説明

光デバイスおよびマルチビームスキャナ

【課題】カップリング損失および伝達損失が、従来の光デバイスと比較して低い光デバイスの提供。
【解決手段】残余の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ、光回路の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有するアクティブコア層と、パッシブコア層がその上に形成されているとともに、光回路の屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層と、アクティブコア層およびパッシブコア層を覆うとともに、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上部クラッド層と、下部クラッド層の下に形成された下部電極と、上部クラッド層の上に形成された上部電極と、を備え、アクティブコア層の入口部と出口部とは夫々テーパ状とされている光デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイスおよびマルチビームスキャナに関する。
【背景技術】
【0002】
光デバイスは、変調、スイッチング、および信号減衰のような有用な機能を提供する。
【0003】
従来の光デバイスは、コア層を上部クラッド層と下部クラッド層とで挟み、横方向の信号経路を決めるためにリブ状の構造を用いることによって形成される。コアは、電気光学的特性を有する材料によって作製されるが、このような材料は、典型的にはクラッドを形成する材料よりも高い屈折率を有する(特許文献1)。
【特許文献1】特開平7−181532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、コアと前記コアに光信号を導入する入口側光導波路との間、および前記コアと前記コアを伝達された光信号を導出する出口側光導波路との間のカップリング損失および伝達損失が、従来の光デバイスと比較して低い光デバイスを提供すること、を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1は、それ以外の部分の屈折率よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ光回路の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有するアクティブコア層と、パッシブコア層がその上に形成されているとともに、前記光回路の屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層と、パッシブコア層およびアクティブコア層を覆うと共に、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上側コア層と、下側コア層の下に形成された下部電極と、上部クラッド層の上に形成された上部電極と、を備え、アクティブコア層の入口部と出口部とは夫々テーパ状とされている光デバイスに関する。
【0006】
請求項2は、それ以外の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ光回路の屈折率n2よりも大きな屈折率n1を有するアクティブコア層と、その上にパッシブコア層が形成されるとともに、光回路の屈折率n2よりも小さな屈折率n3を有する下部クラッド層と、パッシブコア層を覆うと共にアクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上部クラッド層と、アクティブコア層を覆うと共に、上部クラッド層の屈折率n5と等しいかそれよりも低い屈折率n4を有する上部バッファ層と、下部クラッド層の下に形成された下部電極と、上部バッファ層の上に形成された上部電極と、を有し、アクティブコア層の入口部と出口部とはテーパ状とされ、上部クラッド層にテーパ醸造が形成され、アクティブコア層はテーパ構造の底部に形成され、上部バッファ層はテーパ構造の残余の部分を埋めるように形成されている光デバイスに関する。
【0007】
請求項3は、それ以外の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ光回路の屈折率n2よりも大きな屈折率n1を有するアクティブコア層と、その上にパッシブコア層が形成されるとともに、光回路の屈折率n2よりも小さな屈折率n3を有する下部クラッド層と、パッシブコア層およびアクティブコア層を覆うと共に、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上側コア層と、下側コア層の下に形成された下部電極と、上部クラッド層の上に形成された上部電極と、を備え、光回路におけるアクティブコア層の入口部と出口部とに隣接する部分がテーパ状とされている光デバイスに関する。
【0008】
請求項4は、請求項1〜3の何れか1項の光デバイスにおいて、光回路がマッハ−ツェンダ型光回路であるものに関する。
【0009】
請求項5は、請求項1〜3の何れか1項の光デバイスにおいて、光回路が多モード導波路と、多モード導波路の入口部に接続された入射単一モード導波路と、多モード導波路の出口部に接続された出射単一モード導波路と、を有するものに関する。
【0010】
画像形成装置の感光性ドラムを走査するためのマルチビームスキャナであって、光を出射する光源と、光源から出射された光を複数の光束に分岐させる光出力スプリッタ(optical power splitter)と、光出力スプリッタで分岐された夫々の光束を変調するための請求項1〜5の何れか1項に記載の光デバイスと、を備えるマルチビームスキャナに関する。
【発明の効果】
【0011】
請求項1〜3の発明によれば、従来の光デバイスと比較してコアと入射及び出射導波路との間のカップリング損失および伝達損失の低い光デバイスが提供される。
【0012】
請求項4の発明によれば、従来のマッハ−ツェンダ型光回路を有する光デバイスと比較してコアと入射及び出射導波路との間のカップリング損失および伝達損失の低い光デバイスが提供される。
【0013】
請求項5の発明によれば、マッハ−ツェンダ型導波路を有する光デバイスと比較してより単純であり、且つ丈夫な(robust)光回路を有する光デバイスが提供される。
【0014】
請求項6の発明によれば、軸線の回りに回転するポリゴンミラーを有する従来のマルチビームスキャナと比較して感光性ドラムをより高速で走査できるマルチビームスキャナが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、実施形態1の光デバイスの平面図およびA−A’方向に切断した断面図である。
【図2】図2は、実施形態1の光デバイスを図1におけるB−B’方向に切断した断面図である。
【図3】図3は、実施形態1の光デバイスの作用を示す概略図である。
【図4】図4は、実施形態2の光デバイスの平面図およびA−A’方向に切断した断面図である。
【図5】図5は、実施形態2の光デバイスを図4におけるB−B’方向に切断した断面図である。
【図6】図6は、実施形態2の光デバイスの作用を示す概略図である。
【図7】図7は、実施形態3の光デバイスの平面図およびA−A’方向に切断した断面図である。
【図8】図8は、実施形態3の光デバイスを図7におけるB−B’方向に切断した断面図である。
【図9】図9は、実施形態3の光デバイスの作用を示す概略図である。
【図10】図10は、実施形態4の光デバイスの平面図およびA−A’方向に切断した断面図である。
【図11】図11は、実施形態4の光デバイスを図10におけるB−B’方向に切断した断面図である。
【図12】図12は、実施形態4の光デバイスの作用を示す概略図である。
【図13】図13は、実施形態5の光デバイスの平面図およびA−A’方向に切断した断面図である。
【図14】図14は、実施形態6のマルチビームスキャナの構成を示す概略図である。
【図15】図15は、実施形態6のマルチビームスキャナにおける電気光学的走査ユニットの構成の一例を示す概略図である。
【図16】図16は、実施形態6のマルチビームスキャナにおける電気光学的走査ユニットの構成の他の例を示す概略図である。
【図17】図17は、実施形態1の光デバイスを製造するためのプロセスの最初の部分を示すプロセス図である。
【図18】図18は、実施形態1の光デバイスを製造するためのプロセスの中間の部分を示すプロセス図である。
【図19】図19は、実施形態1の光デバイスを製造するためのプロセスの終わりの部分を示すプロセス図である。
【図20】図20は、実施形態2の光デバイスを製造するためのプロセスの最初の部分を示すプロセス図である。
【図21】図21は、実施形態2の光デバイスを製造するためのプロセスの中間の部分を示すプロセス図である。
【図22】図22は、実施形態2の光デバイスを製造するためのプロセスの最後の部分を示すプロセス図である。
【図23】図23は、実施形態3の光デバイスを製造するためのプロセスの最初の部分を示すプロセス図である。
【図24】図24は、実施形態3の光デバイスを製造するためのプロセスの中間の部分を示すプロセス図である。
【図25】図25は、実施形態3の光デバイスを製造するためのプロセスの最後の部分を示すプロセス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.実施形態1
本発明の第1の実施形態である光デバイスについて以下に説明する。
【0017】
図1において、(A)は、実施形態1の光デバイス100の平面図であり、(B)は(A)におけるA−A’の方向に沿って切断した断面図である。
【0018】
図1及び図2に示すように、光デバイス100は、パッシブコア層2と、パッシブコア層2の上に形成されたアクティブコア層1と、を含んで構成されている。
【0019】
マッハ−ツェンダ型光回路のような光回路2Aがパッシブコア層2に形成されている。光回路2Aは、パッシブコア層2の残余の部分の屈折率よりも高い屈折率n2を有している。
【0020】
アクティブコア層1は、パッシブコア層2の一部を覆うように光デバイス100の全幅に亘って形成されている。アクティブコア層1は、光回路2Aの屈折率n2よりも高い屈折率n1を有し、電気光学的特性、即ち光デバイス100に印加される電界の強度に応じて屈折率n1が変化する特性を有している。
【0021】
パッシブコア層2は、屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層3の上に形成されている。
【0022】
アクティブコア層1の屈折率n1よりも低い屈折率n4を有する上部バッファ層4によってアクティブコア層1は覆われている。
【0023】
パッシブコア層2におけるその上にアクティブコア層1が形成された部分以外の部分は、屈折率n1よりは低いが屈折率n4と等しいかそれよりも大きな屈折率n5を有する上部クラッド層5によって覆われている。
【0024】
上部バッファ層4の上には、光回路2Aにおける一および他の分岐部の上に位置するように上部電極6が1対形成されている。
【0025】
下部クラッド層3は、Siからなる基板8の上に形成されている。下部クラッド層3と基板8との間には、下部バッファ層9が位置している。下部クラッド層3と下部バッファ層9との間に下部電極7が配設されている。
【0026】
図1の(B)に示すように、上部クラッド層5にテーパ構造5Aが形成され、テーパ構造5Aの底部にアクティブコア層1が形成されている。したがって、アクティブコア層1の縁部、言い換えれば入口部1Aと出口部1Bとは夫々テーパ状とされている。
【0027】
テーパ構造5Aは、アクティブコア層1の上において上部バッファ層4で充填されている。
【0028】
図1の(B)に示すように、アクティブコア層1の両方の楔状部の楔角θは、0.1〜1度の範囲が好ましく、特に0.1〜0.2度の範囲が好ましい。アクティブコア層1の楔角θを上記の範囲に設定することにより、パッシブコア層2における光回路2Aを伝搬された光信号がスムースにアクティブコア層1に導入され、アクティブコア層1を伝搬されたあと、スムースに光回路2Aに戻る。したがって、光回路2Aとアクティブコア層1との間のカップリング損失および伝達損失を従来の光デバイスと比較して大幅に低減することができる。
【0029】
アクティブコア層1の厚さは典型的には0.1〜1μmであり、好ましくは0.3〜0.8μmであり、更に好ましくは0.5〜0.7μmである。
パッシブコア層2の厚さは典型的には2〜10μmであり、好ましくは2〜7μmであり、更に好ましくは3〜4μmである。
【0030】
下部クラッド層3および上部クラッド層5の厚さは、典型的には1〜20μであり、好ましくは5〜15μmであり、より好ましくは3〜10μmである。
上部バッファ層4の厚さは、典型的には1〜20μmであり、好ましくは5〜15μmであり、特に好ましくは3〜10μmである。上部バッファ層4の厚さは上部クラッド層5の厚さ以下とすることができる。
【0031】
アクティブコア層1は、電気光学的効果を有する低分子化合物が分散された結合ポリマ(binding polymer)、および電気光学的効果を有するポリマで形成することができる。
【0032】
結合ポリマの例としては以下のポリマが挙げられる:
ポリ(メタ)アクリレート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリアミド樹脂。
【0033】
これらのポリマのうち、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、およびポリスルホン樹脂が、特定の溶媒にはよく溶解するものの、通常の溶媒への抵抗性に優れている故に好ましい。
【0034】
結合ポリマに配合し得る低分子化合物には、Disperse Red 1 (DR1)、2−メチル−6−(4−N,N’−ジメチルアミノベンジリデン)−4H−ピラン−4−イリデンプロパニル、および4−{[4−(ジメチルアミノ)フェニル]イミノ}−2,5−シクロヘキサジエン−1−オンのようなアゾ色素が包含される。
【0035】
電気光学的効果を有するポリマには、ポリ[(メチルメタクリレート)−Co−(DR1アクリレート)](アルドリッチ社製)が包含される。
【0036】
アクティブコア層1は、上記の群から選択された材料の溶液をパッシブコア層2に所定の厚さに塗布し、溶液を硬化させるかまたは乾燥させるかすることにより形成することができる。溶液の塗布には、スピンコーティング法、ディップコーティング法、スプレーコーティング法、印刷コーティング法のような方法を用いることができる。必要であれば、溶液を塗布するのに先立ってパッシブコア層2に保護コーティングを形成することができる。
【0037】
パッシブコア層2は、光反応性、換言すれば露光によって屈折率が変化する性質を有する試剤が配合された結合樹脂で形成することができる。
【0038】
パッシブコア層2を形成するのに使用される結合樹脂は、[0031]〜[0033]欄で述べたのと同一のポリマー群から選択できる。
【0039】
試剤は、単一化合物および複数の化合物の組合せを包含する。試剤として使用される単一化合物には、DNQ(ジアゾナフトキノン)が包含される。複数の化合物の組合せには、アクリルエステルとα−ヒドロキシケトン誘導体との組合せ、およびエポキシド化合物と芳香族スルホニウム塩との組合せが包含される。
【0040】
パッシブコア層2は、試剤を配合した結合樹脂の溶液、または試剤を配合した結合樹脂を溶融させたものを、アクティブコア層1を形成するのに使用されたのと同様のプロセスによって下部クラッド層3することによって形成することができる。
【0041】
次いで、パッシブコア層2を、所定のパターンで露光して光回路2Aを形成する。
【0042】
下部クラッド層3、上部クラッド層5、および上部バッファ層4を形成するのに使用される材料には、ポリイミド樹脂、弗素含有ポリイミド樹脂、光硬化型ポリアクリレート樹脂、およびエポキシ樹脂が含まれる。
【0043】
光デバイス100は、図17〜図19に示すプロセスによって形成できる。
【0044】
最初に、基板8上に下部バッファ層9を形成し(図17の(A))、下部バッファ層9の上に下部電極7を形成する(図17の(B))。そして、下部クラッド層3によって下部バッファ層9および下部電極7を覆い(図17の(C))、下部クラッド層3の上にパッシブコア層2を形成する(図17の(D))。
【0045】
そして、パッシブコア層2を所定のパターンで露光して光回路2Aを形成する(図18の(A))。パッシブコア層2に光回路2Aを形成した後、パッシブコア層2と光回路2Aとの上に上部クラッド層5を形成する(図18の(B))。そして、上部コア層5をエッチングしてテーパ構造5Aを形成する(図18の(C))。
【0046】
アクティブコア層1をテーパ構造5Aの底部に形成し(図19の(A))、テーパ構造5Aの残余の部分を上部バッファ層4で埋める(図19の(B))。上部バッファ層4の上に上部電極6を形成する(図19の(C))。
【0047】
次いで、得られた多層構造体を加熱してアクティブコア層1を溶融させるか軟化させ、上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加する。上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加しながら多層構造体を室温まで冷却してアクティブコア層1を分極化する。
【0048】
光デバイス100の作用について以下に説明する。
【0049】
図3に示すように、光回路2Aは、パッシブコア層2の光回路2Aの外側の部分の屈折率、下部クラッド層3の屈折率n3、および上部クラッド層5の屈折率n5よりも高い屈折率n2を有しているので、光回路2Aに導入された光信号は光回路2A内を伝搬される。
【0050】
アクティブコア層1の屈折質n1は、光回路2Aの屈折率n2よりも高いので、アクティブコア層1の入口部1Aにおいて、光信号は、光回路2Aと比較してアクティブコア層1内をより遅く伝搬されるため、光信号の経路は上方に屈曲され、光信号はアクティブコア層1に導入される。
【0051】
更に、上部バッファ層4の屈折率n4は屈折率n1よりも低いので、光信号は、アクティブコア層1よりも上部バッファ層4において早く伝搬される。したがって、アクティブコア層1に向かって一度上方に屈曲した光信号経路は、下方に向かって屈曲し、光信号はアクティブコア層1に導入される。
【0052】
アクティブコア層1の出口部1Bにおいては、光信号は、アクティブコア層1よりも光回路2Aの中において早く伝搬されるので、光信号は再び光回路2Aに導入されて伝搬される。
【0053】
アクティブコア層1は電気光学効果を有するので、上部電極6と下部電極7とに直流を印加すると、屈折率n1は電圧に応じて変化する故に、アクティブコア層1を伝搬される光信号の位相もまた変化する。したがって、種々の電圧の直流を上部電極6のうちの1つに印加すると、光デバイス100から導出される光信号の強度が入力された光信号の強度の0%〜100%の範囲で変化する。これにより、光デバイス100は、光スイッチまたは光変調器として使用できる。
【0054】
光デバイス100においては、光信号が伝搬される光回路2Aは、アクティブコア層1の屈折率n1よりも低い屈折率n2を有している。したがって、光デバイス100は、アクティブコア層1と光回路2Aとの間のカップリング損失および伝達損失が従来の光デバイスよりも低い。
【0055】
2.実施形態2
本願発明の第2の実施形態の光デバイスについて以下に記載する。
【0056】
図4において、(A)は、実施形態2の光デバイス102の平面図であり、(B)は(A)におけるA−A’の方向に沿って切断した断面図である。図4〜図13において、図1〜図3と同一の符号は夫々同一の構成要素を示す。
【0057】
図4および図5に示すように、光デバイス102においては、アクティブコア層1は、パッシブコア層2および光回路2Aの上に直接形成され、アクティブコア層1の全面が上部クラッド層5で覆われているが、上部バッファ層4は形成されていない。
【0058】
図4の(B)に示すように、アクティブコア層1の入口部1Aおよび出口部1Bは、夫々テーパ状とされている。
【0059】
光デバイス102の要素および構成は、上の点を除いては実施形態1の光デバイス100と同一である。
【0060】
光デバイス102は、図20〜図22に示すプロセスによって製造することができる。
【0061】
最初に、基板8上に下部バッファ層9を形成し(図20の(A))、下部バッファ層9の上に下部電極7を形成する(図20の(B))。そして、下部バッファ層9および下部電極7を、下部クラッド層3によって覆い(図20の(C))、下部クラッド層3の上にパッシブコア層2を形成する(図20の(D))。
【0062】
次いで、パッシブコア層2を、所定のパターンで露光して光回路2Aを形成する(図21の(A))。パッシブコア層2に光回路2Aを形成した後に、パッシブコア層2および光回路2Aの上にアクティブコア層1を形成する(図21の(C))。そして、アクティブコア層1の両端をテーパ状に加工して入口部1Aと出口部1Bと、を形成する(図21の(C))。
【0063】
次いで、パッシブコア層2およびアクティブコア層1を覆うように上部クラッド層5を形成し(図22の(A))、上部クラッド層5の上に上部電極6を形成する(図22の(B))。
【0064】
次いで、得られた多層構造体を加熱してアクティブコア層1を溶融させるか軟化させ、上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加する。上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加しながら多層構造体を室温まで冷却してアクティブコア層1を分極化する。
【0065】
光デバイス102の作用について以下に説明する。
【0066】
図6に示すように、光回路2Aは、パッシブコア層2の光回路2Aの外側の部分の屈折率、下部クラッド層3の屈折率n3、および上部クラッド層5の屈折率n5よりも高い屈折率n2を有しているので、光回路2Aに導入された光信号は光回路2A内を伝搬される。
【0067】
アクティブコア層1の屈折質n1は、光回路2Aの屈折率n2および上部クラッド層5の屈折率n5よりも高いので、アクティブコア層1の入口部1Aにおいて、光信号は、光回路2Aおよび上部クラッド層5と比較してアクティブコア層1内をより遅く伝搬されるため、光信号の経路はアクティブコア層1に向かって屈曲され、光信号はアクティブコア層1に導入される。
【0068】
アクティブコア層1の出口部1Bにおいては、光信号は、アクティブコア層1よりも光回路2Aの中において早く伝搬されるので、光信号の経路は光回路2Aに向かって屈曲し、光信号は再び光回路2Aに導入されて伝搬される。
【0069】
種々の電圧の直流を上部電極6のうちの1つに印加すると、光デバイス102は実施形態1の光デバイス100と同様の作用をする故に、光デバイス102は、光スイッチまたは光変調器として使用できる。
【0070】
3.実施形態3
本願発明の第3の実施形態の光デバイスについて以下に記載する。
【0071】
図7において、(A)は、実施形態3の光デバイス104の平面図であり、(B)は(A)におけるA−A’の方向に沿って切断した断面図である。
【0072】
図7および図8に示すように、光デバイス104においては、アクティブコア層1は、パッシブコア層2と同一の層に形成され、光回路2Aの一部を構成している。アクティブコア層1は上部クラッド層5で覆われている。
【0073】
図7の(B)に示すように、パッシブコア層2におけるアクティブコア層1の入口部1Aおよび出口部1Bに隣接する部分はテーパ状とされ、テーパ部20Aおよび20Bを形成する。
【0074】
光デバイス104の要素および構成は、上の点を除いては実施形態1の光デバイス100と同一である。
【0075】
光デバイス104は、図23〜図25に示すプロセスによって製造することができる。
【0076】
最初に、基板8上に下部バッファ層9を形成し(図23の(A))、下部バッファ層9の上に下部電極7を形成する(図23の(B))。そして、下部バッファ層9および下部電極7を、下部クラッド層3によって覆い(図23の(C))、下部クラッド層3の上にアクティブコア層1を形成する(図23の(D))。
【0077】
次いで、アクティブコア層1をエッチングし(図24の(A))、アクティブコア層1の上にパッシブコア層2を形成する(図24の(B))。パッシブコア層2を、所定のパターンで露光して光回路2Aを形成する(図24の(C))。
【0078】
そして、パッシブコア層2と光回路2Aと、をエッチングしてアクティブコア層1を露出させる(図25の(A))。パッシブコア層2と光回路2Aと、をエッチングした後、パッシブコア層2、光回路2A、およびアクティブコア層1の上に上部クラッド層5を形成する(図25の(B))。次いで、上部クラッド層5の上に上部電極6を形成する(図25の(C))。
【0079】
次いで、得られた多層構造体を加熱してアクティブコア層1を溶融させるか軟化させ、上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加する。上部電極6と下部電極7との間に高電圧の直流を印加しながら多層構造体を室温まで冷却してアクティブコア層1を分極化する。
【0080】
光デバイス104の作用について以下に説明する。
【0081】
図9に示すように、光回路2Aは、パッシブコア層2の光回路2Aの外側の部分の屈折率、下部クラッド層3の屈折率n3、および上部クラッド層5の屈折率n5よりも高い屈折率n2を有しているので、光回路2Aに導入された光信号は光回路2A内を伝搬される。
【0082】
光回路2Aを伝搬されてきた光信号は、入口部1Aにおいてアクティブコア層1に導入され、アクティブコア層1内を伝搬される。
【0083】
アクティブコア層1の出口部1Bにおいて、光信号1は光回路2Aに導入され、光回路2A内を伝搬される。
【0084】
直流を上部電極6のうちの1つに印加すると、光デバイス104は実施形態1の光デバイス100と同様の作用をする故に、光デバイス102は、光スイッチまたは光変調器として使用できる。
【0085】
4.実施形態4
本願発明の第4の実施形態の光デバイスについて以下に記載する。
【0086】
図10において、(A)は、実施形態4の光デバイス106の平面図であり、(B)は(A)におけるA−A’の方向に沿って切断した断面図である。
【0087】
図10および図11に示すように、光デバイス106においては、アクティブコア層1はパッシブコア層2と同一の層に形成され、光回路2Aの一部を形成している。アクティブコア層1は、光回路2Aによって覆われている。
【0088】
光デバイス106の要素および構成は、上の点を除いては実施形態3の光デバイス104と同一である。
【0089】
光デバイス106は、アクティブコア層1の上に光回路2Aが残存するように光回路2Aとパッシブコア層2と、をエッチングする以外は実施形態4のところで述べたのと同一のプロセスによって形成できる。
【0090】
光デバイス106の作用について以下に説明する。
【0091】
図12に示すように、光回路2Aは、パッシブコア層2の光回路2Aの外側の部分の屈折率、下部クラッド層3の屈折率n3、および上部クラッド層5の屈折率n5よりも高い屈折率n2を有しているので、光回路2Aに導入された光信号は光回路2A内を伝搬される。
【0092】
アクティブコア層1の屈折率n1は、光回路2Aの屈折率よりも高いので、アクティブコア層1の入口部1Aにおいては、光信号の伝搬経路はアクティブコア層1に向かって屈曲する故に、光信号はアクティブコア層1に導入され、アクティブコア層1内を伝搬される。
【0093】
アクティブコア層1の出口部1Bにおいて、光信号は再び光回路2Aに導入され、光回路2A内を伝搬される。
【0094】
直流を上部電極6と下部電極7との間に印加すると、光デバイス106は実施形態1の光デバイス100と同様に作用するから、光デバイス106は、光スイッチまたは光変調器として使用できる。
【0095】
5.実施形態5
本願発明の第5の実施形態の光デバイスについて以下に記載する。
【0096】
図13において、(A)は、実施形態5の光デバイス108の平面図であり、(B)は(A)におけるA−A’の方向に沿って切断した断面図である。
【0097】
図13に示すように、光デバイス108においては、光回路2Aは、多モード導波路24、多モード導波路24の入口部に接続された入射側単一モード導波路22、および多モード導波路24の出口部に接続された出射側単一モード導波路26から構成される。上部電極6は、多モード導波路24の上に形成されている。多モード導波路24の巾Wは、典型的には単一モード導波路22および26の巾wの5倍以上であり、好ましくは10〜100倍であり、更に好ましくは10〜50倍である。単一モード導波路22および26は同一の巾に形成することができる。
【0098】
光デバイス108の要素および構成は、上の点を除いては実施形態1の光デバイス100と同一であり、実施形態1の光デバイス100と同一のプロセスによって製造できる。
【0099】
光デバイス108の作用について以下に説明する。
【0100】
入射側単一モード導波路22に導入された光信号は、単一モードで伝搬される。多モード導波路24の入口部において、光信号は多モードに分散されて多モード導波路24に導入される。そして、アクティブコア層1の入口部1Aにおいて、多モードである光信号はアクティブコア層1に導入され、その中を伝搬される。アクティブコア層1の出口部1Bにおいて、多モードの光信号は多モード導波路24に戻る。多モード導波路24の出口部において、多モードの光信号は単一モードの光信号に纏められ、出射側単一モード導波路26の内部を伝搬される。
【0101】
したがって、入射側端居るモード導波路22と多モード導波路24との結合部、および多モード導波路24と単一モード導波路26との結合部において、光信号が干渉して図13に示すように多モード導波路24における夫々の結合部において輝点が生じる。
【0102】
上部電極6に直流を印加すると、直流電圧に応じてアクティブコア層1の屈折率n1が変化するから、アクティブコア層1内を伝搬される光信号の位相も変化する。したがって、多モード導波路24の出口における輝点は別の位置に移動し、出射側単一モード導波路26から出力される光信号の強度も変化する。これにより、実施形態5の光デバイス108によって光変調を行うことができる。
【0103】
6.実施形態6
本願発明の第6の実施形態のマルチビームスキャナについて以下に記載する。
【0104】
図14に示すように、マルチビームスキャナ200は、複写機やレーザプリンタのような電子光学的画像形成装置において、感光ドラム300を走査するためのスキャナであって、複数の電子光学的シャッタユニット210と、をよびコンピュータ(図示せず。)によって入力された画像データに従って夫々の電子光学的シャッタユニット210を駆動する駆動回路220と、を含んで構成される。
【0105】
図15に示すように、各電子光学的シャッタユニット210は、本願発明の光源に対応するレーザダイオード212と、レーザダイオード212から出射された光を分割する2つの光出力スプリッタ214と、レーザダイオード212と光出力スプリッタ214と、を結合する光コネクタ216と、各光出力スプリッタ214に接続され、駆動回路220によって駆動される一群の光デバイス108と、光デバイス108から出射される光を集束させるマイクロレンズ218と、を備える。駆動回路220は、各光デバイス108の上部電極6に接続されている。電子光学的シャッタユニット210は、また、レーザダイオード212をモニタするための光ダイオード211と、フォトダイオード211で検出された光強度に基いてレーザダイオード212から出射される光の強度をフィードバック制御する出力調整回路213と、を含んで構成されている。
【0106】
一方、図16に示すように、電子光学的シャッタユニット210は、複数の光回路2Aと、各光回路2Aの多モード導波路24上に配設された複数の上部電極6と、を備えた1つの光デバイス108のみを含んで構成されていてもよい。図16の電子光学的シャッタユニット210においては、光出力スプリッタ214は、単一モード導波路215によって直接にレーザダイオード212に接続されている。
【0107】
出力調整回路213は、レーザダイオード212に電力を供給する電力供給回路213Cと、電力供給回路213Cを制御する出力調節回路213Bと、レーザダイオード212から一定の出力の光が出射されるように光ダイオード211によって検出された光強度に基いて出力調節回路213Bのフィードバック制御を行う出力フィードバック回路213Aと、を含んで構成されている。
【0108】
光回路2Aは、入射側単一モード導波路22と、多モード導波路24と、出射側単一モード導波路26と、を備える。
【0109】
光デバイス108においては、各上部電極6は駆動回路220に接続され、下部電極7は接地されている。
【0110】
レーザダイオード212からの光は光出力スプリッタ214によって複数の光束に分けられ、各光デバイス108の光回路2Aの一端に導入される。駆動乖離220から上部電極6に印加される電圧に従って光回路2Aから出射される光は明滅する。光回路2Aから出射された光はマイクロレンズ218によって感光ドラム300上に集束される。これにより、マルチビームスキャナ200は、感光ドラム300を電子光学的に走査する電子光学的シャッタとして機能する。
【0111】
レーザプリンタや複写機で使用されていた従来のラスタ出力スキャナ(ROS)においては、軸線の周りに回転するポリゴンミラーがレーザビームを走査するために配設されている。したがって、レーザプリンタや複写機の解像度と画像形成速度とは、ポリゴンミラーとポリゴンミラーを回転させる回転部との機械的限界、およびポリゴンミラーを高い回転速度で回転させたときに生じる振動によって制限される。これが、通常、高速で機械的走査を行うときの画像品質故障の原因となる。
【0112】
他方、実施形態6のマルチビームスキャナ200においては、複数の光デバイス108を交互に明滅させて感光ドラム300を走査している。したがって、マルチビームスキャナ200を有するレーザプリンタや複写機においては、解像度や画像形成速度には、機械的制限や振動による制限はない。
【符号の説明】
【0113】
1 アクティブコア層
2 パッシブコア層
2A 光回路
3 下部クラッド層
4 上部バッファ層
5 上部クラッド層
6 上部電極
7 下部電極
8 基板
9 下部バッファ層
100 光デバイス
102 光デバイス
104 光デバイス
106 光デバイス
108 光デバイス
200 マルチビームスキャナ
210 電子光学的シャッタユニット
220 駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
残余の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、
光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ、光回路の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有するアクティブコア層と、
パッシブコア層がその上に形成されているとともに、光回路の屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層と、
アクティブコア層およびパッシブコア層を覆うとともに、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上部クラッド層と、
下部クラッド層の下に形成された下部電極と、
上部クラッド層の上に形成された上部電極と、
を備え、アクティブコア層の入口部と出口部とは夫々テーパ状とされている光デバイス。
【請求項2】
残余の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、
光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ、光回路の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有するアクティブコア層と、
パッシブコア層がその上に形成されているとともに、光回路の屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層と、
パッシブコア層を覆うとともに、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上部クラッド層と、
アクティブコア層を覆うとともに、アクティブコア層1の屈折率n1よりも低いが上部クラッド層の屈折率n5を同一がそれよりも低い屈折率n4を有する上部バッファ層と、
下部クラッド層の下に形成された下部電極と、
上部バッファ層の上に形成された上部電極と、
を備え、アクティブコア層の入口部と出口部とは夫々テーパ状とされ、上部クラッド層にテーパ構造が形成され、アクティブコア層はテーパ構造の底部に形成され、上部バッファ層はテーパ構造の残余の部分を埋めるように配設されている光デバイス。
【請求項3】
残余の部分よりも高い屈折率n2を有する光回路が形成されたパッシブコア層と、
光回路の少なくとも一部を覆うと共に、電気光学的効果を示し、且つ、光回路の屈折率n2よりも高い屈折率n1を有するアクティブコア層と、
パッシブコア層がその上に形成されているとともに、光回路の屈折率n2よりも低い屈折率n3を有する下部クラッド層と、
アクティブコア層およびパッシブコア層を覆うとともに、アクティブコア層の屈折率n1よりも低い屈折率n5を有する上部クラッド層と、
下部クラッド層の下に形成された下部電極と、
上部クラッド層の上に形成された上部電極と、
を備え、光回路におけるアクティブコア層の入口部と出口部とに隣接する部分は夫々テーパ状とされている光デバイス。
【請求項4】
光回路はマッハ−ツェンダー型光変調回路である請求項1〜3の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項5】
光回路が、多モード導波路と、多モード導波路の入口部に接続されている入射側単一モード導波路と、多モード導波路の出口部に接続されている出射側単一モード導波路と、を備える請求項1〜3の何れか1項に記載の光デバイス。
【請求項6】
画像形成装置の感光ドラムを走査するためのマルチビームスキャナであって、
光を出射する光源と、
光源から出射された光を複数の光束に分離する光出力スプリッタと、
光出力スプリッタで分離された夫々の光束を変調するための請求項1〜5の何れか1項に記載の光デバイスと、
を備えるマルチビームスキャナ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−256411(P2010−256411A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102996(P2009−102996)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】