説明

光トランシーバ

【課題】低コストかつ簡便な組立性を損なうことなく光トランシーバ内部の回路基板を保持することができ、かつ電磁放射の漏れを抑えるために金属製カバーの切り込みを廃止できるようにする。
【解決手段】回路基板保持部品70は、カバー60と回路基板50との間に介在し、カバー50が10フレームに装着されたときの押圧力を受けて弾性変形する弾性要素部71を備えている。そしてカバー60がフレーム10に装着された状態では、弾性要素部71の弾性力により回路基板50をフレーム10の方向に押しつけて保持させることができる。この構成により、カバー60の切り込みを廃止して、切り込みにより生じる貫通孔からの電磁放射の漏れを抑えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光サブアセンブリを内蔵する光トランシーバに使用する回路基板保持部品と、該回路基板保持部品を備えた光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
光トランシーバは、送信光サブアセンブリ(Transmitter Optical Sub-Assembly:TOSA)と受信光サブアセンブリ(Receiver Optical Sub-Assembly:ROSA)、及びこれらのサブアセンブリと電気的に結合し電気信号を処理する電子回路を搭載する回路基板、この回路基板を搭載するフレーム等で構成されている。送信光サブアセンブリは本発明の光送信部に該当し、受信光サブアセンブリは本発明の光受信部に該当するものである。ここで電子回路としては、送信光サブアセンブリ内に搭載されている半導体レーザ(Laser Diode:LD)を駆動するための駆動回路、あるいは、受信光サブアセンブリ内に搭載されているフォトダイオードにより光信号から変換された電気信号を増幅、再生する受信回路、これら駆動回路、受信回路を制御する制御回路などがある。
【0003】
近年、この種の光トランシーバの外形寸法や電気仕様は業界で共通化され、製造者が異なっている場合であっても、製品の置き換えが可能なシステムが構築されている。その種の業界標準の一つとしてXFP規格がある(10Gps small form factor pluggable module multi-source agreement, April 2,2003)。図8はXFP型光トランシーバがホスト基板上に搭載されて用いられる時の様子を示す図である。ホスト基板101上には金属製のケージ111が搭載されていて、このケージ111の開口112はベゼル102から露出し、この開口112を通して光トランシーバ1をケージ111に対して挿抜する。光トランシーバ1の後端には電気プラグ121が備えられ、この電気プラグ121とホスト基板101上のコネクタ103がケージ111内で係合することで、光トランシーバ1とホスト基板101との間で通信(信号の送受、光トランシーバ1への電源の供給)が確立する。ケージ111の上面には、放熱のためのヒートシンク113がクリップ114を用いて取り付けられる場合がある。
【0004】
図9は、上記のような光トランシーバに設けられるカバーの一例の斜視図で、特許文献1に記載された光トランシーバに備えられるカバーを示すものである。
特許文献1の光トランシーバは、いずれも図示しない回路基板、送信光サブアセンブリ、受信光サブアセンブリ、レセプタクル部材などを備え、これらを図示しない筐体(フレーム)とカバーとの間に挟み込んでシールしてなるものである。図9には、上記のフレームに組み合わせるカバー80を示している。
【0005】
カバー80は一枚のステンレス板を切断、折り曲げ加工により形成したものである。図9では、右方が光トランシーバの前方側に相当する。カバー80の側壁部は切れ込み80dを挟んで二つの部分に分けられている。先方側の側壁80jには開口80cが形成されており、この開口80cは上記のフレームに形成された所定の突起にはめ込まれる。一方、後方側の側壁80lも二つの開口80a、80bを有しており、それぞれフレームに形成された他の所定の突起にはめ込まれる。そして同時に、フィンガ80h 、及びカバー後端に形成されたフィンガ80iが回路基板をフレームに対して押し付ける。このとき、光トランシーバに内蔵される回路基板は、フレームの側壁の段差にその主面が搭載されると同時に、カバー80によりその側壁段差に押し付けられ固定される。フィンガ80hは、回路基板を押圧して弾性的に保持することで、回路基板の機械的歪みを抑えるようにしている。また、上記の構造は、いわゆる嵌め込み(Fitting)により組み立てを行うことができるので、組み立て工程が簡略化され、製造コストを低減することができるとされている。
【特許文献1】特開2007−156461号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような光トランシーバにおいては、その通信速度は10Gbps超からさらに高速化が見込まれている。この場合、通信速度の高速化に伴って内部の動作周波数も高くなると、光トランシーバの外部へ電磁放射が漏れるようになる。この場合、従来は問題とはならなかった小さい隙間からでも、電磁放射が外部に漏れるようになり、問題になりつつある。例えば上記のような従来の構成においては、金属製のカバー60には、回路基板を保持するためのフィンガ60hが切り込みによって形成されている。従ってこの部分には、カバー60の内部から外部に通じる貫通孔が形成される。しかしながら、今後の通信速度の高速化の観点からも、このような貫通孔から生じる電磁放射の漏れを無くして、通信時のノイズの発生等の弊害を抑えることが課題となる。
【0007】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたものであり、従来の光トランシーバにおける低コストかつ簡便な組立性を損なうことなく内部の回路基板を保持できる構造を備え、かつ、電磁放射の漏れを抑えるために光トランシーバの金属製カバーの切り込みを廃止できるようにした回路基板保持部品と、その回路基板保持部品を備えた光トランシーバを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による回路基板保持部品は、光信号を電気信号に変換する光受信部、および電気信号を光信号に変換して出力する光送信部を動作させるための電子回路を搭載した回路基板と、回路基板を搭載するフレームと、フレームに装着するカバーとを備えた光トランシーバに使用する回路基板保持部品であって、カバーと回路基板との間に配置され、カバーが前記フレームに装着されたときに前記カバーに接触し、カバーからの押圧力を受けて弾性変形する弾性要素部を備え、回路基板との接触領域は、回路基板の外周に沿った形状を有している。
【0009】
また、本発明による光トランシーバは、信号を電気信号に変換する光受信部、および電気信号を光信号に変換して出力する光送信部を動作させるための電子回路を搭載した回路基板と、回路基板を搭載するフレームと、フレームに装着するカバーと、上記本発明による回路基板保持部品とを備えている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従来の光トランシーバにおける低コストかつ簡便な組立性を損なうことなく内部の回路基板を保持できるようにし、かつ電磁放射の漏れを抑えるために光トランシーバの金属製カバーの切り込みを廃止できるようにした回路基板保持部品と、その回路基板保持部品を備えた光トランシーバとを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る光トランシーバの一実施形態の分解組立図である。光トランシーバ1は、筐体(フレーム)10、回路基板50、送信光サブアセンブリ30と受信光サブアセンブリ40、レセプタクル部材20、及びカバー60を主要な構成部品として含む。
【0012】
フレーム10はアルミダイキャスト製であり、前方側から順に光レセプタクル20、送信光サブアセンブリ30/受信光サブアセンブリ40、回路基板50を搭載し、さらにカバー60を一体に組み付ける。ここで、“前方”は、図1の矢印F側であって、光トランシーバ1において光レセプタクル20を備えている側を指すもとする。また、“後方”とは、その逆側の矢印R側であって、回路基板50に形成されたプラグコネクタの側を便宜上指すものとする。前方側においてフレーム10はレセプタクル部材20の側部を覆い、光トランシーバ1の前端にまで伸び、フレーム10の側壁11fをレセプタクル部材20のフランジ20cに当接させている。フレーム10の後方側には、回路基板50を搭載するための主面13a(後述の図3に示す)が形成されている。
【0013】
レセプタクル部材20はメッキを施した樹脂製部品である。その前方側にはそれぞれ送信/受信に対応する二つの開口21a、21bを有する光レセプタクルが形成されている。図1では明示されていないが、レセプタクル部材20の後端壁には以下で説明する光サブアセンブリ30、40のスリーブ部が挿入される開口が形成されており、当該開口にスリーブ部を挿入することで、光レセプタクルに対するスリーブの位置が規定される。従って、この光レセプタクルに挿入される光コネクタに保持されている光ファイバと、サブアセンブリ30、40内に搭載されている光素子との間で光結合が実現される。
【0014】
光サブアセンブリ30、40はいずれもバタフライパッケージを有し、箱型の金属製の本体部30a、40aと、本体部30a、40aの一側壁から延び出す円筒状のスリーブ部30b、40bとで構成される。スリーブ部30b、40bは、少なくとも本体部30a、40aと接触する箇所については金属製であることが要請される。しかしながら、その先端部は金属製、樹脂製、いずれも適用可能である。本体部30a、40aの後壁からは、信号用のリード30c、40cが延び出している。図1では明示されていないが、送信光サブアセンブリ30については、その一側壁から複数の電極が突き出しており、この電極に対してフレキシブル基板により回路基板50と電気的な接続が果たされる。フレキシブル基板上の配線は、送信光サブアセンブリ30内に搭載された熱伝変換素子への電源線、感温素子からの信号出力等、専ら低周波、あるはDC信号の入出力に提供される。
【0015】
回路基板50上には電子回路が搭載されている。送信光サブアセンブリ30のための電子回路としては、送信光サブアセンブリ30内に搭載された半導体レーザ(LD)を駆動するLDドライバ、熱電変換素子を所定の温度に制御するための温度コントローラ、LDの光出力の平均値を所定値に維持する自動出力制御(Auto-Power Controller:APC)回路等がある。一方、受信光サブアセンブリ40のための電子回路としては、受信光サブアセンブリ40からの信号を増幅する主増幅器、増幅された信号からクロック信号を抽出するクロック再生回路、再生クロックに基づき増幅信号からデータ信号抽出するデータ抽出回路、等がある。
【0016】
また、受信光サブアセンブリ40内に受光素子としてアバランシェダイオード(Avalanche Photodiode:APD)が搭載される場合には、APDバイアス制御回路も搭載される。回路基板50の後端にはケージ111内のコネクタと係合するプラグコネクタが形成されている。プラグコネクタの基板上の電極パターンを所定の形状とすることにより、ホスト装置の電源を切らずにこのトランシーバをケージに挿抜することができる、いわゆるホットプラグ機能が実現される。
【0017】
カバー60は板金材であり、フレーム10との間に、光サブアセンブリ30、40、回路基板50を挟み込んでこれらをシールする。カバー60の側壁の一部が切り込まれており、当該切り込み箇所から、図1では示されていないが、この光トランシーバ1をケージ111に係合するためのラッチレバーが露出する。
【0018】
図2は、レセプタクル部材の構成を説明するための斜視図で、図2(A)、図2(B)は、レセプタクル部材20をそれぞれ前方上部、後方上部から俯瞰した様子を示している。レセプタクル部材20は成形樹脂の全面を導電メッキしたものであり、前方側から順に光レセプタクル21a、21bを形成する第1部位20a、光レセプタクルの後方壁を形成し、光サブアセンブリ30、40のスリーブ部30b、40bが貫通する開孔22a、22bが形成された第2部位20bを有する。
【0019】
第1部位20aは中央隔壁20dにより区画され、送信用光レセプタクル21a、受信用光レセプタクル21bをそれぞれ形成する。各光レセプタクル21a、21bの内部空間の物理的寸法は、これら光レセプタクル21a、21bに挿入される光コネクタの規格により厳密に決められている。第1部位20aの前方端両外壁にはフランジ20cが形成されている。このフランジ20cはトランシーバの前方端を規定する。フランジ20cから奥まった両外壁には、フレーム10とレセプタクル部材20と係合するための突起20eを有する。
【0020】
レセプタクル部材20をフレーム10の前方側側壁の間に挟みこみ、フレーム側壁の側壁11fに形成されている溝11a(後述の図5に示す)に突起20eを嵌合させると、フレーム10の先端面がフランジ20cの背面に当接して、レセプタクル部材20の前後方向の位置が決定される。また、突起20eが溝11a内でスライド可能であり、これにより、レセプタクル部材20と光サブアセンブリ30、40の組立体をフレーム10に対して固定することができる。このとき、レセプタクル部材20とサブアセンブリ30、40との間の調芯状態を維持したまま、光サブアセンブリ30、40をフレーム10に固定することができる。
【0021】
第2部位20bには、光サブアセンブリ30、40のスリーブ部が挿入される二つの開孔22a、22bが形成されている。これらの開孔22a、22bの径をスリーブ部の外径よりも僅かに小さく設定しておくことで、スリーブ部は光レセプタクル21a、21bの内部空間に対して、その位置を一義的に、がたつきなく決定することができる。すなわち、スリーブ部が光レセプタクル21a、21b内で首振りを起こすことはない。この第2部位20bの後端上部には、深さ0.3mm、奥行き1.5mmの段差22eが形成されており、当該段差22eに沿って高さ0.5mm程度の範囲で帯び状にエラストマー(樹脂)を塗布しておくようにしてもよい。
段差22eは、レセプタクル部材20をフレーム10の前方側側壁11fで囲まれた空間にセットした際に、当接面11bの前縁に突き当たる。既に説明した突起20eと側壁11f内面の溝11aとの係合関係と合わせて、レセプタクル部材20とフレーム10との相対的位置を決定する。
【0022】
また、第2部位20bにおいて段差22eとは反対の面(下面)22fは平坦に形成されており、当該箇所にカバー60が接触できる。カバー60に形成されたフィンガ60f(図4にて後述)が、この平坦部20fと接触することで、カバー60とレセプタクル部材20との間の電気的導通が確保される。
【0023】
図3はフレーム10を前方側から俯瞰した斜視図である。フレーム10は前方側から第1〜4の部位に機能上分割される。第1部位10aはレセプタクル部材20を収容する。第2部位10bはサブアセンブリ30、40を、第4部位10cは回路基板を、第4部位10dはコネクタプラグを、それぞれ収容する。
【0024】
第1部位10aは二つの側壁11fで囲まれたレセプタクル部材収容空間11を有する。既に説明した様に、側壁11fの内面にはそれぞれ溝11aが形成されており、この溝11aにレセプタクル部材20の外壁に形成された突起21eが嵌りこむ。収容空間11の奥端には平坦な当接面11bが形成されている。レセプタクル部材20とこのフレーム10を組み立てる際に、レセプタクル部材20の段差22eに盛られたエラストマーがこの当接面に押し付けられ、潰れることで、エラストマーの弾性体の機能を発揮利用することができる。側壁11fの外面には、ケージ111と光トランシーバ1との間の係合状態を解除するためのベール(不図示)を回転させるための機構である、孔11eと溝11dが形成されている。
【0025】
第1部位10aと第2部位10bとの境界には、光サブアセンブリ30、40のスリーブ部30b、40bを保持するための鞍部12c(送信光サブアセンブリ用の鞍部については壁11fに隠れて見えない)が、面11bに連続して形成されている。さらに、光サブアセンブリ30、40の本体部を収納するための凹部12d、12eが、それぞれ鞍部12cに連続して形成されている。第2部位10bの外壁11fに形成されている構造12a、12bは、第1部位10aの外壁11fに取り付けられるベールに連動して動作するラッチ解除片が収納される溝である。
【0026】
第3部位10cには回路基板50が搭載される。第3部位10cは主面13a、当該主面13aに対してザグリ加工された窪み13b、及び主面13aの両辺に形成された突起13cを有する。回路基板50は、両辺に切り込みを備えており、その切り込みを突起13cに係合させつつ、回路基板50の主面を、側壁上の段差13eに載せることで、回路基板50はフレーム10に対して固定される。一方、回路基板50の前端を第2部位10bの両側壁の後端に突き当てることで、回路基板50の前後方向の位置を規定することができる。窪み13bは回路基板50上に搭載されたICを収納する。段差13eの高さと窪み13bの深さ、及び当該窪み13bに収納されるICの厚さを補償する様な厚さの放熱シートを、この窪み13b内に埋め込んでおくことで、ICからフレーム10への放熱経路を確保することができる。
【0027】
第3部位10cと第4部位10dの境界部には、第4部位10dの両外壁に連続して柱14cが形成されている。カバー60の後端面に形成されたフィンガ60i(図4にて後述)をこのポスト14cに突き当て、さらに、フィンガ60iの先端部で段差13eに搭載されている回路基板50を押し付けて固定する。さらに、第4部位10dは、両側壁14bに囲まれた平坦部14aを有しており、この平坦部14aに平行となる様に、回路基板50の後端に形成されたプラグコネクタが収納される。
【0028】
図4は本発明によるカバー60の斜視図である。カバー60は一枚のステンレス板を切断、折り曲げ加工により形成したものである。図4で右方が光トランシーバ1の前方側に相当する。カバー60の側壁部は切れ込み60dを挟んで二つの部分に分けられる。先方側の側壁60jには開口60cが形成されており、この開口60cはフレーム10の第1部位20aの外面に形成された突起11cにはめ込まれる。一方、後方側の側壁60lも二つの開口60a、60bを有しており、それぞれフレーム10に形成された突起13f、12fにはめ込まれる。
【0029】
本発明に係る実施形態では、従来の図9に示したフィンガ80hは廃止される。これにより、従来のフィンガ80hを形成するときに生じる貫通孔からの電磁放射の漏れをなくすようにしている。また、カバー60と回路基板50との間には、後述する基板保持部品(後述の図5、図6に示す)が配置される。カバー60は、基板保持部品を介して回路基板50を押圧し、固定される。
すなわち、回路基板50は、フレーム10の側壁の段差13eにその主面が搭載されると同時に、基板保持部品を介してカバー60により押し付けられる。これにより回路基板50は、段差13eに押し付けられて固定される。またこのとき、カバー60の後端に形成されたフィンガ60iは、回路基板50をフレーム10に対して押し付けている。
【0030】
カバー60の後方端に形成された折り曲げ片60eは、光トランシーバ1を正規な方向とは天地を逆にしてケージ111に挿入した際に、この折り曲げ片60eがコネクタの前端に接触して、電気プラグがコネクタに挿入されるのを防ぐ。一方、前方側には溝60gが形成されており、この溝60gによりカバー60の機械的強度が増強される。また、カバー60の前方側には複数のフィンガ60fを有している。フィンガ60fは、カバー60にU字状のスリットを形成し、スリットに囲まれた部分を光トランシーバの内側に向けて撓ませて形成されている。フィンガ60fが、カバー60とフレーム10とを組み立てた際に、レセプタクル部材20の面22fに複数個所で接触することで、レセプタクル部材20とカバー60との導通を確実に確保することができる。
【0031】
図5は、基板保持部品を使用した光トランシーバの組み立て構成を説明するための図である。また、図6は、基板保持部品の構成例を示す斜視図で、図6(A)は基板保持部品全体の斜視図、図6(B)は基板保持部品が備える弾性要素部の拡大斜視図である。
基板保持部品70は、フレーム10を搭載した回路基板50の上に配置され、その上からカバー60が装着される。これにより、基板保持部品70は、回路基板50とカバー60との間に配置される。光トランシーバ1は小型でその内部は狭く、回路基板50も小さなものとなっている。従って基板保持部品70は、回路基板50の外周に沿った形状を備えるようにし、これにより回路基板50上の配線パターンと直接接触することなく、回路基板50に実装された電子部品と干渉しないようにし、かつ、回路基板50を均一に押しつけるようになっている。
【0032】
基板保持部品70を回路基板50上に配置して、カバー60をフレーム10に装着すると、基板保持部品70は、回路基板50との接触面の直交方向からカバー60によって押圧され、回路基板50をフレーム10側に押しつける。基板保持部品70は、複数(この例では4つ)の弾性要素部71を備えている。基板保持部品70の弾性要素部71は、カバー60による押しつけに対して変形可能であり、かつ、その弾性力によって回路基板50をフレーム10に押しつけるように作用する。基板保持部品70は、樹脂成形品によって形成することができ、弾性要素部71もその樹脂成形品に一体的に設けることができる。
【0033】
上記の基板保持部品70の構成によって、従来の光トランシーバにおける低コストかつ簡便な組立性を損なうことなく内部の回路基板50を保持することができ、かつカバー60の切り込みを廃止して電磁放射の漏れを抑えることができるようになる。
【0034】
図7は本発明に係る光トランシーバの組み立て完了図である。図7の光トランシーバ1の下面側はフレーム10の底面が露出している。そのため、図8に示すような放熱フィン付のケージ111にこの光トランシーバ1の天地を逆転して挿入した際に、光サブアセンブリが直接にフレーム10中のそれぞれの収納部にその底面を密着して搭載されているので、効率的な放熱経路がフレーム10に対して確保される。さらに、このフレーム10の底面がケージ111の放熱フィンに接触することで、光サブアセンブリ30、40が発した熱は容易に光トランシーバ1の外に放熱することができる。また、カバー60からの電磁放射の漏れを抑えて、高速通信に対しても安定した通信品質を維持することができるようになる。
【0035】
また、フレーム10が金属ダイキャストにより形成されているので、光トランシーバ1のケージ111への挿抜時に、ケージの放熱フィンとの間の接触によりスムーズな挿抜が実現できない場合でも、光トランシーバ1の本体、特に回路基板あるいは光サブアセンブリ30、40に対して機械的歪みを及ぼすことが避けられる。また、本発明に係る各部材の構造においては、全ての組み立てが、いわゆる嵌め込み(Fitting)により行うことができるので、組み立て工程が簡略化され製造コストを低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る光トランシーバの一実施形態の分解組立図である。
【図2】本発明に係る光トランシーバのレセプタクル部材の構成例を説明するための斜視図である。
【図3】本発明に係る光トランシーバのフレームを前方側から俯瞰した斜視図である。
【図4】本発明に係る光トランシーバのカバーの斜視図である。
【図5】本発明に係る基板保持部品を使用した光トランシーバの組み立て構成を説明するための図である。
【図6】本発明に係る基板保持部品の構成例を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る光トランシーバの一実施形態の組み立て完了図である。
【図8】XFP型光トランシーバがホスト基板上に搭載されて用いられる時の様子を示す図である。
【図9】従来の光トランシーバに備えられるカバーを示す図である。
【符号の説明】
【0037】
1…光トランシーバ、10…フレーム、10a…第1部位、10b…第2部位、10c…第3部位、10d…第4部位、11…レセプタクル部材収容空間、11a…溝、11b…当接面、11c…突起、11d…溝、11e…孔、11f…側壁、11f…端面、121…電気プラグ、12a…構造、12c…鞍部、12d…凹部、13a…主面、13c…突起、13e…段差、13f…突起、14a…平坦部、14b…両側壁、14c…柱、20…レセプタクル部材、20a…第1部位、20b…第2部位、20c…フランジ、20d…中央隔壁、20e…突起、21a…開口、21a…送信用光レセプタクル、21b…受信用光レセプタクル、21e…突起、22a…開孔、22e…段差、22f…面、30…光サブアセンブリ、30a…本体部、30b…スリーブ部、30c…リード、40…受信光サブアセンブリ、50…回路基板、60…カバー、60a…開口、60c…開口、60e…折り曲げ片、60f…フィンガ、60g…溝、60h…フィンガ、60i…フィンガ、60j…側壁、60l…側壁、70…基板保持部品、71…弾性要素部、80…カバー、80a…開口、80c…開口、80h…フィンガ、80i…フィンガ、80j…側壁、80l…側壁、101…ホスト基板、102…ベゼル、103…コネクタ、111…ケージ、112…開口、113…ヒートシンク、114…クリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を電気信号に変換する光受信部、および電気信号を光信号に変換して出力する光送信部を動作させるための電子回路を搭載した回路基板と、前記回路基板を搭載するフレームと、前記フレームに装着するカバーとを備えた光トランシーバに使用する回路基板保持部品であって、
前記カバーと前記回路基板との間に配置され、前記カバーが前記フレームに装着されたときに前記カバーに接触し、前記カバーからの押圧力を受けて弾性変形する弾性要素部を備え、前記回路基板との接触領域は、回路基板の外周に沿った形状を有することを特徴とする回路基板保持部品。
【請求項2】
信号を電気信号に変換する光受信部、および電気信号を光信号に変換して出力する光送信部を動作させるための電子回路を搭載した回路基板と、前記回路基板を搭載するフレームと、前記フレームに装着するカバーと、請求項1に記載の回路基板保持部品とを備えたことを特徴とする光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−129667(P2010−129667A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300983(P2008−300983)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】