説明

光ピックアップ装置および光ディスク装置

【課題】簡素な構成にて効果的に迷光を除去することができ、且つ、引き込み後の記録層が目標記録層であるかを迅速かつ適正に判定することができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供する。
【解決手段】角度調整素子111は、ディスクによって反射されたレーザ光のうち、レーザ光軸の周りに設定された異なる4つの光束領域A〜Dの光束の進行方向を互いに異ならせ、光束領域A〜Dの光束を互いに離散させる。光検出器112は、レーザ光がディスク中の所定の記録層に合焦されたときに当該記録層によって反射された4つの光束領域内の光束をそれぞれ受光するセンサ群A〜Hと、レーザ光の焦点が記録層より手前にあるときに記録層にて反射された光束が入射するセンサA11、A12と焦点が記録層より奥にあるときに記録層にて反射された光束が入射するセンサB11、B12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置およびそれを内蔵する光ディスク装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層されたディスクに対して記録/再生を行う際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層を配することも検討されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、ピンホールを用いて迷光を除去する技術が記載されている。また、特許文献2には、1/2波長板と偏光光学素子を組み合わせることにより迷光を除去する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2006−260669号公報
【特許文献2】特開2006−252716号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術によれば、ターゲット記録層から反射されたレーザ光(信号光)の収束位置にピンホールを正確に位置づける必要があるため、ピンホールの位置調整作業が困難であるとの課題がある。位置調整作業を容易にするためピンホールのサイズを大きくすると、迷光がピンホールを通過する割合が増加し、迷光による信号劣化を効果的に抑制できなくなる。
【0006】
また、特許文献2の技術によれば、迷光を除去するために、1/2波長板と偏光光学素子が2つずつ必要である他、さらに、2つのレンズが必要であるため、部品点数とコストが増加し、また、各部材の配置調整が煩雑であるとの課題がある。また、これらの部材を並べて配置するスペースが必要となり、光学系が大型化するとの課題もある。
【0007】
さらに、複数の記録層を有する光ディスクを用いる場合には、レーザ光を記録/再生目標の記録層に正確に引き込む必要がある。このため、引き込み動作時には、引き込み後の記録層が目標記録層であるかを迅速かつ適正に判定する必要がある。
【0008】
本発明は、以上の課題を解消するためになされたものであり、簡素な構成にて効果的に迷光を除去することができ、且つ、引き込み後の記録層が目標記録層であるかを迅速かつ適正に判定することができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ装置に関するものである。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光に非点収差を導入し、これにより、第1の方向に前記レーザ光が収束することによって生じる第1の焦線位置と、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光が収束することによって生じる第2の焦線位置とを前記レーザ光の進行方向に互いに離間させる非点収差素子と、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光のうち、異なる4つの光束領域内の光束の進行方向を互いに異ならせ、これら4つの光束領域内の光束を互いに離散させる光学素子と、前記離散された各光束を受光して検出信号を出力する光検出器とを備える。ここで、前記光学素子は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に2つの前記光束領域が配置され、他の一組の対頂角が並ぶ方向に残りの2つの前記光束領域が配置されるよう、前記4つの光束領域を設定する。また、前記光検出器は、前記レーザ光が前記記録媒体中の所定の記録層に合焦されたときに当該記録層によって反射された前記4つの光束領域内の光束をそれぞれ受光する第1のセンサ群と、前記4つの光束領域内の光束のうち少なくとも第1の光束を受光するとともに前記レーザ光の焦点が前記記録層より手前にあるときに前記記録層にて反射された前記第1の光束が入射する第1のセンサ部と前記焦点が前記記録層より奥にあるときに前記記録層にて反射された前記第1の光束が入射する第2のセンサ部とを備える第2のセンサ群とを有する。
【0010】
第1の態様によれば、4つの光束領域と非点収差の方向(第1および第2の方向)との関係を上記のように設定したため、ターゲット記録層にて反射されたレーザ光(信号光)と、当該ターゲット記録層の上および/若しくは下の記録層から反射されたレーザ光(迷光)とが、光検出器の受光面(オンフォーカス時に信号光スポットが最小錯乱円になる面)上において、互いに重なり合わないようにすることができる。したがって、第1のセンサ群により信号光のみを受光することができ、よって、迷光による検出信号の劣化を抑制することができる。また、この作用を、光学素子を光路中に配置するのみで実現できる。よって、この態様によれば、簡素な構成にて効果的に迷光による影響を除去することができる。
【0011】
加えて、第1の態様によれば、第2のセンサ群を上記のように配することにより、第1のセンサ部からの出力信号と第2のセンサ部からの出力信号との差分信号をもとに、記録媒体中におけるレーザ光の焦点の位置を検出することができる。よって、本態様に係る光ピックアップ装置を光ディスク装置に搭載すれば、前記差分信号をもとに、ディスク中のどの記録層にレーザ光がフォーカスされているかを判別することができる。
【0012】
なお、第1の態様においては、前記第2のセンサ群は、前記記録層によって反射された前記4つの光束領域内の光束を受光するよう構成され得る。こうすると、上述の差分信号を各光束について取得できるため、各光束の差分信号を加算することにより、差分信号の信号値を高めることができる。
【0013】
また、第1の態様において、前記4つの光束領域は、前記2つの直線によって前記レーザ光の光束領域を4分割することにより設定され得る。
【0014】
さらに、第1の態様において、前記光学素子は、前記第1のセンサ群によって受光される各光束が前記光検出器の受光面上において直方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記光束領域の進行方向を変化させるよう構成され得る。さらに、前記光学素子は、前記第1のセンサ群によって受光される各光束が前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、4つの前記光束領域の進行方向を、前記第1および第2の方向に対し45°の方向で、且つ、所定の角度だけ変化させるよう構成され得る。こうすると、光検出器上における第1センサ群の設計を簡易化することができ、また、第1センサ群の配置領域をコンパクトにすることができる。
【0015】
また、第1の態様において、前記光検出器は、前記2つの直線に対して45°傾いた2つの分割線にて4つの前記光束領域をさらに分割した8つの分割光束領域を受光するセンサ部を個別に有するよう構成され得る。
【0016】
また、第1の態様に係る光ピックアップ装置は、前記第1のセンサ群からの検出信号と前記第2のセンサ群からの検出信号を演算処理する演算回路を備える構成とされ得る。ここで、前記演算回路は、前記第1のセンサ部からの検出信号と前記第2のセンサ部からの検出信号の差分を演算する差分演算部を備える。こうすると、上述の差分信号を生成可能な光ピックアップ装置を提供することができる。
【0017】
本発明の第2の態様は、光ディスク装置に関する。この態様に係る光ディスク装置は、上記構成を有する光ピックアップ装置と、前記第1のセンサ群からの検出信号と前記第2のセンサ群からの検出信号を演算処理する演算部を備える。ここで、前記演算部は、前記第1のセンサ部からの検出信号と前記第2のセンサ部からの検出信号の差分を演算する差分演算部を備える。
【0018】
この構成によれば、前記第1のセンサ部からの検出信号と前記第2のセンサ部からの検出信号から上記差分信号を生成することができ、よって、上述の如く、この差分信号をもとに、ディスク中のどの記録層にレーザ光がフォーカスされているかを判別することができる。この他、上記光ピックアップ装置と同様の効果を奏することができる。
【0019】
第2の態様に係る光ディスク装置は、レーザ光の焦点が記録層上に位置づけられたかを判定するフォーカス判定部と、前記焦点がディスク中の何番目の記録層上にあるかを識別する層識別部と、前記フォーカス判定部により前記焦点が記録層上にあると判定されたときの前記差分演算部による演算値を基準演算値として前記層識別部により識別された層識別情報に対応づけて記憶する記憶部と、前記焦点が所定の記録層に引き込まれたときに前記差分演算部によって演算された実演算値と前記記憶部に記憶されている基準演算値とを比較し、前記実演算値に最も近い前記基準演算値に対応づけられた層識別情報を前記焦点が引き込まれた記録層の層識別情報として取得する引込層判定部とを有する構成とすることができる。
【0020】
こうすると、記録/再生動作時に、たとえば、イニシャル位置から横切った記録層の個数をカウントするとの処理を行わなくとも、何層目の記録層にフォーカス引き込みが行われたかを判定することができる。よって、引き込み後の記録層が目標記録層であるかを迅速かつ適正に判定することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のとおり、本発明によれば、簡素な構成にて効果的に迷光を除去することができ、且つ、引き込み後の記録層が目標記録層であるかを迅速かつ適正に判定することができる光ピックアップ装置および光ディスク装置を提供することができる。
【0022】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0024】
<技術的原理>
まず、図1ないし図13を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0025】
図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット記録層よりも一つ奥側にある記録層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット記録層よりも一つ手前にある記録層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット記録層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0026】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、”曲面方向”と”平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”においてアナモレンズが曲率を持っていても良い。
【0027】
なお、同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0028】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0029】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0030】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0031】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0032】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0033】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2,6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0034】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0035】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0036】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0037】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0038】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0039】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサパターンにて受光するように構成すると、対応するセンサパターンには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0040】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0041】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0042】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0043】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。なお、同図(a)および(b)には、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、トラックの像が実線で示され、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0044】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサパターンP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEは、FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H)の演算により求まり、プッシュプル信号PPは、PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F)の演算により求まる。
【0045】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、図10(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光の分布を同図(c)の分布に重ねると、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0046】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサパターンP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEは、FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H)の演算により取得でき、また、プッシュプル信号PPは、PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F)の演算により取得することができる。
【0047】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。
【0048】
次に、以上の原理を用いてさらに記録層の検出を行うための検出方法について、図11〜13を参照して説明する。
【0049】
図11(a)は、レーザ光の焦点位置を同図(b)に示すようにf1〜f3へと変化させたときの記録層からの反射光のS0平面上における遷移状態を示す図である。なお、図11(a)には、上記光束領域A〜Hのうち光束領域Cの光の遷移状態が示されている。
【0050】
レーザ光の焦点位置がf1にあるとき、記録層にて反射された光束領域Cの光は、同図(a)の破線で示す分布状態(便宜上、同図中に“f1”を付記)にてS0平面上に照射される。この状態から、レーザ光の焦点位置をf2へと変化させると、光束領域Cの光は信号光領域内へと移動し、レーザ光の焦点位置がf2になる(レーザ光が記録層に合焦される)と、光束領域Cの光は信号光領域内に収まる位置(便宜上、同図中に“f2”を付記)に位置づけられる。その後、さらにレーザ光の焦点位置をf3へと変化させると、光束領域Cの光は信号光領域から徐々に抜け出し、焦点位置がf3になると、光束領域Cの光は、信号光領域外の実線で示す位置(便宜上、同図中に“f3”を付記)へと移動する。
【0051】
本検出原理では、信号光領域内に、光束領域Cの光を受光する2つのセンサD、E(図10(d)のセンサP12、P11に相当)が配される他、さらに、信号光領域の周りに2つのセンサA11、B11が配される。
【0052】
このようにセンサを配置した状態で、図11(b)のように、レーザ光の焦点位置を移動させると、各センサからの出力信号は、図11(c)のように変化する。ここで、センサD、E、A11、B11の出力を、便宜上、D、E、A11、B11とする(以下、同様)と、これら信号の演算値D−E、A11−B11は、同図(d)のように変化する。
【0053】
以上では、光束領域Cのみについて検討したが、図12に示すように、信号光領域の周りに、上記センサA11、B11の他、2つのセンサA12、B12を配置すると、レーザ光の焦点位置が図11(b)のf1〜f3へと移動するに伴って、各光束領域の光は、センサA11、A12、B11,B12のうち隣り合うセンサ間を移動する。よって、センサA11、B11、A12、B12の出力をもとに、
SLS=A11+A12−(B11+B12) …(1)
の演算を行うと、その演算値(迷光検出信号:SLS)は、図11(d)におけるA11−B11と同様の波形で変化するものとなる。
【0054】
なお、信号光領域内に図12のようにセンサA〜H(図10(d)のセンサP11〜P18に相当)を配すると、フォーカスエラー信号FESとプッシュプル信号PPSは、上記図10を参照して説明した如く、
FES=A+B+E+F−(C+D+G+H) …(2)
PPS=A+B+G+H−(C+D+E+F) …(3)
の演算により求まる。
【0055】
以上は、一つの記録層との関係において迷光検出信号SLSを検討したものであるが、ディスク内に複数の記録層が存在する場合には、各記録層からの反射光に関する上記式(1)の信号成分を合算したものが迷光検出信号SLSとなる。
【0056】
図13は、ディスク内に記録層が4層存在する場合の迷光検出信号SLSの変化を模式的に示す図である。ここでは、同図右上に示すように、4つの記録層L0〜L3が配されており、レーザ光の焦点位置を記録層L3の手前から記録層L0に向かって移動させたときの迷光検出信号SLSの変化が示されている。なお、同図中の4つの波線S−L0〜S−L3は、それぞれ、記録層L0〜L3からの反射光に基づいて上記式(1)の演算を行ったときの演算値を示している。これら演算値を合算することで、上記式(1)に基づく迷光検出信号SLSが得られる。また、同図には、上記式(2)によって得られるフォーカスエラー信号FESが併せて示されている。
【0057】
レーザ光の焦点位置を記録層L3の手前から記録層L0に向かって移動させると、記録層L0〜L3からの反射光に基づく上記式(1)の演算値S−L0〜S−L3は、同図の破線のように変化する。上記式(1)で得られる迷光検出信号SLSは、全ての記録層L0〜L3からの反射光に基づいて上記式(1)を演算するものである。よって、迷光検出信号SLSは、演算値S−L0〜S−L3の変化に伴って、同図のように変化する。
【0058】
同図を参照して分かるとおり、レーザ光の焦点位置が各記録層上にあるときの迷光検出信号SLS値は、互いに異っている。よって、レーザ光の焦点位置が記録層L0、L1、L2、L3上にあるときの迷光検出信号SLSの値を予めドライブに保持させておけば、レーザ光がオンフォーカス状態にあるときの迷光検出信号の値をもとに、どの記録層にレーザ光がオンフォーカスされているかを判別することができる。
【0059】
なお、図13には、ディスク内に記録層が4つ存在する場合が例示されているが、ディスク内に記録層が2つ、3つまたは5つ以上存在する場合にも、同様に、レーザ光の焦点位置が各記録層上にあるときの迷光検出信号SLSの値を予めドライブに保持させておくことで、どの記録層にレーザ光がオンフォーカスされているかを判別することができる。
【0060】
なお、上記では、図12に示すように4つのセンサを信号光領域の周りに配置するようにしたが、図11(a)に示すように2つのセンサのみを信号光領域の周りに配置して迷光検出信号SLSを求めるようにすることもできる。この場合、上記式(1)は、以下のように変更される。
【0061】
SLS=A11−B11 …(1)
また、このように2つのセンサのみを配置する場合には、図12に示す4つのセンサA11、A12、B11、B12のうち、隣り合う2つのセンサを随意に選択することができる。ただし、このように2つのセンサのみを配置する場合には、図12の場合に比べ、迷光検出信号SLSが低下する。よって、良好な迷光検出信号SLSを得るためには、図12に示す如く、4つのセンサを信号光領域の周りに配置するのが良い。
【0062】
<実施例>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。
【0063】
図14に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。なお、同図には、便宜上、関連する回路構成が併せて図示されている。また、同図中のディスクには、複数の記録層が積層して配置されている。
【0064】
図示の如く、光ピックアップ装置の光学系は、半導体レーザ101と、偏光ビームスプリッタ102と、コリメートレンズ103と、レンズアクチュエータ104と、立ち上げミラー105と、1/4波長板106と、対物レンズ107と、ホルダ108と、対物レンズアクチュエータ109と、検出レンズ110と、角度調整素子111と、光検出器112を備えている。
【0065】
半導体レーザ101は、所定波長のレーザ光を出射する。偏光ビームスプリッタ102は、半導体レーザ101から入射されるレーザ光(S偏光)を略全反射するとともに、コリメートレンズ103側から入射されるレーザ光(P偏光)を略全透過する。コリメートレンズ103は、偏光ビームスプリッタ102側から入射されるレーザ光を平行光に変換する。
【0066】
レンズアクチュエータ104は、サーボ回路203から入力されるサーボ信号に応じてコリメートレンズ103を光軸方向に変位させる。これにより、レーザ光に生じる収差が補正される。立ち上げミラー105は、コリメートレンズ103側から入射されたレーザ光を対物レンズ107に向かう方向に反射する。
【0067】
1/4波長板106は、ディスクへと向かうレーザ光を円偏光に変換するとともに、ディスクからの反射光をディスクへ向かう際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクによって反射されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ102を透過する。
【0068】
対物レンズ107は、レーザ光をディスク内のターゲット記録層に適正に収束できるよう設計されている。ホルダ108は、1/4波長板106と対物レンズ107を一体的に保持する。対物レンズアクチュエータ109は、従来周知の電磁駆動回路によって構成され、当該回路のうち、フォーカスコイル等のコイル部がホルダ108に装着されている。
【0069】
検出レンズ110は、ディスクからの反射光に非点収差を導入する。すなわち、検出レンズ110は、図1の非点収差素子に相当する。
【0070】
角度調整素子111は、検出レンズ110側から入射されたレーザ光の進行方向を、図9を参照して述べた如く変化させる。すなわち、角度調整素子111は、入射されたレーザ光のうち、図9の光束領域A〜Dを通過する光束の進行方向を、それぞれ、方向Da〜Ddに、同じ角度量αだけ変化させる。なお、角度量αは、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態が、図9(b)の分布状態となるように設定されている。
【0071】
光検出器112は、図12に示すセンサパターンを有する。光検出器112は、このセンサパターンが図1の面S0の位置に位置づけられるように配置される。光検出器112には、信号光領域内に図12に示す8個のセンサA〜Hが配されており、これらセンサから出力される信号をもとに、上記の如く、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号が生成される。また、光検出器112は、信号光領域の周りに図12に示す4個のセンサA11、A12、B11、B12が配されており、これらセンサから出力される信号をもとに、上記の如く、迷光検出信号SLSが生成される。
【0072】
なお、ここでは、信号光領域の周りに図12に示す4個のセンサA11、A12、B11、B12が配されているが、上記のとおり、隣り合う2つのセンサのみを配置するようにしても良い。
【0073】
信号演算回路201は、光検出器112のセンサA〜Hから出力された検出信号を、図12を参照して述べた如く演算処理し、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成する。また、信号演算回路201は、これら8個のセンサから出力された検出信号を加算して再生RF信号を生成する。さらに、信号演算回路201は、光検出器112のセンサA11、A12、B11、B12から出力された検出信号を、図12を参照して述べた如く演算処理し、迷光検出信号SLSを生成する。生成されたプッシュプル信号はサーボ回路203に送られ、フォーカスエラー信号はサーボ回路203とコントローラ204に送られ、再生RF信号は再生回路202とサーボ回路203に送られる。また、迷光検出信号は、コントローラ204に送られる。
【0074】
再生回路202は、信号演算回路201から入力された再生RF信号を復調して再生データを生成する。サーボ回路203は、信号演算回路201から入力されたプッシュプル信号とフォーカスエラー信号からトラッキングサーボ信号とフォーカスサーボ信号を生成し、これらを対物レンズアクチュエータ109に出力する。また、サーボ回路203は、信号演算回路201から入力された再生RF信号の品質が最良になるよう、レンズアクチュータ104にサーボ信号を出力する。
【0075】
コントローラ204は、内蔵メモリに格納されたプログラムに従って各部を制御する。また、コントローラ204は、信号演算回路201から入力された信号に基づいて、後述の如く、レーザ光がフォーカスされている記録層がどの記録層であるかを検出する。
【0076】
図15は、角度調整素子111の構成例を示す図である。同図(a)は、回折パターンを有するホログラム素子によって角度調整素子111を構成する場合の構成例を示し、同図(b)および(c)は、多面プリズムによって角度調整素子111を構成する場合の構成例を示している。
【0077】
まず、同図(a)の構成例において、角度調整素子111は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にホログラムパターンが形成されている。光入射面は、図示の如く、4つのホログラム領域111a〜111dに区分されている。これらホログラム領域111a〜111dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(信号光、迷光1、2)が入射するよう、角度調整素子111が検出レンズ110の後段に配置される。
【0078】
ホログラム領域111a〜111dは、入射されたレーザ光(信号光、迷光1、2)を、それぞれ、方向Va〜Vdに回折させる。方向Va〜Vdは、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。よって、ホログラム領域111a〜111dは、回折により、検出レンズ110から入射されたレーザ光(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、図9(a)のDa〜Ddの方向に変化させる。各領域における回折角は同じとなっている。
【0079】
ここで、回折角は、ホログラム領域111a〜111dを通過したレーザ光(信号光、迷光1、2)が、図1の面S0において、図9(b)のように分布するよう調整されている。よって、上記の如く、図12のセンサパターンを有する光検出器112の受光面を面S0に配置することにより、上記8個のセンサA〜Hによって、対応する信号光を適正に受光することができる。
【0080】
なお、ホログラム領域111a〜111dの回折効率は互いに同じとなっている。ホログラム領域111a〜111dに形成されるホログラムがステップ型である場合、回折効率は、ホログラムパターンのステップ数と1ステップあたりの高さによって調整され、回折角は、ホログラムパターンのピッチによって調整される。よって、この場合には、予め決められた回折次数の回折効率が所期の値となるように、ホログラムパターンのステップ数と1ステップあたりの高さが設定され、さらに、当該回折次数における回折角が図9(b)の分布を与え得るように、ホログラムパターンのピッチが調整される。
【0081】
なお、ホログラム領域111a〜111dに形成されるホログラムをブレーズ型とすることも可能である。この場合、ステップ型のホログラムよりも回折効率を高めることができる。
【0082】
同図(b)の構成例において、角度調整素子111は、光出射面が平坦で、且つ、光入射面が4つの領域において異なる方向に個別に傾斜する透明体によって形成されている。同図(c)は同図(b)を光入射面側から見た図である。図示の如く、角度調整素子111の光入射面には、4つの傾斜面111e〜111hが形成されている。これら傾斜面に入射面側から光線がX軸に平行に入射すると、傾斜面111e〜111hに入射する際の屈折作用によって、光の進行方向が、それぞれ、同図(c)のVe〜Vhの方向に変化する。ここで、傾斜面111e〜111hにおける屈折角は、同じである。
【0083】
同図(b)の角度調整素子111は、傾斜面111e〜111hに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(信号光、迷光1、2)が入射するよう、検出レンズ110の後段に配置される。こうして角度調整素子111が配置されると、傾斜面111e〜111hにおける屈折方向Ve〜Vhが、図9(a)の方向Da〜Ddに一致することとなる。よって、傾斜面111e〜111hは、屈折により、検出レンズ110から入射されたレーザ光(信号光、迷光1、2)の進行方向を、一定角度だけ、それぞれ、図9(a)のDa〜Ddの方向に変化させる。
【0084】
ここで、各傾斜面における屈折角は、傾斜面111e〜111hを通過したレーザ光(信号光、迷光1、2)が、図1の面S0において、図9(b)のように分布するよう調整されている。よって、面S0に、図12のセンサパターンを有する光検出器112を配置することにより、上記8個のセンサA〜Hによって、対応する信号光を適正に受光することができる。
【0085】
なお、同図(a)の構成例では、ホログラム領域111a〜111dに、レーザ光の進行方向を一定角度だけ変化させる角度付与の回折作用のみを持たせるようにしたが、角度付与の他、検出レンズ110による非点収差作用をも同時に発揮するホログラムパターンを、ホログラム領域111a〜111dに設定しても良い。また、角度調整素子111の光入射面に上記角度付与のためのホログラムパターンを形成し、非点収差作用を持たせるためのホログラムパターンを角度調整素子111の光出射面に持たせるようにしても良い。同様に、図15(b)の角度調整素子111においても、光出射面に、非点収差を導入するためのレンズ面を形成するようにしても良く、あるいは、傾斜面111e〜111hを曲面形状として、傾斜面111e〜111hに非点収差のレンズ作用を持たせるようにしても良い。こうすると、検出レンズ110を省略することができ、部品点数とコストの削減を図ることができる。
【0086】
次に、図16および図17を参照して、コントローラ204における記録層検出処理について説明する。
【0087】
図16(a)は、ディスク装着時における制御動作を説明する図である。
【0088】
ディスクが装着されると、コントローラ204は、ディスクを回転駆動し、レーザ光の焦点位置をカバー層近傍から最奥部の記録層に向かって移動させる(S101)。しかる後、コントローラ204は、フォーカスエラー信号FESをモニタし(S102)、当該ディスク中の何れかの記録層にレーザ光がオンフォーカスされたかを判定する(S103)。
【0089】
こうして、レーザ光が何れかの記録層にオンフォーカスされると、コントローラ204は、それまでに検出したフォーカスエラー信号上のS字カーブの個数をもとに、カバー層側から何層目の記録層にレーザ光がオンフォーカスされているかを判別する(S104)。同時に、コントローラ204は、レーザ光が当該記録層にオンフォーカスされたときの迷光検出信号SLSの信号値を、記録層判別時の基準情報(基準SLS)として取得し、取得した信号値(基準SLS)を当該記録層に対応づけて内蔵メモリに格納する(S105)。
【0090】
コントローラ204は、レーザ光の焦点位置が最奥部の記録層に到達するまで、S102からS105の動作を繰り返す。そして、コントローラ204は、最奥部の記録層についてS105における処理を完了すると(S106:YES)、当該ディスクに対する処理を終了する。
【0091】
図16(a)の処理動作によって、コントローラ204の内蔵メモリには、同図(b)に示す情報(層検出情報)が格納される。すなわち、内蔵メモリには、当該ディスクに含まれる全ての記録層に対応づけて基準SLSの信号値が格納される。
【0092】
次に、図17を参照して、記録/再生動作時に、所定の記録層にフォーカスサーチがなされるときのコントローラ204における処理動作を説明する。
【0093】
コントローラ204は、ターゲット記録層に対するフォーカスサーチを実行し(S201)、フォーカスエラー信号を参照して、レーザ光の焦点位置がターゲット記録層と想定される記録層に引き込まれたかを判定する(S202)。こうして、記録層に対する焦点位置の引き込みが行われると(S202:YES)、次に、コントローラ204は、焦点位置引き込み時に検出された迷光検出信号SLSの値と、図16(a)の初期動作時に内蔵メモリに格納された基準SLSの値とを比較する(S203)。そして、コントローラ204は、検出された迷光検出信号SLSに最も近い基準SLSを特定し、特定した基準SLSに対応づけられている記録層を、焦点引き込みがなされた記録層として判定する(S204)。
【0094】
こうして判定された記録層が目標記録層であれば(S205:YES)、コントローラ204は、フォーカスサーチ動作を終了する。一方、判定された記録層が目標記録層でない場合(S205:NO)、コントローラ204は、S201に戻って、さらなるフォーカスサーチを実行し、S202以降の動作を実行する。S201〜S204の処理フローは、S204にて判定された記録層が目標記録層に一致するまで繰り返される。
【0095】
以上、本実施例によれば、ディスク内に配された記録層のうちターゲット記録層から反射された信号光と、当該ターゲット記録層の上および下の記録層から反射された迷光1、2とが、光検出器112の受光面(オンフォーカス時に信号光スポットが最小錯乱円になる面S0)上において、互いに重なり合わないようにすることができる。具体的には、受光面(面S0)上における信号光と迷光1、2の分布を、図9(b)の状態にすることができる。したがって、図9(b)の信号光領域に、図12に示す8つのセンサA〜Hを配置することにより、センサA〜Hによって、対応する信号光のみを受光することができる。このため、迷光による検出信号の劣化を抑制することができ、再生RF信号、プッシュプル信号およびフォーカスエラー信号の品質を高めることができる。
【0096】
また、この効果を、ディスクによって反射されたレーザ光の光路中、すなわち、図11の構成では検出レンズ110と光検出器112の間に、角度調整素子111を配置するのみで達成することができる。したがって、本実施例によれば、簡素な構成にて効果的に迷光による影響を除去することができる。
【0097】
なお、上記原理による効果は、図18に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面Sよりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図8に示す状態となり、面Sにおいて、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0098】
さらに、本実施例によれば、図12に示す如く信号光領域の周りに4つのセンサを配することにより、図13を参照して説明した如く、レーザ光の収束位置に応じて変化する迷光検出信号SLSを取得することができる。そして、この迷光検出信号SLSを各記録層に対応づけて記憶しておくことにより、上記の如く、レーザ光が引き込まれた記録層がどの記録層であるかを適正に判定することができる。よって、本実施例によれば、レーザ光を目標の記録層に迅速かつ適正に引き込むことができる
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0099】
たとえば、上記実施例では、光束領域A〜Dを通る光束の進行方向を図9(a)の方向Da〜Ddへと変化させるようにしたが、図19(a)に示す如く、ランダムな方向に進行方向を変化させても良く、あるいは、角度量に変化をつけて同じ方向に変化させるようにしても良い。要するに、図8に示す光束領域A〜Bの各信号光領域に、他の光束領域からの迷光領域が掛からないよう、光束領域A〜Dを通る光束を分散させれば良い。こうすると、それぞれの信号光のみを、対応するセンサで受光することができ、迷光の影響を除去することができる。
【0100】
また、上記実施例では、レーザ光を図7(a)に示すように均等に4分割して光束領域A〜Dを設定したが、図19(b)のように平面方向の2分割線と曲面方向の2分割線に掛からないように光束領域A〜Dを設定することもでき、また、同図(c)および(d)のように、これら2つの2分割線によって作られる対頂角が並ぶ方向に位置する2つの光束領域のうち、光束領域C、Bの方のみがこれら2つの2分割線に掛からないようにし(同図(c)参照)、あるいは、光束領域A、Dの方のみがこれら2つの2分割線に掛からないようにすることもできる(同図(d)参照)。なお、同図(c)、(d)では、分割線からはみ出した部分の迷光成分が信号光に重畳されるため、上記実施例に比べると、検出信号がやや劣化する。また、光束領域A〜Dの形状が上記実施例に比べて変化しているため、これに応じてセンサの形状を調整する必要がある。
【0101】
また、上記実施例では、角度調整素子111を検出レンズ110と光検出器112の間に配置したが、角度調整素子は、対物レンズ108と光検出器112の間の光路中の任意の位置に配置することができる。ただし、対物レンズ108に向かうレーザ光の光路と重なる位置に角度調整素子を配置する場合には、対物レンズ108に向かうレーザ光に角度調整作用を付与しないように角度調整素子を構成する必要がある。たとえば、角度調整素子を図15(a)に示す構成とする場合には、角度調整素子として偏光依存性のホログラム素子を用いる。すなわち、対物レンズ108に向かう際のレーザ光の偏光方向には回折作用を発揮せず、対物レンズ108から戻ってくるレーザ光の偏光方向に回折作用を発揮するようにホログラム素子を構成する。
【0102】
この場合、偏光依存性のホログラム素子にて構成された角度調整素子を図14のホルダ108に装着することも可能である。角度調整素子は、対物レンズ108に向かう際のレーザ光(S偏光)には回折作用を発揮せず、対物レンズ108から戻ってくるレーザ光(P偏光)に回折作用を発揮する。この場合、光束領域A〜Dに対する角度変更作用は、図15(a)の場合と同様である。ただし、光検出器112の受光面と角度調整素子との間の光路長が上記実施例に比べて長いため、レーザ光の進行方向を変化させる角度量は、上記実施例よりも小さくなる。
【0103】
この構成例では、角度調整素子がホルダ108に装着されているため、対物レンズ107がトラッキング方向にずれても、角度調整素子には、対物レンズ108からの戻り光(ディスクからの反射光)に対して、相対的な中心ずれが生じることがない。よって、トラッキング動作時の光軸ずれによる検出信号の劣化を抑制できる。
【0104】
この他、上記実施例で用いた図12のセンサパターンに替えて、図20または図21のセンサパターンを用いることもできる。
【0105】
図20のセンサパターンでは、信号光領域の周りに配された4つのセンサA11、A12、B11、B12の受光領域が拡張されているため、これらセンサからの信号量を上記実施例に比べ増加させることができる。よって、迷光検出信号SLSの高品質化を図ることができる。なお、この場合には、たとえば、センサA11で受光すべき光束がセンサB11に跨って入射することも起こり得る。しかし、かかる不所望な光束の入射量は非常に小さいため、検出信号の劣化も微小なものとなる。
【0106】
なお、本来入射すべき光束以外の光束の入射を抑制するためには、たとえば、図21に示す如く、光束間の距離を一方向に大きくし、それに応じて、センサパターンの形状を変更するようにすれば良い。図21に示す各光束の分布は、角度調整素子111における各光束領域の角度付与量を適宜調整することにより実現できる。なお、図21の構成例では、光束間の距離を一方向に大きくしたが、4つの光束領域の光束を互いに離間させ、信号光領域自体を拡張することによって不所望な光束の入射を抑制することもできる。
【0107】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図
【図5】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図6】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図7】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図8】実施形態に係る技術原理(分割パターンと光束の分布)を説明する図
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布)を説明する図
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図
【図11】実施の形態に係る記録層の検出方法の検出原理を説明する図
【図12】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を説明する図
【図13】実施の形態に係る記録層の検出方法を説明する図
【図14】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図
【図15】実施例に係る角度調整素子の構成例を示す図
【図16】実施例に係るディスク装着時の制御動作を示す図
【図17】実施例に係るフォーカスサーチ時の制御動作を示す図
【図18】実施例および本発明の技術原理の好ましい適用範囲を示す図
【図19】実施例の変更例(光束領域の設定形態)を示す図
【図20】実施例の変更例(センサパターンの変更形態)を示す図
【図21】実施例の変更例(センサパターンの変更形態)を示す図
【符号の説明】
【0109】
101… 半導体レーザ
107… 対物レンズ
110… 検出レンズ(非点収差素子)
111… 角度調整素子(光学素子)
112… 光検出器
A〜H… センサ(第1のセンサ群)
A11、A12、B11、B12… センサ(第2のセンサ群)
201… 信号演算回路(演算回路、演算部、差分演算部)
204… コントローラ(フォーカス判定部、層識別部、記憶部、引込層判定部)




【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光に非点収差を導入し、これにより、第1の方向に前記レーザ光が収束することによって生じる第1の焦線位置と、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光が収束することによって生じる第2の焦線位置とを前記レーザ光の進行方向に互いに離間させる非点収差素子と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光のうち、異なる4つの光束領域内の光束の進行方向を互いに異ならせ、これら4つの光束領域内の光束を互いに離散させる光学素子と、
前記離散された各光束を受光して検出信号を出力する光検出器とを備え、
前記光学素子は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に2つの前記光束領域が配置され、他の一組の対頂角が並ぶ方向に残りの2つの前記光束領域が配置されるよう、前記4つの光束領域を設定し、
前記光検出器は、前記レーザ光が前記記録媒体中の所定の記録層に合焦されたときに当該記録層によって反射された前記4つの光束領域内の光束をそれぞれ受光する第1のセンサ群と、前記4つの光束領域内の光束のうち少なくとも第1の光束を受光するとともに前記レーザ光の焦点が前記記録層より手前にあるときに前記記録層にて反射された前記第1の光束が入射する第1のセンサ部と前記焦点が前記記録層より奥にあるときに前記記録層にて反射された前記第1の光束が入射する第2のセンサ部とを備える第2のセンサ群とを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2のセンサ群は、前記記録層によって反射された前記4つの光束領域内の光束を受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記4つの光束領域は、前記2つの直線によって前記レーザ光の光束領域を4分割することにより設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項において、
前記光学素子は、前記第1のセンサ群によって受光される各光束が前記光検出器の受光面上において直方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、前記光束領域の進行方向を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4において、
前記光学素子は、前記第1のセンサ群によって受光される各光束が前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるよう、4つの前記光束領域の進行方向を、前記第1および第2の方向に対し45°の方向で、且つ、所定の角度だけ変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項において、
前記第1のセンサ群は、前記2つの直線に対して45°傾いた2つの分割線にて4つの前記光束領域をさらに2分割した8つの分割光束領域をそれぞれ受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項において、
前記第1のセンサ群からの検出信号と前記第2のセンサ群からの検出信号を演算処理する演算回路を備え、
前記演算回路は、前記第1のセンサ部からの検出信号と前記第2のセンサ部からの検出信号の差分を演算する差分演算部を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項8】
請求項1ないし6の何れか一項に記載の光ピックアップ装置と
前記第1のセンサ群からの検出信号と前記第2のセンサ群からの検出信号を演算処理する演算部を備え、
前記演算部は、前記第1のセンサ部からの検出信号と前記第2のセンサ部からの検出信号の差分を演算する差分演算部を備える、
ことを特徴とする光ディスク装置。
【請求項9】
請求項8において、
レーザ光の焦点が記録層上に位置づけられたかを判定するフォーカス判定部と、
前記焦点がディスク中の何番目の記録層上にあるかを識別する層識別部と、
前記フォーカス判定部により前記焦点が記録層上にあると判定されたときの前記差分演算部による演算値を基準演算値として前記層識別部により識別された層識別情報に対応づけて記憶する記憶部と、
前記焦点が所定の記録層に引き込まれたときに前記差分演算部によって演算された実演算値と前記記憶部に記憶されている基準演算値とを比較し、前記実演算値に最も近い前記基準演算値に対応づけられた層識別情報を前記焦点が引き込まれた記録層の層識別情報として取得する引込層判定部と、
を有することを特徴とする光ディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2010−79983(P2010−79983A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246537(P2008−246537)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】