光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法
【課題】センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、分光素子を適正な位置に配置することが可能な光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法を提供する。
【解決手段】分光素子の左右の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A11、A12に照射される。分光素子の上下の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A13、A14に照射される。分光素子の中央の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A15に照射される。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4により、信号光のみに基づく検出信号を取得することができる。また、4分割センサBzは45度傾けて配置されている。4分割センサBzのセンサBz1〜Bz4の検出信号により、分光素子のZ軸方向の位置と、分光素子の中心Oを中心とする回転方向の位置とが調整される。
【解決手段】分光素子の左右の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A11、A12に照射される。分光素子の上下の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A13、A14に照射される。分光素子の中央の回折領域によるBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A15に照射される。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4により、信号光のみに基づく検出信号を取得することができる。また、4分割センサBzは45度傾けて配置されている。4分割センサBzのセンサBz1〜Bz4の検出信号により、分光素子のZ軸方向の位置と、分光素子の中心Oを中心とする回転方向の位置とが調整される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置および光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層が配されたディスクも実用化されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、記録層が多数配されている場合に、適正に迷光を除去し得る光ピックアップ装置の新たな構成が示されている。この構成によれば、光検出器の受光面上に、信号光のみが存在する方形状の領域(信号光領域)を作ることができる。記録媒体からの反射光は、信号光領域の頂角付近に照射される。信号光領域の頂角付近に、光検出器のセンサを配置することで、検出信号に対する迷光による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光ピックアップ装置では、信号光領域に近接した位置に迷光が照射されるため、信号光領域の外側に照射される迷光がセンサに漏れ込むことが起こり得る。
【0007】
また、上記光ピックアップ装置では、記録媒体からの反射光を各信号光に分離するために、分光素子が配置される。この場合、各信号光をセンサに適正に導くために、分光素子を適正な位置に配置する必要がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、分光素子を適正な位置に配置することが可能な光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ装置に関する。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂
直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる1つの位置に導く分光素子と、を備える。ここで、前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された4分割センサとを有する。また、前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置される。また、前記4分割センサは、前記4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される。
【0010】
本発明の第2の態様は、光ピックアップ装置に関する。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる2つの位置に導く分光素子と、を備える。ここで、前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる前記2つの位置にそれぞれ配置された第1および第2の4分割センサとを有する。また、前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置される。また、前記第1および第2の4分割センサは、それぞれ、前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関する。この態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、前記4分割センサは、4つのセンサBz1〜Bz4から構成され、前記基準点の方向を向く前記分割線によって、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz2と、前記センサBz3、Bz4に区分され、且つ、他の分割線により、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz4と、前記センサBz2、Bz3に区分されるとき、以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる。
【0012】
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
【0013】
ただし、上記2つの式において、Bz1〜Bz4は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサBz1〜Bz4から出力される検出信号である。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記第2の態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関する。この態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、前記第1の4分割センサは、4つのセンサC21〜C24から構成され、前記第2の4分割センサは、4つのセンサC31〜C34から構成され、前記基準点の方向を向く前記第1の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C22と、前記センサC23、C24に区分され、且つ、前記第1の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C24と、前記センサC22、C23に区分され、前記基準点の方向を向く前記第2の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C32と、前記センサC33、C34に区分され、且つ、前記第2の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C34と、前記センサC32、C33に区分され、前記基準点を対称点として、前記センサC21、C22、C23、C24が、それぞれ、前記センサC33、C34、C31、C32と点対称な位置にあるとき、以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる。
【0015】
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
【0016】
ただし、上記2つの式において、C21〜C24は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC21〜C24から出力される検出信号であり、C31〜C34は、それぞれ、前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC31〜C34から出力される検出信号である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、分光素子を適正な位置に配置することが可能な光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法を提供することができる。
【0018】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る技術原理(レーザ光の収束状態)を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る技術原理(光束領域の分布状態)を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る技術原理(信号光と迷光の分布状態)を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図7】従来の非点収差法に基づくセンサと信号生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る技術原理に基づくセンサと信号生成方法について説明する図である。
【図9】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図10】実施例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図11】実施例に係る光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図12】実施例に係る0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。
【図13】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図14】実施例に係る光ピックアップ装置の位置調整の工程を示す図および分光素子のZθ調整を示すフローチャートである。
【図15】実施例に係る分光素子のZθ調整を示すフローチャートである。
【図16】変更例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図17】変更例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図18】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図およびレンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図である。
【図20】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図である。
【図21】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のレンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図22】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器の中心の近傍を示す図である。
【図23】変更例に係る光検出器の中心の近傍を示す図である。
【図24】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0021】
<技術的原理>
まず、図1ないし図8を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0022】
図1(a)、(b)は、レーザ光の収束状態を説明する図である。図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)、ターゲット記録層よりも深い層によって反射されたレーザ光(迷光1)、ターゲット記録層よりも浅い層によって反射されたレーザ光(迷光2)の収束状態を示す図である。図1(b)は、本原理に用いるアナモ
レンズの構成を示す図である。
【0023】
図1(b)を参照して、アナモレンズは、レンズ光軸に平行に入射するレーザ光に対し、曲面方向と平面方向に収束作用を付与する。ここで、曲面方向と平面方向は、互いに直交している。また、曲面方向は、平面方向に比べ曲率半径が小さく、アナモレンズに入射するレーザ光を収束させる効果が大きい。
【0024】
なお、ここでは、アナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、レンズ光軸上の互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1(b)中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0025】
図1(a)を参照して、アナモレンズによって収束させられた信号光は、曲面方向および平面方向の収束により、それぞれ異なる位置で焦線を結ぶ。曲面方向の収束による焦線位置(P02)は、平面方向の収束による焦線位置(P03)よりも、アナモレンズに近い位置となり、信号光の収束位置(P01)は、曲面方向および平面方向の収束による焦線位置(P02)、(P03)の中間位置となる。信号光のビームは、収束位置(P01)において最小錯乱円となる。なお、収束位置(P01)において、アナモレンズに入射するレーザ光の光軸に垂直な面を、以下、「面P0」と称する。
【0026】
アナモレンズによって収束させられた迷光1についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P12)は、平面方向の収束による焦線位置(P13)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光1の平面方向の収束による焦線位置(P13)が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズに近い位置となるよう設計されている。
【0027】
アナモレンズによって収束させられた迷光2についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P22)は、平面方向の収束による焦線位置(P23)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光2の曲面方向の収束による焦線位置(P22)が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズから遠い位置となるよう設計されている。
【0028】
以上を考慮して、面P0上における信号光および迷光1、2の光束領域の関係について検討する。
【0029】
図2(a)は、アナモレンズに入射するレーザ光に設定された4つの光束領域f1〜f4を示す図である。この場合、光束領域f1〜f4を通る信号光は、面P0上において、図2(b)のように分布する。また、光束領域f1〜f4を通る迷光1は、面P0上において、図2(c)のように分布する。光束領域f1〜f4を通る迷光2は、面P0上において、図2(d)のように分布する。なお、図2(b)〜(d)には、信号光のビーム径の大きさを示す円が実線で示されており、図2(c)、(d)に示すように、迷光1、2は信号光に比べて大きく広がっている。
【0030】
ここで、面P0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図3(a)〜(d)のようになる。この場合、各光束領域を通る信号光には、同じ光束領域を通る迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域を通る信号光と迷光1、2を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサにて受光するように構成すると、対応するセンサには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができ
る。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
このように、光束領域f1〜f4を通る光を分散させて面P0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図4(a)は、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)を面P0上において離間させるために、各光束領域を通るレーザ光の進行方向に付与するベクトルを示す図である。図4(a)は、アナモレンズ入射時の進行方向にレーザ光を見た図である。
【0033】
光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV01〜V04が付与されることにより変化する。ベクトルV01〜V04の方向は、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45度の傾きを持っている。ベクトルV01、V02の方向は同じであり、ベクトルV03、V04の方向は同じである。また、ベクトルV01、V04の大きさは同じであり、ベクトルV02、V03の大きさは同じである。ベクトルV01〜V04の大きさは、これらベクトルが付与される前のレーザ光の進行方向(アナモレンズ入射時の進行方向)に対する角度として規定される。
【0034】
図4(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図4(b)に示すように照射される。なお、図4(b)には、進行方向が変化される前のレーザ光の光軸を示す中心Oが、併せて示されている。ベクトルV01〜V04を調節することにより、面P0上において、図4(b)に示すように各光束領域を通る信号光と迷光1、2を分布させることができる。これにより、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。
【0035】
また、図4(a)に替えて、図5(a)に示すように、光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV11〜V14が付与されることにより変化するようにしても良い。この場合、ベクトルV11〜V14の方向は、図4(a)のベクトルV01〜V04と同じである。また、ベクトルV12の大きさは、ベクトルV11の大きさよりも大きく、ベクトルV13の大きさは、ベクトルV14の大きさよりも大きい。
【0036】
図5(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図5(b)に示すように照射される。この場合も、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。
【0037】
また、図4(a)に替えて、図6(a)に示すように、光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV21〜V24が付与されることにより変化するようにしても良い。この場合、ベクトルV21〜V24の方向は、図4(a)のベクトルV01〜V04と同じである。また、ベクトルV21の大きさは、ベクトルV22の大きさよりも大きく、ベクトルV24の大きさは、ベクトルV23の大きさよりも大きい。
【0038】
図6(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図6(b)に示すように照射される。この場合も、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。すなわち、この場合、光束領域f1、f2を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域1)の対角位置にある頂角に位置付けられ、光束領域f3、f4を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域2)の対角位置にある頂角に位置付けられる。
【0039】
ここで、従来の非点収差法に基づくセンサと信号生成方法について説明する。
【0040】
図7(a)は、ディスクからの反射光に設定された8つの光束領域a1〜a8を示す図であり、図7(b)は、従来の非点収差法に基づく信号光の照射領域とセンサを示す図である。図7(b)に示すセンサは、図1(a)の構成において面P0上に配され、図7(b)には、光束領域a1〜a8を通る信号光が、面P0上において、それぞれ照射される照射領域A1〜A8が示されている。
【0041】
また、図7(a)において、トラック溝による信号光の回折の像(トラック像)の方向は、平面方向および曲面方向に対して45度の傾きを持っており、上下方向となっている。これにより、図7(b)において、信号光のトラック像の方向は、左右方向となる。図7(a)、(b)には、トラック像が点線で示されている。
【0042】
図7(b)を参照して、従来の非点収差法では、光検出器の受光面上に4つのセンサSa〜Sdから構成される4分割センサが配される。なお、ここで、センサSa〜Sdは、便宜上、さらに平面方向または曲面方向に2分割されているものとする。すなわち、センサSaは、センサS1、S2に分割され、センサSbは、センサS3、S4に分割され、センサScは、センサS5、S6に分割され、センサSdは、センサS7、S8に分割されている。この場合、センサS1〜S8による検出信号をS1〜S8で表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、それぞれ、以下の式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0043】
FE=(S3+S4+S7+S8)−(S1+S2+S5+S6) …(1)
PP=(S1+S2+S3+S4)−(S5+S6+S7+S8) …(2)
【0044】
次に、上記図4(b)、図5(b)、図6(b)に示した信号光を受光するためのセンサと信号生成方法について説明する。
【0045】
図8(a)〜(c)は、それぞれ、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すように進行方向が変化された信号光を受光するためのセンサを示す図である。図8(a)〜(c)において、センサS1〜S8は面P0上に配され、トラック像の方向は左右方向となる。
【0046】
図4(a)に示すように進行方向が変化させられると、図7(a)に示す光束領域a1〜a8を通る信号光は、それぞれ、図8(a)に示す照射領域A1〜A8に照射される。同様に、図5(a)、図6(a)に示すように進行方向が変化させられると、光束領域a1〜a8を通る信号光は、図8(b)、(c)に示す照射領域A1〜A8に照射される。
【0047】
したがって、図8(a)〜(c)に示すように、信号光の照射領域A1〜A8の位置に、センサS1〜S8を配置すれば、図7(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPを、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0048】
以上のように、本原理によれば、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、迷光の影響が抑制されたフォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0049】
ここで、図8(a)〜(c)に示すように、センサS1〜S8の大きさは、通常、照射領域A1〜A8を十分含み得るよう設定される。このようにセンサS1〜S8が構成されると、図8(a)では、センサS1〜S8に、受光対象となる照射領域以外の照射領域が重なる惧れがある。すなわち、図8(a)において、センサS6、S7の下端部に照射領
域A3、A2が重なり、センサS3、S2の上端部に照射領域A6、A7が重なり、センサS8、S1の左端部に照射領域A5、A4が重なり、センサS5、S4の右端部に照射領域A8、A1が重なる惧れがある。
【0050】
また、図8(a)では、信号光の照射領域A1〜A8に加えて、図4(b)に示すように、迷光1、2の照射領域が分布している。この場合、迷光1と迷光2の照射領域は、センサS1〜S8の隣の略同じ位置で重なり合っている。これにより、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞が、センサS1〜S8に漏れ込む惧れがある。
【0051】
他方、図5(b)、図6(b)に示す照射領域に対して、図8(b)、(c)に示すセンサS1〜S8により信号光の照射領域A1〜A8を受光する場合、図8(a)の場合と異なり、センサS1〜S8に受光対象となる照射領域以外の照射領域が重なり難く、また、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞は、センサS1〜S8に漏れ込み難い。
【0052】
すなわち、図5(b)、図6(b)では、上下方向に並ぶ2つの信号光の間隔と、左右方向に並ぶ2つの信号光の間隔が、それぞれ、図4(b)の場合に比べて大きく設定されている。これにより、図8(b)、(c)のセンサS1〜S8には、受光対象以外の信号光の照射領域が重なり難くなる。また、図5(b)、図6(b)に示すように、迷光同士が重なる領域が、図4(b)の場合に比べて小さく、且つ、信号光から離れている。これにより、図8(b)、(c)のセンサS1〜S8には、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞が漏れ込み難くなる。
【0053】
このように、図8(b)、(c)に示すセンサS1〜S8により信号光を受光する場合、図8(a)に示すセンサS1〜S8により信号光を受光する場合に比べて、より精度の高い検出信号が得られる。
【0054】
なお、図5(a)、図6(a)に示す分光のさせ方が、本発明による分光のさせ方に対応する。
【0055】
以下の実施例には、図6(b)または図7(b)に示すように照射領域を分布させる場合の原理に基づく光ピックアップ装置の具体的構成例が示されている。
【0056】
<実施例>
本実施例において、半導体レーザ101は、請求項に記載の「レーザ光源」に相当する。BD対物レンズ114は、請求項に記載の「対物レンズ」に相当する。アナモレンズ115は、請求項に記載の「非点収差素子」に相当する。平面方向と曲面方向の何れか一方は、請求項に記載の「第1の方向」に相当し、他方は「第2の方向」に相当する。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4は、請求項に記載の「複数のセンサ」に相当する。4分割センサBzは、請求項に記載の「4分割センサ」に相当する。4分割センサC1は、請求項に記載の「他の4分割センサ」と「第3の4分割センサ」に相当する。4分割センサC2は、請求項に記載の「第1の4分割センサ」に相当する。4分割センサC3は、請求項に記載の「第2の4分割センサ」に相当する。回折領域H11、H12と回折領域H21、H22は、請求項に記載の「第1の領域」に相当する。回折領域H13、H14と回折領域H23、H24は、請求項に記載の「第2の領域」に相当する。回折領域H15と回折領域H25は、請求項に記載の「第3の領域」に相当する。中心Oは、請求項に記載の「基準点」に相当する。ただし、上記請求項と本実施例との対応の記載はあくまで一例であって、請求項に係る発明を本実施例に限定するものではない。
【0057】
本実施例は、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。上記原理は、BD用の光学系にのみ適用され、CD用の光学系
とDVD用の光学系には従来の非点収差法によるフォーカス調整技術と3ビーム方式(インライン方式)によるトラッキング調整技術が適用されている。
【0058】
図9(a)、(b)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。図9(a)は、立ち上げミラー111、112よりもディスク側の構成を省略した光学系の平面図、図9(b)は、立ち上げミラー111、112以降の光学系を側面から透視した図である。
【0059】
図9(a)、(b)に示す如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、1/2波長板102と、2波長レーザ103と、回折格子104と、ダイクロイックミラー105と、偏光ビームスプリッタ106と、フロントモニタ107と、コリメートレンズ108と、駆動機構109と、1/4波長板110と、立ち上げミラー111、112と、2波長対物レンズ113と、BD対物レンズ114と、分光素子H1と、アナモレンズ115と、光検出器116を備えている。
【0060】
半導体レーザ101は、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)を出射する。1/2波長板102は、BD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるように、BD光の偏光方向を調整する。2波長レーザ103は、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)と、波長660nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)をそれぞれ出射する2つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。2波長レーザ103は、出射するCD光とDVD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるよう設置されている。
【0061】
図9(c)は、2波長レーザ103内におけるレーザ素子(レーザ光源)の配置を示す図である。図9(c)は、2波長レーザ103をビーム出射側から見たときの図である。発光点103a、103bから、CD光とDVD光が発光され、発光点103aと発光点103bの間には、所定のギャップが設けられている。なお、CD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップは、後述の如く、DVD光が、DVD光用の4分割センサに適正に照射されるように設定される。このように、2つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0062】
図9(a)に戻り、回折格子104は、2段ステップ型の回折格子であり、CD光とDVD光を、それぞれ、メインビームと2つのサブビームに分割する。ダイクロイックミラー105は、内部にダイクロイック面105aを有している。ダイクロイック面105aは、BD光を反射し、CD光とDVD光を透過する。半導体レーザ101と、2波長レーザ103と、ダイクロイックミラー105は、ダイクロイック面105aにより反射されたBD光の光軸と、ダイクロイック面105aを透過したCD光の光軸とが互いに整合するように配置される。ダイクロイック面105aを透過したDVD光の光軸は、BD光とCD光の光軸から、図9(c)に示すギャップだけずれる。
【0063】
BD光、CD光、DVD光は、それぞれ、一部が偏光ビームスプリッタ106を透過し、大部分が偏光ビームスプリッタ106によって反射される。このようにBD光、CD光、DVD光の一部が偏光ビームスプリッタ106を透過するよう、1/2波長板102と、2波長レーザ103と、回折格子104が配置される。
【0064】
なお、このように回折格子104が配置されると、CD光のメインビームおよび2つのサブビームと、DVD光のメインビームおよび2つのサブビームは、それぞれ、CDとDVDのトラックに沿うようなる。CDによって反射されたCD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のCD用の4分割センサに照射される。DVD
によって反射されたDVD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のDVD用の4分割センサに照射される。
【0065】
偏光ビームスプリッタ106を透過したBD光、CD光、DVD光は、フロントモニタ107に照射される。フロントモニタ107は、受光光量に応じた信号を出力する。フロントモニタ107からの信号は、半導体レーザ101と2波長レーザ103の出射パワー制御に用いられる。
【0066】
コリメートレンズ108は、偏光ビームスプリッタ106側から入射するBD光、CD光、DVD光を平行光に変換する。駆動機構109は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメートレンズ108を光軸方向に移動させる。駆動機構109は、コリメートレンズ108を保持するホルダ109aと、ホルダ109aをコリメートレンズ108の光軸方向に送るためのギア109bとを備え、ギア109bは、モータ109cの駆動軸に連結されている。
【0067】
コリメートレンズ108により平行光とされたBD光、CD光、DVD光は、1/4波長板110に入射する。1/4波長板110は、コリメートレンズ108側から入射するBD光、CD光、DVD光を円偏光に変換するとともに、立ち上げミラー111側から入射するBD光、CD光、DVD光を、コリメートレンズ108側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクからの反射光は、偏光ビームスプリッタ106を透過する。なお、偏光ビームスプリッタ106を透過するディスクからの反射光の光軸は、図9(a)中のZ軸に一致する。
【0068】
立ち上げミラー111は、ダイクロイックミラーであり、BD光を透過するとともに、CD光とDVD光を2波長対物レンズ113に向かう方向に反射する。立ち上げミラー112は、BD光をBD対物レンズ114に向かう方向に反射する。
【0069】
2波長対物レンズ113は、CD光とDVD光を、それぞれ、CDとDVDに対して適正に収束させるよう構成されている。また、BD対物レンズ114は、BD光をBDに適正に収束させるよう構成されている。2波長対物レンズ113とBD対物レンズ114は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0070】
分光素子H1は、上記原理に基づいて、図6(a)に示す各光束領域を通るレーザ光を、面P0上において図6(b)に示すように分布させる。分光素子H1の構成については、追って、図10(a)〜(c)を参照して説明する。
【0071】
アナモレンズ115は、図1(a)に示すアナモレンズに相当し、分光素子H1側から入射するBD光、CD光、DVD光に非点収差を導入する。アナモレンズ115を透過したBD光、CD光、DVD光は、光検出器116に入射する。光検出器116は、各光を受光するための複数のセンサを有している。光検出器116上のセンサについては、追って、図11を参照して説明する。
【0072】
図10(a)は、分光素子H1を偏光ビームスプリッタ106側から見たときの平面図である。図10(b)は、分光素子H1に入射するレーザ光を、分光素子H1の回折領域H11〜H15の境界線に対応するよう区分した光束領域a11〜a15を示す図である。なお、図10(a)には、平面方向と、曲面方向と、トラック像の方向が併せて示されている。
【0073】
分光素子H1は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面に2段ステップ型の回折
パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子H1の光入射面は、図10(a)に示すように、5つの回折領域H11〜H15に区分されている。なお、回折領域H15は、後述するように、BD光の迷光による検出信号の劣化を低減させる程度に大きく、且つ、BD光に基づくトラッキングエラー信号TEが適正に得られる程度に小さく設定される。
【0074】
回折領域H11〜H15は、光束領域a11〜a15を通るレーザ光を、回折作用により0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割する。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の+1次回折光は、実線の矢印(V21〜V25)の方向に回折される。また、光束領域a11〜a15を通るレーザ光の−1次回折光は、点線の矢印(V21m〜V25m)の方向に回折される。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の0次回折光は、回折されずに回折領域H11〜H15を透過する。
【0075】
図10(a)では、回折領域H11〜H15によりレーザ光に付与される回折の方向と大きさ(回折角)が、ベクトルV21〜V25およびベクトルV21m〜V25mで示されている。回折領域H11〜H15により生じる+1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV21〜V25を付与したものとなる。また、回折領域H11〜H15により生じる−1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV21m〜V25mを付与したものとなる。
【0076】
図6(a)の場合と同様、ベクトルV21、V22の方向は同じであり、ベクトルV23、V24の方向は同じである。また、図6(a)の場合と同様、ベクトルV21の大きさは、ベクトルV22よりも大きく、また、ベクトルV24の大きさはベクトルV23よりも大きい。ベクトルV21m〜V24mは、それぞれ、ベクトルV21〜V24に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。
【0077】
本実施例では、図6(a)の場合に比べ、回折領域H15により、光束領域a15を通るレーザ光の進行方向が変えられる。回折領域H15により付与されるベクトルV25、V25mの方向は平面方向に平行であり、また、ベクトルV25、V25mの大きさは、互いに等しい。
【0078】
なお、ベクトルV21〜V25、V21m〜V25mの方向は、各回折領域に設定される回折パターンの向きによって設定され、ベクトルV21〜V25、V21m〜V25mの大きさは、各回折領域に設定される回折パターンのピッチによって設定される。
【0079】
図10(c)は、回折領域H11〜H15のステップ高さと回折効率との関係を示す図である。
【0080】
図10(c)に示すように、分光素子H1に入射するBD光、DVD光、CD光の回折効率は、回折領域H11〜H15に設定された2段ステップ型の回折パターンのステップ高さによって変化する。本実施例のステップ高さは、図10(c)中に示す“設定値”に設定される。これにより、BD光の0次回折光と+1次回折光の回折効率は、それぞれ、約80%と約10%となり、DVD光とCD光の0次回折光の回折効率は、90%以上となる。なお、−1次回折光の回折効率は、+1次回折光の回折効率と略同じである。
【0081】
こうして、分光素子H1に入射したBD光は、上記回折効率でもって0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割される。また、分光素子H1に入射したCD光とDVD光は、大半が分光素子H1による回折作用を受けずに、分光素子H1を透過する。
【0082】
図11は、光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0083】
光検出器116は、回折領域H11〜H14の回折作用によって生じるBD光(信号光)の+1次回折光を受光するBD用のセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4と、回折領域H15の回折作用によって生じるBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光を受光する4分割センサBzと、分光素子H1による回折作用を受けずに透過したCD光を受光する4分割センサC1〜C3と、分光素子H1による回折作用を受けずに分光素子H1を透過したDVD光を受光する4分割センサD1〜D3とを有する。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4は、それぞれ、上記原理で示した図8(c)のセンサS1〜S8と同様に配置される。なお、4分割センサC1は、後述のようにBD光の0次回折光の受光にも共用される。
【0084】
なお、光検出器116の中心Oは、偏光ビームスプリッタ106からZ軸正方向に出射されるBD光の光軸が、光検出器116の受光面と交わる点である。
【0085】
光束領域a11〜a15を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A11〜A15に照射される。照射領域A11は、センサBa1、Ba4によって受光され、照射領域A12は、センサBa2、Ba3によって受光され、照射領域A13は、センサBs3、Bs4によって受光され、照射領域A14は、センサBs1、Bs2によって受光される。
【0086】
光束領域a15を通るBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光は、中心Oに対して右上に位置する4分割センサBzに入射する。4分割センサBzは、センサBz1〜Bz4から構成されており、分光素子H1の位置調整に用いられる。4分割センサBzは、上下左右の方向に対して45度傾けて配置されている。また、4分割センサBzの分割線が、中心Oと4分割センサBzの中心BzOとを結ぶ一点鎖線の直線と重なるよう、4分割センサBzが配置されている。なお、分光素子H1の位置調整については、追って図14(a)〜(c)と図15(a)〜(c)を参照して説明する。
【0087】
回折領域H11〜H14のピッチは、照射領域A11〜A14が、図11に示すように、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に位置付けられるよう設定される。また、回折領域H15のピッチは、光束領域a15を通るBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光が4分割センサBzの中心BzOに位置付けられるよう設定されている。
【0088】
BD光とCD光の光軸は、上述したようにダイクロイック面105aによって整合しているため、回折格子104により生じたCD光のメインビーム(0次回折光)と、BD光の0次回折光は、図11に示す中心Oに照射される。4分割センサC1は、中心Oに配置される。4分割センサC2、C3は、CD光のサブビームを受光するよう、光検出器116の受光面上において、メインビームに対しCDのトラック像の方向に配置される。4分割センサC1〜C3は、それぞれ、センサC11〜C14と、センサC21〜C24と、センサC31〜C34から構成されている。
【0089】
本実施例では、インライン方式によるトラッキング調整技術を実現するために、4分割センサC2の分割線と、4分割センサC3の分割線が、中心Oを通る上下方向の直線上に位置付けられるよう4分割センサC2、C3が配置される。
【0090】
DVD光の光軸は、上述したようにCD光の光軸からずれているため、DVD光のメインビームと2つのサブビームは、光検出器116の受光面上において、CD光のメインビームと2つのサブビームからずれた位置に照射される。4分割センサD1〜D3は、それぞれ、DVD光のメインビームと2つのサブビームの照射位置に配置される。なお、CD
光のメインビームとDVD光のメインビームとの距離は、図9(c)に示すCD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップによって決まる。
【0091】
図12は、光検出器116の受光面上と同じ平面(面P0)上に分布するBD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。破線はBD光の+1次回折光を示し、長鎖線はBD光の0次回折光を示し、点線はBD光の−1次回折光を示している。また、図12には、図11に示すセンサが併せて示されている。
【0092】
本実施例のように、分光素子H1の回折領域H11〜H15に2段ステップ型の回折パターンが形成されると、BD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光と−1次回折光の照射領域は、中心Oを点対称の中心として分布し、0次回折光の照射領域は中心Oに分布する。なお、本実施例では、BD光(信号光と迷光1、2)については、0次回折光と+1次回折光のみが利用され、−1次回折光は利用されない。
【0093】
また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。すなわち、センサBa1、Ba4の上端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、それぞれ、左端と右端が、回折領域H15により除かれた形状となっている。同様に、センサBa2、Ba3の下端付近と、センサBs1、Bs2の右端付近と、センサBs3、Bs4の左端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、回折領域H15に応じて端部が除かれた形状となっている。これにより、BD対物レンズ114がBDの径方向に移動して、BD対物レンズ114の光軸がレーザ光の光軸からシフトしても、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。また、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の位置が、光検出器116の受光面上でずれても、これらセンサに、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。
【0094】
ここで、本実施例における信号生成方法について説明する。
【0095】
図11に示すように、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光の照射領域A11〜A14が位置付けられる。本実施例では、これらセンサの検出信号に基づいて、BD用のトラッキングエラー信号TEが生成される。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の検出信号を、それぞれ、Ba1〜Ba4、Bs1〜Bs4と表すと、本実施例におけるトラッキングエラー信号TEは、以下の式(3)の演算により取得することができる。
【0096】
TE={(Ba1+Ba4)−(Ba2+Ba3)}
−k×{(Bs1+Bs4)−(Bs2+Bs3)} …(3)
【0097】
ここでは、上記式(2)に示すプッシュプル信号PPの演算に比べ、乗数kが用いられている。このように乗数kを用いたトラッキングエラー信号TEの演算手法は、本件出願人が先に出願した特開2010−102813号公報に記載されている。なお、トラッキングエラー信号TEは、上記式(2)による演算手法を用いて取得しても良い。
【0098】
また、図12に示すように、4分割センサC1には、BD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光の照射領域が位置付けられる。本実施例では、4分割センサC1のセンサC11〜C14(図11参照)の検出信号に基づいて、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号が生成される。センサC11〜C14の検出信号を、それぞれ、C11〜C14と表すと、本実施例におけるフォーカスエラー信号FEは、上記式(1)と同様、以下の
式(4)の演算により取得することができる。また、本実施例におけるRF信号は、以下の式(5)の演算により取得することができる。
【0099】
FE=(C11+C13)−(C12+C14) …(4)
RF=(C11+C12+C13+C14) …(5)
【0100】
なお、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光には、信号光だけでなく迷光1、2も含まれる。しかしながら、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光のうち、迷光の割合は1/10程度であるため、フォーカスエラー信号FEとRF信号の取得においては、迷光による影響が特に問題となることは無い。
【0101】
CD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサC1〜C3の検出信号に基づいて生成され、DVD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサD1〜D3の検出信号に基づいて生成される。CDおよびDVD用のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の生成には、従来の非点収差法による演算処理と3ビーム方式(インライン方式)による演算処理が用いられる。
【0102】
以上、本実施例によれば、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光のみが照射する。また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、回折領域H15により4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。これにより、迷光による検出信号の劣化を抑制して、精度の高い各種検出信号(たとえば、トラッキングエラー信号TE)を取得することができる。
【0103】
また、本実施例では、図6(b)に示すようにBD光の照射領域を分布させるために、2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1が用いられた。このように2段ステップ型の回折パターンが形成されると、図12に示すように広範囲に亘って照射領域が分布することとなる。しかしながら、本実施例によれば、照射領域を全て含むように光検出器上のセンサを設置する必要がない。すなわち、本実施例では、BD光を受光するための光検出器116上のセンサは、中心Oに分布する信号光(0次回折光)と、中心Oの上側と右側に分布する信号光(+1次回折光)と、右上に分布する信号光(+1次回折光)の照射領域のみを含むように設置される。これにより、本実施例のように、安価な2段ステップ型が形成された分光素子H1が用いられても、光検出器116をコンパクトに構成することが可能となる。
【0104】
なお、図6(b)に示すように照射領域を分布させるために、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子を用いることもできる。しかしながら、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子は、本実施例のように2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1に比べて高価である。本実施例では、安価な2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1を用いることで、光ピックアップ装置にかかるコストを低く抑えることができる。
【0105】
また、本実施例によれば、BD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光は、光検出器116の中心Oに入射するため、CD用の4分割センサC1により、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号を取得することができる。すなわち、CD用の4分割センサC1〜C3の一部を、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号を取得するために用いることができる。これにより、新たにセンサを設ける必要がなく、光検出器にかかるコストを低く抑えることができ、且つ、光検出器をコンパクトに構成することができる。
【0106】
なお、本実施例では、図6(b)の照射領域に対して、図8(c)のようにセンサS1〜S8が配される場合に基づいて、分光素子H1と光検出器116上の各センサが設定された。しかしながら、これに限らず、図5(b)の照射領域に対して、図8(b)のようにセンサS1〜S8が配される場合に基づいて、分光素子H1と光検出器116上の各センサが設定されるようにしても良い。
【0107】
図13(a)は、この場合の分光素子H2を示す平面図である。
【0108】
分光素子H2の回折領域H21〜H25は、+1次回折光について、ベクトルV11〜V15を付与し、−1次回折光について、ベクトルV11m〜V15mを付与するように構成される。図5(a)の場合と同様、ベクトルV11、V12の方向は同じであり、ベクトルV13、V14の方向は同じである。また、図5(a)の場合と同様、ベクトルV12の大きさは、ベクトルV11よりも大きく、また、ベクトルV13の大きさはベクトルV14よりも大きい。ベクトルV11m〜V14mは、それぞれ、ベクトルV11〜V14に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。なお、ベクトルV15、V15mは、それぞれ、図10(a)に示すベクトルV25、V25mと同様である。
【0109】
図13(b)は、分光素子H2を用いる場合の光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0110】
この場合、図8(b)に示すセンサS1〜S8の配置と同様に、図11に示すセンサBa1、Ba4は、センサBa2、Ba3よりも下側に配置され、センサBs1、Bs2は、センサBs3、Bs4よりも左側に配置される。回折領域H21〜H25に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A21〜A25に照射される。これにより、図5(b)ように分布するBD光(信号光)の+1次回折光のみを受光することができる。
【0111】
<位置調整方法>
上記実施例では、図10(b)に示す光束領域a11〜a14を通るBD光(信号光)の+1次回折光が、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に適正に入射するよう、光ピックアップ装置において分光素子H1と光検出器116の位置調整を行う必要がある。この調整は、以下の手法により行うことができる。
【0112】
図14(a)は、上記実施例における光ピックアップ装置の位置調整の工程を示す図である。かかる位置調整は、光ピックアップ装置の組み立て時に実施される。
【0113】
位置調整の工程では、まず、分光素子H1と光検出器116を除く光学素子が、光ピックアップ装置内にセットされる(S11)。続いて、ホルダにセットされた分光素子H1が光ピックアップ装置内にセットされ(S12)、図11に示すセンサが予め受光面上に設置された光検出器116が光ピックアップ装置内にセットされる(S13)。このとき、光検出器116には、後述する位置調整を自動で行うことが可能となるよう位置調整用のアームが接続される。
【0114】
こうして、光ピックアップ装置に通電が行われる(S14)。これにより、半導体レーザ101が発光し、位置調整用としてセットされたディスク(たとえば、1層の記録層を有するROMのディスク)が回転され、このディスクに対してBD光が照射される。この状態で、対物レンズアクチュエータ122が駆動されると共に、コリメートレンズ108が所定の位置に位置付けられる。
【0115】
次に、偏光ビームスプリッタ106側からZ軸正方向に出射されるBD光の光軸に対して垂直な面内(図9(a)のXY平面内)において、光検出器116の位置調整(XY調整)が行われる。光検出器116のXY調整は、BD光の0次回折光を受光するCD用のセンサC11〜C14の検出信号に基づいて行われる。すなわち、光検出器116のX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ、PDx、PDyと表すと、PDx、PDyは、以下の式(6)、(7)の演算により取得することができる。
【0116】
PDx={(C13+C14)−(C11+C12)}
/(C11+C12+C13+C14) …(6)
PDy={(C12+C13)−(C11+C14)}
/(C11+C12+C13+C14) …(7)
【0117】
このとき、まず、上記式(6)、(7)に示すPDx、PDyにより調整可能となる範囲に光検出器116の位置が粗調整され(S15)、続いて、上記式(6)、(7)のPDx、PDyの値が0となるよう、光検出器116に対するXY調整自動追尾がONとされる(S16)。これにより、光検出器116に接続されたアームが光検出器116をXY平面内で移動させ、BD光の0次回折光の光軸が、光検出器116の中心Oと一致するようになる。
【0118】
続いて、フォーカスサーボがONとなり(S17)、上記式(4)のフォーカスエラー信号FEの値が0となるよう、BD対物レンズ114が、対物レンズアクチュエータ122により図9(b)のY軸方向(ディスクに垂直な方向)に移動される。
【0119】
次に、光検出器116のZ軸方向の位置調整(Z調整)が行われる(S18)。光検出器116のZ調整では、まず、上記式(3)のトラッキングエラー信号TEが0となるよう、BD対物レンズ114がディスクの径方向に移動される。続いて、上記式(5)のRF信号を参照しながら、BD対物レンズ114がディスクに垂直な方向に移動される。このとき、BD対物レンズ114の移動に応じて、4分割センサC1に掛かるBD光(信号光と迷光1、2)の焦点が変化し、かかる焦点の変化に応じて、RF信号の振幅が変化する。光検出器116のZ軸方向の位置は、RF信号の振幅が所定の大きさとなるよう設定される。
【0120】
次に、分光素子H1のXY平面内の位置調整(XY調整)が行われる(S19)。分光素子H1のXY調整は、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の検出信号に基づいて行われる。すなわち、分光素子H1のX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ、HOEx、HOEyと表すと、HOEx、HOEyは、以下の式(8)、(9)の演算により取得することができる。
【0121】
HOEx={(Bs3+Bs4)−(Bs1+Bs2)}
/(Bs1+Bs2+Bs3+Bs4) …(8)
HOEy={(Ba2+Ba3)−(Ba1+Ba4)}
/(Ba1+Ba2+Ba3+Ba4) …(9)
【0122】
分光素子H1は、XY平面内において、上記式(8)、(9)のHOEx、HOEyの値が0となるよう位置付けられる。
【0123】
次に、分光素子H1のZ軸方向の位置調整(Z調整)と、中心Oを中心とする回転方向の位置調整(θ調整)が行われる(S20)。分光素子H1のZ調整とθ調整(Zθ調整)は、BD光の+1次回折光を受光する4分割センサBz(センサBz1〜Bz4)の検出信号に基づいて行われる。すなわち、センサBz1〜Bz4の検出信号を、それぞれ、
Bz1〜Bz4と表し、分光素子H1のZ軸方向のずれ量と、中心Oを中心とする回転方向のずれ量を、それぞれ、HOEz、HOEθと表すと、HOEz、HOEθは、以下の式(10)、(11)の演算により取得することができる。
【0124】
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(10)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(11)
【0125】
分光素子H1は、Z軸方向において、上記式(10)のHOEzの値が0となるよう位置付けられ、中心Oを中心とする回転方向において、上記式(11)のHOEθの値が0となるよう位置付けられる。なお、S20の分光素子H1のZθ調整において、分光素子H1のZ調整とθ調整は、以下のように、交互にまたは並行して行われる。
【0126】
図14(b)は、分光素子H1のZ調整とθ調整が交互に行われる場合の、分光素子H1のZθ調整を示すフローチャートである。
【0127】
この場合、まず、HOEzの値が0となるよう分光素子H1のZ調整が行われ(S101)、続いて、HOEθの値が0となるよう分光素子H1のθ調整が行われる(S102)。そして、HOEz=0、且つ、HOEθ=0でないと(S103:NO)、処理がS101に戻されて、再度、分光素子H1のZ調整とθ調整が行われる。HOEz=0、且つ、HOEθ=0であると(S103:YES)、分光素子H1のZθ調整が終了する。なお、図14(b)において、S101とS102の処理の順番を逆にして、図14(c)に示すように分光素子H1のZθ調整が行われるようにしても良い。
【0128】
図15(a)は、分光素子H1のZ調整とθ調整が並行して行われる場合の、分光素子H1のZθ調整を示すフローチャートである。
【0129】
この場合、まず、図15(b)に示す分光素子H1のZ調整処理と、図15(c)に示すθ調整処理が並行して開始される(S201)。
【0130】
図15(b)を参照して、分光素子H1のZ調整処理では、まず、分光素子H1のZ調整が行われ(S211)、HOEz=0であるか判定される(S212)。HOEz=0でないと(S212:NO)、再度、分光素子のZ調整が行われ(S211)、HOEz=0であると(S212:YES)、HOEθ=0であるか判定される(S213)。続いて、HOEθ=0でないと(S213:NO)、処理がS212に戻され、再度、HOEz=0であるか判定される。HOEθ=0であると(S213:YES)、分光素子のZ調整処理が終了する。
【0131】
図15(c)を参照して、分光素子H1のθ調整処理では、まず、分光素子H1のθ調整が行われ(S221)、HOEθ=0であるか判定される(S222)。HOEθ=0でないと(S222:NO)、再度、分光素子のθ調整が行われ(S221)、HOEθ=0であると(S222:YES)、HOEz=0であるか判定される(S223)。続いて、HOEz=0でないと(S223:NO)、処理がS222に戻され、再度、HOEθ=0であるか判定される。HOEz=0であると(S223:YES)、分光素子のθ調整処理が終了する。
【0132】
図15(a)に戻り、S202では、図15(b)に示す分光素子H1のZ調整処理と、図15(c)に示すθ調整処理の両方が終了するまで処理が待機される(S202)。両方の処理が終了すると(S202:YES)、分光素子H1のZθ調整が終了する。
【0133】
なお、図14(b)および図14(c)のS103と、図15(b)のS212、S213と、図15(c)のS222、S223では、HOEzまたはHOEθがゼロであるかが判定されたが、HOEzまたはHOEθがゼロに近い所定の値の範囲内、すなわち、位置ずれが許容される所定の範囲内に含まれるかを判定されても良い。
【0134】
上記のように、光検出器116のXY調整とZ調整、および、分光素子H1のXY調整とZθ調整が完了すると、分光素子H1と光検出器116が、光ピックアップ装置内において接着される(S21)。この場合、分光素子H1と光検出器116の接着部分に接着用の樹脂が塗布され、この樹脂に紫外光が照射されることにより接着が行われる。続いて、光検出器116に対するXY調整自動追尾がOFFとされ(S22)、光検出器116に接続されていたXY調整用のアームの取り外し(チャッキングOFF)が行われる(S23)。
【0135】
こうして、図10(b)に示す光束領域a11〜a14を通るBD光(信号光)の+1次回折光が、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に適正に入射するようになる。なお、光検出器116に入射するBD光とCD光の0次回折光の光軸は一致しており、光検出器116の受光面には予めCD用の4分割センサC1〜C3とDVD用の4分割センサD1〜D3が設置されている。これにより、BD光に基づいて分光素子H1と光検出器116の位置調整が行われれば、CD光とDVD光についても適正に4分割センサC1〜C3、D1〜D3に入射するようになる。
【0136】
<変更例>
以下に示す変更例において、回折領域H31、H32と、回折領域H41、H42と、回折領域H51、H52は、請求項に記載の「第1の領域」に相当する。回折領域H33〜H36と、回折領域H43〜H46と、回折領域H53、H54は、請求項に記載の「第2の領域」に相当する。回折領域H37と、回折領域H47と、回折領域H55は、請求項に記載の「第3の領域」に相当する。ただし、上記請求項と変更例との対応の記載はあくまで一例であって、請求項に係る発明を変更例に限定するものではない。
【0137】
上記実施例では、図6(b)に示すようにBD光の照射領域を分布させるために、分光素子H1が用いられたが、上記実施例の分光素子H1に替えて、図16(a)に示す分光素子H3が用いられても良い。
【0138】
図16(a)は、分光素子H3を偏光ビームスプリッタ106側から見たときの平面図である。図16(b)は、分光素子H3に入射するレーザ光を、分光素子H3の回折領域H31〜H37の境界線に対応するよう区分した光束領域a31〜a37を示す図である。
【0139】
分光素子H3は、上記分光素子H1と同様、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面に2段ステップ型の回折パターンが形成されている。分光素子H3の光入射面は、図16(a)に示すように、7つの回折領域H31〜H37に区分されている。回折領域H33、H34と、回折領域H35、H36は、それぞれ、図10(a)に示す分光素子H1の回折領域H13、H14が、中心を通る上下方向の直線により左右に分割された形状とされる。回折領域H31〜H37の回折効率とピッチは、上記分光素子H1の対応する領域の回折効率とピッチと同様に設定される。
【0140】
回折領域H31、H32、H37は、光束領域a31、a32、a37を通るレーザ光の進行方向に対して、上記分光素子H1と同様のベクトルを付与する。回折領域H33〜H36は、それぞれ、光束領域a33〜a36を通るレーザ光の進行方向に対して、ベク
トルV31〜V34と、ベクトルV31m〜V34mを付与する。ベクトルV31〜V34は、それぞれ、+1次回折光についてのベクトルであり、ベクトルV31m〜V34m、それぞれ、−1次回折光についてのベクトルである。ベクトルV31、V32は、それぞれ、図10(a)のV23に下方向、上方向の成分を加えたベクトルであり、ベクトルV33、V34は、それぞれ、図10(a)のV24に下方向、上方向の成分を加えたベクトルである。なお、ベクトルV31m〜V34mは、それぞれ、ベクトルV31〜V34に対して反対方向であり、ベクトルV31〜V34と等しい大きさを有する。
【0141】
図16(c)は、図11に示すセンサBs1〜Bs4に位置付けられたBD光(信号光)の+1次回折光の照射領域を示す模式図である。なお、センサBs1〜Bs4以外のセンサ上の照射領域は、図12に示す場合と略同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0142】
図16(c)に示すように、光束領域a33〜a36を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A33〜A36に照射される。このとき、照射領域A33、A34は、センサBs3とセンサBs4の境界線に重ならず、照射領域A35、A36は、センサBs1とセンサBs2の境界線に重ならない。すなわち、上記のようにベクトルV31〜V34が、下方向または上方向の成分を持つことにより、照射領域A33とA34の間に隙間が生じ、また、照射領域A35とA36との間に隙間が生じる。これにより、経年劣化等により、センサBs1〜Bs4の位置が上下方向にずれた場合でも、上記分光素子H1に比べて、センサBs1〜Bs4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0143】
なお、上記実施例の変更例として述べた図13(a)に示す分光素子H2についても、本変更例のように、上下の回折領域H23、H24を左右に2分割しても良い。
【0144】
図17(a)は、この場合の分光素子H4を示す平面図である。
【0145】
分光素子H4の回折領域H41〜H47の境界線は、図16(a)の回折領域H31〜H37と同様に設定される。回折領域H41〜H47には、それぞれ、図17(b)に示す光束領域a41〜a47を通るレーザ光が入射する。
【0146】
回折領域H41、H42、H47は、光束領域a41、a42、a47を通るレーザ光の進行方向に対して、上記分光素子H2と同様のベクトルを付与する。回折領域H43〜H46は、それぞれ、光束領域a43〜a46を通るレーザ光の進行方向に対して、ベクトルV41〜V44と、ベクトルV41m〜V44mを付与する。ベクトルV41〜V44は、それぞれ、+1次回折光についてのベクトルであり、ベクトルV41m〜V44m、それぞれ、−1次回折光についてのベクトルである。ベクトルV41、V42は、それぞれ、図13(a)のV13に下方向、上方向の成分を加えたベクトルであり、ベクトルV43、V44は、それぞれ、図13(a)のV14に下方向、上方向の成分を加えたベクトルである。なお、ベクトルV41m〜V44mは、それぞれ、ベクトルV41〜V44に対して反対方向であり、ベクトルV41〜V44と等しい大きさを有する。
【0147】
図17(c)は、図13(b)に示すセンサBs1〜Bs4に位置付けられたBD光(信号光)の+1次回折光の照射領域を示す模式図である。
【0148】
図17(c)に示すように、光束領域a43〜a46を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A43〜A46に照射される。このとき、図16(c)の場合と同様に、照射領域A43とA44の間に隙間が生じ、また、照射領域A45とA46との間に隙間が生じる。これにより、経年劣化等により、センサBs1〜Bs4の位置が上下方向にずれた場合でも、上記分光素子H2に比べて、センサBs1〜Bs4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0149】
<レンズシフト時の迷光のシミュレーション>
本件出願の発明者は、図8(a)〜(c)に示すように配置されたセンサによって、BD光(信号光)の+1次回折光を受光する場合に、センサに掛かる迷光の影響についてのシミュレーションを行った。
【0150】
本シミュレーションでは、以下の3つの分光素子Hs1〜Hs3が想定されている。
【0151】
分光素子Hs1は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図4(a)のベクトルV01〜V04が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV01、V02に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV03に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV04に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0152】
分光素子Hs2は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図5(a)のベクトルV11〜V14が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV11、V12に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV13に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV14に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0153】
分光素子Hs3は、図16(a)に示す分光素子H3と同様に構成されている。すなわち、分光素子Hs3は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図6(a)のベクトルV21〜V24が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV21、V22に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV23に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV24に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0154】
また、分光素子Hs1が用いられる場合には図8(a)のセンサが設定され、分光素子Hs2が用いられる場合には図8(b)のセンサが設定され、分光素子Hs3が用いられる場合には図8(c)のセンサが設定される。
【0155】
何れの分光素子が用いられる場合も、図16(c)に示すように、中心Oの右側に位置するセンサ上における信号光の照射領域は、上下に並ぶセンサの境界線に重ならない。
【0156】
また、本シミュレーションでは、BDは4つの記録層を有し、各記録層は表面側(光入射面側)からL3、L2、L1、L0の順に並んでいる。また、BD用の対物レンズ(上記実施例のBD対物レンズ114に相当)が、BDの径方向に対して移動して、BD用の対物レンズの光軸がレーザ光の光軸からシフトすることを、以下「レンズシフト」と称する。
【0157】
図18(a)、(b)は、分光素子Hs1が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図18(a)、(b)には、それぞれ、中心Oの上側と右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションでは、BD光はL2層に合焦され、レンズシフトは生じていない。図18(a)、(b)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L3”はL3層からの反射光(迷光)である。
【0158】
レンズシフトが無い場合、上側のセンサでは、図18(a)に示すように、信号光が、各センサ上に適正に照射されており、迷光は、略センサに掛かっていない。他方、右側のセンサでは、図18(b)に示すように、信号光は各センサ上に適正に照射されているものの、センサに掛かる迷光の照射領域は、図18(a)に比べて大きくなっている。
【0159】
ここで、図18(a)、(b)に示す状態からレンズシフトが生じると、上側と右側のセンサの何れにおいても、迷光が左右方向に移動してセンサに大きく重なってしまう。たとえば、迷光が左方向に移動すると、図18(a)の場合、L3層による右側の迷光が、右上と右下のセンサの両方に重なってしまう。また、図18(b)の場合、L3層による下側の迷光は、左下のセンサに重なるのみであるが、L3層による上側の迷光は、左上と右上のセンサの両方に重なってしまう。
【0160】
図18(c)は、分光素子Hs1が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。横軸はBD用の対物レンズのレンズシフト量を示し、縦軸は、図18(a)、(b)に示す8つのセンサに入射する総光量に占める迷光の割合を示す。このように、分光素子Hs1が用いられる場合、レンズシフト量に応じて多くの迷光がセンサに入射し、センサの検出信号が劣化することが分かる。
【0161】
図19(a)〜(f)は、分光素子Hs2が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図19(a)、(c)、(e)には、中心Oの上側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。図19(b)、(d)、(f)には、中心Oの右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションでは、BD光はL2層に合焦されている。図19(a)〜(f)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L1”、“L3”は、それぞれ、L1層、L3層からの反射光(迷光)であり、“表面”はディスク表面(光入射面)からの反射光である。
【0162】
図19(a)、(b)は、レンズシフトが無い状態を示し、図19(c)、(d)は、レンズシフトにより迷光が左側に移動した状態を示し、図19(e)、(f)は、レンズシフトにより迷光が右側に移動した状態を示している。
【0163】
図19(a)〜(f)に示すように、レンズシフトの有無に拘わらず、信号光は、各センサ上に適正に照射されている。
【0164】
レンズシフトが無い場合、上側のセンサでは、図19(a)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域が、左下と右下のセンサの両方に重なっている。しかしながら、かかる迷光の照射領域は大きく広がっているため、センサからの検出信号の精度は維持される。また、右側のセンサでも、図19(b)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域が右上と右下のセンサの両方に重なっている。しかしながら、この場合も、かかる迷光の照射領域は大きく広がっているため、センサからの検出信号の精度は維持される。
【0165】
レンズシフトにより迷光が左側に移動した場合、上側のセンサでは、図19(c)に示すように、L3層による迷光の照射領域が、右下のセンサに重なっている。しかしながら、この場合、L3層による迷光の照射領域は、右下のセンサにしか重ならないため、図18(a)に示すL3層による迷光の照射領域が左側に移動する場合に比べて、センサに重なる迷光の照射領域を小さくすることができる。また、右側のセンサでは、図19(d)に示すように、L3層による上側の迷光の照射領域は、左上のセンサに重なるものの、L3層による下側の迷光の照射領域は、何れのセンサにも重ならない。なお、図19(c)、(d)においても、ディスク表面による迷光は大きく広がっているため、センサの検出
信号の精度は維持される。
【0166】
レンズシフトにより迷光が右側に移動した場合も、図19(e)、(f)に示すように、センサに重なる迷光の照射領域は小さい。なお、この場合、上側のセンサにおいて、図19(e)に示すように、右下のセンサにL1層による迷光の照射領域が重なっている。
【0167】
図21(a)は、分光素子Hs2が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。この場合、図18(c)に示す場合に比べて、センサに入射する迷光の割合が小さくなることが分かる。すなわち、分光素子Hs1が用いられるよりも、分光素子Hs2が用いられる方が、センサに入射する迷光の割合を小さくすることができる。
【0168】
図20(a)〜(f)は、分光素子Hs3が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図20(a)〜(f)には、中心Oの上側と右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションにおいても、BD光は、L2層に合焦されている。図20(a)〜(f)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L1”、“L3”は、それぞれ、L1層、L3層からの反射光(迷光)であり、“表面”はディスク表面(光入射面)からの反射光である。
【0169】
レンズシフトが無い場合、図20(a)、(b)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域は、図19(a)、(b)と異なりセンサに重ならない。
【0170】
レンズシフトにより迷光が左側に移動した場合、図20(c)、(d)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(c)、(d)に比べて小さくなっている。また、右側のセンサにおいて、図20(d)に示すように、L3層による上側の迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(d)に比べて小さくなっている。
【0171】
レンズシフトにより迷光の照射領域が右側に移動した場合、図20(e)、(f)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(e)、(f)に比べて小さくなっている。また、上側のセンサにおいて、図20(e)に示すように、L1層による迷光の照射領域は、図19(e)と異なりセンサに重ならない。
【0172】
図21(b)は、分光素子Hs3が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。この場合、図21(a)に示す場合に比べて、センサに入射する迷光の割合が小さくなることが分かる。すなわち、分光素子Hs2が用いられるよりも、分光素子Hs3が用いられる方が、センサに入射する迷光の割合をさらに小さくすることができる。
【0173】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も上記以外に種々の変更が可能である。
【0174】
たとえば、上記実施例では、分光素子H1がアナモレンズ115の前段に配置されたが、分光素子H1をアナモレンズ115の後段に配置しても良く、あるいは、アナモレンズ115の入射面または出射面に、分光素子H1と同様の回折作用をレーザ光に付与する回折パターンを一体的に配しても良い。
【0175】
なお、分光素子H1は、アナモレンズ115の後段に配置するよりも前段に配置する方が望ましい。すなわち、分光素子H1をアナモレンズ115の前段に配置すると、後段に配置する場合に比べて、分光素子H1から光検出器116までの距離を長くすることがで
きる。このため、分光素子H1の回折角を大きく設定しなくても、図11に示すように、光検出器116上でBD光(信号光)の+1次回折光を、中心Oから離れた位置に照射させることができる。
【0176】
また、上記実施例では、図11に示すように、インライン方式に基づいてCD用のトラッキングエラー信号を取得するために、4分割センサC1〜C3が上下方向に配置された。このように4分割センサC1〜C3が配置される場合、回折領域H15により付与されるベクトルの方向を上下方向に変更して、回折領域H15より回折されたBD光の+1次回折光と−1次回折光が、4分割センサC2、C3に照射されるようにしても良い。
【0177】
図22(a)は、回折領域H15により付与されるベクトルが上下方向に変更された分光素子H1を示す平面図である。この場合、回折領域H15は、光束領域a15を通るレーザ光の+1次回折光と−1次回折光に対して、ベクトルV45、V45mを付与する。ベクトルV45、V45mの方向は、トラック像の方向に平行であり、ベクトルV45、V45mの大きさは互いに等しい。
【0178】
ここで、ベクトルV45、V45mの大きさは、図12の4分割センサBzにおける照射領域と、この照射領域の中心Oに対して点対称な位置にある照射領域とが、それぞれ、4分割センサC2、C3に位置付けられるように調整される。この場合、図12に示す4分割センサBzは省略される。
【0179】
図22(b)は、この場合の光検出器116の中心Oの近傍のBD光(信号光)の分布状態を示す図である。なお、4分割センサC2、C3は、上記実施例と同様、4分割センサC1を中心として対称となる位置に配置されている。
【0180】
図22(b)に示すように、中心Oには、全ての回折領域H11〜H15に入射するBD光(信号光)の0次回折光が照射される。4分割センサC2の中心には、回折領域H15によるBD光(信号光)の+1次回折光が照射される。4分割センサC3の中心には、回折領域H15によるBD光(信号光)の−1次回折光が照射される。
【0181】
この場合、センサC21〜C24、C31〜C34の検出信号を、それぞれ、C21〜C24、C31〜C34と表すと、上記式(10)、(11)に示した分光素子H1のZ調整とθ調整に用いるHOEz、HOEθに替えて、HOEz、HOEθは、以下の式(12)、(13)の演算により取得することができる。
【0182】
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)} …(12)
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)} …(13)
【0183】
分光素子H1は、Z軸方向において、上記式(12)のHOEzの値が0となるよう位置付けられ、中心Oを中心とする回転方向において、上記式(13)のHOEθの値が0となるよう位置付けられる。すなわち、図14(a)のステップS20の調整は、上記式(12)、(13)に基づいて行われる。これにより、分光素子H1のZ軸方向の位置と、中心Oを中心とする回転方向の位置とを適正に設定することができる。
【0184】
ここで、インライン方式によるトラッキング調整技術を実現するために、4分割センサC2、C3が、図22(b)に示す位置から左右に僅かにずれた位置に配置される場合がある。
【0185】
図23(a)は、この場合の光検出器116の中心Oの近傍のBD光(信号光)の分布状態を示す図である。図22(b)に示す場合と比べて、4分割センサC2、C3が、それぞれ僅かに右側と左側にずれ、4分割センサD2、D3が、それぞれ、僅かに右側と左側にずれている。この場合、位置調整時には、図23(a)に示すように、BD光(信号光)の+1次回折光と−1次回折光が、それぞれ、4分割センサC2、C3に照射されるよう、回折領域H15のベクトルが設定される。
【0186】
この場合、4分割センサC1〜C3の分割線は、中心Oを通る1つの直線上に位置付けられていない。このため、このように4分割センサC1〜C3が配置されると、図22(b)に示す場合に比べて、上記式(12)、(13)に示すHOEz、HOEθに僅かに誤差が含まれることとなる。しかしながら、4分割センサC2、C3の左右方向のずれ量が小さければ、かかる誤差は小さいため、僅かな誤差の範囲内において、分光素子H1の位置を調整することが可能となる。
【0187】
このように、4分割センサC2、C3が左右方向に僅かにずれる場合も、請求項4に記載の「前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向く」の限定に含まれる。すなわち、4分割センサC2、C3の分割線が、中心Oと4分割センサC2、C3の中心とを結ぶ直線から僅かに傾くような場合も、4分割センサC2、C3の分割線が中心Oの方向を略向いている場合には、上記請求項3の限定に含まれる。この点は、図11、図13(b)に示す中心Oと4分割センサBzの分割線との関係についても同様である。
【0188】
なお、光ピックアップ装置が、上記実施例のように、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型として構成されるのでなく、BDのみに対応可能に構成される場合、中心Oの周りに位置調整用として、以下のように4分割センサC2、C3が配される。
【0189】
図23(b)は、4分割センサC2、C3が、図22(b)の状態から中心Oの周りに回転させられた状態を示す図である。このように、4分割センサC2、C3の分割線が中心Oを通る1つの直線上に位置付けられ、4分割センサC2、C3が中心Oに対して点対称の位置にある場合、図22(b)の場合と同様に、HOEz、HOEθに基づいて、分光素子H1の位置を誤差なく調整することが可能となる。
【0190】
また、上記実施例では、BD、CDおよびDVDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置が例示されたが、BDとDVDに対応可能な光ピックアップ装置や、BDのみに対応可能な光ピックアップ装置等に本発明を適用することも可能である。たとえば、BDのみに適用可能な光ピックアップ装置に本発明を適用する場合、図9(a)、(b)の光学系から、CDおよびDVDに対応するための光学系が省略される。この場合、図11のセンサレイアウトから、4分割センサC2、C3、D1〜D3が省略される。
【0191】
また、上記実施例では、分光素子H1の回折領域H13、H14が、それぞれ、図16(a)の回折領域H33、H34と、回折領域H35、H36のように分割され、分割後の各回折領域の回折方向がやや下向き、やや上向きに調整された。これと同様、センサBa1、Ba4の境界線と、センサBa2、Ba3の境界線に信号光が掛からないようにするために、図16(a)の回折領域H31、H32が上下に分割され、分割後の各回折領域の回折方向がやや右向き、やや左向きに調整されても良い。
【0192】
また、上記実施例では、図10(a)、図13(a)に示すように、回折領域におけるベクトルが設定されたが、これに替えて、図24(a)に示すように、回折領域におけるベクトルが設定されるようにしても良い。
【0193】
図24(a)は、この場合の分光素子H5を示す平面図である。
【0194】
分光素子H5の回折領域H51〜H55は、+1次回折光について、ベクトルV51〜V55を付与し、−1次回折光について、ベクトルV51m〜V55mを付与するように構成される。ベクトルV51〜V54の方向は、平面方向と曲面方向に対して45度の角度をなし、且つ、全て異なっている。ベクトルV51〜V54の大きさは、全て同じである。ベクトルV51m〜V55mは、それぞれ、ベクトルV51〜V55に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。なお、ベクトルV55、V55mは、それぞれ、図10(a)に示すベクトルV25、V25mと同じ方向である。
【0195】
図24(b)は、分光素子H5を用いる場合の光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0196】
この場合、センサBa1、Ba4と、センサBa2、Ba3は、それぞれ、中心Oに対して上側と下側に配置され、センサBs1、Bs2と、センサBs3、Bs4は、中心Oに対して右側と左側に配置される。また、4分割センサBzは、上記実施の形態と同様、中心Oと中心BzOとを結ぶ直線が4分割センサBzの一つの分割線に一致するように配置される。
【0197】
回折領域H51〜H55に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A51〜A55に照射される。全ての回折領域H51〜H55に入射するBD光(信号光)の0次回折光は、中心Oに照射される。回折領域H51〜H55のベクトルV51〜V55の大きさは、図24(b)に示すように照射領域が分布するよう設定されている。
【0198】
なお、回折領域H51〜H54に入射するBD光(迷光1、2)の+1次回折光と、BD光(信号光と迷光1、2)の−1次回折光は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の頂角によって形成される信号光領域3の外側に照射される。回折領域H55に入射するBD光(信号光)の−1次回折光は、中心Oの左下に照射される。
【0199】
この場合も、上記実施例と同様、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4により、BD光(信号光)の+1次回折光のみを受光することができる。また、上記実施例と同様、4分割センサBz、C1の検出信号に基づいて、分光素子H5と光検出器116の位置調整を行うことができる。
【0200】
また、上記実施例では、図12に示すように、4分割センサBzが上下左右の方向に対して45度傾けて配置された。しかしながら、これに限らず、4分割センサBzの分割線が、中心Oと4分割センサBzの中心BzOとを結ぶ一点鎖線の直線と略重なっていれば、4分割センサBzは上下左右の方向に対して任意の角度だけ傾けて配置されても良い。この場合、分光素子の中央の回折領域(たとえば、回折領域H15)のベクトルが、4分割センサBzの傾きに合わせて設定される。
【0201】
なお、本発明は、上記実施例に示すように分光素子がステップ型の回折パターンを有する場合に用いて好ましいものであるが、ブレーズ型の回折パターンを有する分光素子が用いられる場合にも適用可能である。すなわち、本発明は、+1次回折光と−1次回折光が生じる場合の他、何れか一方の回折光のみが生じる場合にも適用可能である。
【0202】
また、分光素子によるレーザ光の回折方向は上記実施例に示すものに限定されるものではない。平面方向と曲面方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光軸に整合させたときに、対頂角の方向にある2つの光束領域のレーザ光と、他の対頂角の方向にある他の2つの光束領域のレーザ光と、交点の位置にある光束領域のレーザ光が光検出器の受光面上において互いに離れるのであれば、分光素子によるレーザ光の回折方向を上記実施例で示す方向以外の方向に設定しても良い。
【0203】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0204】
101 … 半導体レーザ(レーザ光源)
114 … BD対物レンズ(対物レンズ)
115 … アナモレンズ(非点収差素子)
116 … 光検出器
Ba1〜Ba4 … センサ
Bs1〜Bs4 … センサ
Bz … 4分割センサ
Bz1〜Bz4 … センサ
C1 … 4分割センサ(他の4分割センサ、第3の4分割センサ)
C2 … 4分割センサ(第1の4分割センサ)
C21〜C24 … センサ
C3 … 4分割センサ(第2の4分割センサ)
C31〜C34 … センサ
H1〜H5 … 分光素子
H11、H12 … 回折領域(第1の領域)
H13、H14 … 回折領域(第2の領域)
H15 … 回折領域(第3の領域)
H21、H22 … 回折領域(第1の領域)
H23、H24 … 回折領域(第2の領域)
H25 … 回折領域(第3の領域)
H31、H32 … 回折領域(第1の領域)
H33〜H36 … 回折領域(第2の領域)
H37 … 回折領域(第3の領域)
H41、H42 … 回折領域(第1の領域)
H43〜H46 … 回折領域(第2の領域)
H47 … 回折領域(第3の領域)
H51、H52 … 回折領域(第1の領域)
H53、H54 … 回折領域(第2の領域)
H55 … 回折領域(第3の領域)
O … 中心(基準点)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置および光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層が配されたディスクも実用化されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、記録層が多数配されている場合に、適正に迷光を除去し得る光ピックアップ装置の新たな構成が示されている。この構成によれば、光検出器の受光面上に、信号光のみが存在する方形状の領域(信号光領域)を作ることができる。記録媒体からの反射光は、信号光領域の頂角付近に照射される。信号光領域の頂角付近に、光検出器のセンサを配置することで、検出信号に対する迷光による影響を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記光ピックアップ装置では、信号光領域に近接した位置に迷光が照射されるため、信号光領域の外側に照射される迷光がセンサに漏れ込むことが起こり得る。
【0007】
また、上記光ピックアップ装置では、記録媒体からの反射光を各信号光に分離するために、分光素子が配置される。この場合、各信号光をセンサに適正に導くために、分光素子を適正な位置に配置する必要がある。
【0008】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、分光素子を適正な位置に配置することが可能な光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様は、光ピックアップ装置に関する。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂
直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる1つの位置に導く分光素子と、を備える。ここで、前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された4分割センサとを有する。また、前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置される。また、前記4分割センサは、前記4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される。
【0010】
本発明の第2の態様は、光ピックアップ装置に関する。この態様に係る光ピックアップ装置は、レーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる2つの位置に導く分光素子と、を備える。ここで、前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる前記2つの位置にそれぞれ配置された第1および第2の4分割センサとを有する。また、前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置される。また、前記第1および第2の4分割センサは、それぞれ、前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される。
【0011】
本発明の第3の態様は、上記第1の態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関する。この態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、前記4分割センサは、4つのセンサBz1〜Bz4から構成され、前記基準点の方向を向く前記分割線によって、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz2と、前記センサBz3、Bz4に区分され、且つ、他の分割線により、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz4と、前記センサBz2、Bz3に区分されるとき、以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる。
【0012】
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
【0013】
ただし、上記2つの式において、Bz1〜Bz4は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサBz1〜Bz4から出力される検出信号である。
【0014】
本発明の第4の態様は、上記第2の態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法に関する。この態様に係る光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、前記第1の4分割センサは、4つのセンサC21〜C24から構成され、前記第2の4分割センサは、4つのセンサC31〜C34から構成され、前記基準点の方向を向く前記第1の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C22と、前記センサC23、C24に区分され、且つ、前記第1の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C24と、前記センサC22、C23に区分され、前記基準点の方向を向く前記第2の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C32と、前記センサC33、C34に区分され、且つ、前記第2の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C34と、前記センサC32、C33に区分され、前記基準点を対称点として、前記センサC21、C22、C23、C24が、それぞれ、前記センサC33、C34、C31、C32と点対称な位置にあるとき、以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる。
【0015】
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
【0016】
ただし、上記2つの式において、C21〜C24は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC21〜C24から出力される検出信号であり、C31〜C34は、それぞれ、前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC31〜C34から出力される検出信号である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、センサへの迷光の漏れ込みを円滑に抑制すると共に、分光素子を適正な位置に配置することが可能な光ピックアップ装置および分光素子の位置調整方法を提供することができる。
【0018】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施の形態に係る技術原理(レーザ光の収束状態)を説明する図である。
【図2】実施の形態に係る技術原理(光束領域の分布状態)を説明する図である。
【図3】実施の形態に係る技術原理(信号光と迷光の分布状態)を説明する図である。
【図4】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図5】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図6】実施の形態に係る技術原理(信号光のみを取り出す方法)を説明する図である。
【図7】従来の非点収差法に基づくセンサと信号生成方法を説明する図である。
【図8】実施の形態に係る技術原理に基づくセンサと信号生成方法について説明する図である。
【図9】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図10】実施例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図11】実施例に係る光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図12】実施例に係る0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。
【図13】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【図14】実施例に係る光ピックアップ装置の位置調整の工程を示す図および分光素子のZθ調整を示すフローチャートである。
【図15】実施例に係る分光素子のZθ調整を示すフローチャートである。
【図16】変更例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図17】変更例に係る分光素子の構成を説明する図である。
【図18】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図およびレンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図19】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図である。
【図20】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のセンサ近傍の照射領域のシミュレーション結果を示す図である。
【図21】実施の形態に係る技術原理に基づく場合のレンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図22】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器の中心の近傍を示す図である。
【図23】変更例に係る光検出器の中心の近傍を示す図である。
【図24】変更例に係る分光素子を示す平面図および光検出器のセンサレイアウトを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0021】
<技術的原理>
まず、図1ないし図8を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。
【0022】
図1(a)、(b)は、レーザ光の収束状態を説明する図である。図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)、ターゲット記録層よりも深い層によって反射されたレーザ光(迷光1)、ターゲット記録層よりも浅い層によって反射されたレーザ光(迷光2)の収束状態を示す図である。図1(b)は、本原理に用いるアナモ
レンズの構成を示す図である。
【0023】
図1(b)を参照して、アナモレンズは、レンズ光軸に平行に入射するレーザ光に対し、曲面方向と平面方向に収束作用を付与する。ここで、曲面方向と平面方向は、互いに直交している。また、曲面方向は、平面方向に比べ曲率半径が小さく、アナモレンズに入射するレーザ光を収束させる効果が大きい。
【0024】
なお、ここでは、アナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、レンズ光軸上の互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1(b)中の“平面方向”におけるアナモレンズの形状を平面に限定するものではない。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0025】
図1(a)を参照して、アナモレンズによって収束させられた信号光は、曲面方向および平面方向の収束により、それぞれ異なる位置で焦線を結ぶ。曲面方向の収束による焦線位置(P02)は、平面方向の収束による焦線位置(P03)よりも、アナモレンズに近い位置となり、信号光の収束位置(P01)は、曲面方向および平面方向の収束による焦線位置(P02)、(P03)の中間位置となる。信号光のビームは、収束位置(P01)において最小錯乱円となる。なお、収束位置(P01)において、アナモレンズに入射するレーザ光の光軸に垂直な面を、以下、「面P0」と称する。
【0026】
アナモレンズによって収束させられた迷光1についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P12)は、平面方向の収束による焦線位置(P13)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光1の平面方向の収束による焦線位置(P13)が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズに近い位置となるよう設計されている。
【0027】
アナモレンズによって収束させられた迷光2についても同様に、曲面方向の収束による焦線位置(P22)は、平面方向の収束による焦線位置(P23)よりも、アナモレンズに近い位置となる。アナモレンズは、迷光2の曲面方向の収束による焦線位置(P22)が、信号光の収束位置(P01)よりも、アナモレンズから遠い位置となるよう設計されている。
【0028】
以上を考慮して、面P0上における信号光および迷光1、2の光束領域の関係について検討する。
【0029】
図2(a)は、アナモレンズに入射するレーザ光に設定された4つの光束領域f1〜f4を示す図である。この場合、光束領域f1〜f4を通る信号光は、面P0上において、図2(b)のように分布する。また、光束領域f1〜f4を通る迷光1は、面P0上において、図2(c)のように分布する。光束領域f1〜f4を通る迷光2は、面P0上において、図2(d)のように分布する。なお、図2(b)〜(d)には、信号光のビーム径の大きさを示す円が実線で示されており、図2(c)、(d)に示すように、迷光1、2は信号光に比べて大きく広がっている。
【0030】
ここで、面P0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図3(a)〜(d)のようになる。この場合、各光束領域を通る信号光には、同じ光束領域を通る迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域を通る信号光と迷光1、2を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサにて受光するように構成すると、対応するセンサには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができ
る。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
このように、光束領域f1〜f4を通る光を分散させて面P0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図4(a)は、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)を面P0上において離間させるために、各光束領域を通るレーザ光の進行方向に付与するベクトルを示す図である。図4(a)は、アナモレンズ入射時の進行方向にレーザ光を見た図である。
【0033】
光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV01〜V04が付与されることにより変化する。ベクトルV01〜V04の方向は、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45度の傾きを持っている。ベクトルV01、V02の方向は同じであり、ベクトルV03、V04の方向は同じである。また、ベクトルV01、V04の大きさは同じであり、ベクトルV02、V03の大きさは同じである。ベクトルV01〜V04の大きさは、これらベクトルが付与される前のレーザ光の進行方向(アナモレンズ入射時の進行方向)に対する角度として規定される。
【0034】
図4(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図4(b)に示すように照射される。なお、図4(b)には、進行方向が変化される前のレーザ光の光軸を示す中心Oが、併せて示されている。ベクトルV01〜V04を調節することにより、面P0上において、図4(b)に示すように各光束領域を通る信号光と迷光1、2を分布させることができる。これにより、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。
【0035】
また、図4(a)に替えて、図5(a)に示すように、光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV11〜V14が付与されることにより変化するようにしても良い。この場合、ベクトルV11〜V14の方向は、図4(a)のベクトルV01〜V04と同じである。また、ベクトルV12の大きさは、ベクトルV11の大きさよりも大きく、ベクトルV13の大きさは、ベクトルV14の大きさよりも大きい。
【0036】
図5(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図5(b)に示すように照射される。この場合も、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。
【0037】
また、図4(a)に替えて、図6(a)に示すように、光束領域f1〜f4を通るレーザ光の進行方向は、それぞれ、ベクトルV21〜V24が付与されることにより変化するようにしても良い。この場合、ベクトルV21〜V24の方向は、図4(a)のベクトルV01〜V04と同じである。また、ベクトルV21の大きさは、ベクトルV22の大きさよりも大きく、ベクトルV24の大きさは、ベクトルV23の大きさよりも大きい。
【0038】
図6(a)に示すように進行方向が変化されると、光束領域f1〜f4を通るレーザ光(信号光と迷光1、2)は、面P0上において、図6(b)に示すように照射される。この場合も、面P0上に信号光の照射領域のみが存在する領域を設定することができる。すなわち、この場合、光束領域f1、f2を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域1)の対角位置にある頂角に位置付けられ、光束領域f3、f4を通るレーザ光(信号光)の照射領域は、これら2つの照射領域のみが存在する直方形(信号光領域2)の対角位置にある頂角に位置付けられる。
【0039】
ここで、従来の非点収差法に基づくセンサと信号生成方法について説明する。
【0040】
図7(a)は、ディスクからの反射光に設定された8つの光束領域a1〜a8を示す図であり、図7(b)は、従来の非点収差法に基づく信号光の照射領域とセンサを示す図である。図7(b)に示すセンサは、図1(a)の構成において面P0上に配され、図7(b)には、光束領域a1〜a8を通る信号光が、面P0上において、それぞれ照射される照射領域A1〜A8が示されている。
【0041】
また、図7(a)において、トラック溝による信号光の回折の像(トラック像)の方向は、平面方向および曲面方向に対して45度の傾きを持っており、上下方向となっている。これにより、図7(b)において、信号光のトラック像の方向は、左右方向となる。図7(a)、(b)には、トラック像が点線で示されている。
【0042】
図7(b)を参照して、従来の非点収差法では、光検出器の受光面上に4つのセンサSa〜Sdから構成される4分割センサが配される。なお、ここで、センサSa〜Sdは、便宜上、さらに平面方向または曲面方向に2分割されているものとする。すなわち、センサSaは、センサS1、S2に分割され、センサSbは、センサS3、S4に分割され、センサScは、センサS5、S6に分割され、センサSdは、センサS7、S8に分割されている。この場合、センサS1〜S8による検出信号をS1〜S8で表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、それぞれ、以下の式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0043】
FE=(S3+S4+S7+S8)−(S1+S2+S5+S6) …(1)
PP=(S1+S2+S3+S4)−(S5+S6+S7+S8) …(2)
【0044】
次に、上記図4(b)、図5(b)、図6(b)に示した信号光を受光するためのセンサと信号生成方法について説明する。
【0045】
図8(a)〜(c)は、それぞれ、図4(a)、図5(a)、図6(a)に示すように進行方向が変化された信号光を受光するためのセンサを示す図である。図8(a)〜(c)において、センサS1〜S8は面P0上に配され、トラック像の方向は左右方向となる。
【0046】
図4(a)に示すように進行方向が変化させられると、図7(a)に示す光束領域a1〜a8を通る信号光は、それぞれ、図8(a)に示す照射領域A1〜A8に照射される。同様に、図5(a)、図6(a)に示すように進行方向が変化させられると、光束領域a1〜a8を通る信号光は、図8(b)、(c)に示す照射領域A1〜A8に照射される。
【0047】
したがって、図8(a)〜(c)に示すように、信号光の照射領域A1〜A8の位置に、センサS1〜S8を配置すれば、図7(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPを、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0048】
以上のように、本原理によれば、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、迷光の影響が抑制されたフォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0049】
ここで、図8(a)〜(c)に示すように、センサS1〜S8の大きさは、通常、照射領域A1〜A8を十分含み得るよう設定される。このようにセンサS1〜S8が構成されると、図8(a)では、センサS1〜S8に、受光対象となる照射領域以外の照射領域が重なる惧れがある。すなわち、図8(a)において、センサS6、S7の下端部に照射領
域A3、A2が重なり、センサS3、S2の上端部に照射領域A6、A7が重なり、センサS8、S1の左端部に照射領域A5、A4が重なり、センサS5、S4の右端部に照射領域A8、A1が重なる惧れがある。
【0050】
また、図8(a)では、信号光の照射領域A1〜A8に加えて、図4(b)に示すように、迷光1、2の照射領域が分布している。この場合、迷光1と迷光2の照射領域は、センサS1〜S8の隣の略同じ位置で重なり合っている。これにより、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞が、センサS1〜S8に漏れ込む惧れがある。
【0051】
他方、図5(b)、図6(b)に示す照射領域に対して、図8(b)、(c)に示すセンサS1〜S8により信号光の照射領域A1〜A8を受光する場合、図8(a)の場合と異なり、センサS1〜S8に受光対象となる照射領域以外の照射領域が重なり難く、また、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞は、センサS1〜S8に漏れ込み難い。
【0052】
すなわち、図5(b)、図6(b)では、上下方向に並ぶ2つの信号光の間隔と、左右方向に並ぶ2つの信号光の間隔が、それぞれ、図4(b)の場合に比べて大きく設定されている。これにより、図8(b)、(c)のセンサS1〜S8には、受光対象以外の信号光の照射領域が重なり難くなる。また、図5(b)、図6(b)に示すように、迷光同士が重なる領域が、図4(b)の場合に比べて小さく、且つ、信号光から離れている。これにより、図8(b)、(c)のセンサS1〜S8には、迷光同士が重なることにより生じる干渉縞が漏れ込み難くなる。
【0053】
このように、図8(b)、(c)に示すセンサS1〜S8により信号光を受光する場合、図8(a)に示すセンサS1〜S8により信号光を受光する場合に比べて、より精度の高い検出信号が得られる。
【0054】
なお、図5(a)、図6(a)に示す分光のさせ方が、本発明による分光のさせ方に対応する。
【0055】
以下の実施例には、図6(b)または図7(b)に示すように照射領域を分布させる場合の原理に基づく光ピックアップ装置の具体的構成例が示されている。
【0056】
<実施例>
本実施例において、半導体レーザ101は、請求項に記載の「レーザ光源」に相当する。BD対物レンズ114は、請求項に記載の「対物レンズ」に相当する。アナモレンズ115は、請求項に記載の「非点収差素子」に相当する。平面方向と曲面方向の何れか一方は、請求項に記載の「第1の方向」に相当し、他方は「第2の方向」に相当する。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4は、請求項に記載の「複数のセンサ」に相当する。4分割センサBzは、請求項に記載の「4分割センサ」に相当する。4分割センサC1は、請求項に記載の「他の4分割センサ」と「第3の4分割センサ」に相当する。4分割センサC2は、請求項に記載の「第1の4分割センサ」に相当する。4分割センサC3は、請求項に記載の「第2の4分割センサ」に相当する。回折領域H11、H12と回折領域H21、H22は、請求項に記載の「第1の領域」に相当する。回折領域H13、H14と回折領域H23、H24は、請求項に記載の「第2の領域」に相当する。回折領域H15と回折領域H25は、請求項に記載の「第3の領域」に相当する。中心Oは、請求項に記載の「基準点」に相当する。ただし、上記請求項と本実施例との対応の記載はあくまで一例であって、請求項に係る発明を本実施例に限定するものではない。
【0057】
本実施例は、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。上記原理は、BD用の光学系にのみ適用され、CD用の光学系
とDVD用の光学系には従来の非点収差法によるフォーカス調整技術と3ビーム方式(インライン方式)によるトラッキング調整技術が適用されている。
【0058】
図9(a)、(b)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。図9(a)は、立ち上げミラー111、112よりもディスク側の構成を省略した光学系の平面図、図9(b)は、立ち上げミラー111、112以降の光学系を側面から透視した図である。
【0059】
図9(a)、(b)に示す如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、1/2波長板102と、2波長レーザ103と、回折格子104と、ダイクロイックミラー105と、偏光ビームスプリッタ106と、フロントモニタ107と、コリメートレンズ108と、駆動機構109と、1/4波長板110と、立ち上げミラー111、112と、2波長対物レンズ113と、BD対物レンズ114と、分光素子H1と、アナモレンズ115と、光検出器116を備えている。
【0060】
半導体レーザ101は、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)を出射する。1/2波長板102は、BD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるように、BD光の偏光方向を調整する。2波長レーザ103は、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)と、波長660nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)をそれぞれ出射する2つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。2波長レーザ103は、出射するCD光とDVD光の偏光方向が、偏光ビームスプリッタ106に対してS偏光からややずれた方向となるよう設置されている。
【0061】
図9(c)は、2波長レーザ103内におけるレーザ素子(レーザ光源)の配置を示す図である。図9(c)は、2波長レーザ103をビーム出射側から見たときの図である。発光点103a、103bから、CD光とDVD光が発光され、発光点103aと発光点103bの間には、所定のギャップが設けられている。なお、CD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップは、後述の如く、DVD光が、DVD光用の4分割センサに適正に照射されるように設定される。このように、2つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0062】
図9(a)に戻り、回折格子104は、2段ステップ型の回折格子であり、CD光とDVD光を、それぞれ、メインビームと2つのサブビームに分割する。ダイクロイックミラー105は、内部にダイクロイック面105aを有している。ダイクロイック面105aは、BD光を反射し、CD光とDVD光を透過する。半導体レーザ101と、2波長レーザ103と、ダイクロイックミラー105は、ダイクロイック面105aにより反射されたBD光の光軸と、ダイクロイック面105aを透過したCD光の光軸とが互いに整合するように配置される。ダイクロイック面105aを透過したDVD光の光軸は、BD光とCD光の光軸から、図9(c)に示すギャップだけずれる。
【0063】
BD光、CD光、DVD光は、それぞれ、一部が偏光ビームスプリッタ106を透過し、大部分が偏光ビームスプリッタ106によって反射される。このようにBD光、CD光、DVD光の一部が偏光ビームスプリッタ106を透過するよう、1/2波長板102と、2波長レーザ103と、回折格子104が配置される。
【0064】
なお、このように回折格子104が配置されると、CD光のメインビームおよび2つのサブビームと、DVD光のメインビームおよび2つのサブビームは、それぞれ、CDとDVDのトラックに沿うようなる。CDによって反射されたCD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のCD用の4分割センサに照射される。DVD
によって反射されたDVD光のメインビームと2つのサブビームは、後述する光検出器116上のDVD用の4分割センサに照射される。
【0065】
偏光ビームスプリッタ106を透過したBD光、CD光、DVD光は、フロントモニタ107に照射される。フロントモニタ107は、受光光量に応じた信号を出力する。フロントモニタ107からの信号は、半導体レーザ101と2波長レーザ103の出射パワー制御に用いられる。
【0066】
コリメートレンズ108は、偏光ビームスプリッタ106側から入射するBD光、CD光、DVD光を平行光に変換する。駆動機構109は、収差補正の際に、制御信号に応じてコリメートレンズ108を光軸方向に移動させる。駆動機構109は、コリメートレンズ108を保持するホルダ109aと、ホルダ109aをコリメートレンズ108の光軸方向に送るためのギア109bとを備え、ギア109bは、モータ109cの駆動軸に連結されている。
【0067】
コリメートレンズ108により平行光とされたBD光、CD光、DVD光は、1/4波長板110に入射する。1/4波長板110は、コリメートレンズ108側から入射するBD光、CD光、DVD光を円偏光に変換するとともに、立ち上げミラー111側から入射するBD光、CD光、DVD光を、コリメートレンズ108側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。これにより、ディスクからの反射光は、偏光ビームスプリッタ106を透過する。なお、偏光ビームスプリッタ106を透過するディスクからの反射光の光軸は、図9(a)中のZ軸に一致する。
【0068】
立ち上げミラー111は、ダイクロイックミラーであり、BD光を透過するとともに、CD光とDVD光を2波長対物レンズ113に向かう方向に反射する。立ち上げミラー112は、BD光をBD対物レンズ114に向かう方向に反射する。
【0069】
2波長対物レンズ113は、CD光とDVD光を、それぞれ、CDとDVDに対して適正に収束させるよう構成されている。また、BD対物レンズ114は、BD光をBDに適正に収束させるよう構成されている。2波長対物レンズ113とBD対物レンズ114は、ホルダ121に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ122により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0070】
分光素子H1は、上記原理に基づいて、図6(a)に示す各光束領域を通るレーザ光を、面P0上において図6(b)に示すように分布させる。分光素子H1の構成については、追って、図10(a)〜(c)を参照して説明する。
【0071】
アナモレンズ115は、図1(a)に示すアナモレンズに相当し、分光素子H1側から入射するBD光、CD光、DVD光に非点収差を導入する。アナモレンズ115を透過したBD光、CD光、DVD光は、光検出器116に入射する。光検出器116は、各光を受光するための複数のセンサを有している。光検出器116上のセンサについては、追って、図11を参照して説明する。
【0072】
図10(a)は、分光素子H1を偏光ビームスプリッタ106側から見たときの平面図である。図10(b)は、分光素子H1に入射するレーザ光を、分光素子H1の回折領域H11〜H15の境界線に対応するよう区分した光束領域a11〜a15を示す図である。なお、図10(a)には、平面方向と、曲面方向と、トラック像の方向が併せて示されている。
【0073】
分光素子H1は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面に2段ステップ型の回折
パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子H1の光入射面は、図10(a)に示すように、5つの回折領域H11〜H15に区分されている。なお、回折領域H15は、後述するように、BD光の迷光による検出信号の劣化を低減させる程度に大きく、且つ、BD光に基づくトラッキングエラー信号TEが適正に得られる程度に小さく設定される。
【0074】
回折領域H11〜H15は、光束領域a11〜a15を通るレーザ光を、回折作用により0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割する。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の+1次回折光は、実線の矢印(V21〜V25)の方向に回折される。また、光束領域a11〜a15を通るレーザ光の−1次回折光は、点線の矢印(V21m〜V25m)の方向に回折される。光束領域a11〜a15を通るレーザ光の0次回折光は、回折されずに回折領域H11〜H15を透過する。
【0075】
図10(a)では、回折領域H11〜H15によりレーザ光に付与される回折の方向と大きさ(回折角)が、ベクトルV21〜V25およびベクトルV21m〜V25mで示されている。回折領域H11〜H15により生じる+1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV21〜V25を付与したものとなる。また、回折領域H11〜H15により生じる−1次回折光の進行方向は、それぞれ、これら回折領域H11〜H15に入射する前のレーザ光の進行方向にベクトルV21m〜V25mを付与したものとなる。
【0076】
図6(a)の場合と同様、ベクトルV21、V22の方向は同じであり、ベクトルV23、V24の方向は同じである。また、図6(a)の場合と同様、ベクトルV21の大きさは、ベクトルV22よりも大きく、また、ベクトルV24の大きさはベクトルV23よりも大きい。ベクトルV21m〜V24mは、それぞれ、ベクトルV21〜V24に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。
【0077】
本実施例では、図6(a)の場合に比べ、回折領域H15により、光束領域a15を通るレーザ光の進行方向が変えられる。回折領域H15により付与されるベクトルV25、V25mの方向は平面方向に平行であり、また、ベクトルV25、V25mの大きさは、互いに等しい。
【0078】
なお、ベクトルV21〜V25、V21m〜V25mの方向は、各回折領域に設定される回折パターンの向きによって設定され、ベクトルV21〜V25、V21m〜V25mの大きさは、各回折領域に設定される回折パターンのピッチによって設定される。
【0079】
図10(c)は、回折領域H11〜H15のステップ高さと回折効率との関係を示す図である。
【0080】
図10(c)に示すように、分光素子H1に入射するBD光、DVD光、CD光の回折効率は、回折領域H11〜H15に設定された2段ステップ型の回折パターンのステップ高さによって変化する。本実施例のステップ高さは、図10(c)中に示す“設定値”に設定される。これにより、BD光の0次回折光と+1次回折光の回折効率は、それぞれ、約80%と約10%となり、DVD光とCD光の0次回折光の回折効率は、90%以上となる。なお、−1次回折光の回折効率は、+1次回折光の回折効率と略同じである。
【0081】
こうして、分光素子H1に入射したBD光は、上記回折効率でもって0次回折光、+1次回折光、−1次回折光に分割される。また、分光素子H1に入射したCD光とDVD光は、大半が分光素子H1による回折作用を受けずに、分光素子H1を透過する。
【0082】
図11は、光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0083】
光検出器116は、回折領域H11〜H14の回折作用によって生じるBD光(信号光)の+1次回折光を受光するBD用のセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4と、回折領域H15の回折作用によって生じるBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光を受光する4分割センサBzと、分光素子H1による回折作用を受けずに透過したCD光を受光する4分割センサC1〜C3と、分光素子H1による回折作用を受けずに分光素子H1を透過したDVD光を受光する4分割センサD1〜D3とを有する。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4は、それぞれ、上記原理で示した図8(c)のセンサS1〜S8と同様に配置される。なお、4分割センサC1は、後述のようにBD光の0次回折光の受光にも共用される。
【0084】
なお、光検出器116の中心Oは、偏光ビームスプリッタ106からZ軸正方向に出射されるBD光の光軸が、光検出器116の受光面と交わる点である。
【0085】
光束領域a11〜a15を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A11〜A15に照射される。照射領域A11は、センサBa1、Ba4によって受光され、照射領域A12は、センサBa2、Ba3によって受光され、照射領域A13は、センサBs3、Bs4によって受光され、照射領域A14は、センサBs1、Bs2によって受光される。
【0086】
光束領域a15を通るBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光は、中心Oに対して右上に位置する4分割センサBzに入射する。4分割センサBzは、センサBz1〜Bz4から構成されており、分光素子H1の位置調整に用いられる。4分割センサBzは、上下左右の方向に対して45度傾けて配置されている。また、4分割センサBzの分割線が、中心Oと4分割センサBzの中心BzOとを結ぶ一点鎖線の直線と重なるよう、4分割センサBzが配置されている。なお、分光素子H1の位置調整については、追って図14(a)〜(c)と図15(a)〜(c)を参照して説明する。
【0087】
回折領域H11〜H14のピッチは、照射領域A11〜A14が、図11に示すように、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に位置付けられるよう設定される。また、回折領域H15のピッチは、光束領域a15を通るBD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光が4分割センサBzの中心BzOに位置付けられるよう設定されている。
【0088】
BD光とCD光の光軸は、上述したようにダイクロイック面105aによって整合しているため、回折格子104により生じたCD光のメインビーム(0次回折光)と、BD光の0次回折光は、図11に示す中心Oに照射される。4分割センサC1は、中心Oに配置される。4分割センサC2、C3は、CD光のサブビームを受光するよう、光検出器116の受光面上において、メインビームに対しCDのトラック像の方向に配置される。4分割センサC1〜C3は、それぞれ、センサC11〜C14と、センサC21〜C24と、センサC31〜C34から構成されている。
【0089】
本実施例では、インライン方式によるトラッキング調整技術を実現するために、4分割センサC2の分割線と、4分割センサC3の分割線が、中心Oを通る上下方向の直線上に位置付けられるよう4分割センサC2、C3が配置される。
【0090】
DVD光の光軸は、上述したようにCD光の光軸からずれているため、DVD光のメインビームと2つのサブビームは、光検出器116の受光面上において、CD光のメインビームと2つのサブビームからずれた位置に照射される。4分割センサD1〜D3は、それぞれ、DVD光のメインビームと2つのサブビームの照射位置に配置される。なお、CD
光のメインビームとDVD光のメインビームとの距離は、図9(c)に示すCD光の発光点103aとDVD光の発光点103bとの間のギャップによって決まる。
【0091】
図12は、光検出器116の受光面上と同じ平面(面P0)上に分布するBD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光、+1次回折光、−1次回折光の照射領域を示す模式図である。破線はBD光の+1次回折光を示し、長鎖線はBD光の0次回折光を示し、点線はBD光の−1次回折光を示している。また、図12には、図11に示すセンサが併せて示されている。
【0092】
本実施例のように、分光素子H1の回折領域H11〜H15に2段ステップ型の回折パターンが形成されると、BD光(信号光と迷光1、2)の+1次回折光と−1次回折光の照射領域は、中心Oを点対称の中心として分布し、0次回折光の照射領域は中心Oに分布する。なお、本実施例では、BD光(信号光と迷光1、2)については、0次回折光と+1次回折光のみが利用され、−1次回折光は利用されない。
【0093】
また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。すなわち、センサBa1、Ba4の上端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、それぞれ、左端と右端が、回折領域H15により除かれた形状となっている。同様に、センサBa2、Ba3の下端付近と、センサBs1、Bs2の右端付近と、センサBs3、Bs4の左端付近に分布する迷光1、2の照射領域は、回折領域H15に応じて端部が除かれた形状となっている。これにより、BD対物レンズ114がBDの径方向に移動して、BD対物レンズ114の光軸がレーザ光の光軸からシフトしても、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。また、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の位置が、光検出器116の受光面上でずれても、これらセンサに、BD光(迷光1、2)の+1次回折光が入射し難くなる。
【0094】
ここで、本実施例における信号生成方法について説明する。
【0095】
図11に示すように、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光の照射領域A11〜A14が位置付けられる。本実施例では、これらセンサの検出信号に基づいて、BD用のトラッキングエラー信号TEが生成される。センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の検出信号を、それぞれ、Ba1〜Ba4、Bs1〜Bs4と表すと、本実施例におけるトラッキングエラー信号TEは、以下の式(3)の演算により取得することができる。
【0096】
TE={(Ba1+Ba4)−(Ba2+Ba3)}
−k×{(Bs1+Bs4)−(Bs2+Bs3)} …(3)
【0097】
ここでは、上記式(2)に示すプッシュプル信号PPの演算に比べ、乗数kが用いられている。このように乗数kを用いたトラッキングエラー信号TEの演算手法は、本件出願人が先に出願した特開2010−102813号公報に記載されている。なお、トラッキングエラー信号TEは、上記式(2)による演算手法を用いて取得しても良い。
【0098】
また、図12に示すように、4分割センサC1には、BD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光の照射領域が位置付けられる。本実施例では、4分割センサC1のセンサC11〜C14(図11参照)の検出信号に基づいて、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号が生成される。センサC11〜C14の検出信号を、それぞれ、C11〜C14と表すと、本実施例におけるフォーカスエラー信号FEは、上記式(1)と同様、以下の
式(4)の演算により取得することができる。また、本実施例におけるRF信号は、以下の式(5)の演算により取得することができる。
【0099】
FE=(C11+C13)−(C12+C14) …(4)
RF=(C11+C12+C13+C14) …(5)
【0100】
なお、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光には、信号光だけでなく迷光1、2も含まれる。しかしながら、4分割センサC1に入射するBD光の0次回折光のうち、迷光の割合は1/10程度であるため、フォーカスエラー信号FEとRF信号の取得においては、迷光による影響が特に問題となることは無い。
【0101】
CD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサC1〜C3の検出信号に基づいて生成され、DVD用のフォーカスエラー信号、トラッキングエラー信号およびRF信号は、4分割センサD1〜D3の検出信号に基づいて生成される。CDおよびDVD用のフォーカスエラー信号とトラッキングエラー信号の生成には、従来の非点収差法による演算処理と3ビーム方式(インライン方式)による演算処理が用いられる。
【0102】
以上、本実施例によれば、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4には、BD光(信号光)の+1次回折光のみが照射する。また、分光素子H1に入射するBD光の中央部分は、回折領域H15により4分割センサBz近傍に飛ばされるため、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の近傍に分布するBD光の迷光(迷光1、2)の+1次回折光の照射領域は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に掛かりにくくなっている。これにより、迷光による検出信号の劣化を抑制して、精度の高い各種検出信号(たとえば、トラッキングエラー信号TE)を取得することができる。
【0103】
また、本実施例では、図6(b)に示すようにBD光の照射領域を分布させるために、2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1が用いられた。このように2段ステップ型の回折パターンが形成されると、図12に示すように広範囲に亘って照射領域が分布することとなる。しかしながら、本実施例によれば、照射領域を全て含むように光検出器上のセンサを設置する必要がない。すなわち、本実施例では、BD光を受光するための光検出器116上のセンサは、中心Oに分布する信号光(0次回折光)と、中心Oの上側と右側に分布する信号光(+1次回折光)と、右上に分布する信号光(+1次回折光)の照射領域のみを含むように設置される。これにより、本実施例のように、安価な2段ステップ型が形成された分光素子H1が用いられても、光検出器116をコンパクトに構成することが可能となる。
【0104】
なお、図6(b)に示すように照射領域を分布させるために、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子を用いることもできる。しかしながら、ブレーズ型の回折パターンが形成された分光素子は、本実施例のように2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1に比べて高価である。本実施例では、安価な2段ステップ型の回折パターンが形成された分光素子H1を用いることで、光ピックアップ装置にかかるコストを低く抑えることができる。
【0105】
また、本実施例によれば、BD光(信号光と迷光1、2)の0次回折光は、光検出器116の中心Oに入射するため、CD用の4分割センサC1により、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号を取得することができる。すなわち、CD用の4分割センサC1〜C3の一部を、BD用のフォーカスエラー信号FEとRF信号を取得するために用いることができる。これにより、新たにセンサを設ける必要がなく、光検出器にかかるコストを低く抑えることができ、且つ、光検出器をコンパクトに構成することができる。
【0106】
なお、本実施例では、図6(b)の照射領域に対して、図8(c)のようにセンサS1〜S8が配される場合に基づいて、分光素子H1と光検出器116上の各センサが設定された。しかしながら、これに限らず、図5(b)の照射領域に対して、図8(b)のようにセンサS1〜S8が配される場合に基づいて、分光素子H1と光検出器116上の各センサが設定されるようにしても良い。
【0107】
図13(a)は、この場合の分光素子H2を示す平面図である。
【0108】
分光素子H2の回折領域H21〜H25は、+1次回折光について、ベクトルV11〜V15を付与し、−1次回折光について、ベクトルV11m〜V15mを付与するように構成される。図5(a)の場合と同様、ベクトルV11、V12の方向は同じであり、ベクトルV13、V14の方向は同じである。また、図5(a)の場合と同様、ベクトルV12の大きさは、ベクトルV11よりも大きく、また、ベクトルV13の大きさはベクトルV14よりも大きい。ベクトルV11m〜V14mは、それぞれ、ベクトルV11〜V14に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。なお、ベクトルV15、V15mは、それぞれ、図10(a)に示すベクトルV25、V25mと同様である。
【0109】
図13(b)は、分光素子H2を用いる場合の光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0110】
この場合、図8(b)に示すセンサS1〜S8の配置と同様に、図11に示すセンサBa1、Ba4は、センサBa2、Ba3よりも下側に配置され、センサBs1、Bs2は、センサBs3、Bs4よりも左側に配置される。回折領域H21〜H25に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A21〜A25に照射される。これにより、図5(b)ように分布するBD光(信号光)の+1次回折光のみを受光することができる。
【0111】
<位置調整方法>
上記実施例では、図10(b)に示す光束領域a11〜a14を通るBD光(信号光)の+1次回折光が、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に適正に入射するよう、光ピックアップ装置において分光素子H1と光検出器116の位置調整を行う必要がある。この調整は、以下の手法により行うことができる。
【0112】
図14(a)は、上記実施例における光ピックアップ装置の位置調整の工程を示す図である。かかる位置調整は、光ピックアップ装置の組み立て時に実施される。
【0113】
位置調整の工程では、まず、分光素子H1と光検出器116を除く光学素子が、光ピックアップ装置内にセットされる(S11)。続いて、ホルダにセットされた分光素子H1が光ピックアップ装置内にセットされ(S12)、図11に示すセンサが予め受光面上に設置された光検出器116が光ピックアップ装置内にセットされる(S13)。このとき、光検出器116には、後述する位置調整を自動で行うことが可能となるよう位置調整用のアームが接続される。
【0114】
こうして、光ピックアップ装置に通電が行われる(S14)。これにより、半導体レーザ101が発光し、位置調整用としてセットされたディスク(たとえば、1層の記録層を有するROMのディスク)が回転され、このディスクに対してBD光が照射される。この状態で、対物レンズアクチュエータ122が駆動されると共に、コリメートレンズ108が所定の位置に位置付けられる。
【0115】
次に、偏光ビームスプリッタ106側からZ軸正方向に出射されるBD光の光軸に対して垂直な面内(図9(a)のXY平面内)において、光検出器116の位置調整(XY調整)が行われる。光検出器116のXY調整は、BD光の0次回折光を受光するCD用のセンサC11〜C14の検出信号に基づいて行われる。すなわち、光検出器116のX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ、PDx、PDyと表すと、PDx、PDyは、以下の式(6)、(7)の演算により取得することができる。
【0116】
PDx={(C13+C14)−(C11+C12)}
/(C11+C12+C13+C14) …(6)
PDy={(C12+C13)−(C11+C14)}
/(C11+C12+C13+C14) …(7)
【0117】
このとき、まず、上記式(6)、(7)に示すPDx、PDyにより調整可能となる範囲に光検出器116の位置が粗調整され(S15)、続いて、上記式(6)、(7)のPDx、PDyの値が0となるよう、光検出器116に対するXY調整自動追尾がONとされる(S16)。これにより、光検出器116に接続されたアームが光検出器116をXY平面内で移動させ、BD光の0次回折光の光軸が、光検出器116の中心Oと一致するようになる。
【0118】
続いて、フォーカスサーボがONとなり(S17)、上記式(4)のフォーカスエラー信号FEの値が0となるよう、BD対物レンズ114が、対物レンズアクチュエータ122により図9(b)のY軸方向(ディスクに垂直な方向)に移動される。
【0119】
次に、光検出器116のZ軸方向の位置調整(Z調整)が行われる(S18)。光検出器116のZ調整では、まず、上記式(3)のトラッキングエラー信号TEが0となるよう、BD対物レンズ114がディスクの径方向に移動される。続いて、上記式(5)のRF信号を参照しながら、BD対物レンズ114がディスクに垂直な方向に移動される。このとき、BD対物レンズ114の移動に応じて、4分割センサC1に掛かるBD光(信号光と迷光1、2)の焦点が変化し、かかる焦点の変化に応じて、RF信号の振幅が変化する。光検出器116のZ軸方向の位置は、RF信号の振幅が所定の大きさとなるよう設定される。
【0120】
次に、分光素子H1のXY平面内の位置調整(XY調整)が行われる(S19)。分光素子H1のXY調整は、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の検出信号に基づいて行われる。すなわち、分光素子H1のX軸方向とY軸方向のずれ量を、それぞれ、HOEx、HOEyと表すと、HOEx、HOEyは、以下の式(8)、(9)の演算により取得することができる。
【0121】
HOEx={(Bs3+Bs4)−(Bs1+Bs2)}
/(Bs1+Bs2+Bs3+Bs4) …(8)
HOEy={(Ba2+Ba3)−(Ba1+Ba4)}
/(Ba1+Ba2+Ba3+Ba4) …(9)
【0122】
分光素子H1は、XY平面内において、上記式(8)、(9)のHOEx、HOEyの値が0となるよう位置付けられる。
【0123】
次に、分光素子H1のZ軸方向の位置調整(Z調整)と、中心Oを中心とする回転方向の位置調整(θ調整)が行われる(S20)。分光素子H1のZ調整とθ調整(Zθ調整)は、BD光の+1次回折光を受光する4分割センサBz(センサBz1〜Bz4)の検出信号に基づいて行われる。すなわち、センサBz1〜Bz4の検出信号を、それぞれ、
Bz1〜Bz4と表し、分光素子H1のZ軸方向のずれ量と、中心Oを中心とする回転方向のずれ量を、それぞれ、HOEz、HOEθと表すと、HOEz、HOEθは、以下の式(10)、(11)の演算により取得することができる。
【0124】
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(10)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4) …(11)
【0125】
分光素子H1は、Z軸方向において、上記式(10)のHOEzの値が0となるよう位置付けられ、中心Oを中心とする回転方向において、上記式(11)のHOEθの値が0となるよう位置付けられる。なお、S20の分光素子H1のZθ調整において、分光素子H1のZ調整とθ調整は、以下のように、交互にまたは並行して行われる。
【0126】
図14(b)は、分光素子H1のZ調整とθ調整が交互に行われる場合の、分光素子H1のZθ調整を示すフローチャートである。
【0127】
この場合、まず、HOEzの値が0となるよう分光素子H1のZ調整が行われ(S101)、続いて、HOEθの値が0となるよう分光素子H1のθ調整が行われる(S102)。そして、HOEz=0、且つ、HOEθ=0でないと(S103:NO)、処理がS101に戻されて、再度、分光素子H1のZ調整とθ調整が行われる。HOEz=0、且つ、HOEθ=0であると(S103:YES)、分光素子H1のZθ調整が終了する。なお、図14(b)において、S101とS102の処理の順番を逆にして、図14(c)に示すように分光素子H1のZθ調整が行われるようにしても良い。
【0128】
図15(a)は、分光素子H1のZ調整とθ調整が並行して行われる場合の、分光素子H1のZθ調整を示すフローチャートである。
【0129】
この場合、まず、図15(b)に示す分光素子H1のZ調整処理と、図15(c)に示すθ調整処理が並行して開始される(S201)。
【0130】
図15(b)を参照して、分光素子H1のZ調整処理では、まず、分光素子H1のZ調整が行われ(S211)、HOEz=0であるか判定される(S212)。HOEz=0でないと(S212:NO)、再度、分光素子のZ調整が行われ(S211)、HOEz=0であると(S212:YES)、HOEθ=0であるか判定される(S213)。続いて、HOEθ=0でないと(S213:NO)、処理がS212に戻され、再度、HOEz=0であるか判定される。HOEθ=0であると(S213:YES)、分光素子のZ調整処理が終了する。
【0131】
図15(c)を参照して、分光素子H1のθ調整処理では、まず、分光素子H1のθ調整が行われ(S221)、HOEθ=0であるか判定される(S222)。HOEθ=0でないと(S222:NO)、再度、分光素子のθ調整が行われ(S221)、HOEθ=0であると(S222:YES)、HOEz=0であるか判定される(S223)。続いて、HOEz=0でないと(S223:NO)、処理がS222に戻され、再度、HOEθ=0であるか判定される。HOEz=0であると(S223:YES)、分光素子のθ調整処理が終了する。
【0132】
図15(a)に戻り、S202では、図15(b)に示す分光素子H1のZ調整処理と、図15(c)に示すθ調整処理の両方が終了するまで処理が待機される(S202)。両方の処理が終了すると(S202:YES)、分光素子H1のZθ調整が終了する。
【0133】
なお、図14(b)および図14(c)のS103と、図15(b)のS212、S213と、図15(c)のS222、S223では、HOEzまたはHOEθがゼロであるかが判定されたが、HOEzまたはHOEθがゼロに近い所定の値の範囲内、すなわち、位置ずれが許容される所定の範囲内に含まれるかを判定されても良い。
【0134】
上記のように、光検出器116のXY調整とZ調整、および、分光素子H1のXY調整とZθ調整が完了すると、分光素子H1と光検出器116が、光ピックアップ装置内において接着される(S21)。この場合、分光素子H1と光検出器116の接着部分に接着用の樹脂が塗布され、この樹脂に紫外光が照射されることにより接着が行われる。続いて、光検出器116に対するXY調整自動追尾がOFFとされ(S22)、光検出器116に接続されていたXY調整用のアームの取り外し(チャッキングOFF)が行われる(S23)。
【0135】
こうして、図10(b)に示す光束領域a11〜a14を通るBD光(信号光)の+1次回折光が、図11に示すセンサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4に適正に入射するようになる。なお、光検出器116に入射するBD光とCD光の0次回折光の光軸は一致しており、光検出器116の受光面には予めCD用の4分割センサC1〜C3とDVD用の4分割センサD1〜D3が設置されている。これにより、BD光に基づいて分光素子H1と光検出器116の位置調整が行われれば、CD光とDVD光についても適正に4分割センサC1〜C3、D1〜D3に入射するようになる。
【0136】
<変更例>
以下に示す変更例において、回折領域H31、H32と、回折領域H41、H42と、回折領域H51、H52は、請求項に記載の「第1の領域」に相当する。回折領域H33〜H36と、回折領域H43〜H46と、回折領域H53、H54は、請求項に記載の「第2の領域」に相当する。回折領域H37と、回折領域H47と、回折領域H55は、請求項に記載の「第3の領域」に相当する。ただし、上記請求項と変更例との対応の記載はあくまで一例であって、請求項に係る発明を変更例に限定するものではない。
【0137】
上記実施例では、図6(b)に示すようにBD光の照射領域を分布させるために、分光素子H1が用いられたが、上記実施例の分光素子H1に替えて、図16(a)に示す分光素子H3が用いられても良い。
【0138】
図16(a)は、分光素子H3を偏光ビームスプリッタ106側から見たときの平面図である。図16(b)は、分光素子H3に入射するレーザ光を、分光素子H3の回折領域H31〜H37の境界線に対応するよう区分した光束領域a31〜a37を示す図である。
【0139】
分光素子H3は、上記分光素子H1と同様、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面に2段ステップ型の回折パターンが形成されている。分光素子H3の光入射面は、図16(a)に示すように、7つの回折領域H31〜H37に区分されている。回折領域H33、H34と、回折領域H35、H36は、それぞれ、図10(a)に示す分光素子H1の回折領域H13、H14が、中心を通る上下方向の直線により左右に分割された形状とされる。回折領域H31〜H37の回折効率とピッチは、上記分光素子H1の対応する領域の回折効率とピッチと同様に設定される。
【0140】
回折領域H31、H32、H37は、光束領域a31、a32、a37を通るレーザ光の進行方向に対して、上記分光素子H1と同様のベクトルを付与する。回折領域H33〜H36は、それぞれ、光束領域a33〜a36を通るレーザ光の進行方向に対して、ベク
トルV31〜V34と、ベクトルV31m〜V34mを付与する。ベクトルV31〜V34は、それぞれ、+1次回折光についてのベクトルであり、ベクトルV31m〜V34m、それぞれ、−1次回折光についてのベクトルである。ベクトルV31、V32は、それぞれ、図10(a)のV23に下方向、上方向の成分を加えたベクトルであり、ベクトルV33、V34は、それぞれ、図10(a)のV24に下方向、上方向の成分を加えたベクトルである。なお、ベクトルV31m〜V34mは、それぞれ、ベクトルV31〜V34に対して反対方向であり、ベクトルV31〜V34と等しい大きさを有する。
【0141】
図16(c)は、図11に示すセンサBs1〜Bs4に位置付けられたBD光(信号光)の+1次回折光の照射領域を示す模式図である。なお、センサBs1〜Bs4以外のセンサ上の照射領域は、図12に示す場合と略同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0142】
図16(c)に示すように、光束領域a33〜a36を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A33〜A36に照射される。このとき、照射領域A33、A34は、センサBs3とセンサBs4の境界線に重ならず、照射領域A35、A36は、センサBs1とセンサBs2の境界線に重ならない。すなわち、上記のようにベクトルV31〜V34が、下方向または上方向の成分を持つことにより、照射領域A33とA34の間に隙間が生じ、また、照射領域A35とA36との間に隙間が生じる。これにより、経年劣化等により、センサBs1〜Bs4の位置が上下方向にずれた場合でも、上記分光素子H1に比べて、センサBs1〜Bs4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0143】
なお、上記実施例の変更例として述べた図13(a)に示す分光素子H2についても、本変更例のように、上下の回折領域H23、H24を左右に2分割しても良い。
【0144】
図17(a)は、この場合の分光素子H4を示す平面図である。
【0145】
分光素子H4の回折領域H41〜H47の境界線は、図16(a)の回折領域H31〜H37と同様に設定される。回折領域H41〜H47には、それぞれ、図17(b)に示す光束領域a41〜a47を通るレーザ光が入射する。
【0146】
回折領域H41、H42、H47は、光束領域a41、a42、a47を通るレーザ光の進行方向に対して、上記分光素子H2と同様のベクトルを付与する。回折領域H43〜H46は、それぞれ、光束領域a43〜a46を通るレーザ光の進行方向に対して、ベクトルV41〜V44と、ベクトルV41m〜V44mを付与する。ベクトルV41〜V44は、それぞれ、+1次回折光についてのベクトルであり、ベクトルV41m〜V44m、それぞれ、−1次回折光についてのベクトルである。ベクトルV41、V42は、それぞれ、図13(a)のV13に下方向、上方向の成分を加えたベクトルであり、ベクトルV43、V44は、それぞれ、図13(a)のV14に下方向、上方向の成分を加えたベクトルである。なお、ベクトルV41m〜V44mは、それぞれ、ベクトルV41〜V44に対して反対方向であり、ベクトルV41〜V44と等しい大きさを有する。
【0147】
図17(c)は、図13(b)に示すセンサBs1〜Bs4に位置付けられたBD光(信号光)の+1次回折光の照射領域を示す模式図である。
【0148】
図17(c)に示すように、光束領域a43〜a46を通るBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A43〜A46に照射される。このとき、図16(c)の場合と同様に、照射領域A43とA44の間に隙間が生じ、また、照射領域A45とA46との間に隙間が生じる。これにより、経年劣化等により、センサBs1〜Bs4の位置が上下方向にずれた場合でも、上記分光素子H2に比べて、センサBs1〜Bs4の検出信号の精度の劣化が抑制される。
【0149】
<レンズシフト時の迷光のシミュレーション>
本件出願の発明者は、図8(a)〜(c)に示すように配置されたセンサによって、BD光(信号光)の+1次回折光を受光する場合に、センサに掛かる迷光の影響についてのシミュレーションを行った。
【0150】
本シミュレーションでは、以下の3つの分光素子Hs1〜Hs3が想定されている。
【0151】
分光素子Hs1は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図4(a)のベクトルV01〜V04が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV01、V02に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV03に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図4(a)のベクトルV04に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0152】
分光素子Hs2は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図5(a)のベクトルV11〜V14が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV11、V12に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV13に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図5(a)のベクトルV14に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0153】
分光素子Hs3は、図16(a)に示す分光素子H3と同様に構成されている。すなわち、分光素子Hs3は、図16(a)に示す回折領域H31〜H36に、図6(a)のベクトルV21〜V24が適用されたものである。この場合、回折領域H31、H32のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV21、V22に対応する。また、回折領域H33、H34のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV23に下方向、上方向の成分を付加したものであり、回折領域H35、H36のベクトルは、それぞれ、図6(a)のベクトルV24に下方向、上方向の成分を付加したものである。
【0154】
また、分光素子Hs1が用いられる場合には図8(a)のセンサが設定され、分光素子Hs2が用いられる場合には図8(b)のセンサが設定され、分光素子Hs3が用いられる場合には図8(c)のセンサが設定される。
【0155】
何れの分光素子が用いられる場合も、図16(c)に示すように、中心Oの右側に位置するセンサ上における信号光の照射領域は、上下に並ぶセンサの境界線に重ならない。
【0156】
また、本シミュレーションでは、BDは4つの記録層を有し、各記録層は表面側(光入射面側)からL3、L2、L1、L0の順に並んでいる。また、BD用の対物レンズ(上記実施例のBD対物レンズ114に相当)が、BDの径方向に対して移動して、BD用の対物レンズの光軸がレーザ光の光軸からシフトすることを、以下「レンズシフト」と称する。
【0157】
図18(a)、(b)は、分光素子Hs1が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図18(a)、(b)には、それぞれ、中心Oの上側と右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションでは、BD光はL2層に合焦され、レンズシフトは生じていない。図18(a)、(b)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L3”はL3層からの反射光(迷光)である。
【0158】
レンズシフトが無い場合、上側のセンサでは、図18(a)に示すように、信号光が、各センサ上に適正に照射されており、迷光は、略センサに掛かっていない。他方、右側のセンサでは、図18(b)に示すように、信号光は各センサ上に適正に照射されているものの、センサに掛かる迷光の照射領域は、図18(a)に比べて大きくなっている。
【0159】
ここで、図18(a)、(b)に示す状態からレンズシフトが生じると、上側と右側のセンサの何れにおいても、迷光が左右方向に移動してセンサに大きく重なってしまう。たとえば、迷光が左方向に移動すると、図18(a)の場合、L3層による右側の迷光が、右上と右下のセンサの両方に重なってしまう。また、図18(b)の場合、L3層による下側の迷光は、左下のセンサに重なるのみであるが、L3層による上側の迷光は、左上と右上のセンサの両方に重なってしまう。
【0160】
図18(c)は、分光素子Hs1が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。横軸はBD用の対物レンズのレンズシフト量を示し、縦軸は、図18(a)、(b)に示す8つのセンサに入射する総光量に占める迷光の割合を示す。このように、分光素子Hs1が用いられる場合、レンズシフト量に応じて多くの迷光がセンサに入射し、センサの検出信号が劣化することが分かる。
【0161】
図19(a)〜(f)は、分光素子Hs2が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図19(a)、(c)、(e)には、中心Oの上側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。図19(b)、(d)、(f)には、中心Oの右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションでは、BD光はL2層に合焦されている。図19(a)〜(f)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L1”、“L3”は、それぞれ、L1層、L3層からの反射光(迷光)であり、“表面”はディスク表面(光入射面)からの反射光である。
【0162】
図19(a)、(b)は、レンズシフトが無い状態を示し、図19(c)、(d)は、レンズシフトにより迷光が左側に移動した状態を示し、図19(e)、(f)は、レンズシフトにより迷光が右側に移動した状態を示している。
【0163】
図19(a)〜(f)に示すように、レンズシフトの有無に拘わらず、信号光は、各センサ上に適正に照射されている。
【0164】
レンズシフトが無い場合、上側のセンサでは、図19(a)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域が、左下と右下のセンサの両方に重なっている。しかしながら、かかる迷光の照射領域は大きく広がっているため、センサからの検出信号の精度は維持される。また、右側のセンサでも、図19(b)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域が右上と右下のセンサの両方に重なっている。しかしながら、この場合も、かかる迷光の照射領域は大きく広がっているため、センサからの検出信号の精度は維持される。
【0165】
レンズシフトにより迷光が左側に移動した場合、上側のセンサでは、図19(c)に示すように、L3層による迷光の照射領域が、右下のセンサに重なっている。しかしながら、この場合、L3層による迷光の照射領域は、右下のセンサにしか重ならないため、図18(a)に示すL3層による迷光の照射領域が左側に移動する場合に比べて、センサに重なる迷光の照射領域を小さくすることができる。また、右側のセンサでは、図19(d)に示すように、L3層による上側の迷光の照射領域は、左上のセンサに重なるものの、L3層による下側の迷光の照射領域は、何れのセンサにも重ならない。なお、図19(c)、(d)においても、ディスク表面による迷光は大きく広がっているため、センサの検出
信号の精度は維持される。
【0166】
レンズシフトにより迷光が右側に移動した場合も、図19(e)、(f)に示すように、センサに重なる迷光の照射領域は小さい。なお、この場合、上側のセンサにおいて、図19(e)に示すように、右下のセンサにL1層による迷光の照射領域が重なっている。
【0167】
図21(a)は、分光素子Hs2が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。この場合、図18(c)に示す場合に比べて、センサに入射する迷光の割合が小さくなることが分かる。すなわち、分光素子Hs1が用いられるよりも、分光素子Hs2が用いられる方が、センサに入射する迷光の割合を小さくすることができる。
【0168】
図20(a)〜(f)は、分光素子Hs3が用いられる場合のシミュレーション結果を示す図である。図20(a)〜(f)には、中心Oの上側と右側のセンサ近傍の信号光と迷光の分布状態が示されている。このシミュレーションにおいても、BD光は、L2層に合焦されている。図20(a)〜(f)において、“L2”は、L2層からの反射光(信号光)であり、“L1”、“L3”は、それぞれ、L1層、L3層からの反射光(迷光)であり、“表面”はディスク表面(光入射面)からの反射光である。
【0169】
レンズシフトが無い場合、図20(a)、(b)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域は、図19(a)、(b)と異なりセンサに重ならない。
【0170】
レンズシフトにより迷光が左側に移動した場合、図20(c)、(d)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(c)、(d)に比べて小さくなっている。また、右側のセンサにおいて、図20(d)に示すように、L3層による上側の迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(d)に比べて小さくなっている。
【0171】
レンズシフトにより迷光の照射領域が右側に移動した場合、図20(e)、(f)に示すように、ディスク表面による迷光の照射領域がセンサに重なる面積が、図19(e)、(f)に比べて小さくなっている。また、上側のセンサにおいて、図20(e)に示すように、L1層による迷光の照射領域は、図19(e)と異なりセンサに重ならない。
【0172】
図21(b)は、分光素子Hs3が用いられる場合の、レンズシフト量とセンサに入射する迷光の割合との関係のシミュレーション結果を示す図である。この場合、図21(a)に示す場合に比べて、センサに入射する迷光の割合が小さくなることが分かる。すなわち、分光素子Hs2が用いられるよりも、分光素子Hs3が用いられる方が、センサに入射する迷光の割合をさらに小さくすることができる。
【0173】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は、上記実施例に何ら制限されるものではなく、また、本発明の実施例も上記以外に種々の変更が可能である。
【0174】
たとえば、上記実施例では、分光素子H1がアナモレンズ115の前段に配置されたが、分光素子H1をアナモレンズ115の後段に配置しても良く、あるいは、アナモレンズ115の入射面または出射面に、分光素子H1と同様の回折作用をレーザ光に付与する回折パターンを一体的に配しても良い。
【0175】
なお、分光素子H1は、アナモレンズ115の後段に配置するよりも前段に配置する方が望ましい。すなわち、分光素子H1をアナモレンズ115の前段に配置すると、後段に配置する場合に比べて、分光素子H1から光検出器116までの距離を長くすることがで
きる。このため、分光素子H1の回折角を大きく設定しなくても、図11に示すように、光検出器116上でBD光(信号光)の+1次回折光を、中心Oから離れた位置に照射させることができる。
【0176】
また、上記実施例では、図11に示すように、インライン方式に基づいてCD用のトラッキングエラー信号を取得するために、4分割センサC1〜C3が上下方向に配置された。このように4分割センサC1〜C3が配置される場合、回折領域H15により付与されるベクトルの方向を上下方向に変更して、回折領域H15より回折されたBD光の+1次回折光と−1次回折光が、4分割センサC2、C3に照射されるようにしても良い。
【0177】
図22(a)は、回折領域H15により付与されるベクトルが上下方向に変更された分光素子H1を示す平面図である。この場合、回折領域H15は、光束領域a15を通るレーザ光の+1次回折光と−1次回折光に対して、ベクトルV45、V45mを付与する。ベクトルV45、V45mの方向は、トラック像の方向に平行であり、ベクトルV45、V45mの大きさは互いに等しい。
【0178】
ここで、ベクトルV45、V45mの大きさは、図12の4分割センサBzにおける照射領域と、この照射領域の中心Oに対して点対称な位置にある照射領域とが、それぞれ、4分割センサC2、C3に位置付けられるように調整される。この場合、図12に示す4分割センサBzは省略される。
【0179】
図22(b)は、この場合の光検出器116の中心Oの近傍のBD光(信号光)の分布状態を示す図である。なお、4分割センサC2、C3は、上記実施例と同様、4分割センサC1を中心として対称となる位置に配置されている。
【0180】
図22(b)に示すように、中心Oには、全ての回折領域H11〜H15に入射するBD光(信号光)の0次回折光が照射される。4分割センサC2の中心には、回折領域H15によるBD光(信号光)の+1次回折光が照射される。4分割センサC3の中心には、回折領域H15によるBD光(信号光)の−1次回折光が照射される。
【0181】
この場合、センサC21〜C24、C31〜C34の検出信号を、それぞれ、C21〜C24、C31〜C34と表すと、上記式(10)、(11)に示した分光素子H1のZ調整とθ調整に用いるHOEz、HOEθに替えて、HOEz、HOEθは、以下の式(12)、(13)の演算により取得することができる。
【0182】
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)} …(12)
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)} …(13)
【0183】
分光素子H1は、Z軸方向において、上記式(12)のHOEzの値が0となるよう位置付けられ、中心Oを中心とする回転方向において、上記式(13)のHOEθの値が0となるよう位置付けられる。すなわち、図14(a)のステップS20の調整は、上記式(12)、(13)に基づいて行われる。これにより、分光素子H1のZ軸方向の位置と、中心Oを中心とする回転方向の位置とを適正に設定することができる。
【0184】
ここで、インライン方式によるトラッキング調整技術を実現するために、4分割センサC2、C3が、図22(b)に示す位置から左右に僅かにずれた位置に配置される場合がある。
【0185】
図23(a)は、この場合の光検出器116の中心Oの近傍のBD光(信号光)の分布状態を示す図である。図22(b)に示す場合と比べて、4分割センサC2、C3が、それぞれ僅かに右側と左側にずれ、4分割センサD2、D3が、それぞれ、僅かに右側と左側にずれている。この場合、位置調整時には、図23(a)に示すように、BD光(信号光)の+1次回折光と−1次回折光が、それぞれ、4分割センサC2、C3に照射されるよう、回折領域H15のベクトルが設定される。
【0186】
この場合、4分割センサC1〜C3の分割線は、中心Oを通る1つの直線上に位置付けられていない。このため、このように4分割センサC1〜C3が配置されると、図22(b)に示す場合に比べて、上記式(12)、(13)に示すHOEz、HOEθに僅かに誤差が含まれることとなる。しかしながら、4分割センサC2、C3の左右方向のずれ量が小さければ、かかる誤差は小さいため、僅かな誤差の範囲内において、分光素子H1の位置を調整することが可能となる。
【0187】
このように、4分割センサC2、C3が左右方向に僅かにずれる場合も、請求項4に記載の「前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向く」の限定に含まれる。すなわち、4分割センサC2、C3の分割線が、中心Oと4分割センサC2、C3の中心とを結ぶ直線から僅かに傾くような場合も、4分割センサC2、C3の分割線が中心Oの方向を略向いている場合には、上記請求項3の限定に含まれる。この点は、図11、図13(b)に示す中心Oと4分割センサBzの分割線との関係についても同様である。
【0188】
なお、光ピックアップ装置が、上記実施例のように、BD、DVDおよびCDに対応可能な互換型として構成されるのでなく、BDのみに対応可能に構成される場合、中心Oの周りに位置調整用として、以下のように4分割センサC2、C3が配される。
【0189】
図23(b)は、4分割センサC2、C3が、図22(b)の状態から中心Oの周りに回転させられた状態を示す図である。このように、4分割センサC2、C3の分割線が中心Oを通る1つの直線上に位置付けられ、4分割センサC2、C3が中心Oに対して点対称の位置にある場合、図22(b)の場合と同様に、HOEz、HOEθに基づいて、分光素子H1の位置を誤差なく調整することが可能となる。
【0190】
また、上記実施例では、BD、CDおよびDVDに対応可能な互換型の光ピックアップ装置が例示されたが、BDとDVDに対応可能な光ピックアップ装置や、BDのみに対応可能な光ピックアップ装置等に本発明を適用することも可能である。たとえば、BDのみに適用可能な光ピックアップ装置に本発明を適用する場合、図9(a)、(b)の光学系から、CDおよびDVDに対応するための光学系が省略される。この場合、図11のセンサレイアウトから、4分割センサC2、C3、D1〜D3が省略される。
【0191】
また、上記実施例では、分光素子H1の回折領域H13、H14が、それぞれ、図16(a)の回折領域H33、H34と、回折領域H35、H36のように分割され、分割後の各回折領域の回折方向がやや下向き、やや上向きに調整された。これと同様、センサBa1、Ba4の境界線と、センサBa2、Ba3の境界線に信号光が掛からないようにするために、図16(a)の回折領域H31、H32が上下に分割され、分割後の各回折領域の回折方向がやや右向き、やや左向きに調整されても良い。
【0192】
また、上記実施例では、図10(a)、図13(a)に示すように、回折領域におけるベクトルが設定されたが、これに替えて、図24(a)に示すように、回折領域におけるベクトルが設定されるようにしても良い。
【0193】
図24(a)は、この場合の分光素子H5を示す平面図である。
【0194】
分光素子H5の回折領域H51〜H55は、+1次回折光について、ベクトルV51〜V55を付与し、−1次回折光について、ベクトルV51m〜V55mを付与するように構成される。ベクトルV51〜V54の方向は、平面方向と曲面方向に対して45度の角度をなし、且つ、全て異なっている。ベクトルV51〜V54の大きさは、全て同じである。ベクトルV51m〜V55mは、それぞれ、ベクトルV51〜V55に対して反対方向であり、等しい大きさを有する。なお、ベクトルV55、V55mは、それぞれ、図10(a)に示すベクトルV25、V25mと同じ方向である。
【0195】
図24(b)は、分光素子H5を用いる場合の光検出器116のセンサレイアウトを示す図である。
【0196】
この場合、センサBa1、Ba4と、センサBa2、Ba3は、それぞれ、中心Oに対して上側と下側に配置され、センサBs1、Bs2と、センサBs3、Bs4は、中心Oに対して右側と左側に配置される。また、4分割センサBzは、上記実施の形態と同様、中心Oと中心BzOとを結ぶ直線が4分割センサBzの一つの分割線に一致するように配置される。
【0197】
回折領域H51〜H55に入射するBD光(信号光)の+1次回折光は、照射領域A51〜A55に照射される。全ての回折領域H51〜H55に入射するBD光(信号光)の0次回折光は、中心Oに照射される。回折領域H51〜H55のベクトルV51〜V55の大きさは、図24(b)に示すように照射領域が分布するよう設定されている。
【0198】
なお、回折領域H51〜H54に入射するBD光(迷光1、2)の+1次回折光と、BD光(信号光と迷光1、2)の−1次回折光は、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4の頂角によって形成される信号光領域3の外側に照射される。回折領域H55に入射するBD光(信号光)の−1次回折光は、中心Oの左下に照射される。
【0199】
この場合も、上記実施例と同様、センサBa1〜Ba4、Bs1〜Bs4により、BD光(信号光)の+1次回折光のみを受光することができる。また、上記実施例と同様、4分割センサBz、C1の検出信号に基づいて、分光素子H5と光検出器116の位置調整を行うことができる。
【0200】
また、上記実施例では、図12に示すように、4分割センサBzが上下左右の方向に対して45度傾けて配置された。しかしながら、これに限らず、4分割センサBzの分割線が、中心Oと4分割センサBzの中心BzOとを結ぶ一点鎖線の直線と略重なっていれば、4分割センサBzは上下左右の方向に対して任意の角度だけ傾けて配置されても良い。この場合、分光素子の中央の回折領域(たとえば、回折領域H15)のベクトルが、4分割センサBzの傾きに合わせて設定される。
【0201】
なお、本発明は、上記実施例に示すように分光素子がステップ型の回折パターンを有する場合に用いて好ましいものであるが、ブレーズ型の回折パターンを有する分光素子が用いられる場合にも適用可能である。すなわち、本発明は、+1次回折光と−1次回折光が生じる場合の他、何れか一方の回折光のみが生じる場合にも適用可能である。
【0202】
また、分光素子によるレーザ光の回折方向は上記実施例に示すものに限定されるものではない。平面方向と曲面方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光軸に整合させたときに、対頂角の方向にある2つの光束領域のレーザ光と、他の対頂角の方向にある他の2つの光束領域のレーザ光と、交点の位置にある光束領域のレーザ光が光検出器の受光面上において互いに離れるのであれば、分光素子によるレーザ光の回折方向を上記実施例で示す方向以外の方向に設定しても良い。
【0203】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0204】
101 … 半導体レーザ(レーザ光源)
114 … BD対物レンズ(対物レンズ)
115 … アナモレンズ(非点収差素子)
116 … 光検出器
Ba1〜Ba4 … センサ
Bs1〜Bs4 … センサ
Bz … 4分割センサ
Bz1〜Bz4 … センサ
C1 … 4分割センサ(他の4分割センサ、第3の4分割センサ)
C2 … 4分割センサ(第1の4分割センサ)
C21〜C24 … センサ
C3 … 4分割センサ(第2の4分割センサ)
C31〜C34 … センサ
H1〜H5 … 分光素子
H11、H12 … 回折領域(第1の領域)
H13、H14 … 回折領域(第2の領域)
H15 … 回折領域(第3の領域)
H21、H22 … 回折領域(第1の領域)
H23、H24 … 回折領域(第2の領域)
H25 … 回折領域(第3の領域)
H31、H32 … 回折領域(第1の領域)
H33〜H36 … 回折領域(第2の領域)
H37 … 回折領域(第3の領域)
H41、H42 … 回折領域(第1の領域)
H43〜H46 … 回折領域(第2の領域)
H47 … 回折領域(第3の領域)
H51、H52 … 回折領域(第1の領域)
H53、H54 … 回折領域(第2の領域)
H55 … 回折領域(第3の領域)
O … 中心(基準点)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、
前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる1つの位置に導く分光素子と、を備え、
前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された4分割センサとを有し、
前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、
前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置され、
前記4分割センサは、前記4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの第1の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与し、前記2つの第2の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光を回折作用により分光させるステップ型の回折パターンを有し、
前記光検出器は、前記回折パターンにより回折されずに前記分光素子を透過した前記レーザ光を受光する他の4分割センサを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、
前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる2つの位置に導く分光素子と、を備え、
前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる前記2つの位置にそれぞれ配置された第1および第2の4分割センサとを有し、
前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、
前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置され、
前記第1および第2の4分割センサは、それぞれ、前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの第1の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与し、前記2つの第2の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光を回折作用により分光させるステップ型の回折パターンを有し、
前記光検出器は、前記回折パターンにより回折されずに前記分光素子を透過した前記レーザ光を受光する第3の4分割センサを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、
前記4分割センサは、4つのセンサBz1〜Bz4から構成され、
前記基準点の方向を向く前記分割線によって、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz2と、前記センサBz3、Bz4に区分され、且つ、他の分割線により、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz4と、前記センサBz2、Bz3に区分されるとき、
以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法。
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
ただし、上記2つの式において、Bz1〜Bz4は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサBz1〜Bz4から出力される検出信号である。
【請求項8】
請求項4ないし6の何れか一項に記載の光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、
前記第1の4分割センサは、4つのセンサC21〜C24から構成され、
前記第2の4分割センサは、4つのセンサC31〜C34から構成され、
前記基準点の方向を向く前記第1の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C22と、前記センサC23、C24に区分され、且つ、前記第1の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C24と、前記センサC22、C23に区分され、
前記基準点の方向を向く前記第2の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C32と、前記センサC33、C34に区分され、且つ、前記第2の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C34と、前記センサC32、C33に区分され、
前記基準点を対称点として、前記センサC21、C22、C23、C24が、それぞれ、前記センサC33、C34、C31、C32と点対称な位置にあるとき、
以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法。
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
ただし、上記2つの式において、C21〜C24は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC21〜C24から出力される検出信号であり、C31〜C34は、それぞれ、前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC31〜C34から出力される検出信号である。
【請求項1】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、
前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる1つの位置に導く分光素子と、を備え、
前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された4分割センサとを有し、
前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、
前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置され、
前記4分割センサは、前記4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの第1の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与し、前記2つの第2の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光を回折作用により分光させるステップ型の回折パターンを有し、
前記光検出器は、前記回折パターンにより回折されずに前記分光素子を透過した前記レーザ光を受光する他の4分割センサを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
レーザ光源と、
前記レーザ光源から出射されたレーザ光を記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、第1の方向に前記レーザ光を収束させて第1の焦線を生成し、且つ、前記第1の方向に垂直な第2の方向に前記レーザ光を収束させて第2の焦線を生成する非点収差素子と、
前記非点収差素子を通過した前記レーザ光を受光する光検出器と、
前記記録媒体によって反射された前記レーザ光が入射されるとともに、2つの第1の領域および2つの第2の領域に入射した前記レーザ光を、それぞれ、前記光検出器の受光面上において、異なる4つの位置に導き、且つ、第3の領域に入射した前記レーザ光を、前記光検出器の受光面上において、前記4つの位置とは異なる2つの位置に導く分光素子と、を備え、
前記光検出器は、前記2つの第1の領域および前記2つの第2の領域に入射したレーザ光が導かれる位置に配置された複数のセンサと、前記第3の領域に入射したレーザ光が導かれる前記2つの位置にそれぞれ配置された第1および第2の4分割センサとを有し、
前記2つの第1の領域は、前記第1の方向と前記第2の方向にそれぞれ平行で且つ互いにクロスする2つの直線の交点を前記レーザ光の光軸に整合させたとき、前記2つの直線によって作られる一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、前記2つの第2の領域は、他の一組の対頂角が並ぶ方向に配置され、
前記第3の領域は、前記2つの直線の前記交点の位置に配置され、
前記第1および第2の4分割センサは、それぞれ、前記第1の4分割センサの2つの分割線のうち一方と、前記第2の4分割センサの2つの分割線のうち一方が、前記記録媒体によって反射された前記レーザ光の光軸と前記光検出器の前記受光面とが交わる基準点の方向を向くように、配置される、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項4に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記2つの第1の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与し、前記2つの第2の領域にそれぞれ入射する前記レーザ光に、同じ方向且つ互いに異なる大きさの分光作用を付与する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記レーザ光を回折作用により分光させるステップ型の回折パターンを有し、
前記光検出器は、前記回折パターンにより回折されずに前記分光素子を透過した前記レーザ光を受光する第3の4分割センサを有する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項7】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、
前記4分割センサは、4つのセンサBz1〜Bz4から構成され、
前記基準点の方向を向く前記分割線によって、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz2と、前記センサBz3、Bz4に区分され、且つ、他の分割線により、前記4つのセンサBz1〜Bz4が、前記センサBz1、Bz4と、前記センサBz2、Bz3に区分されるとき、
以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法。
HOEz={(Bz1+Bz4)−(Bz2+Bz3)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
HOEθ={(Bz1+Bz2)−(Bz3+Bz4)}
/(Bz1+Bz2+Bz3+Bz4)
ただし、上記2つの式において、Bz1〜Bz4は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサBz1〜Bz4から出力される検出信号である。
【請求項8】
請求項4ないし6の何れか一項に記載の光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法において、
前記第1の4分割センサは、4つのセンサC21〜C24から構成され、
前記第2の4分割センサは、4つのセンサC31〜C34から構成され、
前記基準点の方向を向く前記第1の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C22と、前記センサC23、C24に区分され、且つ、前記第1の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC21〜C24が、前記センサC21、C24と、前記センサC22、C23に区分され、
前記基準点の方向を向く前記第2の4分割センサの前記分割線によって、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C32と、前記センサC33、C34に区分され、且つ、前記第2の4分割センサの他の分割線により、前記4つのセンサC31〜C34が、前記センサC31、C34と、前記センサC32、C33に区分され、
前記基準点を対称点として、前記センサC21、C22、C23、C24が、それぞれ、前記センサC33、C34、C31、C32と点対称な位置にあるとき、
以下に規定されるHOEzがゼロに近づくように、前記レーザ光の光軸方向における前記分光素子の位置の調整が行われ、以下に規定されるHOEθがゼロに近づくように前記基準点を中心とする回転方向の前記分光素子の位置の調整が行われる、
ことを特徴とする光ピックアップ装置の分光素子の位置調整方法。
HOEz={{(C21+C24)−(C22+C23)}
+{(C32+C33)−(C31+C34)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
HOEθ={{(C21+C22)−(C23+C24)}
+{(C33+C34)−(C31+C32)}}
/{(C21+C22+C23+C24)
+(C31+C32+C33+C34)}
ただし、上記2つの式において、C21〜C24は、それぞれ、前記記録媒体が装着された状態で前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC21〜C24から出力される検出信号であり、C31〜C34は、それぞれ、前記レーザ光源からレーザ光を出射させたときの前記センサC31〜C34から出力される検出信号である。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公開番号】特開2013−33582(P2013−33582A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−143080(P2012−143080)
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年6月26日(2012.6.26)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【出願人】(504464070)三洋オプテックデザイン株式会社 (315)
【Fターム(参考)】
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