説明

光ディスク装置

【課題】 追記型光ディスクの未記録の領域を有効利用して追記型光ディスクのデータ破壊に必要かつ最適な照射パワーを検出し、確実かつ安定したデータ破壊を遂行する。
【解決手段】 本発明の光ディスク装置100は、ピックアップ154と、光ディスク130の未記録領域のグルーブに、レーザー光を照射し、マークを記録した後、レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、上書き記録する条件設定記録部212と、上書きされたデータを再生して再生信号を得る再生信号検出部156と、再生信号に基づき、階段状に変化させたレーザー光の照射パワーの中から非対称性割合が所定値以上となるレーザー光の照射パワーを算出し、この算出されたレーザー光の照射パワーを用いて、光ディスクのデータ領域にあって、かつデータ領域の既記録されている部分のマーク上に上書き記録する上書記録部214と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、追記型光ディスクにデータを上書きする光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disk)、BD(Blu-ray Disc)といった光ディスクは、小占有体積かつ安価でありながら記録容量が大きく、大量のデータをコンパクトに収容することができる。その反面、光ディスクに記録されたデータの一部が不要になったとしても、情報漏洩防止の観点から、大量のデータが記録された光ディスクを単純に廃棄することができなくなってきている。特に、CD−RやDVD−R等の追記型光ディスクは、データの更新や消去が容易ではなく、特別なデータ破壊処理を行わない限り一度書き込まれたデータがいつまでも有効に維持される。
【0003】
このような問題に対して、記録されているデータが不要になった追記型光ディスクのデータ記録領域にさらにデータを上書き(重畳)することで、既存のデータを破壊することが可能な光ディスクの書込読み出し装置が知られている(例えば、特許文献1)。また、追記型光ディスクに既に記録されているデータの変調方式のラン長制約と同じラン長制約の変調方式で変調されたデータを、その上書きに用いる技術も開示されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−097432号公報
【特許文献2】特開2006−048763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したような先行技術文献では、追記型光ディスクに記録されたデータにさらにデータを上書きするときの具体的なレーザー光の照射パワーの記載が乏しく、データ破壊に必要な照射パワーを特定することができなかった。特許文献2には、データの上書きに際し、再生時のレーザー光の照射強度と同程度の照射を行う記載があるものの、その照射強度によってデータが確実に上書きされたかを把握する術はなく、結局、適当に設定した照射パワーでの試行を繰り返さざるを得なかった。
【0006】
このように、適切なレーザー光の照射パワーを把握できない状況下で、追記型光ディスクにデータを上書きすると、その上書きに要するレーザー光の照射パワーが小さすぎた場合、データ破壊が不十分となって情報漏洩のおそれが生じる。また、照射パワーが大きすぎると、トラッキングエラー信号の上昇と共にサーボゲインが高くなり、トラッキング制御も不安定になって、正常なデータの上書きに支障を来すこととなっていた。
【0007】
また、追記型光ディスクのデータの上書きを連続して行うと、データを記録するためのピックアップのレーザダイオードや周囲温度等の経時変化により、その照射パワーが変動し、やはりデータの破壊が不十分になったり、サーボ系統が不安定になったりしていた。
【0008】
本発明は、このような課題に鑑み、追記型光ディスクの未記録の領域を有効利用して追記型光ディスクのデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出し、確実かつ安定したデータ破壊を遂行することが可能な、光ディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の光ディスク装置は、半径方向に沿って、ランドとグルーブが交互に形成され、かつグルーブには円周方向に沿って複数のゾーンが形成されている追記型光ディスクのグルーブにレーザー光を照射しマークを形成してデータの記録を行い、或いは、追記型光ディスクのデータが記録されたグルーブにレーザー光を照射し、反射された戻り光を検出して、データを再生するピックアップと、追記型光ディスクの未記録領域のグルーブに、レーザー光を照射し、マークを記録した後、レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、上書き記録する条件設定記録部と、上書きされたデータを再生して再生信号を得る再生信号検出部と、グルーブ上に形成されるマークとマークが形成されている以外のスペースとが50%の割合で存在するときのマークおよびスペースのそれぞれから得られる再生信号の比を基準にした場合における、再生信号の比が基準からずれた割合を非対称性割合というとき、再生信号検出部で得られた再生信号に基づき、階段状に変化させたレーザー光の照射パワーの中から非対称性割合が所定値以上となるレーザー光の照射パワーを算出し、この算出されたレーザー光の照射パワーを用いて、追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつデータ領域の既記録されている部分のマーク上に上書き記録する上書記録部と、を有することを特徴とする。ここで、所定値は、23%以上であってもよい。
【0010】
本発明では、追記型光ディスクの未記録領域(第1領域)を有効利用し、再生信号の非対称性割合が所定値以上となるレーザー光の照射パワー、即ち、追記型光ディスクのデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出している。かかる構成により、トラッキング制御を有効に維持したままで、安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。また、レーザー光の照射パワーを検出するための領域として、破壊対象となるデータが記録されていない第1領域を用いることで、その第1領域内にデータ破壊が不十分な部分が生じたとしても実害は生じず、破壊対象としてのデータ領域の既記録されている部分である第2領域のデータを確実に破壊することが可能となる。
【0011】
光ディスク装置は、追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつデータ領域に既記録されているマーク上に上書き記録する際、次のゾーンに移った直後に、予め求められている非対称性割合とグルーブへの上書きレーザー照射パワーとの関係を用いて、直前のゾーンの上書きレーザー照射パワーの補正を行なって、次のゾーンへの上書き記録を継続させる照射パワー補正部をさらに備えてもよい。
【0012】
追記型光ディスクでは、一般的に、ゾーンまたはサウンドトラック単位でデータが記録される。従って、その記録タイミングの差によって、ゾーン間またはサウンドトラック間で、ピックアップのレーザダイオードや周囲温度等の経時変化が生じやすい。本発明では、切り換わるタイミングを把握可能なゾーンまたはサウンドトラックの境界において、新たなゾーンまたはサウンドトラックの再生信号の非対称性割合に基づいてレーザー光の照射パワーを補正することができ、ピックアップのレーザダイオードや周囲温度等の経時変化に拘わらず、安定したデータ破壊が可能となる。
【0013】
光ディスク装置は、追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつデータ領域に既記録されているマーク上への上書き記録を完了した結果と、この結果が関係付けられた識別情報とを有する完了情報を生成する完了情報生成部をさらに備えてもよい。
【0014】
追記型光ディスクに記録可能なコンテンツデータ(デジタルコンテンツデータ)は、著作権により保護され、そのダビング回数が制限される場合がある。このとき、せっかくダビングした追記型光ディスクのコンテンツデータを不用意に破壊すると、制限されるダビング回数が実質的に減ることとなる。本発明では、ダビング回数を管理する管理情報と追記型光ディスクの破壊を証明する完了情報とを連携させ、コンテンツデータの破壊に従ってダビング回数の制限を1つ戻すことにより、ダビング回数の不本意な削減を回避することができる。
【0015】
光ディスク装置は、レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、上書き記録された部分のデータのエラー訂正を行うエラー訂正部をさらに備え、上書記録部は、エラー訂正が不可能になったレーザー光の照射パワーで、追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつデータ領域の既記録されている部分のグルーブ上に上書き記録してもよい。
【0016】
かかる構成により、再生信号の非対称性割合に加えて、または独立して、エラー訂正の可否に基づき、追記型光ディスクのデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出することができるようになり、確実かつ安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の光ディスク装置は、追記型光ディスクの未記録の領域を有効利用して追記型光ディスクのデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出し、確実かつ安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態にかかる光ディスク装置の電気的な構成を示した機能ブロック図である。
【図2】本実施形態にかかるディスク駆動部の具体的な構成を示した説明図である。
【図3】本実施形態にかかる第1領域へのデータの上書きにおけるレーザー光の照射パワーの推移を示した説明図である。
【図4】本実施形態にかかる再生信号の非対称性割合を説明するためのアイパターンである。
【図5】本実施形態にかかる第1領域の再生信号の非対称性割合の推移を示した説明図である。
【図6】本実施形態にかかる関係情報を説明するための説明図である。
【図7】本実施形態にかかる第2領域への任意のデータの上書きを停止する所定のタイミングを説明するための説明図である。
【図8】本実施形態にかかるデータ記録方法の具体的な処理を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0020】
(光ディスク装置100)
図1は、本実施形態にかかる光ディスク装置100の電気的な構成を示した機能ブロック図である。光ディスク装置100は、ディスク駆動部110と、データバッファ112と、画像信号出力部114と、音声信号出力部116と、中央制御部118と、を含んで構成される。
【0021】
ディスク駆動部110は、光ディスク装置100に対するユーザの操作入力に応じて、CD、DVDやBD等の光ディスク130に記録されたコンテンツデータを再生、データバッファ112に伝送し、また、データバッファ112に保持された所望のコンテンツデータを、光ディスク130に記録する。以下、単に光ディスク130と表現する場合、その対象として少なくともCD−RやDVD−Rといった追記型光ディスクを含んでいる。
【0022】
かかる光ディスク130には、半径方向にランドとグルーブが隣接して交互に形成されている。そして、この光ディスク130が追記型光ディスクの場合には、データは、このグルーブ上にマーク(凹み)を記録することにより得られる。マークが記録されない部分は、スペースとなる。
【0023】
図2は、ディスク駆動部110の具体的な構成を示した説明図である。ディスク駆動部110は、搬送機構150と、回動機構152と、ピックアップ154と、再生信号検出部156と、エラー訂正部158と、を含んで構成される。
【0024】
搬送機構150は、トレイ170とその駆動部(図示せず)からなり、ユーザの操作入力に応じて、光ディスク130を装着したトレイ170を白抜き矢印方向前後に搬送する。
【0025】
回動機構152は、磁性体172が設けられたクランパ174と、その磁性体172を吸引する磁石176が設けられたターンテーブル178と、ターンテーブル178に連結されたスピンドルモータ180とからなり、搬送機構150が搬送した光ディスク130をクランパ174とターンテーブル178とでクランプし、スピンドルモータ180が、クランパ174やターンテーブル178と共に光ディスク130を回転させる。
【0026】
ピックアップ154は、回動機構152に従って回転している光ディスク130のグルーブにレーザー光を照射しマークを形成してデータの記録を行い、或いは、光ディスク130のデータが記録されたグルーブにレーザー光を照射し、反射された戻り光を検出して、データを再生する。
【0027】
ピックアップ154によるデータの再生時には、光ディスク130が回転しているため、光ディスク130やスピンドルモータ180の偏心または傾きによって、ピックアップ154に対する記録面のトラックの位置が、半径方向および記録面垂直方向に微少変動する。従って、ピックアップ154は、上述した半径方向の大まかな移動以外にも、トラッキングサーボやフォーカシングサーボによって半径方向のトラッキング制御や記録面垂直方向のフォーカス制御を遂行し、トラックの変動に追従する。
【0028】
例えば、トラッキング制御では、ピックアップ154が光ディスク130のトラックの中心からずれると、そのずれ量がトラッキングエラー信号を通じて把握され、そのずれ量を相殺する方向にピックアップ154が動かされる。こうして、ピックアップ154とトラックとの半径方向の相対位置が所定誤差範囲内に維持される。
【0029】
しかし、ピックアップ154を通じたデータの記録において、その記録に要するレーザー光の照射パワーが小さすぎると、トラックを正しく追跡(トレース)できなくなり、サーボ外れが生じうる。また、逆に、レーザー光の照射パワーが大きすぎても、トラッキングエラー信号の振幅(感度)が上昇し、以下のようにサーボ外れが生じうる。
【0030】
記録時のトラッキング制御は、マーク記録時のレーザー光の照射パワー(ライトパワー)と、スペースとして残すための再生時のレーザー光の照射パワー(リードパワー)を頻繁に切り換えた状態で行うが、記録時のレーザー光が光ディスク130の記録面で反射された戻り光と再生時のレーザー光が光ディスク130の記録面で反射された戻り光との平均値を求めて、サーボを行う平均値サーボ方式の場合、ライトパワーが高くなるとそれに比例して戻り光も大きくなり、その分だけトラッキング制御信号の振幅(感度)が大きくなって、サーボのループゲインが高くなる。逆に、ライトパワーが低くなりすぎても、制御が不安定になりサーボ外れが生じる。
【0031】
また、他のサーボ方式として、先のリードパワー時の戻り光のみをサンプリングして行う方式もある。この場合、ライトパワーが多少変化しても影響を受けないが、ライトパワーが大きくなりすぎて、戻り光が光検知器の入力レベルを超え、クリップするような状態になると、光検知器の特性からリードパワーに切り換わっても、その出力レベルが正規の値に戻りきらず、高い状態をサンプリングしてしまい、ループゲインが高くなってサーボが不安定になる。
【0032】
このように、ループゲインが増加し続けると、トラッキング制御が不安定になり、ついには発振によってサーボ外れが生じうる。本実施形態では、記録時のレーザー光の照射パワーを適切な値に制御することで、確実かつ安定したデータ破壊を遂行する。
【0033】
再生信号検出部156は、ピックアップ154を通じて、光ディスク130のデータそれぞれの記録位置における再生信号(RF(Radio Frequency)信号)を検出する。また、再生信号検出部156は、再生信号のピーク値を検出するピーク検出回路182と、再生信号のボトム値を検出するボトム検出回路184と、再生信号の平均値を導出する低域通過フィルタ回路186とを含んでいる。
【0034】
光ディスク130では、マークとスペースとが切り換わると「1」、切り換わらないと「0」を示すようにデータが記録されるが、その変化点が連続しないように、8ビットの元データがEFM(Eight to Fourteen Modulation)により14ビットに変換されて記録される。かかるEFMに従うと、マークとスペースは最低3ビット分の長さを有し、マークとスペースの出現率がそれぞれ50%となる。従って、1回の記録における上記低域通過フィルタ回路186からの平均値は、ピーク検出回路182からのピーク値とボトム検出回路184からのボトム値との中心値を示すこととなる。かかる平均値、ピーク値、ボトム値は、後述する上書記録部214で利用される。
【0035】
エラー訂正部158は、ピックアップ154を通じて、光ディスク130のデータのエラー訂正を行う。光ディスク130のうち、例えばDVD−Rでは、エラー訂正方式としてリードソロモン符号というパリティ方式が採用され、横パリティと縦パリティとのビット数に従って、ECC(Error Correcting Code)ブロック毎に、数〜数十バイトの誤りを訂正することができる。エラー訂正部158は、このようなエラーの訂正を行い、エラー訂正が正常に完了すると、エラー訂正が実行されたエラー箇所の数を中央制御部118に送信し、エラー訂正が正常に完了しなかった場合、即ち、エラー訂正が有効に機能しなかった場合、その旨上書記録部214に送信する。また、上書記録部214の指示により、レーザー光の照射パワーを階段状に変化させたときのエラー訂正も行う。
【0036】
データバッファ112は、HDDやVRAMで構成され、ディスク駆動部110で再生された光ディスク130のコンテンツデータや、インターネット等の通信網や放送を通じて取得されたコンテンツデータを保持する。
【0037】
画像信号出力部114は、データバッファ112からコンテンツデータ中の画像データを抽出し、映像信号に変換した後、モニタ132に出力させる。
【0038】
音声信号出力部116は、データバッファ112からコンテンツデータ中の音声データを抽出し、音声信号に変換した後、スピーカ134に出力させる。
【0039】
中央制御部118は、中央処理装置(CPU)を含む半導体集積回路で構成され、RAMや他の構成要素と協働して光ディスク装置100全体を管理および制御する。また、本実施形態において、中央制御部118は、記録領域抽出部210、条件設定記録部212、上書記録部214、関係情報生成部216、照射パワー補正部218、管理情報生成部220、完了情報生成部222として機能する。
【0040】
記録領域抽出部210は、ピックアップ154を通じて、光ディスク130における未記録領域である第1領域を抽出する。ここで第1領域とは、光ディスク130上のパワーキャリブレーションエリアやデータエリアで記録されずに残っている領域をいう。また、後述する第2領域とは、光ディスク130上のデータエリアでデータを記録した記録済み領域であって、かつデータを上書きして破壊する領域をいう。
【0041】
条件設定記録部212は、第1領域のグルーブに、レーザー光を照射し、マークを記録した後、レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、任意のデータを上書き記録する。ここでは任意のデータとしてランダムデータを用いており、レーザー光の照射パワーは、記録時の平均値または前回値を用いている。
【0042】
図3は、第1領域へのデータの上書きにおけるレーザー光の照射パワーの推移を示した説明図である。条件設定記録部212は、第1領域の境界であるa地点まで、再生時の平均的な照射パワーで推移させ、第1領域の全長を示すa地点からd地点より、少し内側のb地点からc地点でデータの記録を遂行させる。
【0043】
ここで、照射パワーは段階的に変化させているが、後述する照射パワー補正部218による補正を適切に遂行するため、その中心値は記録時の照射パワーの平均値を用いることとする。また、データを記録している際に、条件設定記録部212は、事後的に記録位置からその記録を行ったときのレーザー光の照射パワーを特定できるよう対応関係を保持する。また、図3では、7段階の照射パワーによってデータを上書きしているが、かかる段階数に限らず、さらに細かい段階に分けたり、線形的に変化させたりすることもできる。
【0044】
上書記録部214は、条件設定記録部212が第1領域へデータの上書きした後、再生信号検出部156に第1領域の再生信号を検出させ、再生信号検出部156で得られた再生信号に基づき、階段状に変化させたレーザー光の照射パワーの中から非対称性割合が所定値以上となるレーザー光の照射パワーを算出する。ここで再生信号の非対称性割合[%]とは、グルーブ上に形成されるマークとスペースとが50%の割合で存在するときのマークおよびスペースそれぞれから得られる再生信号の比を基準にした場合における、再生信号の比が基準からずれた割合を示し、再生信号検出部156のピーク検出回路182、ボトム検出回路184、低域通過フィルタ回路186それぞれで検出された値を平均値Avg、ピーク値Pek、ボトム値Btmとすると、中心値と平均値との差分である平均値の偏差を、その変動幅で除算した、
((Pek+Btm)/2−Avg)/(Pek−Btm)×100 …(数式1)
で表すことができる。
【0045】
図4は、再生信号の非対称性割合を説明するためのアイパターンである。1回目のデータを記録した後、再生信号は、少なくとも3ビット分の長さを有し、均一に出現するマークとスペースに対応して形成される。従って、上述したように、再生信号の平均値Avgは、スペースにおけるピーク値Pekと、マークにおけるボトム値Btmとの中間に位置することとなる。かかる平均値Avg、ピーク値Pek、ボトム値Btmを上記数式1に適用すると非対称性割合はほぼ0%となる。
【0046】
しかし、2回目のデータ記録(上書き)においては、1回目でスペースであった部位にマーク(凹み)が形成されるが、マークであった部位はスペースに戻すことができないので、マークの占有領域は、1回目の記録時のマークと2回目の記録時のマークの論理和となり、マークの出現頻度はスペースより高くなる。すると、平均値Avgはスペースにおけるピーク値Pekと、マークにおけるボトム値Btmとの中間値より低くなる方に変位し、非対称性割合が正の値となる。
【0047】
例えば、図3に示したような段階的な照射パワーで記録すると、第1領域の再生信号の非対称性割合は図5のように段階的に増加する。図5を参照すると、上書きが行われていないb地点まで、およびc地点からの領域では、非対称性割合が0%で安定しているが、上書きを実行したb地点からc地点では非対称性割合が正の値となり、レーザー光の照射パワーが大きければ大きいほど、非対称性割合の絶対値も大きくなる。
【0048】
続いて、上書記録部214は、再生信号の非対称性割合が所定値、本実施形態では23%以上となる記録位置に対応する照射パワーを上書き用の最適な照射パワーとして設定する。ここで、所定値を23%としたのは、データを正しく復元可能な再生信号の規格値である−5〜15%の上限値の1.5倍以上の非対称性割合となれば、確実にデータ破壊が為されたと見なすことができるからである。また、上書記録部214は、再生信号の非対称性割合に加えて、または独立して、エラー訂正部158によるエラー訂正が不可能になった記録位置に対応する照射パワーを上書き用の最適な照射パワーとして設定することもできる。
【0049】
そして、上書記録部214は、ピックアップ154に、光ディスク130の第1領域以外の、少なくともデータが記録されている第2領域のマーク上に、上記設定された上書き用の最適なレーザー光の照射パワーを用いて、任意のデータを上書きさせる。
【0050】
本実施形態では、上述したように、光ディスク130の未記録の第1領域を、上書き用の最適なレーザー光の照射パワーを導出するための試行領域として有効利用している。従って、記録時の状態が異なる光ディスク130であっても、また、ディスク駆動部110が経時変化を起こした場合であっても、再生信号の非対称性割合が所定値以上となる照射パワー、即ち、光ディスク130のデータ破壊に必要かつ最適な照射パワーを検出することができる。
【0051】
かかる構成により、トラッキング制御を有効に維持したままで、光ディスク130やディスク駆動部110のばらつきを吸収し、安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。
【0052】
また、レーザー光の照射パワーを検出するための領域として、破壊対象となるデータが記録されていない第1領域を用いることで、その第1領域内にデータ破壊が不十分な部分が生じたとしても実害は生じず、破壊対象である第2領域のデータを確実に破壊することが可能となる。
【0053】
関係情報生成部216は、再生信号検出部156に第1領域の再生信号を検出させ、再生信号検出部156が検出した第1領域の再生信号の非対称性割合と、その上書きに要したレーザー光の照射パワーとの関係を示す関係情報を生成する。
【0054】
図6は、関係情報を説明するための説明図である。図3に示した第1領域におけるレーザー光の照射パワーと、図5に示した第1領域における再生信号の非対称性割合とを対応付けることにより、図6のような、レーザー光の照射パワーに対する再生信号の非対称性割合の推移(関係情報)が導き出され、後述する照射パワー補正部218に利用される。
【0055】
照射パワー補正部218は、第2領域のマーク上に上書き記録する際、所定のタイミングで、再生信号検出部156によって予め求められている非対称性割合と、グルーブへの上書きレーザー照射パワーとの関係を用いて、直前の上書きレーザー照射パワーの補正を行ない、補正されたレーザー照射パワーで上書き記録を継続させる。詳細には、再生信号検出部156に検出された再生信号の非対称性割合をフィードバックさせ、目標とする非対称性割合との差分をレーザー光の照射パワーとして印加する閉ループ制御を施し、再生信号の非対称性割合が目標値(23%)未満になったら、データを確実に破壊すべくレーザー光の照射パワーを上げ、目標値(23%)より大きくなったら、トラッキング制御を維持すべくレーザー光の照射パワーを下げる。
【0056】
かかる構成により、所定のタイミング毎に再生信号の非対称性割合の変動を把握することができ、データを記録するピックアップのレーザダイオードや周囲温度等の経時変化に拘わらず、均一なデータ破壊を遂行することが可能となる。
【0057】
また、照射パワー補正部218は、関係情報生成部216が生成した関係情報に基づいてレーザー光の照射パワーを補正する。かかる再生信号の非対称性割合とレーザー光の照射パワーとの関係を示す関係情報を照射パワーの補正に用いる構成により、再生信号の非対称性割合の目標値と再生信号の非対称性割合の現在値との差分から、増減すべき照射パワーを正確に導き出すことができ、最適な閉ループ制御による安定したデータ破壊が可能となり、さらに、データの上書きの際、トラッキングエラー信号をサンプリングする設定(サンプリング位置等)を予め定めることもできる。
【0058】
また、上書記録部214による第2領域への任意のデータの上書きを停止する所定のタイミングは、DVDでのゾーンまたはCDでのサウンドトラックが切り換わるタイミングとしてもよい。ここで、ゾーンやサウンドトラックは、データの記録単位を示し、ECCブロックの整数倍の容量で表される。
【0059】
図7は、第2領域への任意のデータの上書きを停止する所定のタイミングを説明するための説明図である。
【0060】
光ディスク130では、一般的に、図7(a)で示すような、ゾーン単位またはサウンドトラック単位でデータが記録される。従って、その記録タイミングの差によって、ゾーン間またはサウンドトラック間で、レーザダイオードや周囲温度等の経時変化が生じやすい。ここでは、切り換わるタイミングを把握可能なゾーンまたはサウンドトラックの境界において、新たなゾーンまたはサウンドトラックの再生信号の非対称性割合に基づいてレーザー光の照射パワーを補正することができ、ゾーンまたはサウンドトラックの記録状態の違いを吸収して、安定したデータ破壊が可能となる。
【0061】
ただし、照射パワー補正部218が、厳格にゾーンまたはサウンドトラックの境界を超えた時点で、直前に上書きされた第2領域のデータの再生信号を検出すると、本来必要な新たなゾーンまたはサウンドトラックの再生信号を検出できなくなる。従って、照射パワー補正部218は、ゾーンまたはサウンドトラックの境界を少し越えた時点、例えば2〜3秒後に再生信号を検出するのが望ましい。
【0062】
また、所定のタイミングを、図7(b)に示すように、所定容量毎、例えば、光ディスク130がDVD−Rの場合において最内周から500Mbyte毎としてもよい。かかる構成により、所定容量毎にレーザー光の照射パワーを見直すことができ、安定したデータ破壊が可能となる。
【0063】
さらに、所定のタイミングとして、図7(c)に示すように、上述したゾーンまたはサウンドトラックの境界と所定容量毎の境界との論理和をとることもできる。ただし、ゾーンまたはサウンドトラックの境界と所定領域毎の境界とは関連性に乏しいので、両者の論理和により、例えば、100Mbyte以下といった記録容量の小さい領域が生じることがある。この場合、前後の領域と任意に統合させることで領域の不要な細分化を回避できる。
【0064】
管理情報生成部220は、コンテンツデータが著作権により保護され、そのダビング回数が、例えば1回、3回、10回と制限されている場合、ダビング回数を管理するための管理情報を生成する。管理情報には、コンテンツデータの識別子と、ダビング可能な残り回数とが関連付けられ、管理情報生成部220は、コンテンツデータのダビングが実行される毎に管理情報の残り回数をデクリメントする。また、管理情報生成部220は、外部機器に転送(チェックアウト)したコンテンツデータが当該光ディスク装置100に戻されると(チェックイン)、デクリメントした残り回数をインクリメントして戻す。
【0065】
完了情報生成部222は、上書記録部214による第2領域への任意のデータの上書きが完了すると、マーク上への上書き記録を完了した結果と、この結果が関係付けられた識別情報とを有する完了情報を生成する。
【0066】
上述したように、光ディスク130に記録可能なコンテンツデータ、特にデジタルコンテンツデータは、著作権により保護され、そのダビング回数が制限される。このとき、せっかくダビングした光ディスク130のコンテンツデータを不用意に破壊すると、制限されるダビング回数が実質的に減ることとなる。ここでは、管理情報生成部220が管理する管理情報と光ディスク130の破壊を証明する完了情報とを連携させ、コンテンツデータの破壊に従ってダビング回数の制限を1つ戻すことにより、ダビング回数の不本意な削減を回避することができる。
【0067】
以上、説明した光ディスク装置100により、光ディスク130の未記録の領域を有効利用して光ディスク130のデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出し、確実かつ安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。
【0068】
(データ記録方法)
続いて、上述した光ディスク装置100を用いたデータ記録方法について説明する。図8は、本実施形態にかかるデータ記録方法の具体的な処理を示したフローチャートである。
【0069】
ユーザによる光ディスク130の破壊入力があると(S300のYES)、光ディスク装置100の記録領域抽出部210は、ピックアップ154を通じて、光ディスク130における未記録の第1領域を抽出し(S302)、条件設定記録部212は、ピックアップ154に、第1領域に任意のデータを記録させ(S304)、レーザー光の照射パワーを段階的に増加させつつ第1領域にさらに任意のデータを上書きさせる(S306)。
【0070】
そして、再生信号検出部156は、ピックアップ154を通じて、データが上書きされた第1領域の各記録位置における再生信号を検出する(S308)。
【0071】
続いて、上書記録部214は、再生信号検出部156によって検出された再生信号の非対称性割合が所定値以上となる記録位置に対応するレーザー光の照射パワーを導出し(S310)、ピックアップ154に、その導出されたレーザー光の照射パワーを用いて第2領域のマーク上に任意のデータを上書きさせる(S312)。
【0072】
かかるデータ記録方法によっても、光ディスク130の未記録の領域を有効利用して光ディスク130のデータ破壊に必要かつ最適なレーザー光の照射パワーを検出し、確実かつ安定したデータ破壊を遂行することが可能となる。
【0073】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0074】
なお、本明細書のデータ記録方法における各工程は、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいはサブルーチンによる処理を含んでもよい。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、追記型光ディスクにデータを上書きする光ディスク装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
100 …光ディスク装置
130 …光ディスク(追記型光ディスク)
152 …回動機構
154 …ピックアップ
156 …再生信号検出部
158 …エラー訂正部
210 …記録領域抽出部
212 …条件設定記録部
214 …上書記録部
216 …関係情報生成部
218 …照射パワー補正部
220 …管理情報生成部
222 …完了情報生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半径方向に沿って、ランドとグルーブが交互に形成され、かつ前記グルーブには円周方向に沿って複数のゾーンが形成されている追記型光ディスクの前記グルーブにレーザー光を照射しマークを形成してデータの記録を行い、或いは、前記追記型光ディスクの前記データが記録された前記グルーブにレーザー光を照射し、反射された戻り光を検出して、前記データを再生するピックアップと、
前記追記型光ディスクの未記録領域の前記グルーブに、前記レーザー光を照射し、前記マークを記録した後、前記レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、上書き記録する条件設定記録部と、
前記上書きされた前記データを再生して再生信号を得る再生信号検出部と、
前記グルーブ上に形成されるマークと前記マークが形成されている以外のスペースとが50%の割合で存在するときの前記マークおよび前記スペースのそれぞれから得られる再生信号の比を基準にした場合における、前記再生信号の比が基準からずれた割合を非対称性割合というとき、
前記再生信号検出部で得られた前記再生信号に基づき、前記階段状に変化させた前記レーザー光の照射パワーの中から前記非対称性割合が所定値以上となる前記レーザー光の照射パワーを算出し、この算出された前記レーザー光の照射パワーを用いて、前記追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつ前記データ領域の既記録されている部分の前記マーク上に上書き記録する上書記録部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。
【請求項2】
前記追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつ前記データ領域に既記録されている前記マーク上に上書き記録する際、次のゾーンに移った直後に、予め求められている前記非対称性割合と前記グルーブへの上書きレーザー照射パワーとの関係を用いて、前記直前のゾーンの前記上書きレーザー照射パワーの補正を行なって、前記次のゾーンへの上書き記録を継続させる照射パワー補正部をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の光ディスク装置。
【請求項3】
前記追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつ前記データ領域に既記録されている前記マーク上への上書き記録を完了した結果と、この結果が関係付けられた識別情報とを有する完了情報を生成する完了情報生成部をさらに備えていることを特徴とする請求項2に記載の光ディスク装置。
【請求項4】
前記所定値は、23%以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の光ディスク装置。
【請求項5】
前記レーザー光の照射パワーを階段状に変化させて、上書き記録された部分のデータのエラー訂正を行うエラー訂正部をさらに備え、
前記上書記録部は、前記エラー訂正が不可能になった前記レーザー光の照射パワーで、前記追記型光ディスクのデータ領域にあって、かつ前記データ領域の既記録されている部分の前記グルーブ上に上書き記録することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−218665(P2010−218665A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67028(P2009−67028)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】