光ピックアップ装置
【課題】簡素な構成にて効果的に迷光を抑制することが可能な互換型の光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】BDまたはCDによって反射されたBD光またはCD光は、検出レンズ109により非点収差が導入される。その後、BD光またはCD光は、レーザ光軸の周りに設定された4つの光束領域の光束が、分光素子110により回折作用により互いに分離される。光検出器の検出面には、BD光を受光するセンサP21〜P28と、CD光を受光するセンサP31〜P38が配されている。DVD光は、回折格子102により3ビームに分離され、DVDに照射される。DVDにより反射されたDVD光は、分光素子110により分離されずに、センサP41〜P43により受光される。センサパターン間の間隔S1に応じて、半導体レーザ101内のレーザ素子間のギャップG2が設定される。
【解決手段】BDまたはCDによって反射されたBD光またはCD光は、検出レンズ109により非点収差が導入される。その後、BD光またはCD光は、レーザ光軸の周りに設定された4つの光束領域の光束が、分光素子110により回折作用により互いに分離される。光検出器の検出面には、BD光を受光するセンサP21〜P28と、CD光を受光するセンサP31〜P38が配されている。DVD光は、回折格子102により3ビームに分離され、DVDに照射される。DVDにより反射されたDVD光は、分光素子110により分離されずに、センサP41〜P43により受光される。センサパターン間の間隔S1に応じて、半導体レーザ101内のレーザ素子間のギャップG2が設定される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対し、異なる波長のレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層を配することも検討されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、ピンホールを用いて迷光を除去する技術が、特許文献2には、1/2波長板と偏光光学素子を組み合わせることにより迷光を除去する技術が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−260669号公報
【特許文献2】特開2006−252716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術によれば、ターゲット記録層から反射されたレーザ光(信号光)の収束位置にピンホールを正確に位置づける必要があるため、ピンホールの位置調整作業が困難であるとの課題がある。位置調整作業を容易にするためピンホールのサイズを大きくすると、迷光がピンホールを通過する割合が増加し、迷光による信号劣化を効果的に抑制できなくなる。
【0007】
また、特許文献2の技術によれば、迷光を除去するために、1/2波長板と偏光光学素子が2つずつ必要である他、さらに、2つのレンズが必要であるため、部品点数とコストが増加し、また、各部材の配置調整が煩雑であるとの課題がある。また、これらの部材を並べて配置するスペースが必要となり、光学系が大型化するとの課題もある。
【0008】
なお、近年のディスクの多様化に伴い、たとえば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(以下、「BD」という)に対応可能な互換型の光ピックアップ装置が必要となる。かかる互換型の光ピックアップ装置においても、上記迷光に対する対策が必要となる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成にて効果的に迷光を抑制することが可能な互換型の光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光ピックアップ装置は、BD用レーザ光を出射する第1の光源と、CD用レーザ光を出射する第2の光源と、前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光をそれぞれBDとCD上に収束させる対物レンズ部と、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を受光する一つの光検出器と、前記第1の光源および前記第2の光源からそれぞれ出射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を前記光検出器に導く光学系とを備える。ここで、前記光学系は、前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、4分割されたBD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させるとともに、4分割されたCD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させる分光素子とを含む。また、前記光検出器は、前記分光素子によって離散された前記BD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第1のセンサパターンと、前記分光素子によって離散された前記CD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第2のセンサパターンとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成にて効果的に迷光を抑制することが可能な互換型の光ピックアップ装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図5】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図6】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図7】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図8】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布状態の関係)を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図である。
【図11】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図12】実施例に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図13】実施例に係る回折格子の特性を説明する図である。
【図14】実施例に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図15】実施例に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図16】実施例および本発明の技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図17】変更例に係る光ピックアップ装置の光学系と、センサパターンおよび半導体レーザの構成を示す図である。
【図18】他の変更例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0015】
<技術的原理>
まず、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。なお、ここでは、積層方向に複数の記録層が配された記録媒体に対してレーザ光が照射される場合が想定されている。以下では、複数の記録層のうち、レーザ光が収束される記録層を特に、「ターゲット記録層」と称する。
【0016】
図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット記録層よりも一つ奥側にある記録層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット記録層よりも一つ手前にある記録層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット記録層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0017】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”においてアナモレンズが曲率を持っていても良い。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0018】
なお、同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0019】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0020】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0021】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0022】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0023】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0024】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2、6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0025】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0027】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0028】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0029】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0030】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサパターンにて受光するように構成すると、対応するセンサパターンには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0033】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0034】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。ここで、トラック方向は、平面方向および曲面方向に対して45°の傾きを持っている。なお、同図(a)および(d)では、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、同図(a)、(b)、(d)では、トラック溝による回折の像(トラック像)が実線で示され、同図(b)、(d)では、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0035】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0036】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PP(トラッキングエラー信号)は、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0037】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0038】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0039】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部(2分割センサ)によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。さらに、各センサからの信号を加算することにより、再生RF信号が生成され得る。上記の如く、信号光領域には迷光が重ならないため、こうして得られたフォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)と再生RF信号は、高品質なものとなる。
【0040】
<実施例>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。
【0041】
図11(a)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。本実施例に係る光ピックアップ装置は、BD、CD、DVDに対応可能なものである。
【0042】
図示の如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、回折格子102と、偏光ビームスプリッタ(PBS)103と、コリメータレンズ104と、1/4波長板105と、対物レンズ106と、ホルダ107と、対物レンズアクチュエータ108と、検出レンズ109と、分光素子110と、光検出器111を備えている。
【0043】
半導体レーザ101は、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)、波長650nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)、および、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)をそれぞれ出射する3つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。
【0044】
図11(b)は、半導体レーザ101内におけるレーザ素子の配置パターンを示す図である。ここでは、各レーザ素子がモノリシック型にて実装された構成例が示されている。同図は、半導体レーザ101をビーム出射側から見たときのものである。同図において、BE、CEおよびDEは、それぞれ、BD光、CD光およびDVD光の発光点を示している。
【0045】
図11(b)の構成では、BD光の発光点BEがCD光の発光点CEの真上に位置するようにして、CD光とDVD光の発光層の上にBD光の発光層が配置される。この構成例によれば、CD光の発光点CEとBD光の発光点BEとのギャップG1を、DVD光の発光点DEとCD光の発光点CEとのギャップG2に比べて数段小さく設定することができる。よって、半導体レーザ101から出射されるレーザ光のうち、CD光とBD光の光軸ずれを極めて小さく抑えることができる。
【0046】
より詳細には、それぞれの発光層の間には半田層や電極層、絶縁層等が配置される。よって、これらの層の厚みによって、CD光の発光点CEとBD光の発光点BEとの間のギャップG1が与えられる。層形成プロセスおよび発熱の問題を考慮した場合、ギャップG1の最小値は1μm程度が限界とされる。このため、通常、ギャップG1は、数μm程度に設定される。
【0047】
なお、CD光の発光点CEとDVD光の発光点DEとの間のギャップG2は、後述の如く、DVD光が、DVD光用のセンサパターンに適正に照射されるように設定される。このように、3つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0048】
図11(a)に戻り、回折格子102は、BD光、CD光およびDVD光のうち、DVD光に作用して、DVD光をメインビームと2つのサブビームに分割する。
【0049】
図13は、回折格子102を2段ステップ型とした場合の、1ステップあたりの段差と回折効率との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のAの大きさに設定することで、BD光とCD光は略回折せずに、DVD光のみ回折するよう回折格子102が構成される。
【0050】
図11(a)に戻り、PBS103は、回折格子102側から入射するBD光、CD光およびDVD光を反射するとともにコリメートレンズ104側から入射するBD光、CD光およびDVD光を透過する。コリメートレンズ104は、PBS103側から入射するBD光、CD光およびDVD光を平行光に変換する。1/4波長板105は、コリメートレンズ104側から入射するBD光、CD光およびDVD光を円偏光に変換するとともに、対物レンズ106側から入射するBD光、CD光およびDVD光を、コリメートレンズ104側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。
【0051】
対物レンズ106は、BD光、CD光およびDVD光を、それぞれ、BD、CDおよびDVDに対して適正に収束させるよう構成されている。対物レンズ106は、ホルダ107に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ108により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0052】
検出レンズ109は、PBS103側から入射したBD光、CD光およびDVD光に非点収差を導入する。非点収差が導入されたBD光、CD光およびDVD光は、分光素子110に入射する。なお、検出レンズ109は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0053】
分光素子110には、入射面にステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子110に入射したBD光、CD光およびDVD光のうち、BD光とCD光は、分光素子110による回折作用によって、図9(a)に示すように、それぞれ4つの光束に区分され、各光束の進行方向が変えられる。
【0054】
光検出器111は、図11(c)に示すセンサパターンを有する。すなわち、光検出器111は、分光素子110によって分離されたBD光を受光するBD用センサパターン(センサP21〜P28)と、分光素子110によって分離されたCD光を受光するCD用センサパターン(センサP31〜P38)を有する。さらに、光検出器111は、回折されずに分光素子110を透過したDVD光(0次回折光)を受光するDVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)を有している。これらセンサパターンは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0055】
図12(a)は、分光素子110の構成を示す図である。同図は、分光素子110を検出レンズ109側から見たときの平面図である。
【0056】
分光素子110は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図示の如く、4つの回折領域110a〜110dに区分されている。これら回折領域110a〜110dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したBD光およびCD光が入射するよう、分光素子110が検出レンズ109の後段に配置される。
【0057】
回折領域110a〜110dは、入射されたBD光を−1次の回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、また、入射されたCD光を−1次の回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。また、各領域は、BD光に対する−1次の回折角が互いに同じであり、CD光に対する−1次の回折角も互いに同じとなっている。
【0058】
ここで、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、BD光では、回折次数×波長=−405となり、CD光では、回折次数×波長=−785となる。よって、CD光の回折角は、BD光の回折角の約2倍となる。
【0059】
このように回折領域110a〜110dを構成することで、BD光とCD光は、光検出器111の受光面上において、図12(b)のように分布する。図示の如く、光検出器111の受光面上には、BD光の迷光が掛からないBD光の信号光領域と、CD光の迷光が掛からないCD光の信号光領域が生じる。本実施例では、BD光の信号光領域の角部分に図11(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、また、CD光の信号光領域の角部分に図11(c)に示すセンサP31〜P38が配置される。これにより、BD光の信号光のみ、および、CD光の信号光のみが、BD用センサパターン(センサP21〜P28)およびCD用センサパターン(センサP31〜P38)で受光される。
【0060】
また、上記実施例では、BD光とCD光の発光点BE、CEとのギャップG1が数μmと微小であるため、図11(c)では、BD用センサパターンとCD用センサパターンを各々の中心が一致するよう配置したが、ギャップG1に応じて各々の中心を調整しても良い。特に、さらに高精度なサーボ信号が要求される場合には、ギャップG1に応じて各々の中心を調整すると良い。
【0061】
なお、本実施例では、図11(b)に示すギャップG1分だけ、BD光とCD光とに光軸ずれが生じている。このため、BD光が回折領域110a〜110dに均等に掛かるように分光素子110が配置されると、ギャップG1分だけずれた状態でCD光が分光素子110に入射する。この場合、回折領域110a〜110dによって分離されたCD光の4つの光束は、図11(c)に示すような4分の1円の扇型形状の状態でCD用センサパターン(センサP31〜P38)に入射せず、4分の1円からやや変形した形状でCD用センサパターンに入射する。しかし、CD光の光軸ずれは、上記のとおり数μm程度であるため、CD光の4つの光束は、受光面上において、4分の1円の扇型形状から大きく変形することはない。よって、この変形による光検出器111からの信号の誤差は殆ど問題とはならないものと考えられる。
【0062】
なお、回折領域110a〜110dに配される回折パターンは、DVD光に対する0次の回折効率が高く、BD光とCD光に対する−1次の回折効率が高くなるよう構成される。ステップ型の回折パターンでは、回折効率は、回折パターンのステップ数と1ステップあたりの段差により調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。本実施例では、たとえば、5段ステップ型の回折パターンが用いられる。
【0063】
図14は、5段ステップ型の回折パターンにおける、1ステップあたりの段差と回折効率との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のBの大きさに設定することで、DVD光に対する0次の回折効率を90%以上、BD光に対する−1次の回折効率を80%以上、CD光に対する−1次の回折効率を60%以上とすることができる。
【0064】
なお、回折領域110a〜110dに配される回折パターンのステップ数を他のステップ数にすることもできる。図15は、4段ステップ型の回折パターンにおける、1ステップあたりの段差と回折効率との関係との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のCの大きさに設定することで、DVD光に対する0次の回折効率を略100%にでき、また、BD光に対する−1次の回折効率を70%以上、CD光に対する−1次の回折効率を50%以上とすることができる。
【0065】
このように、本実施例では、DVD光に対する回折領域110a〜110dの0次の回折効率が高く設定されているため、DVD光は、分光素子110により略回折されずに、光検出器111へと導かれる。光検出器111には、図11(c)に示すように、回折されずに分光素子110を透過したDVD光のメインビームMと、2つのサブビームS1、S2をそれぞれ受光する3つの4分割センサP41〜P43(DVD用センサパターン)が配されている。ここで、DVD用センサパターンと、BD用センサパターンおよびCD用センサパターンとの間隔S1は、図11(b)に示すギャップG2に相当する。すなわち、発光点間のギャップG2に応じてセンサパターン間の間隔S1が設定され、あるいは、逆に、センサパターン間の間隔S1に応じて発光点間のギャップS1が設定される。そうして、BD光、CD光およびDVD光が、図11(c)の各センサパターンに適正に照射されるよう、半導体レーザ101と光検出器111の位置調整が行われ、また、光軸を中心とする回折格子102の回転位置が調整される。
【0066】
なお、本実施例では、DVD光には、上記技術的原理による構成が適用されずに、従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法による構成が適用されている。したがって、DVD用センサパターンを構成する3つの4分割センサには、DVD光の迷光が掛かることになる。このように、DVD光については従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法を適用したのは、以下の理由による。
【0067】
DVDのうちDVD−RAMは、トラックピッチが他のDVDに比べてかなり大きい。このため、DVD−RAMのトラック上にDVD光を収束させると、DVDから反射されたDVD光のビーム光束に占めるトラック像の割合が大きくなる。こうなると、1ビームプッシュプル法では、プッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を精度よく生成することが難しくなる。この理由から、本実施例では、プッシュプル信号の生成手法として3ビーム法が適用されている。
【0068】
この場合、3つに分割されたメインビームと2つのサブビームに対し、上記技術的原理による構成を適用することも考えられる。しかし、こうなると、分光素子110を3ビームに適合するように構成する必要があり、分光素子110の複雑化を招く。また、分光素子110を3つのビームに対して精度よく位置調整する必要があるため、位置調整作業の煩雑さを招く。
【0069】
このような理由から、本実施例では、DVD光については従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法が適用される。こうすることで、BDとCDに対して光ピックアップ装置が用いられる場合には、迷光による信号劣化を回避でき、また、DVD−RAMに対しても、不具合なく光ピックアップ装置が用いられ得る。
【0070】
以上、本実施例によれば、BD用センサパターンとCD用センサパターンに対して不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、この効果を、分光素子110を検出レンズ109と光検出器111との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、BD用センサパターンとCD用センサパターンに迷光が入射するのを防止することができる。
【0071】
また、本実施例では、略2倍の波長差があるBD光とCD光に対して分光素子110を作用させたため、上記のようにBD光とCD光をともに、−1次の回折により分光させた場合にも、回折角の差を大きくとることができる。このため、受光面上において、CD光の信号光領域をBD光の信号光領域よりも大きく広げることができ、BD用センサパターンとCD用センサパターンを配置し易いとの効果が奏され得る。
【0072】
また、本実施例では、分離されたBD光の光束とCD光の光束が、それぞれ、光検出器111の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子110が構成されているため、BD光とCD光の信号光領域がコンパクトになり、よって、BD用センサパターンとCD用センサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0073】
さらに、本実施例では、DVD光については、フォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)の生成手法として、従前の非点収差法と3ビームプッシュプル法を適用したため、分光素子110の構成の複雑化および配置調整の煩雑化を招くことなく、DVD−RAMに対しても適正にフォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0074】
また、本実施例では、同一CAN内に、BD光、CD光およびDVD光を出射するレーザ光素子を収容する構成としたため、光学系の構成を簡素にすることができる。このとき、BD光とCD光の発光点BE、CEが接近して配置されているため、これらレーザ光の光軸を整合させずとも、BD光とCD光を、それぞれ、BD用センサパターン(センサP21〜P28)とCD用センサパターン(センサP31〜P34)に導くことができる。
【0075】
また、DVD光の発光点DEと、BD光とCD光の発光点BE、CEとのギャップG2が、DVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)と、BD用センサパターン(センサP21〜P28)およびCD用センサパターン(センサP31〜P34)との間隔S1に応じて設定されているため、別途、光学素子を配することなく、DVD光をDVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)に導くことができる。
【0076】
以上、上記原理に基づく実施例について説明したが、上記原理による効果は、図16に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面Sよりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図8に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0077】
本発明の実施形態は、上記以外に種々の変更が可能である。
【0078】
たとえば、上記実施例では、一つの対物レンズ106に、BD光、CD光およびDVD光を入射させるようにしたが、BD光、CD光およびDVD光を異なる対物レンズに入射させるようにしても良い。たとえば、図17(a)に示すように、BD光を対物レンズ123に入射させ、CD光とDVD光を対物レンズ126に入射させるようにしても良い。この場合、BD光は、ダイクロイックプリズム121を透過した後、1/4波長板122を介して対物レンズ123に入射し、CD光とDVD光は、ダイクロイックプリズム121により反射された後、ミラー124により反射され、1/4波長板125を介して対物レンズ126に入射する。対物レンズ123は、BDに対してBD光を適正に収束させるよう構成され、対物レンズ126は、CDおよびDVDに対して、それぞれ、CD光とDVD光を適正に収束させるよう構成される。また、対物レンズ123、126は、ホルダ127に保持され、アクチュエータ128により一体的に駆動される。
【0079】
また、上記実施例では、BD用センサパターン、CD用センサパターンおよびDVD用センサパターンが、別々に配されたが、図17(b)に示すように、CD用センサパターンの一部と、DVD用センサパターンの一部が、同じセンサを共用するようにしても良い。ここでは、メインビームMを受光するセンサP40が、4分割センサの各センサをさらに2分割した8分割センサにより構成され、かかる8分割センサの左側の2つのセンサP40a、P40bが、CD光の右側の分割光束を受光するセンサとして共用されている。この構成によれば、センサパターン間の間隔S1を小さくできるため、センサパターン全体のサイズをコンパクトにすることができる。
【0080】
さらに、上記実施例では、BD光、CD光およびDVD光を出射する各レーザ素子がモノリシック型にて実装された構成例が示されたが、図17(c)に示すように、これらレーザ素子を、ハイブリッド型にて実装しても良い。
【0081】
なお、上記実施例では、光軸ずれが生じたままBD光とCD光を分光素子110に入射させたが、CD光とBD光を、光軸を整合させた状態で、分光素子110に入射させても良い。この場合、たとえば、図18(a)に示すように、透明な平行平板130を用いてCD光とBD光の光軸を整合させることができる。
【0082】
同図(b)は、平行平板130による光軸ずれ補正作用を説明する図である。
【0083】
平行平板130の厚みをt、光軸に対する傾きをa、屈折率をnとしたとき、平行平板130による光軸のシフト量h(平行平板130をレーザ光が通過する前後の光軸の変位量)は、次式で表される。
【0084】
h=t/Cos(Sin−1(Sin(a)/n))*Sin(a)
ここで、平行平板130の屈折率nは光の波長に応じて変化するため、CD光(波長785nm)が通過するときと、BD光(波長405nm)が通過するときとでは、光軸のシフト量が変化する。すなわち、かかる波長の相違から、同図(b)に示す如く、BD光の光軸のシフト量は、CD用レーザ光の光軸のシフト量よりも大きくなる。
【0085】
したがって、BD光とCD光が同図に示すようにして平行平板130に入射すると、BD光とCD光のシフト量の差分だけ、BD光の光軸がCD光の光軸近づく。よって、上記式をもとに、平行平板130の厚みtと傾き角aを調整すれば、平行平板130を通過した後のBD光とCD光の光軸を整合させることができる。
【0086】
なお、この場合は、平行平板130の作用により、DVD光の光軸もシフトするが、図11(b)に示す如く、DVD光の発光点DEは、BD光の発光点BEとCD光の発光点CEが並ぶ方向と垂直な方向に配置されているため、平行平板130の作用によりDVD光の光軸がシフトしても、DVD光の光軸がBD光とCD光の光軸に近づくことはない。
【0087】
図18(a)の変更例によれば、BD光とCD光を、光軸が整合された状態で、分光素子110の回折領域110a〜110dに均等に入射させることができる。よって、BD光とCD光の何れについても、図17(b)に示す如く、歪みのない4分の1円の形状で、対応するセンサパターンに入射させることができる。よって、光検出器111から出力される信号の精度をさらに高めることができる。なお、平行平板はPBSと分光素子との間に配置してもよく、さらにPBSを平板形状とすることで機能を一体化することもできる。
【0088】
また、上記実施例では、分光素子110が検出レンズ109の後段に配されたが、分光素子110を検出レンズ109の前段に配しても良い。また、上記実施例では、対物レンズ106に対してCD光を無限系で入射させたが、有限系にてCD光を対物レンズ106に入射させる構成であっても良い。この場合も、CD光の迷光がCD用センサパターンに入射するのを防止することができる。
【0089】
さらに、上記実施例では、DVD光について、3ビームプッシュプル法を用いたが、DVD光について、インライン方式を用いても良い。この場合、図11(c)に示すDVD光用の3つの4分割センサは上下一列に並び、回折格子102は、分割後のビームに位相差を持たせるインライン方式の回折格子に変更される。
【0090】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、対物レンズの設計を変えることで、BDと類似の波長帯のレーザ光を用いるCBHD(China Blue High-definition Disc)と、CDおよびDVDの互換型光ピックアップ装置に置き換えることができる。請求項における「BD用レーザ光」および「BD」は、それぞれ、「CBHD用レーザ光」および「CBHD」を、均等の範囲として含むものである。
【0091】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
101 半導体レーザ
102 回折格子
106 対物レンズ
109 検出レンズ(非点収差素子)
110 分光素子
111 光検出器
P21〜P28 センサ(第1のセンサパターン)
P31〜P38 センサ(第2のセンサパターン)
P41〜P43 センサ(第3のセンサパターン)
P40 センサ(第2のセンサパターン、第3のセンサパターン)
130 平行平板(光軸補正素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、複数の記録層が積層された記録媒体に対し、異なる波長のレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。一枚のディスク内に複数の記録層を含めることにより、ディスクのデータ容量を顕著に高めることができる。記録層を積層する場合、これまでは片面2層が一般的であったが、最近では、さらに大容量化を進めるために、片面に3層以上の記録層を配することも検討されている。ここで、記録層の積層数を増加させると、ディスクの大容量化を促進できる。しかし、その一方で、記録層間の間隔が狭くなり、層間クロストークによる信号劣化が増大する。
【0003】
記録層を多層化すると、記録/再生対象とされる記録層(ターゲット記録層)からの反射光が微弱となる。このため、ターゲット記録層の上下にある記録層から、不要な反射光(迷光)が光検出器に入射すると、検出信号が劣化し、フォーカスサーボおよびトラッキングサーボに悪影響を及ぼす惧れがある。したがって、このように記録層が多数配されている場合には、適正に迷光を除去して、光検出器からの信号を安定化させる必要がある。
【0004】
以下の特許文献1には、ピンホールを用いて迷光を除去する技術が、特許文献2には、1/2波長板と偏光光学素子を組み合わせることにより迷光を除去する技術が、それぞれ記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−260669号公報
【特許文献2】特開2006−252716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1の技術によれば、ターゲット記録層から反射されたレーザ光(信号光)の収束位置にピンホールを正確に位置づける必要があるため、ピンホールの位置調整作業が困難であるとの課題がある。位置調整作業を容易にするためピンホールのサイズを大きくすると、迷光がピンホールを通過する割合が増加し、迷光による信号劣化を効果的に抑制できなくなる。
【0007】
また、特許文献2の技術によれば、迷光を除去するために、1/2波長板と偏光光学素子が2つずつ必要である他、さらに、2つのレンズが必要であるため、部品点数とコストが増加し、また、各部材の配置調整が煩雑であるとの課題がある。また、これらの部材を並べて配置するスペースが必要となり、光学系が大型化するとの課題もある。
【0008】
なお、近年のディスクの多様化に伴い、たとえば、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(以下、「BD」という)に対応可能な互換型の光ピックアップ装置が必要となる。かかる互換型の光ピックアップ装置においても、上記迷光に対する対策が必要となる。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成にて効果的に迷光を抑制することが可能な互換型の光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光ピックアップ装置は、BD用レーザ光を出射する第1の光源と、CD用レーザ光を出射する第2の光源と、前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光をそれぞれBDとCD上に収束させる対物レンズ部と、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を受光する一つの光検出器と、前記第1の光源および前記第2の光源からそれぞれ出射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を前記光検出器に導く光学系とを備える。ここで、前記光学系は、前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、4分割されたBD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させるとともに、4分割されたCD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させる分光素子とを含む。また、前記光検出器は、前記分光素子によって離散された前記BD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第1のセンサパターンと、前記分光素子によって離散された前記CD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第2のセンサパターンとを備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、簡素な構成にて効果的に迷光を抑制することが可能な互換型の光ピックアップ装置を提供することができる。
【0012】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図5】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図6】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図7】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図8】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布状態の関係)を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図である。
【図11】実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図12】実施例に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図13】実施例に係る回折格子の特性を説明する図である。
【図14】実施例に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図15】実施例に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図16】実施例および本発明の技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図17】変更例に係る光ピックアップ装置の光学系と、センサパターンおよび半導体レーザの構成を示す図である。
【図18】他の変更例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0015】
<技術的原理>
まず、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。なお、ここでは、積層方向に複数の記録層が配された記録媒体に対してレーザ光が照射される場合が想定されている。以下では、複数の記録層のうち、レーザ光が収束される記録層を特に、「ターゲット記録層」と称する。
【0016】
図1(a)は、ターゲット記録層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット記録層よりも一つ奥側にある記録層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット記録層よりも一つ手前にある記録層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット記録層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0017】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”においてアナモレンズが曲率を持っていても良い。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0018】
なお、同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0019】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0020】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0021】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0022】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0023】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0024】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2、6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0025】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0027】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0028】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0029】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0030】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサパターンにて受光するように構成すると、対応するセンサパターンには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0033】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0034】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。ここで、トラック方向は、平面方向および曲面方向に対して45°の傾きを持っている。なお、同図(a)および(d)では、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、同図(a)、(b)、(d)では、トラック溝による回折の像(トラック像)が実線で示され、同図(b)、(d)では、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0035】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0036】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PP(トラッキングエラー信号)は、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0037】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0038】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0039】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部(2分割センサ)によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。さらに、各センサからの信号を加算することにより、再生RF信号が生成され得る。上記の如く、信号光領域には迷光が重ならないため、こうして得られたフォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)と再生RF信号は、高品質なものとなる。
【0040】
<実施例>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。
【0041】
図11(a)は、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。本実施例に係る光ピックアップ装置は、BD、CD、DVDに対応可能なものである。
【0042】
図示の如く、光ピックアップ装置は、半導体レーザ101と、回折格子102と、偏光ビームスプリッタ(PBS)103と、コリメータレンズ104と、1/4波長板105と、対物レンズ106と、ホルダ107と、対物レンズアクチュエータ108と、検出レンズ109と、分光素子110と、光検出器111を備えている。
【0043】
半導体レーザ101は、波長785nm程度のCD用レーザ光(以下、「CD光」という)、波長650nm程度のDVD用レーザ光(以下、「DVD光」という)、および、波長405nm程度のBD用レーザ光(以下、「BD光」という)をそれぞれ出射する3つのレーザ素子を同一CAN内に収容している。
【0044】
図11(b)は、半導体レーザ101内におけるレーザ素子の配置パターンを示す図である。ここでは、各レーザ素子がモノリシック型にて実装された構成例が示されている。同図は、半導体レーザ101をビーム出射側から見たときのものである。同図において、BE、CEおよびDEは、それぞれ、BD光、CD光およびDVD光の発光点を示している。
【0045】
図11(b)の構成では、BD光の発光点BEがCD光の発光点CEの真上に位置するようにして、CD光とDVD光の発光層の上にBD光の発光層が配置される。この構成例によれば、CD光の発光点CEとBD光の発光点BEとのギャップG1を、DVD光の発光点DEとCD光の発光点CEとのギャップG2に比べて数段小さく設定することができる。よって、半導体レーザ101から出射されるレーザ光のうち、CD光とBD光の光軸ずれを極めて小さく抑えることができる。
【0046】
より詳細には、それぞれの発光層の間には半田層や電極層、絶縁層等が配置される。よって、これらの層の厚みによって、CD光の発光点CEとBD光の発光点BEとの間のギャップG1が与えられる。層形成プロセスおよび発熱の問題を考慮した場合、ギャップG1の最小値は1μm程度が限界とされる。このため、通常、ギャップG1は、数μm程度に設定される。
【0047】
なお、CD光の発光点CEとDVD光の発光点DEとの間のギャップG2は、後述の如く、DVD光が、DVD光用のセンサパターンに適正に照射されるように設定される。このように、3つの光源を同一CAN内に収容することで、複数CANの構成に比べて光学系を簡素化することができる。
【0048】
図11(a)に戻り、回折格子102は、BD光、CD光およびDVD光のうち、DVD光に作用して、DVD光をメインビームと2つのサブビームに分割する。
【0049】
図13は、回折格子102を2段ステップ型とした場合の、1ステップあたりの段差と回折効率との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のAの大きさに設定することで、BD光とCD光は略回折せずに、DVD光のみ回折するよう回折格子102が構成される。
【0050】
図11(a)に戻り、PBS103は、回折格子102側から入射するBD光、CD光およびDVD光を反射するとともにコリメートレンズ104側から入射するBD光、CD光およびDVD光を透過する。コリメートレンズ104は、PBS103側から入射するBD光、CD光およびDVD光を平行光に変換する。1/4波長板105は、コリメートレンズ104側から入射するBD光、CD光およびDVD光を円偏光に変換するとともに、対物レンズ106側から入射するBD光、CD光およびDVD光を、コリメートレンズ104側から入射する際の偏光方向に直交する直線偏光に変換する。
【0051】
対物レンズ106は、BD光、CD光およびDVD光を、それぞれ、BD、CDおよびDVDに対して適正に収束させるよう構成されている。対物レンズ106は、ホルダ107に保持された状態で、対物レンズアクチュエータ108により、フォーカス方向およびトラッキング方向に駆動される。
【0052】
検出レンズ109は、PBS103側から入射したBD光、CD光およびDVD光に非点収差を導入する。非点収差が導入されたBD光、CD光およびDVD光は、分光素子110に入射する。なお、検出レンズ109は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0053】
分光素子110には、入射面にステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子110に入射したBD光、CD光およびDVD光のうち、BD光とCD光は、分光素子110による回折作用によって、図9(a)に示すように、それぞれ4つの光束に区分され、各光束の進行方向が変えられる。
【0054】
光検出器111は、図11(c)に示すセンサパターンを有する。すなわち、光検出器111は、分光素子110によって分離されたBD光を受光するBD用センサパターン(センサP21〜P28)と、分光素子110によって分離されたCD光を受光するCD用センサパターン(センサP31〜P38)を有する。さらに、光検出器111は、回折されずに分光素子110を透過したDVD光(0次回折光)を受光するDVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)を有している。これらセンサパターンは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0055】
図12(a)は、分光素子110の構成を示す図である。同図は、分光素子110を検出レンズ109側から見たときの平面図である。
【0056】
分光素子110は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図示の如く、4つの回折領域110a〜110dに区分されている。これら回折領域110a〜110dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したBD光およびCD光が入射するよう、分光素子110が検出レンズ109の後段に配置される。
【0057】
回折領域110a〜110dは、入射されたBD光を−1次の回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、また、入射されたCD光を−1次の回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。また、各領域は、BD光に対する−1次の回折角が互いに同じであり、CD光に対する−1次の回折角も互いに同じとなっている。
【0058】
ここで、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、BD光では、回折次数×波長=−405となり、CD光では、回折次数×波長=−785となる。よって、CD光の回折角は、BD光の回折角の約2倍となる。
【0059】
このように回折領域110a〜110dを構成することで、BD光とCD光は、光検出器111の受光面上において、図12(b)のように分布する。図示の如く、光検出器111の受光面上には、BD光の迷光が掛からないBD光の信号光領域と、CD光の迷光が掛からないCD光の信号光領域が生じる。本実施例では、BD光の信号光領域の角部分に図11(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、また、CD光の信号光領域の角部分に図11(c)に示すセンサP31〜P38が配置される。これにより、BD光の信号光のみ、および、CD光の信号光のみが、BD用センサパターン(センサP21〜P28)およびCD用センサパターン(センサP31〜P38)で受光される。
【0060】
また、上記実施例では、BD光とCD光の発光点BE、CEとのギャップG1が数μmと微小であるため、図11(c)では、BD用センサパターンとCD用センサパターンを各々の中心が一致するよう配置したが、ギャップG1に応じて各々の中心を調整しても良い。特に、さらに高精度なサーボ信号が要求される場合には、ギャップG1に応じて各々の中心を調整すると良い。
【0061】
なお、本実施例では、図11(b)に示すギャップG1分だけ、BD光とCD光とに光軸ずれが生じている。このため、BD光が回折領域110a〜110dに均等に掛かるように分光素子110が配置されると、ギャップG1分だけずれた状態でCD光が分光素子110に入射する。この場合、回折領域110a〜110dによって分離されたCD光の4つの光束は、図11(c)に示すような4分の1円の扇型形状の状態でCD用センサパターン(センサP31〜P38)に入射せず、4分の1円からやや変形した形状でCD用センサパターンに入射する。しかし、CD光の光軸ずれは、上記のとおり数μm程度であるため、CD光の4つの光束は、受光面上において、4分の1円の扇型形状から大きく変形することはない。よって、この変形による光検出器111からの信号の誤差は殆ど問題とはならないものと考えられる。
【0062】
なお、回折領域110a〜110dに配される回折パターンは、DVD光に対する0次の回折効率が高く、BD光とCD光に対する−1次の回折効率が高くなるよう構成される。ステップ型の回折パターンでは、回折効率は、回折パターンのステップ数と1ステップあたりの段差により調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。本実施例では、たとえば、5段ステップ型の回折パターンが用いられる。
【0063】
図14は、5段ステップ型の回折パターンにおける、1ステップあたりの段差と回折効率との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のBの大きさに設定することで、DVD光に対する0次の回折効率を90%以上、BD光に対する−1次の回折効率を80%以上、CD光に対する−1次の回折効率を60%以上とすることができる。
【0064】
なお、回折領域110a〜110dに配される回折パターンのステップ数を他のステップ数にすることもできる。図15は、4段ステップ型の回折パターンにおける、1ステップあたりの段差と回折効率との関係との関係をシミュレーションした特性図である。この場合、1ステップあたりの段差を図中のCの大きさに設定することで、DVD光に対する0次の回折効率を略100%にでき、また、BD光に対する−1次の回折効率を70%以上、CD光に対する−1次の回折効率を50%以上とすることができる。
【0065】
このように、本実施例では、DVD光に対する回折領域110a〜110dの0次の回折効率が高く設定されているため、DVD光は、分光素子110により略回折されずに、光検出器111へと導かれる。光検出器111には、図11(c)に示すように、回折されずに分光素子110を透過したDVD光のメインビームMと、2つのサブビームS1、S2をそれぞれ受光する3つの4分割センサP41〜P43(DVD用センサパターン)が配されている。ここで、DVD用センサパターンと、BD用センサパターンおよびCD用センサパターンとの間隔S1は、図11(b)に示すギャップG2に相当する。すなわち、発光点間のギャップG2に応じてセンサパターン間の間隔S1が設定され、あるいは、逆に、センサパターン間の間隔S1に応じて発光点間のギャップS1が設定される。そうして、BD光、CD光およびDVD光が、図11(c)の各センサパターンに適正に照射されるよう、半導体レーザ101と光検出器111の位置調整が行われ、また、光軸を中心とする回折格子102の回転位置が調整される。
【0066】
なお、本実施例では、DVD光には、上記技術的原理による構成が適用されずに、従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法による構成が適用されている。したがって、DVD用センサパターンを構成する3つの4分割センサには、DVD光の迷光が掛かることになる。このように、DVD光については従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法を適用したのは、以下の理由による。
【0067】
DVDのうちDVD−RAMは、トラックピッチが他のDVDに比べてかなり大きい。このため、DVD−RAMのトラック上にDVD光を収束させると、DVDから反射されたDVD光のビーム光束に占めるトラック像の割合が大きくなる。こうなると、1ビームプッシュプル法では、プッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を精度よく生成することが難しくなる。この理由から、本実施例では、プッシュプル信号の生成手法として3ビーム法が適用されている。
【0068】
この場合、3つに分割されたメインビームと2つのサブビームに対し、上記技術的原理による構成を適用することも考えられる。しかし、こうなると、分光素子110を3ビームに適合するように構成する必要があり、分光素子110の複雑化を招く。また、分光素子110を3つのビームに対して精度よく位置調整する必要があるため、位置調整作業の煩雑さを招く。
【0069】
このような理由から、本実施例では、DVD光については従前の非点収差法および3ビームプッシュプル法が適用される。こうすることで、BDとCDに対して光ピックアップ装置が用いられる場合には、迷光による信号劣化を回避でき、また、DVD−RAMに対しても、不具合なく光ピックアップ装置が用いられ得る。
【0070】
以上、本実施例によれば、BD用センサパターンとCD用センサパターンに対して不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、この効果を、分光素子110を検出レンズ109と光検出器111との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、BD用センサパターンとCD用センサパターンに迷光が入射するのを防止することができる。
【0071】
また、本実施例では、略2倍の波長差があるBD光とCD光に対して分光素子110を作用させたため、上記のようにBD光とCD光をともに、−1次の回折により分光させた場合にも、回折角の差を大きくとることができる。このため、受光面上において、CD光の信号光領域をBD光の信号光領域よりも大きく広げることができ、BD用センサパターンとCD用センサパターンを配置し易いとの効果が奏され得る。
【0072】
また、本実施例では、分離されたBD光の光束とCD光の光束が、それぞれ、光検出器111の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子110が構成されているため、BD光とCD光の信号光領域がコンパクトになり、よって、BD用センサパターンとCD用センサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0073】
さらに、本実施例では、DVD光については、フォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)の生成手法として、従前の非点収差法と3ビームプッシュプル法を適用したため、分光素子110の構成の複雑化および配置調整の煩雑化を招くことなく、DVD−RAMに対しても適正にフォーカスエラー信号およびプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0074】
また、本実施例では、同一CAN内に、BD光、CD光およびDVD光を出射するレーザ光素子を収容する構成としたため、光学系の構成を簡素にすることができる。このとき、BD光とCD光の発光点BE、CEが接近して配置されているため、これらレーザ光の光軸を整合させずとも、BD光とCD光を、それぞれ、BD用センサパターン(センサP21〜P28)とCD用センサパターン(センサP31〜P34)に導くことができる。
【0075】
また、DVD光の発光点DEと、BD光とCD光の発光点BE、CEとのギャップG2が、DVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)と、BD用センサパターン(センサP21〜P28)およびCD用センサパターン(センサP31〜P34)との間隔S1に応じて設定されているため、別途、光学素子を配することなく、DVD光をDVD用センサパターン(4分割センサP41〜P43)に導くことができる。
【0076】
以上、上記原理に基づく実施例について説明したが、上記原理による効果は、図16に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面Sよりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図8に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0077】
本発明の実施形態は、上記以外に種々の変更が可能である。
【0078】
たとえば、上記実施例では、一つの対物レンズ106に、BD光、CD光およびDVD光を入射させるようにしたが、BD光、CD光およびDVD光を異なる対物レンズに入射させるようにしても良い。たとえば、図17(a)に示すように、BD光を対物レンズ123に入射させ、CD光とDVD光を対物レンズ126に入射させるようにしても良い。この場合、BD光は、ダイクロイックプリズム121を透過した後、1/4波長板122を介して対物レンズ123に入射し、CD光とDVD光は、ダイクロイックプリズム121により反射された後、ミラー124により反射され、1/4波長板125を介して対物レンズ126に入射する。対物レンズ123は、BDに対してBD光を適正に収束させるよう構成され、対物レンズ126は、CDおよびDVDに対して、それぞれ、CD光とDVD光を適正に収束させるよう構成される。また、対物レンズ123、126は、ホルダ127に保持され、アクチュエータ128により一体的に駆動される。
【0079】
また、上記実施例では、BD用センサパターン、CD用センサパターンおよびDVD用センサパターンが、別々に配されたが、図17(b)に示すように、CD用センサパターンの一部と、DVD用センサパターンの一部が、同じセンサを共用するようにしても良い。ここでは、メインビームMを受光するセンサP40が、4分割センサの各センサをさらに2分割した8分割センサにより構成され、かかる8分割センサの左側の2つのセンサP40a、P40bが、CD光の右側の分割光束を受光するセンサとして共用されている。この構成によれば、センサパターン間の間隔S1を小さくできるため、センサパターン全体のサイズをコンパクトにすることができる。
【0080】
さらに、上記実施例では、BD光、CD光およびDVD光を出射する各レーザ素子がモノリシック型にて実装された構成例が示されたが、図17(c)に示すように、これらレーザ素子を、ハイブリッド型にて実装しても良い。
【0081】
なお、上記実施例では、光軸ずれが生じたままBD光とCD光を分光素子110に入射させたが、CD光とBD光を、光軸を整合させた状態で、分光素子110に入射させても良い。この場合、たとえば、図18(a)に示すように、透明な平行平板130を用いてCD光とBD光の光軸を整合させることができる。
【0082】
同図(b)は、平行平板130による光軸ずれ補正作用を説明する図である。
【0083】
平行平板130の厚みをt、光軸に対する傾きをa、屈折率をnとしたとき、平行平板130による光軸のシフト量h(平行平板130をレーザ光が通過する前後の光軸の変位量)は、次式で表される。
【0084】
h=t/Cos(Sin−1(Sin(a)/n))*Sin(a)
ここで、平行平板130の屈折率nは光の波長に応じて変化するため、CD光(波長785nm)が通過するときと、BD光(波長405nm)が通過するときとでは、光軸のシフト量が変化する。すなわち、かかる波長の相違から、同図(b)に示す如く、BD光の光軸のシフト量は、CD用レーザ光の光軸のシフト量よりも大きくなる。
【0085】
したがって、BD光とCD光が同図に示すようにして平行平板130に入射すると、BD光とCD光のシフト量の差分だけ、BD光の光軸がCD光の光軸近づく。よって、上記式をもとに、平行平板130の厚みtと傾き角aを調整すれば、平行平板130を通過した後のBD光とCD光の光軸を整合させることができる。
【0086】
なお、この場合は、平行平板130の作用により、DVD光の光軸もシフトするが、図11(b)に示す如く、DVD光の発光点DEは、BD光の発光点BEとCD光の発光点CEが並ぶ方向と垂直な方向に配置されているため、平行平板130の作用によりDVD光の光軸がシフトしても、DVD光の光軸がBD光とCD光の光軸に近づくことはない。
【0087】
図18(a)の変更例によれば、BD光とCD光を、光軸が整合された状態で、分光素子110の回折領域110a〜110dに均等に入射させることができる。よって、BD光とCD光の何れについても、図17(b)に示す如く、歪みのない4分の1円の形状で、対応するセンサパターンに入射させることができる。よって、光検出器111から出力される信号の精度をさらに高めることができる。なお、平行平板はPBSと分光素子との間に配置してもよく、さらにPBSを平板形状とすることで機能を一体化することもできる。
【0088】
また、上記実施例では、分光素子110が検出レンズ109の後段に配されたが、分光素子110を検出レンズ109の前段に配しても良い。また、上記実施例では、対物レンズ106に対してCD光を無限系で入射させたが、有限系にてCD光を対物レンズ106に入射させる構成であっても良い。この場合も、CD光の迷光がCD用センサパターンに入射するのを防止することができる。
【0089】
さらに、上記実施例では、DVD光について、3ビームプッシュプル法を用いたが、DVD光について、インライン方式を用いても良い。この場合、図11(c)に示すDVD光用の3つの4分割センサは上下一列に並び、回折格子102は、分割後のビームに位相差を持たせるインライン方式の回折格子に変更される。
【0090】
また、本発明に係る光ピックアップ装置は、対物レンズの設計を変えることで、BDと類似の波長帯のレーザ光を用いるCBHD(China Blue High-definition Disc)と、CDおよびDVDの互換型光ピックアップ装置に置き換えることができる。請求項における「BD用レーザ光」および「BD」は、それぞれ、「CBHD用レーザ光」および「CBHD」を、均等の範囲として含むものである。
【0091】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0092】
101 半導体レーザ
102 回折格子
106 対物レンズ
109 検出レンズ(非点収差素子)
110 分光素子
111 光検出器
P21〜P28 センサ(第1のセンサパターン)
P31〜P38 センサ(第2のセンサパターン)
P41〜P43 センサ(第3のセンサパターン)
P40 センサ(第2のセンサパターン、第3のセンサパターン)
130 平行平板(光軸補正素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BD用レーザ光を出射する第1の光源と、
CD用レーザ光を出射する第2の光源と、
前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光をそれぞれBDとCD上に収束させる対物レンズ部と、
前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を受光する一つの光検出器と、
前記第1の光源および前記第2の光源からそれぞれ出射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を前記光検出器に導く光学系とを備え、
前記光学系は、
前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、
前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、4分割されたBD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させるとともに、4分割されたCD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させる分光素子と、を含み、
前記光検出器は、
前記分光素子によって離散された前記BD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第1のセンサパターンと、
前記分光素子によって離散された前記CD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第2のセンサパターンと、を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、分離されたBD用レーザ光の光束と分離されたCD用レーザ光の光束が、それぞれ、前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
DVD用レーザ光を出射する第3の光源をさらに備え、
前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、出射方向が同じとなるように、所定のギャップをもって、同一筐体内に配置され、
前記光学系は、前記第3の光源から出射された前記DVD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、DVDによって反射された前記DVD用レーザ光を前記光検出器に導き、
さらに、前記光学系は、前記BD用レーザ光、前記CD用レーザ光および前記DVD用レーザ光のうち、前記DVD用レーザ光をメインビームと2つのサブビームに分離する回折格子を備え、
前記光検出器は、回折されずに前記分光素子を透過した前記DVD用レーザ光の前記メインビームと2つの前記サブビームをそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第3のセンサパターンを備え、
前記DVD用レーザ光の前記メインビームと2つの前記サブビームが前記第3のセンサパターンに導かれるよう、前記第1の光源および前記第2の光源と、前記第3の光源との間の前記ギャップが設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ピックアップ装置において、
前記第3のセンサパターンの一部と、前記第2のセンサパターンの一部が、同じセンサを共用している、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光ピックアップ装置において、
前記BD用レーザ光の光軸と前記CD用レーザ光の光軸とを互いに一致させる光軸補正素子をさらに備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記対物レンズ部は、前記BD用レーザ光、前記CD用レーザ光および前記BD用レーザ光がともに入射される対物レンズを備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項1】
BD用レーザ光を出射する第1の光源と、
CD用レーザ光を出射する第2の光源と、
前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光をそれぞれBDとCD上に収束させる対物レンズ部と、
前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を受光する一つの光検出器と、
前記第1の光源および前記第2の光源からそれぞれ出射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、前記BDと前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光と前記CD用レーザ光を前記光検出器に導く光学系とを備え、
前記光学系は、
前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、
前記BDおよび前記CDによってそれぞれ反射された前記BD用レーザ光および前記CD用レーザ光を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、4分割されたBD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させるとともに、4分割されたCD用レーザ光の光束を回折によって互いに離散させる分光素子と、を含み、
前記光検出器は、
前記分光素子によって離散された前記BD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第1のセンサパターンと、
前記分光素子によって離散された前記CD用レーザ光の4つの光束をそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第2のセンサパターンと、を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、分離されたBD用レーザ光の光束と分離されたCD用レーザ光の光束が、それぞれ、前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光ピックアップ装置において、
DVD用レーザ光を出射する第3の光源をさらに備え、
前記第1の光源、前記第2の光源および前記第3の光源は、出射方向が同じとなるように、所定のギャップをもって、同一筐体内に配置され、
前記光学系は、前記第3の光源から出射された前記DVD用レーザ光を前記対物レンズ部に導くとともに、DVDによって反射された前記DVD用レーザ光を前記光検出器に導き、
さらに、前記光学系は、前記BD用レーザ光、前記CD用レーザ光および前記DVD用レーザ光のうち、前記DVD用レーザ光をメインビームと2つのサブビームに分離する回折格子を備え、
前記光検出器は、回折されずに前記分光素子を透過した前記DVD用レーザ光の前記メインビームと2つの前記サブビームをそれぞれ受光して、再生信号と前記対物レンズ部の制御に用いるサーボ信号とを生成するための第3のセンサパターンを備え、
前記DVD用レーザ光の前記メインビームと2つの前記サブビームが前記第3のセンサパターンに導かれるよう、前記第1の光源および前記第2の光源と、前記第3の光源との間の前記ギャップが設定されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の光ピックアップ装置において、
前記第3のセンサパターンの一部と、前記第2のセンサパターンの一部が、同じセンサを共用している、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載の光ピックアップ装置において、
前記BD用レーザ光の光軸と前記CD用レーザ光の光軸とを互いに一致させる光軸補正素子をさらに備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項3ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記対物レンズ部は、前記BD用レーザ光、前記CD用レーザ光および前記BD用レーザ光がともに入射される対物レンズを備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−70751(P2011−70751A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223511(P2009−223511)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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