説明

光ピックアップ装置および光ディスク装置

【課題】本発明は上記課題を解決するためになされたもので、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げることができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することを目的とする。
【解決手段】レーザ光を出射する光源1と、レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスク101に集光する対物レンズ5と、光ディスク101からの反射光を受光するOEIC7と、を備え、光ディスク101と対物レンズ5の間に位置しレーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、遮光手段は、少なくとも光ディスク101からの反射光を完全に遮光する遮光領域5aと、光ディスク101からの反射光の一部を透過させる低透過率領域5bと、から構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクに情報の記録または再生の少なくとも一方を行う光ピックアップ装置および光ディスク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、光ディスクは、高密度記録を実現できるように、光ディスクの厚み方向に複数の記録層を持つものが増えてきた。この厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに記録、もしくはこの厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクを再生する場合、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わる。このとき、光ディスク装置は、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光と同時に受光部に入射した状態で、トラッキング制御をする必要がある。
【特許文献1】特開2007−004867号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射した場合、その受光部に入射した反射光を用いてトラッキング調整を行おうとすると、トラッキング制御に支障をきたす場合があるという問題があった。
【0004】
特に、ブルーレイディスクに記録する、もしくはブルーレイディスクを再生する場合、ブルーレイディスクはその基材厚が薄く各記録層間の距離が接近しているので、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わりやすい。
【0005】
図8は、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する様子を示す図である。図8(a)は所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する様子を示し、図8(b)は受光領域に投影される干渉縞の様子を示す図である。図8において、11〜13は受光領域である。
【0006】
光ピックアップの受光部は、受光領域11、受光領域12、受光領域13の3つの受光領域から形成されている。
【0007】
光源から出射されたレーザ光は、回折素子で1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割されて光ディスクに照射される。そして、光ディスクに照射された3つのレーザ光は光ディスクで反射される。
【0008】
光ディスクから反射された反射光のうち、所望の記録層からの反射光は、1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割されたまま、各々、受光領域11、受光領域12、受光領域13に入射する。また、光ディスクから反射された反射光のうち、所望の記録層以外で反射された反射光も、1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割されたまま、光ピックアップの受光部に入射する。このとき、他の記録層からの反射光は、フォーカス位置が最適でないので、受光領域に投影される反射光のスポット形状は所望の記録層からの反射光のスポット形状に比べて大きくなる。
【0009】
このため、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する場合、図8(a)に示す状態になる。ここで、受光領域11のみに入射する光は所望の記録層からのメインレーザ光、受光領域12と受光領域13のみに入射する光は所望の記録層からのサブレーザ光、受光領域11と受光領域12と受光領域13の全てに入射する光は、他の記録層からのメインレーザ光となる。
【0010】
受光領域11では所望の記録層からのメインレーザ光によるスポットと他の記録層からのメインレーザ光によるスポットとが干渉し、受光領域11の受光面上で図8(b)に示す干渉縞が発生する。また、受光領域12では所望の記録層からのサブレーザ光と他の記録層からのメインレーザ光とが干渉し、受光領域12の受光面上で図8(b)に示す干渉縞が発生する。また、受光領域13では所望の記録層からのサブレーザ光と他の記録層からのメインレーザ光とが干渉し、受光領域13の受光面上で図8(b)に示す干渉縞が発生する。
【0011】
このように、受光領域11、受光領域12、受光領域13のそれぞれの領域で干渉縞が発生すると受光領域上の光量分布に誤差が生じてしまい、トラッキング制御に支障をきたす場合があるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、レーザ光を出射する光源と、レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスクに集光する対物レンズと、光ディスクからの反射光を受光する受光手段と、を備え、光ディスクと対物レンズの間に位置しレーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、遮光手段が、少なくとも光ディスクからの反射光を完全に遮光する遮光領域と、光ディスクからの反射光の一部を透過させる低透過率領域と、から構成されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は上記構成により、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光領域に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1記載の発明は、レーザ光を出射する光源と、レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスクに集光する対物レンズと、光ディスクからの反射光を受光する受光手段と、を備え、光ディスクと対物レンズの間に位置しレーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、遮光手段が、少なくとも光ディスクからの反射光を完全に遮光する遮光領域と、光ディスクからの反射光の一部を透過させる低透過率領域と、から構成されるものである。これにより、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光領域に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ピックアップ装置を実現できる。
【0016】
請求項2記載の発明は、遮光手段が、対物レンズの光ディスクと対向する面に設けられていることを特徴とするものである。これにより、光学部品群に入る直前で他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を遮光するので、光路上、受光手段から最も遠い位置で遮光でき、他の記録層からの反射光を確実に受光手段に入射させない。
【0017】
請求項3記載の発明は、遮光領域が、対物レンズの光ディスクと対向する面の略中央に配置されていることを特徴とするものである。これにより、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を効率良く遮光できる。
【0018】
請求項4記載の発明は、低透過率領域が遮光領域を中心に略ドーナツ状に配置されていることを特徴とするものである。これにより、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を効率良く遮光すると共に、所望の記録層から反射光の低下を最小限に抑えることができる。
【0019】
請求項5記載の発明は、レーザ光を出射する光源と、レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスクに集光する対物レンズと、光ディスクからの反射光を受光する受光手段と、を備え、対物レンズが光ディスクと対向する面にレーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、遮光手段が、対物レンズの光ディスクと対向する面の略中央に配置され光ディスクからの反射光を完全に遮光する遮光領域と、遮光領域を中心に略ドーナツ状に配置され光ディスクからの反射光の一部を透過させる低透過率領域と、から構成されることを特徴とするものである。これにより、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光領域に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ピックアップ装置を実現できる。また、光学部品群に入る直前で他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を遮光するので、光路上、受光手段から最も遠い位置で遮光でき、他の記録層からの反射光を確実に受光手段に入射させない。
【0020】
請求項6記載の発明は、請求項5記載の光ピックアップ装置と、光ディスクを回転させる回転駆動手段と、回転駆動手段に対して光ピックアップ装置を近づけたり遠ざけたりする移動手段と、を備えたことを特徴とするものである。これにより、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光領域に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ディスク装置を実現できる。
【0021】
(実施の形態1)
以下、本発明の実施の形態1について、図面を参照しながら説明する。
【0022】
なお、本実施の形態1では、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクを2層の記録層を持つ光ディスクとして説明する。また、情報の記録または再生を行う記録層を記録層101a、情報の記録または再生を行わない記録層を記録層101bとし、記録層101aを所望の記録層、記録層101bを他の記録層として説明する。
【0023】
図1は、本発明の実施の形態1における光ディスク装置のブロック図である。図1において、1は光源、2は回折格子、3はコリメータレンズ、4は分割素子、5は対物レンズ、5aは遮光領域、5bは低透過率領域、5cは高透過率領域、6は検出レンズ、7はOEIC、101は光ディスク、101aは記録層、101bは記録層である。なお、本実施の形態1における光源は光源1、対物レンズは対物レンズ5、受光手段はOEIC7(Opto−Electronic Integrated Circuit、以下、単にOEICと呼ぶ)、遮光手段は遮光領域5aと低透過率領域5b、遮光領域は遮光領域5a、低透過率領域は低透過率領域5bに相当する。
【0024】
光源1は、波長405nmのレーザ光を発するBD(Blu−ray Disc、以下単にBDと呼ぶ)用の半導体レーザと、波長約650nmのレーザ光を発するDVD(Digital Versatile Disc、以下単にDVDと呼ぶ)用の半導体レーザと、波長約780nmのレーザ光を発するCD(Compact Disc、以下単にCDと呼ぶ)用の半導体レーザと、が収納されている。光ディスク装置は、装着された光ディスク101に対応するレーザ光を出射する。
【0025】
光源1から出射されたレーザ光は回折格子2に入射後、1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割される。分割された3つのレーザ光は、コリメータレンズ3に入射して発散光から平行光に変換される。その後、分割された3つのレーザ光は分割素子4で反射され、対物レンズ5に導かれる。対物レンズ5に導かれた3つのレーザ光は、光ディスク101の記録面101a、すなわち所望の記録層に集光される。その後、光ディスク101の記録面101aで反射された3つのレーザ光は、対物レンズ5を経由して分割素子4に導かれる。
【0026】
分割素子4は、光源1から入射する光を対物レンズ5の方向に反射させると共に、対物レンズ5から入射する光を透過させる特性を有するので、対物レンズ5を経由して分割素子4に導かれた3つのレーザ光は、分割素子4を透過して検出レンズ6に入射する。検出レンズ6に入射した3つのレーザ光は、ここで、それぞれ集束されてOEIC7の受光面上に到達する。
【0027】
ここで、本発明の特徴部分について説明する。
【0028】
光ディスク101と対物レンズ5の間には、光源1から出射されたレーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段が設けられている。本実施の形態1の場合、この遮光手段は、対物レンズ5に設けられた遮光領域5aと低透過率領域5bに相当する。遮光領域5a,低透過率領域5bは共にスパッタリング法で形成され、遮光領域5aは光ディスク101からの反射光を完全に遮光する特性を有し、低透過率領域5bは光ディスク101からの反射光の一部を透過させ、残りの反射光を遮光する特性を有している。
【0029】
次に、遮光手段が設けられた対物レンズの詳細について説明する。
【0030】
図2は、本発明の実施の形態1における対物レンズの上面と側面を示す図である。図2(a)は対物レンズの上面図を示し、図2(b)は対物レンズの断面図を示している。図2において、5は対物レンズ、5aは遮光領域、5bは低透過率領域、5cは高透過率領域、5dは集光部、5eはレンズコバ部、101は光ディスク、101aは記録層、101bは記録層である。なお、図2(b)においては、記録層101aからの反射光のメインレーザ光を実線、記録層101bからの反射光のメインレーザ光を破線で示す。
【0031】
対物レンズ5は、レーザ光を集光させる略球面状の集光部5dと、トラッキング制御もしくはフォーカス制御ができるように対物レンズ5をホルダ(図示せず)に固定するレンズコバ部5eとから形成されている。集光部5dは、略球面の内部を通る3つのレーザ光の光軸が光ディスク101の記録面101a、記録面101bに対して略垂直になるように配置されている。
【0032】
集光部5dの光ディスク101に対向する面は、光ディスク101からの反射光を略全て透過させる高透過率領域5cと、光ディスク101からの反射光の一部を透過させて残りの反射光を遮光する特性を有する低透過率領域5bと、光ディスク101からの反射光を完全に遮光する特性を有する遮光領域5aと、から構成されている。
【0033】
厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスク101に記録、もしくはこの厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクを再生する場合、光ディスク101からの反射光は、所望の記録層である記録層101aからの反射光に加え、他の記録層である記録層101bからの反射光も含まれている。そして、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光とは、対物レンズ5を経由して、少なくとも分割素子4と検出レンズ6などで構成される光学部品群の光路上に入射する。
【0034】
このとき、遮光手段を形成する遮光領域5aと低透過率領域5bとは、対物レンズ5の光ディスク101と対向する面に設けられている。そして、遮光領域5aは対物レンズ5の光ディスク101と対向する面の略中央に配置され、低透過率領域5bは遮光領域5aを中心に略ドーナツ状に配置されている。
【0035】
そのため、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光は、対物レンズ5に入射する際、対物レンズ5の表面に設けられた遮光領域5aと低透過率領域5bとにより遮光される。これにより、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光は、それぞれ対物レンズ5に投影されるスポットの中心が遮光され、ドーナツ状のスポットとして分割素子4に向かう。
【0036】
図3は、本発明の実施の形態1における対物レンズの上面と断面を示す図である。図3(a)は対物レンズの上面図を示し、図3(b)は図3(a)に示す対物レンズのI−I´断面図、図3(c)は図3(a)に示す対物レンズのJ−J´断面図、図3(c)は図3(d)に示す対物レンズのK−K´断面図である。図3において、5は対物レンズ、5aは遮光領域、5bは低透過率領域、5cは高透過率領域、5dは集光部、5eはレンズコバ部である。
【0037】
遮光領域5aと低遮光領域5bは、光の透過率が略100%の集光部5dの表面に膜として形成される。ここで、遮光領域5aは光ディスク101からの反射光を略100%遮光し、低遮光領域5bは光ディスクからの反射光を70%程度遮光する。遮光領域5aと低遮光領域5bは、図3からもわかるように、その厚さが略均一の膜により形成されている。このため、遮光領域5aに到達したレーザ光は、遮光領域5aのどの位置に到達しても、そのレーザ光の光量の略100%が遮光される。また、低透過率領域5bに到達したレーザ光は、低透過率領域5bのどの位置に到達しても、そのレーザ光の光量の略100%が遮光される。
【0038】
厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスク101は、例えば、記録層101aと記録層101bが平行でない場合があるので、図3に示すような遮光領域5aと低遮光領域5bとを遮光手段として用いることで、対物レンズ5に対する記録層101aからの反射光の入射角度と、記録層101bからの反射光の入射角度とが異なる場合であっても、低遮光領域5bで記録層101bからの反射光の一部を遮光できる。
【0039】
図4は、本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に分割素子に入射する様子を示す図であり、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが入射する方向、すなわち図1に示すL方向から見た図である。図4において、4は分割素子、41a,41b,42a,42b,43a,43b,44a,44bは領域である。
【0040】
記録層101aからのメインレーザ光により分割素子4上に投影される領域は、領域41a,領域41bである。領域41aは、記録層101aからのメインレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域41bは、記録層101aからのメインレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0041】
また、記録層101aからのサブレーザ光により分割素子4上に投影される領域は、領域42a,領域42b,領域43a,領域43bである。領域42a,領域43aは、記録層101aからのサブレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域42b,43bは、記録層101aからのサブレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0042】
また、記録層101bからのメインレーザ光により分割素子4上に投影される領域は、領域44a,領域44bである。領域44aは、記録層101bからのメインレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域44bは、記録層101bからのメインレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0043】
このように、所望の記録層である記録層101aからの反射光と、他の記録層である記録層101bからの反射光により分割素子4上に投影される領域は、分割素子4の入射面に対してそれぞれ周辺部が中心部に比べ明るいドーナツ状のスポットとして投影される。
【0044】
図5は、本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に検出レンズに入射する様子を示す図であり、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが入射する方向、すなわちM方向から見た図である。図5において、6は検出レンズ、61a,61b,61c,62a,62b,62c,63a,63b,63c,64a,64bは領域である。
【0045】
記録層101aからのメインレーザ光により検出レンズ6上に投影される領域は、領域61a,領域61bである。領域61aは、記録層101aからのメインレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域61bは、記録層101aからのメインレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0046】
また、記録層101aからのサブレーザ光により検出レンズ6上に投影される領域は、領域62a,領域62b,領域63a,領域63bである。領域62a,領域63aは、記録層101aからのサブレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域62b,63bは、記録層101aからのサブレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0047】
また、記録層101bからのメインレーザ光により検出レンズ6上に投影される領域は、領域64a,領域64bである。領域64aは、記録層101bからのメインレーザ光が対物レンズ5の遮光領域5aで遮光されてレーザ光が到達しない、もしくは低透過率領域5bを通過してレーザ光が減衰して届く領域である。また、領域64bは、記録層101bからのメインレーザ光が対物レンズ5の高透過率領域5cを通過してレーザ光が減衰せずに届く領域である。
【0048】
このように、所望の記録層である記録層101aからの反射光と、他の記録層である記録層101bからの反射光により検出レンズ6上に投影される領域は、検出レンズ6の入射面に対してそれぞれ周辺部が中心部に比べ明るいドーナツ状のスポットとして投影される。
【0049】
図6は、本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する様子を示す図である。図6(a)は所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光領域に入射する様子を示し、図6(b)は受光領域に投影される干渉縞の様子を示す図である。図6において、11〜13は受光領域、14〜17は遮光部分である。
【0050】
OEIC7の受光部は、受光領域11、受光領域12、受光領域13の3つの受光領域から形成されている。
【0051】
光源1から出射されたレーザ光は、回折素子2で1つのレーザ光と2つのレーザ光の合計3つに分割されて光ディスク101に照射される。そして、光ディスク101に照射された3つのレーザ光は光ディスク101で反射される。
【0052】
光ディスク101から反射された反射光のうち、所望の記録層である記録層101aからの反射光は、1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割されたまま、分割素子4、検出レンズ6を経由してOEIC7に向かう。その後、OEIC7では、1つのメインレーザ光はOEIC7の受光領域である受光領域11、2つのサブレーサ光はOEIC7の受光領域である受光領域12と受光領域13に入射する。
【0053】
一方、光ディスク101から反射された反射光のうち、他の記録層である記録層101bからの反射光も、1つのメインレーザ光と2つのサブレーザ光の合計3つに分割されたまま、OEIC7の受光領域に入射する。このとき、対物レンズ5のフォーカス方向の位置は記録層101aに対して最適になるように調整されているので、記録層101bからの反射光はフォーカスが最適になっていない状態である。このため、OEIC7の受光領域に投影される記録層101bからの反射光は、そのスポット形状が記録層101aからの反射光のスポット形状に比べて大きくなる。そのため、記録層101bから反射される1つのメインレーザ光は、受光領域11、受光領域12、受光領域13の3つの受光領域全ての範囲に投影される。
【0054】
ところが、本発明では対物レンズ5の光ディスク101と対向する面に遮光領域5aと低透過率領域5bが設けられている。そのため、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光は、OEIC7に投影されるスポット形状の中央領域が遮光された状態でOEIC7に到達する。
【0055】
ここで、対物レンズ5のフォーカス方向の位置は記録層101aに対して最適になるように調整されているので、受光領域に投影される記録層101bからの反射光のスポット形状は、記録層101aからの反射光のスポット形状に比べて大きくなる。
【0056】
そのため、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光は、それぞれ、その中央領域に影を持つスポットとなる。記録層101aからの反射光は、遮光部分14,15,16を有するスポット全体をそれぞれ受光領域11、受光領域12、受光領域13に投影する。一方、記録層101bからの反射光は、遮光部分17を有するスポットの遮光部分17のみを受光領域11〜13全体に投影する。
【0057】
このように、本発明では、記録層101aからの反射光と記録層101bからの反射光とを同時に受光領域11、12、13に入射させること無く、受光領域11に入射するレーザ光は記録層101aからのメインレーザ光のみ、受光領域12に入射するレーザ光は記録層101aからのサブレーザ光のみ、受光領域13に入射するレーザ光は記録層101aからのサブレーザ光のみとする。これにより、受光領域11では、記録層101aからのメインレーザ光によるスポットと、記録層101bからのメインレーザ光によるスポットとが干渉しないので、受光領域11上に干渉縞を発生させることが無い。また、受光領域12では、記録層101aからのメインレーザ光によるスポットと、記録層101bからのメインレーザ光によるスポットとが干渉しないので、受光領域12上に干渉縞を発生させることが無い。また、受光領域13では、記録層101aからのメインレーザ光によるスポットと、記録層101bからのメインレーザ光によるスポットとが干渉しないので、受光領域13上に干渉縞を発生させることが無い。
【0058】
以上の内容により、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光領域に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ピックアップ装置を実現できる。
【0059】
また、本発明は、図2に示すように、遮光手段を形成する遮光領域5aと低透過率領域5bとを対物レンズ5の光ディスク101と対向する面に設け、光学部品群に入る直前で他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を遮光するので、光路上、受光手段から最も遠い位置で遮光でき、他の記録層からの反射光を確実に受光手段に入射させない。
【0060】
さらに、本発明は、図2に示すように、遮光領域5aを、対物レンズ5の光ディスク101と対向する面の略中央に配置しているので、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を効率良く遮光できる。
【0061】
さらにまた、本発明は、図2に示すように、低透過率領域5bが遮光領域5aを中心に略ドーナツ状に配置されているので、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を効率良く遮光すると共に、所望の記録層から反射光の低下を最小限に抑えることができる。
【0062】
なお、本実施の形態1では、光ディスク101がその厚み方向に2つの記録層を持つものについて説明したが、これに限定されるものではなく、光ディスク101が3層以上の記録層を持つものについても適用可能である。
【0063】
また、本実施の形態1では、遮光手段を対物レンズの表面に設けられた膜として説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、対物レンズ5と光ディスク101の間に別部材として設けるものであっても良い。
【0064】
図7は、本発明の実施の形態1における光ピックアップを用いた光ディスク装置を示す図である。図7において、200は筐体、200aは上部筐体部、200bは下部筐体部、201はトレイ、202はスピンドルモータ、203は光ピックアップ、204はベゼル、205は出没口、206はレール、207はレール、208はイジェクトスイッチ、209はキャリッジである。なお、本実施の形態1における回転駆動手段はスピンドルモータ202、移動手段はキャリッジ209である。
【0065】
筐体200は、上部筐体部200aと下部筐体部200bを組み合わせて構成されている。なお、上部筐体部200aと下部筐体部200bとは螺旋などを用いて、互いに固着されている。トレイ201は筐体200に出没自在に設けられ、トレイ201の中央付近にスピンドルモータ202が設けられている。
【0066】
光ピックアップ203は、光ディスク101に情報の記録または再生の少なくとも一方を行う。また、光ピックアップ203は、光ディスクの半径方向に移動可能に保持されたキャリッジ209に搭載され、キャリッジ209は光ピックアップ203をスピンドルモータ202に対して近づけたり遠ざけたりする。
【0067】
ベゼル204はトレイ201の前端面に設けられ、トレイ201が筐体200内に収納されたときに、トレイ201の出没口205を塞ぐように構成されている。
【0068】
レール206、207は、それぞれトレイ201及び筐体200の双方に摺動自在に取り付けられ、トレイ201の両側部にこのレール206,207は設けられており、このレール206,207にて矢印P方向に筐体200からトレイ201が出没自在になるように取り付けられている。
【0069】
トレイ201の前端面に設けられたベゼル204にはイジェクトスイッチ208が設けられており、このイジェクトスイッチ208を押すことで、筐体200に設けられた係合部(図示せず)とトレイ201に設けられた係合部(図示せず)との係合を解除する。
【0070】
図7に示す光ディスク装置に、本発明の光ピックアップ装置を搭載することにより、所望の記録層からの反射光に他の記録層からの反射光が迷光として加わった際、他の記録層からの反射光により形成されるスポットの中央領域を除去するので、所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とを同時に受光手段に入射させない。その結果、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させないので、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができる光ディスク装置を実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、厚み方向に複数の記録層を持つ光ディスクに対してトラッキング調整を行う場合であっても、受光手段の受光面上に投影されるスポットに干渉縞を発生させず、トラッキング制御に用いる信号の精度を上げ、トラッキング制御の精度を高めることができるため、光ディスクに情報の記録または再生の少なくとも一方を行う光ピックアップ装置および光ディスク装置などに適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施の形態1における光ディスク装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1における対物レンズの上面と側面を示す図
【図3】本発明の実施の形態1における対物レンズの上面と断面を示す図
【図4】本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に分割素子に入射する様子を示す図
【図5】本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に検出レンズに入射する様子を示す図
【図6】本発明の実施の形態1における所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する様子を示す図
【図7】本発明の実施の形態1における光ピックアップを用いた光ディスク装置を示す図
【図8】所望の記録層からの反射光と他の記録層からの反射光とが同時に受光部に入射する様子を示す図
【符号の説明】
【0073】
1 光源
2 回折格子
3 コリメータレンズ
4 分割素子
5 対物レンズ
5a 遮光領域
5b 低透過率領域
5c 高透過率領域
5e 集光部
5e レンズコバ部
6 検出レンズ
7 OEIC
11、12、13 受光領域
14、15、16、17 遮光部分
41a、41b、42a,42b、43a,43b、44a,44b 領域
61a,61b、62a,62b、63a,63b、64a,64b 領域
101 光ディスク
101a 記録層
101b 記録層
200 筐体
200a 上部筐体部
200b 下部筐体部
201 トレイ
202 スピンドルモータ
203 光ピックアップ
204 ベゼル
205 出没口
206 レール
207 レール
208 イジェクトスイッチ
209 キャリッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスクに集光する対物レンズと、
前記光ディスクからの反射光を受光する受光手段と、を備え、
前記光ディスクと前記対物レンズの間に位置し前記レーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、
前記遮光手段は、少なくとも前記光ディスクからの反射光を完全に遮光する遮光領域と、前記光ディスクからの反射光の一部を透過させる低透過率領域と、から構成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
前記遮光手段は、前記対物レンズの前記光ディスクと対向する面に設けられていることを特徴とする請求項1記載の光ピックアップ装置。
【請求項3】
前記遮光領域は、前記対物レンズの前記光ディスクと対向する面の略中央に配置されていることを特徴とする請求項2記載の光ピックアップ装置。
【請求項4】
前記低透過率領域は、前記遮光領域を中心に略ドーナツ状に配置されていることを特徴とする請求項3記載の光ピックアップ装置。
【請求項5】
レーザ光を出射する光源と、
前記レーザ光を少なくとも第1記録層と第2記録層とからなる光ディスクに集光する対物レンズと、
前記光ディスクからの反射光を受光する受光手段と、を備え、
前記対物レンズは前記光ディスクと対向する面に前記レーザ光の少なくとも一部を遮光する遮光手段を有し、
前記遮光手段は、前記対物レンズの前記光ディスクと対向する面の略中央に配置され前記光ディスクからの反射光を完全に遮光する遮光領域と、前記遮光領域を中心に略ドーナツ状に配置され前記光ディスクからの反射光の一部を透過させる低透過率領域と、から構成されることを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項5記載の光ピックアップ装置と、
光ディスクを回転させる回転駆動手段と、
前記回転駆動手段に対して前記光ピックアップ装置を近づけたり遠ざけたりする移動手段と、を備えたことを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−73228(P2010−73228A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236093(P2008−236093)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】