説明

光ピックアップ装置および光再生装置

【課題】積層方向に多数の記録層を有する場合にも、迷光による悪影響を効果的に抑制して記録媒体を円滑かつ良好に再生できる光ピックアップ装置および光再生装置を提供する。
【解決手段】再生光を発光するSIL21と、再生光を記録媒体10中の記録層15とミラー23に導くビームスプリッタ22と、記録層15によって反射された再生光(信号光)を受光する光検出器24と、信号光に再生光(参照光)を重畳させるミラー23と、参照光の光路長を制御信号に応じて変化させる光路調整部とを有する。ミラー23を変位させて光路長L1を変化させ、光路長L1と光路長L2の差が可干渉距離Δlcの範囲内になると、信号光と参照光が干渉し、光検出器24の出力がパルス状に高まる。この出力は、迷光による信号成分よりも数段高くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置および光再生装置に関し、特に、積層方向に複数の記録層を有する記録媒体を再生する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、記録媒体の高容量化に伴い、積層方向に複数の記録層を有する光記録媒体が開発されている。たとえば、以下の特許文献1には、複数の記録層と一つのサーボ層が積層された光記録媒体が開示されている。この記録媒体では、ガイドトラックのない平坦な記録層が形成され、その上に、ガイドトラックを有するサーボ層が形成されている。
【0003】
再生時には、サーボ層に形成されたガイドトラックをもとにフォーカスサーボ信号とトラッキングサーボ信号が生成される。これらサーボ信号をもとに記録層上のビームスポットを位置制御することにより、ビームスポットが走査軌跡上の所望位置に位置づけられる。
【特許文献1】特開2004−335060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の記録媒体では、記録層の間隔を小さくすることにより記録媒体の高容量化を図ることができる。しかし、その一方で、記録層の間隔を小さくすると、再生目標以外の記録層にて反射された不要な光(迷光)が光検出器に入射し、再生信号に悪影響を及ぼすこととなる。
【0005】
本発明は、かかる問題を解消するためになされたものであり、積層方向に多数の記録層を有する場合にも、迷光による悪影響を効果的に抑制して記録媒体を円滑かつ良好に再生できる光ピックアップ装置および光再生装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題に鑑み本発明は、以下の特徴を有する。
【0007】
請求項1の発明に係る光ピックアップ装置は、再生光を発光する光源と、前記再生光を記録媒体中の記録層に収束させる第1の光学系と、前記記録層によって反射された前記再生光を受光する光検出器と、前記記録層によって反射された再生光に参照光を重畳する第2の光学系と、前記第2の光学系に配され前記第2の光学系の光路長を制御信号に応じて変化させる光路調整部とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、再生光が再生目標の記録層に収束されている状態で光路調整部に制御信号が印加されると、これに応じて、第1の光学系と第2の光学系の間の光路長の関係が変化する。この過程において、第2の光学系の光路長が、再生目標の記録層からの再生光(信号光)と参照光とが互いに干渉し合う光路長に整合すると、当該信号光と参照光が互いに干渉し合い、高強度の光が光検出器に導かれる。これにより、光検出器からは高レベルの信号が出力される。よって、この信号が光検出器から出力されるよう光路調整部を制御することにより、再生目標の記録層を再生することができる。
【0009】
なお、記録層間の距離が、再生光と参照光とが互いに干渉し合う距離範囲(可干渉距離:詳細は実施の形態にて説明する)を超えていれば、再生目標の記録層を再生する際に、当該記録層を挟む上下の記録層にて反射された不要な再生光(迷光)と参照光とが互いに干渉し合うことはない。したがって、この迷光が光検出器に入射されたとしても、その強度は、参照光との干渉により増幅された信号光の強度に比べると数段小さくなり、よって、再生信号に対する迷光の影響は顕著に小さいものとなる。
【0010】
このように、本発明によれば、積層方向に記録層を多数配する場合にも、迷光による悪影響を効果的に抑制することができ、当該記録媒体を円滑かつ良好に再生することができる。なお、本発明は、上記のように、記録層間の距離が可干渉距離を超える記録媒体を再生する際に所望の効果を発揮するものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1に記載の光ピックアップ装置において、前記第2の光学系は、前記光源から出射された前記再生光の一部を前記第1の光学系の光路から分離して前記参照光を生成するビームスプリッタと、分離された前記参照光を反射して前記ビームスプリッタに戻すミラー部を備え、前記光路調整部は、前記ビームスプリッタによって分離されてから前記ビームスプリッタに戻るまでの前記参照光の光路長を変化させることを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、前記光路調整部は、前記参照光が入射されるとともに前記制御信号に応じて前記参照光に対する屈折率が変化する光学素子を備えることを特徴とする。この光学素子として、たとえば、液晶素子を用いることができる。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、前記光路調整部は、前記参照光が入射される光ファイバーと、前記制御信号に応じて前記光ファイバーの全長を変化させる圧電素子を備えることを特徴とする。ここで、光路調整部は、たとえば、印加信号に応じて直径の寸法が変化する圧電素子(ピエゾ素子)に光ファイバーを巻き付ける構成とすることができる。
【0014】
請求項5の発明に係る光再生装置は、請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置と、前記光路調整部を制御する光路制御回路と、前記光検出器から出力される信号を再生する再生回路とを有することを特徴とする。この発明によれば、上記請求項1と同様の効果が奏され得る。
【0015】
請求項6の発明は、請求項5に記載の光再生装置において、前記光路制御回路は、前記再生光の焦点深度内にある複数の記録層からの再生光と前記参照光が干渉するよう前記第2の光学系の光路長を変化させ、前記再生回路は、これら複数の記録層からの再生光と前記参照光が干渉したときに前記光検出器から出力される信号をもとにこれら各記録層に記録された記録データを再生することを特徴とする。
【0016】
この発明によれば、焦点深度内にある複数の記録層から同時に記録データを再生することができる。よって、再生動作の効率化ないし迅速化を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のとおり本発明によれば、積層方向に多数の記録層を有する場合にも、迷光による悪影響を効果的に抑制して記録媒体を円滑かつ良好に再生することができる。
【0018】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施化する際の一つの例示形態であって、本発明は、以下の実施の形態に何ら制限されるものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0020】
図1に、実施の形態に係る記録媒体10の構成を示す。同図は、記録媒体10の断面構造を示すものである。
【0021】
図示の如く、記録媒体10は、基板11と表面層12の間に、サーボ層13、6つのスペース層14および5つの記録層15からなる組を複数段(図1では4段)配することにより構成されている。
【0022】
基板11および表面層12は、ポリカーボネート、ポリオレフィンまたはアクリル等の透光性材料からなっている。サーボ層13は、サーボ用レーザ光(以下、「サーボ光」という)に対する反射率が高く、再生用レーザ光(以下、「再生光」という)に対する反射率が低い材料にて形成されている。スペース層14は、紫外線硬化樹脂または両面に粘着剤が塗布された透明なフィルム材によって構成されている。記録層15は、所定の厚みを有する均一かつ平坦な半透過膜からなっている。
【0023】
一つのサーボ層13は、そのサーボ層13から表面層12方向に隣り合う次のサーボ層13までの間に存在する5つの記録層15に再生光を位置づけるためのものである。
【0024】
サーボ層13には、直線状かつ互いに平行なガイドトラックが多数形成されている。記録層15には、ガイドトラックの真下の位置に、ガイドトラックに沿うようにして直線状に記録マークが配列されている。記録マークの形成領域は、記録マークの非形成領域よりも反射率が高くなっている。たとえば、記録マークの形成領域と非形成領域とで再生光に対する屈折率が相違している。
【0025】
なお、積層方向における記録層15のピッチは、後述する可干渉距離よりも大きく設定されている。
【0026】
図2(a)は、記録媒体10の平面図である。図示の如く、記録媒体10は、複数の記録エリア10aに区分されている。同図(b)は、同図(a)の一部拡大図である。各記録エリア10aのサーボ層13には、同図(b)のX方向に平行な直線状のガイドトラックが、Y軸方向に一定ピッチで、予め決められた個数配されている。各記録エリア10aの記録層15には、上記の如く、サーボ層13の各ガイドトラックの真下の位置に、対応するガイドトラックに沿うようにして、記録マークが配列されている。
【0027】
図3は、記録媒体10から記録信号を読み取る光学系の基本構成を示す図である。
【0028】
低コヒーレンス光源(SLD:Super-Luminescent Diode、以下「SLD」という)21から出射された再生光は、ハーフミラー等の無偏光ビームスプリッタ(以下、「ビームスプリッタ」という)22によって分離され、記録媒体10とミラー23に照射される。再生目標の記録層15にて反射された再生光(信号光)は、ビームスプリッタ22を透過して光検出器24に照射される。また、ミラー23によって反射された再生光(参照光)は、ビームスプリッタ22によって反射され光検出器24に照射される。したがって、光検出器24には、参照光が重畳された状態で信号光が照射される。
【0029】
ここで、再生目標の記録層15から光検出器24の受光面までの光路長(信号光の光路長)と、ミラー23から光検出器24の受光面までの光路長(参照光の光路長)の差が可干渉距離Δlcの範囲内にあると、信号光と参照光は互いに干渉し合い、光検出器24に照射される光の強度が高まる。SLD21の発光スペクトルがガウス分布となっており、その半値全幅をΔλ、中心波長をλcとすると、可干渉距離Δlcは、
Δlc={(2ln2)/2π}×(λc/Δλ)…(1)
で与えられる。
【0030】
したがって、図3の光路長L1と光路長L2の差が、式(1)で求まる可干渉距離Δlcの範囲内にあれば、再生目標の記録層15にて反射された信号光の強度が高まることとなる。
【0031】
なお、積層方向における記録層15のピッチがこの可干渉距離Δlcよりも大きければ、再生目標の記録層15に隣り合う記録層15からの反射光(迷光)と参照光が干渉し合うことはない。したがって、このように記録層15のピッチが設定されていれば、迷光が光検出器24に入射しても、その強度は、参照光との干渉によって増幅された信号光の強度に比べて数段小さくなる。よって、光検出器24の出力信号に対する迷光の影響は顕著に小さいものとなる。
【0032】
目標の記録層15から信号を読み取る場合には、目標の記録層15に対する光路長L2と差が可干渉距離Δlcの範囲内となるように光路長L1を調整すれば良い。この調整は、たとえば、ミラー23を変位させてミラー23とビームスプリッタ22間の距離を変化させることにより行うことができる。このように、光路長L1を調整することにより、各記録層15からの信号光を参照光と干渉させることができ、各記録層15上の記録信号を読み取ることができる。
【0033】
図4は、本実施の形態に係る記録信号の読み取り方法を模式的に示す図である。
【0034】
同図(a)に示すように、本実施の形態では、再生光の焦点深度が隣り合うサーボ層13間の全ての記録層15をカバーするよう対物レンズが構成されている。なお、以下の説明では、サーボ層13間の5つの記録層15を、再生光の入射側から順番にレイヤーL1、L2、L3、L4、L5と称する。また、焦点深度の範囲にある光束のことを特に焦点光束という。
【0035】
同図(a)の状態において、たとえば同図(c)に示す駆動信号にてミラー23を変位させることにより、図3における光路長L1を変化させると、焦点光束の位置に記録マークがあれば、同図(b)に示すように、各レイヤーに対する光路長L2と光路長L1との差が可干渉距離Δlcの範囲内となったタイミング(以下、「可干渉タイミング」という)において、光検出器24からの出力がパルス状に高まる。
【0036】
したがって、同図(b)に示す如く、可干渉タイミングを含むよう時間窓ΔTを設定し、この時間窓ΔT内に光検出器24からの出力にパルスが生じたかを検出することにより、各レイヤーに記録された信号を読み取ることができる。同図(b)では、焦点光束の位置において、レイヤーL1、L3、L4に記録マークが存在し、レイヤーL2、L5には記録マークが存在していない。よって、レイヤーL1、L3、L4からは信号“1”が読み取られ、レイヤーL2、L5からは信号“0”が読み取られる。
【0037】
なお、時間窓ΔTは、たとえば、以下のようにして設定することができる。すなわち、レイヤーL1〜L5上の各記録マークが積層方向に一列に並ぶ基準位置を設け、この基準位置に再生光の焦点光束を位置づける。この状態で、図4(c)に示すスキャン信号にてミラー23を変位させ、記録層スキャン期間中におけるパルスの発生タイミング(可干渉タイミング)を検出する。そして、記録層スキャン期間中、このタイミングに対応させて時間窓ΔTを設定する。
【0038】
再生時には、再生光の焦点光束の位置をサーボ層13のガイドトラックに沿ってビット単位で間欠的にシフトさせる。そして、焦点光束をシフトさせてから次にシフトさせるまでの間に、上記の如くミラー23をスキャンさせ、その位置の記録信号を各レイヤーから読み取ってメモリに格納する。こうして、順次、メモリに、各レイヤーの記録データをマッピングする。これに並行して、データシーケンスに従うようメモリから順次記録データを読み出して復調し、再生データ列を生成出力する。
【0039】
図5は、光ピックアップ装置の具合的構成例を示す図である。同図(a)は、1/4波長板106、サーボ用対物レンズ107および再生用対物レンズ116を除く光学系の平面図、同図(b)は、立ち上げミラー105、1/4波長板106、サーボ用対物レンズ107および記録再生用対物レンズ116の部分における光学系の側面図である。
【0040】
図において、101から109はサーボ用の光学系であり、111から118は信号読み取り用の光学系である。
【0041】
半導体レーザ101は、所定波長のサーボ光を出射する。回折格子102は、サーボ光を3ビームに分割する。偏光ビームスプリッタ103は、回折格子102側から入射するサーボ光を略全反射し、コリメートレンズ104側から入射するサーボ光を略全透過する。コリメートレンズ104は、サーボ光を平行光に変換する。
【0042】
立ち上げミラー105は、コリメートレンズ104側から入射されるサーボ光をサーボ用対物レンズ107方向に反射する。また、立ち上げミラー105は、エキスパンダ114側から入射される再生光を再生用対物レンズ116方向に反射する。
【0043】
1/4波長板106は、立ち上げミラー105側から入射されるサーボ光を円偏光に変換すると共に、サーボ用対物レンズ107側から入射されるサーボ光(記録媒体10からの反射光)を、サーボ用対物レンズ107へ向かう際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。サーボ用対物レンズ107は、サーボ光をサーボ層13上に収束させる。
【0044】
アナモレンズ108は、偏光ビームスプリッタ103にて反射されたサーボ光(記録媒体10からの反射光)に非点収差を導入する。光検出器109は、アナモレンズ108によって収束されたサーボ光を受光して検出信号を出力する。なお、光検出器109には、サーボ光を受光する4分割センサが配されている。光検出器109は、サーボ光の光軸が4分割センサのセンサ分割線の交点位置を貫くよう配置されている。
【0045】
SLD111は、低コヒーレンスの再生光を出射する。上記の如く、SLD111は、発光スペクトルがガウス分布となっており、また、式(1)で求まる可干渉距離Δlcが記録媒体10の記録層15間のピッチ距離よりも小さくなるよう、半値全幅Δλと中心光波長λcが設定されている。
【0046】
コリメートレンズ112は、SLD111から出射された再生光を平行光に変換する。ハーフミラー113は、コリメートレンズ112によって平行光とされた再生光の半分を透過し残り半分を反射する。
【0047】
エキスパンダ114は、凹レンズと凸レンズの組み合わせからなり、このうち一方のレンズがアクチュエータ115によって光軸方向に駆動される。ここで、アクチュエータ115は、モータおよびウォームギア等を備え、再生光の焦点光束を上記の如くレイヤーL1〜L5に位置付けるためのサーボ信号に応じて駆動される。エキスパンダ114を通過した再生光は立ち上げミラー105によって再生用対物レンズ116に向かって反射される。
【0048】
再生用対物レンズ116は、再生光をレイヤーL1〜L5上に収束させる。すなわち、再生用対物レンズ116は、再生光の焦点深度がレイヤーL1〜L5をカバーするよう構成されている。
【0049】
遅延素子117は、制御信号に応じて、ハーフミラー113とミラー118間の光路長を変化させる。遅延素子117は、たとえば、印加電圧(制御信号)に応じて再生光に対する屈折率が変化する液晶素子によって構成される。ミラー118は、遅延素子117を透過した再生光を入射方向とは反対の方向に反射する。この反射光は、上記のとおり、参照光として用いられる。
【0050】
なお、図3の構成では、ミラー23を変位させることにより参照光の光路長を変化させたが、図5の構成では、ミラー118を変位させずに、遅延素子117を駆動することにより参照光の光路長が変化する。たとえば、遅延素子117を液晶素子とする場合には、印加電圧(制御信号)に応じて参照光に対する液晶素子の屈折率を変化させることができ、これにより、参照光の光路長を変化させることができる。
【0051】
集光レンズ119は、ハーフミラー113を透過する記録媒体10からの反射光とハーフミラー113によって反射されたミラー118からの反射光(参照光)を収束させる。光検出器(たとえば、APD:Avalanche Photo Diode)120は、集光レンズ119によって収束された光を受光して、光強度に応じた信号を出力する。
【0052】
1/4波長板106と、サーボ用対物レンズ107および再生用対物レンズ116は、共通のホルダ131に装着されている。ここで、ホルダ131は、対物レンズアクチュエータ132によって、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。対物レンズアクチュエータ132は、従来周知のコイルと磁気回路から構成され、このうちコイルがホルダ131に装着されている。
【0053】
対物レンズアクチュエータ132にサーボ信号が供給されることにより、1/4波長板106とサーボ用対物レンズ107および再生用対物レンズ116が、ホルダ131と一体的に、フォーカス方向およびトラッキング方向に変位される。
【0054】
図6に、記録媒体10を再生する光再生装置の構成を示す。
【0055】
図示の如く、光再生装置は、レーザ駆動回路201と、光ピックアップ装置202と、信号演算回路203と、復調回路204と、メモリ制御回路205と、メモリ206と、デコーダ207と、サーボ回路208と、X−Yステージ209と、コントローラ210を備えている。
【0056】
レーザ駆動回路201は、再生時に、一定パワーにてサーボ光および再生光を出力させるべく、光ピックアップ装置202内の半導体レーザ101とSLD111にそれぞれ駆動信号を供給する。
【0057】
光ピックアップ装置202は、上記図5に示す光学系を備えている。信号演算回路203は、図5に示す光検出器109(サーボ用)からの出力に基づいてフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号を生成し、これらをサーボ回路208に出力する。また、信号演算回路203は、図5に示す光検出器120(再生用)からの出力を増幅およびノイズ除去して再生信号を生成し、これを復調回路204に出力する。
【0058】
復調回路204は、信号演算回路203から入力された再生信号から“1”、“0”の2値化データを生成し、これをメモリ制御回路205に出力する。メモリ制御回路205は、コントローラ210からの指示に従って、メモリ206に対するデータの書き込みおよび読み出しを行う。メモリ206は、RAM(Random Access Memory)等の書き込みおよび読み出し可能なメモリである。
【0059】
メモリ制御回路205は、復調回路204から入力された2値化データを、メモリ206内の所定の領域に書き込む。また、メモリ制御回路205は、メモリ206に書き込まれた2値化データを再生シーケンスに従うように順次読み出してデコーダ207に出力する。デコーダ207は、メモリ制御回路205から入力された2値化データに対し誤り訂正等のデコード処理を施して再生データを生成し順次後段回路に出力する。
【0060】
サーボ回路208は、信号演算回路203から入力されたフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号からフォーカスサーボ信号とトラッキングサーボ信号を生成し、光ピックアップ装置202内の対物レンズアクチュエータ132に出力する。また、サーボ回路208は、上記の如く再生光の焦点光束をガイドトラックに沿ってビット単位で変位させるための駆動信号をX−Yステージ209に出力する。この他、サーボ回路208は、再生動作時に、後述の如く、光ピックアップ装置202のアクチュエータ115を駆動する。
【0061】
X−Yステージ209は、記録媒体10を記録層15に平行な方向(図中、X−Y平面方向)に駆動する。X−Yステージ209には記録媒体10をずれ無く保持する保持部が配されており、この保持部に記録媒体10が装着される。X−Yステージ209は、装着された記録媒体10を、サーボ回路208からの駆動信号に応じて、ビット単位で、X−Y平面方向に駆動する。
【0062】
X−Yステージ209をX方向に駆動することにより再生光がガイドトラックに沿って変位し、また、X−Yステージ209をY方向に駆動することにより、再生光が一のガイドトラックから他のガイドトラックへと変位する。X−Yステージ209は、記録媒体10を記録信号のビット単位で変位できる程度に微細駆動可能であり、たとえば、ピエゾ素子が駆動源として用いられている。
【0063】
コントローラ210は、CPU(Central Processing Unit)と内蔵メモリを備え、内蔵メモリに各種データを格納するとともに、あらかじめ設定されたプログラムに従って各部を制御する。
【0064】
記録媒体10の再生時には、光ピックアップ装置202内のエキスパンダ114を初期位置に設定した状態で、サーボ光が再生目標レイヤー群に対応するサーボ層13に引き込まれる。このとき、X−Yステージ209が駆動され、記録媒体10上の所望の記録エリア10aにサーボ光が位置づけられる。こうして、サーボ光が、所望の記録エリア10a中の所望のサーボ層13に引き込まれる。
【0065】
この引き込みが行われた状態において、再生光の焦点光束は、再生目標レイヤー群(レイヤーL1〜L5)を全てカバーする位置から光軸方向に一定距離だけずれた状態にある。サーボ回路208は、このずれ量だけ焦点光束を光軸方向にシフトさせるための信号を光ピックアップ装置202内のアクチュエータ115に出力する。これにより、エキスパンダ114が初期位置から駆動され、再生光の焦点光束が再生目標レイヤー群(レイヤーL1〜L5)を全てカバーする位置に引き込まれる。こうして、再生光の焦点光束に対する引き込み処理が終了すると、X−Yステージ209が駆動され、再生光の焦点光束が記録領域10a内の再生開始位置に位置づけられる。
【0066】
その後、焦点光束が、ガイドトラックに沿ってビット単位で順次シフトされる。そして、焦点光束をシフトさせてから次にシフトさせるまでの間に、遅延素子117が駆動され、参照光の光路長が変化させられる。ここで、参照光の光路長の変化は、上記図4(c)を参照して説明したミラー23による光路長の変化の場合と同様、レイヤー1〜5からの信号光と参照光との間に順次干渉が起こる範囲においてなされる。このスキャン動作により、その位置において各レイヤーに記録されている記録信号が読み取られ、信号演算回路203から復調回路204に出力される。
【0067】
復調回路204は、各レイヤーに基づく信号から2値化データを生成しメモリ制御回路205に出力する。メモリ制御回路205は、入力された2値化データを順次メモリ206に格納する。こうして、メモリ206に、各レイヤーの2値化データがマッピングされる。
【0068】
これに並行して、メモリ制御回路205は、データシーケンスに従うようメモリ206から順次2値化データを読み出してデコーダ207に出力する。デコーダ207は、入力された2値化データをデコードして再生データを生成し、順次、後段回路に出力する。
【0069】
図7は、再生動作時の処理フローを示す図である。
【0070】
再生動作が開始されると、サーボ光と再生光が発光される(S101)。次に、目標トラックの再生開始位置に対応する位置にサーボ光の焦点位置が引き込まれる(S102)。そして、エキスパンダ114が駆動され、再生光の焦点光束が目標トラック上のレイヤー群(レイヤーL1〜L5)を全てカバーする位置に引き込まれる(S103)。
【0071】
しかる後、遅延素子117による上述のスキャン動作が行われ(S104)、各レイヤー上の記録信号に基づく2値化データがメモリ206にマッピングされる(S105)。そして、再生動作が終了でなければ(S107:NO)、読み取り位置がガイドトラックの終端位置にあるかが判別される(S108)。ここで、読み取り位置がガイドトラックの終端位置になければ(S108:NO)、X−Yステージ209がX方向に1ステップ駆動され、再生光の焦点光束が、記録信号の1ビット分だけガイドトラックに沿って変位される(S110)。その後、S104に戻り、次のステップ位置におけるレイヤー群(レイヤーL1〜L5)の信号読み取りが行われる。
【0072】
かかる動作を繰り返してガイドトラックの終端位置まで信号読み取りが行われると(S108:YES)、X−Yステージ209が駆動されて、再生光の焦点光束が次のガイドトラックの開始位置に移動される(S109)。そして、S104に戻り、次のガイドトラックにおけるレイヤー群(レイヤーL1〜L5)の信号読み取りが行われる。
【0073】
なお、かかる信号読み取りに並行して、データシーケンスに従うようメモリ206から順次2値化データが読み出されデコードされる(S106)。デコード処理によって生成された再生データは、順次、後段回路に出力される。
【0074】
以上、本実施の形態によれば、再生光の焦点光束が再生目標のレイヤー群(レイヤーL1〜L5)に位置づけられている状態で遅延素子117が駆動されることにより、レイヤー群(レイヤーL1〜L5)から同時に記録データを再生することができる。よって、再生動作の効率化ないし迅速化を図ることができる。
【0075】
また、レイヤー間の距離が可干渉距離Δlcを超えるよう、レイヤーが形成されているため、再生目標のレイヤーを再生する際に、当該レイヤーを挟む上下のレイヤーにて反射された不要な再生光(迷光)と参照光とが互いに干渉し合うことはない。したがって、この迷光が光検出器に入射されたとしても、その強度は、参照光との干渉により増幅された信号光の強度に比べると数段小さくなり、よって、再生信号に対する迷光の影響は顕著に小さいものとなる。
【0076】
このように、本実施の形態によれば、積層方向にレイヤーを多数配する場合にも、迷光による悪影響を効果的に抑制することができ、記録媒体を円滑かつ良好に再生することができる。
【0077】
なお、同一ガイドトラックに対応する各レイヤーに対して、一つのレイヤーの終端から次のレイヤーの先頭へと繋がるように、記録信号を記録しておけば、メモリ206に、少なくとも、一つのガイドトラックに対応するレイヤー群(レイヤーL1〜L5)に基づく2値化データをバッファできる程度の容量を持たせることにより、2値化データを連続的にデコーダ207に供給することができる。よって、このように記録信号を記録媒体10に記録すれば、2値化データを記憶するメモリ206の容量を小さくすることができ、コストの低減を図ることができる。
【0078】
ところで、上記式(1)から分かるとおり、可干渉距離Δlcは、再生光のスペクトル半値全幅Δλが大きい程小さくなる。したがって、再生光のスペクトル半値全幅Δλを広げる程、隣り合うレイヤー間の距離を小さくすることができる。よって、記録媒体の容量を高めるには、再生光のスペクトル半値全幅Δλが大きい方が望ましい。この観点から、本実施の形態では、再生光の光源としてSLD111が用いられている。
【0079】
再生光のスペクトル半値全幅Δλを広げる他の手法として、レーザ光をパルス発光させ、このパルス幅を短くする手法を用いることもできる。この手法を用いる場合、再生光の発光源として、極短パルスのレーザ光を発光可能なファイバーレーザ等のフェムト秒レーザを用いることができる。
【0080】
図8は、ファイバーレーザを用いる場合の光ピックアップ装置の光学系を示す図である。同図中、141がファイバーレーザである。なお、この光学系では、図5における遅延素子117に替えて、光ファイバー143aとピエゾ素子143bからなる光路調整部143が配されている。ここで、光路調整部143は、印加信号に応じて直径の寸法が変化するピエゾ素子143bに光ファイバー143aを巻き付けた構成となっている。
【0081】
ファイバーレーザ141から出射された再生光は、コリメートレンズ112にて平行光とされた後、その半分が、ハーフミラー113によって反射され、残り半分が、ハーフミラーを透過する。ハーフミラー113にて反射された後の再生光の光路は、上記図5の場合と同様である。
【0082】
ハーフミラー113を透過した再生光は、集光レンズ142にて集光され、光ファイバー143aに入射する。光ファイバー143aから出射された再生光は、集光レンズ144にて平行光とされ、ミラー118にて反射される。ミラー118にて反射された再生光(参照光)は、ハーフミラー113からミラー118に向かう際の光路を逆行し、その半分が、ハーフミラー113によって反射される。その後、参照光は、集光レンズ119によって光検出器120上に集光される。
【0083】
この光学系では、ピエゾ素子143bに印加される信号を変化させることにより、光ファイバー143aの全長が変化し、参照光の光路が変化する。よって、図6に示すサーボ回路208によってピエゾ素子143bに印加する信号を調整することにより、記録媒体109中の各レイヤーからの信号光と参照光の間の光路長差を変化させることができ、上記実施の形態と同様、両信号間の干渉によって、各レイヤー上の信号を読み取ることができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施の形態に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施形態も上記以外に種々の変更が可能である。
【0085】
たとえば、上記実施の形態では、記録媒体10をカード状の媒体としたが、螺旋状にガイドトラックを有するディスク状媒体とすることもできる。また、上記実施の形態では、焦点深度がサーボ層13間の全てのレイヤー(レイヤーL1〜L5)をカバーするようにしたが、サーボ層13間のレイヤーのうち所定個数のレイヤーのみを焦点深度がカバーするようにしても良い。さらに、上記実施の形態では、サーボ層13間に存在する記録層15の数を5つとしたが、これ以外の個数の記録層15をサーボ層間に配するようにしても良い。この他、本発明は、サーボ層の無い記録媒体から情報を再生する光ピックアップ装置および光再生装置に適用することも可能である。
【0086】
本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】実施の形態に係る記録媒体の断面構造を模式的に示す図
【図2】実施の形態に係る記録媒体の平面構造を模式的に示す図
【図3】実施の形態に係る光ピックアップ装置の基本構成を示す図を示す図
【図4】実施の形態に係る記録信号の読み取り方法を模式的に示す図
【図5】実施の形態に係る光ピックアップ装置の具体的構成例を示す図
【図6】実施の形態に係る光再生装置の構成を示す図
【図7】実施の形態に係る再生動作時の処理フローチャートを示す図
【図8】実施の形態に係る光ピックアップ装置の他の具体的構成例を示す図
【符号の説明】
【0088】
10 記録媒体
21 SLD
22 ビームスプリッタ
23 ミラー
24 光検出器
111 SLD
113 ハーフミラー
114 エキスパンダ
116 再生用対物レンズ
117 遅延素子
118 ミラー
120 光検出器
114 ファイバーレーザ
143 光路調整部
143a 光ファイバー
143b ピエゾ素子
202 光ピックアップ装置
203 信号演算回路
204 信号処理回路
205 メモリ制御回路
206 メモリ
207 デコーダ
208 サーボ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生光を発光する光源と、
前記再生光を記録媒体中の記録層に収束させる第1の光学系と、
前記記録層によって反射された前記再生光を受光する光検出器と、
前記記録層によって反射された再生光に参照光を重畳する第2の光学系と、
前記第2の光学系に配され前記第2の光学系の光路長を制御信号に応じて変化させる光路調整部とを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記第2の光学系は、
前記光源から出射された前記再生光の一部を前記第1の光学系の光路から分離して前記参照光を生成するビームスプリッタと、
分離された前記参照光を反射して前記ビームスプリッタに戻すミラー部を備え、
前記光路調整部は、
前記ビームスプリッタによって分離されてから前記ビームスプリッタに戻るまでの前記参照光の光路長を変化させる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記光路調整部は、前記参照光が入射されるとともに前記制御信号に応じて前記参照光に対する屈折率が変化する光学素子を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記光路調整部は、前記参照光が入射される光ファイバーと、前記制御信号に応じて前記光ファイバーの全長を変化させる圧電素子を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置と、
前記光路調整部を制御する光路制御回路と、
前記光検出器から出力される信号を再生する再生回路と、
を有する、
ことを特徴とする光再生装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記光路制御回路は、前記再生光の焦点深度内にある複数の記録層からの再生光と前記参照光が干渉するよう前記第2の光学系の光路長を変化させ、
前記再生回路は、これら複数の記録層からの再生光と前記参照光が干渉したときに前記光検出器から出力される信号をもとにこれら各記録層に記録された記録データを再生する、
ことを特徴とする光再生装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−123286(P2009−123286A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−296449(P2007−296449)
【出願日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】