説明

光ピックアップおよび光学情報再生装置

【課題】
専用RF受光面を併設した光ディスク装置において、S/Nの良い再生信号を得られるよう、帯域合成により合成RF信号を得る方法を用いた際、高倍速再生において生じやすい、遅延時間差や感度差による波形歪を防ぐ。
【解決手段】
感度や倍速の切替えに応じて、合成する2系統のRF信号の遅延時間差や感度誤差を補正するための、遅延時間調整手段や、感度調整手段、合成方法を切替えるための切替手段を設ける。またそれら調整/切替のための情報保持手段を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップおよび光学情報再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術としては、たとえば特開2006−114165号公報がある。本公報には、「RF専用の受光面を設け、他受光面からの信号との帯域合成によりS/N比を改善する。光束分割に、回折格子を用い、調整精度を大幅に緩和する。RF用光電流アンプとしてACアンプを使用できる。」と記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−114165号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光ディスクに代表される光学情報再生装置では、より高密度に媒体へ記録された情報を、より高速に再生することが求められるようになった。これにより、従来は赤色光(650〜785nm)を用いて0.3μm程度の大きさで記録されていたマークが、青色光(約405nm)を用いて0.17μm以下の小さなサイズのマークとなり高密度化されているという背景がある。しかしながら、媒体上の耐光パワー密度はほぼ変化しておらず、マークの面積が小さい分、再生時に得られる信号光量が必然的に少なくなっている。また、高速化に伴って、マーク1個当りの検出光量も、検出時間が短い分、少なくなっている。
【0005】
これらによって、高密度化・高速化が進んだ、特に青色光を用いた近年の光学情報再生装置では、検出される信号光量が少なくなり、電気信号へ変換した際の、信号/ノイズ比(S/N比)が小さくなり、ノイズによる再生データ誤り(エラー)が増大し、信頼性が問題となっている。
【0006】
これらを解決するために、例えば、特許文献1のような情報再生装置が提案されている。これは、図2のように、再生信号(RF信号)専用の受光面を併設し、回折格子を用いて、サーボ信号検出用の受光面とRF信号専用の受光面に光束を分割し、RF専用の受光面で検出されたRF信号光を、専用のフォトアンプ(光電子信号増幅器)を用いて電気的信号へ変換して増幅する方法を用いたものである。この際、サーボ信号検出面より得たRF信号と、専用受光面より得たRF信号を、周波数フィルタを用いて帯域合成する。RF信号専用のフォトアンプとして、ノイズの少ないACアンプを用いることができ、従来の多分割受光面の信号を増幅後に加算する方式に比べて、ノイズの少ないRF信号再生信号が得られる。これにより、高速化に耐える信頼性の高い情報再生装置を構成することができる。また、その帯域合成の際、良い合成RF信号を得るために、2つのRF信号の感度を一致させる手法を示している。なお、ここでは、RF信号は、情報記録媒体からの戻り光の光束の全光量に比例した信号とする。また、前記全光量に比例した信号のうち、一部の周波数範囲の信号を抽出したものも含めてRF信号と呼ぶ。また、RF信号の検出部と呼ぶものには、四分割光検出器のように領域分割された検出面(受光面)を持つものであっても、各分割された検出面の信号を加算することによって、RF信号と同等な信号を検出可能なものを含めるものとする。
【0007】
しかしこの従来の構成では、さらなる高倍速で情報を再生しようとする場合、以下の点について改善が求められていた。
【0008】
(1)従来構成では、媒体の種類が変わった場合、光源の波長も切替わるため、サーボ信号検出用の受光面とRF信号検出面の2つの受光面の波長感度特性(光電流感度が波長依存性)の違いによって、信号の感度差が生じることで、2つのRF信号が低周波で互いにキャンセルできなくなり、帯域合成後のRF信号に歪が生じる場合があった。また、特に高倍速の情報再生時に、配線長やアンプ遅延時間(周波数に対する群遅延特性)といった部品ばらつきによる回路的な遅延時間の違いによって、2つのRF信号の時間差が生じ、このため合成後のRF信号に歪が生じる場合があった。
【0009】
(2)従来構成では、光電子集積素子(OEIC)上に受光面を一体化しやすい構成としていたが、従来構成のように、サーボ信号検出用の受光面のすぐ近傍にRF専用受光面が並んで配置されていると、多層媒体再生時に、他の層からの反射光により、フォーカスのぼやけた光が相互に重なり、多層干渉による信号揺れが発生し、信号歪が生じていた。また、同一のOEICチップ基板上で、GNDが共用されているため、GND電位変動によるクロストークがノイズとなり、専用受光面のRF信号上へ混入し信号歪となる場合があった。
【0010】
(3)従来構成では、帯域合成時、ピックアップの感度ばらつき(ロットばらつき/感度の周波数依存性等、個々の部品の性能のばらつき)に対応するためのゲイン自動調整手段(学習手段)、または倍速に応じた信号切替のための回路がピックアップ上に必要で、コスト要因となっていた。
【0011】
(4)高倍速時は、低倍速時よりもさらにノイズの小さい再生信号が、復号に必要とされるが、合成RF信号を用いると、専用受光面のRF信号をそのまま復号に用いる場合に比べて、ジッタが劣化する場合がある(専用RF信号をそのまま復号に用いた方が良いジッタが得られる)ことが判った。
【0012】
これら(1)〜(4)によって、専用RF受光面を設けたにもかかわらず、そのS/N改善の性能が十分に発揮されていないという課題が生じていた。また、そのようなS/Nを改善を取入れたピックアップのコストが高くなっていたという課題があった。
【0013】
本発明は、S/Nが良好な光ピックアップおよび光学情報再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的は、その一例として第1のRF信号と第2のRF信号とを時間調整し合成することで達成できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、S/Nが良好な光ピックアップおよび光学情報再生装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施例による受光部光学系と信号増幅部回路の構成例である。
【図2】従来の受光部光学系と信号増幅部回路の構成例である。
【図3】差動非点収差に対応した受光面の例である。
【図4】化合物半導体トランジスタを用いたACアンプの回路構成例である。
【図5】ACアンプとDCアンプの実際のノイズ特性(周波数分布)の例である。
【図6】本実施例によるRF信号の合成によるノイズ低減の原理を説明する図である。
【図7】多層ディスク再生時の、従来構成と本構成における、受光面上の多層反射光の例である。
【図8】感度切替を伴う帯域合成回路の構成例(1)である。
【図9】感度切替を伴う帯域合成回路の構成例(2)である。
【図10】固定部回路基板上に帯域合成回路を搭載した本実施例によるRF信号合成回路の例である。
【図11】可動部ピックアップ上に帯域合成回路を搭載した本実施例によるRF信号合成回路の例である。
【図12】本実施例による情報再生装置の全体構成例である。
【図13】本実施例による高速化の効果を説明する図である。
【図14】本実施例によるアナログ回路による帯域合成とデジタル信号処理による復号信号処理の、回路構成例である。
【図15】本実施例によるデジタル信号処理による帯域合成と復号処理の、回路構成例である。
【図16】本実施例によるデジタル信号処理による遅延時間調整手段の構成例である。
【図17】本実施例によるデジタル信号処理による遅延時間調整手段の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下実施例を説明するが、本発明の課題は、下記(1)〜(4)の手法を用いることで改善できる。
【0018】
(1)2つのRF信号のどちらかに対し、遅延時間調整手段を設ける。
【0019】
(2)RF専用受光器を、OEICチップとは独立に絶縁して設置し、加えて、RF専用受光面のサイズを、OEIC受光面サイズよりも小さくする。そのために半反射鏡を用いて光束分割する。
【0020】
(3)ピックアップ上に情報記憶素子(EEP−ROM等)を搭載し、その情報に基づき、帯域合成時のゲインを調節できる、ゲイン調節手段を設ける。
【0021】
(4)倍速に応じて、帯域合成をOFFできる切替手段を設ける
上記(1)(2)(3)(4)の組合せにより構成することで、低倍速から高倍速まで良好なノイズ性能で情報を再生できる光学情報再生装置を構成し、信頼性の高い光学情報再生装置を実現した。
【0022】
以下、具体的な実施の形態を、図1〜図17を用いて説明する。
【実施例1】
【0023】
本実施例による、可変遅延時間調整手段を設けた情報再生装置の構成例を、図1〜図13を用いて説明する。なお、ここでは、感度や遅延時間を段階的に切替えることも含めて、可変と記す。
【0024】
まず、図2〜図6を用いて、専用RF信号検出面を備える情報再生装置とその効果について説明する。ここでは、図2の従来構成、図1および図7以降の本構成に共通な効果について、まず従来構成を用いて説明する。
【0025】
図2は、3スポット法の一つである差動プッシュプル法によるTR信号検出に対応した、受光素子上の検出面と、その近傍の光電流増幅器の接続例である。レーザ光源から情報記録媒体へ照射された光は、記録膜上の記録情報による光量変調を受けて、情報記録媒体から反射され、戻り光となる。反射された戻り光の光束は、検出レンズにて収束されながら、本光学系に入射される。3つのスポットのうち、両端のサブスポットは、サブスポット用受光面31にて検出される。一方、残る中央スポットは、受光素子手前に配置された回折格子27により分割されて、中央の四分割光検出器29と、RF信号検出面30に照射される。回折格子27を透過した0次光が四分割光検出器29に照射される。回折格子27により回折された1次光が、RF信号検出面30に照射される。四分割光検出器29で検出された光の光電流は、各々、直流増幅光電流アンプ32により増幅されて、出力され、フォーカス誤差検出信号(AF信号)・トラッキング誤差検出信号(TR信号)の生成に用いられる。RF検出器にて検出された光の光電流は、RF用光電流アンプ33にて増幅され、出力される。TR信号は、上記四分割光検出器29と、サブスポット用受光面31の各分割検出面により検出されるお互いの光量差により、差動プッシュプル法により生成される。
【0026】
本光学系では、中央スポット光の再生信号を、回折格子にて光束分割している。前記回折格子として、断面溝形状が、図3(a1)の様に、三角波状の形状をしているブレーズ型(Blaze型)回折格子を用い、片側へのみ回折を起こしている。
【0027】
本構成を用いることで、専用の検出面でRF信号を得られるため、直流増幅光電流アンプを経由した4つの信号を加算してRF信号を生成した場合に比べ、ノイズの低いRF信号を得ることができる。具体的には、同じ信号を得るために、受光面数が多い分、アンプの数も多くすると、各アンプで発生するノイズが足し合わせられる分、ノイズが大きくなる。本構成では、光束を分割する代わりに、RF信号の受光面を1つにまとめることで、光電流アンプの数は1つだけである。RF用光電流アンプ33として、直流増幅光電流アンプ32と同じDCアンプを用いたとしても、ノイズを発生するアンプの数が少ない分、6dBアンプ雑音を低くすることができる。回折格子により2つの光束を、光量50%ずつ等分に分割しているとすると、信号光量の半減によってS/N比は3dB劣化するものの、総合的にはS/N比は6dB−3dB=3dB改善する。
【0028】
さらに、本光学系構成を用いた場合、RF用光電流アンプとしてACアンプを用いても、焦点位置やトラッキングは、サーボ用の四分割光検出器の信号によって制御できる。このため、DCアンプに代えて、よりノイズの少ないACアンプを使用することができる。ACアンプでは、差動増幅器が不要であるため、ベースノイズを6dB小さくすることができる。これにより、先程のS/N比3dBに加えて、ノイズをさらに6dB改善でき、総合的にはS/N比を3dB+6dB=9dB改善することができる。さらに、ACアンプを用いる場合は、増幅器のトランジスタに、ノイズの小さい化合物半導体(GaAs等)のトランジスタを用いることができるため、ノイズをさらに(典型的に10dB以上)小さくでき、総合的にさらにS/N比を改善できる。
【0029】
このように光学系と回路との組合せによって、ノイズの発生を最小限に抑えて光信号を増幅できる。なお、上で説明した差動プッシュプル法だけでなく、図3(A)のような受光検出面を用いて、差動非点収差法にも同様に対応することができる。
【0030】
従来、一般には、直流増幅光電流アンプ32として、Siを材料とするオペアンプ等の差動増幅器が用いられており、その典型的な再生信号のノイズスペクトルは図5(b)の様である(増幅度:抵抗換算R=80kΩ)。横軸は、周波数で、範囲は0〜100MHzである(10MHz/div)。縦軸は、アンプの雑音強度で、範囲は−120dBm〜−20dBmである。なお、−105dBm付近の横線は、この測定器の雑音測定限界を示している。このアンプでは、広帯域(0〜100MHz)に渡って、−80dBm台の一様なノイズが生じている。これに対して、図4に示すGaAs等化合物半導体電界効果トランジスタ(MES−FET:Metal−Semiconductor Field−Effect Transistor)を用いた交流増幅光電流アンプ(RF用光電流アンプ)の場合、再生信号のノイズスペクトルは図5(a)の様になる(増幅度:抵抗換算R=200kΩ)。図の横軸と縦軸は先程と同じである。0Hz(直流)付近ではやや大きいノイズが出るものの(1/fノイズ)、4MHz以上は、直流増幅光電流アンプを用いたものよりもノイズが少なく、特に20MHz以上では、全体的にノイズが10〜20dB小さいことが分かる。なお、光電流アンプの感度(増幅度)は、図5(a)のアンプの方が図5(b)に比べ2倍以上高くなっており、同じ感度で比較すれば、ノイズはさらに小さい。
【0031】
そこで、これを利用して、図6の様に、例えば4MHzより低域周波数側は従来の直流増幅光電流アンプの信号を用い(図6(b))、4MHzよりも高周波数側は、RF用光電流アンプの信号を用いて(図6(a))、これらを帯域合成すれば、全体として、よりノイズの総量の小さい信号が得られる(図6(c))。このように構成することで、高周波数側用アンプの信号の直流(0Hz)成分は不要となり、RF用光電流アンプ33として、DCアンプよりも低ノイズな、ACアンプを用いることができる。なお、図の横軸は周波数70、縦軸は信号強度71で、74がRF用光電流アンプ(第一のRF信号)の雑音強度分布、75が直流増幅光電流アンプ(第二のRF信号)の雑音強度分布、76が帯域合成後の合成RF信号の雑音強度分布を示している。この原理を示したのが特開2006−114165号公報である。
【0032】
しかしながら、これを、例えば、多種の媒体に対応できる多規格互換の光ディスク装置のピックアップとして用いる場合、媒体によって反射率が違うため、最適な再生信号を得るためには、媒体の種類や、記録/再生および倍速の切替に応じて、光電流アンプの感度を切替える必要がある。また、再生だけでなく記録も可能な装置では、再生と記録の切替えの際も感度を切替える必要がある。この感度切替の際、各アンプ(RF用光電流アンプ33・直流増幅光電流アンプ32)の内部回路を切替えるため、これらのアンプの利得が一致せず、誤差が生じる場合がある。また、各々回路が切替ることで、2つのRF信号の遅延時間差も変化する。利得と遅延時間差が一致しないと、帯域合成後の信号に歪みが生じ、特に高倍速で正確な復号が行えなくなる問題が生じる場合があることが判った。
【0033】
また、もう一つの問題点として、多層ディスクを用いた場合、図2の従来光学系の構成では、再生中の記録層の光の他に、図7(a)の様に、他の層からの不要な多層反射光107がフォーカスのぼやけた光となって、受光面上に広がって重なり、本来の再生中の記録層の光に混じることで(多層干渉)、干渉縞が発生し、信号を乱してしまうことが分かった。特に、非点収差法によるフォーカス誤差検出を行う図7(a)の様な構成の場合、回折格子により光束を分割すると、RF信号検出面30の大きさは、四分割光検出器29の大きさと同程度にしなければならない。そのため、多層反射光107が不要光として広い面積で受光され、その分信号の乱れが大きくなってしまう問題点があることが判った。また、四分割光検出器29と直流増幅光電流アンプ32を一体化してOEIC化している場合、RF信号検出面30を同一のチップ基板上に搭載すると、OEICチップから分離したRF用光電流アンプへ微弱な光電流信号を取出す際、OEICの持つアンプによりGND電位変動が生じているため、GNDを介した電位変動がクロストークノイズとなり混入しやすいという問題点があることも判った。
【0034】
さらに、高倍速では、媒体記録情報の複号に必要となる信号帯域が、より高周波側にシフトすることから、速度によっては帯域合成が不要となり、専用のRF信号検出面30の信号をそのまま復号に用いた方が良いジッタが得られることが判った。
【0035】
そこで、前記の問題点を解決し、多規格の媒体に互換対応し、高倍速での再生を可能とするよう改善した情報再生装置の、受光部光学系と、その近傍の回路の構成例を、以降に示す。
【0036】
図1は、本実施例による、可変遅延時間調整手段と、可変感度調整手段と、帯域合成方法の切替手段を有する、差動プッシュプル法によるTR信号検出に対応した受光部の光学系と、その近傍の増幅器および合成/制御回路の接続例である。これは、後述する図12の情報再生装置の全体構成の一部である。
【0037】
受光素子上には、3つのスポットに対応し、中央に四分割光検出器29が一つ、その両側にサブスポット用受光面31が二つ配置されている。これとは独立したRF信号検出面30が、前記受光素子の受光面(四分割光検出器29、サブスポット用受光面31を含む面)とは垂直に配置されている。
【0038】
本受光部光学系へ入射された光は、まず検出レンズ26により集光され、半反射鏡103により、前記受光素子への光路と、RF信号検出面30への光路へ分割される。半反射鏡103は、光軸に対し略45度方向に傾いており、反射光が入射光に対し直角に反射される。なお、図1では3スポットの内の中央スポットの光路のみを図示しているが、実際は、各々の受光面で3つのスポットを一つずつ検出する。中央スポットは、四分割光検出器29で検出され、サブスポットはサブスポット用受光面31上にて検出される。半反射鏡103で反射された光は、RF信号検出面30で検出され、RF用光電流アンプ33で増幅されて、第一のRF信号(再生信号)が生成される。一方、四分割光検出器29の、四つの分割受光面の信号を、各々直流増幅光電流アンプ32で増幅し、加算器34で加算することによっても、再生信号を生成することができ、これが第二のRF信号(再生信号)となる。第一と第二のRF信号の時間差を補正するための遅延時間調整手段67と、感度差を補正するための利得調整手段35を経た後、低域通過フィルタ36と減算器37と加算器38によって、第一と第二のRF信号を帯域合成する。最終的に出力するRF信号には、この帯域合成したRF信号か、合成前の第一のRF信号かを、再生信号切替手段106によって選択できる。また、可動部ピックアップ101側には、不揮発性メモリ素子である情報記憶素子104を搭載しており、固定部回路基板102から情報読出し線105によって、情報記憶素子104に記憶された情報を読出すことができる。なお、遅延時間調整手段67と、利得調整手段35は、主制御回路45によって、遅延時間と利得とを、各々調整できるようになっている。
【0039】
図12が、これら図1の受光系と、その近傍の回路を含む、情報再生装置の全体構成である。
【0040】
記録媒体である光ディスク7は、回転サーボ回路8によって回転速度が制御されたモータ9上に取付けられている。この媒体に対して、レーザ駆動回路10a・10b・10cにより駆動された半導体レーザ11a・11b・11cからの光を照射する。半導体レーザ11a・11b・11cは、各々波長の異なる半導体レーザであり、11aとして青色半導体レーザ、11bとして赤色半導体レーザ、11cとして赤外光半導体レーザを用いている。半導体レーザ11a・11b・11cの光は、各々、3スポット法用の回折格子12a・12b・12cを通過して、コリメートレンズ13a・13b・13cを通過する。青色半導体レーザの光のみ、さらにビーム整形プリズム14を通過する。
【0041】
半導体レーザ11cの光は、反射鏡15により向きを変え、ディスク8へ向けて導入される。半導体レーザ11bの光は、合成プリズム16aにより向きを変え、半導体レーザ11cからの光と合成されて、ディスク8へ向けて導入される。半導体レーザ11aの光は、合成プリズム16bにより向きを変え、半導体レーザ11b・11cからの光と合成されて、ディスク8へ向けて導入される。さらに、各レーザ光は、偏向ビームスプリッタ17と、液晶収差補正素子18と、λ/4板19を通過して、対物レンズ20により、ディスク7上に集光照射される。
【0042】
対物レンズ20はアクチュエータ21上に取付けられており、焦点位置を、焦点サーボ回路22の信号によって焦点方向(フォーカス方向)に、トラッキングサーボ回路23の信号によってトラック方向に、それぞれ駆動できるようになっている。また、この時、液晶収差補正素子18によって、ディスク7の基板厚誤差や対物レンズ20によって生じる収差が補正される。収差が補正されることで、集光された光スポットを、十分小さく絞ることができる。この光によって、ディスク7上に記録された微細なマークパターンを読み取ったり、マークパターンを記録したりする。ディスク7によって照射されたうち一部の光が反射され、再び対物レンズ20、λ/4板19、液晶収差補正素子18を通過して、偏向ビームスプリッタ17によって、今度は検出レンズ26の方向に反射される。反射された光は、検出レンズ26を通り、半反射鏡103により光束分割される。半反射鏡103で反射された光は、RF信号検出面30にて検出され、電気信号に変換される。この電気信号を、RF用光電流アンプ33で増幅し、第一の再生信号(RF信号)を生成する。RF用光電流アンプ33の利得は、感度切替信号線69の電圧によって切替えられる。なお、半反射鏡103は、上記反射光の進行方向が、四分割光検出器29の田の字の対角方向(十字に対し45度方向)となるよう配置している。感度切替信号線69の電圧は、媒体の種類や再生速度によって、また再生と記録の切替によって変化し、光電流アンプの利得も、それに伴い切替る。
【0043】
一方、半反射鏡103を透過した光は、半反射鏡のガラス通過時に非点収差が発生し、受光素子チップ28上の四分割光検出器にて受光され、電気信号に変換される。この電気信号を、直流増幅光電流アンプ32で増幅し、この信号を元に加減算して、フォーカス誤差信号生成回路22にてフォーカス誤差信号を、トラッキング誤差信号生成回路23にてトラッキング誤差信号を、加算器34にて第二の再生信号(RF信号)を生成する。なお、差動位相検出回路24により、読出専用媒体のトラッキング制御にも対応している。直流増幅光電流アンプ32の信号の利得も、感度切替信号線69の電圧によって切替えられる。媒体の種類や再生速度によって、また再生と記録の切替によって利得が切替わる。受光素子チップ28上の受光面の構成としては、図1の他、図3に示した差動非点収差検出用の構成を用いることができる。可動部ピックアップ101側には、不揮発性メモリ素子である情報記憶素子104を搭載しており、固定部回路基板102から情報読出し線105によって、記憶情報を読出すことができる。
【0044】
前記第二の再生信号は、遅延時間調整手段67と利得可変手段35を経て、低域通過フィルタ36を通過し、減算器37の一入力へ供給される。一方、前記第一の再生信号は、もう一つの低域通過フィルタ36を通過した減算器37のもう一つの入力と、加算器38へ供給される。減算器37にて、これらの信号の差分信号を生成して、加算器38と、高域通過フィルタ39へ供給する。高域通過フィルタは、前記差分信号の直流付近の周波数成分を取除いた信号を生成し、振幅検出手段を含む利得制御器40へ供給する。利得制御器40は、検出された差信号に応じて、利得制御手段35へ出力する電圧を変化させ、差信号の振幅が最小となるよう制御する。この初期値として、前記情報記憶素子104から読出した記憶情報を用いる。なお、利得制御器40は、主制御回路45からの指令によって光源波長の切替えや装置の状態に応じて、利得の制御を変化させることができる。また遅延時間調整手段67は、主制御回路45からの指令によって、遅延時間を調整できるようになっている。加算器38は、前記差分信号と、第一の再生信号の和信号を生成する。この和信号が、合成された再生信号(合成RF信号)となる。再生信号切替手段106によって、以降の復号処理に用いるRF信号として、前記合成RF信号を用いるか、第一の再生信号をそのまま用いるかを選択できるようになっている。
【0045】
再生信号切替手段106により選択された再生信号は、等価回路41、レベル検出回路42、同期クロック生成回路43を経て、複号回路44にて、記録された元のデジタル信号に変換される。また、同期クロック生成回路43は同時に、合成された再生信号を直接検知して同期信号を生成し、復号回路44へ供給する。これらの一連の回路は、主制御回路45によって統括的に制御される。
【0046】
このように構成した光学系・回路系によって、図2の従来光学系に比較して、次の(1)〜(4)の主に4点を改善している。
【0047】
(1)利得調整手段35に加え、遅延時間調整手段67を追加し、利得と遅延時間を調整できるようにした。媒体の種類や再生倍速に応じて感度を切替えると共に、遅延時間も感度に応じて切替えるようにした。RF用光電流アンプ33と直流増幅光電流アンプ32の利得(感度)を切替ると、同時に遅延時間差も変わるため、これらの2つのRF信号の遅延時間差を打消して補正する構成としている。感度と遅延時間差の両方を、帯域合成前にできるだけ正確に一致させることで、帯域合成後のRF信号に生じる歪を大幅に低減できる。2つのRF検出器からの信号のタイムラグ(時間差)を打消して、良好な合成RF信号を得られる。これにより、遅延時間差によるエラーが特に大きくなる高倍速再生で、正確な復号が行えるようにした。
【0048】
また、これらを実現するために、可動部ピックアップ101と、固定部回路基板102の間を感度切替信号線69でつなぎ、感度(利得)切替と共に、切替感度手段35と遅延時間調整手段67の感度と遅延時間も切替える構成としている。
【0049】
(1)について補足すると、遅延時間可変調整手段(遅延時間調整手段67)は、帯域合成前に挿入すれば、2つのRF信号のどちらの信号線上に対し挿入しても良い。図1の構成では、切替感度手段35と遅延時間調整手段67は、図8の様に第二のRF信号の信号線上に設けているが、2つのRF信号の相対的な感度差や時間差が補正できれば良いので、図9の様に第一のRF信号の信号線上に設けても良い。帯域合成前に遅延時間の補正を行うことで、2つのRF信号の時間差をなくせるため、合成後の信号に歪が生じるのを防ぐことができる。第一のRF信号の信号線上に設けた場合、利得の安定性の高い、第二のRF信号の感度を基準に合成するので、合成RF信号の感度が一定となり安定化できるという利点がある。一方、第二のRF信号の信号線上に設けた場合、切替感度手段35と遅延時間調整手段67がノイズを発生する場合でも、第一のRF信号線におけるノイズの大半を低域通過フィルタ36で遮断することができるため、合成RF信号上で、良いS/N比を得ることができるという利点がある。感度(利得)と遅延時間を、媒体の種類や再生速度に応じて切替えることで、各媒体や再生倍速に最も適した条件でノイズの少ない合成再生信号を得ることができる。また、装置にて情報の記録を行う場合も、再生と記録に応じて、感度(利得)と遅延時間を切替えることで、記録時に照射するレーザ光量の変化や、記録中の媒体の反射率変化に対応して、記録時に同期すべき記録済データやアドレス信号を正確に得ることができ、正確な同期をとることができる。
【0050】
即ち、本構成では、記録媒体へ光を照射する光源と、戻り光の光量差より媒体に対する対物レンズ焦点位置の位置誤差信号を得るサーボ信号検出部と、サーボ信号検出部と独立して受光面が配置されており戻り光から記録信号を検出するRF信号検出部とを備え、前記RF信号検出部より得られる第1のRF信号と、サーボ信号検出部より得られる第2のRF信号を、帯域合成することで、合成RF信号を生成している。この際、遅延時間可変調整手段(遅延時間調整手段67)を、帯域合成前の2つのRF信号のどちらかに対して挿入し、前記第1のRF信号と前記第2のRF信号の遅延時間差を調整する遅延時間の可変制御手段を設け、遅延時間調節を行うことで、高倍速においても合成された再生信号の歪を少なくし、複号時にエラーの少ない信頼性の高い情報再生装置を実現している。
【0051】
また、上記補正を正確に行うため、遅延時間調整手段の遅延時間を、記録媒体の種類や再生速度倍速に応じて、感度と共に切替える。これにより、光電流アンプ内部の回路が切替ることにより発生する、2つのRF信号の遅延時間差の違いを、倍速に応じて補正することができ、高倍速でも正確な合成再生信号を得られ、エラーの少ない復号が行える。
【0052】
(2)専用RF信号検出面を、図7(b)の様に、半反射鏡103を用いて光路を垂直方向に分離し、多層媒体使用時に、他の層からの不要な多層反射光107が、四分割光検出器29とRF信号検出面30の間で、相互の受光面に重ならないようにした。また、半反射鏡103のガラス厚を1.5〜3.0mm程度と厚めにし、透過時に非点収差を発生させることで、これを四分割光検出器29による非点収差法によるフォーカス検出に用いることができる。これにより、合焦点時の中央スポットは、四分割光検出器29の半分程度(〜50μm)にまで広がる。一方、半反射鏡103で反射された、RF信号検出面30へ向かう光は、非点収差が発生せずに、検出面に到達するため、合焦点時の検出面上のスポットは、5〜10μm程度まで、ほぼ理想的に小さく絞られる。このため、検出面のサイズを、四分割光検出器29の半分以下と、さらに小さくすることができ(図7(b))、多層反射光107の受光量も小さくすることができる。この2つの効果によって、多層媒体再生時の、他層からの漏込み光で生じる光干渉を大幅に低減でき、多層不要光による信号の乱れを小さく抑えることができる。即ち、半反射鏡103を用いて光束分割することで、透過光には非点収差を与え、合焦点位置でフォーカス検出に適した大きなスポットとし、分割された反射光には非点収差を与えずに小さなスポットへ収束させ受光面を小さくすることで多層干渉を防ぐという、2つのスポットの違いを簡易に作り出すことができる。これにより、非点収差発生用の(特許文献1図20中のような)シリンドリカルレンズが省けるという利点がある。また、受光素子28が、光電流アンプと一体化したOEICである場合、OEICチップとは独立に、RF信号検出面30を電気的に絶縁して設置することで、GNDを介したクロストーク・ノイズを減らすことができる。
【0053】
(2)について補足すると、中央スポットの受光面である、四分割光検出器29のサイズは、一般的には、合焦点時の中央スポット径の2倍程度に設定されており、同中央スポット径と同程度の検出器の位置ズレ余裕がある。RF信号検出面30にも、同程度の(〜50μm)検出器の位置ズレ余裕を持たせると、スポットがほぼ一点に小さく絞れる分、この位置ズレ余裕分が受光面サイズとなる。即ち、フォーカス誤差検出方式として非点収差法を用いている場合、前記RF信号検出部の受光面の大きさは、主受光面の大きさの半分程度のものが、比較的簡易に実現できる。なお、ここでは、合焦点時の中央スポットを受光する光検出面を主受光面と呼んでおり、本構成例では四分割光検出器29が主受光面に当る。これにより、多層不要光による信号の乱れは、図7(a)の様な構成を用いた場合に比べ、面積比で4分の1、相互の重なりがなくなることでさらに半分となり、合わせて8分の1程度に低減できる。これにより、3層以上の多層媒体を再生する場合でも、十分に干渉光による信号の乱れが低減できる。
【0054】
即ち、本構成では、 記録媒体へ光を照射する光源と、戻り光の光量差より対物レンズ位置誤差信号を得るサーボ信号検出部と、サーボ信号検出部と独立して受光面が配置されており戻り光から記録信号を検出するRF信号検出部を設置し、RF信号検出部を、サーボ検出部を有する受光素子チップとは独立した素子チップとしている。かつ、このRF信号検出部の受光面の大きさを、サーボ信号検出部の主受光面の大きさよりも小さくすることで、多層媒体再生時の、多層光干渉によるを再生信号の乱れを、問題にならない程度まで小さく抑えている。
【0055】
(3)図1の様に、可動部ピックアップ101上に情報記憶素子104を設け、ピックアップ個々のアンプの感度ばらつきや、各感度における遅延時間ばらつきを、この情報記憶素子104の情報(値)に基き補正する構成とした。具体的には、可動部ピックアップ101上の情報記憶素子104中に、ピックアップ個々のアンプの、各々の利得切替時の正確な利得(または補正値)の値や遅延時間の変化量を、各利得に対応して記憶しておく。可動部ピックアップ101上の情報記憶素子104と固定部回路基板102の間を、情報読出し線105によってつなぎ、情報記憶素子104中の前記情報を読出して、媒体の種類や記録/再生と倍速に応じて、これらの感度切替と遅延時間の切替を行う。情報記憶素子104は、具体的には、電気的消去可能な読出し専用メモリ、EEP−ROM等である。主制御回路45によって、この情報の読出しを行い、この情報に基いて、前記利得調整手段35の利得と、前記遅延時間調整手段67の遅延時間量を、媒体の種類や記録/再生倍速に応じて設定する。図1では、帯域合成手段(遅延時間調整手段67から加算器38に至る回路)は、図10の様に固定部回路基板102側に設けているが、これを図11の様に可動部ピックアップ101上に設け、ピックアップ上で帯域合成を行う構成としても良い。但し、後者の場合、可動部ピックアップ101と固定部回路基板102の間に、感度補正量切替信号線108と遅延時間量切替信号線109を設け、主制御回路45から、利得調整手段35の感度補正量と、遅延時間調整手段67の遅延時間量を切替られるよう構成する。図10の場合は、2系統のRF信号を独立して伝送しており(RF信号を生成できる4D信号(全受光面信号)とRF信号検出面30のRF信号とを併せて伝送)、典型的には、ドライブ側(固定部回路基板側)の信号処理IC(集積回路)上で帯域合成する。
【0056】
そして、各感度における感度補正量・遅延時間補正量を、情報記憶素子104に記憶しておき、この情報をピックアップより読出して、その情報に基づきゲイン調節を行ってから帯域合成する。利得調整手段35と遅延時間調整手段67の初期値を、情報記憶素子104の情報により設定すればよいので、各ピックアップのばらつきをこの初期値で吸収することができ、調整の開始時における粗調整が不要となるため、情報再生装置の初期化にかかる時間を短くし、装置の起動を高速化することができる。帯域合成の信号処理を、固定部回路基板側のIC集積回路へ一体化できるため、低コストとなる。またデジタル信号処理による帯域合成も可能となる。また、温度変化や経時変化に対応するため、学習手段(ゲイン自動調整手段)が必要となる場合であっても、調整が微調整のみで済み、粗調整が不要となるため、ピックアップのコストを安くできる。
【0057】
即ち、本構成では、可動部ピックアップ上に、電気的に読書き可能な記憶素子を設け、その記憶素子に記録された情報に基いて、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの遅延時間量を倍速に応じて切替えできる切替手段を設けており、倍速に応じた遅延時間量の初期値を、各々ピックアップ上のから読出した記憶素子の情報に従って設定することで遅延時間調整に必要となる初期化時間を短くしている。
【0058】
また、本構成では、ピックアップ上にて、サーボ信号検出部と独立して配置されたRF信号検出部より得られる第1のRF信号と、サーボ信号検出部より得られる第2のRF信号を、同時に出力している。この際、ピックアップ上に、電気的に読書き可能な記憶素子を設け、前記第1のRF信号と前記第2のRF信号の出力感度の情報を、前記記憶素子内に記録してある。この出力感度情報に基いて、利得制御手段を調節する。本構成では、感度情報についても、可動部ピックアップ上の電気的に読書き可能な記憶素子から読出して、固定部回路基板上で帯域合成を行う構成としている。遅延時間だけでなく、感度(又は感度補正量)の初期値を、各々ピックアップ上のから読出した記憶素子の情報に従って設定することで、情報再生装置全体としての感度調整に必要となる初期化時間を短くしている。
【0059】
これらとは異なり、図11の様に、帯域合成手段を可動部ピックアップ上に搭載した構成とする場合には、媒体の種類または倍速に応じて光電流アンプの感度を切替える感度切替信号線69と併せて、利得補正量切替信号線108を設けて、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの信号線上に設けた利得調整手段35を用い、固定部回路基板側から、感度切替と共に利得補正量を切替えることで、感度切替に応じて生じる信号強度の差を補正することが必要となる。光電流アンプの感度と利得補正量は、各感度における感度の校正に、異なる値に設定することが必要となる場合があり、感度切替信号線と利得補正量切替信号線を別に設けることで、これらの相互の校正が可能となる。
【0060】
また、固定部回路基板側との間に、遅延時間量切替信号線109とを設けて、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの信号線上に設けた遅延時間補正手段67を用い、遅延時間量を切替えることで、感度切替に応じた信号のタイミングずれを補正する。
【0061】
これらにより、媒体の種類や倍速に応じて感度切替を行った場合でも、各々の感度に対応して、帯域合成における第1と第2のRF信号の感度と信号タイミングを一致させ、合成RF信号の信号歪の発生が防げる。調整の必要となる部分をピックアップ上に集約することができるため、情報再生装置全体としての低コスト化が可能となる。また、これらの補正を、ピックアップ上で行い、ピックアップ上で帯域合成することで、可動部ピックアップ101と固定部回路基板102との間にまたがるRF信号の伝送線路が1本にまとまるため、特に高周波信号品質が求められるRF信号線本数が減り、配線の引回しに対して信号特性が安定するという利点がある。
【0062】
(4)図1の様に、倍速に応じて、帯域合成をOFFできる再生信号切替手段106を設け、帯域合成をスキップできるようにした。この切替手段によって、高倍速での再生時は、帯域合成手段により出力される帯域合成されたRF信号に代えて、第一のRF信号をそのまま出力し、媒体記録情報の複号に用いる。図12の様に、この再生信号切替手段106により選択されたRF信号が、後段の等化回路41、レベル検出回路42、同期クロック生成回路43、復号回路44に用いられる。高倍速時は、復号に必要な信号帯域(再生信号帯域)が高周波側にシフトして、低域(直流付近)の信号が不要となり、帯域合成が不要となる。不要となった帯域合成を省き、第一のRF信号をそのまま復号に用いて、ノイズ源となる帯域合成アンプを信号経路から外すことで、高倍速時に、より良いジッタを得られる構成とした。
【0063】
即ち、本構成では、復号に用いるRF信号として、帯域合成を行った帯域合成手段の出力と、第一のRF信号の直接出力とを、媒体の種類または再生倍速に応じて切替える切替手段を設けている。この切替により、専用RF検出面の良好なRF信号を、劣化なくそのまま復号に用いることができ、再生データの信頼性が向上する。
【0064】
即ち、本構成においては、これらの手段を組合せて用いることで、光ディスク等情報記録媒体より情報を再生する情報再生装置において、高密度かつ高速な情報再生を実現できる。典型的には、情報再生装置の一つであるDVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)では、そのノイズ特性は、図13の様である。横軸は転送速度88、縦軸は雑音強度89である。ディスク等、媒体自身が持つ媒体雑音強度91や、レーザ光に含まれるレーザ光量変化に伴うノイズであるレーザ雑音強度92に比べ、光電流アンプが主に発生するシステム雑音強度90が大きく、60Mbps以上で主な雑音要因となって、エラーの発生が増加していた。本構成を用いると、光電流アンプのノイズが10dB以上低減することで、改善後システム雑音強度93が低下し、他の要因が同じ雑音強度のままでも、140Mbps以上へ高速化することができる。特に青色レーザ光を用い、再生時のレーザ光量が記録密度で制限される、10Gビット/インチを超える高密度の情報再生装置において、光電流アンプノイズにより制限されていた再生速度制限を解消でき、高い信頼性を保持したまま140Mbps以上に情報再生を高速化できる。
【0065】
なお、利得調整手段35は、増幅器である必要はなく、半固定抵抗器のように、減衰量を可変に調整できる素子でよい。遅延時間調整手段67としては、ディレイラインや遅延信号線でも良いが、サンプリング後にデジタル信号処理によって実現することもできる。これについては次の実施例2で述べる。
【実施例2】
【0066】
(デジタル演算による遅延時間調整手段を有する情報再生装置)
図14〜図17を用いて、専用RF信号検出面を備える情報再生装置とその効果について説明する。
【0067】
図14は、等化(イコライザ)処理以降をデジタル信号処理により行う場合の信号処理系を、図12の全体構成の中から抜出したものである。図12の全体構成に比べ、再生信号切替手段106の後で、アナログデジタル変換器78を追加している。また、2つの低域通過フィルタ36をまとめて、減算器37の後へ配置している。この図14の構成では、遅延時間調整手段67から加算器38に至る帯域合成をアナログ的に行っている。この構成は、遅延時間調整手段67と利得調整手段35に至る、帯域合成までを可動部ピックアップ上に搭載する構成であり、調整の必要な部分を固定部回路基板102から切離せるため、均一な性能のピックアップを作製しやすいという利点がある。一方、多種類の媒体に対応して、多段で感度切替する場合は、回路構成が複雑となりやすい。
【0068】
一方、図15は、帯域合成を含めてデジタル信号処理により行う場合の信号処理系である。図14の構成に比べ、アナログデジタル変換器78を、2つのRF信号(第一のRF信号と第二のRF信号の両方)に対して設け、遅延時間調整手段67以降の帯域合成と、等化(イコライザ)処理以後の両方を、デジタル的に計算処理で行っている。この構成は、遅延時間調整手段67と利得調整手段35に至る帯域合成を、固定部回路基板102上の信号処理用集積回路で行う構成であり、アナログ回路上の調整が不要となるため、多種類の媒体に対応して、多段で感度切替する場合に、低コストとなる利点がある。この、図15の構成では、遅延時間調整手段67をデジタル的な計算処理により実現する必要がある。この実現方法を、次に、図16〜図17を用いて説明する。
【0069】
図16は、遅延時間調整手段67をデジタル信号処理により実現する場合の、遅延時間調整手段67の内部構成例である。横軸は時間60で、縦軸は信号電圧61である。アナログデジタル変換器78により、一定時間間隔Tでサンプリングされた再生信号62が入力される。この時、周期Tよりも細かなタイミングで時間遅延された信号を得るには、図17の様に、隣合う2点間のサンプリング信号電圧を、例えばa:bで加重平均(内挿計算)すればよい。これにより、微小に遅延した信号を、近似的に得ることができる。サンプリング周期Tに対し、Δtだけ遅延した信号を得るためには、a=Δt/T、また、b=1−(Δt/T)、とし、加重平均すればよい。
【0070】
この操作を、デジタル的に信号処理する場合の構成が、先程の図16になっている。即ち、入力された再生信号62を、複数の1クロック遅延手段79により、時間Tずつ遅延した信号列を生成する。このうち、隣合う2つのサンプリング信号に対して、各々aとbを乗算器57により乗算し、2つの乗算結果を加算器83により加算し、加重平均後再生電圧信号68を得る。この加重平均後再生電圧信号68が、Tの整数倍の時間に加え、任意の時間Δtだけ遅延した、遅延時間調整手段67の出力となっている。これにより、どのような微小な時間刻みで遅延した再生信号も、デジタル信号処理で生成でき、高倍速においても正確に時間差を補正した合成再生信号が得られる。
【0071】
即ち、本構成では、遅延時間の可変制御手段として、一定の時間間隔でサンプリングされたサンプル信号列の、隣接する2つのサンプル信号の加重平均をとることにより、前記サンプリングの前記時間間隔よりも小さな時間差の遅延を調整している。これにより、微小な時間差の遅延を、計算処理(ソフトウェア)で行えるため、遅延線路等、ハードウェア的な遅延手段が不要でコスト安となり、また、どのように細かな時間調整も計算で高精度に実現でき、細かな調整ができるため、時間差をほぼ完全に打消して、合成後のRF信号の品質を高くでき、エラーの少ない復号が行える。
【符号の説明】
【0072】
7…光ディスク、8…回転サーボ回路、9…モータ、10a,b,c…レーザ駆動回路、11a,b,c…半導体レーザ、12a,b,c…回折格子、13…コリメートレンズ、14…ビーム整形プリズム、15…反射鏡、16a,b…合成プリズム、17…偏光ビームスプリッタ、18…液晶収差補正素子、19…λ/4板、20…対物レンズ、21…アクチュエータ、22…焦点サーボ回路、23…トラッキングサーボ回路24…差動位相検出回路、26…検出レンズ、27…回折格子、28…受光素子チップ、29…四分割光検出器、30…RF信号検出面、31,31a…サブスポット用受光面、32…直流増幅光電流アンプ、33…RF用光電流アンプ、34…加算器、35…利得調整手段、36…低域通過フィルタ、37…減算器、38…加算器、39…高域通過フィルタ、40…利得制御器、41…等化回路、42…レベル検出回路、43…同期クロック生成回路、44…復号回路、45…主制御回路、57…乗算器、60…時間、61…信号電圧、62…再生信号、67…遅延時間調整手段、68…加重平均後再生電圧信号、69…感度切替信号線、70…周波数、71…信号強度、74…ACアンプ雑音強度、75…DCアンプ雑音強度、76…合成アンプ雑音強度、78…アナログデジタル変換器、79…1クロック遅延手段、81…化合物電界効果トランジスタ、82…アンプ出力、83…加算器、88…転送速度、89…雑音強度、90…システム雑音強度、91…媒体雑音強度、92…レーザ雑音強度、93…改善後システム雑音強度、101…可動部ピックアップ、102…固定部回路基板、103…半反射鏡、104…情報記憶素子、105…情報読出し線、106…再生信号切替手段、107…多層反射光、108…利得補正量切替信号線、109…遅延時間量切替信号線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を記録媒体上に集光する対物レンズと、
記録媒体からの戻り光から第1のRF信号および前記対物レンズの焦点位置の誤差信号を検出する第1の検出部と、
記録媒体からの戻り光から第2のRF信号を検出する第2の検出部と、
前記第1の検出部の感度と前記第2の検出部の感度を制御する制御部と、を有し、
前記第1の検出部と前記第2の検出部とは独立に配置されており、
前記制御部は、前記第1のRF信号と前記第2のRF信号とを時間調整し合成する、光ピックアップ。
【請求項2】
光を出射する光源と、
前記光源から出射された光を記録媒体上に集光する対物レンズと、
記録媒体からの戻り光より第1のRF信号とサーボ信号を検出するサーボ信号検出部と、
前記サーボ信号検出部とは独立して配置されており、記録媒体からの戻り光より第2のRF信号を検出するRF専用検出部と、
前記第1のRF信号と前記第2のRF信号を帯域合成し、該合成されたRF信号から情報を復号する復号部と、
前記第1のRF信号と前記第2のRF信号の遅延時間差を調整する遅延時間可変制御手段と、を有する、光学情報再生装置。
【請求項3】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記第1のRF信号と前記第2のRF信号のうち何れかにおいて遅延時間可変制御手段を設ける、光学情報再生装置。
【請求項4】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記遅延時間可変制御手段は、一定の時間間隔でサンプリングされたサンプル信号列の加重平均をとり、遅延時間を調整する、光学情報再生装置。
【請求項5】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記遅延時間可変手段は、前記記録媒体の種類に応じて遅延時間を切替える、光学情報再生装置。
【請求項6】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記遅延時間可変手段は、再生速度に応じて遅延時間を切替える、光学情報再生装置。
【請求項7】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記復号部は復号に用いるRF信号として、前記帯域合成を行った合成RF信号と、前記第2のRF信号とを媒体の種類に応じて選択する、光学情報再生装置。
【請求項8】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記復号部は復号に用いるRF信号として、前記帯域合成を行った合成RF信号と、前記第2のRF信号とを再生速度に応じて選択する、光学情報再生装置。
【請求項9】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記帯域合成を行う帯域合成手段を可動部ピックアップ上に搭載する場合において、固定部回路基板側との間に、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの遅延時間補正量を切替える遅延時間補正量切替信号線とを設けた、光学情報再生装置。
【請求項10】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
前記帯域合成を行う帯域合成手段を可動部ピックアップ上に搭載する場合において、固定部回路基板側との間に、媒体の種類または再生速度に応じて光電流アンプの感度を切替える感度切替信号線と、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの利得補正量を切替える利得補正量切替信号線とを設けた、光学情報再生装置。
【請求項11】
請求項2に記載の光学情報再生装置であって、
可動部ピックアップ上に、電気的に読書き可能な記憶素子を設け、その記憶素子に記録された情報に基いて、前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの遅延時間量を、媒体の種類または倍速に応じて切替る、光学情報再生装置。
【請求項12】
記録媒体へ光を照射する光源と、戻り光の光量差より対物レンズ焦点位置の位置誤差信号を得るサーボ信号検出部と、サーボ信号検出部と独立して配置されたRF信号検出部とを備え、前記RF信号検出部より得られる第1のRF信号と、サーボ信号検出部より得られる第2のRF信号を、出力する情報再生装置であり、電気的に読書き可能な記憶素子を設け、前記第1のRF信号と前記第2のRF信号の出力感度の情報を、前記記憶素子内に記録したことを特徴とする光学情報再生装置。
【請求項13】
請求項12に記載の光学情報再生装置において、前記第1のRF信号と前記第2のRF信号を帯域合成することにより合成RF信号を得て情報を復号する光学情報再生装置であり、前記読書き可能な記憶素子の情報に基いて前記第1のRF信号または前記第2のRF信号の何れかの感度利得を調節することを特徴とする光学情報再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−59358(P2012−59358A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248191(P2011−248191)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【分割の表示】特願2006−342069(P2006−342069)の分割
【原出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】