説明

光ディスク装置

【課題】光ディスク装置において、同じ符号の連続数が2以上である記録符号で記録された信号の再生での低電力化と安定した再生性能を実現する。
【解決手段】PRML復号手段の等化特性にPR(a,b,c,d,e,f)特性を用いることによりディジタル信号処理をチャネルビット周波数の1/2以下で動作させて、動作クロック周波数の低減による低電力化と折り返しで生じる妨害成分を減少させることによる再生性能の向上を実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データが記録された光ディスクより記録データを再生する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、情報を記録再生できる媒体として光ディスクがある。近年光ディスクにおいては大容量化による高記録密度、高速再生が課題となっており、これに対応する方式として、再生信号をアナログディジタル変換器によりディジタル信号に標本化しPRML(Partial Response Maximum Likelihood)方式などのディジタル信号処理などを用いてより高精度に記録データを復元することが提案されている。また、DVDなどに代表される同じ符号の連続数が3以上の場合の高速再生時の低電力化に関しては各種方式が提案されている。(例えば特許文献1参照)
【特許文献1】特開2003−36612号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載のようにこれまではDVDなどに代表される同じ符号の連続数が3以上の場合の高速再生時の低電力化に関しチャネルビット周波数の1/2の周波数で信号処理を行うハーフレート処理などにより信号処理回路の動作周波数を低減することにより実現することが検討されてきた。しかしながら、同じ符号の連続数が2以上の場合などには、最短信号周波数がチャネルビット周波数の1/4になってしまう。この場合、サンプリング定理よりチャネルビット周波数の1/2でのサンプリングにおいては信号とサンプリングクロックとの位相関係により正常に信号レベルを取得できないという問題が発生する。また、必要とされる信号周波数帯域をナイキスト特性で規定すれば、最短信号周波数が大きくなっている分だけ信号帯域が増大し、これによりサンプリングによる折り返し成分すなわち妨害成分が増加し、信号品質の劣化、PRML処理能力の低下を引き起こすという課題があった。
【0004】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、再生信号の品質、PRML処理能力の向上した光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、例えば、特許請求の範囲に記載の発明により達成される。
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば次のとおりである。本発明では、低域遮断フィルタの代わりに再生信号の所定帯域を強調するとともに不要帯域を減衰させる等化特性を有するアナログ等化手段により、チャネルビット周波数の1/4以上の再生に不要な周波数帯域の信号を減衰させ、かつPRML復号手段入力される信号のPR等価特性をPR(a,b,c,d,e,f)、特にPR(2,3,4,4,3,2)で現される特性となるようにディジタル等化手段により周波数特性を調整し、折り返しによる妨害成分を減少させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明は再生信号の品質、PRML処理能力を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に従う光ディスク装置の実施形態について、図面を用いて具体的に説明するが本発明はこれに限定されるものではない。
【0009】
以下の実施形態では、アナログ等化手段により、チャネルビット周波数の1/4以上の周波数帯域の信号を減衰させ、かつPRML復号手段入力される信号のPR等価特性をPR(a,b,c,d,e,f)、特にPR(2,3,4,4,3,2)で現される特性となるようにディジタル等化手段により周波数特性を調整することにより実現する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の実施例の光ディスク装置のブロック図である。以下、図1を用いて本発明の再生動作の一例を説明する。
【0011】
光ディスク1に記録されている信号が光ヘッド2により読み取られ再生信号としてアナログ等化回路3に供給され、所定帯域が強調されるとともに不要帯域信号の減衰が行われる。次にアナログ等化回路3により等化されたアナログ等化信号はアナログディジタル変換器4によりサンプリングされディジタル再生信号が生成される。ここでサンプリングクロックはPLL回路7から供給され、PLL回路7はアナログディジタル変換器4の出力より同期クロックを生成する。ここでPLL回路7が生成する同期クロックはチャネルビット周波数の1/2であり、これによりアナログディジタル変換器4の動作速度を低減することができ消費電力の低減を実現している。
【0012】
次に各部の動作について説明する。まず、アナログ等化回路3における等化特性は外部から設定できるようになっており、例えばチャネルビット周波数の1/4以上の周波数帯域の信号を減衰させるような等価特性を減衰させるように設定される。これを図2に示す。
図2において実線はアナログ等化回路3に入力される信号スペクトルであり、破線はアナログ等化回路3から出力される信号のスペクトルである。
【0013】
図2よりわかるように特にチャネルビット周波数の1/4以上の周波数帯域の信号スペクトルが例えば低域のスペクトルに対し約−20dB以下のレベルになるように減衰させられる。次にこの信号がアナログディジタル変換器4によりサンプリングされる。このときの信号スペクトルを図3に示す。以下、スペクトルを示す図においては横軸をチャネルビット周波数で規格化した規格化周波数で表し、縦軸はスペクトルの低域レスポンスで規格化した規格化信号レベルで現す。
【0014】
図3において実線はアナログ等化回路3から出力される信号のスペクトルすなわちアナログディジタル変換器4に入力される信号のスペクトルであり、サンプリングクロックがチャネルビット周波数の1/2であるためアナログディジタル変換器4にてサンプリングされた信号の折り返し成分が生じ、この折り返し成分のスペクトルを破線で示している。折り返し成分のスペクトルにおいてチャネルビット周波数の1/4以下の周波数成分は必要となる信号の周波数成分との分離ができないため復調に用いる信号に対しての妨害成分となる。
【0015】
アナログディジタル変換器4にてサンプリングされたディジタル再生信号はディジタル等化回路5により所望の特性に等化される。ここでディジタル等化回路5にはPLL回路7にて生成した同期クロックおよび、上記同期クロックが分周器8にて分周された分周同期クロックが入力される。ここで分周器8における分周比は1以上に設定される。従って、ディジタル等化回路5においては同期クロック周期で入力されるディジタル再生信号を例えばシリアル−パラレル処理などを用いて分周同期クロックのパラレルデータに変換して処理が行われる。ここで動作クロック周波数が更に低減されるためディジタル等化回路5においても従来と比較して低電力化を実現することができる。
【0016】
ディジタル等化回路5における等化特性は出力信号の特性がPR(a,b,c,d,e,f)、特にPR(2,3,4,4,3,2)で現される特性となるように自動的に等価されるように構成される。具体的にはFIR(Finite Impulse Response)フィルタ構成で構成され、FIRフィルタにおけるタップ係数を次段のPRML復号回路6での復調結果を基にした基準レベルとの比較を行いその差が小さくなるよう係数を更新する、いわゆるLMS方式が用いられる。ここで、PR(2,3,4,4,3,2)の場合の等価後の周波数スペクトルを図4に実線で示す。同図の破線は折り返し成分のスペクトルである。同図ではディジタル等化回路5より出力されるパラレル信号を例えばシリアル変換および補間などを行いチャネルビット周波数の信号列に直した場合の特性を示す。同図よりわかるように、PR(2,3,4,4,3,2)特性においては必要な帯域をチャネルビット周波数の1/4よりも十分に少ない帯域に抑えることができる。これは必要な信号成分を低域から得ることであり、このため同図の斜線部に示すように、アナログディジタル変換器4にて生じる折り返しによる妨害成分を十分に小さくでき、これにより妨害成分の影響を受けず安定した信号性能を実現できることができる。
【0017】
次にディジタル等化回路5により所定のPR特性に等化されたパラレル信号はPRML復号回路6に入力され例えばビタビアルゴリズムなどを用いて復号される。ここで使用されるビタビアルゴリズムは上記PR特性に適した構成、すなわちPR特性により決定される状態数に応じたブランチメトリック、パスメトリックの計算がなされメモリ上で信号パスの選択を行い、復号結果を確定する。このPRML復号回路6においても上記ディジタル等化回路5と同様に分周器8にて分周された分周同期クロックが入力されディジタル等化回路5のパラレル信号を並列処理することにより回路の動作周波数を低減することができ低電力化を実現することができる。
【0018】
以上述べた実施例によれば、アナログディジタル変換器、ディジタル等化回路、PRML復号回路のディジタル信号処理回路における動作クロック周波数を低減することにより低電力化できるとともに、PR(2,3,4,4,3,2)特性により復号に必要な信号成分に対するサンプリングによる折り返しによる妨害成分の影響を低減できるため安定した性能を得ることができる。
【0019】
以上の実施例ではディジタル等化回路におけるPR等価特性をPR(2,3,4,4,3,2)特性としていたが本発明はこれに限るものではない。
【0020】
例えばPR(a,b,c,d,e,f)特性をPR(1,2,3,3,2,1)特性とした場合の復号に必要な信号成分のスペクトラムを図5に示す。図5に示されるようにPR(1,2,3,3,2,1)特性においてはPR(2,3,4,4,3,2)特性と比較してチャネルビット周波数の1/4までの周波数成分が必要となるが、理想特性としてチャネルビット周波数の1/4以上の周波数成分が少ないため折り返しによる影響は少なくすることができる。このときディジタル等化回路5における自動等化の目標値、PRML復号回路6におけるブランチメトリックの目標値をPR(1,2,3,3,2,1)特性にあわせたように設定すれば上記実施例と同様の効果を得ることができる。すなわち、本発明は復号に必要な信号成分を低域に集中させることができるPR(a,b,c,d,e,f)特性であればよく、これによりディジタル信号処理の低電力化と安定した再生性能を両立することが可能である。
【0021】
以上述べたように、本発明はPR(a,b,c,d,e,f)特性を用いることにより、同じ符号の連続数が2以上である記録符号で記録された信号の再生においてもディジタル信号処理をチャネルビット周波数の1/2以下で動作させることができ、かつ安定した再生性能を得ることができる。
【0022】
すなわち、本発明は同じ符号の連続数が2以上である記録符号で記録された信号の再生においてもディジタル信号処理をチャネルビット周波数の1/2以下で動作させることができるため信号処理の低電力化、高速化に適しており、またPR等価特性をPR(a,b,c,d,e,f)、特にPR(2,3,4,4,3,2)にすることによってサンプリングによる折り返し成分を減少させ再生信号の品質、PRML処理能力を向上させることができる。
【0023】
以上、本発明について実施例により説明したが、本発明は図面に示されているもの、および本明細書に記載されているものに限定されるものではない。この発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはこの技術に精通したものなら明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の第1の実施例を示すブロック図。
【図2】アナログ等価回路でのスペクトルを示す図。
【図3】アナログディジタル変換器でのスペクトルを示す図。
【図4】ディジタル等化回路でのスペクトルを示す図。
【図5】他のPR特性でのスペクトルを示す図。
【符号の説明】
【0025】
1 光ディスク
2 光ヘッド
3 アナログ等化回路
4 アナログディジタル変換器
5 ディジタル等化回路
6 PRML復号回路
7 PLL回路
8 分周回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクに同じ符号の連続数が2以上である記録符号で記録された信号を再生する光ディスク装置であって、
再生信号の所定帯域を強調するとともに不要帯域を減衰させる等化特性を有するアナログ等化手段と、
アナログ等化手段により等化されたアナログ等化信号をアナログディジタル変換するアナログディジタル変換器と、
アナログディジタル変換器によりディジタル化された再生信号の周波数特性を所定の周波数特性に調整するディジタル等化手段と、
ディジタル等化手段により等化されたディジタル等化信号をPRML方式を用いて復号するPRML復号手段とを備え、
前記アナログディジタル変換手段は記録符号のチャネルビット周波数の1/2の周波数でサンプリングを行い、前記ディジタル等化手段および前記PRML復号手段がチャネルビット周波数の1/2以下の周波数で動作するように構成されるとともに、前記PRML復号手段に対するPR等価特性がPR(a,b,c,d,e,f)で現される特性としたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク装置であって、
前記アナログ等化手段は記録符号のチャネルビット周波数の1/4以上の周波数帯域の信号を減衰させるような等価特性を有するように構成されたことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ディスク装置であって、
前記PRML復号手段に対するPR等価特性がPR(2,3,4,4,3,2)で現される特性としたことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−305514(P2008−305514A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153492(P2007−153492)
【出願日】平成19年6月11日(2007.6.11)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】