS1207に続いて、速度制御回路1041の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS1208)。
【0182】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS1208でNoの場合)、再びステップS1208に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0183】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS1208でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS1209)。
【0184】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS1209でNoの場合)、再びステップS1209に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0185】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS1209でYesの場合)には、VCON信号をHighとして速度制御を開始する(ステップS1210)。
【0186】
以上のステップS1208からステップS1209にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS1208からステップS1209にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0187】
ステップS1210に続いて、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS1211)。
【0188】
ステップS1211に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS1212)。
【0189】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS1212でNoの場合)、再びステップS1212に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0190】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS1212でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS1213)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS1214)。
【0191】
ステップS1214に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS1215)。
【0192】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS1216)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS1216でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS1217)。
【0193】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS1216でNoの場合)、内部変数RetryNumに1を加算して、トラック引き込みのリトライ回数をカウントアップする(ステップS1218)。その後ステップS1203に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0194】
ここで、ステップS1204において速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINを決める配列であるVcGainTblについて、図13を用いて説明する。
【0195】
図13は配列VcGainTblを示したものである。配列VcGainTblは速度制御出力可変ゲイン405に設定するリトライ配列であり、3回以上失敗した場合のVcGainTblは割愛している。
【0196】
これより、初回トラック引き込み処理においては、トラック引き込みのリトライ回数RetryNumはゼロであるので、VcGain=0dBである。それに対し、トラック引き込み処理が1度失敗するとVcGain=3dB、2度失敗するとVcGain=6dBとなる。
【0197】
VcGainは速度制御出力可変ゲイン405に設定する値であるので、トラック引き込み処理のリトライで、速度制御駆動回路403の出力信号の増幅ゲインを段階的に増加していることになる。
【0198】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0199】
図14は速度制御出力可変ゲイン405を変更する前と、変更した後で、相対速度がどのように変化するかを示す図である。図14(1)は速度制御出力可変ゲイン405を変更しなかった場合(VcGain=0dB)の波形、図14(2)は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)の波形を示している。
【0200】
図14(1)、(2)において、(a)はTE信号であり、(b)はトラックと対物レンズ1027の相対速度、(c)はVCON信号である。
【0201】
また、(b)において、速度制御を実施した結果、トラックと対物レンズ1027の相対速度が収束する値は、システム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定されるTZC信号の目標周期TGTPRDに依存する。そのため、図14(1)及び(2)において相対速度は同じ値に収束する。この値をTGTVELとすると、この値は目標周期TGTPRDに相当する、目標移動速度であると言える。
【0202】
また、Aで示す矢印は、t=t2にて速度制御を行わなかった場合の相対速度の変化を模式的に示している。
【0203】
また、時刻t1はTE信号が疎になるタイミング、時刻t2は速度制御を開始するタイミングである。また、t3は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)に速度制御が整定する時刻、t4は速度制御出力可変ゲイン405を変更しなかった場合(VcGain=0dB)に速度制御が整定する時刻を示している。
【0204】
図14(1)においては、時刻t2の速度制御開始後、速度制御のゲインが小さいためにトラックの移動速度になかなか追従せず、しばらくは矢印Aに沿って変化している。やがて相対速度は減少に転じ、時刻t4になってようやく相対速度が目標移動速度TGTVELに収束する。
【0205】
ここで、速度制御が整定するまでには時刻t2から時刻t4までの時間がかかっている。この間に対物レンズ1027が移動する距離は、対物レンズ1027の速度の積分で求まり、これがVLS信号出力開始時の電圧VLSiniより大きい場合、速度制御の整定よりも先にLSOK=Highとなり(図12のステップS1012でYes)、トラッキングサーボをオンしてしまうことになる。
【0206】
ここで、本発明の解決しようとする第二の課題は、トラッキングサーボをオンするタイミングでトラックと対物レンズ1027の速度に差があることによるトラック引き込み性能の劣化であった。
【0207】
そのため、速度制御の整定に時間がかかると、前記第二の課題を解決できない。
【0208】
一方で、図20(d)で示した、対物レンズから見たトラックの移動速度波形で説明したように、偏芯量ECCが大きい光ディスクであるほど、TE信号が密になるタイミングでのトラックの移動速度は大きくなる。
【0209】
速度制御はトラックの移動速度と対物レンズ1027の移動速度の差である相対速度を略一定に保つ制御であるので、偏芯量ECCが大きい光ディスクでは速度制御が整定するまでに、より長い時間を要する。
【0210】
そのため、偏芯の大きな光ディスクである場合に速度制御ゲインが不足していると、前記第二の課題を解決できないという課題がある。本実施例はこの課題を解決するための構成であり、トラック引き込み処理のリトライにおいて速度制御出力可変ゲイン405の値を増加して、速度制御の追従を早くする。
【0211】
図14(2)は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)の波形である。速度制御出力可変ゲイン405を増加したので、速度制御出力の振幅が増加して、時刻t=t2直後の相対速度の変化が大きくなって相対速度の収束が速くなる。このように、速度制御のゲインを増加することにより、速度制御の追従を早くすることが可能である。
【0212】
なお、速度制御のゲインを上げるとオーバーシュートが発生し、目標速度TGTVEL近辺に近づいてから完全に収束するまでの時間は延びる。しかし前記第二の課題を解決する上では、相対速度が厳密にTGTVELになっていることが重要なのではなく、トラッキングサーボをオンするタイミングでの相対速度を小さくすることができればよい。即ち、相対速度がTGTVEL近辺の値になっていればトラック引き込み性能は向上できる。
【0213】
以上説明したように、オーバーシュートを発生してでも速度制御ゲインを増加することで、偏芯の大きな光ディスクの場合に相対速度の収束を速めることが可能になる。
【0214】
そのため、本実施例のようにリトライで速度制御ゲインを増加させる動作とすることにより、偏芯の大きな光ディスクの場合であってもトラック引き込みを成功させることができる。
【0215】
以上の動作により、実施例2の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0216】
実施例3について、以下に説明する。
【0217】
実施例1及び実施例2は、RF信号からMIRR信号を生成し、MIRR信号を用いて速度制御を行う構成とした。しかしRF信号はBD−ROMディスクのようにピットが形成されているか、またはBD−Rディスクの記録済み領域のようにマークが形成されている場合にのみ出力される。言い換えると、例えばBD−Rディスクなどの、記録用光ディスクの未記録部においては、RF信号は出力されず、MIRR信号は正しく生成できない。
【0218】
MIRR信号が正しく生成できない場合は、MIRR信号とTZC信号の移送関係からトラックの移動方向を判別する手法を用いることができない。一方で、TE信号だけではトラックの移動方向を検出することはできない。図20を用いて説明すると、図20(a)に示したように点Aから点Kにかけてトラックは外周方向に移動し、点Kから点Aにかけてトラックは内周方向に移動している。しかしこのときのTE信号は図20(b)に示したようになり、両者に差がない。そのためTE信号だけではトラックの移動方向を検出することはできない。そのため、記録用光ディスクの未記録部ではトラックの移動方向を知る方法はない。
【0219】
記録用光ディスクの未記録部においてもトラック引き込み性能を向上させるために、本実施例はMIRR信号を用いずに速度制御を行う構成である。
【0220】
図15は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。実施例1のブロック線図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0221】
サーボ制御信号生成回路1042は、サーボエラー信号生成回路105の出力するTE信号とLE信号を入力として、制御信号を生成する。本実施例のサーボ制御信号生成回路1042は、TZC信号、TROK信号、LSOK信号、LSMOVEOK信号を生成して出力する。このうち、TROK信号、LSOK信号、LSMOVEOK信号はシステム制御回路1031に出力される。
【0222】
速度制御回路1043は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またVCON信号によって駆動信号のオン・オフを制御する。
【0223】
次に、本実施例におけるサーボ制御信号生成回路1042の構成について、図16を用いて説明する。実施例1のサーボ制御信号生成回路の構成図である図2と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0224】
サーボ制御信号生成回路1042は、TE信号、LE信号を入力としTZC信号、TROK信号、LSOK信号、及びLSMOVEOK信号を生成して出力する。サーボ制御信号生成回路1042は、TZC信号生成回路202、TROK信号生成回路203、及びLSON信号生成回路204から構成される。
【0225】
本実施例におけるサーボ制御信号生成回路1042と、実施例1におけるサーボ制御信号生成回路1036との違いは、MIRR信号生成回路201がなくなった点である。
【0226】
本実施例における速度制御回路1043の構成について、図17を用いて説明する。実施例1のサーボ制御信号生成回路の構成図である図4と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0227】
速度制御回路1043は、TZC周期計測回路402、速度制御駆動回路406、スイッチ404から構成される。
【0228】
速度制御駆動回路406は、VCCTRL信号とTZC周期情報TZCPRDに基づき、TZC周期が所定の周期TGTRRDに保たれるように、半径方向にアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。また、TZC信号の目標周期TGTPRDはシステム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定される。また、対物レンズ1027を駆動する方向(内周方向もしくは外周方向)は、VCCTRL信号に基づき決定される。
【0229】
なお、TZC周期情報TZCPRDは、システム制御回路1031にも出力される。
【0230】
ここで、速度制御はトラックの移動速度と対物レンズ1027の移動速度の差、即ち相対速度を略一定に保つ制御であるので、速度制御を開始する時の対物レンズ1027の駆動開始方向(内周方向もしくは外周方向)は、トラックの移動方向と同一の方向になる。しかし、本実施例における速度制御回路1043はMIRR信号を用いずに速度制御を行う構成であるので、トラックの移動方向を知ることができない。そのため速度制御を開始する時に、対物レンズ1027を内周方向もしくは外周方向のいずれの方向に駆動すればよいかを判別できない。
【0231】
本実施例においてシステム制御回路1031から出力されるVCCTRL信号は、TZC信号の目標周期TGTPRDに加え、速度制御において対物レンズ1027を駆動する方向の情報を含む。システム制御回路1031が、速度制御において対物レンズ1027を駆動する方向を指定するということは、言い換えると、トラックの移動方向を仮定して速度制御を行うことを意味する。
【0232】
ここで、前記仮定が間違っていた場合の速度制御について説明する。例えばトラックの移動方向が内周方向であるのにも関わらず、対物レンズ1027を駆動する方向を外周方向と指定して速度制御した場合を考える。
【0233】
速度制御は対物レンズ1027を外周方向に駆動するため、相対速度は大きくなる。速度制御はトラックの移動方向と対物レンズ1027の移動方向が一致していることを前提に制御するので、この場合、速度制御は駆動出力が足りずに相対速度が大きくなったと判断する。即ち、速度制御は更に駆動出力を上げる動作を行う。この結果、相対速度は更に大きくなる方向に制御がかかる。
【0234】
そのためTE信号の周期に着目すると、目標周期であるTGTPRDにならずに、速度制御の開始とともに急激に短くなっていく。言い換えると、TE信号が密になる。
【0235】
このように、トラックの移動方向の仮定が正しいかどうかは、速度制御した結果のTE信号の周期で判定することができる。
【0236】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図18のフローチャートを用いて説明する。
【0237】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS1801)、システム制御回路1031は、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1802)。これは、対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0238】
続いて、速度制御回路1043の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS1803)。
【0239】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS1803でNoの場合)、再びステップS1803に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0240】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS1803でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS1804)。
【0241】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS1804でNoの場合)、再びステップS1804に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0242】
以上のステップS1803からステップS1804にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS1803からステップS1804にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0243】
ステップS1804においてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS1804でYesの場合)には、VCON信号をHighとするとともに、VCCTRL信号により対物レンズ1027を駆動する方向を内周方向と指定する(ステップS1805)。
【0244】
ステップS1805は、ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が内周方向であると仮定して速度制御を開始する、と言い換えることもできる。
【0245】
ステップS1805に続いて、所定の時間TlsだけWaitする(ステップS1806)。
【0246】
ステップS1806に続いて、TZC信号の周期が所定の時間Th3より大きいかを判別する(ステップS1807)。
【0247】
ステップS1805における仮定が正しかった場合(ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が内周方向であった場合)には、TZC信号の周期は目標周期TGTPRDに向かって変化する。
【0248】
一方、ステップS1805における仮定が誤っていた場合(ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が外周方向であった場合)には、TZC信号の周期は急速に短くなる。
【0249】
そのため、時間Tlsを速度制御の応答時間から決定し、時間Th3を目標周期TGTPRDより短い時間で適切に設定することにより、ステップS1806及びステップS1807は、トラックの移動方向の仮定が正しいかどうかを判定する動作として機能する。時間Th3は例えば、目標周期TGTPRDの半分の値とすればよい。
【0250】
ステップS1807においてTZC信号の周期が所定の時間Th3より小さかった場合(ステップS1807でNoの場合)、VCON信号をLowとして速度制御を中止する(ステップS1808)。ステップS1808に続いては、ステップS1803に戻る。
【0251】
ステップS1807においてTZC信号の周期が所定の時間Th3より大きかった場合(ステップS1807でYesの場合)、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS1809)。
【0252】
ステップS1809に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS1810)。
【0253】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS1810でNoの場合)、再びステップS1810に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0254】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS1810でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS1811)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS1812)。
【0255】
ステップS1812に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS1813)。
【0256】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS1814)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS1814でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS1815)。
【0257】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS1814でNoの場合)、ステップS1802に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0258】
次に本実施例の効果について、図19を用いて説明する。
【0259】
図19はトラック引き込み処理を行った場合の、各種波形の一例を示している。図19において、(a)はTE信号、(b)はVLS信号、(c)はVCON信号、(d)はLSOK信号、(e)はTRON信号であり、(f)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0260】
時刻t1はトラック引き込み処理の開始時刻である。図19ではトラックの移動方向を図示していないが、ここでは時刻t1においてトラックが内周方向に移動している場合を示している。それに対し本実施例のトラック引き込み処理では、図19(b)においてVLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する。
【0261】
この結果図19(f)において、対物レンズ1027が外周側へ移動してレンズシフトが発生する。(f)においてLSiniは、TRD信号として電圧VLSiniを与えたときに対物レンズ1027が最終的に移動する位置のレンズシフト量である。対物レンズ1027はLSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0262】
時刻t2はTE信号の周期が最大となるタイミングであり、言い換えると偏芯が最大となるタイミングである。このとき、トラックの移動速度はゼロとなり、時刻t2以降ではトラックは移動方向を反転し、外周方向への移動を開始する。
【0263】
本実施例では時刻t1の後、TZC周期を監視しており、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。
【0264】
時刻t3は前述した2つの待ち動作が完了したタイミングである(ステップS1804で1回目にYesとなったタイミングに相当)。即ち時刻t3では、(c)においてVCONがHighとなり速度制御が開始される。
【0265】
ここで本実施例においては、実施例1及び実施例2と異なり、トラックの移動方向を判別できない。そのため速度制御において対物レンズ1027が駆動する方向(内周方向もしくは外周方向)を確定できない。
【0266】
そこで本実施例においては、時刻t1において外周方向にレンズシフトさせる。また時刻t3においては、トラックの移動方向が内周方向であると仮定し、対物レンズ1027の駆動方向を内周方向として速度制御を実施する。その後、所定時間Tlsの後にTZC周期を計測する。
【0267】
前記仮定が合っていた場合には、速度制御した結果、相対速度は減少し、TE信号の周期は目標周期TGTPRDに近づく。と同時に、対物レンズ1027が外周方向にレンズシフトした位置から内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。このときの波形は、速度制御開始からVLS信号振幅の減少開始前の間にTlsのWaitを挟むことを除いて、実施例1にて説明した波形図である図8、図9と同じである。
【0268】
図19では前記仮定が間違っていた場合を示している。即ち、時刻t1においてトラックが内周方向に移動しているとしているので、時刻t3におけるトラックの移動方向は反転し、外周方向である。それに対し時刻t3以降で実施する速度制御はトラックの移動方向を内周方向と仮定して、速度制御を実施する。
【0269】
この場合、トラックと対物レンズ1027は逆方向に駆動されてしまうので、相対速度が増加し、TE信号の周期は急速に短くなる。また対物レンズ1027は内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0270】
時刻t4は時刻t3から所定の時間tlsが経過した時刻であり、ステップS1807のTZC周期を判定するタイミングである。トラックの移動方向の仮定が正しかった場合には、TZC周期は目標周期TGTPRDに近い値となっているはずであるので、ステップS1807における閾値TH3は、例えば目標周期TGTPRDの半分の値とすればよい。
【0271】
時刻t4ではTE信号の周期が短くなっており、ステップS1807においてNoとなる。その結果、図19(c)においてVCON=Lowとなって速度制御を中止する。
【0272】
その後は再度、TZC周期を監視して、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。この間、VLS電圧は出力され続けているので、対物レンズ1027は再び、LSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0273】
時刻t5はTE信号の周期が再び最大となるタイミングである。時刻t5以降ではトラックは移動方向を反転し、内周方向への移動を開始する。
【0274】
時刻t4における速度制御の中止後はTZC周期を監視しており、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。
【0275】
時刻t6は前述した2つの待ち動作が完了したタイミングである(ステップS1804で2回目にYesとなったタイミングに相当)。即ち時刻t6では、図19(c)においてVCONがHighとなり、再び速度制御が開始される。
【0276】
時刻t6におけるトラックの移動方向は時刻t2の時点から反転し、内周方向である。それに対し時刻t6以降で実施する速度制御は、トラックの移動方向を内周方向と仮定して速度制御を実施する。
【0277】
そのため速度制御した結果、相対速度は減少し、TE信号の周期は目標周期TGTPRDに近づく。と同時に、対物レンズ1027が外周方向にレンズシフトした位置から内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0278】
このように本実施例では、トラックの移動方向を内周方向と仮定して速度制御を実施し、前記仮定が誤っていた場合には一旦速度制御を中止する。その後再度、偏芯の折り返りを待って速度制御を実施する。これにより、前記仮定が誤っていた場合にはその半周期後に、トラックの移動方向が内周方向となった状態で速度制御が実施される。
【0279】
時刻t7は時刻t6から所定の時間tlsが経過した時刻であり、ステップS1807において再びTZC周期を判定するタイミングである。
【0280】
時刻t5ではTE信号の周期が目標周期TGTPRDに近い状態となっており、ステップS1807においてYesとなる。その結果、図19(b)においてVLS信号振幅の減少を開始する。
【0281】
時刻t9はレンズシフト量が負になったタイミングである。このタイミングでは、図19(d)に示すようにLSOK信号がHighレベルとなり、これを受けて図19(c)でVCONをLowレベルにして速度制御を終了するとともに、TROMをHighとしてトラッキングサーボをオンする。その結果、図19(a)のTE信号ではトラック引き込みが成功している。
【0282】
このように本実施例ではまず対物レンズ1027を外周方向にレンズシフトさせ、偏芯の折り返りを待って、トラックの移動方向が内周方向であると仮定して速度制御を実施する。そして所定時間Tlsの後にTZC周期を計測して前記仮定が正しかったかどうかを判定し、間違っていた場合は再度偏芯の折り返りを待つ。TZC周期の計測した結果、前記仮定が正しかった場合にはレンズシフト電圧を減少させて、レンズシフトがゼロとなるタイミングでトラッキングサーボをオンする。
【0283】
以上の動作により、本実施例の光ディスク装置によれば、記録用光ディスクの未記録部においても、レンズシフトがゼロとなるタイミングでのトラック引き込みが可能になり、トラック引き込み直後のレンズシフトを抑制できる。そのため本実施例の光ディスク装置によれば、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0284】
また、本実施例の光ディスク装置によれば、速度制御を行うことでトラックと対物レンズ1027の相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0285】
なお本実施例においては、VLSiniをVrefより大きな値として対物レンズ1027の移動方向を外周方向に限定し、かつ速度制御の駆動方向を内周方向とした。しかしVLSiniをVrefより小さな値として対物レンズ1027の移動方向を内周方向に限定し、かつ速度制御の駆動方向を外周方向としてもよい。
【0286】
更には、上述したVLSiniによる対物レンズ1027のレンズシフト方向(外周方向)及び速度制御の駆動方向(内周方向)はリトライで変更しない処理としたが、これに限定されるものではない。
【0287】
例えば、TZC周期を計測してトラックの移動方向の仮定が正しかったかどうかを判定した結果、前記仮定が間違っていた場合に、VLSiniによる対物レンズ1027のレンズシフト方向を逆転するリトライ処理であってもよい。但しその場合には、その後の速度制御の駆動方向も逆転して、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う必要がある。
【0288】
いずれにしても、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う状態を実現できれば、対物レンズはレンズシフトが小さくなる方向に速度制御される。
【0289】
本実施例の光ディスク装置によれば、MIRR信号が正しく出力されない場合であっても、前記状態を実現できることが可能である。
【0290】
そのため、記録用光ディスクの未記録部においても、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。更には速度制御を行うことでトラックと対物レンズの相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0291】
以上の動作により、実施例3の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0292】
以上の実施例では、光ディスクの偏芯量によらずに、同一のトラック引き込み処理を行う動作とした。しかし偏芯量ECCを光ディスクのローディング時に計測しておき、偏芯量が所定の閾値以上である場合に限り、以上の実施例で説明した動作を行うようにしてもよい。
【0293】
これによる効果は、トラック引き込み処理にかかる時間の短縮が挙げられる。実施例1の波形図である図8を例に説明すると、本発明を用いない場合のトラック引き込み処理は、偏芯の折り返りを待ってトラッキングサーボをオンするため、時刻t2において行われる。これに対し、本発明の場合には速度制御を実施して対物レンズが駆動され、レンズシフトがゼロとなる中立位置に到達する時刻t5においてトラッキングサーボをオンする。そのため、時刻t2から時刻t5までの時間だけ、トラック引き込み処理にかかる時間が増加する。
【0294】
ここで、本発明が解決しようする第一の課題及び第二の課題は、いずれも偏芯が大きい光ディスクの場合に問題となる。そのため、偏芯が小さい光ディスクにおいては本発明を用いない構成とすることにより、トラック引き込み処理の時間を短縮することができる。この結果、例えばシーク時間が短縮できる。
【0295】
一方で偏芯が大きい光ディスクで本発明を用いない場合には、トラック引き込み性能が劣化するため、例えば何度もリトライを繰り返してしまう可能性がある。その場合、トラック引き込み処理にかかる時間が大幅に増加してしまう。そのため、偏芯量が所定の閾値以上である場合に限って本発明を適用することにより、トラック引き込み性能を向上してリトライ回数を削減し、トラック引き込み処理にかかる時間を短縮できる。
【0296】
また、以上の実施例で説明したトラック引き込み処理は、シーク動作の最後で行うトラック引き込みにおいても、適用可能である。例えば、異なる半径位置へシークする際にスライダを駆動する粗シーク動作においては、スライダの駆動終了後にトラックを引き込む。トラックを引き込んでアドレス情報を光ディスクから読み取ることにより、目標アドレスとの差異がわかる。そのため各種シーク動作ではトラック引き込み処理は必須であり、それらシーク動作におけるトラック引き込みにおいて本発明を適用してもよく、それによってシーク時のトラック引き込み性能を向上させることができる。
【0297】
更に、以上の実施例では偏芯の折り返りを待って速度制御を開始する動作とした。これは、レンズシフトがゼロになるタイミングまでに速度制御を整定させる必要があることを鑑み、可能な限り速度制御を行う時間を延ばしたためである。前述したように速度制御を行うためには、トラックの移動方向と対物レンズの移動方向が一致している必要がある。そのため、速度制御が開始できるようになるのは、偏芯の折り返り点である。
【0298】
以上の実施例ではLE信号から生成したLSOK信号を元に、レンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかし、レンズシフト量を検出する方法は、これに限るものではない。例えば、ピックアップ内に対物レンズの変位を計測するセンサを設け、光ディスクからの反射光から生成したLE信号によらずにレンズシフト量を検出してもよい。
【0299】
以上の実施例ではレンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかし、トラッキングサーボをオンするタイミングはレンズシフト量がゼロとなるタイミングと完全に一致していなくても良い。例えば、レンズシフトがゼロを中心とする所定の範囲内に収まったことを検出したタイミングとしてもよい。これは一例として、LE信号と基準電位Vrefの差の絶対値が所定の閾値以下になることを検出することで実現できる。この動作であっても、トラッキングサーボをオンするタイミングでのレンズシフト量はほぼゼロとなり、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0300】
更には、以上の実施例ではレンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかしトラッキングサーボをオンするタイミングは、レンズシフトがゼロになるタイミングでなくてもよい。この理由について以下、説明する。以上の実施例の説明に用いた視野特性である図21は、レンズシフトがゼロとなる位置を基準に左右対称な特性であるとした。しかしピックアップの製造誤差等の理由により、視野特性が左右対称になる基準位置は、レンズシフトがゼロの位置からずれることがある。その場合、最も視野特性の影響を受けないレンズシフト位置(最適レンズシフト位置と呼ぶ)はゼロではなくなるため、本発明の各実施手例においてトラッキングサーボをオンするタイミングは、最適レンズシフト位置となるタイミングとするのが良い。これは、一例として、LE信号が所定の閾値V_BestLSを跨ぐタイミングを検出することで実現できる(V_BestLSは、最適レンズシフト位置においてLE信号が取る電圧レベルである)。
【0301】
さらに、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0302】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0303】
101…光ディスク、102…ピックアップ、103…信号処理回路、104…スピンドルモータ、105…サーボエラー信号生成回路、106…RF信号生成回路、107…アクチュエータ駆動回路、108…スライダモータ駆動回路、109…スピンドルモータ駆動回路、110…スライダモータ、1021…レーザパワー制御回路、1022…レーザ光源、1023…コリメートレンズ、1024…ビームスプリッタ、1025…立上ミラー、1026…アクチュエータ、1027…対物レンズ、1028…集光レンズ、1029…光検出器、1031…システム制御回路、1032…フォーカス制御回路、1033…トラッキング制御回路、1034…スイッチ、1035…加算器、1036…サーボ制御信号生成回路、1037…速度制御回路、1038…レンズシフト電圧出力回路、1039…スライダ制御回路、1040…スピンドル制御回路、1041…速度制御回路、1042…サーボ制御信号生成回路、1043…速度制御回路、201…MIRR信号生成回路、202…TZC信号生成回路、203…TROK信号生成回路、204…LSON信号生成回路、2011…下側エンベロープ検出回路、2012…第一の閾値電圧出力回路、2013…第一の比較器、2021…2値化回路、2031…絶対値化回路、2032…ピークホールド回路、2033…第二の閾値電圧出力回路、2034…第二の比較器、2041…正負判定回路、2042…遅延子、2043…XOR回路、401…移動方向検出回路、402…TZC周期計測回路、403…速度制御駆動回路、404…スイッチ、405…速度制御出力可変ゲイン、406…速度制御駆動回路、501…レンズシフト電圧制御回路、502…レンズシフト電圧生成回路、503…可変ゲイン
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に光ディスクドライブにおいては、光ディスクは偏芯を持って回転しており、偏芯を持った光ディスクに対してシークやトラック引き込みといった制御を行う。
【0003】
ここで、偏芯が大きい光ディスクではトラック引き込み性能が劣化する。
【0004】
特許文献1によれば、その段落0005に、「光ディスクがディスク装置にローディングされたとき、光ディスクを回転させるスピンドルモータの回転により発生するFG信号を検出して光ディスクの回転角を検出して、検出された光ディスクの回転角に対するトラッククロス信号を計測し、計測された光ディスクの回転角に対するトラッククロス信号に基づいて光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とを検出して、検出された光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とを記憶し、光ディスクの再生時、記憶されている光ディスクの回転角に対する光ディスクの偏心の振幅と周期とに同期させて、光ピックアップを光ディスクの半径方向に往復移動させ、光ピックアップのトラッキングを制御して、光ピックアップのトラッキング引き込みを行う」との記載がある。
【0005】
特許文献2によれば、その段落0010に、「トラッキング引き込みを行なう際に、引き込もうとするディスクのトラック方向の移動速度と光ピックアップの移動速度との相対速度を検出し、検出した相対速度に対応してトラッキングアクチュエータに供給するアクチュエータ駆動電圧の極性及び電圧値を制御する」との記載がある。
【0006】
特許文献3によれば、その段落0014に、「前記対物レンズの移動速度を検出する速度検出手段と、前記トラッキングアクチュエータにキックパルス信号を供給するキック手段と、前記キック手段が作動した後、前記トラックの前記対物レンズに対する移動方向を検出する滑り方向検出手段と、前記滑り方向検出手段によって検出された滑り方向と同じ方向で、前記対物レンズの移動速度が略一定速度になるように、前記速度検出手段の出力に応じて前記トラッキングアクチュエータを駆動する一定速度制御手段と、前記一定速度制御手段が作動した後、前記トラッキング制御手段を作動させるトラッキングサーボ引き込み手段とを備える構成とする。」との記載がある。また、その段落0056に、「このようなキック動作の間に、今回測定したカウント信号COUTの周期(周波数検出回路13の出力)から前回測定したカウント信号COUTの周期(遅延回路14の出力)を差し引いた差分値を滑り方向検出回路16で求め、外周方向にキックしたときに滑り方向検出回路16により求まる差分値が正であれば対物レンズ3aに対しトラックは外周方向に流れており、滑り方向検出回路16により求まる差分値が負であれば対物レンズ3aに対しトラックは内周方向に流れている。このようにして流れ方向の検出を行い、トラックの流れ方向を確定する。」との記載がある。
【0007】
また、特許文献4によれば、その段落0008に、「レンズシフトによりレンズ2のアクチュエータ感度が変化する」との記載がある。また、その段落0016に、「上記位置制御手段と上記速度制御手段との切替えを段階的に行うよう上記切替手段を制御する」との記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−216441号公報
【特許文献2】特開2003−196849号公報
【特許文献3】特開2007−35080号公報
【特許文献4】特開2003−203363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一般に、Blu−rayやDVD等の光ディスクでは、規格によって光ディスクに許容される偏芯量が規定されている。しかし、光ディスクのセンターホールの位置ずれによって、規格による規定以上の偏芯量を持つ光ディスクが存在する。また、光ディスクドライブには光ディスクをチャッキングするターンテーブルの位置ずれが存在する。光ディスクドライブでの制御時には、スピンドルモータの回転軸中心から光ディスクのセンターホールの位置ずれ、及びターンテーブルの位置ずれの要因によって偏芯量が決まる。このとき、光ディスクのチャッキング状態によって、センターホールの位置ずれの方向と、ターンテーブルの位置ずれの方向が変わるため、偏芯量は変化する。光ディスクドライブにおいては、偏芯量が最大となるチャッキング状態においても、各種性能を達成することが必要になる。
【0010】
次に、光ディスク装置においてトラッキング制御に用いるエラー信号である、トラッキングエラー信号(以下、TE信号と呼ぶ)について、説明する。
【0011】
フォーカス制御が定常的に動作している状態から対物レンズのディスク半径方向の位置を任意の位置に固定して、偏心がある光ディスクを回転させた場合のTE信号について、図20を用いて説明する。
【0012】
図20(a)のようにレーザの焦点がトラックをよぎった時に得られるTE信号を図20(b)に示す。図20(b)において、点Aから点Jは図20(a)における各点に対応している。
【0013】
図20の破線は光ディスクのトラックであり、螺旋状に形成されている。Oは螺旋状トラックの中心点である。これに対しO’は回転中心を示しており、図20に示すようにOとO’がずれている場合を考える。OとO’の距離ECCのことを、以後、偏芯量と呼ぶ。偏芯が存在する場合、レーザの焦点の軌跡は実線で示したようになる。
【0014】
螺旋状トラックの中心点Oと回転中心O’がずれていることにより、点Aに位置していたレーザ光の焦点は、光ディスクの回転に伴って、点Bから点Jまでの各位置でトラックの中心を横切る。なお、ここでは説明のために点AはOとOのズレの方向(図20における縦の方向)の延長線上の点としており、また点Kは該延長線とレーザ軌跡の交点のうち、点Aでない方の交点を示している。
【0015】
図20(b)において、Trotで示した時間は、回転周期である。このように、TE信号は半周期ごとに疎密を繰り返す。またTE信号が疎になるのは、偏芯が最小となるタイミングとなる点(図20のA点)及び偏芯が最大となるタイミング(図20のK点)である。更に、図20(a)、(b)からわかるように、1回転周期中にTE信号がゼロクロスする回数は、偏芯量ECCに比例するという特徴がある。
【0016】
また、偏芯、即ち対物レンズから見たトラックの変位の変化をプロットすると、図20(c)に示すようになる。偏芯量は回転周期と同じ周期で変化する正弦波となり、正弦波の振幅は偏芯量ECCとなる。
【0017】
このとき、対物レンズから見たトラックの移動速度をプロットすると、図20(d)に示すようになる。これは、回転周波数frotと所定の位相φを用いて偏芯波形yが
【0018】
【数1】
で表されるとき、速度は位置を微分して算出されるので、速度vは
【0019】
【数2】
と表されるためである。
【0020】
このように、トラックの速度は偏芯が最大となる点及び最小となる点でゼロになり、偏芯が最大となる点及び最小となる点の中間においてピークとなる。この速度の差が、TE信号における粗密に現れる。
【0021】
偏芯が最大となる点及び最小となる点ではこのように速度の正負が反転するので、以下、偏芯の折り返りと呼ぶ。この点は、TE信号において疎になる点と一致する。
【0022】
更に(数2)からわかるように、速度のピーク値は偏芯量ECCに比例するという特徴がある。即ち、図20(d)における速度のピーク値Vmaxは、偏芯量ECCに比例する。
【0023】
図20(e)は、更に偏芯が大きな光ディスクの場合のTE信号である。偏芯の大きな光ディスクの場合、TE信号は同一の回転周期Trotの期間において、より多くの回数、ゼロクロスする。この結果、TE信号が密なタイミングでのTE信号のよぎり周波数は、偏芯量ECCが大きいほど高くなる。
【0024】
一般に、トラック引き込みはTE信号の周期を監視して、TE信号の周期が所定の時間幅よりも長くなったことを検出した後にトラッキングサーボをオンし、トラックを引き込む。即ち、疎密を繰り返すTE信号に対して、トラックよぎりが疎になったタイミングを待って、トラック引き込みを実施する。
【0025】
これはトラッキングサーボの応答帯域が有限であるためである。即ち、トラックよぎりの周波数がサーボの応答帯域よりも高くなると、安定してトラック引き込みを行うことができず、トラック引き込みが失敗する。そのため、トラックよぎりの周波数がサーボの応答帯域よりも高いタイミングではトラック引き込みを行わないように、トラックよぎりが疎になったタイミングを待つ動作を行う。
【0026】
一方で、光ディスク装置の光ピックアップは一般に、レンズシフトによりトラッキングアクチュエータの感度が低下することが知られている。本明細書においては、これを視野特性と呼ぶ。図21は、レンズシフト量とトラッキングアクチュエータの感度の関係の一例を示す図である。ここでは、偏芯量ECCと同一のレンズシフトをした時のトラッキングアクチュエータの感度低下を−2dB、偏芯量ECCの2倍のレンズシフトをした時のトラッキングアクチュエータの感度低下を−6dBとする。
【0027】
ここで、従来手法によるトラック引き込み直後のレンズシフト量について、図22を用いて説明する。図22は、トラック引き込み後のレンズシフト量の遷移を示す波形図である。
【0028】
図22(a)は偏芯であり、(b)TE信号、(c)はレンズシフト量である。(d)及び(e)は説明のために設けた信号であり、(d)はトラッキングサーボの駆動時にHighレベルとなる信号、(e)はスライダの駆動時にHighレベルとなる信号を示している。
【0029】
時刻t=t_TrONはトラッキングサーボをオンした時刻を示しており、図22(b)においてTE信号のよぎりが祖になるタイミングである。TE信号のよぎりが祖になるタイミングは、偏芯が最大もしくは最小なるタイミングと一致する。図22(a)においては、時刻t=t_TrONは偏芯が最大となるタイミングと一致している。
【0030】
トラック引きこみが成功すると、その後、対物レンズは図22(a)に示す偏芯に沿って引き込んだトラックに追従する。そのため図22(c)に示すレンズシフト波形においては、トラック引き込みから半回転周期後に、偏芯量ECCの2倍のレンズシフトが発生する(Aで示す矢印)。
【0031】
時刻t=SldONはトラック引き込み後、スライダ駆動出力が開始される時刻を示している。ここでは、時刻t=SldONは時刻t=t_TrONから半回転周期後の時刻としている。
【0032】
一般にスライダ駆動はトラッキングサーボをオンした状態でのサーボループ中の信号を半回転周期以上の期間で平均化した信号を用いる。これは偏芯成分の影響を平均化するためである。そのため、トラック引き込みから半回転周期後にスライダ駆動を開始する図22の動作は、可能な限り早くスライダを駆動した場合を示している。
【0033】
トラック引き込み後、所定の時間(図22においては回転周期の半分)が経過するとスライダが駆動され始め(t=t_SldON)、十分時間が経過した後は、対物レンズはレンズシフトがゼロとなる位置を中心として遷移する。スライダ駆動出力が開始されてから十分時間が経過した後の状態のことを、スライダ定常状態と呼ぶ。
【0034】
図22からわかるように、スライダ定常状態のレンズシフト量は、±ECCの範囲である(Bで示す矢印)。そのため従来のトラック引き込み方法では、トラック引き込み後、スライダが駆動されるまでの期間において、レンズシフト量がスライダ定常状態における値、±ECCの範囲を超えて大きくなる。
【0035】
ここで、図21で示した視野特性を有する光ディスク装置の場合には、レンズシフト量が偏芯量ECCの2倍となるタイミングにおいてトラッキングアクチュエータの感度低下は−6dBである。そのため、トラッキングサーボのゲインが6dB低下していることになる。
【0036】
トラッキングサーボのゲイン低下は追従性能の低下を招き、最悪の場合、トラック外れを起こしてトラック引き込みが失敗するという課題があった。
【0037】
またトラック外れに至らない場合であっても、トラッキングサーボのゲイン低下によって偏芯やトラック歪みに対する抑圧が低下して残留誤差が大きくなるので、TE信号における偏芯やトラック歪み成分の振幅が大きくなる。通常、トラック引き込み処理においてトラッキングサーボをオンした後は、トラック引き込み判定を行う。これはトラック引き込みが成功したかどうかを判別する処理であり、その一例としては例えばTE信号のレベルを監視する方法がある。しかし残留誤差が大きいということは対物レンズがトラック上に位置していないということなので、トラック引き込みの判別方法が何であれ、トラック引き込み直後の残留誤差が大きいほど、トラック引き込み判定を誤判定する可能性が高くなる。そのため、トラック引き込み処理が失敗するという課題があった。
【0038】
トラック引き込み直後のトラッキングゲイン低下の問題は、レンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施できれば解決できるが、それはトラックよぎりが密になるタイミングである。偏芯の大きい光ディスクであるほどTE信号が密なタイミングでのTE信号のよぎり周波数は高くなり、サーボの応答周波数から乖離していくので、トラックが引き込めないことになる。
【0039】
このように本発明が解決しようとする第一の課題は、トラック引き込み直後にレンズシフトが一時的に大きくなってしまうことによる追従性能の劣化である。
【0040】
また、従来手法によるトラック引き込みにおいては、図22(c)からわかるように、トラック引き込み開始前はレンズシフトがゼロ、即ち対物レンズが静止した状態でトラッキングサーボをオンしてトラック引き込みを行う。一方で、トラックは偏芯を持っているため、対物レンズから見ると相対的に移動して見える。そのため、対物レンズの初速がゼロの状態でトラッキングサーボをオンして、移動しているトラックに対して追従制御を開始する。トラッキングサーボをオンするタイミングでの相対速度を小さくすることができれば、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0041】
この問題は、偏芯が大きい光ディスクの場合に特に問題になる。即ち、図20(b)及び(e)を比較してわかるように、トラックよぎりが疎となるタイミングのTE信号の周波数を比較すると、偏芯が大きい(e)の場合のTE信号の周波数の方が高い。サーボの応答周波数は偏芯によらず一定であるので、偏芯が大きいほどトラック引き込み時にトラックの周波数が高く抑圧しにくい周波数となってくる。そのため、トラックの歪みのような外乱や、サーボゲインの調整ばらつきがあった場合にトラック引き込み性能が劣化しやすいことになる。
【0042】
このように本発明が解決しようとする第二の課題は、トラッキングサーボをオンするタイミングでトラックと対物レンズの速度に差があることによるトラック引き込み性能の劣化である。
【0043】
以上で説明した第一及び第二の課題では、共に「トラック引き込み性能の劣化」という表現を用いた。第一の課題においては、一度トラッキングサーボをオンしてレーザスポットがトラックに追従を開始したのも関わらず直後のフォローイング動作中にトラック外れを引き起こしたり、トラック引き込み判定を誤判定してトラック引き込み処理が失敗したりすることをトラック引き込み性能の劣化としている。一方で第二の課題においては、トラッキングサーボをオンしたタイミングでレーザスポットがトラックに追従できないことをトラック引き込み性能の劣化としている。
【0044】
このようにそれぞれの課題で「トラック引き込み性能の劣化」として説明した現象の詳細には差異があるが、いずれもトラック引き込み処理を行った結果失敗に至る現象であるため、本明細書では「トラック引き込み性能の劣化」という共通の表現を用いている。
【0045】
特許文献1においては、予め学習しておいた偏芯量をトラッキング駆動出力に足し込むことで、対物レンズとトラックの相対変位を小さくしてトラック引き込み性能を向上させる手法が開示されている。この手法の場合、前記第一の課題を解決できない。また対物レンズとトラックの相対変位が小さくなるという点ではトラック引き込み性能は向上するが、初速がゼロの状態から移動しているトラックに追従する制御を開始する構成であるため、第二の課題についても解決されてはいない。
【0046】
特許文献2においては、対物レンズとトラックの相対速度を略一定に保つ制御を行ってトラック引き込みを行う手法が開示されている。本手法では第一の課題について考慮されておらず、レンズシフトがゼロの状態から相対速度を略一定に保つ制御を開始するため、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズが初期位置から移動していき、トラック引き込みタイミングではレンズシフトした状態になる。そのため、第一の課題を解決できない。
【0047】
特許文献3においても、キック手段による加速によってレンズシフトがゼロの状態から移動を開始し、その後に対物レンズとトラックの相対速度を略一定に保つ制御を行ってトラック引き込みを行う手法が開示されている。キック手段の目的としては、キック(加速)によるトラックよぎり周波数の変化からトラックの移動方向を検出するためである。しかし本手法の場合にも、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズが初期位置から移動していき、トラック引き込みタイミングではレンズシフトした状態になる。そのため、第一の課題を解決できない。
【0048】
また、特許文献4においては、粗シーク時に位置制御を行い、速度制御に段階的に切り替えることで、速度制御切り替え時のレンズ振動を抑制して速度制御が安定するまでの時間を短縮する手法が開示されている。前記特許文献2と比較すると、速度制御を行ってトラック引き込みを行う点は共通であるが、前記特許文献はトラック引き込みの単体動作時に速度制御を行うのに対して、本特許文献は粗シーク終了タイミングのトラック引き込み時に速度制御を行うという点が異なる。粗シークタイミングのトラック引き込み時の場合には、位置制御と速度制御の切り替え時のレンズ振動によって、トラック引き込みの単体動作時よりも速度制御の整定に時間がかかる。この結果として、トラック引き込み時に速度制御を行う場合よりも更にレンズシフトしてしまうため、本特許文献では位置制御と速度制御を段階的に切り替えている。この手法によって速度制御が安定するまでの時間が短縮される効果は、位置制御と速度制御の切り替え時のレンズ振動によって伸びた分である。即ち特許文献4の手法でも、特許文献2と同様、相対速度が略一定になるまでの期間はレンズシフトしていくので、トラック引き込み実施タイミングではレンズシフトした状態になる。特許文献4は視野特性を考慮して速度制御整定時間を短縮しているが、本発明者はトラック引き込み単体動作で速度制御をした場合のレンズシフト量をも課題として捉え、更にトラック引き込み性能を向上させることを課題としている。
【0049】
また、ピックアップの設計という観点では、偏芯量ECCの光ディスクに対応しようとすると、偏芯量ECCの2倍のレンズシフト時の視野特性まで考慮しなければならず、レンズ径の小さい対物レンズを用いて小型化できない等、ピックアップ設計に制約があった。
【0050】
本発明の目的は、光ディスク装置におけるトラック引き込み性能を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0051】
上記課題を改善するために、本発明では一例として特許請求の範囲に記載の構成を用いる。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、光ディスク装置におけるトラック引き込み性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1を示すブロック図である。
【図2】実施例1のサーボ制御信号生成回路を示す構成図である。
【図3】実施例1のMIRR信号生成回路及びTZC信号生成回路が出力する信号を説明する波形図である。
【図4】実施例1の速度制御回路を示す構成図である。
【図5】実施例1のレンズシフト電圧出力回路を示す構成図である。
【図6】実施例1のレンズシフト電圧出力回路の動作を説明する波形図である。
【図7】実施例1のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図8】実施例1のトラック引き込み処理を行った場合の動作を説明する波形図である。
【図9】実施例1の効果を説明する波形図である。
【図10】実施例2を示すブロック図である。
【図11】実施例2の速度制御回路を示す構成図である。
【図12】実施例2のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図13】実施例2のリトライ配列である。
【図14】実施例2の効果を説明する波形図である。
【図15】実施例3を示すブロック図である。
【図16】実施例3のサーボ制御信号生成回路を示す構成図である。
【図17】実施例3の速度制御回路を示す構成図である。
【図18】実施例3のトラック引き込み処理のフローチャートである。
【図19】実施例3の効果を説明する波形図である。
【図20】偏心がある光ディスクを回転させた場合のTE信号を説明する図である。
【図21】視野特性を説明する図である。
【図22】解決しようとする課題を説明する波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
以下、本発明を実施するための形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0055】
本発明における実施例1について、以下に説明する。
【0056】
図1は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。
【0057】
信号処理回路103は光ディスク装置の各種の信号処理を行う回路であり、電位Vrefを基準として動作する。
【0058】
光ディスク101は、信号処理回路103に搭載されたシステム制御回路1031からの指令信号を受けたスピンドル制御回路1040から出力される制御信号に基づいてスピンドルモータ駆動回路109によりスピンドルモータ104が駆動され、所定の回転数で回転される。
【0059】
レーザ光源1022は、システム制御回路1031からピックアップ102に搭載されたレーザパワー制御回路1021への指示信号により所定のパワーでレーザ光を発光される。レーザ光源1022から発光されたレーザ光は、コリメートレンズ1023、ビームスプリッタ1024、立上ミラー1025、対物レンズ1027を通して光ディスク101の情報記録面に光スポットとして集光される。光ディスク101の情報記録面で反射した光はビームスプリッタ1024で分岐され、集光レンズ1028で光検出器1029に集光される。光検出器1029は、集光された光を電気信号に変換し、サーボエラー信号生成回路105、RF信号生成回路106に出力する。
【0060】
サーボエラー信号生成回路105は、フォーカス制御に使用するためのフォーカスエラー信号FES、トラッキング制御に使用するためのトラッキングエラー信号TES、及び、中立位置からの対物レンズ1027の変位(レンズシフト量)を示すレンズエラー信号LESを生成して出力する。なお、本実施例のLE信号の極性は、対物レンズ1027が外周側にレンズシフトした場合に正の電圧を示し、対物レンズ1027が内周側にレンズシフトした場合に負の電圧を示すものとする。また、各エラー信号は、基準電位Vrefを基準として出力されるものとする。
【0061】
またRF信号生成回路106は、光検出器1029で検出した電気信号に対してイコライズ処理を行いRF信号として出力する。
【0062】
フォーカス制御回路1032は、システム制御回路1031の指令信号により、フォーカス誤差信号FESに基づいてフォーカス駆動信号FODを出力する。
【0063】
アクチュエータ駆動回路107は、フォーカス駆動信号FODに従って対物レンズ1027と一体で動作するように構成されたアクチュエータ1026をディスク面に垂直な方向に駆動する。上記したようにフォーカス制御回路1032及びアクチュエータ駆動回路107が動作することで、光ディスク101に照射された光スポットが常に光ディスク101の情報記録面で合焦するようにフォーカス制御が行われる。
【0064】
フォーカス制御が動作して、光スポットがディスク1の情報記録面で合焦すると、サーボエラー信号生成回路105は、光スポットと情報記録面上のトラックとの位置のずれを示すトラッキングエラー信号TESを出力する。更にサーボエラー信号生成回路105は、対物レンズ1027のレンズシフト量を示すLE信号を出力する。
【0065】
トラッキング制御回路1033は、システム制御回路1031からの指令信号によりトラッキング誤差信号TESに基づいて、光ディスク101に照射された光スポットが情報記録面上のトラックを追従するように、対物レンズ1027をディスク半径方向に駆動するための信号を出力する。トラッキング制御回路1033から出力された信号は、スイッチ1034、加算器1035を介してアクチュエータ駆動回路107にトラッキング駆動信号TRDとして入力される。
【0066】
スイッチ1034は、システム制御回路1031の出力するTRON信号に基づき、トラッキング制御回路1033の出力信号もしくは基準電圧Vrefを選択して出力する。TRON信号としてHighレベルが入力されると、スイッチ1034は端子aを選択してトラッキング制御回路1033の出力信号がアクチュエータに出力される。一方でTRON信号としてLowレベルが入力されると、スイッチ1034は端子bを選択し、基準電圧Vrefを出力する。
【0067】
この結果、TRON信号はトラッキングサーボのオン・オフを指示する信号となる。またスイッチ1034は、トラッキングサーボのオン、オフを切り替えるスイッチとして機能する。TRON信号がLowからHighに切り替わると、スイッチ1034によってトラッキング制御回路1033の出力信号がアクチュエータに供給される。これによってトラッキングサーボがオンされることになり、この動作はトラック引き込み動作と呼ばれる。
【0068】
加算器1035は、スイッチ1034の出力信号と、後述する速度制御回路1037の出力するVCOUT信号と、後述するレンズシフト電圧出力回路1038の出力するVLS信号とを加算し、加算した信号をトラッキング駆動信号TRDとして出力する。
【0069】
アクチュエータ駆動回路107ではトラッキング駆動信号TRDに従ってアクチュエータ1026をディスク面に平行な方向に駆動することで対物レンズ1027がディスク半径方向に駆動される。トラッキング制御回路1033の出力信号に基づきアクチュエータが駆動されることで、光スポットが情報記録面上のトラックを追従する。このように、本実施例におけるアクチュエータ駆動回路107は、フォーカス方向に駆動する回路とトラッキング方向に駆動する回路を包含したものである。
【0070】
サーボ制御信号生成回路1036は、サーボエラー信号生成回路105の出力するTE信号とLE信号、及びRF信号生成回路106の出力するRF信号を入力として、各種制御信号を生成する。本実施例のサーボ制御信号生成回路1036は、MIRR信号、TZC信号、TROK信号、LSOK信号を生成して出力する。このうち、TROK信号、LSOK信号はシステム制御回路1031に出力される。
【0071】
速度制御回路1037は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号及びMIRR信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路1031からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またシステム制御回路1031からの信号VCONによって速度制御出力のオン・オフを制御する。
【0072】
またレンズシフト電圧出力回路1038は、システム制御回路1031から出力されるLSCTRL信号に基づき、対物レンズ1027を半径方向にレンズシフトさせるための電圧をVLS信号として出力する。
【0073】
また、スライダ制御回路1039は、システム制御回路1031からの指令信号を受けると、トラッキング制御回路1033の出力信号の平均値に基づいてスライダモータ111を駆動するスライダ駆動信号を出力する。このスライダ駆動信号に従ってスライダモータ駆動回路108がスライダモータ112を駆動することにより、トラックを追従し続けた場合であっても対物レンズ1027が常にレンズシフトがゼロとなる中立位置近傍で動作するように、光ピックアップ102がディスク半径方向に移送される。
【0074】
更に、光ディスク101上の半径の異なる位置へ光ピックアップ102を駆動するシーク動作においては、システム制御回路1031からのシーク動作の指令信号を受けてスライダ駆動回路1039がスライダ駆動信号を出力し、このスライダ駆動信号に従ってスライダモータ駆動回路108がスライダモータ112を駆動することでシーク動作を行う。
【0075】
次に、かかる光ディスク装置におけるサーボ制御信号生成回路1036の構成について、図2を用いて説明する。
【0076】
サーボ制御信号生成回路1036は、RF信号、TE信号、LE信号を入力とし、MIRR信号、TZC信号、TROK信号、LSOK信号を生成して出力する。サーボ制御信号生成回路1036は、MIRR信号生成回路201、TZC信号生成回路202、TROK信号生成回路203、及びLSON信号生成回路204から構成される。
【0077】
MIRR信号生成回路201は、下側エンベロープ検出回路2011、第一の閾値電圧出力回路2012、及び第一の比較器2013から構成される。
【0078】
下側エンベロープ検出回路2011はRF信号の下側エンベロープのレベルを出力する。
【0079】
第一の閾値電圧出力回路2012は所定の電圧レベルVthRFを出力する。
【0080】
第一の比較器2013は、下側エンベロープ検出回路2011の出力信号が第一の閾値電圧出力回路2012が出力する電圧レベルVthRFより大きいか否かをHigh、Lowの論理信号として生成し、MIRR信号として出力する。
【0081】
TZC信号生成回路202はTE信号を入力とする2値化回路2021である。2値化回路2021は、基準電圧Vrefを基準としてTE信号を2値化した信号を生成し、TZC信号として出力する。
【0082】
TROK信号生成回路203は、絶対値化回路2031、ピークホールド回路2032、第二の閾値電圧出力回路2033、第二の比較器2034から構成される。
【0083】
絶対値化回路2031は、TE信号の絶対値を取り、出力する。このとき、TE信号の絶対値はVrefを基準としたときのTE信号の絶対値を意味する。
【0084】
ピークホールド回路2032は、絶対値化回路2031の出力信号を所定の期間Tw_TRONの間、監視し、そのピーク値を保持して出力する。
【0085】
第二の閾値電圧出力回路2033は所定の電圧レベルVthTEを出力する。
【0086】
第二の比較器2034は、ピークホールド回路2032の出力信号が第二の閾値電圧出力回路2033が出力する電圧レベルVthTEより大きいか否かをHigh、Lowの論理信号として生成し、TROK信号として出力する。
【0087】
TROK信号は前記所定の期間Tw_TRONにおけるTE信号振幅の最大値を監視し、その値が閾値以上であればHighとなる信号である。ピークホールド回路2032で監視する期間Tw_TRONがトラックよぎり周期より長ければ、ピークホールド回路2032の出力信号はトラッキングサーボをオフした時のTE振幅となる。このことを利用して、TROK信号は、トラッキングが引き込んでいるかどうかを判定する信号として使うことができる。
【0088】
即ち、トラッキング引き込みが失敗した場合にはピークホールド回路2032の出力信号はトラッキングサーボをオフした時のTE振幅となる。一方、トラック引き込みが成功した場合にはTE信号はVref近辺の値となるので、ピークホールド回路2032の出力信号はTE振幅よりは小さな値となる。そのため、監視期間Tw_TRON及び電圧レベルVthTEを適切に設定すれば、TROK信号はトラック引き込みの成否判定に使用可能な信号となる。
【0089】
なお、ピークホールド回路2032はピーク値を保持するので、トラック引き込みに成功していてもフォローイング中に傷などを通過すると一時的にTROK信号はLowになる。そのため、トラック引き込み判定処理においては、例えば一例として、TROK信号を所定の期間監視し、該所定の期間のうちにTROK信号がHighになることがあればトラック引き込み成功と判定することで実現できる。
【0090】
LSOK信号生成回路204は正負判定回路2041、遅延子2042、XOR回路2043から構成される。
【0091】
正負判定回路2041はLE信号の正負を判定し、LE信号がVrefより大きければHighレベル、Vrefより小さければLowレベルを出力する。このように、正負判定回路2041における正負は、Vrefを基準としたときのLE信号の正負を意味する。
【0092】
遅延子2042は正負判定回路2041の出力信号を、所定の時間Tsだけ遅延させて出力する。
【0093】
XOR回路2043は正負判定回路2041の出力信号と遅延子2042の出力信号の排他的論理和をとった結果をHigh、Lowレベルの信号として出力する。
【0094】
この結果、LSOK信号生成回路204は、前記所定の時間Tsだけ前のLE信号の正負と、現在のLE信号の正負が異なっている場合にのみ、Highレベルを出力する。即ち、前記所定の時間Tsを適切に設定することで、LE信号が基準電圧Vrefを跨いだタイミングを検出する回路として機能する。またLSOK信号は、LE信号が基準電圧Vrefを跨いで単調に増加もしくは減少するとき、Vrefを跨ぐタイミングでTsの期間のみHighとなる信号となる。
【0095】
ここで、MIRR信号生成回路201及びTZC信号生成回路202が出力する信号について、図3を用いて説明する。図3は、トラッキングサーボをオフした状態でレーザがトラックをよぎった際の、トラックの模式図と、その時のMIRR信号生成回路201及びTZC信号生成回路202の各部における信号波形を示している。なお、図3(1)は対物レンズ1027から見たトラックの移動方向が内周方向のときの波形を示しており、図3(2)はトラックの移動方向が外周方向のときの波形を示している。
【0096】
図3(a)はトラックを模式的に示したものである。また、図3(b)はRF信号であり、(c)は下側エンベロープ検出回路2011の出力信号、(d)はMIRR信号、(e)はTE信号、(f)はTZC信号である。
【0097】
なお、本実施例ではグルーブ記録の光ディスクの場合を用いて説明する。また、ここでは偏芯によって対物レンズ1027の真上を移動するトラックがすべて記録部である場合を示している。
【0098】
この場合、RF信号は図3(a)に示すように、グルーブを通過するタイミングでRF信号の振幅が大きくなり、ランドを通過する期間はRF信号の振幅が小さくなる。
【0099】
図3(b)に示すように電圧レベルVthRFを適切に設定することによって、図3(c)のMIRR信号は対物レンズ1027の真上がランドとなる期間でHighレベルを示す信号となる。本実施例においては、VthRFは図3(c)に示すように適切なレベルに設定されるものとする。
【0100】
一方図3(f)に示すTZC信号は、図3(e)に示すTE信号を2値化した信号である。そのため、MIRR信号(d)とTZC信号(f)の位相は90度ずれた関係にある。
【0101】
更に図3(1)と図3(2)を比較してわかるように、MIRR信号とTZC信号の位相はトラックの移動方向によって180度反転することが、一般に知られている。そのため、MIRR信号とTZC信号の位相関係から、トラックの移動方向を検出することが可能である。
【0102】
次に、本実施例における速度制御回路1037の構成について図4を用いて説明する。速度制御回路1037は移動方向検出回路401、TZC周期計測回路402、速度制御駆動回路403、スイッチ404から構成される。
【0103】
移動方向検出回路401は、MIRR信号とTZC信号の位相関係からトラックの移動方向を検出し、その結果を移動方向情報MOVEDIRとして出力する。
【0104】
TZC周期計測回路402はTZC信号の周期を計測し、その結果をTZC周期情報TZCPRDとして出力する。
【0105】
速度制御駆動回路403は、移動方向情報MOVEDIRとTZC周期情報TZCPRDに基づき、TZC周期が所定の周期TGTRRDに保たれるように、半径方向にアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。また、TZC信号の目標周期TGTPRDはシステム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定される。
【0106】
速度制御回路404は、移動方向情報MOVEDIRからトラックの移動方向を取得して、トラックの移動方向と同じ方向に対物レンズ1027が駆動されるよう、駆動信号の極性(正負)を決定する。また、TZC周期情報TZCPRDに基づき現在のTZC周期と目標周期TGTPRDとを比較して、その差に応じた電圧を出力する。以上によりTZC周期を目標周期TGTRRDに保つ制御が行われるので、トラックと対物レンズ1027の相対速度が略一定に保たれる。なお、TZC周期を所定の目標周期に保つ、本実施例に記載の速度制御のことを、密シークと呼ぶこともある。
【0107】
スイッチ404は、システム制御回路1031の出力するVCON信号に基づき、速度制御駆動回路403の出力信号もしくは基準電圧Vrefを選択して、速度制御出力信号VCOUTとして出力する。VCON信号としてHighレベルが入力されると、スイッチ404は端子aを選択して速度制御駆動回路403の出力信号がVCOUT信号としてアクチュエータに出力される。一方でVCON信号としてLowレベルが入力されると、スイッチ404は端子bを選択し、基準電圧Vrefを出力する。この結果、スイッチ404は速度制御のオン、オフを切り替えるスイッチとして機能する。またVCON信号は速度制御のオン・オフを指示する信号となる。
【0108】
なお、移動方向情報MOVEDIRとTZC周期情報TZCPRDは、システム制御回路1031にも出力される。
【0109】
次に、本実施例におけるレンズシフト電圧出力回路1038の構成について、図5を用いて説明する。
【0110】
レンズシフト電圧出力回路1038は、レンズシフト電圧制御回路501、レンズシフト電圧生成回路502、及び可変ゲイン503から構成される。
【0111】
レンズシフト電圧制御回路501は、システム制御回路1031の出力するLSCTRL信号に基づき、後述するレンズシフト電圧生成回路502及び後述する可変ゲイン503を制御するための指令信号を出力する。レンズシフト電圧制御回路501は、例えば一般的なCPUを用いることができる。
【0112】
レンズシフト電圧生成回路502は、レンズシフト電圧制御回路501からの指令信号に基づき、所定の電圧レベルを出力する。
【0113】
また可変ゲイン503は、レンズシフト電圧制御回路501からの指令信号に基づき、レンズシフト電圧生成回路502の出力する電圧に所定のゲインをかけて、レンズシフト電圧VLSとして出力する。
【0114】
続いて本実施例におけるレンズシフト電圧出力回路1038の動作について、図6を用いて説明する。
【0115】
本実施例におけるLSCTRL信号は、レンズシフト電圧生成回路501
に設定する電圧を伝達する情報と、レンズシフト電圧出力回路1038の動作状態を変更する動作状態変更情報LSMODEとを含む。
【0116】
レンズシフト電圧出力回路1038は、LSMODEのレベルに応じて、所定の動作を開始する。それぞれの動作について、図6を用いて説明する。
【0117】
図6において、(1)、(2)、(3)は、レンズシフト電圧出力回路1038の状態が異なる3つ場合を示している。
【0118】
図6(a)はレンズシフト電圧出力回路1038の出力信号であるVLS信号の波形である。図6(b)はLSCTRL信号に含まれる動作状態変更情報LSMODEの遷移を示している。本実施例におけるLSMODEは3つの値をとるものとし、以下、Lowレベル、Middleレベル、Highレベルと呼ぶ。
【0119】
図6(1)の時刻t=tL0に示すように、LSMODEとしてHighレベルが入力されると、所定の電圧VLSiniの出力を開始する。以下、この動作のことをVLS信号の出力開始と呼ぶ。
【0120】
また時刻t=tL1に示すように、LSMODEとしてMiddleレベルが入力されると、VLS信号の振幅を時間の経過と共に徐々に減少させる動作を開始する。以下、この動作のことをVLS信号振幅の減少開始と呼ぶ。
【0121】
図6(1)は、時刻t=tL2においてVLS信号レベルが基準電圧Vrefにまで低下した場合を示しており、VLS信号レベルがVrefに至ると以後のVLS信号レベルは変化せずVrefを出力し続ける。
【0122】
ここで、VLS信号の振幅とは、VLS信号レベルをVref基準で見た振幅である。即ち、図6(1)においてはVLS信号レベルが低下したが、VLSiniがVrefより小さい値の場合には、図6(2)に示すようにVLS信号レベルは上昇する。いずれの場合も、VLS信号レベルをVrefに向かって徐々に近づける動作になる。
【0123】
また図6(3)は時刻t=tL3においてLSMODEとしてLowレベルが入力された場合を示している。図からわかるようにtL3はtL1以上tL2以下の数値であり、時刻t=tL1のVLS振幅の減少開始の後、VLS振幅が減少中に、システム制御回路1031からLSMODEとしてLowレベルが入力された場合を示している。
【0124】
図6(3)時刻t=tL3に示すように、LSMODEとしてLowレベルが入力されると、VLS信号レベルをVrefにする。以下、この動作のことをVLS信号のリセットと呼ぶ。
【0125】
以上の動作は例えば、レンズシフト電圧生成回路502において常にLSCTRL信号電圧VLSiniを出力し、LSMODEのレベルに応じて可変ゲイン503の値を変更することにより実現できる。
【0126】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図7のフローチャートを用いて説明する。
【0127】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS701)、システム制御回路1031は、速度制御回路1037の出力するMOVEDIR情報からトラックの移動方向を取得する(ステップS702)。
【0128】
続いて、移動方向が外周であるかを判別し(ステップS703)、それを受けて、LSCTRL信号をHighにしてVLS信号の出力を開始する。その際、VLS信号出力開始時の電圧VLSiniの電圧を、ステップS703での判別結果に応じて変える。
【0129】
即ち、移動方向が外周である場合(ステップS703でYesの場合)、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS704)。一方、移動方向が内周である場合(ステップS703でNoの場合)、VLSiniをVrefより小さな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS705)。
【0130】
これは、トラックの移動方向が外周であれば対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせ、またトラックの移動方向が内周であれば対物レンズ1027を内周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0131】
ステップS704、もしくはステップS705に続いて、速度制御回路1037の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS706)。
【0132】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS706でNoの場合)、再びステップS706に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0133】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS706でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS707)。
【0134】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS707でNoの場合)、再びステップS707に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0135】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS707でYesの場合)には、VCON信号をHighとして速度制御を開始する(ステップS708)。
【0136】
以上のステップS706からステップS707にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS706からステップS707にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0137】
ステップS708に続いて、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS709)。
【0138】
ステップS709に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS710)。
【0139】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS710でNoの場合)、再びステップS710に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0140】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS710でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS711)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS712)。
【0141】
ステップS712に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS713)。
【0142】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS714)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS714でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS715)。
【0143】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS714でNoの場合)、ステップS702に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0144】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理を行った場合の動作について、図8を用いて説明する。
【0145】
図8はトラック引き込み処理を行った場合の、各部の波形を示している。図8において、(a)はTE信号、(b)はVLS信号、(c)はVCON信号、(d)はLSOK信号、(e)はTRON信号であり、(f)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0146】
ここで、LE信号は対物レンズ1027のレンズシフト量を示す信号であるので、LE信号の波形は図8(f)の波形と同一の形状となる。そのため、縦軸の数値を無視すれば、図8(f)の波形はLE信号の波形と置き換えて見ることができる。
【0147】
時刻t1はトラック引き込み処理の開始時刻である。図8ではトラックの移動方向を図示していないが、ここでは時刻t1においてトラックが外周方向に移動している場合を示している。トラックが外周方向に移動していると判別したため、(b)においてVLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力が開始されている。この結果(f)において、対物レンズ1027が外周側へ移動してレンズシフトが発生する。(f)においてLSiniは、TRD信号として電圧VLSiniを与えたときに対物レンズ1027が最終的に移動する位置のレンズシフト量である。
【0148】
LSiniは、LE信号と対物レンズ1027のレンズシフト量との変換比をα[V/um]とすると、以下のように表される。
LSini=α・VLSini
図8(f)に示したように、対物レンズ1027はLSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0149】
時刻t2はTE信号の周期が最大となるタイミングであり、言い換えると偏芯が折り返るタイミングである。このとき、トラックの移動速度はゼロとなり、時刻t2以降ではトラックは移動方向を反転し、内周方向への移動を開始する。内周方向へ移動すると共にTE信号の周期は速くなるが、本実施例ではTZC周期を監視しており、偏芯の折り返りを検出するまで待つ。
【0150】
時刻t3は、偏芯の折り返りを検出したタイミングである(ステップS707でYesとなったタイミングに相当)。本実施例においては、TZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つことで偏芯の折り返りを検出するため、TZC周期がTh2より小さくなるまでの検出遅れが発生する。そのため、時刻t2と時刻t3は一致しない。
【0151】
時刻t3では、(c)においてVCONがHighとなり速度制御が開始されるとともに、(b)においてVLS振幅の減少が開始される。
【0152】
前述したようにトラックの移動方向は外周から内周に向かう方向であるので、速度制御した結果、対物レンズ1027も外周から内周に向かう方向に駆動される。速度制御回路はTE信号を2値化したTZC信号の周期を目標周期TGTPRDに一致させるように制御をするので、相対速度が略一定に保たれる。
【0153】
そのため、(a)のTE信号においてはTE信号が疎となるタイミングを超えても密にはならずにTE信号の周期が略一定になるとともに、(f)のレンズシフト量は減少する。ここで本実施例においては、予めLSiniだけ外周側にレンズシフトさせた状態で、トラックの移動方向が内周方向になった後に速度制御を開始したので、レンズシフト量はLSini近傍の値から、レンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0154】
時刻t4はVLS振幅が減少してVrefに至った時刻である。
【0155】
時刻t5はレンズシフト量が負になったタイミングである。このタイミングでは、(d)に示すようにLSOK信号がHighレベルとなり、これを受けて(c)でVCONをLowレベルにして速度制御を終了するとともに、TROMをHighとしてトラッキングサーボをオンする。その結果、(a)のTE信号ではトラック引き込みが成功している。
【0156】
次に本実施例の効果について、図9を用いて説明する。
【0157】
図9はトラック引き込み処理を行った場合の、各種波形を示している。図8では本実施例におけるトラック引き込み動作を説明するためにVCON信号やLSOK信号などの詳細な内部信号について記載したが、図9においては割愛している。
【0158】
図9(a)は偏芯であり、(b)はTE信号、(c)はTRON信号、(d)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0159】
時刻t1、t2、t3、t5は図8における時刻と同じであり、説明は省略する。
【0160】
本実施例におけるトラック引き込み処理においては、時刻t1において予めレンズシフトさせた上で、時刻t2の偏芯の折り返りを待って時刻t3から速度制御を開始する。そして時刻t5のレンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施する。
【0161】
時刻t=t5におけるトラック引きこみが成功すると、その後、対物レンズ1027は図9(a)に示す偏芯に沿って引き込んだトラックに追従する。そのため時刻t=t5以降のレンズシフトの推移としては、図9(d)に示すように、レンズシフトは±ECCの範囲内に収まる。これはレンズシフトがゼロとなるタイミングでトラック引き込みを実施しているためである。
【0162】
そのため本実施例の光ディスク装置によれば、従来技術ではトラック引き込みから半周期後に偏芯量ECCの2倍のレンズシフトが発生していた課題を解決できる。そのため、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0163】
なお、本実施例においてはステップS702においてまず移動方向を取得し、取得結果によってレンズシフトの方向を変え、その後ステップS706及びS707においてTE信号の周期が最大となるタイミングを検出する処理とした。しかし、図8の時刻t1にて予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行うことができれば、本実施例の処理方法に限定されるものではない。
【0164】
その一例として例えば、ステップS702における移動方向の取得を省く処理とすることも可能である。例えば、図8における時刻t1では必ず外周にレンズシフトさせる処理とし、続いて移動方向情報TRMOVEを監視し、トラックの移動方向が内周方向になるまでWaitする。トラックの移動方向が内周方向になったことをもって、図8における時刻t3で示した速度制御開始タイミングを決定してもよい。この場合にも、波形としては図8と同等の波形となる。
【0165】
いずれにしても、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う処理とすることにより、対物レンズはレンズシフトが小さくなる方向に速度制御される。この結果、レンズシフトがゼロとなるタイミングでのトラック引き込みが可能になり、トラック引き込み直後のレンズシフトを抑制できる。そのため本実施例の光ディスク装置によれば、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0166】
また、本実施例の光ディスク装置によれば、速度制御を行うことでトラックと対物レンズの相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0167】
以上の動作により、実施例1の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【実施例2】
【0168】
実施例2について、以下に説明する。
【0169】
図10は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。実施例1のブロック線図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0170】
本実施例における速度制御回路1041は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号及びMIRR信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またVCON信号によって駆動信号のオン・オフを制御する。
【0171】
次に、本実施例における速度制御回路1041の構成について図11を用いて説明する。実施例1の速度制御回路の構成図である図4と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0172】
速度制御出力可変ゲイン405は、速度制御駆動回路403の出力信号に対して所定のゲインVCGAINをかけて出力する。該ゲインVCGAINは、システム制御回路の出力するVCCTRL情報に基づき設定される。
【0173】
速度制御出力可変ゲイン405の出力信号はスイッチ404の端子aに接続され、VCONにHighレベルが入力されるとアクチュエータに出力されて速度制御が実施される。
【0174】
本実施例におけるVCCTRL信号は、TZC信号の目標周期TGTPRDに加え、速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINの情報を含む。
【0175】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図12のフローチャートを用いて説明する。
【0176】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS1201)、システム制御回路1031は、内部変数RetryNumをゼロに初期化する(ステップS1202)。変数RetryNumは、トラック引き込みのリトライ回数をカウントする変数である。
【0177】
ステップS1202の後、速度制御回路1041の出力するMOVEDIR情報からトラックの移動方向を取得する(ステップS1203)。続いて、速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINを、RetryNumに応じて、配列VcGainTblに従い変更する(ステップS1204)。配列VcGainTblの詳細については後述する。
【0178】
その後、移動方向が外周であるかを判別し(ステップS1205)、それを受けて、LSCTRL信号をHighにしてVLS信号の出力を開始する。その際、VLS信号出力開始時の電圧VLSiniの電圧を、ステップS1205での判別結果に応じて変える。
【0179】
即ち、移動方向が外周である場合(ステップS1205でYesの場合)、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1206)。一方、移動方向が内周である場合(ステップS1205でNoの場合)、VLSiniをVrefより小さな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1207)。
【0180】
これは、トラックの移動方向が外周であれば対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせ、またトラックの移動方向が内周であれば対物レンズ1027を内周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0181】
ステップS1206、もしくはステップS1207に続いて、速度制御回路1041の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS1208)。
【0182】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS1208でNoの場合)、再びステップS1208に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0183】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS1208でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS1209)。
【0184】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS1209でNoの場合)、再びステップS1209に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0185】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS1209でYesの場合)には、VCON信号をHighとして速度制御を開始する(ステップS1210)。
【0186】
以上のステップS1208からステップS1209にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS1208からステップS1209にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0187】
ステップS1210に続いて、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS1211)。
【0188】
ステップS1211に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS1212)。
【0189】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS1212でNoの場合)、再びステップS1212に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0190】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS1212でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS1213)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS1214)。
【0191】
ステップS1214に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS1215)。
【0192】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS1216)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS1216でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS1217)。
【0193】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS1216でNoの場合)、内部変数RetryNumに1を加算して、トラック引き込みのリトライ回数をカウントアップする(ステップS1218)。その後ステップS1203に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0194】
ここで、ステップS1204において速度制御出力可変ゲイン405に設定する値VCGAINを決める配列であるVcGainTblについて、図13を用いて説明する。
【0195】
図13は配列VcGainTblを示したものである。配列VcGainTblは速度制御出力可変ゲイン405に設定するリトライ配列であり、3回以上失敗した場合のVcGainTblは割愛している。
【0196】
これより、初回トラック引き込み処理においては、トラック引き込みのリトライ回数RetryNumはゼロであるので、VcGain=0dBである。それに対し、トラック引き込み処理が1度失敗するとVcGain=3dB、2度失敗するとVcGain=6dBとなる。
【0197】
VcGainは速度制御出力可変ゲイン405に設定する値であるので、トラック引き込み処理のリトライで、速度制御駆動回路403の出力信号の増幅ゲインを段階的に増加していることになる。
【0198】
次に、本実施例の効果について説明する。
【0199】
図14は速度制御出力可変ゲイン405を変更する前と、変更した後で、相対速度がどのように変化するかを示す図である。図14(1)は速度制御出力可変ゲイン405を変更しなかった場合(VcGain=0dB)の波形、図14(2)は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)の波形を示している。
【0200】
図14(1)、(2)において、(a)はTE信号であり、(b)はトラックと対物レンズ1027の相対速度、(c)はVCON信号である。
【0201】
また、(b)において、速度制御を実施した結果、トラックと対物レンズ1027の相対速度が収束する値は、システム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定されるTZC信号の目標周期TGTPRDに依存する。そのため、図14(1)及び(2)において相対速度は同じ値に収束する。この値をTGTVELとすると、この値は目標周期TGTPRDに相当する、目標移動速度であると言える。
【0202】
また、Aで示す矢印は、t=t2にて速度制御を行わなかった場合の相対速度の変化を模式的に示している。
【0203】
また、時刻t1はTE信号が疎になるタイミング、時刻t2は速度制御を開始するタイミングである。また、t3は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)に速度制御が整定する時刻、t4は速度制御出力可変ゲイン405を変更しなかった場合(VcGain=0dB)に速度制御が整定する時刻を示している。
【0204】
図14(1)においては、時刻t2の速度制御開始後、速度制御のゲインが小さいためにトラックの移動速度になかなか追従せず、しばらくは矢印Aに沿って変化している。やがて相対速度は減少に転じ、時刻t4になってようやく相対速度が目標移動速度TGTVELに収束する。
【0205】
ここで、速度制御が整定するまでには時刻t2から時刻t4までの時間がかかっている。この間に対物レンズ1027が移動する距離は、対物レンズ1027の速度の積分で求まり、これがVLS信号出力開始時の電圧VLSiniより大きい場合、速度制御の整定よりも先にLSOK=Highとなり(図12のステップS1012でYes)、トラッキングサーボをオンしてしまうことになる。
【0206】
ここで、本発明の解決しようとする第二の課題は、トラッキングサーボをオンするタイミングでトラックと対物レンズ1027の速度に差があることによるトラック引き込み性能の劣化であった。
【0207】
そのため、速度制御の整定に時間がかかると、前記第二の課題を解決できない。
【0208】
一方で、図20(d)で示した、対物レンズから見たトラックの移動速度波形で説明したように、偏芯量ECCが大きい光ディスクであるほど、TE信号が密になるタイミングでのトラックの移動速度は大きくなる。
【0209】
速度制御はトラックの移動速度と対物レンズ1027の移動速度の差である相対速度を略一定に保つ制御であるので、偏芯量ECCが大きい光ディスクでは速度制御が整定するまでに、より長い時間を要する。
【0210】
そのため、偏芯の大きな光ディスクである場合に速度制御ゲインが不足していると、前記第二の課題を解決できないという課題がある。本実施例はこの課題を解決するための構成であり、トラック引き込み処理のリトライにおいて速度制御出力可変ゲイン405の値を増加して、速度制御の追従を早くする。
【0211】
図14(2)は速度制御出力可変ゲイン405を変更した場合(VcGain=6dB)の波形である。速度制御出力可変ゲイン405を増加したので、速度制御出力の振幅が増加して、時刻t=t2直後の相対速度の変化が大きくなって相対速度の収束が速くなる。このように、速度制御のゲインを増加することにより、速度制御の追従を早くすることが可能である。
【0212】
なお、速度制御のゲインを上げるとオーバーシュートが発生し、目標速度TGTVEL近辺に近づいてから完全に収束するまでの時間は延びる。しかし前記第二の課題を解決する上では、相対速度が厳密にTGTVELになっていることが重要なのではなく、トラッキングサーボをオンするタイミングでの相対速度を小さくすることができればよい。即ち、相対速度がTGTVEL近辺の値になっていればトラック引き込み性能は向上できる。
【0213】
以上説明したように、オーバーシュートを発生してでも速度制御ゲインを増加することで、偏芯の大きな光ディスクの場合に相対速度の収束を速めることが可能になる。
【0214】
そのため、本実施例のようにリトライで速度制御ゲインを増加させる動作とすることにより、偏芯の大きな光ディスクの場合であってもトラック引き込みを成功させることができる。
【0215】
以上の動作により、実施例2の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【実施例3】
【0216】
実施例3について、以下に説明する。
【0217】
実施例1及び実施例2は、RF信号からMIRR信号を生成し、MIRR信号を用いて速度制御を行う構成とした。しかしRF信号はBD−ROMディスクのようにピットが形成されているか、またはBD−Rディスクの記録済み領域のようにマークが形成されている場合にのみ出力される。言い換えると、例えばBD−Rディスクなどの、記録用光ディスクの未記録部においては、RF信号は出力されず、MIRR信号は正しく生成できない。
【0218】
MIRR信号が正しく生成できない場合は、MIRR信号とTZC信号の移送関係からトラックの移動方向を判別する手法を用いることができない。一方で、TE信号だけではトラックの移動方向を検出することはできない。図20を用いて説明すると、図20(a)に示したように点Aから点Kにかけてトラックは外周方向に移動し、点Kから点Aにかけてトラックは内周方向に移動している。しかしこのときのTE信号は図20(b)に示したようになり、両者に差がない。そのためTE信号だけではトラックの移動方向を検出することはできない。そのため、記録用光ディスクの未記録部ではトラックの移動方向を知る方法はない。
【0219】
記録用光ディスクの未記録部においてもトラック引き込み性能を向上させるために、本実施例はMIRR信号を用いずに速度制御を行う構成である。
【0220】
図15は本実施例による光ディスク装置の構成を示すブロック図である。実施例1のブロック線図である図1と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0221】
サーボ制御信号生成回路1042は、サーボエラー信号生成回路105の出力するTE信号とLE信号を入力として、制御信号を生成する。本実施例のサーボ制御信号生成回路1042は、TZC信号、TROK信号、LSOK信号、LSMOVEOK信号を生成して出力する。このうち、TROK信号、LSOK信号、LSMOVEOK信号はシステム制御回路1031に出力される。
【0222】
速度制御回路1043は、サーボ制御信号生成回路1036の出力するTZC信号を元に、アクチュエータを駆動して速度制御を実施するための信号VCOUTを出力する。速度制御はシステム制御回路からの信号VCCTRLに従って速度制御のパラメータが設定され、またVCON信号によって駆動信号のオン・オフを制御する。
【0223】
次に、本実施例におけるサーボ制御信号生成回路1042の構成について、図16を用いて説明する。実施例1のサーボ制御信号生成回路の構成図である図2と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0224】
サーボ制御信号生成回路1042は、TE信号、LE信号を入力としTZC信号、TROK信号、LSOK信号、及びLSMOVEOK信号を生成して出力する。サーボ制御信号生成回路1042は、TZC信号生成回路202、TROK信号生成回路203、及びLSON信号生成回路204から構成される。
【0225】
本実施例におけるサーボ制御信号生成回路1042と、実施例1におけるサーボ制御信号生成回路1036との違いは、MIRR信号生成回路201がなくなった点である。
【0226】
本実施例における速度制御回路1043の構成について、図17を用いて説明する。実施例1のサーボ制御信号生成回路の構成図である図4と共通の構成要素については同一の番号を付し、説明を省略する。
【0227】
速度制御回路1043は、TZC周期計測回路402、速度制御駆動回路406、スイッチ404から構成される。
【0228】
速度制御駆動回路406は、VCCTRL信号とTZC周期情報TZCPRDに基づき、TZC周期が所定の周期TGTRRDに保たれるように、半径方向にアクチュエータを駆動するための駆動信号を出力する。また、TZC信号の目標周期TGTPRDはシステム制御回路1031からVCCTRL信号に基づき決定される。また、対物レンズ1027を駆動する方向(内周方向もしくは外周方向)は、VCCTRL信号に基づき決定される。
【0229】
なお、TZC周期情報TZCPRDは、システム制御回路1031にも出力される。
【0230】
ここで、速度制御はトラックの移動速度と対物レンズ1027の移動速度の差、即ち相対速度を略一定に保つ制御であるので、速度制御を開始する時の対物レンズ1027の駆動開始方向(内周方向もしくは外周方向)は、トラックの移動方向と同一の方向になる。しかし、本実施例における速度制御回路1043はMIRR信号を用いずに速度制御を行う構成であるので、トラックの移動方向を知ることができない。そのため速度制御を開始する時に、対物レンズ1027を内周方向もしくは外周方向のいずれの方向に駆動すればよいかを判別できない。
【0231】
本実施例においてシステム制御回路1031から出力されるVCCTRL信号は、TZC信号の目標周期TGTPRDに加え、速度制御において対物レンズ1027を駆動する方向の情報を含む。システム制御回路1031が、速度制御において対物レンズ1027を駆動する方向を指定するということは、言い換えると、トラックの移動方向を仮定して速度制御を行うことを意味する。
【0232】
ここで、前記仮定が間違っていた場合の速度制御について説明する。例えばトラックの移動方向が内周方向であるのにも関わらず、対物レンズ1027を駆動する方向を外周方向と指定して速度制御した場合を考える。
【0233】
速度制御は対物レンズ1027を外周方向に駆動するため、相対速度は大きくなる。速度制御はトラックの移動方向と対物レンズ1027の移動方向が一致していることを前提に制御するので、この場合、速度制御は駆動出力が足りずに相対速度が大きくなったと判断する。即ち、速度制御は更に駆動出力を上げる動作を行う。この結果、相対速度は更に大きくなる方向に制御がかかる。
【0234】
そのためTE信号の周期に着目すると、目標周期であるTGTPRDにならずに、速度制御の開始とともに急激に短くなっていく。言い換えると、TE信号が密になる。
【0235】
このように、トラックの移動方向の仮定が正しいかどうかは、速度制御した結果のTE信号の周期で判定することができる。
【0236】
次に、本実施例におけるトラック引き込み処理について、図18のフローチャートを用いて説明する。
【0237】
トラック引き込み処理を開始すると(ステップS1801)、システム制御回路1031は、VLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する(ステップS1802)。これは、対物レンズ1027を外周側にレンズシフトさせていることを意味する。
【0238】
続いて、速度制御回路1043の出力するTZCPRD情報からTZC信号の周期を監視して、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きいかを判別する(ステップS1803)。
【0239】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より小さい場合(ステップS1803でNoの場合)、再びステップS1803に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待つ動作となる。
【0240】
TZC信号の周期が所定の時間Th1より大きい場合(ステップS1803でYesの場合)には、続いてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さいかを判別する(ステップS1804)。
【0241】
TZC信号の周期が所定の時間Th2より大きい場合(ステップS1804でNoの場合)、再びステップS1804に戻る。即ち、TZC信号の周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作となる。
【0242】
以上のステップS1803からステップS1804にかけての動作は、まずTZC周期が所定の時間Th1より大きくなるまで待ち、その後TZC周期が所定の時間Th2より小さくなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。TZC信号はTE信号を2値化して得られた信号であるので、更に言い換えると、まずTE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ動作、とも言い換えることができる。前記所定の時間Th1、Th2を適切に設定することによって、ステップS1803からステップS1804にかけての動作は、偏芯の折り返りを検出するまで待つ動作として機能する。
【0243】
ステップS1804においてTZC信号の周期が所定の時間Th2より小さい場合(ステップS1804でYesの場合)には、VCON信号をHighとするとともに、VCCTRL信号により対物レンズ1027を駆動する方向を内周方向と指定する(ステップS1805)。
【0244】
ステップS1805は、ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が内周方向であると仮定して速度制御を開始する、と言い換えることもできる。
【0245】
ステップS1805に続いて、所定の時間TlsだけWaitする(ステップS1806)。
【0246】
ステップS1806に続いて、TZC信号の周期が所定の時間Th3より大きいかを判別する(ステップS1807)。
【0247】
ステップS1805における仮定が正しかった場合(ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が内周方向であった場合)には、TZC信号の周期は目標周期TGTPRDに向かって変化する。
【0248】
一方、ステップS1805における仮定が誤っていた場合(ステップS1805の時点におけるトラックの移動方向が外周方向であった場合)には、TZC信号の周期は急速に短くなる。
【0249】
そのため、時間Tlsを速度制御の応答時間から決定し、時間Th3を目標周期TGTPRDより短い時間で適切に設定することにより、ステップS1806及びステップS1807は、トラックの移動方向の仮定が正しいかどうかを判定する動作として機能する。時間Th3は例えば、目標周期TGTPRDの半分の値とすればよい。
【0250】
ステップS1807においてTZC信号の周期が所定の時間Th3より小さかった場合(ステップS1807でNoの場合)、VCON信号をLowとして速度制御を中止する(ステップS1808)。ステップS1808に続いては、ステップS1803に戻る。
【0251】
ステップS1807においてTZC信号の周期が所定の時間Th3より大きかった場合(ステップS1807でYesの場合)、LSCTRL信号をMiddleとしてVLS振幅の減少を開始する(ステップS1809)。
【0252】
ステップS1809に続いて、LSOK信号がHighレベルであるかを判別する(ステップS1810)。
【0253】
LSOK信号がHighレベルでない場合(ステップS1810でNoの場合)、再びステップS1810に戻る。即ち、LSOK信号がHighレベルになるまで待つ動作となる。
【0254】
LSOK信号がHighレベルである場合(ステップS1810でYesの場合)には、LSCTRL信号をLowとしてVLS電圧をリセットし(ステップS1811)、VCON信号をLowにして速度制御を終了する(ステップS1812)。
【0255】
ステップS1812に続いて、TRON信号をHighとしてトラッキングサーボをオンする(ステップS1813)。
【0256】
続いてTROK信号を監視し、所定の期間のうちにTROK信号がHighになるかを判別する(ステップS1814)。所定の期間のうちにTROK信号がHighになった場合(ステップS1814でYesの場合)、トラック引き込みが成功したと判断し、トラック引き込み処理を終了する(ステップS1815)。
【0257】
所定の期間のうちにTROK信号がHighにならなかった場合(ステップS1814でNoの場合)、ステップS1802に戻り、トラック引き込み処理をリトライする。
【0258】
次に本実施例の効果について、図19を用いて説明する。
【0259】
図19はトラック引き込み処理を行った場合の、各種波形の一例を示している。図19において、(a)はTE信号、(b)はVLS信号、(c)はVCON信号、(d)はLSOK信号、(e)はTRON信号であり、(f)は対物レンズ1027のレンズシフト量を示している。
【0260】
時刻t1はトラック引き込み処理の開始時刻である。図19ではトラックの移動方向を図示していないが、ここでは時刻t1においてトラックが内周方向に移動している場合を示している。それに対し本実施例のトラック引き込み処理では、図19(b)においてVLSiniをVrefより大きな電圧として、VLS電圧の出力を開始する。
【0261】
この結果図19(f)において、対物レンズ1027が外周側へ移動してレンズシフトが発生する。(f)においてLSiniは、TRD信号として電圧VLSiniを与えたときに対物レンズ1027が最終的に移動する位置のレンズシフト量である。対物レンズ1027はLSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0262】
時刻t2はTE信号の周期が最大となるタイミングであり、言い換えると偏芯が最大となるタイミングである。このとき、トラックの移動速度はゼロとなり、時刻t2以降ではトラックは移動方向を反転し、外周方向への移動を開始する。
【0263】
本実施例では時刻t1の後、TZC周期を監視しており、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。
【0264】
時刻t3は前述した2つの待ち動作が完了したタイミングである(ステップS1804で1回目にYesとなったタイミングに相当)。即ち時刻t3では、(c)においてVCONがHighとなり速度制御が開始される。
【0265】
ここで本実施例においては、実施例1及び実施例2と異なり、トラックの移動方向を判別できない。そのため速度制御において対物レンズ1027が駆動する方向(内周方向もしくは外周方向)を確定できない。
【0266】
そこで本実施例においては、時刻t1において外周方向にレンズシフトさせる。また時刻t3においては、トラックの移動方向が内周方向であると仮定し、対物レンズ1027の駆動方向を内周方向として速度制御を実施する。その後、所定時間Tlsの後にTZC周期を計測する。
【0267】
前記仮定が合っていた場合には、速度制御した結果、相対速度は減少し、TE信号の周期は目標周期TGTPRDに近づく。と同時に、対物レンズ1027が外周方向にレンズシフトした位置から内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。このときの波形は、速度制御開始からVLS信号振幅の減少開始前の間にTlsのWaitを挟むことを除いて、実施例1にて説明した波形図である図8、図9と同じである。
【0268】
図19では前記仮定が間違っていた場合を示している。即ち、時刻t1においてトラックが内周方向に移動しているとしているので、時刻t3におけるトラックの移動方向は反転し、外周方向である。それに対し時刻t3以降で実施する速度制御はトラックの移動方向を内周方向と仮定して、速度制御を実施する。
【0269】
この場合、トラックと対物レンズ1027は逆方向に駆動されてしまうので、相対速度が増加し、TE信号の周期は急速に短くなる。また対物レンズ1027は内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0270】
時刻t4は時刻t3から所定の時間tlsが経過した時刻であり、ステップS1807のTZC周期を判定するタイミングである。トラックの移動方向の仮定が正しかった場合には、TZC周期は目標周期TGTPRDに近い値となっているはずであるので、ステップS1807における閾値TH3は、例えば目標周期TGTPRDの半分の値とすればよい。
【0271】
時刻t4ではTE信号の周期が短くなっており、ステップS1807においてNoとなる。その結果、図19(c)においてVCON=Lowとなって速度制御を中止する。
【0272】
その後は再度、TZC周期を監視して、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。この間、VLS電圧は出力され続けているので、対物レンズ1027は再び、LSiniのレンズシフト位置に向かって振動しながら移動する。
【0273】
時刻t5はTE信号の周期が再び最大となるタイミングである。時刻t5以降ではトラックは移動方向を反転し、内周方向への移動を開始する。
【0274】
時刻t4における速度制御の中止後はTZC周期を監視しており、TE信号のよぎりが遅くなるまで待ち、その後TE信号のよぎりが速くなるまで待つ。
【0275】
時刻t6は前述した2つの待ち動作が完了したタイミングである(ステップS1804で2回目にYesとなったタイミングに相当)。即ち時刻t6では、図19(c)においてVCONがHighとなり、再び速度制御が開始される。
【0276】
時刻t6におけるトラックの移動方向は時刻t2の時点から反転し、内周方向である。それに対し時刻t6以降で実施する速度制御は、トラックの移動方向を内周方向と仮定して速度制御を実施する。
【0277】
そのため速度制御した結果、相対速度は減少し、TE信号の周期は目標周期TGTPRDに近づく。と同時に、対物レンズ1027が外周方向にレンズシフトした位置から内周方向に駆動されるので、LE信号はレンズシフトがゼロとなる中立位置に向かって変化する。
【0278】
このように本実施例では、トラックの移動方向を内周方向と仮定して速度制御を実施し、前記仮定が誤っていた場合には一旦速度制御を中止する。その後再度、偏芯の折り返りを待って速度制御を実施する。これにより、前記仮定が誤っていた場合にはその半周期後に、トラックの移動方向が内周方向となった状態で速度制御が実施される。
【0279】
時刻t7は時刻t6から所定の時間tlsが経過した時刻であり、ステップS1807において再びTZC周期を判定するタイミングである。
【0280】
時刻t5ではTE信号の周期が目標周期TGTPRDに近い状態となっており、ステップS1807においてYesとなる。その結果、図19(b)においてVLS信号振幅の減少を開始する。
【0281】
時刻t9はレンズシフト量が負になったタイミングである。このタイミングでは、図19(d)に示すようにLSOK信号がHighレベルとなり、これを受けて図19(c)でVCONをLowレベルにして速度制御を終了するとともに、TROMをHighとしてトラッキングサーボをオンする。その結果、図19(a)のTE信号ではトラック引き込みが成功している。
【0282】
このように本実施例ではまず対物レンズ1027を外周方向にレンズシフトさせ、偏芯の折り返りを待って、トラックの移動方向が内周方向であると仮定して速度制御を実施する。そして所定時間Tlsの後にTZC周期を計測して前記仮定が正しかったかどうかを判定し、間違っていた場合は再度偏芯の折り返りを待つ。TZC周期の計測した結果、前記仮定が正しかった場合にはレンズシフト電圧を減少させて、レンズシフトがゼロとなるタイミングでトラッキングサーボをオンする。
【0283】
以上の動作により、本実施例の光ディスク装置によれば、記録用光ディスクの未記録部においても、レンズシフトがゼロとなるタイミングでのトラック引き込みが可能になり、トラック引き込み直後のレンズシフトを抑制できる。そのため本実施例の光ディスク装置によれば、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0284】
また、本実施例の光ディスク装置によれば、速度制御を行うことでトラックと対物レンズ1027の相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0285】
なお本実施例においては、VLSiniをVrefより大きな値として対物レンズ1027の移動方向を外周方向に限定し、かつ速度制御の駆動方向を内周方向とした。しかしVLSiniをVrefより小さな値として対物レンズ1027の移動方向を内周方向に限定し、かつ速度制御の駆動方向を外周方向としてもよい。
【0286】
更には、上述したVLSiniによる対物レンズ1027のレンズシフト方向(外周方向)及び速度制御の駆動方向(内周方向)はリトライで変更しない処理としたが、これに限定されるものではない。
【0287】
例えば、TZC周期を計測してトラックの移動方向の仮定が正しかったかどうかを判定した結果、前記仮定が間違っていた場合に、VLSiniによる対物レンズ1027のレンズシフト方向を逆転するリトライ処理であってもよい。但しその場合には、その後の速度制御の駆動方向も逆転して、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う必要がある。
【0288】
いずれにしても、予めレンズシフトさせた方向と逆方向に速度制御を行う状態を実現できれば、対物レンズはレンズシフトが小さくなる方向に速度制御される。
【0289】
本実施例の光ディスク装置によれば、MIRR信号が正しく出力されない場合であっても、前記状態を実現できることが可能である。
【0290】
そのため、記録用光ディスクの未記録部においても、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。更には速度制御を行うことでトラックと対物レンズの相対速度を小さくした上でトラッキングサーボをオンするため、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0291】
以上の動作により、実施例3の光ディスク装置は、トラック引き込み性能を向上させることができる。
【0292】
以上の実施例では、光ディスクの偏芯量によらずに、同一のトラック引き込み処理を行う動作とした。しかし偏芯量ECCを光ディスクのローディング時に計測しておき、偏芯量が所定の閾値以上である場合に限り、以上の実施例で説明した動作を行うようにしてもよい。
【0293】
これによる効果は、トラック引き込み処理にかかる時間の短縮が挙げられる。実施例1の波形図である図8を例に説明すると、本発明を用いない場合のトラック引き込み処理は、偏芯の折り返りを待ってトラッキングサーボをオンするため、時刻t2において行われる。これに対し、本発明の場合には速度制御を実施して対物レンズが駆動され、レンズシフトがゼロとなる中立位置に到達する時刻t5においてトラッキングサーボをオンする。そのため、時刻t2から時刻t5までの時間だけ、トラック引き込み処理にかかる時間が増加する。
【0294】
ここで、本発明が解決しようする第一の課題及び第二の課題は、いずれも偏芯が大きい光ディスクの場合に問題となる。そのため、偏芯が小さい光ディスクにおいては本発明を用いない構成とすることにより、トラック引き込み処理の時間を短縮することができる。この結果、例えばシーク時間が短縮できる。
【0295】
一方で偏芯が大きい光ディスクで本発明を用いない場合には、トラック引き込み性能が劣化するため、例えば何度もリトライを繰り返してしまう可能性がある。その場合、トラック引き込み処理にかかる時間が大幅に増加してしまう。そのため、偏芯量が所定の閾値以上である場合に限って本発明を適用することにより、トラック引き込み性能を向上してリトライ回数を削減し、トラック引き込み処理にかかる時間を短縮できる。
【0296】
また、以上の実施例で説明したトラック引き込み処理は、シーク動作の最後で行うトラック引き込みにおいても、適用可能である。例えば、異なる半径位置へシークする際にスライダを駆動する粗シーク動作においては、スライダの駆動終了後にトラックを引き込む。トラックを引き込んでアドレス情報を光ディスクから読み取ることにより、目標アドレスとの差異がわかる。そのため各種シーク動作ではトラック引き込み処理は必須であり、それらシーク動作におけるトラック引き込みにおいて本発明を適用してもよく、それによってシーク時のトラック引き込み性能を向上させることができる。
【0297】
更に、以上の実施例では偏芯の折り返りを待って速度制御を開始する動作とした。これは、レンズシフトがゼロになるタイミングまでに速度制御を整定させる必要があることを鑑み、可能な限り速度制御を行う時間を延ばしたためである。前述したように速度制御を行うためには、トラックの移動方向と対物レンズの移動方向が一致している必要がある。そのため、速度制御が開始できるようになるのは、偏芯の折り返り点である。
【0298】
以上の実施例ではLE信号から生成したLSOK信号を元に、レンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかし、レンズシフト量を検出する方法は、これに限るものではない。例えば、ピックアップ内に対物レンズの変位を計測するセンサを設け、光ディスクからの反射光から生成したLE信号によらずにレンズシフト量を検出してもよい。
【0299】
以上の実施例ではレンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかし、トラッキングサーボをオンするタイミングはレンズシフト量がゼロとなるタイミングと完全に一致していなくても良い。例えば、レンズシフトがゼロを中心とする所定の範囲内に収まったことを検出したタイミングとしてもよい。これは一例として、LE信号と基準電位Vrefの差の絶対値が所定の閾値以下になることを検出することで実現できる。この動作であっても、トラッキングサーボをオンするタイミングでのレンズシフト量はほぼゼロとなり、視野特性の影響を抑えてトラック引き込み性能を確保できる。
【0300】
更には、以上の実施例ではレンズシフトがゼロになるタイミングを検出してトラッキングサーボをオンする動作とした。しかしトラッキングサーボをオンするタイミングは、レンズシフトがゼロになるタイミングでなくてもよい。この理由について以下、説明する。以上の実施例の説明に用いた視野特性である図21は、レンズシフトがゼロとなる位置を基準に左右対称な特性であるとした。しかしピックアップの製造誤差等の理由により、視野特性が左右対称になる基準位置は、レンズシフトがゼロの位置からずれることがある。その場合、最も視野特性の影響を受けないレンズシフト位置(最適レンズシフト位置と呼ぶ)はゼロではなくなるため、本発明の各実施手例においてトラッキングサーボをオンするタイミングは、最適レンズシフト位置となるタイミングとするのが良い。これは、一例として、LE信号が所定の閾値V_BestLSを跨ぐタイミングを検出することで実現できる(V_BestLSは、最適レンズシフト位置においてLE信号が取る電圧レベルである)。
【0301】
さらに、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0302】
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0303】
101…光ディスク、102…ピックアップ、103…信号処理回路、104…スピンドルモータ、105…サーボエラー信号生成回路、106…RF信号生成回路、107…アクチュエータ駆動回路、108…スライダモータ駆動回路、109…スピンドルモータ駆動回路、110…スライダモータ、1021…レーザパワー制御回路、1022…レーザ光源、1023…コリメートレンズ、1024…ビームスプリッタ、1025…立上ミラー、1026…アクチュエータ、1027…対物レンズ、1028…集光レンズ、1029…光検出器、1031…システム制御回路、1032…フォーカス制御回路、1033…トラッキング制御回路、1034…スイッチ、1035…加算器、1036…サーボ制御信号生成回路、1037…速度制御回路、1038…レンズシフト電圧出力回路、1039…スライダ制御回路、1040…スピンドル制御回路、1041…速度制御回路、1042…サーボ制御信号生成回路、1043…速度制御回路、201…MIRR信号生成回路、202…TZC信号生成回路、203…TROK信号生成回路、204…LSON信号生成回路、2011…下側エンベロープ検出回路、2012…第一の閾値電圧出力回路、2013…第一の比較器、2021…2値化回路、2031…絶対値化回路、2032…ピークホールド回路、2033…第二の閾値電圧出力回路、2034…第二の比較器、2041…正負判定回路、2042…遅延子、2043…XOR回路、401…移動方向検出回路、402…TZC周期計測回路、403…速度制御駆動回路、404…スイッチ、405…速度制御出力可変ゲイン、406…速度制御駆動回路、501…レンズシフト電圧制御回路、502…レンズシフト電圧生成回路、503…可変ゲイン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクを所定の回転軸を中心に回転させる光ディスク回転部と、
前記レーザ光の光スポットを前記光ディスク上に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出部と、
前記光検出部の出力信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成部と、
前記光検出部の出力信号からトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部と、
前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御を行うフォーカス制御部と、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御を行うトラッキング制御部と、
前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給するか否かを制御するスイッチと、
前記トラッキングエラー信号の周期が略一定になる速度制御を行う速度制御部と、
前記対物レンズを中立位置から前記光ディスク半径方向に移動させてレンズシフトさせるレンズシフト制御部と、を備え、
前記速度制御部が速度制御を開始した後に前記スイッチによりトラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給し、
前記速度制御部が速度制御を開始するよりも前に、前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動してレンズシフトさせることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させる方向と、その後に前記速度制御部が速度制御を行い対物レンズが前記光ディスク半径方向に駆動される方向が逆方向であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置を検出するレンズシフト量検出部を備え、
前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力がアクチュエータに供給されるタイミングは、前記レンズシフト量検出部により対物レンズが中立位置に近付いたことを検出したタイミングであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測する周期計測部を備え、
前記速度制御部が速度制御を開始するタイミングは、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記速度制御部は出力信号のゲインを変更する速度制御出力可変ゲインを備え、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させた後に、前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合に前記速度制御出力可変ゲインを増加して再度トラック引き込み動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクは記録可能な光ディスクであり、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測する周期計測部を備え、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させた後に、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングで前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合には、再度、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングを待って前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクの偏芯量を計測する偏芯量計測部を備え、
前記偏芯量計測部により計測された偏芯量が所定の閾値以上であった場合に、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給する動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置におけるトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクを所定の回転軸を中心に回転させ、
前記レーザ光の光スポットを対物レンズにより前記光ディスク上に集光させ、
前記対物レンズをアクチュエータにより駆動し、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力し、
前記出力された電気信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、
前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記回転軸方向に駆動し、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記光ディスク半径方向に駆動し、
前記トラッキングエラー信号の周期が略一定となるよう前記アクチュエータの速度制御を行い、
前記速度制御を開始するよりも前に、前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動してレンズシフトさせ、
前記速度制御を開始した後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給し、トラック引き込みを行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項9】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記レンズシフトさせる際に前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させる方向と、その後に前記速度制御部が速度制御を行い対物レンズが前記光ディスク半径方向に駆動される方向が逆方向であることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項10】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置を検出し、
前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給するタイミングは、前記検出により対物レンズが中立位置に近付いたことを検出したタイミングであることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項11】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測し、
前記速度制御を開始するタイミングは、前記周期の計測によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングであることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項12】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合に前記速度制御を開始する際の出力信号のゲインを増加して、再度トラック引き込み動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項13】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクは記録可能な光ディスクであり、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測し、
前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記周期の計測によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングで前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合には、再度前記周期の計測を行いトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングを待って前記速度制御を開始し、その後に前記前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項14】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクの偏芯量を計測し、
前記計測された偏芯量が所定の閾値以上であった場合、前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給する動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項1】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置であって、
前記光ディスクを所定の回転軸を中心に回転させる光ディスク回転部と、
前記レーザ光の光スポットを前記光ディスク上に集光させる対物レンズと、
前記対物レンズを駆動するアクチュエータと、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力する光検出部と、
前記光検出部の出力信号からフォーカスエラー信号を生成するフォーカスエラー信号生成部と、
前記光検出部の出力信号からトラッキングエラー信号を生成するトラッキングエラー信号生成部と、
前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御を行うフォーカス制御部と、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御を行うトラッキング制御部と、
前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給するか否かを制御するスイッチと、
前記トラッキングエラー信号の周期が略一定になる速度制御を行う速度制御部と、
前記対物レンズを中立位置から前記光ディスク半径方向に移動させてレンズシフトさせるレンズシフト制御部と、を備え、
前記速度制御部が速度制御を開始した後に前記スイッチによりトラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給し、
前記速度制御部が速度制御を開始するよりも前に、前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動してレンズシフトさせることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させる方向と、その後に前記速度制御部が速度制御を行い対物レンズが前記光ディスク半径方向に駆動される方向が逆方向であることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置を検出するレンズシフト量検出部を備え、
前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力がアクチュエータに供給されるタイミングは、前記レンズシフト量検出部により対物レンズが中立位置に近付いたことを検出したタイミングであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項4】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測する周期計測部を備え、
前記速度制御部が速度制御を開始するタイミングは、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングであることを特徴とする光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記速度制御部は出力信号のゲインを変更する速度制御出力可変ゲインを備え、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させた後に、前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合に前記速度制御出力可変ゲインを増加して再度トラック引き込み動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項6】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクは記録可能な光ディスクであり、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測する周期計測部を備え、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させた後に、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングで前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合には、再度、前記周期計測部によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングを待って前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給してトラック引き込み動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項7】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記光ディスクの偏芯量を計測する偏芯量計測部を備え、
前記偏芯量計測部により計測された偏芯量が所定の閾値以上であった場合に、
前記レンズシフト制御部が前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御部が速度制御を開始し、その後に前記スイッチにより前記トラッキング制御部の出力をアクチュエータに供給する動作を行うことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項8】
光ディスクに対してレーザ光を照射して情報の記録もしくは再生を行う光ディスク装置におけるトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクを所定の回転軸を中心に回転させ、
前記レーザ光の光スポットを対物レンズにより前記光ディスク上に集光させ、
前記対物レンズをアクチュエータにより駆動し、
前記光ディスクからの反射光量に応じた電気信号を出力し、
前記出力された電気信号からフォーカスエラー信号及びトラッキングエラー信号を生成し、
前記フォーカスエラー信号に基づいて、フォーカス制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記回転軸方向に駆動し、
前記トラッキングエラー信号に基づいて、トラッキング制御信号を出力して、前記アクチュエータを前記光ディスク半径方向に駆動し、
前記トラッキングエラー信号の周期が略一定となるよう前記アクチュエータの速度制御を行い、
前記速度制御を開始するよりも前に、前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動してレンズシフトさせ、
前記速度制御を開始した後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給し、トラック引き込みを行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項9】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記レンズシフトさせる際に前記対物レンズを前記光ディスク半径方向に移動させる方向と、その後に前記速度制御部が速度制御を行い対物レンズが前記光ディスク半径方向に駆動される方向が逆方向であることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項10】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記対物レンズの前記光ディスク半径方向の位置を検出し、
前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給するタイミングは、前記検出により対物レンズが中立位置に近付いたことを検出したタイミングであることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項11】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測し、
前記速度制御を開始するタイミングは、前記周期の計測によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングであることを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項12】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合に前記速度制御を開始する際の出力信号のゲインを増加して、再度トラック引き込み動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項13】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクは記録可能な光ディスクであり、
前記トラッキングエラー信号の周期を計測し、
前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記周期の計測によりトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングで前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を実行し、
前記トラック引き込み動作が失敗した場合には、再度前記周期の計測を行いトラッキングエラー信号の周期が増加から減少に転じたことを検出したタイミングを待って前記速度制御を開始し、その後に前記前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給してトラック引き込み動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【請求項14】
請求項8に記載のトラック引き込み方法であって、
前記光ディスクの偏芯量を計測し、
前記計測された偏芯量が所定の閾値以上であった場合、前記レンズシフトを行って前記対物レンズを前記光ディスクの半径方向に移動させた後に、前記速度制御を開始し、その後に前記トラッキング制御信号を前記アクチュエータに供給する動作を行うことを特徴とするトラック引き込み方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2012−53945(P2012−53945A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195281(P2010−195281)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】
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