説明

光ディスク記録再生装置及びバッファメモリ管理方法

【課題】光ディスク上の欠陥にも対応し、搭載するバッファメモリを増設することなく、連続する映像・音声データを中断せずに記録再生すること。
【解決手段】光ディスク装置1において、光ディスク11に記録再生するデータが動画コンテンツであるとき、搭載するメモリ16の中に使用する光ディスクに応じて所定容量のバッファメモリ17の領域を設定する。記録再生部14は、設定したバッファメモリ17を用いて光ヘッド13とホスト装置2の間で転送する記録再生データの一時蓄積を行う。また、光ディスク11に対して動画コンテンツを記録再生した後、当該光ディスク11に対する最適なバッファメモリ容量を求めて登録しておき、次回当該光ディスク11を使用するときに適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに連続する映像・音声データを好適に記録再生する光ディスク記録再生装置及びバッファメモリ管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光ディスク記録再生装置(以下、ドライブ装置)では、光ディスクに映像・音声データを記録再生する場合、ディスク上のデータ領域へのアクセス時間や、データ書き込み読み出し失敗によるリトライ記録再生のために、データの書き込み読み出しが一時中断することがある。カメラからの撮影画像や放送番組のようにリアルタイムに入力する動画コンテンツを記録する場合、データの書き込み動作が中断しても、記録するコンテンツに欠落が生じないことが必要である。また、ディスクに記録した動画コンテンツを再生する場合、データの読み出し動作が中断しても、再生されるコンテンツを中断せずに連続して視聴できることが必要である。そのために、ホスト装置(カメラ、テレビなど)との間でやり取りする記録再生データをドライブ装置のバッファメモリに一旦蓄積(バッファリング)しておき、記録時にはディスクにデータを後書きし、再生時にはディスクからデータを先読みすることで、書き込み読み出しの中断時間を吸収して、ドライブ装置とホスト装置の間で転送されるデータが途切れないようにしている。その際バッファメモリの容量は、データの書き込み読み出しの中断時間の長さを考慮し、データの残容量が枯渇(アンダーフロー)してホスト装置との間で転送データが途切れることのない容量に設定しなければならない。
【0003】
バッファメモリの設定方法について、次のような技術が提案されている。
特許文献1では、ディスク媒体に対し複数のデータアクセス要求が発生した場合でも所定のスループット(データ転送速度)を保証するために、複数のデータアクセス要求それぞれについて所定の条件に従ってメモリ手段にバッファ領域を確保する技術が開示される。
【0004】
特許文献2は撮像装置の場合において、記憶保持動作を行う複数の記憶領域からなるメモリを持ち、設定された動作モードに応じてメモリの論理アドレスマッピングを変更する技術が開示される。
【0005】
【特許文献1】特開2004−213059号公報
【特許文献2】特開2006−109224号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ドライブ装置におけるディスクに対するデータ書き込み読み出し中断は、光ヘッドのシーク性能やディスク上のデータの配置が要因となる場合と、ディスク上の傷や指紋のようなディスク上の欠陥が原因となる場合とがある。前者のシーク性能やデータの配置情報による中断時間は予め予想可能なものであり、比較的短時間の中断で済むことが多い。しかしながら、後者のディスク上の欠陥による中断時間は予想が困難であるとともに、リトライ記録再生のために長時間の中断が余儀なくされることがあり、ユーザに大きな被害を与える恐れがある。さらに、後者のディスク上の欠陥の程度は、使用するディスクごとに異なるので、動作モードだけで中断時間を一律に予想することはできない。
【0007】
前記特許文献1や特許文献2に開示されるメモリ制御技術では、動作モードとそれに必要なバッファリング容量が予想できることが前提となっており、ディスク上の欠陥が要因となる場合には適用が困難である。
【0008】
一方、ディスク上の欠陥のように中断時間が予想困難である場合に対処するため、長い中断時間を想定し余裕のある大容量のバッファメモリを備えておくことも考えられる。しかしながら、ドライブ装置に高コストの大容量バッファメモリを搭載することは、メモリ使用効率が低く装置のコストパフォーマンスが悪くなる。
【0009】
本発明の目的は、上記課題を鑑み、光ディスク上の欠陥にも対応し、搭載するバッファメモリを増設することなく、連続する映像・音声データを中断せずに記録再生できる光ディスク記録再生装置及びバッファメモリ管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、光ディスクにデータを記録再生する光ディスク記録再生装置において、光ディスクにレーザ光を照射してデータを記録再生する光ヘッドと、光ヘッドに供給する記録信号を生成し、光ヘッドからの再生信号を処理する記録再生処理部と、ホスト装置の命令に従い光ディスク記録再生装置の記録再生動作を制御するマイクロプロセッサと、光ディスク記録再生装置の記録再生動作に必要なデータを保存するメモリとを備える。マイクロプロセッサは、光ディスクに記録再生するデータが動画コンテンツであるとき、メモリの中に使用する光ディスクに応じて所定容量のバッファメモリの領域を設定し、記録再生部は、設定したバッファメモリを用いて光ヘッドとホスト装置の間で転送する記録再生データの一時蓄積を行う。
【0011】
またマイクロプロセッサは、光ディスクに対してデータを記録または再生した後、バッファメモリの稼動状況を調べ、当該光ディスクのIDとともに稼動したメモリ容量を管理情報記憶領域に登録し、次回当該光ディスクを使用するとき、管理情報記憶領域に登録されている稼動メモリ容量を読み出してバッファメモリの領域を設定する。
【0012】
本発明は、光ディスク記録再生装置のバッファメモリ管理方法において、光ディスクに記録再生するデータが動画コンテンツかどうかを判定し、動画コンテンツを記録再生すると判定したとき、搭載するメモリの中に使用する光ディスクに応じて所定容量のバッファメモリの領域を設定し、設定したバッファメモリを用いて記録再生データの一時蓄積を行う。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、光ディスク記録再生装置に搭載するバッファメモリを増設することなく、連続する映像・音声データを中断せずに記録再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の光ディスク記録再生装置は、動画コンテンツを記録再生するとき、使用する光ディスクに応じて搭載するメモリの中に最適なバッファリング容量を確保する。すなわち、ディスクごとに必要なバッファメモリ容量を学習して記憶しておき、当該ディスクの記録再生時は記憶している容量値に設定する。また、バッファメモリ領域には、搭載メモリ内の領域配分を変更して割り当てることで、全体のメモリ容量を増設する必要がない。以下、図面を用いてその実施例を説明する。
【0015】
図1は、本発明による光ディスク記録再生装置の一実施例を示す構成図である。光ディスク11にデータを記録再生する光ディスク装置(ドライブ装置)1は、これを制御するホスト装置(PC)2に接続され、両者の間はインタフェース3を介して記録再生データやコマンドが転送される。光ディスク11から再生された映像・音声データは、ホスト装置2に接続されたディスプレイ4にて視聴される。
【0016】
ドライブ装置1の構成を説明する。光ディスク11はスピンドルモータ12で回転させ、光ヘッド13にて記録層にレーザ光を照射してデータを記録または再生する。ここで光ディスク11は、市販のDVD−Video/BDMV(Blu-ray Disk Movie)メディアのように動画コンテンツが記録されているもの、あるいはDVD−R/BD−Rのように動画コンテンツを記録可能なものである。いずれも、光ディスク11に対するデータの書き込みと読み出しは、コンテンツの視聴速度よりも高速に記録再生可能である。光ヘッド13は、レーザ光を発生するレーザ光源、記録層にレーザビームを照射する対物レンズ、対物レンズをディスク厚み方向およびディスク半径方向に駆動するアクチュエータ、ディスクからの反射光を検出し電気信号に変換する光検出器などを含む。光ヘッド13は、図示しないスレッドモータによりディスク上の所定の位置に移動する。
【0017】
記録再生処理部14は、ホスト装置2から転送された映像・音声データを処理し記録信号を生成して光ヘッド13に供給し、また光ヘッド13にて読み出した再生信号を処理して映像・音声データを得る。マイクロプロセッサ15は、ホスト装置2から受けた命令(コマンド)に従い、ドライブ装置1の各部を制御して記録再生動作を行う。メモリ16は、ドライブ装置の記録再生動作に必要な各種のデータを保存するが、この中でバッファメモリ17は、光ヘッド13とホスト装置2との間で転送する記録再生データを一時蓄積するために割り当てた領域である。後述するように、バッファメモリ17の容量は、記録再生コンテンツの種別や使用するディスクの性能に合わせて、マイクロプロセッサ15が最適に設定する。
【0018】
ホスト装置2の構成を説明する。ここではホスト装置の例としてPCを想定しているが、ビデオカメラ、テレビなどでも同様である。CPU21は記録再生アプリケーション22を搭載し、ホスト装置2およびドライブ装置1全体の記録再生制御を行う。メモリ23は例えばハードディスク媒体であり、各種アプリケーションプログラムを格納し、また外部機器と送受信する映像・音声データなどを蓄積する。
【0019】
図2は、ドライブ装置1の搭載するメモリ16の内部構成(メモリマップ)を示す図である。(a)は通常データ記録再生時の構成、(b)は動画コンテンツ記録再生時の構成であり、動作状況に応じて構成を変更する。
【0020】
ドライブ装置1の搭載するメモリ16は、トータル容量が一定Moであり、メモリ16内に記録再生データを一時蓄積するリードライト用バッファメモリ17を動作状況に応じて設定する。(a)の通常データ(動画コンテンツ以外)の記録再生では容量Maに、(b)の動画コンテンツ記録再生時では容量Mbに拡張する。この容量Mbは、ディスクへのデータ書き込みや読み出しに失敗したときに、リトライ記録(交替記録)やリトライ再生を実行するために要する時間を基に設定する。ただしその時間は、記録再生アプリケーションの処理方法の違いや、記録再生する映像・音声データの単位時間当たりの情報量(転送レート)に依存する。さらに本実施例では、ディスクごとの欠陥(傷や指紋など)の多寡をも考慮して最適な容量Mbを設定するものである。
【0021】
メモリ16内にはバッファリング以外の領域として次のものを含む。マイクロプロセッサ使用領域18aは、マイクロプロセッサ15の処理に必要なシステムデータを記憶する。管理情報・学習内容記憶領域18bは、ディスクごとの管理情報や動作条件などを記憶する。リードライト用ワークエリア18cは、記録再生処理部14の処理動作に用いる領域である。バッファリング以外のこれらの領域18a,18b,18cの容量は、従来は固定されていたが、本実施例ではバッファメモリ17の拡張に伴い縮小して用いる。ただし、それらの最小限必要量は確保するようにする。言い換えれば、バッファメモリ17を拡張する際、最大容量Mbmaxを越えないようにする。
【0022】
このように、動画コンテンツの記録再生開始前に必要なバッファメモリ容量をメモリ内に最適に設定することで、ドライブ装置には大容量バッファメモリを搭載せずに、効率良く記録再生動作を行うことができる。
【0023】
次に、図3と図4を用いて、本実施例のバッファメモリ管理方法の工程を説明する。いずれも、マイクロプロセッサ15の制御により処理を進める。
【0024】
図3は、バッファメモリの最適容量を学習する工程のフローチャートを示す図である。
S101では、ディスクがローディングされると、そのディスクIDを読み取る。
S102では、記録または再生するデータが動画コンテンツかどうか判定する。その方法は、ホスト装置2の記録再生アプリケーション22から送られる動画記録/再生のコマンド“Streaming Write”や“Streaming Read”を受信することで判定する。あるいは、ディスクの認証プロセスやファイルシステムの認識によって、動画コンテンツが記録されているディスクかどうかを判定する。
動画コンテンツの場合はS103へ進み、図2(b)に示す動画用バッファメモリを設定する。それ以外のデータであればS108へ進み、図2(a)に示す通常のバッファメモリの状態で記録再生動作を行う。
【0025】
S103では、バッファメモリ17として最大容量Mbmaxを設定する。
S104では、動画コンテンツの記録再生動作を行う。このとき、設定したバッファメモリ17を利用してホスト装置2との間で転送する記録再生データの一時蓄積を行う。
記録再生動作が終了すると、S105では、バッファメモリ17の稼動状況を調べる。当然ながら、欠陥の多いディスクではメモリの使用量が多く、欠陥の少ないディスクではメモリの使用量が少なくなる。これを基に、当該ディスクに対するバッファメモリ17の最適バッファ容量Mbを決定する。
【0026】
S106では、メモリ16内の管理情報・学習内容記憶領域18bに、当該ディスクのIDとその最適バッファリング容量Mbを登録する。
S107では、メモリ16内のバッファメモリ17の容量を通常の設定Maに戻す。
【0027】
以上の学習工程により、特定のディスクに対する最適バッファリング容量Mbを取得することができる。なお、記録と再生ではリトライ条件が異なるので、個別に実施するのが望ましい。この学習工程は、記録再生データとして、テストデータを用いても実データを用いても可能である。
【0028】
図4は、最適バッファメモリを用いて記録再生する工程のフローチャートを示す図である。
S201では、ディスクがローディングされると、そのディスクIDを読み取る。
S202では、装置メモリ16の管理情報・学習内容記憶領域18bに登録されている情報から、対象ディスクIDの最適バッファリング容量Mbを読み出す。なお、登録されていなければ、前記図3の学習工程を行う。
S203では、記録または再生するデータが動画コンテンツかどうか判定する。その手法は前記工程のS102と同様である。
動画コンテンツの場合はS204へ進み、図2(b)に示す動画用バッファメモリを設定する。それ以外のデータであればS207へ進み、図2(a)に示す通常のバッファメモリの状態で記録再生動作を行う。
【0029】
S204では、バッファメモリ17としてS202で読み出した最適バッファリング容量Mbを設定する。
S205では、動画コンテンツの記録再生動作を行う。このとき、設定したバッファメモリ17を利用してホスト装置2との間で転送する記録再生データの一時蓄積を行う。
記録再生動作が終了すると、S206では、メモリ16内のバッファメモリ17の容量を通常の設定Maに戻す。
【0030】
なお、記録再生動作の終了後、前記工程S105とS106を実行し、バッファメモリ17の稼動状況から最適バッファリング容量Mbを再度決定し、メモリ16内の管理情報・学習内容記憶領域18bに登録されている最適バッファリング容量Mbを更新して登録すれば、次回記録再生時のメモリ使用効率が向上する。
【0031】
以上のように、本実施例によれば、ドライブ装置が搭載するメモリのトータル容量を増設することなく、バッファメモリ容量を拡張することができる。その結果、光ディスク上の傷や指紋などの欠陥にも対応し、連続する映像・音声データを中断することなくスムーズに記録再生することができる。その際、ディスクの欠陥の程度を個別に反映させ、ディスクごとに最適な容量Mbを設定することができるので、メモリの使用効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明による光ディスク記録再生装置の一実施例を示す構成図。
【図2】ドライブ装置1の搭載するメモリ16の内部構成(メモリマップ)を示す図。
【図3】バッファメモリの最適容量を学習する工程のフローチャート。
【図4】最適バッファメモリを用いて記録再生する工程のフローチャート。
【符号の説明】
【0033】
1…光ディスク装置(ドライブ装置)、
2…ホスト装置(PC)、
3…インタフェース、
11…光ディスク、
13…光ヘッド、
14…記録再生処理部、
15…マイクロプロセッサ、
16…メモリ、
17…バッファメモリ、
18b…管理情報、学習内容記憶領域、
21…CPU、
22…記録再生アプリケーション、
23…メモリ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ディスクにデータを記録再生する光ディスク記録再生装置において、
上記光ディスクにレーザ光を照射してデータを記録再生する光ヘッドと、
該光ヘッドに供給する記録信号を生成し、該光ヘッドからの再生信号を処理する記録再生処理部と、
ホスト装置の命令に従い当該光ディスク記録再生装置の記録再生動作を制御するマイクロプロセッサと、
当該光ディスク記録再生装置の記録再生動作に必要なデータを保存するメモリとを備え、
上記マイクロプロセッサは、上記光ディスクに記録再生するデータが動画コンテンツであるとき、上記メモリの中に使用する光ディスクに応じて所定容量のバッファメモリの領域を設定し、
上記記録再生部は、該設定したバッファメモリを用いて上記光ヘッドと上記ホスト装置の間で転送する記録再生データの一時蓄積を行うことを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ディスク記録再生装置において、
前記メモリには、使用する光ディスクの情報を記憶する管理情報記憶領域を有し、
前記マイクロプロセッサは、光ディスクに対してデータを記録または再生した後、前記バッファメモリの稼動状況を調べ、当該光ディスクのIDとともに稼動したメモリ容量を上記管理情報記憶領域に登録し、
次回当該光ディスクを使用するとき、上記管理情報記憶領域に登録されている稼動メモリ容量を読み出して前記バッファメモリの領域を設定することを特徴とする光ディスク記録再生装置。
【請求項3】
光ディスク記録再生装置のバッファメモリ管理方法において、
光ディスクに記録再生するデータが動画コンテンツかどうかを判定し、
動画コンテンツを記録再生すると判定したとき、搭載するメモリの中に使用する光ディスクに応じて所定容量のバッファメモリの領域を設定し、
該設定したバッファメモリを用いて記録再生データの一時蓄積を行うことを特徴とするバッファメモリ管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバッファメモリ管理方法において、
光ディスクに対して動画コンテンツを記録または再生した後、前記バッファメモリの稼動状況を調べ、当該光ディスクのIDとともに稼動したメモリ容量を管理情報記憶メモリに登録し、
次回当該光ディスクを使用するとき、上記管理情報記憶メモリに登録されている稼動メモリ容量を読み出して前記バッファメモリの領域を設定することを特徴とするバッファメモリ管理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−97670(P2010−97670A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269628(P2008−269628)
【出願日】平成20年10月20日(2008.10.20)
【出願人】(501009849)株式会社日立エルジーデータストレージ (646)
【Fターム(参考)】