説明

光ハイブリッド回路、光受信機及び光受信方法

【課題】光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるようにした光ハイブリッド回路、光受信機及び光受信方法を実現する。
【解決手段】光ハイブリッド回路1を、8PSK又はD8PSK信号光を、一対の第1光信号、一対の第2光信号、一対の第3光信号及び一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラ2と、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、一の光信号を直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラ3と、他の光信号を45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラ4と、他の光信号を135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラ5と、第1光カプラ、第2光カプラ及び第3光カプラが接続される出力チャネルの少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域6〜8とを備えるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ハイブリッド回路、光受信機、光送受信機及び光受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光伝送システムにおける伝送容量を増大するために、100Gbit/sに及ぶ高ビットレートを有する光伝送システムが研究開発されている。
このような高ビットレートの光信号を伝送するための最も有力な光変調方式として多値位相変調方式が活発に研究されている。
例えば、四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)方式又は差分四位相偏移変調(DQPSK:Differential Quadrature Phase Shift Keying)方式がある。これにより、2ビットの信号を送信することが可能となり、二位相偏移変調(BPSK:Binary Phase Shift Keying)方式又は差分二位相偏移変調(DBPSK:Differential Binary Phase Shift Keying)方式と比べ、伝送容量を2倍に増大させる、あるいは、同じ伝送容量を得るためのビットレートを半減させることができる。
【0003】
最近、伝送容量を更に増大させることができる変調方式として、八位相偏移変調(8PSK:Eight Phase Shift Keying)方式又は差分八位相偏移変調(D8PSK:Differential Eight Phase Shift Keying)が研究されている。これにより、3ビットの信号を送信することが可能となり、BPSK又はDBPSKと比べ、伝送容量を3倍に増大させる、あるいは、同じ伝送容量を得るためのビットレートを1/3に低減させることができる。
【0004】
このような8PSK方式又はD8PSK方式によって変調された信号光を復調するためには、45度ハイブリッドを含むコヒーレント光受信機が必要となる。ここで、45度ハイブリッドは、8PSK信号光又はD8PSK信号光の位相変調状態により、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態を示すものであり、コヒーレント光受信機において最も重要な構成要素である。
【0005】
例えば、45度ハイブリッドとしては、例えば図21に示すように、2つの1:4カプラ(6dBカプラ)100,101及び4つの2:2カプラ(3dBカプラ)102〜105によって構成したものがある。
なお、図21中、Iは、同相関係、即ち、位相関係図においてI軸(0度軸)上に位置する位相関係を示す。また、図21中、Qは、直交位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して90度ずれた位相関係[Q軸(90度軸)上に位置する位相関係]を示す。さらに、図21中、I+Qは、45度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して45度ずれた位相関係を示す。また、図21中、I−Qは、135度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して135度ずれた位相関係を示す。
【0006】
図21に示すような45度ハイブリッドでは、一方の1:4カプラ100の入力チャネルに8PSK信号光が入力され、他方の1:4カプラ101の入力チャネルにLO光が入力される。
そして、2つの1:4カプラ100,101のそれぞれの一方の側(図21中、上側)から1番目に位置する出力チャネルから同相関係(In-phase)を示す一対の光信号(図21中、Iで示す)が出力される。
【0007】
また、2つの1:4カプラ100,101のそれぞれの一方の側(図21中、上側)から2番目に位置する出力チャネルから直交位相(Quadrature)関係を示す一対の光信号(図21中、Qで示す)が出力される。
また、2つの1:4カプラ100,101のそれぞれの一方の側(図21中、上側)から3番目に位置する出力チャネルから45度位相関係を示す一対の光信号(図21中、I+Qで示す)が出力される。
【0008】
また、2つの1:4カプラ100,101のそれぞれの一方の側(図21中、上側)から4番目に位置する出力チャネルから135度位相関係を示す一対の光信号(図21中、I−Qで示す)が出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−177759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、図21に示すような45度ハイブリッドでは、同相関係を示す一対の光信号は、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。同様に、直交位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。また、45度位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。135度位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。
【0011】
このため、図21に示すような45度ハイブリッドは、1:4カプラ100,101と2:2カプラ102〜105との間で光導波路が交差する領域を必ず含むため、この交差領域での過剰損失を伴うことになる。
そこで、45度ハイブリッドの内部において光導波路が交差する領域ができないようにしたい。
【0012】
この場合、45度ハイブリッドを、例えば図22に示すように、1つの8:8多モード干渉(MMI:Multimode Interference)カプラ106によって構成することが考えられる。
なお、図22中、Iは、同相関係、即ち、位相関係図においてI軸(0度軸)上に位置する位相関係を示す。また、図22中、Qは、直交位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して90度ずれた位相関係[Q軸(90度軸)上に位置する位相関係]を示す。さらに、図22中、I+Qは、45度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して45度ずれた位相関係を示す。また、図22中、I−Qは、135度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して135度ずれた位相関係を示す。
【0013】
ここで、8:8MMIカプラ106を用いて45度ハイブリッド動作を得るためには、8:8MMIカプラ106の入力側の8つのチャネルのうち、非対称な位置にある2つのチャネルを、8PSK信号光及びLO光を入力するための入力チャネルとして選択することになる。これにより、8:8MMIカプラ106のMMI領域内部のモード干渉作用によって必然的に45度ずつ異なる位相関係が得られるため、45度ハイブリッドとして用いることが可能となる。
【0014】
図22に示すような45度ハイブリッドでは、8つの出力チャネルのうち一方の側(図22中、上側)から1番目に位置する出力チャネル及び8番目に位置する出力チャネルから同相関係を示す一対の光信号(図22中、Iで示す)が出力される。
また、8つの出力チャネルのうち一方の側(図22中、上側)から2番目に位置する出力チャネル及び7番目に位置する出力チャネルから直交位相関係を示す一対の光信号(図22中、Qで示す)が出力される。
【0015】
また、8つの出力チャネルのうち一方の側(図22中、上側)から3番目に位置する出力チャネル及び6番目に位置する出力チャネルから45度位相関係を示す一対の光信号(図22中、I+Qで示す)が出力される。
また、8つの出力チャネルのうち一方の側(図22中、上側)から4番目に位置する出力チャネル及び5番目に位置する出力チャネルから135度位相関係を示す一対の光信号(図22中、I−Qで示す)が出力される。
【0016】
このため、図22に示すような45度ハイブリッドでは、図23に示すように、光電変換を行なうために各出力チャネルとバランスドフォトダイオード(BPD:Balanced Photodiode)とを接続する場合、これらを接続するための光導波路が交差してしまう。このため、この交差領域での過剰損失を伴うことになる。
つまり、通常、45度ハイブリッドから出力される光信号は、図23に示すように、光電変換を行なうためにBPDによって検出する。
【0017】
上述の図23に示すような45度ハイブリッドの場合、同相関係を示す一対の光信号が出力される2つの出力チャネルを、BPD107Aに接続し、直交位相関係を示す一対の光信号が出力される2つの出力チャネルを、BPD107Bに接続し、45度位相関係を示す一対の光信号が出力される2つの出力チャネルを、BPD107Cに接続し、135度位相関係を示す一対の光信号が出力される2つの出力チャネルを、BPD107Dに接続する必要がある。
【0018】
しかし、上述のように、図23に示すような45度ハイブリッドでは、同相関係を示す一対の光信号は、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。同様に、直交位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。また、45度位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。135度位相関係を示す一対の光信号も、空間的に離れている2つの出力チャネルから出力される。
【0019】
このため、図23に示すように、8:8MMIカプラ106の出力チャネルとBPD107A〜107Dとを接続する光導波路は必然的に交差してしまうことになる。したがって、光導波路が交差する領域で過剰損失が生じてしまうことになり、これは受信効率の低下につながる。
そこで、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるようにした光ハイブリッド回路、光受信機及び光受信方法を実現したい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
このため、本光ハイブリッド回路は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備え、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号及び同相関係にある一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラと、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラと、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラと、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ及び第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ及び第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラと、第1の2:2光カプラ、第2の2:2光カプラ及び第3の2:2光カプラが接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域とを備えることを要件とする。
【0021】
本光受信機は、上記の光ハイブリッド回路と、多モード干渉カプラから出力される第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかの光信号、第1の2:2光カプラから出力される第5光信号、第2の2:2光カプラから出力される第6光信号、及び、第3の2:2光カプラから出力される第7光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、フォトダイオードから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを要件とする。
【0022】
本光受信方法は、幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備える多モード干渉カプラを用いて、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を同相関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号及び同相関係にある一対の第4光信号に変換し、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域によって、一対の第1光信号、一対の第2光信号、一対の第3光信号、一対の第4光信号の少なくとも2つの一対の光信号間の位相差を制御し、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第1の2:2光カプラを用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換し、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第2の2:2光カプラを用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換し、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ及び第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第3の2:2光カプラを用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ及び第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換し、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかの光信号と、第5光信号と、第6光信号と、第7光信号とを受信することを要件とする。
【発明の効果】
【0023】
したがって、本光ハイブリッド回路、光受信機及び光受信方法によれば、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1(A)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。図1(B)は図1(A)に示す光ハイブリッド回路の各チャネルから出力される光の位相関係を示す位相関係図である。
【図2】図2(A)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する2:8MMIカプラによる作用を説明するための模式図である。図2(B)は図2(A)に示す2:8MMIカプラの各チャネルから出力される光の位相関係を示す位相関係図である。
【図3】図3(A)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する2:8MMIカプラ及び3つの2:2MMIカプラによる作用を説明するための模式図である。図3(B)は図3(A)に示す2:8MMIカプラ及び3つの2:2MMIカプラの各チャネルから出力される光の位相関係を示す位相関係図である。
【図4】図3(A)に示すような構成の光ハイブリッド回路における課題を説明するための図であって、45度ハイブリッドのΔψに対する相対出力強度(Transmittance)を示す図である。
【図5】図5(A),(B)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する位相シフタの構成を示す模式的平面図である。
【図6】図6(A)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する位相シフタとして幅狭テーパ導波路型位相シフタを用いた場合の|ΔWTP|と位相変化量Δθとの関係を示す図である。図6(B)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する位相シフタとして幅広テーパ導波路型位相シフタを用いた場合の|ΔWTP|と位相変化量Δθとの関係を示す図である。
【図7】第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する光半導体素子の構成を示す模式的断面図である。
【図8】第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する2:8MMIカプラの具体的な構成例を示す模式図である。
【図9】図9(A),(B)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する第1の2:2MMIカプラの具体的な構成例を示す模式図である。図9(C)は第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路を構成する第2及び第3の2:2MMIカプラの具体的な構成例を示す模式図である。
【図10】図10(A)は第1実施形態にかかる45度ハイブリッドの一の構成例におけるΔψに対する相対出力強度(Transmittance)を示す図である。図10(B)は8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドのΔψに対する相対出力強度(Transmittance)を示す図である。
【図11】図11(A)は第1実施形態にかかる45度ハイブリッドの一の構成例において、1番目の入力チャネルに信号光を入力した場合に8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の透過率(Transmittance)の波長依存性を示す図である。図11(B)は第1実施形態にかかる45度ハイブリッドの一の構成例において、2番目の入力チャネルに信号光を入力した場合に8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の透過率(Transmittance)の波長依存性を示す図である。
【図12】図12(A)は8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの一の構成例において、1番目の入力チャネルに信号光を入力した場合に8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の透過率(Transmittance)の波長依存性を示す図である。図12(B)は8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの一の構成例において、3番目の入力チャネルに信号光を入力した場合に8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の透過率(Transmittance)の波長依存性を示す図である。
【図13】図13(A)は第1実施形態にかかる45度ハイブリッドの一の構成例において、8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の位相ズレ量Δφの波長依存性を示す図である。図13(B)は8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの一の構成例において、8つの出力チャネル(Ch-1, Ch-2, Ch-3, Ch-4, Ch-5, Ch-6, Ch-7, Ch-8)から出力される光の位相ズレ量Δφの波長依存性を示す図である。
【図14】第1実施形態の一の変形例にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図15】第1実施形態の他の変形例にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図16】第1実施形態の他の変形例にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図17】図17(A),(B)は第1実施形態の他の変形例にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図18】第2実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図19】第3実施形態にかかる光ハイブリッド回路の構成を示す模式図である。
【図20】第4実施形態にかかる光受信機の構成を示す模式図である。
【図21】従来の45度ハイブリッドの課題を説明するための模式図である。
【図22】8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの構成を示す模式図である。
【図23】図22に示す45度ハイブリッドの課題を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面により、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路、光受信機、光送受信機及び光受信方法について説明する。
[第1実施形態]
まず、第1実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図1〜図13を参照しながら説明する。
【0026】
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、光伝送システム(光通信システム)において八位相偏移変調(8PSK)信号の位相変調情報を識別(復調)するために用いられる45度ハイブリッド回路(以下、45度ハイブリッドともいう)である。
本実施形態では、図1(A)に示すように、光ハイブリッド回路1は、前段の多モード干渉(MMI)カプラ2と、後段の3つの光カプラ3〜5とを備え、これらが従属接続されている。この光ハイブリッド回路1は、MMIカプラ2と3つの光カプラ3〜5とを備え、モノリシック集積化が可能な半導体光導波路構造を有する光半導体素子によって構成されている。
【0027】
なお、図1(A)中、Iは、同相関係、即ち、位相関係図においてI軸(0度軸)上に位置する位相関係を示す。また、Qは、直交位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して90度ずれた位相関係[Q軸(90度軸)上に位置する位相関係]を示す。さらに、I+Qは、45度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して45度ずれた位相関係を示す。また、I−Qは、135度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して135度ずれた位相関係を示す。また、図1(B)は、位相関係図であり、8PSK信号光とLO光との間の相対位相差に応じて出力される光信号の位相関係を示している。
【0028】
ここでは、前段のMMIカプラ2は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有する2:8MMIカプラである。
具体的には、対モード干渉(PI:Paired Interference)に基づく2:8MMIカプラである。つまり、2つの入力チャネルの中心は入力端の幅の上側から1/3及び2/3に位置し、8つの出力チャネルの位置も入力チャネルの位置に関連付けられており、MMI領域において(3s−1)次の高次モード(sは1以上の自然数)が励振されない2:8MMIカプラである。このため、素子長を短くすることができる。
【0029】
ここでは、本光ハイブリッド回路1では、MMIカプラによるモード干渉作用を用いている。
通常、MMIカプラのモード間干渉作用は、MMIカプラにおける屈折率、励振モード数及び干渉メカニズムなどに依存し、これにより、MMIカプラの出力信号における振幅関係及び位相関係が変化する。
【0030】
例えば図22に示すような8:8MMIカプラの場合、2つの入力チャネルを適切に選ぶことで、45度ハイブリッド動作が得られる。
ここで、8:8MMIカプラは一般モード干渉(GI:General Interference)に基づくものである。つまり、8つの入力チャネルの中心は、MMI導波路の中心対称性を崩さない範囲内で、MMI幅の1/3、1/2及び2/3の位置を除いた領域に位置し、MMI幅に応じた全てのモードが励振する8:8MMIカプラである。
【0031】
この場合、P等分岐特性(Pは1以上の整数)を得るための最短伝搬長zGIは、以下のようになる。
【0032】
【数1】

【0033】
ここで、Lπは、ビート長であり、0次モード及び1次モードにおける伝搬定数の差がπとなる長さを表している。
したがって、図22に示すような8:8MMIカプラの場合、8等分に分岐するための最短伝搬長zGIは3Lπ/8となる。
一方、例えば図1に示すようなPIに基づく2:8MMIカプラの場合、P等分岐特性を得るための最短伝搬長zPIは、以下のようになり、zPIはzGIの1/3の値となる。
【0034】
【数2】

【0035】
つまり、上記式(1)及び上記式(2)により、MMI幅Wが等しい場合、2:8MMIカプラは、8:8MMIカプラの1/3のMMI長を有することになる。
但し、図22及び図1に示すように、干渉メカニズムにより、出力チャネル位置は異なり、MMI幅Wが等しくても、入出力チャネルの最小間隔(Gap)、即ち、出力チャネルの間隔は等しくない。いずれのMMIカプラの場合もMMI長短縮のためにはMMI幅Wを小さくする必要があり、それにしたがって入出力チャネルの最小間隔も減少する。なお、通常、入出力チャネルの最小間隔は作製技術により制限されるパラメータである。
【0036】
通常、入出力チャネルの最小間隔はPIに基づくMMIカプラがGIに基づくMMIカプラよりも小さくなることから、入出力チャネルの最小間隔を一定にするためには、PIに基づくMMI幅WM28を増大する必要がある。
したがって、上記入出力チャネルの最小間隔を一定にした場合におけるzPIは、以下のように表される。
【0037】
【数3】

【0038】
つまり、入出力チャネルの最小間隔を一定にすると、PIによる短縮効果は3/4倍に減少する。いずれにせよ、PIに基づくMMIカプラは常にGIに基づくMMIカプラよりも短い相互作用長(伝搬長;MMI長)を有するため、コンパクトな素子(光分岐・結合素子)を形成するには有効である。
ところで、図2に示すように、2:8MMIカプラ2に8PSK信号光及びLO光を入力すると、同相関係にある4対の光信号が出力される。つまり、2:8MMIカプラ2の8つの出力チャネルのうち、図2中、上側から1番目及び2番目の2つの出力チャネルから同相関係(I)にある一対の第1光信号が出力される。また、2:8MMIカプラ2の8つの出力チャネルのうち、図2中、上側から3番目及び4番目の2つの出力チャネルから同相関係(I)にある一対の第2光信号が出力される。また、2:8MMIカプラ2の8つの出力チャネルのうち、図2中、上側から5番目及び6番目の2つのチャネルから同相関係(I)にある一対の第3光信号が出力される。また、2:8MMIカプラ2の8つの出力チャネルのうち、図2中、上側から7番目及び8番目の2つのチャネルから同相関係(I)にある一対の第4光信号が出力される。
【0039】
つまり、2:8MMIカプラ2の場合、8つの出力チャネルにおいて、8PSK信号光(S)の位相を基準にして、LO光(L)の位相が相対的にどのような関係になっているかを示すと、以下の関係(以下、第1の関係という)になっている。ここでは、S−LとS+Lは、180度ずれた位相関係になっていることを示している。
Ch−1→S+L
Ch−2→S−L
Ch−3→S−L
Ch−4→S+L
Ch−5→S+L
Ch−6→S−L
Ch−7→S−L
Ch−8→S+L
このため、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψが、0、πの場合(I成分)のみ識別可能であり、−π/2、+π/2の場合(Q成分)、−3π/4、+π/4の場合(I+Q成分)、+3π/4、−π/4の場合(I−Q成分)は識別することができない。
【0040】
したがって、2:8MMIカプラ2は、図2(B)の位相関係図に示すように、180度ハイブリッドとしては機能するものの、45度ハイブリッドとしては機能しない。例えばPIに基づく2:8MMIカプラのように、中心対称性を有する構造を持つ2:8MMIカプラ2を用いる場合、45度ハイブリッドとして動作させることは原理的に不可能である。
【0041】
一方、45度ハイブリッド動作を得るためには、8つの出力チャネルにおいて、8PSK信号光(S)とLO光(L)との間で以下の関係(以下、第2の関係という)が成り立つ必要がある。
Ch−1→S+L
Ch−2→S−L
Ch−3→S+jL
Ch−4→S−jL
Ch−5→S−(1+j)L
Ch−6→S+(1+j)L
Ch−7→S+(1−j)L
Ch−8→S−(1−j)L
ここでは、S−LとS+Lは、180度ずれた位相関係になっていることを示している。また、S+jLとS−jLは、S+LとS−Lに対して90度ずれた位相関係になっていることを示している。また、S−(1+j)LとS+(1+j)Lは、S+LとS−Lに対して45度ずれた位相関係になっていることを示している。また、S+(1−j)LとS−(1−j)Lは、S+LとS−Lに対して135度ずれた位相関係になっていることを示している。
【0042】
そこで、本実施形態では、図3(A)に示すように、後段の光カプラとして、3つの2:2光カプラ3〜5を設けている。つまり、2:8MMIカプラ2の4対の出力チャネルのうち、3対の出力チャネルのそれぞれに2:2光カプラ3〜5を接続している。
ここでは、2:8MMIカプラ2の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)に、2:2光カプラ(第1の2:2光カプラ)3が接続されている。また、2:8MMIカプラ2の出力側の上から5番目と6番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第3出力チャネル)に2:2光カプラ(第2の2:2光カプラ)4が接続されている。また、2:8MMIカプラ2の出力側の上から7番目と8番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第4出力チャネル)に2:2光カプラ(第3の2:2光カプラ)5が接続されている。
【0043】
ここで、2:2光カプラ3は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、50:50の分岐比を有する2:2光カプラである。
2:2光カプラ4は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、85:15の分岐比を有する2:2光カプラである。
2:2光カプラ5は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、85:15の分岐比を有する2:2光カプラである。
【0044】
本実施形態では、これらの3つの2:2光カプラ3〜5は、2:2MMIカプラである。なお、2:2MMIカプラ3〜5は、PIに基づくものであっても良いし、GIに基づくものであっても良い。
このように構成されるため、本光ハイブリッド回路1は、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有することになる。
【0045】
この光ハイブリッド回路1の入力側の一のチャネル、即ち、2:8MMIカプラ2の入力側の一のチャネルには、8PSK信号光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路1の入力側の一のチャネルは、8PSK信号光を入力するための入力チャネルである。また、光ハイブリッド回路1の入力側の他のチャネル、即ち、2:8MMIカプラ2の入力側の他のチャネルには、局部発振(LO)光が入力される。つまり、光ハイブリッド回路1の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するための入力チャネルである。
【0046】
そして、図2(A),(B)に示すように、2:8MMIカプラ2によって、8PSK信号光が同相(In-phase)関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号、及び、同相関係にある一対の第4光信号に変換される。つまり、8PSK信号光が、直交位相成分(Q成分)を含まず、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号、直交位相成分を含まず、同相成分のみを含む一対の第2光信号、直交位相成分を含まず、同相成分のみを含む一対の第3光信号、直交位相成分を含まず、同相成分のみを含む一対の第4光信号に変換される。
【0047】
なお、同相関係にある一対の光信号、即ち、同相成分のみを含む一対の光信号は、位相が180度ずれた一対の光信号である。つまり、同相関係にある一対の光信号は、位相関係図において、I軸(0度軸)上に位置する。
なお、図2(A)中、Iは、同相関係、即ち、位相関係図においてI軸(0度軸)上に位置する位相関係を示す。また、図2(B)は、位相関係図であり、8PSK信号光とLO光との間の相対位相差に応じて出力される光信号の位相関係を示している。
【0048】
ここでは、一対の第1光信号は、2:8MMIカプラ2の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)、即ち、光ハイブリッド回路1の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルから出力される。なお、一対の第1出力チャネルから出力される一対の第1光信号は、同相関係にある一対の第1光信号である。一対の第1出力チャネルから出力される一対の第1光信号によって、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψが0、πであることを識別することができる。このため、同相関係にある一対の第1光信号は、8PSK信号光の同相成分(I成分)を識別しうる一対の光信号である。
【0049】
また、一対の第2光信号は、図3(A)に示すように、2:8MMIカプラ2の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)から出力され、2:2MMIカプラ3の入力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルに入力される。
また、一対の第3光信号は、2:8MMIカプラ2の出力側の上から5番目と6番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第3出力チャネル)から出力され、2:2MMIカプラ4の入力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルに入力される。
【0050】
また、一対の第4光信号は、2:8MMIカプラ2の出力側の上から7番目と8番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第4出力チャネル)から出力され、2:2MMIカプラ5の入力側の上から1番目と2番目の2つのチャネルに入力される。
次いで、図3(A),(B)に示すように、2:2MMIカプラ3によって、一対の第2光信号が、一対の第1光信号に対して直交位相関係にある一対の第5光信号に変換される。つまり、同相成分(I成分)のみを含む一対の第2光信号が、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第5光信号に変換される。そして、一対の第5光信号は、2:2MMIカプラ3の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル、即ち、光ハイブリッド回路1の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネルから出力される。
【0051】
なお、直交位相関係にある一対の光信号とは、同相関係にある一対の光信号に対して、位相が90度進んでいる一対の光信号(又は位相が90度遅れている一対の光信号)である。つまり、直交位相関係にある一対の光信号は、位相関係図において、I軸に直交するQ軸(90度軸)上に位置する。また、直交位相関係にある一対の第5光信号によって、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψが−π/2、+π/2であることを識別することができる。このため、直交位相関係にある一対の第5光信号は、8PSK信号光の直交位相成分(Q成分)を識別しうる一対の光信号である。
【0052】
また、2:2MMIカプラ4によって、一対の第3光信号が、一対の第1光信号に対して45度位相関係にある一対の第6光信号に変換される。つまり、同相成分のみを含む一対の第3光信号が、45度位相成分のみを含む一対の第6光信号に変換される。そして、一対の第6光信号は、2:2MMIカプラ4の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル、即ち、光ハイブリッド回路1の出力側の上から5番目と6番目の2つのチャネルから出力される。
【0053】
なお、45度位相関係にある一対の光信号とは、同相関係にある一対の光信号に対して、位相が45度進んでいる一対の光信号である。つまり、45度位相関係にある一対の光信号は、位相関係図において、I軸に対して45度の角度をなす45度軸上に位置する。また、45度位相関係にある一対の第6光信号によって、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψが−3π/4、+π/4であることを識別することができる。このため、45度位相関係にある一対の第6光信号は、8PSK信号光の45度位相成分(I+Q成分)を識別しうる一対の光信号である。
【0054】
また、2:2MMIカプラ5によって、一対の第4光信号が、一対の第1光信号に対して135度位相関係にある一対の第6光信号に変換される。つまり、同相成分のみを含む一対の第2光信号が、135度位相成分のみを含む一対の第7光信号に変換される。そして、一対の第7光信号は、2:2MMIカプラ5の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル、即ち、光ハイブリッド回路1の出力側の上から7番目と8番目の2つのチャネルから出力される。
【0055】
なお、135度位相関係にある一対の光信号とは、同相関係にある一対の光信号に対して、位相が135度進んでいる一対の光信号(又は位相が45度遅れている一対の光信号)である。つまり、135度位相関係にある一対の光信号は、位相関係図において、I軸に対して135度の角度をなす135度軸上に位置する。また、135度位相関係にある一対の第7光信号によって、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψが+3π/4、−π/4であることを識別することができる。このため、135度位相関係にある一対の第7光信号は、8PSK信号光の135度位相成分(I−Q成分)を識別しうる一対の光信号である。
【0056】
この場合、光ハイブリッド回路1の8つの出力チャネルのそれぞれから出力される信号光の出力強度比が、8PSK信号光の位相(0,π,−π/2,+π/2,+π/4,−3π/4,+3π/4,−π/4)に応じて異なるものとなる。
このため、光ハイブリッド回路1の出力側の上から1番目と2番目のチャネルから出力される一対の第1光信号によって、I成分(Δψ=0、π)を識別することができる。また、光ハイブリッド回路1の出力側の上から3番目と4番目のチャネルから出力される一対の第2光信号によって、Q成分(Δψ=−π/2、+π/2)を識別することができる。また、光ハイブリッド回路1の出力側の上から5番目と6番目のチャネルから出力される一対の第3光信号によって、I+Q成分(Δψ=−3π/4、+π/4)を識別することができる。また、光ハイブリッド回路1の出力側の上から7番目と8番目のチャネルから出力される一対の第4光信号によって、I−Q成分(Δψ=+3π/4、−π/4)を識別することができる。
【0057】
つまり、本光ハイブリッド回路1では、図3(A),(B)に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(I)と、直交位相関係にある一対の第5光信号(Q)と、45度位相関係にある一対の第6光信号(I+Q)と、135度位相関係にある一対の第7光信号(I−Q)とが出力されることになる。
なお、図3(A)中、Iは、同相関係、即ち、位相関係図においてI軸(0度軸)上に位置する位相関係を示す。また、Qは、直交位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して90度ずれた位相関係[Q軸(90度軸)上に位置する位相関係]を示す。さらに、I+Qは、45度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して45度ずれた位相関係を示す。また、I−Qは、135度位相関係、即ち、位相関係図においてI軸に対して135度ずれた位相関係を示す。また、図3(B)は、位相関係図であり、8PSK信号光とLO光との間の相対位相差に応じて出力される光信号の位相関係を示している。
【0058】
このように、図3(A)に示すように、2:8MMIカプラ2の後段に2:2MMIカプラ3〜5を設けると、2:8MMIカプラ2から出力される上記第1の関係を満たす信号光とLO光との合成成分が、2:2MMIカプラ3〜5に入力され、干渉作用を経て出力されることになる。これにより、光ハイブリッド回路1の8つの出力チャネルのそれぞれから出力される成分が、上記第2の関係を満たすようになり、45度ハイブリッドとして機能することになる。
【0059】
但し、これは、2:8MMIカプラ2からの出力が上記第1の関係を満たすとともに、2:8MMIカプラ2の4対の出力チャネルのそれぞれにおける出力信号と2:2MMIカプラ3〜5との間に位相整合がとれていることが前提となる。
通常、PIに基づく2:8MMIカプラ2は同振幅で分岐する特徴を有するものの、同位相で分岐するものではない。実際、8等分に分岐する場合の4対の出力チャネルのそれぞれにおける出力チャネル間の相対位相差は、入力チャネルの位置に依存して大きく異なる。
【0060】
図3(A)に示すように、2:8MMIカプラ2の3対の出力チャネルのそれぞれに2:2MMIカプラ3〜5を接続する場合、2:8MMIカプラ2の3対の出力チャネルのそれぞれにおける出力チャネル間の相対位相差が、それぞれ、2:2MMIカプラ3〜5に位相整合することが必要である。位相整合条件を満足しなければ、特性が大幅に劣化し、45度ハイブリッドとして機能しなくなる。
【0061】
ここで、図4は、図3に示すような構成で8PSK信号光及びLO光を入力した場合の8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψに対する透過特性(出力強度比;相対出力強度;透過率;Transmittance)をチャネル毎に示している。なお、図4中、縦軸のa.u.はarbitrary unitである。
図4に示すように、出力チャネルにおける分岐比の関係から、I成分(Δψ=0,π)を除き、Q成分(Δψ=−π/2、+π/2)、(I+Q)成分(Δψ=−3π/4、+π/4)及び(I−Q)成分(Δψ=+3π/4、−π/4)は識別不能であることが分かる。これは、2:8MMIカプラ2の3対の出力チャネルのそれぞれにおける出力チャネル間の相対位相差が2:2光カプラ3〜5に位相整合していないことに起因する。このため、45度ハイブリッドとして機能させるためには、位相整合条件を満足することが必要である。
【0062】
そこで、本実施形態では、図1(A)に示すように、2:8MMIカプラ2と各2:2MMIカプラ3〜5との間に、特性劣化が生じないように位相を制御しうる位相制御領域6〜8を設けている。なお、2:8MMIカプラ2と第1の2:2MMIカプラ3との間に設けられる位相制御領域6を、第1の位相制御領域という。また、2:8MMIカプラ2と第2の2:2MMIカプラ4との間に設けられる位相制御領域7を、第2の位相制御領域という。また、2:8MMIカプラ2と第3の2:2MMIカプラ5との間に設けられる位相制御領域8を、第3の位相制御領域という。
【0063】
ここで、下記表1は、図1に示すような光ハイブリッド回路1の位相制御領域6〜8における位相整合条件を示している。
ここで、θは、位相変化量(回転角度表記)を表す。また、θ−θ[A,Bは2:8MMIカプラの出力チャネル番号(出力ポート番号)]は、2:8MMIカプラ2の一対の出力チャネルから出力され、位相制御領域6〜8によって位相を制御された光、即ち、2:2MMIカプラ3〜5に入力される光(一対の光信号)の相対的な位相差を表す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示すように、2:8MMIカプラ2の後段に2:2MMIカプラ3〜5を接続する場合、分岐比と関係なく、位相整合を取ることが必要となる。
具体的には、2:2MMIカプラ3の入力側の2つのチャネルに入力される光の位相差θ−θが+3π/8になるように、位相制御領域6において、2:8MMIカプラ2の3番目と4番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第2光信号)の位相を制御すれば良い。これにより、Q成分(Δψ=−π/2、+π/2)を識別することが可能となる。
【0066】
また、2:2MMIカプラ4の入力側の2つのチャネルに入力される光の位相差θ−θが+5π/8になるように、位相制御領域7において、2:8MMIカプラ2の5番目と6番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第3光信号)の位相を制御すれば良い。これにより、(I+Q)成分(Δψ=−3π/4、+π/4)を識別することが可能となる。
【0067】
また、2:2MMIカプラ5の入力側の2つのチャネルに入力される光の位相差θ−θが+7π/8になるように、位相制御領域8において、2:8MMIカプラ2の7番目と8番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第4光信号)の位相を制御すれば良い。これにより、(I−Q)成分(Δψ=+3π/4、−π/4)を識別することが可能となる。
【0068】
特に、(I−Q)成分(Δψ=+3π/4、−π/4)を識別できるようにするためには、位相整合量を最も大きくする必要がある。言い換えると、2:8MMIカプラ2の7番目と8番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第4光信号)の位相を制御するための位相制御領域8を設けないと、特性劣化の度合いが最も大きくなる。
【0069】
本実施形態では、各位相制御領域6〜8のそれぞれに位相シフタ9(9A,9B)が設けられている。なお、第1の位相制御領域6に設けられる位相シフタ9(9A,9B)を、第1の位相シフタという。また、第2の位相制御領域6に設けられる位相シフタ9(9A,9B)を、第2の位相シフタという。また、第3の位相制御領域6に設けられる位相シフタ9(9A,9B)を、第3の位相シフタという。
【0070】
ここで、図5(A),(B)は、位相制御領域6〜8で用いる位相シフタ9(9A,9B)の構造を示している。
図5(A)は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に狭くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に広くなる幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aを示している。これを幅狭テーパ導波路型位相シフタともいう。また、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。
【0071】
このような幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aを一対の出力チャネル(光導波路)の一方に設けた場合、その出力チャネルにおける伝搬定数は減少するため、相対的に位相が遅れることになる。つまり、幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aは、位相が遅れる方向へ光信号の位相をシフトさせる機能を有する。
一方、図5(B)は、導波路幅が入力端から長さ方向中間位置へ向けて直線的に広くなり、長さ方向中間位置から出力端へ向けて直線的に狭くなる幅広テーパ構造の位相シフタ9Bを示している。これを幅広テーパ導波路型位相シフタともいう。また、直線テーパ形状を有する幅テーパ導波路であるため、直線テーパ型導波路ともいう。
【0072】
このような幅広テーパ構造の位相シフタ9Bを一対の出力チャネル(光導波路)の一方に設けた場合、そのチャネルにおける伝搬定数は増大するため、相対的に位相が進むことになる。つまり、幅広テーパ構造の位相シフタ9Bは、位相が進む方向へ光信号の位相をシフトさせる機能を有する。
ここでは、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの入力端及び出力端の導波路幅をWとしている。なお、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの入力端及び出力端の導波路幅Wは、光導波路のテーパ導波路型位相シフタ9A,9B以外の部分の導波路幅と同一である。
【0073】
また、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの入力端又は出力端の導波路幅と長さ方向中間位置の導波路幅との差、即ち、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの導波路幅の変化量を、ΔWTP(ΔWTP>0)としている。このため、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの長さ方向中間位置の導波路幅は、それぞれ、W−ΔWTP、W+ΔWTPとなる。
【0074】
また、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの入力端又は出力端から長さ方向中間位置までの長さ、即ち、テーパ長を、LTPとしている。また、テーパ導波路型位相シフタ9A,9Bの入力端から出力端までの長さ、即ち、位相シフタ長を、LPhaseとしている。
このように構成される位相シフタ9A,9Bのいずれか一方又は両方を、各位相制御領域6〜8のそれぞれに設けることで、上記の位相整合条件を満たすようにすることができる。
【0075】
ここでは、2:8MMIカプラ2の3番目と4番目の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路(一対の第2出力チャネル)のうち、いずれか一方の導波路幅をテーパ状に変化させることによって、幅狭テーパ構造又は幅広テーパ構造の位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。つまり、2:8MMIカプラ2の2:2MMIカプラ3が接続された一対の出力チャネルの一方に、テーパ状に幅が変化している導波路型位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。なお、2:8MMIカプラ2の3番目と4番目の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路のうち、一方の光導波路に幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aを設け、他方の光導波路に幅広テーパ構造の位相シフタ9Bを設けるようにしても良い。
【0076】
また、2:8MMIカプラ2の5番目と6番目の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路(一対の第3出力チャネル)のうち、いずれか一方の導波路幅をテーパ状に変化させることによって、幅狭テーパ構造又は幅広テーパ構造の位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。つまり、2:8MMIカプラ2の2:2MMIカプラ4が接続された一対の出力チャネルの一方に、テーパ状に幅が変化している導波路型位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。なお、2:8MMIカプラ2の5番目と6番目の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路のうち、一方の光導波路に幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aを設け、他方の光導波路に幅広テーパ構造の位相シフタ9Bを設けるようにしても良い。
【0077】
また、2:8MMIカプラ2の7番目と8番目の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路(一対の第4出力チャネル)のうち、いずれか一方の導波路幅をテーパ状に変化させることによって、幅狭テーパ構造又は幅広テーパ構造の位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。つまり、2:8MMIカプラ2の2:2MMIカプラ5が接続された一対の出力チャネルの一方に、テーパ状に幅が変化している導波路型位相シフタ9(9A,9B)を設ければ良い。なお、2:8MMIカプラ2の7番目と8番目の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2つの入力ポートとの間に形成される2つの光導波路のうち、一方の光導波路に幅狭テーパ構造の位相シフタ9Aを設け、他方の光導波路に幅広テーパ構造の位相シフタ9Bを設けるようにしても良い。
【0078】
但し、上記表1に示すように、2:8MMIカプラ2の出力チャネルによって位相整合条件が異なるため、一対の第3出力チャネル、一対の第4出力チャネル、一対の第5出力チャネルのそれぞれに設けられる位相シフタ9(9A,9B)の形状は異なるものとなる。
ここで、図6(A)は、図5(A)に示すような幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aの|ΔWTP|に対する位相変化量Δθを示しており、図6(B)は、図5(B)に示すような幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bの|ΔWTP|に対する位相変化量Δθを示している。
【0079】
ここでは、W、LTP、LPhaseは、それぞれ、2μm、50μm、100μmに設定している。なお、W、LTP、LPhaseは、特に制限されない値であり、状況に応じて自由に設定することも可能である。
図6(A),(B)に示すような関係を用いて、上記表1に示すような位相整合条件を満足するように、各位相制御領域6〜8に設けられる位相シフタ9(9A,9B)の形状を決定すれば良い。
【0080】
ここで、下記表2は、位相整合条件を満たすための位相シフタ(PS;Phase Shifter)9(9A,9B)の設定例である。
【0081】
【表2】

【0082】
まず、表2中、例1では、位相シフタ9として幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aを用いる場合を示している。
表2中、例1では、2:8MMIカプラ2の4番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の3番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ3の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aは設けていない。
【0083】
そして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aによって、2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ3の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、3π/8だけ遅れる(−3π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ3の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+3π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0084】
また、表2中、例1では、2:8MMIカプラ2の6番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の5番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ4の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aは設けていない。
【0085】
そして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aによって、2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ4の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、5π/8だけ遅れる(−5π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ4の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+5π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0086】
また、表2中、例1では、2:8MMIカプラ2の8番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の7番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ5の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aは設けていない。
【0087】
そして、幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aによって、2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ5の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、7π/8だけ遅れる(−7π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ5の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+7π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0088】
次に、表2中、例2では、位相シフタ9として幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bを用いる場合を示している。
表2中、例2では、2:8MMIカプラ2の3番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ3の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の4番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bは設けていない。
【0089】
そして、幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bによって、2:2MMIカプラ3の1番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、3π/8だけ進む(+3π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ3の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+3π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0090】
また、表2中、例2では、2:8MMIカプラ2の5番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ4の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の6番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bは設けていない。
【0091】
そして、幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bによって、2:2MMIカプラ4の1番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、5π/8だけ進む(+5π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ4の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+5π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0092】
また、表2中、例2では、2:8MMIカプラ2の7番目(上側)の出力ポートと2:2MMIカプラ5の1番目(上側)の入力ポートとの間に形成される光導波路に幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bを設けている。なお、2:8MMIカプラ2の8番目(下側)の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2番目(下側)の入力ポートとの間に形成される光導波路には幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bは設けていない。
【0093】
そして、幅広テーパ導波路型位相シフタ9Bによって、2:2MMIカプラ5の1番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、7π/8だけ進む(+7π/8)ようにしている。これにより、2:2MMIカプラ5の入力側の2つのチャネルに入力される光の相対的な位相差θ−θが+7π/8になり、位相整合条件を満たすことができる。
【0094】
これにより、本光ハイブリッド回路1は、図1(A),(B)に示すように、同相関係にある一対の第1光信号(I)と、直交位相関係にある一対の第5光信号(Q)と、45度位相関係にある一対の第6光信号(I+Q)と、135度位相関係にある一対の第7光信号(I−Q)とを出力することになり、確実に45度ハイブリッド動作が得られることになる。つまり、本光ハイブリッド回路1によって、8PSK信号光が、同相成分(I成分)のみを含む一対の第1光信号と、直交位相成分(Q成分)のみを含む一対の第5光信号と、45度位相成分(I+Q成分)のみを含む一対の第6光信号と、135度位相成分(I−Q成分)のみを含む一対の第7光信号とに変換され、確実に45度ハイブリッド動作が得られることになる。
【0095】
このように、本実施形態では、PIに基づく2:8MMIカプラ2の4対の出力チャネルのうち、いずれか一対の出力チャネルに分岐比50:50の2:2光カプラ3を接続し、いずれか2対の出力チャネルに分岐比85:15の2:2光カプラ4,5を接続し、2:8MMIカプラ2とこれらの2:2光カプラ3〜5との間に位相シフタ9(位相制御領域6〜8)を設けることで、位相変化量を適正化するようにしている。
【0096】
次に、本光ハイブリッド回路を構成する光半導体素子の具体的な構成例について、図7〜図9を参照しながら説明する。
本光ハイブリッド回路1は、図7に示すように、InP基板10上に、GaInAsPコア層11、InPクラッド層12を備え、ハイメサ導波路構造を有する光半導体素子13である。
【0097】
このようなハイメサ導波路構造は、比屈折率差Δnが高い高比屈折率差導波路構造である。このような高比屈折率差導波路構造を用いると、素子サイズのコンパクト化に有利である。そして、本実施形態では、光導波路を交差させる必要がないため、このようなハイメサ導波路構造を用いて素子サイズのコンパクト化を図りながら、過剰損失を防ぐことができる。
【0098】
これに対し、図21に示すような45度ハイブリッドは、1:4カプラ100,101と2:2カプラ102〜105との間で光導波路が交差する領域を必ず含むため、この交差領域での過剰損失を伴うことになる。特に、光導波路の比屈折率差Δnが大きくなればなるほど、過剰損失は顕著になる。このため、ハイメサ導波路構造のような高Δn導波路構造を用いると、素子サイズのコンパクト化に有利であるものの、過剰損失の面では不利である。
【0099】
ここでは、本光ハイブリッド回路1に含まれる2:8MMIカプラ2は、以下のように設定されている。
つまり、2:8MMIカプラ2は、図8に示すように、2:8MMIカプラ2のMMI領域の幅(MMI幅)をWM28として、2つの入力チャネル(入力導波路)を、それぞれ、その中心がMMI幅WM28の上側から1/3及び2/3に位置するように設けている。
【0100】
また、8つの出力チャネル(出力導波路;Ch−1〜Ch−8)を、次のように設けている。つまり、上から1番目と2番目の出力チャネル(Ch−1,Ch−2)の中間位置がMMI幅WM28の上側から1/8に位置するようにしている。また、上から1番目と2番目の出力チャネルの中間位置と上から3番目と4番目の出力チャネル(Ch−3,Ch−4)の中間位置との間隔、上から3番目と4番目の出力チャネルの中間位置と上から5番目と6番目の出力チャネル(Ch−5,Ch−6)の中間位置との間隔、及び、上から5番目と6番目の出力チャネルの中間位置と上から7番目と8番目の出力チャネル(Ch−7,Ch−8)の中間位置との間隔がいずれもMMI幅WM28の1/4にしている。また、上から7番目と8番目の出力チャネルの中間位置がMMI幅WM28の下側から1/8に位置するようにしている。さらに、1番目と2番目の出力チャネルの間隔(gap)、3番目と4番目の出力チャネルの間隔(gap)、5番目と6番目の出力チャネルの間隔(gap)、7番目と8番目の出力チャネルの間隔(gap)は、いずれもMMI幅WM28の1/12にしている。
【0101】
なお、図8中、S−LとS+Lは、180度ずれた位相関係になっていること、即ち、同相関係にある一対の光信号が出力されることを示している。
例えば、2:8MMIカプラ2は、入出力チャネルの最小間隔、即ち、2つの出力チャネルの間隔(WM28/12)を3.0μmとし、入力チャネル及び出力チャネルの導波路幅(入出力導波路幅)Wを例えば2.0μmとし、単一モード条件を満たすようにする。そうすると、MMI幅WM28は36μmに決まる。この場合、2:8MMIカプラ2の長さLM28は451μmになる。
【0102】
また、2:2MMIカプラ3(分岐比50:50)は、以下のように設定されている。
つまり、2:2MMIカプラ3をPIに基づくものとする場合、図9(B)に示すように、2:8MMIカプラ2のMMI幅WM28を基準として、2つの入力チャネル(入力導波路)を、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/12に位置するように設ける。また、2つの出力チャネル(出力導波路)も、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/12に位置するように設ける。さらに、2つの入出力チャネルの間隔(gap)は、いずれも、WM28/12にしている。このため、2:2MMIカプラ3のMMI領域の幅(MMI幅)WM22−SはWM28/4となる。
【0103】
一方、2:2MMIカプラ3をGIに基づくものとする場合、図9(A)に示すように、2:8MMIカプラ2のMMI幅WM28を基準として、2つの入力チャネル(入力導波路)を、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/12以外に位置し、中心対称性を有するように設ける。つまり、2つの入力チャネルは、それぞれ、その中心がMMI領域の側面から距離K(0以上の任意の実数、但し、K=WM28/12は除く)に位置するように設ける。また、2つの出力チャネル(出力導波路)も、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/12以外に位置するように設ける。つまり、2つの出力チャネルは、それぞれ、その中心がMMI領域の側面から距離K(0以上の任意の実数、但し、K=WM28/12は除く)に位置するように設ける。さらに、2つの入出力チャネルの間隔(gap)は、いずれも、WM28/12にしている。このため、2:2MMIカプラ3のMMI領域の幅(MMI幅)WM22−Sは2K+WM28/12となる。
【0104】
例えば、2:2MMIカプラ3をGIに基づく2:2MMIカプラとし、入出力チャネルの最小間隔、即ち、2つの入力チャネル及び2つの出力チャネルの間隔(WM28/12)を3.0μmとし、入力チャネル及び出力チャネルの導波路幅(入出力導波路幅)Wを例えば2.0μmとし、単一モード条件を満たすようにする。これにより、MMI幅WM22−Sは5.0μmに決まる。この場合、2:2MMIカプラ3の長さLM22−Sは105μmになる。
【0105】
また、2:2MMIカプラ4,5(分岐比85:15)は、以下のように設定されている。
つまり、2:2MMIカプラ4,5は、図9(C)に示すように、2:8MMIカプラ2のMMI幅WM28を基準として、2つの入力チャネル(入力導波路)を、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/24に位置するように設ける。また、2つの出力チャネル(出力導波路)も、それぞれ、その中心がMMI領域の側面からWM28/24に位置するように設ける。さらに、2つの入出力チャネルの間隔(gap)は、いずれも、WM28/12にしている。このため、2:2MMIカプラ4,5のMMI領域の幅(MMI幅)WM22−AはWM28/6となる。
【0106】
例えば、2:2MMIカプラ4,5は、入出力チャネルの最小間隔、即ち、2つの入力チャネル及び2つの出力チャネルの間隔(WM28/12)を3.0μmとし、入力チャネル及び出力チャネルの導波路幅(入出力導波路幅)Wを例えば2.0μmとし、単一モード条件を満たすようにする。これにより、MMI幅WM22−Aは6.0μmに決まる。この場合、2:2MMIカプラ4,5の長さLM22−Aは75μmになる。
【0107】
さらに、各位相シフタ9は、それぞれ、2:2MMIカプラ3〜5のそれぞれに入力する2つの信号成分間において位相整合をとるために、以下のように設定されている。
各位相シフタ9は、図5(A)に示すように、2:8MMIカプラ2の出力ポート及び2:2MMIカプラ3〜5の入力ポートに接続される部分の導波路幅Wを2.0μmとしている。また、2:8MMIカプラ2の出力ポート又は2:2MMIカプラ3〜5の入力ポートから長さ方向の中間位置までの距離LTPは、いずれも25μmとしている。つまり、2:8MMIカプラ2の出力ポートから長さ方向中間位置まで直線的に導波路幅が広くなる幅広テーパ部、及び、長さ方向中間位置から2:2MMIカプラ3〜5の入力ポートまで直線的に導波路幅が狭くなる幅狭テーパ部の長さ(テーパ長)は、いずれも25μmとしている。この場合、位相シフタ9(9A,9B)の長さLphaseは、50μmとなる。
【0108】
ここでは、位相制御領域6に設けられる位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の4番目の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ3の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、3π/8だけ遅れる(−3π/8)ようにしている。
【0109】
このため、位相制御領域6に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは、0.4μmとしている。この場合、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは、1.6μmとなる。
また、位相制御領域7に設けられる位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の6番目の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ4の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、5π/8だけ遅れる(−5π/8)ようにしている。
【0110】
このため、位相制御領域7に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは、0.6μmとしている。この場合、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは、1.4μmとなる。
また、位相制御領域8に設けられる位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の8番目の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ5の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、7π/8だけ遅れる(−7π/8)ようにしている。
【0111】
このため、位相制御領域8に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは、0.75μmとしている。この場合、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは、1.25μmとなる。
この場合、45度ハイブリッドの素子長LTot2(LM28+Lphase+LM22−S)は、606μmとなる。
【0112】
このように、光半導体素子13として構成される光ハイブリッド回路1は、以下のようにして作製される。
まず、図7に示すように、n型InP基板10上に、例えば有機金属気相成長(MOVPE;Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって、アンドープGaInAsPコア層11、アンドープInPクラッド層12を順にエピタキシャル成長させる。
【0113】
ここでは、アンドープGaInAsPコア層11は、発光波長1.30μm,層厚0.3μmである。また、アンドープInPクラッド層12は、層厚2.0μmである。なお、基板はアンドープInP基板であっても良い。また、クラッド層はp型ドープInPクラッド層であっても良い。
次に、上述のようにしてエピタキシャル成長を行なったウェハの表面上に、例えばSiO膜を例えば蒸着装置などによって成膜し、例えば光露光プロセスによって、光ハイブリッド回路を形成するための導波路パターンをパターニングする。
【0114】
次いで、このようにしてパターニングされたSiO膜をマスクとして、例えば誘導結合型プラズマ反応性イオンエッチング(ICP−RIE;Inductive Coupled Plasma-Reactive Ion Etching)などの方法でドライエッチングを行なう。これにより、例えば高さ3μm程度のハイメサ導波路ストライプ構造を形成する。
このような作製プロセスを経て、本光ハイブリッド回路1が完成する。
【0115】
ここで、図10(A)は、本45度ハイブリッド1の相対位相差Δψに対する透過特性(相対出力強度;Transmittance)を示しており、図10(B)は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド(図22参照)の相対位相差Δψに対する透過特性を示している。
なお、図10(A)、(B)は、相対位相差Δψが連続的に変化している場合における各出力チャネルの相対強度を示している。また、図10(A),(B)中、縦軸のa.u.はarbitrary unitである。
【0116】
ここでは、いずれの場合も入出力導波路の最小間隔(gap)を3.0μmに設定している。
そして、入出力導波路幅Wを2μmとすると、8:8MMIカプラのMMI幅WM88、2:8MMIカプラ2のMMI幅WM28は、それぞれ、24.0μm、36.0μmに決まる。
【0117】
また、GIに基づく2:2MMIカプラ3(分岐比50:50)のMMI幅WM22−S、2:2MMIカプラ4,5(分岐比85:15)のMMI幅WM22−Aは、それぞれ、5.0μm、6.0μmに決まる。
この場合、8:8MMIカプラの長さLM88、2:8MMIカプラ2の長さLM28、2:2MMIカプラ3の長さLM22−S、及び、2:2MMIカプラ4,5の長さLM22−Aは、それぞれ、602μm、451μm、105μm、75μmになる。
【0118】
また、本45度ハイブリッド1に備えられる各位相シフタ9(ここでは幅狭テーパ導波路型位相シフタ9A)のテーパ長LTP、位相シフタ長LPhaseは、それぞれ、25μm、50μmである。また、位相制御領域6に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは0.4μmであり、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは1.6μmである。また、位相制御領域7に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは0.6μmであり、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは1.4μmである。また、位相制御領域8に設けられる位相シフタ9の導波路幅の変化量ΔWTPは0.75μmであり、長さ方向中間位置の導波路幅W−ΔWTPは1.25μmである。
【0119】
この場合、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの素子長LTot1(=LM88)及び本45度ハイブリッドの素子長LTot2(=LM28+Lphase+LM22−S)は、それぞれ、602μm、606μmとなる。
図10(A)、(B)に示すように、いずれの場合も、相対位相差Δψに対する相対出力強度は正弦波関数的に変化する。
【0120】
図10(A)に示すように、本45度ハイブリッド1は、位相整合条件を満足することによって、図4に示す特性と比べて大幅に特性が改善することが分かる。
また、図10(A)、(B)に示すように、本45度ハイブリッド1は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドに比べ、各出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)における透過率のバラツキが小さく、挿入損失が小さいことが分かる。
【0121】
また、図10(B)に示すように、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドでは、1番目の出力チャネル(Ch−1)の出力強度変化と8番目の出力チャネル(Ch−8)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、2番目の出力チャネル(Ch−2)の出力強度変化と7番目の出力チャネル(Ch−7)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、3番目の出力チャネル(Ch−3)の出力強度変化と6番目の出力チャネル(Ch−6)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、4番目の出力チャネル(Ch−4)の出力強度変化と5番目の出力チャネル(Ch−5)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。
【0122】
この場合、3番目の出力チャネル(Ch−3)から出力される光信号と6番目の出力チャネル(Ch−6)から出力される光信号とは同相関係(I成分)にある。また、3番目及び6番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、2番目(Ch−2)及び7番目(Ch−7)の出力チャネルから出力される光信号は直交位相関係(Q成分)にある。また、3番目及び6番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、1番目(Ch−1)及び8番目(Ch−8)の出力チャネルから出力される光信号は45度位相関係(I+Q成分)にある。また、3番目及び6番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、4番目(Ch−4)及び5番目(Ch−5)の出力チャネルから出力される光信号は135度位相関係(I−Q成分)にある。
【0123】
これは、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドから出力される光信号を、光電変換のためにフォトダイオード(BPD)へ入力させるために、24ヶ所に及ぶ光導波路の交差が避けられないことを意味する(図23参照)。このため、光導波路の交差による過剰損失が生じ、光受信効率が劣化する。
これに対し、図10(A)に示すように、本45度ハイブリッド1では、1番目の出力チャネル(Ch−1)の出力強度変化と2番目の出力チャネル(Ch−2)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、3番目の出力チャネル(Ch−3)の出力強度変化と4番目の出力チャネル(Ch−4)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、5番目の出力チャネル(Ch−5)の出力強度変化と6番目の出力チャネル(Ch−6)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。また、7番目の出力チャネル(Ch−7)の出力強度変化と8番目の出力チャネル(Ch−8)の出力強度変化とがx軸対称性を有することが分かる。
【0124】
この場合、1番目の出力チャネル(Ch−1)から出力される光信号と2番目の出力チャネル(Ch−2)から出力される光信号とは同相関係(I成分)にある。また、1番目及び2番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、3番目(Ch−3)及び4番目(Ch−4)の出力チャネルから出力される光信号は直交位相関係(Q成分)にある。また、1番目及び2番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、5番目(Ch−5)及び6番目(Ch−6)の出力チャネルから出力される光信号は45度位相関係(I+Q成分)にある。また、1番目及び2番目の出力チャネルから出力される光信号に対して、7番目(Ch−7)及び8番目(Ch−8)の出力チャネルから出力される光信号は135度位相関係(I−Q成分)にある。
【0125】
また、図1に示すように、本45度ハイブリッド1から出力される光信号を、光電変換のためにフォトダイオード(BPD)21A〜21Dへ入力させるために、光導波路を交差させる必要がないことを意味する。このため、過剰損失を防ぐことができる。
次に、図11(A)は、本45度ハイブリッド1において、2つの入力チャネルのうちの上側の入力チャネル(1番目の入力チャネル)から8PSK信号光を入力した場合の8つの出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)における透過率(Transmittance)の波長依存性(透過波長スペクトル)を示している。また、図11(B)は、本45度ハイブリッド1において、2つの入力チャネルのうちの下側の入力チャネル(2番目の入力チャネル)から8PSK信号光を入力した場合の8つの出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)における透過率(Transmittance)の波長依存性(透過波長スペクトル)を示している。なお、45度ハイブリッドの各パラメータは、上述の図10(A)、(B)の場合と同様である。
【0126】
図11(A)、(B)に示すように、本45度ハイブリッド1は、Cバンドの波長範囲において、低波長依存性を有する。また、本45度ハイブリッド1では、Cバンドの波長範囲において生じる損失の差が最大2.2dB程度に抑えられている。また、8PSK信号光の入力チャネルの位置を変えても、透過波長スペクトルの形状はほぼ同一である。
次に、図12(A)は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド(図22参照)において、8つの入力チャネルのうち、上側から1番目の入力チャネルから8PSK信号光を入力した場合の8つの出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)毎の透過率(Transmittance)の波長依存性(透過波長スペクトル)を示している。また、図12(B)は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド(図22参照)において、8つの入力チャネルのうち、上側から3番目の入力チャネルから8PSK信号光を入力した場合の8つの出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)毎の透過率(Transmittance)の波長依存性(透過波長スペクトル)を示している。なお、45度ハイブリッドの各パラメータは、上述の図10(A)、(B)の場合と同様である。
【0127】
図12(A)、(B)に示すように、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドの場合、Cバンドの波長範囲において生じる損失の差が最大4.2dB程度と比較的大きい。また、8PSK信号光を入力する入力チャネルの位置によって、透過波長スペクトルの形状が大きく異なるものとなる。
次に、図13(A)は、本45度ハイブリッド1における位相ズレ量Δφの波長依存性を示している。また、図13(B)は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド(図22参照)における位相ズレ量Δφの波長依存性を示している。なお、45度ハイブリッドの各パラメータは、上述の図10(A)、(B)の場合と同様である。
【0128】
なお、図13(A)、(B)では、8つの出力チャネル(Ch−1〜Ch−8)のそれぞれから出力される出力成分の絶対位相と基準位相との差分(位相ズレ量)Δφをプロットしている。ここで、基準位相は、図1(B)に示す位相関係図における、各チャネルのそれぞれから出力される出力成分の位相である。また、位相ズレ量は、この基準位相からの過剰位相ズレ量である。したがって、位相ズレ量は小さければ小さいほど良い。8PSK変調信号をエラーフリーで復調するためには、位相ズレが生じないことが望ましい。たとえ、位相ズレが発生しても最低限に抑える必要があり、通常、位相ズレ量Δφは±5度以下(好ましくは±2.5度以下)に抑えるのが望ましい。
【0129】
図13(A)、(B)に示すように、位相ズレ量を±5度以下に抑えたい場合、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド及び本45度ハイブリッド1における許容帯域幅は、それぞれ、13nm、32nmである。つまり、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドではCバンド領域の半分程度しかカバーすることができないのに対し、本45度ハイブリッド1ではCバンド領域のほぼ全体をカバーすることができる。
【0130】
このように、本45度ハイブリッド1は、8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドと比較して、図13(A)に示すように、位相ズレに対する動作帯域が広く、また、図11(A)、(B)に示すように、過剰損失に対する動作帯域も広い。つまり、本45度ハイブリッド1は、透過率及び位相ズレの波長依存性を低くすることができる。なお、45度ハイブリッドでは入出力導波路の最小間隔(gap)を大きくすると波長依存性が大きくなるが、本45度ハイブリッド1は、入出力導波路の最小間隔を変えても、常に8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッド(図22参照)よりも優れた振幅特性及び位相ズレ特性が得られる。
【0131】
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路1によれば、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるという利点がある。
特に、本光ハイブリッド回路1によれば、低波長依存性、低位相ズレ特性(動作波長の広帯域性)、低挿入損失であり、コンパクト化、及び、モノリシック集積化に適した45度ハイブリッドを実現できるという利点がある。
【0132】
なお、上述の実施形態では、前段のMMIカプラとして、2:8MMIカプラ2を用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。前段のMMIカプラは、八位相偏移変調信号光を、同相関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号、同相関係にある一対の第4光信号に変換するMMIカプラであれば良い。
【0133】
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路を構成する2:8MMIカプラ2に代えて、図14に示すように、入力側に8つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有し、中心対称性を有する構造を持つ8:8MMIカプラ2Aを用いても良い。例えば、8:8MMIカプラ2Aとしては、GIに基づく8:8MMIカプラであって、2つの入力チャネルが、MMI領域の中心軸対称性を崩さない範囲内で、MMI幅の1/3及び2/3の位置を除いた領域に位置し、MMI幅に応じて全てのモードが励振するものを用いれば良い。そして、8:8MMIカプラ2Aの入力側の8つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネル(一対の入力チャネル)に信号光及びLO光を入力するようにすることで、上述の実施形態の場合と同様に45度ハイブリッド動作が得られる。これにより、図22に示すような8:8MMIカプラを用いた45度ハイブリッドのようにフォトディテクタに接続するために光導波路を交差させる必要がなくなる。なお、図14では、上述の実施形態(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。
【0134】
ここでは、8:8MMIカプラ2Aの入力側の8つのチャネルのうち、上から2番目のチャネルと7番目のチャネルに信号光及びLO光を入力するようにしているが、1番目のチャネルと8番目のチャネルに信号光及びLO光を入力するようにしても良いし、3番目のチャネルと6番目のチャネルに信号光及びLO光を入力するようにしても良い。これにより、8:8MMIカプラ2Aは上述の実施形態の2:8MMIカプラ2と同様に180度ハイブリッドとして機能することになる。
【0135】
また、上述の実施形態では、後段の3つの光カプラ3〜5として、2:2MMIカプラを用いる場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。第1の光カプラ3は、第2光信号を、第1光信号に対して直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する光カプラであれば良い。また、第2の光カプラ4は、第3光信号を、第1光信号に対して45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する光カプラであれば良い。第3の光カプラ5は、第4光信号を、第1光信号に対して135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する光カプラであれば良い。
【0136】
例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路1を構成する第1〜第3の2:2MMIカプラ3〜5に代えて、図15に示すように、方向性結合器(例えば2:2方向性結合器)3A〜5Aを用いても良い。なお、図15では、上述の実施形態(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。また、例えば、上述の実施形態の光ハイブリッド回路1を構成する第1〜第3の2:2MMIカプラ3〜5に代えて、図16に示すように、二モード干渉カプラ(例えば2:2二モード干渉カプラ)3B〜5Bを用いても良い。なお、図16では、上述の実施形態(図1参照)と同一のものには同一の符号を付している。これらの場合も上述の実施形態のものと同様の効果が得られる。但し、作製トレランスや歩留まりを考慮するとMMIカプラを用いるのが好ましい。また、ここでは、上述の実施形態(図1参照)の変形例として説明しているが、これらの変形例を、前段のMMIカプラとして8:8MMIカプラを用いる変形例(図14参照)に適用することもできる。
【0137】
また、上述の実施形態では、第1の光カプラ3によって、同相関係にある一対の第2光信号を直交位相関係にある一対の第5光信号に変換し、第2の光カプラ4によって、同相関係にある一対の第3光信号を45度位相関係にある一対の第6光信号に変換し、第3の光カプラ5によって、同相関係にある一対の第4光信号を135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。
【0138】
本45度ハイブリッド1は、以下の表3に示す関係を満たす範囲で自由に構成を変更することができる。つまり、素子構造が変わっても、45度ハイブリッド特性が得られることに変わりはない。
【0139】
【表3】

【0140】
図1に示すように、本45度ハイブリッド1は、I成分を識別するために2:2光カプラを必要としない。このため、表3に示す2:2光カプラの接続位置に対する位相整合条件は、Q成分、I+Q成分及びI−Q成分のみに関係する。
つまり、本45度ハイブリッド1は、4対の出力チャネルのいずれかをI成分を識別するためのものとして設定し、残りの3対の出力チャネルに対して、表3に示す位相整合条件を満足するように、位相シフタ9のパラメータを適正化し、分岐比50:50の2:2光カプラ3と、2つの分岐比85:15の2:2光カプラ4,5とを接続すれば、2:2光カプラ3〜5の位置に依存せずに、それぞれ、Q成分、I+Q成分及びI−Q成分を識別できるようになり、45度ハイブリッドとして機能する。
【0141】
例えば、図17(A)に示すように、第1の光カプラ3によって、同相関係にある一対の第3光信号を直交位相関係にある一対の第5光信号[図17(A)中、Q]に変換し、第2の光カプラ4によって、同相関係にある一対の第2光信号を45度位相関係にある一対の第6光信号[図17(A)中、I+Q]に変換し、第3の光カプラ6によって、同相関係にある一対の第1光信号を135度位相関係にある一対の第7光信号[図17(A)中、I−Q]に変換するようにしても良い。
【0142】
この場合、第1の光カプラ3は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第3出力チャネルに接続することになる。また、第2の光カプラ4は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第2出力チャネルに接続することになる。また、第3の光カプラ5は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第1出力チャネルに接続することになる。
【0143】
具体的には、図17(A)に示すように、第1の2:2MMIカプラ3(分岐比50:50)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から5番目と6番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第3出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第1の2:2MMIカプラ3が接続された一対の第3出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域7(第2の位相制御領域;位相シフタ9;第2の位相シフタ)を設ける。
【0144】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の6番目の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ3の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、5π/8だけ遅れる(−5π/8)ようにしている。
【0145】
また、第2の2:2MMIカプラ4(分岐比85:15)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第2の2:2MMIカプラ4が接続された一対の第2出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域6(第1の位相制御領域;位相シフタ9;第1の位相シフタ)を設ける。
【0146】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の4番目の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ4の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、3π/8だけ遅れる(−3π/8)ようにしている。
【0147】
また、第3の2:2MMIカプラ5(分岐比85:15)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第3の2:2MMIカプラ5が接続された一対の第2出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域14(第4の位相制御領域;位相シフタ9;第4の位相シフタ)を設ける。
【0148】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の2番目の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ5の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、π/8だけ遅れる(−π/8)ようにしている。
【0149】
なお、位相制御領域14は、2:8MMIカプラ2の1番目と2番目の出力チャネルの一方(又は両方)から出力される光(一対の第1光信号)の位相を制御するための位相制御領域であり、第4の位相制御領域という。ここでは、位相制御領域14に位相シフタ9(9A,9B)が設けられている。この第4の位相制御領域14に設けられる位相シフタ9(9A,9B)を、第4の位相シフタという。位相制御領域14で用いる位相シフタ9(9A,9B)の構造は、上述の他の位相制御領域6〜8の場合と同様である[図5(A),(B)参照]。
【0150】
また、例えば、図17(B)に示すように、第1の光カプラ3によって、同相関係にある一対の第2光信号を直交位相関係にある一対の第5光信号[図17(B)中、Q]に変換し、第2の光カプラ4によって、同相関係にある一対の第1光信号を45度位相関係にある一対の第6光信号[図17(B)中、I+Q]に変換し、第3の光カプラ5によって、同相関係にある一対の第4光信号を135度位相関係にある一対の第7光信号[図17(B)中、I−Q]に変換するようにしても良い。
【0151】
この場合、第1の光カプラ3は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第2出力チャネルに接続することになる。また、第2の光カプラ4は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第1出力チャネルに接続することになる。また、第3の光カプラ5は、前段のMMIカプラ2の出力側の隣接する一対の第4出力チャネルに接続することになる。
【0152】
具体的には、図17(B)に示すように、第1の2:2MMIカプラ3(分岐比50:50)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から3番目と4番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第2出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第1の2:2MMIカプラ3が接続された一対の第2出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域6(第1の位相制御領域;位相シフタ9;第1の位相シフタ)を設ける。
【0153】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の4番目の出力ポートと2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ3の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ3の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、3π/8だけ遅れる(−3π/8)ようにしている。
【0154】
また、第2の2:2MMIカプラ4(分岐比85:15)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から1番目と2番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第1出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第2の2:2MMIカプラ4が接続された一対の第1出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域14(第4の位相制御領域;位相シフタ9;第4の位相シフタ)を設ける。
【0155】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の2番目の出力ポートと2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ4の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ4の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、π/8だけ遅れる(−π/8)ようにしている。
【0156】
また、第3の2:2MMIカプラ5(分岐比85:15)を、2:8MMIカプラ2の出力側の上から7番目と8番目の2つのチャネル(即ち、隣接する一対の第4出力チャネル)に接続する。
そして、2:8MMIカプラ2の第3の2:2MMIカプラ5が接続された一対の第4出力チャネルのいずれか一方又は両方に、位相制御領域8(第3の位相制御領域;位相シフタ9;第3の位相シフタ)を設ける。
【0157】
ここでは、位相シフタ9を、2:8MMIカプラ2の8番目の出力ポートと2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートとの間に形成される光導波路に設けられる幅狭テーパ導波路型位相シフタ9Aとしている。これにより、2:2MMIカプラ5の2番目の入力ポートに入力される光の位相が、2:2MMIカプラ5の1番目の入力ポートに入力される光の位相に対して、7π/8だけ遅れる(−7π/8)ようにしている。
【0158】
このように構成した場合、上述の実施形態や変形例のものに対して、それぞれ構造は異なるものの、45度ハイブリッドの出力信号におけるI成分,Q成分,I+Q成分,I−Q成分の位置関係が入れ替わるたけで、素子特性は上述の実施形態のものと同様である。
要するに、本光ハイブリッド回路1は、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラ3と、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ3が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラ4と、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ3及び第2の2:2光カプラ4が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3及び第2の2:2光カプラ4が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラ5とを備えるものとして構成すれば良い。
【0159】
また、本光ハイブリッド回路1は、第1の2:2光カプラ3、第2の2:2光カプラ4及び第3の2:2光カプラ5が接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域6〜8、14を備えるものとして構成すれば良い。つまり、上述の実施形態及び変形例では、第1の2:2光カプラ3、第2の2:2光カプラ4及び第3の2:2光カプラ5が接続されている3対の出力チャネルの全ての出力チャネルの一方又は両方に位相制御領域6〜8、14を設けた場合を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではない。例えば、2:8MMIカプラ2の構成を工夫することで(例えばテーパ形状にすることで)、いずれかの出力チャネルに位相制御領域を設けなくても良くすることができる。このため、第1の2:2光カプラ3、第2の2:2光カプラ4及び第3の2:2光カプラ5が接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域を設ければ良い。
【0160】
要するに、位相制御領域として、一対の第2出力チャネルの一方又は両方に設けられ、一対の第2光信号間の位相差が3π/8になるように位相を制御する第1の位相制御領域6、一対の第3出力チャネルの一方又は両方に設けられ、一対の第3光信号間の位相差が5π/8になるように位相を制御する第2の位相制御領域7、一対の第4出力チャネルの一方又は両方に設けられ、一対の第4光信号間の位相差が7π/8になるように位相を制御する第3の位相制御領域8、及び、一対の第1出力チャネルの一方又は両方に設けられ、一対の第1光信号間の位相差がπ/8になるように位相を制御する第4の位相制御領域14のうち、少なくとも2つの位相制御領域を備えるものとして構成すれば良い。
【0161】
また、上述の実施形態では、位相制御領域6〜8、14に、直線的に導波路幅を変化させたテーパ状の位相シフタを設けているが、これに限られるものではない。例えば、指数関数的に導波路幅を変化させたテーパ状の位相シフタ、正弦波関数的に導波路幅を変化させたテーパ状の位相シフタ、楕円関数的に導波路幅を変化させたテーパ状の位相シフタなどを設けても良い。これらの場合も同様な効果を得ることができる。また、位相制御領域において、例えば、導波路幅を一定にし、電極を設けて電流注入又は電圧印加による位相制御を行なうようにしても良いし、ヒータ電極を設けて熱印加による位相制御を行なうようにしても良い。これらの場合も同様な効果を得ることができる。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態にかかる光受信機、光送受信機、光受信方法について、図18を参照しながら説明する。
【0162】
本実施形態にかかる光受信機は、図18に示すように、上述の第1実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路1[8PSK信号用45度ハイブリッド;図1、図14〜図17参照]を含むコヒーレント光受信機20である。このコヒーレント光受信機20は、45度ハイブリッド1によって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0163】
このため、本光受信機20は、図18に示すように、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路1と、フォトダイオード(光電変換部)21A〜21Dと、トランスインピーダンスアンプ(TIA:Trans-impedance amplifier)27A〜27Dと、AD変換回路(AD変換部)22A〜22Dと、デジタル演算回路(デジタル演算部)23とを備える。
ここで、光ハイブリッド回路1は、8PSK信号光を同相関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号及び同相関係にある一対の第4光信号に変換するMMIカプラ2と、第2光信号を直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の光カプラ3と、第3光信号を45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の光カプラと、第4光信号を135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の光カプラとを備える[図1、図14〜図17参照]。
【0164】
ここでは、MMIカプラ2は2:8MMIカプラ(又は8:8MMIカプラ)である。また、第1〜第3の光カプラ3〜5は2:2MMIカプラである。そして、光ハイブリッド回路1は光半導体素子によって構成される。
本実施形態では、図18に示すように、光ハイブリッド回路1の2:8MMIカプラ2(又は8:8MMIカプラ2A)の入力側の一のチャネルに8PSK信号光が入力され、2:8MMIカプラ2(又は8:8MMIカプラ2A)の入力側の他のチャネルにLO光が入力されるようになっている。つまり、光ハイブリッド回路1の2:8MMIカプラ2(又は8:8MMIカプラ2A)の入力側の一のチャネルは、8PSK信号光を入力するためのチャネルである。また、光ハイブリッド回路1の2:8MMIカプラ2(又は8:8MMIカプラ2A)の入力側の他のチャネルは、LO光を入力するためのチャネルである。
【0165】
このため、本光受信機20は、さらに、光ハイブリッド回路1の2:8MMIカプラ2(又は8:8MMIカプラ2A)の入力側の他のチャネルにLO光を入力するための局部発振光発生部(LO光源)24を備える。
そして、光ハイブリッド回路1に8PSK信号光(8PSK信号パルス)とこれに時間的に同期したLO光が入力されると、8PSK信号光とLO光との相対位相差Δψに応じて、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。このため、各フォトダイオード21A〜21Dへの入力状態も異なる。
【0166】
フォトダイオード21A〜21Dは、光ハイブリッド回路1の多モード干渉カプラ2及び光カプラ3〜5のそれぞれから出力される一対の光信号をアナログ電気信号(アナログ電流信号)に光電変換するフォトダイオードである。
ここでは、光電変換及び信号復調のために、光ハイブリッド回路1の後段にバランスドフォトダイオード(BPD)21A〜21Dが設けられている。
【0167】
ここで、BPD21A〜21Dは、2つのフォトダイオード(PD)を備え、一方のPDのみに光信号が入力された場合は「1」に相当する電流が流れ、他方のPDのみに光信号が入力された場合は「−1」に相当する電流が流れ、両方のPDに同時に光信号が入力された場合は電流が流れない。このため、相対位相差Δψに応じて、異なる出力強度比の光信号が、光ハイブリッド回路1から4つのBPD21A〜21Dへ入力されると、4つのBPD21A〜21Dから異なるパターンの電気信号が出力されることになる。つまり、4つのBPD21A〜21Dによって、8PSK信号光における位相情報が識別され、それぞれ異なるパターンの電気信号に変換されることになる。
【0168】
具体的には、光ハイブリッド回路1の出力側の1番目及び2番目のチャネルに第1BPD21Aが接続されている。つまり、同相関係(I)にある一対の第1光信号が出力される1番目及び2番目のチャネル(隣接する一対の第1出力チャネル)に第1BPD21Aが接続されている。
また、光ハイブリッド回路1の出力側の3番目及び4番目のチャネルに第2BPD21Bが接続されている。つまり、第1光信号に対して直交位相関係(Q)にある一対の第2光信号が出力される3番目及び4番目のチャネル(隣接する一対の第2出力チャネル)に第2BPD21Bが接続されている。
【0169】
また、光ハイブリッド回路1の出力側の5番目及び6番目のチャネルに第3BPD21Cが接続されている。つまり、第1光信号に対して45度位相関係(I+Q)にある一対の第3光信号が出力される5番目及び6番目のチャネル(隣接する一対の第3出力チャネル)に第3BPD21Cが接続されている。
また、光ハイブリッド回路1の出力側の7番目及び8番目のチャネルに第4BPD21Dが接続されている。つまり、第1光信号に対して135度位相関係(I−Q)にある一対の第4光信号が出力される7番目及び8番目のチャネル(隣接する一対の第4出力チャネル)に第4BPD21Dが接続されている。
【0170】
トランスインピーダンスアンプ27A〜27Dは、フォトダイオード21A〜21DとAD変換回路22A〜22Dとの間に設けられている。つまり、トランスインピーダンスアンプ27A〜27Dは、フォトダイオード21A〜21D及びAD変換回路22A〜22Dに接続されている。そして、トランスインピーダンスアンプ27A〜27Dによって、フォトダイオード21A〜21Dから出力されるアナログ電流信号がアナログ電圧信号(アナログ電気信号)に変換されるようになっている。
【0171】
AD変換回路22A〜22Dは、フォトダイオード21A〜21Dから出力され、トランスインピーダンスアンプ27A〜27Dによって変換されたアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路である。つまり、AD変換回路22A〜22Dは、トランスインピーダンスアンプ27A〜27Dから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するようになっている。
【0172】
デジタル演算回路23は、AD変換回路22A〜22Dから出力されるデジタル電気信号を用いて、受信信号光の情報を推定するための演算処理を実行するデジタル演算回路(デジタル信号処理回路)である。
なお、上述の第1実施形態と同様に、光ハイブリッド回路1は、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラ3と、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ3が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラ4と、一対の第1出力チャネル、一対の第2出力チャネル、一対の第3出力チャネル及び一対の第4出力チャネルのうち、第1の2:2光カプラ3及び第2の2:2光カプラ4が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3及び第2の2:2光カプラ4が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラ5とを備えるものとして構成すれば良い。
【0173】
また、本光ハイブリッド回路1は、第1の2:2光カプラ3、第2の2:2光カプラ4及び第3の2:2光カプラ5が接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域6〜8、14を備えるものとして構成すれば良い。
このため、フォトダイオード21A〜21Dは、多モード干渉カプラ2から出力される第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかの光信号、第1の2:2光カプラ3から出力される第5光信号、第2の2:2光カプラ4から出力される第6光信号、及び、第3の2:2光カプラ5から出力される第7光信号を、アナログ電気信号に変換することになる。
【0174】
本光受信機20は、上述のように構成されるため、以下のようにして光信号を受信することになる(光受信方法)。
つまり、まず、光ハイブリッド回路1の多モード干渉カプラ(ここでは2:8MMIカプラ2)を用いて、8PSK信号光を同相関係にある一対の第1光信号、同相関係にある一対の第2光信号、同相関係にある一対の第3光信号及び同相関係にある一対の第4光信号に変換する。
【0175】
次いで、位相制御領域6〜8、14によって、前記一対の第1光信号、前記一対の第2光信号、前記一対の第3光信号、前記一対の第4光信号の少なくとも2つの一対の光信号間の位相差を制御する。
次に、第1の光カプラ3(ここでは2:2MMIカプラ)を用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する。
【0176】
また、第2の光カプラ4(ここでは2:2MMIカプラ)を用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する。
また、第3の光カプラ5(ここでは2:2MMIカプラ)を用いて、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のうち、第1の2:2光カプラ3及び第2の2:2光カプラ4が接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する。
【0177】
そして、第1光信号、第2光信号、第3光信号及び第4光信号のいずれかの光信号と、第5光信号と、第6光信号と、第7光信号とを受信する。
なお、光ハイブリッド回路1の詳細については、上述の第1実施形態及びその変形例と同様であるから、ここではその説明を省略する。
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるという利点がある。
【0178】
特に、本光受信機によれば、低波長依存性、低位相ズレ特性、低挿入損失であり、コンパクト化、及び、モノリシック集積化に適した45度ハイブリッドを備える光受信機を実現できるという利点がある。
なお、上述の実施形態及び変形例では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
【0179】
また、上述の実施形態及び変形例では、光ハイブリッド回路1が、MMIカプラ2(2A)と光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)とを備える光半導体素子によって構成されているが、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ2(2A)と光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dとが一体に集積されていても良い。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態にかかる光ハイブリッド回路について、図19を参照しながら説明する。
【0180】
本実施形態にかかる光ハイブリッド回路は、上述の第1実施形態のものが8PSK信号光及びLO光が時間的に同期させて入力されるようになっているのに対し、差分八位相偏移変調(D8PSK)信号が入力されるようになっている点で異なる。
つまり、本光ハイブリッド回路は、光伝送システムにおいてD8PSK信号の位相変調情報を識別するために用いられる45度ハイブリッド回路(以下、45度ハイブリッドともいう)である。
【0181】
このため、図19に示すように、本光ハイブリッド回路1Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路1の構成(図1参照)に加え、光遅延回路25と、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ26とを備える。つまり、本光ハイブリッド回路1Aは、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路1に含まれる2:8MMIカプラ2の前段(前端部)に光遅延回路25を介して1:2光カプラ26が従属接続された構造になっている。なお、上述の第1実施形態と同様に、光ハイブリッド回路1は、MMIカプラ2と光カプラ3〜5とを備える光半導体素子によって構成されている。また、図19では、上述の第1実施形態[図1(A)参照]と同一のものには同一の符号を付している。
【0182】
ここで、光遅延回路25は、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路1に含まれる2:8MMIカプラ2の入力側の一のチャネルに接続されている。
1:2光カプラ26は、光遅延回路25及び2:8MMIカプラ2の入力側の他のチャネルに接続されている。ここでは、1:2光カプラ26は1:2MMIカプラである。
具体的には、2:8MMIカプラ2の一の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の一の出力チャネルとを接続する一の光導波路の長さを、2:8MMIカプラ2の他の入力チャネルと1:2MMIカプラ26の他の出力チャネルとを接続する他の光導波路の長さよりも長くしている。
【0183】
つまり、2:8MMIカプラ2の2つの入力ポートと1:2MMIカプラ26の2つの出力ポートとを接続する2つの光導波路(アーム)の長さ(光路長)に差が設けられている。
ここでは、一の光導波路の長さを長くして、D8PSK信号パルスの1ビットの遅延に相当する光路長差を設けている。このため、上述の第1実施形態の光ハイブリッド回路1に含まれる2:8MMIカプラ2の一の入力チャネルに接続された一の光導波路が光遅延回路25である。
【0184】
そして、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルに、D8PSK信号光が入力されるようになっている。このため、1:2MMIカプラ26の入力側のチャネルは、D8PSK信号光を入力するための入力チャネルである。D8PSK信号光パルスは、1:2MMIカプラ26を経由して2つの経路に分けられ、一方のD8PSK信号光は光遅延回路25によって1ビット遅延された後、2つのD8PSK信号光が時間的に同期して2:8MMIカプラ2に入力されることになる。この場合、2:8MMIカプラ2の2つの入力チャネルのそれぞれに入力されるD8PSK信号光の相対位相差は、上述の第1実施形態において説明した8種類の相対位相差Δψのいずれかになる。このため、上述の第1実施形態と同様の2:8MMIカプラ以降の回路構成によって、それぞれ異なる分岐比を有する出力形態が得られる。したがって、本光ハイブリッド回路1Aも、上述の第1実施形態の場合と同様に、45度ハイブリッドとして機能する。
【0185】
なお、その他の詳細は、上述の第1実施形態と同様であるから、ここではその説明を省略する。ここで、上述の第1実施形態のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、8PSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのD8PSK信号光に読み替えて適用すれば良い。
したがって、本実施形態にかかる光ハイブリッド回路によれば、上述の第1実施形態の場合と同様に、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるという利点がある。
【0186】
特に、本光ハイブリッド回路によれば、低波長依存性、低位相ズレ特性、低挿入損失であり、コンパクト化、及び、モノリシック集積化に適した45度ハイブリッドを実現できるという利点がある。さらに、現在コヒーレント光受信機やコヒーレント検波システム等に用いられている45度ハイブリッドとの互換性にも優れており、コストパフォーマンスの面でも好ましい。
【0187】
なお、上述の実施形態では、2:8MMIカプラ2の前段に設けられる1:2光カプラ26として1:2MMIカプラを用いているが、これに限られるものではない。例えば、1:2MMIカプラの代わりに、Y分岐カプラ、2:2MMIカプラ、2:2方向性結合器などを用いることもでき、この場合も上述の実施形態の場合と同様に45度ハイブリッド動作を得ることができる。
【0188】
また、上述の実施形態では、上述の第1実施形態及び変形例と同様に、光ハイブリッド回路1Aが、MMIカプラ2(2A)と光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)とを備える光半導体素子を含むものとして構成されているが、これに限られるものではない。例えば、光ハイブリッド回路1Aが、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを備える光半導体素子によって構成されていても良い。
【0189】
また、上述の第1実施形態の変形例[図14〜図17参照]は、本実施形態のものにも同様に適用することができる。
[第4実施形態]
次に、第4実施形態にかかる光受信機、光送受信機、光受信方法について、図20を参照しながら説明する。
【0190】
本実施形態にかかる光受信機は、図20に示すように、上述の第2実施形態及びその変形例のコヒーレント光受信機20の構成(図18参照)に加え、光遅延回路25と、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラ26とを備えるコヒーレント光受信機20Aである。
本コヒーレント光受信機20Aは、上述の第3実施形態及びその変形例の光ハイブリッド回路1A(D8PSK信号用45度ハイブリッド;図19参照)を含むものである。つまり、本コヒーレント光受信機20Aは、上述の第2実施形態及びその変形例のコヒーレント光受信機20に含まれる45度ハイブリッド1に代えて、上述の第3実施形態及びその変形例の45度ハイブリッド1Aを用いたものである。このコヒーレント光受信機20Aは、45度ハイブリッド1Aによって識別された光信号を電気信号に変換し、デジタル信号処理を行なうようになっている。
【0191】
なお、光ハイブリッド回路1Aの詳細については、上述の第3実施形態及びその変形例(図19参照)と同様であるから、ここではその説明を省略する。また、光受信機20の構成及び光受信方法については、上述の第2実施形態及びその変形例(図18)と同様であるから、ここではその説明を省略する。但し、本光受信機20Aには局部発振光発生部は存在しない。ここで、上述の第2実施形態及びその変形例のものを本実施形態のものに適用するにあたっては、8PSK信号光及びLO光を、相対位相差Δψを有する2つのD8PSK信号光に読み替えて適用すれば良い。なお、図20では、上述の第2実施形態(図18参照)及び第3実施形態(図19参照)及び変形例のものと同一のものには同一の符号を付している。
【0192】
したがって、本実施形態にかかる光受信機によれば、光導波路が交差する領域ができないようにして、過剰損失を抑えることができるという利点がある。
特に、本光受信機によれば、低波長依存性、低位相ズレ特性、低挿入損失であり、コンパクト化、及び、モノリシック集積化に適した45度ハイブリッドを備える光受信機を実現できるという利点がある。
【0193】
なお、上述の実施形態では、光受信機を例に挙げて説明しているが、これに限られるものではなく、上述の第2実施形態の変形例と同様に、上述の実施形態の光受信機の構成を備えるものとして光送受信機を構成することもできる。
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路1Aが、MMIカプラ2(2A)と光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)とを備える光半導体素子によって構成されることになるが(第2実施形態参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ2(2A)と光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)とを備える光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dとが一体に集積されていても良い。
【0194】
また、上述の実施形態では、光ハイブリッド回路1Aが、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子によって構成されることになるが(第3実施形態参照)、これに限られるものではない。例えば、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26とを含む光半導体素子に、さらに、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dが集積されていても良い。つまり、MMIカプラ2(2A)と、光カプラ3〜5(3A〜5A、3B〜3B)と、光遅延回路25と、1:2光カプラ26と、フォトダイオード(ここではBPD)21A〜21Dとが一体に集積されていても良い。
[その他]
なお、本発明は、上述した各実施形態及び変形例に記載した構成に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形することが可能である。
【0195】
以下、上述の各実施形態及び変形例に関し、更に、付記を開示する。
(付記1)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備え、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を、前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラと、
前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラが接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域とを備えることを特徴とする光ハイブリッド回路。
【0196】
(付記2)
前記第1の2:2光カプラは、50:50の分岐比を有し、
前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラは、85:15の分岐比を有することを特徴とする、付記1に記載の光ハイブリッド回路。
(付記3)
前記位相制御領域として、前記一対の第2出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第2光信号間の位相差が3π/8になるように位相を制御する第1の位相制御領域、前記一対の第3出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第3光信号間の位相差が5π/8になるように位相を制御する第2の位相制御領域、前記一対の第4出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第4光信号間の位相差が7π/8になるように位相を制御する第3の位相制御領域、及び、前記一対の第1出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第1光信号間の位相差がπ/8になるように位相を制御する第4の位相制御領域のうち、少なくとも2つの位相制御領域を備えることを特徴とする、付記1又は2に記載の光ハイブリッド回路。
【0197】
(付記4)
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有する2:8多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
(付記5)
前記2:8多モード干渉カプラは、対モード干渉に基づく2:8多モード干渉カプラであることを特徴とする、付記4に記載の光ハイブリッド回路。
【0198】
(付記6)
前記多モード干渉カプラは、入力側に8つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有する8:8多モード干渉カプラであり、前記入力側の8つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネルが光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記1〜3のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0199】
(付記7)
前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラは、多モード干渉カプラ、方向性結合器、二モード干渉カプラのいずれかであることを特徴とする、付記1〜6のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
(付記8)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0200】
(付記9)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記1〜7のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0201】
(付記10)
前記多モード干渉カプラと、前記第1の2:2光カプラと、前記第2の2:2光カプラと、前記第3の2:2光カプラと、前記位相制御領域とを備え、導波路構造を有する光半導体素子によって構成されることを特徴とする、付記1〜9のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【0202】
(付記11)
前記位相制御領域は、テーパ状に導波路幅が変化している位相シフタを備えることを特徴とする、付記10に記載の光ハイブリッド回路。
(付記12)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備え、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を、前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラと、前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラが接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域とを備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかの光信号、前記第1の2:2光カプラから出力される前記第5光信号、前記第2の2:2光カプラから出力される前記第6光信号、及び、前記第3の2:2光カプラから出力される前記第7光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【0203】
(付記13)
前記フォトダイオードに接続されるトランスインピーダンスアンプを備え、
前記AD変換回路は、前記フォトダイオードから出力され、前記トランスインピーダンスアンプを介して入力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するように構成されることを特徴とする、付記12に記載の光受信機。
【0204】
(付記14)
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに局部発振光を入力するための局部発振光発生部を備えることを特徴とする、付記12又は13に記載の光受信機。
【0205】
(付記15)
前記光ハイブリッド回路が、
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを含み、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、付記12又は13に記載の光受信機。
【0206】
(付記16)
前記光ハイブリッド回路が、前記多モード干渉カプラと、前記第1の2:2光カプラと、前記第2の2:2光カプラと、前記第3の2:2光カプラと、前記位相制御領域とを備える光半導体素子によって構成されることを特徴とする、付記12〜15のいずれか1項に記載の光受信機。
【0207】
(付記17)
前記光ハイブリッド回路が、前記多モード干渉カプラと、前記第1の2:2光カプラと、前記第2の2:2光カプラと、前記第3の2:2光カプラと、前記位相制御領域と、前記光遅延回路と、前記1:2光カプラとを備える光半導体素子によって構成されることを特徴とする、付記15に記載の光受信機。
【0208】
(付記18)
前記光半導体素子に、さらに前記フォトダイオードが集積されていることを特徴とする、付記16又は17に記載の光受信機。
(付記19)
付記12〜18のいずれか1項に記載の光受信機の構成を備えることを特徴とする光送受信機。
【0209】
(付記20)
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備える多モード干渉カプラを用いて、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域によって、前記一対の第1光信号、前記一対の第2光信号、前記一対の第3光信号、前記一対の第4光信号の少なくとも2つの一対の光信号間の位相差を制御し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第1の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第2の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第3の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換し、
前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかの光信号と、前記第5光信号と、前記第6光信号と、前記第7光信号とを受信することを特徴とする光受信方法。
【符号の説明】
【0210】
1,1A 光ハイブリッド回路
2,2A MMIカプラ(2:4MMIカプラ)
3 光カプラ(2:2MMIカプラ;第1の光カプラ)
4 光カプラ(2:2MMIカプラ;第2の光カプラ)
5 光カプラ(2:2MMIカプラ;第3の光カプラ)
3A〜5A 方向性結合器(2:2方向性結合器;光カプラ)
3B〜5B 二モード干渉カプラ(2:2二モード干渉カプラ;光カプラ)
6 位相制御領域(第1の位相制御領域)
7 位相制御領域(第2の位相制御領域)
8 位相制御領域(第3の位相制御領域)
9 位相シフタ
9A 幅狭テーパ導波路型位相シフタ
9B 幅広テーパ導波路型位相シフタ
10 InP基板
11 GaInAsPコア層
12 InPクラッド層
13 光半導体素子
14 位相制御領域(第4の位相制御領域)
20,20A コヒーレント光受信機
21A〜21D フォトダイオード(光電変換部;BPD)
22A〜22D AD変換回路(AD変換部)
23 デジタル演算回路(デジタル演算部)
24 局部発振光発生部(LO光源)
25 光遅延回路
26 1:2光カプラ
27A〜27D トランスインピーダンスアンプ(TIA)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備え、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を、前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラと、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラと、
前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラが接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域とを備えることを特徴とする光ハイブリッド回路。
【請求項2】
前記第1の2:2光カプラは、50:50の分岐比を有し、
前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラは、85:15の分岐比を有することを特徴とする、請求項1に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項3】
前記位相制御領域として、前記一対の第2出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第2光信号間の位相差が3π/8になるように位相を制御する第1の位相制御領域、前記一対の第3出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第3光信号間の位相差が5π/8になるように位相を制御する第2の位相制御領域、前記一対の第4出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第4光信号間の位相差が7π/8になるように位相を制御する第3の位相制御領域、及び、前記一対の第1出力チャネルの一方又は両方に設けられ、前記一対の第1光信号間の位相差がπ/8になるように位相を制御する第4の位相制御領域のうち、少なくとも2つの位相制御領域を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項4】
前記多モード干渉カプラは、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有する2:8多モード干渉カプラであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項5】
前記多モード干渉カプラは、入力側に8つのチャネルを有し、出力側に8つのチャネルを有する8:8多モード干渉カプラであり、前記入力側の8つのチャネルのうち幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた2つのチャネルが光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項6】
前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラは、多モード干渉カプラ、方向性結合器、二モード干渉カプラのいずれかであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項7】
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルが、八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであり、
前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルが、局部発振光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項8】
前記多モード干渉カプラの入力側の一のチャネルに接続された光遅延回路と、
前記光遅延回路及び前記多モード干渉カプラの入力側の他のチャネルに接続され、入力側に1つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する1:2光カプラとを備え、
前記1:2光カプラの入力側のチャネルが、差分八位相偏移変調信号光を入力するための入力チャネルであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光ハイブリッド回路。
【請求項9】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備え、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を、前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換する多モード干渉カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換する第1の2:2光カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換する第2の2:2光カプラと、前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有し、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換する第3の2:2光カプラと、前記第1の2:2光カプラ、前記第2の2:2光カプラ及び前記第3の2:2光カプラが接続されている3対の出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域とを備える光ハイブリッド回路と、
前記多モード干渉カプラから出力される前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかの光信号、前記第1の2:2光カプラから出力される前記第5光信号、前記第2の2:2光カプラから出力される前記第6光信号、及び、前記第3の2:2光カプラから出力される前記第7光信号を、アナログ電気信号に変換するフォトダイオードと、
前記フォトダイオードから出力されるアナログ電気信号をデジタル電気信号に変換するAD変換回路と、
前記AD変換回路から出力されるデジタル電気信号を用いて演算処理を実行するデジタル演算回路とを備えることを特徴とする光受信機。
【請求項10】
幅方向中心位置に対して対称な位置に設けられた一対の入力チャネルと、同相関係にある一対の第1光信号を出力するための隣接する一対の第1出力チャネルと、同相関係にある一対の第2光信号を出力するための隣接する一対の第2出力チャネルと、同相関係にある一対の第3光信号を出力するための隣接する一対の第3出力チャネルと、同相関係にある一対の第4光信号を出力するための隣接する一対の第4出力チャネルとを備える多モード干渉カプラを用いて、八位相偏移変調信号光又は差分八位相偏移変調信号光を前記同相関係にある一対の第1光信号、前記同相関係にある一対の第2光信号、前記同相関係にある一対の第3光信号及び前記同相関係にある一対の第4光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、少なくとも2つの一対の出力チャネルの一方又は両方に設けられた位相制御領域によって、前記一対の第1光信号、前記一対の第2光信号、前記一対の第3光信号、前記一対の第4光信号の少なくとも2つの一対の光信号間の位相差を制御し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第1の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかを、直交位相関係にある一対の第5光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第2の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、45度位相関係にある一対の第6光信号に変換し、
前記一対の第1出力チャネル、前記一対の第2出力チャネル、前記一対の第3出力チャネル及び前記一対の第4出力チャネルのうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルのいずれかに接続されており、入力側に2つのチャネルを有し、出力側に2つのチャネルを有する第3の2:2光カプラを用いて、前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のうち、前記第1の2:2光カプラ及び前記第2の2:2光カプラが接続されている出力チャネル以外の出力チャネルから出力される光信号のいずれかを、135度位相関係にある一対の第7光信号に変換し、
前記第1光信号、前記第2光信号、前記第3光信号及び前記第4光信号のいずれかの光信号と、前記第5光信号と、前記第6光信号と、前記第7光信号とを受信することを特徴とする光受信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−135500(P2011−135500A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295354(P2009−295354)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】