説明

光デバイス及び光変調器

【課題】複数の共振波長を有する光デバイスを提供する。
【解決手段】本明細書に開示する光デバイス10は、光を伝搬するコア層12を有し、コア層12を伝搬する光を共振させる共振部14と、コア層12に沿って幅が変化しながら延びる共振波長変調層16と、を備える。共振部14は、コア層12における長手方向の両側部に設けられた回折格子13か、又は、コア層12を伝搬する光と結合可能に配置された複数のリング型光導波路17を有する。共振波長変調層16は、コア層12の光の伝搬方向における共振波長を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光デバイス及び光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光の振幅または位相を変化させる又は光を蓄積・遅延させるために光共振器が用いられている。
【0003】
このような光共振器は、所定の共振波長を有しており、この共振波長と一致する波長を有する光を共振させる。
【0004】
一方、光共振器の周囲の温度が変化すると、光共振器に入力される入力光の波長がずれる場合がある。このように、入力光の波長が変化して、光共振器の共振波長と一致しなくなると、光共振器は入力光を十分に共振させることができなくなるおそれがある。従って、光共振器には、その共振周波数に対して所定の幅を有することが求められる。
【0005】
また、一つの光共振器を用いて、異なる波長を有する入力光を共振させたい場合がある。このような場合には、光共振器は、入力光が有する波長それぞれに対応する共振周波数を有することが求められる。
【0006】
そして、上述したように、異なる波長を有する入力光それぞれを共振させるための光共振器が提案されている。
【0007】
図1(A)は、従来の例による光共振器を示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)のX1−X1線断面図である。
【0008】
図1(A)及び(B)に示す光共振器110は、光を伝搬するコア層112と、コア層112における長手方向の両側部に設けられた回折格子113とを有する共振部114と、共振部114の周囲を囲むクラッド層115とを備える。また、光共振器110は、共振部114及びクラッド層115が積層される基板111を備える。
【0009】
回折格子113は、入力側の端部から出力側の端部に向かって格子間隔が増加しており、格子間隔の周期に対応して異なる波長を有する入力光それぞれを共振できるようになっている。
【0010】
例えば、光共振器110に入力した波長λ1を有する入力光Piは、コア層112を伝搬しながら、波長λ1と共振する格子間隔を有する回折格子の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0011】
同様に、波長λ1とは異なる波長λ2を有する入力光Piは、コア層112を伝搬しながら、波長λ2と共振する格子間隔を有する回折格子の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0012】
図2(A)は、従来の他の例による光共振器を示す平面図であり、図2(B)は、図2(A)のX2−X2線断面図である。
【0013】
図2(A)及び(B)に示す光共振器110は、光を伝搬するコア層112と、コア層112に沿って、コア層112を伝搬する光と結合可能に配置された複数のリング型光導波路117とを有する共振部114を備える。また、光共振器110は、共振部114の周囲を囲むクラッド層115と、共振部114及びクラッド層115が積層される基板111とを備える。
【0014】
複数のリング型光導波路117は、入力側の端部から出力側の端部に向かってリングの直径が増加しており、リングの周長に対応して異なる波長を有する光それぞれを共振できるようになっている。
【0015】
例えば、光共振器110に入力した波長λ1を有する入力光Piは、コア層112を伝搬しながら、波長λ1と共振する直径を有するリング型光導波路の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0016】
同様に、波長λ1とは異なる波長λ2を有する入力光Piは、コア層112を伝搬しながら、波長λ1と共振する直径を有するリング型光導波路の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】特開2002−14307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
ところで、上述した光共振器では、例えば、共振波長が1nmだけ異なる光を共振させる場合には、格子間隔又はリング型光導波路の径の変化をサブナノメートルのオーダで形成することが求められる。
【0019】
一方、フォトリソグラフィ又は電子ビーム描画を用いて、サブナノメートルのオーダで変化する構造を加工することは困難であるので、上述したような複数の共振波長を有する光共振器を形成することは難しい。従って、品質の安定した光デバイスを製造できないおそれがある。
【0020】
本明細書では、上述した問題点を解決し得る光デバイス及び光変調器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本明細書に開示する光デバイスの一形態によれば、光を伝搬するコア層を有し、上記コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、上記コア層に沿って幅が変化しながら延びる共振波長変調層と、を備える。
【0022】
また、本明細書に開示する光デバイスの一形態によれば、コア層と、上記コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、複数の上記リング型光導波路の上に配置された共振波長変調層と、複数の上記リング型光導波路と上記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、を備え、隣り合う上記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する上記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている。
【0023】
また、本明細書に開示する光変調器の一形態によれば、光を伝搬するコア層を有する第1光導波路と、光を伝搬するコア層を有する第2光導波路と、を備え、上記第1光導波路又は上記第2光導波路は、コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、コア層に沿って幅が変化しながら延びており、光が伝搬する方向における上記共振部の共振波長を変化させる共振波長変調層と、を有する。
【0024】
更に、本明細書に開示する光変調器の一形態によれば、光が伝搬するコア層を有する第1光導波路と、光が伝搬するコア層を有する第2光導波路と、を備え、上記第1光導波路又は上記第2光導波路は、コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、複数の上記リング型導波路の上に配置された共振波長変調層と、複数の上記リング型光導波路と上記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、を有し、隣り合う上記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する上記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている。
【発明の効果】
【0025】
上述した本明細書に開示する光デバイスの一形態によれば、複数の共振波長を有する。
【0026】
また、本明細書に開示する光変調器の一形態によれば、共振部が複数の共振波長を有する。
【0027】
本発明の目的及び効果は、特に請求項において指摘される構成要素及び組み合わせを用いることによって認識され且つ得られるだろう。
【0028】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明の両方は、例示的及び説明的なものであり、特許請求の範囲に記載されている本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】(A)は、従来の例による光共振器を示す平面図であり、(B)は、(A)のX1−X1線断面図である。
【図2】(A)は、従来の他の例による光共振器を示す平面図であり、(B)は、(A)のX2−X2線断面図である。
【図3】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの第1実施形態を示す平面図であり、(B)は、(A)のX3−X3線断面図である。
【図4】(A)は、共振部における等価位相屈折率と光の伝搬方向の位置との関係を示す図であり、(B)は、共振部における共振波長と光の伝搬方向の位置との関係を示す図である。
【図5】光デバイスのコア層を伝搬する光の導波モードの光の伝搬方向に対して垂直な方向における電界強度分布図である。
【図6】(A)は、第1実施形態の光デバイスの変形例1を示す図であり、(B)は、第1実施形態の光デバイスの変形例2を示す図であり、(C)は、第1実施形態の光デバイスの変形例3を示す図である。
【図7】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの第2実施形態を示す平面図であり、(B)は、(A)のX4−X4線断面図である。
【図8】第2実施形態の光デバイスの変形例を示す図である。
【図9】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第1実施形態を示す図(その1)であり、(B)は、(A)のX5−X5線断面図である。
【図10】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第1実施形態を示す図(その2)であり、(B)は、(A)のX6−X6線断面図である。
【図11】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第1実施形態を示す図(その3)であり、(B)は、(A)のX7−X7線断面図である。
【図12】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第1実施形態を示す図(その4)であり、(B)は、(A)のX8−X8線断面図である。
【図13】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第2実施形態を示す図(その1)であり、(B)は、(A)のX9−X9線断面図である。
【図14】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第2実施形態を示す図(その2)であり、(B)は、(A)のX10−X10線断面図である。
【図15】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第2実施形態を示す図(その3)であり、(B)は、(A)のX11−X11線断面図である。
【図16】(A)は、本明細書に開示する光デバイスの製造方法の第2実施形態を示す図(その4)であり、(B)は、(A)のX12−X12線断面図である。
【図17】(A)は、本明細書に開示する光変調器の第1実施形態を示す図であり、(B)は、本明細書に開示する光変調器の第2実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本明細書で開示する光デバイスの好ましい第1実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
【0031】
図3(A)は、本明細書に開示する光デバイスの第1実施形態を示す平面図であり、図3(B)は、図3(A)のX3−X3線断面図である。
【0032】
本実施形態の光デバイス10は、入力した入力光Piを伝搬する縦長のコア層12を有し、コア層12を伝搬する光を共振させる共振部14と、共振部14の周りを囲むクラッド層15と、コア層12の長手方向に沿って幅が変化しながら延びる共振波長変調層16とを備える。また、光デバイス10は、共振部14及びクラッド層15が積層される基板11を備える。コア層12の長手方向は、光デバイス10を光が伝搬する方向と一致する。
【0033】
光デバイス10では、光が伝搬する方向における共振部14の共振波長が変化するので、所定の帯域内の波長を有する入力光Piを共振させることができる。即ち、光デバイス10は、異なる波長を有する入力光λ1,λ2それぞれを共振させることができる。
【0034】
例えば、光デバイス10は、入力光Piを共振させることにより、光を蓄積して、光の伝達を遅延させる光遅延器として使用することができる。また、光デバイス10は、入力光Piを共振させることにより、光の遅延時間を変化させる分散補償器として使用することができる。
【0035】
共振部14は、コア層12と同様に縦長の形状を有している。また、共振部14は、コア層12における長手方向の両側部に設けられた回折格子13を有する。コア層12と回折格子13とは一体に形成されている。コア層12は、光デバイス10の長手方向の両端部に亘って延びており、入力側の端部から入力した入力光Piを伝搬し、共振した光を出力側の端部から出力光Poとして出力する。
【0036】
回折格子13は、同じ格子間隔で、即ち同じ周期で、コア層12の長手方向の両側部に対向するように配置されており、格子間隔の周期に対応する波長を有する光を共振させる。
【0037】
光デバイス10の回折格子13は、同じ格子間隔で形成されるので、従来のフォトリソグラフィ又は電子ビーム描画等の半導体製造技術を用いて形成することができる。
【0038】
クラッド層15は、コア層12を伝搬する光を、コア層12の内部に閉じ込める働きを有する。この観点から、クラッド層15の位相屈折率は、コア層12の位相屈折率よりも小さいことが好ましい。
【0039】
位相屈折率は、光の位相速度に影響を与える屈折率であり、真空中の光速を物質中の光速(位相速度)で割った値となる。
【0040】
図3(A)に示すように、共振波長変調層16は、共振部14の長手方向(図3(A)中のX方向)において回折格子13が設けられた領域に配置されており、縦長の形状を有している。また、図3(B)に示すように、共振波長変調層16は、共振部15の上にクラッド層15を介して配置される。
【0041】
共振波長変調層16の幅Wは、光が伝搬する方向に向かって線形に変化している。具体的には、共振波長変調層16の幅Wは、光の伝搬方向Xの増加と共に線形に増加している。共振波長変調層16の幅方向の中心は、コア層12の幅方向の中心と一致させて、クラッド層15の上に配置されることが好ましい。共振波長変調層16は、幅方向の中心線に対して対称な形状を有していることが好ましい。光デバイス10では、共振波長変調層16は、2等辺三角形の形状を有しており、底辺の向きが、コア層12の長手方向Xに対して直交している。
【0042】
光デバイス10の共振波長変調層16は、従来のフォトリソグラフィ又は電子ビーム描画等の半導体製造技術を用いて形成することができる。
【0043】
ここで、共振部14の回折格子13が形成されている部分の共振波長は、下記の式(1)で表される。
【0044】
λm=2neΛ/m (1)
【0045】
ここで、neはコア層12の等価位相屈折率であり、Λは回折格子13の周期であり、mは回折格子の次数である。
【0046】
等価位相屈折率neは、コア層12の位相屈折率及びクラッド層の15の位相屈折率と共に、共振波長変調層16の位相屈折率の影響を受ける。そして、コア層12が共振波長変調層16に覆われている幅Wが、光の伝搬方向Xにおいて変化しているので、共振波長変調層16が配置される領域では、等価位相屈折率neは、光の伝搬方向Xにおいて変化する。
【0047】
図4(A)は、共振部における等価位相屈折率と光の伝搬方向の位置との関係を示す図である。図4(B)は、共振部における共振波長と光の伝搬方向の位置との関係を示す図である。
【0048】
共振部14における等価位相屈折率neは、共振波長変調層16の幅Wの増加と共に増加する。そして、共振部14における共振波長は、式(1)に示す関係から、等価位相屈折率neの増加と共に増加する。即ち、共振部14における共振波長は、コア層12に沿って増加する。
【0049】
このように、光デバイス10は、所定の幅の共振波長帯域を有しており、この帯域に含まれる波長を有する光を共振させることができる。
【0050】
例えば、光共振器10に入力した波長λ1を有する入力光Piは、コア層12を伝搬しながら、波長λ1と共振する共振波長を有する共振波長変調層16の幅の位置における回折格子の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0051】
同様に、波長λ1とは異なる波長λ2を有する入力光Piは、コア層12を伝搬しながら、波長λ2と共振する共振波長を有する共振波長変調層16の幅の位置における回折格子の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0052】
図5は、光デバイスのコア層を伝搬する光の導波モードの光の伝搬方向に対して垂直な方向における電界強度分布図である。
【0053】
コア層12を伝搬する光の導波モードの電界強度は、光の伝搬方向Xに対して垂直な方向Z(図3(B)参照)において、図5に示すような分布を有している。図5の横軸Zのゼロの位置は、コア層12の中心に対応する。
【0054】
導波モードの電界強度は、Z方向において、コア層12を超えて、クラッド層15及び共振波長変調層16にまで分布している。このように、導波モードの電界強度が、共振波長変調層16までに亘って分布しているので、等価位相屈折率neに対して、共振波長変調層16の位相屈折率の影響が及ぶことになる。
【0055】
共振波長変調層16とコア層15との間の距離が近いと、等価位相屈折率neに対する共振波長変調層16の位相屈折率の影響が大きくなる。そして、共振波長変調層16とコア層15との間の距離が近づく程、共振波長変調層16の幅Wの変化に対して、共振波長の変化幅が大きく変化する。このような場合に、精確な幅を有する共振波長帯域を得るためには、コア層の長手方向Xにおける共振波長変調層16の幅Wの変化率を小さくすることにより、共振波長の変化幅を小さくすることが求められる場合がある。ただし、共振波長変調層16の幅Wの変化率を小さくすることは、即ち共振波長変調層16の2つの斜辺の傾きを小さくすることは、共振波長変調層16を製造する上で、サブナノメートルのオーダで変化する構造を製造することが求められるおそれがある。
【0056】
従って、所定の幅の共振波長帯域を得るためには、共振波長変調層16とコア層15との間の距離は、共振波長変調層16の製造が可能な寸法を有する程度に、離すことが好ましい。
【0057】
このような観点から、共振波長変調層16は、コア層12を伝搬する光の導波モードの伝搬方向Xに対して垂直な方向Zにおける電界強度分布Cのテール部分(図5参照)に配置されることが好ましい。ここで、電界強度分布Cのテール部分は、コア層12を伝搬する光の導波モードの電界強度の伝搬方向Xに対して垂直な方向Zにおける距離に対する2次導関数の符号が変化する位置Pに対して、コア層12とは反対側に位置する部分Wである。位置Pは、電界強度の変曲点である。更に説明すると、電界強度分布Cは、コア層12を中心に基板11側及び共振波長変調層16側に亘っているので、部分Wは、位置Pに対して、基板11とは反対側の領域にある。
【0058】
一方、共振波長変調層16とコア層15との間の距離が離れていると、等価位相屈折率neに対する共振波長変調層16の位相屈折率の影響が小さくなる。そして、共振波長変調層16とコア層15との間の距離が離れる程、共振波長変調層16の幅Wの変化に対して、共振波長の変化幅が減少してくる。従って、共振波長変調層16とコア層15との間の距離が離過ぎていると、共振波長変調層16の幅Wの変化に対して、共振波長の変化幅が僅かとなるので、所定の幅の共振波長帯域を得ることができなくなるおそれがある。
【0059】
従って、所定の幅の共振波長帯域を得るためには、共振波長変調層16とコア層15との間の距離は、等価位相屈折率neに対する共振波長変調層16の位相屈折率の影響が小さくなり過ぎない程度であることが好ましい。
【0060】
このような観点から、共振波長変調層16のZ方向の位置は、電界強度分布Cのピーク値に対して、電界強度の値が1/10000以上1/10以下、特に、電界強度の値が1/1000以上1/100以下、更には、電界強度の値が1/500以上1/200以下の領域V(図5参照)に配置されることが好ましい。
【0061】
例えば、共振部14及び共振波長変調層16がシリコンを用いて形成され、クラッド層が酸化シリコンを用いて形成される場合には、共振波長変調層16とコア層15との間の距離は、50nm以上500nm以下、特に150nm以上300nm以下、更に特に175nm以上225nm以下とすることが、上述した観点から好ましい。このようにして、光デバイス10は、共振波長帯域として、例えば、1nmから20nmの範囲を得ることができる。
【0062】
次に、共振波長変調層16の位相屈折率と、コア層12及びクラッド層15の位相屈折率との関係を以下に説明する。
【0063】
共振波長変調層16の位相屈折率が、コア層12の位相屈折率よりも大きいと、コア層12を伝搬する光が共振波長変調層16の方へ移動してくるので、コア層12を伝搬する光が減少するおそれがある。
【0064】
このような観点から、共振波長変調層16の位相屈折率は、コア層12の位相屈折率と同じか又はコア層12の位相屈折率よりも小さいことが好ましい。特に、共振波長変調層16の位相屈折率を、コア層12の位相屈折率と同じ値にすると、光デバイス10の光学特性の設計が容易となる利点がある。また、共振波長変調層16の位相屈折率がコア層12の位相屈折率よりも小さ過ぎると、等価位相屈折率neへの共振波長変調層16の影響が小さくなるおそれがある。
【0065】
また、共振波長変調層16の位相屈折率neは、クラッド層15の位相屈折率よりも大きいことが好ましい。一方、共振波長変調層16の位相屈折率neが、クラッド層15よりも位相屈折率が小さいと、等価位相屈折率neへの共振波長変調層16の影響が小さくなる。
【0066】
また、共振波長変調層16の位相屈折率の大きさにも依存するが、共振波長変調層16の厚さは、コア層12の厚さよりも薄いことが好ましい。共振波長変調層16の厚さが、コア層12よりも厚いと、コア層12を伝搬する光が共振波長変調層16の方へ移動してくるので、コア層12を伝搬する光が減少するおそれがあるためである。
【0067】
なお、共振波長変調層16の位相屈折率が大きい場合には、共振波長変調層16の厚さが薄くても、等価位相屈折率neを変化させることができる。一方、共振波長変調層16の位相屈折率が小さい場合には、共振波長変調層16を厚くしないと、等価位相屈折率neを十分に変化させることができないおそれがある。
【0068】
以上が、共振波長変調層16の位相屈折率と、コア層12及びクラッド層15の位相屈折率との関係の説明である。
【0069】
上述したような観点を考慮して、所望の共振波長帯域を得られるように、光デバイス10が設計される。例えば、光デバイス10で共振させたい波長の下限値λ1と上限値λ2とが決定されると、式(1)を用いて、対応する等価位相屈折率n1及びn2が定まる。そして、等価位相屈折率n1及びn2が得られる共振波長変調層16の幅W1、W2それぞれが決定されて、共振波長変調層16の寸法は、これらの幅W1、W2を含むように設計される。なお、共振波長変調層16の斜辺の傾きは、共振波長変調層16又は光デバイス10の長手方向の寸法によっても決定され得る。
【0070】
光デバイス10の形成材料としては、化合物半導体又はシリコン又はこれらの酸化物等を用いることができる。特に、シリコン又はその酸化物を用いて光デバイス10を形成する場合には、従来のシリコン半導体の製造技術を用いて、シリコン基板上に複数の光デバイスを製造することができ、且つ他のシリコン半導体素子と組み合わせて製造することが容易となる利点がある。
【0071】
上述した本実施形態の光デバイス10によれば、光が伝搬する方向における共振部の共振波長を変化させることができるので、異なる波長を有する光それぞれを共振できる。
【0072】
また、光デバイス10は、回折格子13及び共振波長変調層16等の加工を、従来のフォトリソグラフィ又は電子ビーム描画等の半導体製造技術を用いて行うことができるので、品質の安定した光デバイスを製造可能である。
【0073】
次に、上述した第1実施形態の光デバイスの変形例1〜3を、図面を参照して以下に説明する。
【0074】
図6(A)は、第1実施形態の光デバイスの変形例1を示す図である。
【0075】
変形例1の光デバイス10は、共振波長変調層16の形状が、上述した第1実施形態とは異なっている。
【0076】
本変形例では、共振波長変調層16の幅Wが、コア層12の長手方向において、非線形に変化している。具体的には、第1実施形態における2等辺三角形の形状であった共振波長変調層の斜辺の形状が幅方向の内側に凸に湾曲した形状となっている。
【0077】
このように、共振波長変調層16の幅Wは、コア層12の長手方向において、例えば、放物線状又は双曲線状に変化していても良い。また、共振波長変調層16の幅Wは、幅方向の外側に凸に湾曲するように変化していても良い。
【0078】
図6(B)は、第1実施形態の光デバイスの変形例2を示す図である。
【0079】
本変形例では、共振波長変調層16の幅Wが、コア層12の長手方向において、減少した後再び増加している。
【0080】
具体的には、共振波長変調層16は、2つの2等辺三角形が頂角を対向させた形状となっている。即ち、共振波長変調層16の幅Wは、コア層12の長手方向において、線形に減少してゼロになった後、再び線形に増加している。
【0081】
図6(C)は、第1実施形態の光デバイスの変形例3を示す図である。図6(C)は、図3(B)に対応する断面図である。
【0082】
本変形例では、クラッド層15の上側の部分に溝15aが形成されており、この溝15aの部分が共振波長変調層16となっている。共振波長変調層16内には、例えば空気が充填されており、共振波長変調層16の位相屈折率は、空気の位相屈折率となる。
【0083】
なお、溝15aに、空気以外の材料を充填して、共振波長変調層16としても良い。
【0084】
また、上述した第1実施形態及び変形例では、回折格子13は、コア層12における長手方向の両側部に設けられていたが、回折格子13は、コア層12の共振波長変調層16側の面及び基板11側の面に設けても良い。
【0085】
次に、上述した光デバイスの第2実施形態を、図7(A)及び(B)を参照しながら以下に説明する。第2実施形態について特に説明しない点については、上述の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0086】
図7(A)は、本明細書に開示する光デバイスの第2実施形態を示す平面図であり、図7(B)は、図7(A)のX4−X4線断面図である。
【0087】
本実施形態の光デバイス10では、共振部14が、コア層12と、コア層12に沿ってコア層12を伝搬する光と結合可能に配置された複数のリング型光導波路17と、を有する。また、光デバイス10は、複数のリング型光導波路17の上に配置された共振波長変調層16を備える。
【0088】
図7(B)に示すように、コア層12及び複数のリング型光導波路17は、クラッド層15内に埋め込まれており、複数のリング型光導波路17と共振波長変調層16との間にクラッド層16が配置されている。
【0089】
本実施形態では、共振部14が、回折格子ではなく、複数のリング型光導波路17を有している点が、上述した第1実施形態とは異なっている。
【0090】
複数のリング型光導波路17同士は、互いには光結合しないように離間して配置されている。各リング型光導波路17は、同じ寸法を有している。リング型光導波路17は、閉じた光導波路の形状を有していればよい。図7(A)に示す例では、リング型光導波路17は、円形状を有する。
【0091】
図7(A)に示すように、共振波長変調層16の幅Wは、光が伝搬する方向に向かって線形に変化している。共振波長変調層16は、共振部14の長手方向(図7(A)中のX方向)において全てのリング型光導波路17の上を覆うように配置されており、縦長の形状を有している。共振波長変調層16の幅方向の中心は、複数のリング型光導波路17それぞれの幅方向の中心と一致させて、クラッド層15の上に配置されることが好ましい。
【0092】
隣り合うリング型光導波路17同士では、各リング型光導波路17の全長に対する共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている。
【0093】
更に説明すると、図7(A)に示す例では、コア層12に沿って、5つのリング型光導波路17が配置されており、それぞれが共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分が左側から順にS1,S2,S3,S4,S5として示されている。上述したように、5つのリング型光導波路17の円周の長さは同じである。
【0094】
そして、左側から1番目に位置するリング型光導波路17の部分S1の長さがリング型光導波路17の円周の長さに対して占める割合は、隣のリング型光導波路17の部分S2の長さがリング型光導波路17の円周の長さに対して占める割合とは異なっている。即ち、部分S1の長さと部分S2の長さとは異なっており、部分S2の長さの方が長い。
【0095】
同様に、左側から2番目に位置するリング型光導波路17の部分S2の長さがリング型光導波路17の円周の長さに対して占める割合は、隣のリング型光導波路17の部分S3の長さがリング型光導波路17の円周の長さに対して占める割合とは異なっている。即ち、部分S2の長さと部分S3の長さとは異なっており、部分S3の長さの方が長い。
【0096】
以下、同様に、部分S3の長さと部分S4の長さとは異なっており、部分S4の長さと部分S4の長さとは異なっており、長さは、S3,S4,S5の順番に長くなっている。
【0097】
このように、光デバイス10では、共振波長変調層16に覆われている各リング型光導波路17の部分の長さが互いに異なっているので、リング型光導波路の全長に対する共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なることになる。
【0098】
ここで、共振部14のリング型光導波路17が形成されている部分の共振波長は、下記の式(2)で表される。
【0099】
λm=nae2πR/m (2)
【0100】
ここで、naeはリング型光導波路17の平均等価位相屈折率であり、Rはリング型光導波路17の半径であり、mは回折格子の次数である。
【0101】
リング型光導波路17の等価位相屈折率は、共振波長変調層16に覆われている部分では、リング型光導波路17の位相屈折率及びクラッド層の15の位相屈折率と共に、共振波長変調層16の位相屈折率の影響を受ける。一方、共振波長変調層16に覆われていない部分では、リング型光導波路17の等価位相屈折率は、リング型光導波路17の位相屈折率及びクラッド層の15のみの影響を受ける。リング型光導波路17の平均等価位相屈折率naeは、共振波長変調層16に覆われている部分の等価位相屈折率と、共振波長変調層16に覆われていない部分の等価位相屈折率とが平均された等価位相屈折率となる。そして、各リング型光導波路17では、共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分S1,S2,S3,S4,S5の長さが異なるため、それぞれのリング型光導波路17に対する共振波長変調層16の等価位相屈折率への影響が異なっている。従って、各リング型光導波路17の平均等価位相屈折率naeも異なっている。
【0102】
リング型光導波路17における平均等価位相屈折率naeは、共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分S1,S2,S3,S4,S5の長さの増加と共に増加する。そして、共振部14における共振波長は、式(2)に示す関係から、平均等価位相屈折率naeの増加と共に増加する。
【0103】
このように、光デバイス10は、所定の幅の共振波長帯域を有しており、この帯域に含まれる波長を有する光を共振させることができる。
【0104】
例えば、光共振器10に入力した波長λ1を有する入力光Piは、コア層12を伝搬しながら、波長λ1と共振する共振波長を有するリング型光導波路17の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0105】
同様に、波長λ1とは異なる波長λ2を有する入力光Piは、コア層12を伝搬しながら、波長λ2と共振する共振波長を有するリング型光導波路17の部分で共振された後、出力光Poとして出力される。
【0106】
図7(A)に示す例では、光デバイス10は、5つのリング型光導波路を有しているが、リング型光導波路の数及び半径は、共振させたい波長の帯域等に応じて適宜設定し得る。
【0107】
上述した本実施形態の光デバイス10によれば、第1実施形態の光デバイスと同様の効果が奏される。
【0108】
次に、上述した第2実施形態の光デバイスの変形例を、図面を参照して以下に説明する。
【0109】
図8は、第2実施形態の光デバイスの変形例を示す図である。
【0110】
本変形例の光デバイス10は、リング型光導波路17がレーストラック形状を有しており、直線状の光導波路の部分で、コア層12と光結合している。このように、直線状の光導波路の部分で、コア層12と光結合する場合には、コア層12とリング型光導波路17との間の距離を長くしても結合効率を大きくできる利点がある。
【0111】
次に、上述した光デバイスの製造方法の好ましい第1実施形態を、図面を参照しながら、以下に説明する。
【0112】
まず、図9(A)及び(B)に示すように、支持層31と絶縁層32と半導体層33とを有する基板30を用意する。本実施形態では、基板30として、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。支持層31はシリコン基板であり、絶縁層はシリコン酸化層であり、半導体層33は単結晶シリコン層である。半導体層33の厚さとしては、例えば、220nmとすることができる。
【0113】
なお、基板30は、SOI基板を用いるのではなく、支持層31上に絶縁層32及び半導体層33を形成して用意しても良い。
【0114】
次に、図10(A)及び(B)に示すように、半導体層33がパターニングされて、コア層12と回折格子13とを有する共振部14が形成される。パターニングとしては、電子ビーム描画法及びドライエッチング法を用いることができる。コア層の幅としては、例えば、450nmとすることができる。
【0115】
次に、図11(A)及び(B)に示すように、絶縁層32上に、共振部14を埋め込むようにクラッド層15を形成する材料が積層されて、絶縁層32と一体となってクラッド層15が形成される。本実施形態では、クラッド層15の形成材料として、絶縁層32の形成材料と同じ酸化シリコンを用いた。共振部14の上のクラッド層15の部分の厚さは、例えば、200nmとすることができる。
【0116】
次に、図12(A)及び(B)に示すように、クラッド層15上に、共振波長変調層16が積層される。共振波長変調層16の厚さとしては、例えば、50nmとすることができる。共振波長変調層16の形成材料としては、例えば、ポリシリコンとすることができる。
【0117】
そして、共振波長変調層16がパターニングされて、図3(A)及び(B)に示す光デバイスが得られる。共振波長変調層16のパターニングとして、例えば、i線露光法及びドライエッチング法を用いることができる。2等辺三角形状にパターニングされた共振波長変調層16の底辺の長さは、例えば、500nmとすることができる。図3(A)及び(B)では、支持層31が、基板11となる。最後に、クラッド層15と共振波長変調層16を覆うように、素子表面全体に、厚さ1000nm程度のクラッド層を、クラッド層15と同じ材料を用いて形成しても良い。
【0118】
次に、上述した光デバイスの製造方法の好ましい第2実施形態を、図面を参照しながら、以下に説明する。
【0119】
まず、図13(A)及び(B)に示すように、支持層31と絶縁層32と半導体層33とを有する基板30を用意する。本実施形態では、基板30として、SOI(Silicon on Insulator)基板を用いる。支持層31はシリコン基板であり、絶縁層はシリコン酸化層であり、半導体層33は単結晶シリコン層である。半導体層33の厚さとしては、例えば、220nmとすることができる。
【0120】
なお、基板30は、SOI基板を用いるのではなく、支持層31上に絶縁層32及び半導体層33を形成して用意しても良い。
【0121】
次に、図14(A)及び(B)に示すように、半導体層33がパターニングされて、コア層12と複数のリング型光導波路17とを有する共振部14が形成される。パターニングとしては、電子ビーム描画法及びドライエッチング法を用いることができる。コア層の幅としては、例えば、450nmとすることができる。リング型光導波路17の直径としては、例えば、16μmとすることができる。また、リング型光導波路17の幅としては、例えば、コア層の幅と同じにすることができる。
【0122】
次に、図15(A)及び(B)に示すように、絶縁層32上に、共振部14を埋め込むようにクラッド層15を形成する材料が積層されて、絶縁層32と一体となってクラッド層15が形成される。本実施形態では、クラッド層15の形成材料として、絶縁層32の形成材料と同じ酸化シリコンを用いた。共振部14の上のクラッド層15の部分の厚さは、例えば、200nmとすることができる。
【0123】
次に、図16(A)及び(B)に示すように、クラッド層15上に、共振波長変調層16が積層される。共振波長変調層16の厚さとしては、例えば、50nmとすることができる。共振波長変調層16の形成材料としては、例えば、ポリシリコンとすることができる。
【0124】
そして、共振波長変調層16がパターニングされて、図7(A)及び(B)に示す光デバイスが得られる。共振波長変調層16のパターニングとして、例えば、i線露光法及び銅鑼エッチング法を用いることができる。2等辺三角形状にパターニングされた共振波長変調層16の底辺の長さは、例えば、18μmとすることができる。図7(A)及び(B)では、支持層31が、基板11となる。最後に、クラッド層15と共振波長変調層16を覆うように、素子表面全体に、厚さ1000nm程度のクラッド層を、クラッド層15と同じ材料を用いて形成しても良い。
【0125】
上述した本明細書に開示する光デバイスは、例えば、光変調器に組み込むことができる。
【0126】
図17(A)は、本明細書に開示する光変調器の第1実施形態を示す図である。
【0127】
本実施形態の光変調器20は、マッハツェンダ干渉型光変調器であり、光を伝搬する第1コア層21aを有する第1光導波路21と、光を伝搬する第2コア層22aを有する第2光導波路22と、を備える。第1コア層21a及び第2コア層22aは、クラッド層25内に埋め込まれている。また、光変調器20では、第1光導波路22に第1変調信号を印加する第1電極23と、第2光導波路22に第2変調信号を印加する第2電極24と、がクラッド層25の上に配置されている。
【0128】
第1電極23により、電場が印加された第1光導波路21では、電場の大きさ及び向きに対応して屈折率が変化するので、この屈折率の変化に対応して光路長が変わるため第1光導波路21を伝搬する伝搬光の位相が変化する。同様に、第2電極24により、電場が印加された第2光導波路22では、伝搬する伝搬光の位相が変化する。
【0129】
光変調器20は、入力光Piを分岐して第1光導波路21及び第2光導波路22に送り、第1光導波路21及び第2光導波路22それぞれを伝搬した光を合波して、変調された光を出力光Poとして出力する。
【0130】
また、第1光導波路21には、上述した第1実施形態光のデバイス10が配置されている。
【0131】
即ち、光変調器20では、第1光導波路21が、第1コア層21aを伝搬する光を共振させる共振部14と、第1コア層21aに沿って幅が変化しながら延びており、光が伝搬する方向における共振部の共振波長を変化させる共振波長変調層16と、を有する。共振部14は、第1コア層21aの一部分と、この第1コア層21aの一部分における長手方向の両側部に設けられた回折格子13とにより形成される。
【0132】
上述した光変調器20によれば、第1光導波路21を伝搬する光信号に対して大きな位相変化を生じさせられるので、単位光導波路あたりの位相変化量を大きくすることできるので、光導波路の長さを短くできる。また、デバイス10は、光が伝搬する方向における共振部の共振波長を変化させることができるので、異なる波長を有する光それぞれを共振できるので、光変調器20に入力される入力光Piが所定の波長帯域を有していても、光を共振させて変調することができる。
【0133】
また、光変調器20では、第1光導波路21のみに共振部12及び共振波長変調層16が配置されていたが、第2光導波路22にも共振部12及び共振波長変調層16を配置しても良い。
【0134】
次に、上述した光変調器の第2実施形態を、図17(B)を参照しながら以下に説明する。光変調器の第2実施形態について特に説明しない点については、上述の光変調器の第1実施形態に関して詳述した説明が適宜適用される。また、同一の構成要素には同一の符号を付してある。
【0135】
図17(B)は、本明細書に開示する光変調器の第2実施形態を示す図である。
【0136】
本実施形態の光変調器20では、第1光導波路21に配置された共振部の構造が異なっている。
【0137】
即ち、第1光導波路21には、上述した第2実施形態の光デバイス10が配置されている。
【0138】
本実施形態の光変調器20では、第1光導波路21が、第1コア層21aに沿って配置された複数のリング型光導波路17と、複数のリング型導波路17の上に配置された共振波長変調層16とを有する。複数のリング型光導波路17と共振波長変調層16との間には、クラッド層25が配置される。複数のリング型光導波路16における隣り合うリング型光導波路17同士では、リング型光導波路の全長に対する共振波長変調層16に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている。
【0139】
共振部14は、第1コア層21aの一部分と、この第1コア層21aの一部分に沿って配置された複数のリング型光導波路17とにより形成される。
【0140】
本発明では、上述した実施形態の光デバイス及び光変調器は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。また、一の実施形態が有する構成要件は、他の実施形態にも適宜適用することができる。
【0141】
例えば、共振波長変調層がコア層に沿って幅が変化しながら延びることには、共振波長変調層が、その幅が階段状に変化しながら、コア層に沿って延びることが含まれる。
【0142】
また、共振部は、フォトニック結晶を用いて形成しても良い。
【0143】
また、上述した実施形態では、共振波長変調層は、コア層の上方に配置されていたが、共振波長変調層は、コア層の上下左右のどこに配置されても良い。
【0144】
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
【0145】
以上の上述した各実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0146】
(付記1)
光を伝搬するコア層を有し、前記コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、
前記コア層に沿って幅が変化しながら延びる共振波長変調層と、
を備える光デバイス。
【0147】
(付記2)
前記共振波長変調層の厚さは、前記コア層の厚さよりも薄い付記1に記載の光デバイス。
【0148】
(付記3)
前記共振波長変調層の位相屈折率は、前記コア層の位相屈折率と同じか又は前記コア層の位相屈折率よりも小さい付記1又は2に記載の光デバイス。
【0149】
(付記4)
前記コア層と、前記共振波長変調層との間に位置するクラッド層を備えており、
前記共振波長変調層の位相屈折率は、前記クラッド層の位相屈折率よりも大きい付記1〜3の何れか一項に記載の光デバイス。
【0150】
(付記5)
前記共振部は、前記コア層に設けられた回折格子を有している付記1〜4の何れか一項に記載の光デバイス。
【0151】
(付記6)
前記共振部は、前記コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路を有している付記1〜4の何れか一項に記載の光デバイス。
【0152】
(付記7)
前記共振波長変調層は、前記コア層を伝搬する光の導波モードの伝搬方向に対して垂直な方向における電界強度分布のテール部分に配置される付記1〜6の何れか一項に記載の光デバイス。
【0153】
(付記8)
前記電界強度分布のテール部分は、前記コア層を伝搬する光の導波モードの電界強度の前記伝搬方向に対して垂直な方向における距離に対する2次導関数の符号が変化する位置に対して、前記コア層とは反対側に位置する付記7に記載の光デバイス。
【0154】
(付記9)
前記コア層と前記共振波長変調層との間の距離は、50nm以上500nm以下である付記7又は8に記載の光デバイス。
【0155】
(付記10)
前記共振波長変調層の幅は、光が伝搬する方向に向かって線形に変化する付記1〜9の何れか一項に記載の光デバイス。
【0156】
(付記11)
コア層と、
前記コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、
複数の前記リング型光導波路の上に配置された共振波長変調層と、
複数の前記リング型光導波路と前記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、
を備え、
隣り合う前記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する前記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている光デバイス。
【0157】
(付記12)
光を伝搬するコア層を有する第1光導波路と、
光を伝搬するコア層を有する第2光導波路と、
を備え、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路は、
コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、
コア層に沿って幅が変化しながら延びており、光が伝搬する方向における前記共振部の共振波長を変化させる共振波長変調層と、
を有する光変調器。
【0158】
(付記13)
光を伝搬するコア層を有する第1光導波路と、
光を伝搬するコア層を有する第2光導波路と、
を備え、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路は、
コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、
複数の前記リング型導波路の上に配置された共振波長変調層と、
複数の前記リング型光導波路と前記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、
を有し、
隣り合う前記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する前記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている光変調器。
【符号の説明】
【0159】
10 光デバイス
11 基板
12 コア層
13 回折格子
14 共振部
15 クラッド層
16 共振波長変調層
17 リング光導波路
20 光変調器
21 第1光導波路
21a 第1コア層
22 第2光導波路
22a 第2コア層
23 第1電極
24 第2電極
25 クラッド層
30 基板
31 支持層
32 絶縁層
33 半導体層
C 電界強度分布
P 変曲点
W テール部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を伝搬するコア層を有し、前記コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、
前記コア層に沿って幅が変化しながら延びる共振波長変調層と、
を備える光デバイス。
【請求項2】
前記共振波長変調層の厚さは、前記コア層の厚さよりも薄い請求項1に記載の光デバイス。
【請求項3】
前記共振波長変調層の位相屈折率は、前記コア層の位相屈折率と同じか又は前記コア層の位相屈折率よりも小さい請求項1又は2に記載の光デバイス。
【請求項4】
前記共振部は、前記コア層に設けられた回折格子を有している請求項1〜3の何れか一項に記載の光デバイス。
【請求項5】
前記共振部は、前記コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路を有している請求項1〜3の何れか一項に記載の光デバイス。
【請求項6】
コア層と、
前記コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、
複数の前記リング型光導波路の上に配置された共振波長変調層と、
複数の前記リング型光導波路と前記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、
を備え、
隣り合う前記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する前記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている光デバイス。
【請求項7】
光を伝搬するコア層を有する第1光導波路と、
光を伝搬するコア層を有する第2光導波路と、
を備え、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路は、
コア層を伝搬する光を共振させる共振部と、
コア層に沿って幅が変化しながら延びており、光が伝搬する方向における前記共振部の共振波長を変化させる共振波長変調層と、
を有する光変調器。
【請求項8】
光が伝搬するコア層を有する第1光導波路と、
光が伝搬するコア層を有する第2光導波路と、
を備え、
前記第1光導波路又は前記第2光導波路は、
コア層に沿って配置された複数のリング型光導波路と、
複数の前記リング型導波路の上に配置された共振波長変調層と、
複数の前記リング型光導波路と前記共振波長変調層との間に配置されたクラッド層と、
を有し、
隣り合う前記リング型光導波路同士では、光導波路の全長に対する前記共振波長変調層に覆われている光導波路の部分の長さの割合が異なっている光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−198274(P2012−198274A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60570(P2011−60570)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】