光ピックアップ装置
【課題】簡素な構成で、記録媒体により反射された記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光を分離することができ、且つ、記録/再生用レーザ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを抑止できる光ピックアップ装置を提供する。
【解決手段】ディスクDによって反射されたサーボ光SLと記録再生光RL1を、レーザ光軸の周りに4つの光束に区分し、各光束を回折させる。光検出器の検出面には、サーボ光SLの回折光を受光するセンサP21〜P28と、記録再生光RL1の回折光を受光するセンサP31〜P34が配されている。駆動信号により回折ホログラム106を光軸方向に変位させることによって、記録再生光RL1の焦点位置が光軸方向に変化する。これにより、記録再生光RL1が、信号層D2にフォーカスされる。
【解決手段】ディスクDによって反射されたサーボ光SLと記録再生光RL1を、レーザ光軸の周りに4つの光束に区分し、各光束を回折させる。光検出器の検出面には、サーボ光SLの回折光を受光するセンサP21〜P28と、記録再生光RL1の回折光を受光するセンサP31〜P34が配されている。駆動信号により回折ホログラム106を光軸方向に変位させることによって、記録再生光RL1の焦点位置が光軸方向に変化する。これにより、記録再生光RL1が、信号層D2にフォーカスされる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、記録層とサーボ層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。また、最近では、一つの記録層中の異なる深さ位置にレーザ光を収束させて記録を行う方式が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。この方式によれば、一つの記録層中に複数の信号層が形成される。このため、記録媒体の記録容量を高めることができる。なお、このような記録方式として、2つのレーザ光の干渉を利用する方式(マイクロホログラム方式:特許文献1)と、2光子吸収を利用する方式(2光子吸収方式:特許文献2)がある。
【0003】
これらの記録方式では、記録層中の所望の深さ位置にレーザ光を収束させながら所定の軌道に沿ってレーザ光を走査させるために、記録層とは別に、サーボ層が配されている。サーボ層には、案内用のトラックが形成され、このトラックに、サーボ用のレーザ光が収束される。たとえば、一つの対物レンズに対して、記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光が入射される。サーボ用のレーザ光の焦点スポットがサーボ層上のトラックを追従するように、対物レンズが制御される。これにより、記録/再生用のレーザ光の焦点スポットが、記録層中の所定の深さ位置を、トラックと同じ軌道で走査する。対物レンズに入射する際の記録/再生用レーザ光の発散角を調節することで、記録層中における記録/再生用レーザ光の焦点スポットの深さ位置が調節される。こうして、記録/再生用レーザ光の焦点スポットが、所定の深さ位置を、トラックと同じ軌道で走査するようになる。
【0004】
この場合、記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光は、互いに異なる波長に設定される。サーボ層は、サーボ用のレーザ光に対しては高い反射率を有するが、記録/再生用のレーザ光に対しては低い反射率を有する材料から形成される。このため、記録媒体に記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光が同時に入射しても、記録層には、実質的に記録/再生用のレーザ光のみが入射するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−287754号公報
【特許文献2】特開2009−104717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成によれば、サーボ層によって反射されたサーボ用のレーザ光と、信号層によって反射された記録/再生用のレーザ光が、一つの対物レンズを透過して、同じ光路を進むこととなる。このため、これら2つのレーザ光を分離して、それぞれ対応する光検出器に導くための構成が必要となる。
【0007】
また、記録層中には複数の信号層が深さ方向に存在するため、このうち一つの信号層(ターゲット信号層)に記録/再生用のレーザ光を収束させても、当該ターゲット信号層にて反射されたレーザ光(信号光)の他に、他の信号層にて反射されたレーザ光(迷光)が光検出器に導かれてしまう。このため、上記構成では、迷光が、信号光用の光検出器に入射するのを抑止するための構成が必要となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、記録媒体により反射された記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光を分離することができ、且つ、記録/再生用レーザ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、記録層とサーボ層が積層された記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップ装置に関する。本発明の光ピックアップ装置は、第1の波長を有する第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、前記第1および第2のレーザ光源から出射された前記第1および第2のレーザ光を前記記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記対物レンズによる前記第1のレーザ光の焦点位置を光軸方向に変化させる焦点位置調整器と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の光束を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、少なくとも前記第1のレーザ光の光束を4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第2のレーザ光の光束よりも外側を進むように、回折作用を付与する分光素子と、前記4つの光束に分離された前記第1のレーザ光を受光して再生信号を生成するための第1のセンサパターンと、前記第2のレーザ光を受光して前記対物レンズの制御に用いるサーボ信号を生成する第2のセンサパターンとを有する光検出器とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で、記録媒体により反射された記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光を分離することができ、且つ、記録/再生用のレーザ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを抑止できる光ピックアップ装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図5】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図6】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図7】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図8】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布状態の関係)を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図である。
【図11】実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図12】実施例1に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図13】実施例1に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図14】実施例2に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図15】実施例2に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図16】実施例2に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図17】実施例および本発明の技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図18】変更例に係る分光素子とセンサパターンの構成を示す図である。
【図19】変更例に係るセンサパターンの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0014】
<技術的原理>
まず、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。なお、ここでは、一つの記録層中に、信号層が、深さ方向に複数存在する記録媒体に対してレーザ光が照射される場合が想定されている。以下では、このように配された複数の信号層のうち、レーザ光が収束される信号層を特に、「ターゲット信号層」と称する。このような記録媒体は、上述のマイクロホログラム方式または2光子吸収方式による記録によって生成される。
【0015】
図1(a)は、ターゲット信号層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット信号層よりも一つ奥側にある信号層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット信号層よりも一つ手前にある信号層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット信号層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0016】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。
【0017】
なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”においてアナモレンズが曲率を持っていても良い。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0018】
同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0019】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0020】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0021】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0022】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0023】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0024】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2、6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0025】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0027】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0028】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0029】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0030】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサパターンにて受光するように構成すると、対応するセンサパターンには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0033】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0034】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。ここで、トラック方向は、平面方向および曲面方向に対して45°の傾きを持っている。なお、同図(a)および(b)では、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、同図(a)、(b)、(d)では、トラック溝による回折の像(トラック像)が実線で示され、同図(b)、(d)では、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0035】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0036】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PP(トラッキングエラー信号)は、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0037】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0038】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0039】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部(2分割センサ)によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0040】
加えて、本原理によれば、信号光領域に配された各センサからの信号を加算することにより、再生RF信号が生成され得る。上記の如く、信号光領域には迷光が重ならないため、こうして得られた再生RF信号は、高品質なものとなる。
【0041】
<実施例1>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。なお、本実施例は、上記マイクロホログラム方式の記録媒体に対応可能な光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。ここでは、記録媒体としてディスクが用いられる。
【0042】
図11(a)に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。レーザ光源101は、波長660nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「サーボ光」という)を出射する。レーザ光源102は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「記録再生光」という)を出射する。ダイクロイックプリズム103は、レーザ光源101から出射されたサーボ光を透過し、レーザ光源102から出射された記録再生光を反射する。ダイクロイックプリズム103により、サーボ光と記録再生光は光軸が整合される。
【0043】
104は、無偏光のビームスプリッタである。ダイクロイックプリズム103側からビームスプリッタ104に入射したサーボ光および記録再生光は、一部がビームスプリッタ104により反射され、残りがビームスプリッタを透過する。以下、本実施例において、ビームスプリッタ104にて反射されたサーボ光および記録再生光を、それぞれ、サーボ光SLおよび記録再生光RL1と称し、ビームスプリッタ104を透過した記録再生光を、記録再生光RL2と称する。
【0044】
ビームスプリッタ104により反射されたサーボ光SLおよび記録再生光RL1は、コリメートレンズ105により平行光に変換された後、回折ホログラム106に入射される。
【0045】
回折ホログラム106は、サーボ光SLと記録再生光RL1のうち、記録再生光RL1の波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム106は、記録再生光RL1を所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム106は、アクチュエータ106aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ107による記録再生光RL1の焦点位置は、回折ホログラム106を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム106を透過したサーボ光SLと記録再生光RL1は、対物レンズ107により、ディスクD上に収束される。
【0046】
ビームスプリッタ104を透過した記録再生光RL2は、コリメートレンズ108にて平行光に変換された後、ミラー109を介してシャッタ110に入射する。シャッタ110は、駆動信号により、記録再生光RL2を透過させる状態と、記録再生光RL2を遮光する状態に切り替えられる。シャッタ110は、記録時には透過状態とされ、再生時には遮光状態とされる。シャッタ110を透過した記録再生光RL2は、ミラー111、112を介して回折ホログラム113に入射する。
【0047】
回折ホログラム113は、記録再生光RL2の波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム113は、記録再生光RL2を所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム113は、アクチュエータ113aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ114による記録再生光RL2の焦点位置は、回折ホログラム113を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム113を透過した記録再生光RL2は、対物レンズ114により、ディスクD上に収束される。
【0048】
図11(b)は、ディスクDに対するサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の照射状態を示す図である。ディスクDは、一つの記録層D0とサーボ層D1を備える。サーボ層D1は、記録層D0の対物レンズ107側の面に配されている。また、サーボ層D1には、ディスクDの内周から外周に向かって螺旋状にトラックTが形成されている。サーボ層D1は、サーボ光SLに対しては高い反射率を有するが、記録再生光RL1に対しては低い反射率を有する材料から形成されている。
【0049】
記録時において、対物レンズ107は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により、サーボ光SLがトラックT上にフォーカスされ、サーボ光SLの焦点スポットがトラックTを追従するように駆動される。このとき、記録再生光RL1は、回折ホログラム106によって、記録層D0中の所定の深さ位置にフォーカスされる。また、対物レンズ114は、対物レンズ107に連動して駆動される。たとえば、対物レンズ114は、対物レンズ107と一体化され、対物レンズ107とともに一体的に駆動される。対物レンズ114から入射される記録再生光RL2は、回折ホログラム113によって、記録層D0中の、記録再生光RL1と同じ深さ位置にフォーカスされる。こうして、記録再生光RL1、RL2が同じ深さ位置にフォーカスされ、この位置に干渉による記録マークが形成される。これにより、記録層D0中の所定の深さ位置に信号層D2が形成される。
【0050】
図11(a)に戻り、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、入射時の光路を逆行してビームスプリッタ104に入射し、一部が検出レンズ115に入射する。検出レンズ115は、入射したサーボ光SLに非点収差を導入する。非点収差が導入されたサーボ光SLは、分光素子116に入射する。なお、検出レンズ115は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0051】
分光素子116には、入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子116は、かかる回折パターンによって、図9(a)に示すように、入射されたサーボ光SLを4つの光束に区分し、各光束の進行方向を変化させる。なお、分光素子116の構成および機能については、追って図12を参照して説明する。
【0052】
一方、ディスクDに照射された記録再生光RL1、RL2は、ビームスプリッタ103から対物レンズ107までの光路、または、ビームスプリッタ103から対物レンズ114までの光路を進んで、ビームスプリッタ104に入射し、一部が検出レンズ115へと向かう。検出レンズ115に入射した記録再生光RL1、RL2は、サーボ光SLと同様、検出レンズ115により非点収差が導入される。その後、記録再生光RL1、RL2は、分光素子116によって回折され、4つの光束に分離される。
【0053】
こうして分光素子116により分離されたサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117により受光される。このとき、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、受光面上において、それぞれ、図9(b)のように分布する。ただし、サーボ層D1は1層のみであるため、サーボ光SLの迷光は生じない。後述の如く、分光素子116によるサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の回折角は、互いに相違する。このため、サーボ光SLの信号光領域と、記録再生光RL1、RL2の信号光領域は、大きさが異なっている。本実施例では、記録再生光RL1、RL2の信号光領域が、サーボ光SLの信号光領域よりも大きくなっている。
【0054】
光検出器117は、図11(c)に示す如く、サーボ光SLの照射位置に配されたセンサP21〜P28と、記録再生光RL1、RL2の照射位置に配されたセンサP31〜P34を有する。これらセンサは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0055】
記録時には、レーザ光源101が常時発光され、また、レーザ光源102は、記録信号に応じてON/OFF制御される。このとき、シャッタ110は、透過状態とされる。よって、ディスクDには、サーボ光SLと、記録再生光RL1、RL2が照射される。記録再生光RL1、RL2の収束位置は、回折ホログラム106、113の位置を光軸方向に変位させることにより、所定の深さ位置に調整される。
【0056】
また、再生時には、レーザ光源101、102の両方が常時発光され、シャッタ110は、遮光状態とされる。よって、ディスクDには、記録再生光RL2は照射されず、サーボ光SLと、記録再生光RL1が照射される。このとき、記録再生光RL1の収束位置は、回折ホログラム106の位置を光軸方向に変位させることにより、再生対象の信号層(ターゲット信号層)の位置に合わされる。
【0057】
なお、記録時には、シャッタ110が透過状態に設定されるため、ビームスプリッタ104を透過したサーボ光もディスクDに照射される。しかし、このサーボ光は、サーボ層D1に対して大きくフォーカスがずれるため、このサーボ光がサーボ層D1により反射されて、光検出器117に入射されても、各センサから出力される信号に対する影響は無視できるものとなる。
【0058】
図12(a)は、分光素子116を検出レンズ115側から見たときの平面図である。
【0059】
分光素子116は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図示の如く、4つの回折領域116a〜116dに区分されている。これら回折領域116a〜116dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL1、RL2)が入射するよう、分光素子116が検出レンズ115の後段に配置される。
【0060】
回折領域116a〜116dは、入射されたサーボ光SLを、1次回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、入射された記録再生光RL1、RL2を2次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。また、各領域における1次回折角(サーボ光SL)は互いに同じであり、各領域における2次回折角(記録再生光RL1、RL2)も互いに同じとなっている。記録再生光RL1、RL2の2次回折角は、サーボ光SLの1次回折角よりも大きい。これにより、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117の受光面上で、それぞれ、図12(b)のように分布する。
【0061】
なお、回折領域116a〜116dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する2次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ブレーズ型の回折パターンにおいて、回折効率は、ホログラムパターンのブレーズ高さにより調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。
【0062】
図13は、ブレーズ高さと回折効率の関係のシミュレーション例である。この場合、回折領域116a〜116dの回折パターンは、ブレーズ高さが同図のAの値になるように設定される。これにより、サーボ光SLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率と、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する2次回折の回折効率の両方が、90%以上に確保できる。
【0063】
なお、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、サーボ光SLでは、回折次数×波長=660となり、記録再生光RL1、RL2では、回折次数×波長=910となる。よって、記録再生光RL1、RL2の回折角は、サーボ光SLの回折角の1.5倍程度になる。これにより、図12(b)に示す如く、サーボ光SLの信号光領域は、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の内側となる。
【0064】
本実施例では、サーボ光SLの信号光領域の角部分に、図11(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の角部分に、図11(c)に示すセンサP31〜P34が配置される。これにより、各センサによって、サーボ光SLの信号光のみを受光でき、記録再生光RL1、RL2の信号光のみを受光できる。
【0065】
記録時に、記録途中の信号層以外に既に記録済みの信号層が記録層中D0中に存在すると、当該記録済み信号層から反射された記録再生光RL1、RL2が迷光となって光検出器117に入射する。また、再生時には、再生対象のターゲット信号層以外の信号層から反射された記録再生光RL1が、迷光となって光検出器117に入射する。これらの場合、記録再生光RL1、RL2の迷光は、上記技術的原理で説明したように、光検出器117の受光面上において、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の周りに分布する(図12(b)参照)。
【0066】
上記のように、センサP21〜P28は、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域の角部に配置され、また、センサP31〜P34は、図12(b)に示す記録再生光RL1、RL2の信号光領域の角部に配置される。よって、記録再生光RL1、RL2の迷光が、センサP21〜P28およびセンサP31〜P34に入射することはない。
【0067】
なお、サーボ光SLは一つのサーボ層D1のみに反射されるため、サーボ光SLの迷光は生じない。したがって、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域の周りには、サーボ光SLの迷光は分布せず、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域内にのみ分布することになる。したがって、サーボ光SLの迷光が、記録再生光用のセンサP31〜P34に入射することはない。
【0068】
このように、本実施例によれば、図11(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子116を検出レンズ115と光検出器117との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる。
【0069】
また、本実施例では、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2が、それぞれ、光検出器117の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子116が構成されているため、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の信号光領域がコンパクトになり、よって、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2のセンサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0070】
なお、本実施例では、センサP21〜P28から出力される信号を、図10を参照して説明した方法で演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。なお、センサP31〜P34から出力される信号は、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号の生成には用いられず、再生RF信号の生成のために、単に、加算されるのみである。よって、センサP31〜P34は、センサP21〜P28のように2つのセンサで一つの光束を受光するよう構成されている必要はなく、上記の如く、一つの光束を一つのセンサで受光するよう構成されていれば良い。
【0071】
<実施例2>
本実施例は、上記2格子吸収方式の記録媒体に対応可能な光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。ここでも、記録媒体としてディスクが用いられる。
【0072】
図14(a)に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。レーザ光源201は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「サーボ光SL」という)を出射する。レーザ光源202は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「記録再生光RL」という)を出射する。ダイクロイックプリズム203は、レーザ光源201から出射されたサーボ光SLを透過し、レーザ光源202から出射された記録再生光RLを反射する。ダイクロイックプリズム203により、サーボ光SLと記録再生光RLは光軸が整合される。
【0073】
204は、偏光ビームスプリッタである。ダイクロイックプリズム203側から偏光ビームスプリッタ204に入射したサーボ光SLおよび記録再生光RLは、偏光ビームスプリッタ204により反射される。
【0074】
偏光ビームスプリッタ204により反射されたサーボ光SLおよび記録再生光RLは、コリメートレンズ205により平行光に変換された後、回折ホログラム206に入射される。
【0075】
回折ホログラム206は、サーボ光SLと記録再生光RLのうち、記録再生光RLの波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム206は、記録再生光RLを所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム206は、アクチュエータ206aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ208による記録再生光RLの焦点位置は、回折ホログラム206を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム206を透過したサーボ光SLと記録再生光RLは、1/4波長板207により円偏光に変換された後、対物レンズ208により、ディスクD上に収束される。
【0076】
図14(b)は、ディスクDに対するサーボ光SLと記録再生光RLの照射状態を示す図である。ディスクDは、一つの記録層D0とサーボ層D1を備える。サーボ層D1は、記録層D0の対物レンズ208側の面に配されている。また、サーボ層D1には、ディスクDの内周から外周に向かって螺旋状にトラックTが形成されている。サーボ層D1は、サーボ光SLに対しては高い反射率を有するが、記録再生光RLに対しては低い反射率を有する材料から形成されている。
【0077】
記録・再生時において、対物レンズ208は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により、サーボ光SLがトラックT上にフォーカスされ、サーボ光SLの焦点スポットがトラックTを追従するように駆動される。このとき、記録再生光RLは、回折ホログラム206によって、記録層D0中の所定の深さ位置にフォーカスされる。
【0078】
すなわち、記録時には、レーザ光源201が常時発光されて、対物レンズ208の制御が行われる。このとき、記録再生光RLの収束位置は、回折ホログラム206の位置を光軸方向に変位させることにより、所定の深さ位置に調整される。この状態にて、レーザ光源202が、記録信号に応じて、短パルス、高出力で発光制御される。これにより、記録再生光RLの収束位置において2光子吸収が生じ、この位置に記録マークが形成される。こうして、記録層D0中に信号層D2が形成される。
【0079】
また、再生時には、レーザ光源201が常時発光されるとともに、レーザ光源102が、2光子吸収が生じない強度で発光される。このとき、記録再生光RLの収束位置は、回折ホログラム206の位置を光軸方向に変位させることにより、再生対象の信号層(ターゲット信号層)の位置に合わされる。
【0080】
図14(a)に戻り、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、入射時の光路を逆行して偏光ビームスプリッタ204に入射する。このとき、サーボ光SLは、再度、1/4波長板207を通ることにより、偏光ビームスプリッタ204に対しP偏光となっている。こうして、サーボ光SLは、偏光ビームスプリッタ204を透過して検出レンズ209に入射する。検出レンズ209は、入射したサーボ光SLに非点収差を導入する。非点収差が導入されたサーボ光SLは、分光素子210に入射する。なお、検出レンズ209は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0081】
分光素子210には、入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子210は、かかる回折パターンによって、図9(a)に示すように、入射されたサーボ光SLを4つの光束に区分し、各光束の進行方向を変化させる。なお、分光素子210の構成および機能は、図12で説明した分光素子116と同様である。ただし、本実施例の分光素子210は、回折次数と回折効率が、図12の分光素子116と相違している。これについては、追って、図15を参照して説明する。
【0082】
ディスクD中の信号層で反射された記録再生光RLは、入射時の光路を逆行して偏光ビームスプリッタ204に入射する。このとき、記録再生光RLは、再度、1/4波長板207を通ることにより、偏光ビームスプリッタ204に対しP偏光となっている。こうして、記録再生光RLは、偏光ビームスプリッタ204を透過して検出レンズ209に入射する。検出レンズ209は、入射した記録再生光RLに非点収差を導入する。その後、記録再生光RLは、分光素子210によって回折され、4つの光束に分離される。
【0083】
こうして分光素子210により分離されたサーボ光SLと記録再生光RLは、光検出器211により受光される。このとき、サーボ光SLと記録再生光RLは、受光面上において、それぞれ、図9(b)のように分布する。ただし、サーボ層D1は1層のみであるため、サーボ光SLの迷光は生じない。後述の如く、分光素子210によるサーボ光SLと記録再生光RLの回折角は、互いに相違する。このため、サーボ光SLの信号光領域と、記録再生光RLの信号光領域は、大きさが異なっている。本実施例では、上記実施例1と同様、記録再生光RLの信号光領域が、サーボ光SLの信号光領域よりも大きくなっている。
【0084】
図14(c)に示す如く、光検出器211は、上記実施例1の光検出器117と同様、サーボ光SLの照射位置に配されたセンサP21〜P28と、記録再生光RLの照射位置に配されたセンサP31〜P34を有する。これらセンサは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0085】
次に、図15を参照して分光素子210の構成および特性について説明する。なお、図15(a)は、分光素子210を検出レンズ209側から見た図である。
【0086】
分光素子210は、上記実施例1の分光素子116と同様、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図12(a)と同様、4つの回折領域210a〜210dに区分されている。これら回折領域210a〜210dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL)が入射するよう、分光素子210が検出レンズ209の後段に配置される。
【0087】
回折領域210a〜210dは、入射されたサーボ光SLを、1次回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、入射された記録再生光RLを1次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。記録再生光RLの回折角は、サーボ光SLの回折角よりも大きい。これにより、サーボ光SLと記録再生光RLは、光検出器211の受光面上で、それぞれ、図15(b)のように分布する。
【0088】
なお、回折領域210a〜210dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(405nm)に対する1次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ブレーズ型の回折パターンにおいて、回折効率は、ホログラムパターンのブレーズ高さにより調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。
【0089】
図16は、ブレーズ高さと回折効率の関係のシミュレーション例である。この場合、回折領域210a〜210dの回折パターンは、ブレーズ高さが同図のBの値になるように設定される。これにより、サーボ光SLの波長(405nm)に対する1次回折の回折効率と、記録再生光RLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率の両方が、80%以上に確保できる。
【0090】
実施例1の説明でも述べたように、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、サーボ光SLでは、回折次数×波長=405となり、記録再生光RLでは、回折次数×波長=660となる。よって、記録再生光RLの回折角は、サーボ光SLの回折角の1.5倍程度になる。これにより、図15(b)に示す如く、サーボ光SLの信号光領域は、記録再生光RLの信号光領域の内側となる。
【0091】
本実施例では、サーボ光SLの信号光領域の角部分に、図14(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、記録再生光RLの信号光領域の角部分に、図14(c)に示すセンサP31〜P34が配置される。これにより、上記実施例1と同様、各センサによって、サーボ光SLの信号光のみを受光でき、記録再生光RLの信号光のみを受光できる。
【0092】
このように、本実施例によれば、図14(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子210を検出レンズ209と光検出器211との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる。
【0093】
また、本実施例においても、サーボ光SLと記録再生光RLが、それぞれ、光検出器211の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子210が構成されているため、サーボ光SLと記録再生光RLの信号光領域がコンパクトになり、よって、サーボ光SLと記録再生光RLのセンサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0094】
なお、本実施例においても、上記実施例1と同様、センサP21〜P28から出力される信号を、図10を参照して説明した方法で演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。
【0095】
以上、上記原理に基づく2つの実施例について説明したが、上記原理による効果は、図17に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面Sよりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図8に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0096】
<変更例>
以下、上記実施例1、2の変更例について説明する。
【0097】
図18は、変更例1の構成を示す図である。本変更例では、上記実施例1における分光素子116の機能が変更され、これに応じて、光検出器117上のセンサパターンが変更されている。なお、この変更例は、実施例2にも同様に適用可能である。
【0098】
同図(a)は、分光素子116を検出レンズ115側から見た図である。分光素子116は、上記実施例1の場合と同様、正方形形状の透明板にて形成されている。ただし、本変更例では、分光素子116の光入射面に、ブレーズ型ではなくステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図12(a)と同様、4つの回折領域116a〜116dに区分されている。これら回折領域116a〜116dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL1、RL2)が入射するよう、分光素子116が検出レンズ115の後段に配置される。
【0099】
回折領域116a〜116dは、入射された記録再生光RL1、RL2を1次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させ、入射されたサーボ光SLは、ほぼ回折させずに直進させる。方向Va2〜Vd2は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。これにより、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117の受光面上で、それぞれ、図18(b)のように分布する。
【0100】
なお、回折領域116a〜116dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(660nm)に対する0次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する1次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ステップ型の回折パターン(回折ホログラム)において、回折効率は、回折ホログラムのステップ数と1ステップあたりの高さにより調整され、回折角度は、回折ホログラムのピッチにより調整される。本変更例では、たとえば、4ステップ型の回折ホログラムが用いられる。
【0101】
光検出器117のセンサパターンは、図18(b)に示す記録再生光RL1、RL2とサーボ光SLの分布に応じて、図18(c)のように変更される。すなわち、サーボ光受光用の4分割センサP41〜P44が、サーボ光SLの照射位置に配置される。4分割センサP41〜P44は、分割線の交点を、サーボ光SLの光軸が貫くように配置される。センサP31〜P34の配置は、上記実施例1と同様である。
【0102】
なお、本変更例では、センサP41〜P44から出力される信号を、従前の非点収差法および1ビームプッシュプル法に従って演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。
【0103】
本変更例においても、図18(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子116を検出レンズ115と光検出器117との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本変更例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを抑止することができる。
【0104】
図19は、変更例2の構成を示す図である。本変更例では、上記実施例1、2および変更例1における光検出器117、211の構成が変更されている。
【0105】
同図(a)では、上記実施例1、2における光検出器117、211のセンサパターンが変更されている。すなわち、ここでは、センサP31〜P34が、コネクタCにより短絡されている。
【0106】
同図(b)では、上記変更例1における光検出器117のセンサパターンが変更されている。すなわち、ここでは、センサP31〜P34が、コネクタCにより短絡されている。
【0107】
センサP31〜P34は、再生RF信号を生成するためのものであり、これら各センサからの信号が加算されて、再生RF信号が生成される。センサパターンP31〜P34を図19に示すように短絡すると、センサP31〜P34の何れか一つから信号を引き出すことにより、再生RF信号を得ることができる。したがって、これらセンサからの信号を別途加算するための加算器が不要となる。また、各センサからの信号を個別にI/V変換して加算器により加算する場合に比べ、I/V変換する際に生じるノイズを低減することができる。
【0108】
以上に述べた変更例の他にも、本発明の実施形態は種々変更可能である。
【0109】
たとえば、上記実施例1、2および変更例1、2では、サーボ光用のレーザ光源と記録再生光用のレーザ光源を個別に配置し、各レーザ光源から出射されたレーザ光をダイクロイックプリズムで結合するようにしたが、一つのCAN内に、サーボ光用のレーザ素子と記録再生光用のレーザ素子を配置して、サーボ光と記録再生光が、僅かなギャップにて、同じ方向に出射されるようにしても良い。この場合、各レーザ素子から出射されたサーボ光と記録再生光の光軸を、回折格子等によって整合させるようにするのが好ましい。
【0110】
また、上記実施例1、2および変更例1、2では、記録と再生の両方に用いられる光ピックアップ装置の構成を例示したが、再生専用の光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。この場合、たとえば、図11(a)に示す構成のうち、コリメートレンズ108〜対物レンズ114の構成が省略される。
【0111】
さらに、上記実施例1、2および変更例1、2では、回折ホログラム106、113、206を光軸方向に変位させることによって、記録再生光の焦点位置を光軸方向に変化させるようにしたが、液晶レンズ等、他の手段を用いて、記録再生光の焦点位置を光軸方向に変化させても良い。
【0112】
また、上記実施例1では、無偏光のビームスプリッタ104を用いたが、これに替えて、偏光ビームスプリッタを用いても良い。この場合、回折ホログラム106と対物レンズ107の間、および、回折ホログラム113と対物レンズ114の間に、それぞれ、1/4波長板が配される。これら2つの1/4波長板は、これにより円偏光に変換された記録再生光RL1、RL2が、記録層D0中で互いに干渉し合うように調整される。
【0113】
また、上記実施例1、2および変更例1、2では、分光素子116、210が検出レンズ115、209の後段に配されたが、分光素子116、210を検出レンズ115、209の前段に配しても良い。
【0114】
さらに、記録媒体は、ディスクに限らず、光カード等、他の媒体であっても良い。本発明は、光カード等の他の媒体に対応する光ピックアップ装置にも適用され得る。
【0115】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
101、201 レーザ光源(第2のレーザ光源)
102、202 レーザ光源(第1のレーザ光源)
106、206 回折ホログラム(焦点位置調整器)
106a、206a アクチュエータ(焦点位置調整器)
107、208 対物レンズ
115、209 検出レンズ(非点収差素子)
116、210 分光素子
117、211 光検出器
P21〜P28 センサ(第2のセンサパターン)
P31〜P34 センサ(第1のセンサパターン)
P41〜P44 センサ(第2のセンサパターン)
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ピックアップ装置に関するものであり、特に、記録層とサーボ層が積層された記録媒体に対してレーザ光を照射する際に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光ディスクの大容量化に伴い、記録層の多層化が進んでいる。また、最近では、一つの記録層中の異なる深さ位置にレーザ光を収束させて記録を行う方式が提案されている(たとえば、特許文献1、2参照)。この方式によれば、一つの記録層中に複数の信号層が形成される。このため、記録媒体の記録容量を高めることができる。なお、このような記録方式として、2つのレーザ光の干渉を利用する方式(マイクロホログラム方式:特許文献1)と、2光子吸収を利用する方式(2光子吸収方式:特許文献2)がある。
【0003】
これらの記録方式では、記録層中の所望の深さ位置にレーザ光を収束させながら所定の軌道に沿ってレーザ光を走査させるために、記録層とは別に、サーボ層が配されている。サーボ層には、案内用のトラックが形成され、このトラックに、サーボ用のレーザ光が収束される。たとえば、一つの対物レンズに対して、記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光が入射される。サーボ用のレーザ光の焦点スポットがサーボ層上のトラックを追従するように、対物レンズが制御される。これにより、記録/再生用のレーザ光の焦点スポットが、記録層中の所定の深さ位置を、トラックと同じ軌道で走査する。対物レンズに入射する際の記録/再生用レーザ光の発散角を調節することで、記録層中における記録/再生用レーザ光の焦点スポットの深さ位置が調節される。こうして、記録/再生用レーザ光の焦点スポットが、所定の深さ位置を、トラックと同じ軌道で走査するようになる。
【0004】
この場合、記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光は、互いに異なる波長に設定される。サーボ層は、サーボ用のレーザ光に対しては高い反射率を有するが、記録/再生用のレーザ光に対しては低い反射率を有する材料から形成される。このため、記録媒体に記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光が同時に入射しても、記録層には、実質的に記録/再生用のレーザ光のみが入射するようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−287754号公報
【特許文献2】特開2009−104717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記構成によれば、サーボ層によって反射されたサーボ用のレーザ光と、信号層によって反射された記録/再生用のレーザ光が、一つの対物レンズを透過して、同じ光路を進むこととなる。このため、これら2つのレーザ光を分離して、それぞれ対応する光検出器に導くための構成が必要となる。
【0007】
また、記録層中には複数の信号層が深さ方向に存在するため、このうち一つの信号層(ターゲット信号層)に記録/再生用のレーザ光を収束させても、当該ターゲット信号層にて反射されたレーザ光(信号光)の他に、他の信号層にて反射されたレーザ光(迷光)が光検出器に導かれてしまう。このため、上記構成では、迷光が、信号光用の光検出器に入射するのを抑止するための構成が必要となる。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で、記録媒体により反射された記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光を分離することができ、且つ、記録/再生用レーザ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる光ピックアップ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、記録層とサーボ層が積層された記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップ装置に関する。本発明の光ピックアップ装置は、第1の波長を有する第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、前記第1および第2のレーザ光源から出射された前記第1および第2のレーザ光を前記記録媒体上に収束させる対物レンズと、前記対物レンズによる前記第1のレーザ光の焦点位置を光軸方向に変化させる焦点位置調整器と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の光束を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、少なくとも前記第1のレーザ光の光束を4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第2のレーザ光の光束よりも外側を進むように、回折作用を付与する分光素子と、前記4つの光束に分離された前記第1のレーザ光を受光して再生信号を生成するための第1のセンサパターンと、前記第2のレーザ光を受光して前記対物レンズの制御に用いるサーボ信号を生成する第2のセンサパターンとを有する光検出器とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡素な構成で、記録媒体により反射された記録/再生用のレーザ光とサーボ用のレーザ光を分離することができ、且つ、記録/再生用のレーザ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを抑止できる光ピックアップ装置を提供することができる。
【0011】
本発明の効果ないし意義は、以下に示す実施の形態の説明により更に明らかとなろう。ただし、以下の実施の形態は、あくまでも、本発明を実施する際の一つの例示であって、本発明は、以下の実施の形態によって何ら制限されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図2】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図3】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図4】実施形態に係る技術原理(光線の進み方)を説明する図である。
【図5】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図6】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図7】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図8】実施形態に係る技術原理(光束の分布状態)を説明する図である。
【図9】実施形態に係る技術原理(角度付与と光束の分布状態の関係)を説明する図である。
【図10】実施の形態に係るセンサパターンの配置方法を示す図である。
【図11】実施例1に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図12】実施例1に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図13】実施例1に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図14】実施例2に係る光ピックアップ装置の光学系を示す図である。
【図15】実施例2に係る分光素子の構成について説明する図である。
【図16】実施例2に係る分光素子の特性を説明する図である。
【図17】実施例および本発明の技術原理の好ましい適用範囲を示す図である。
【図18】変更例に係る分光素子とセンサパターンの構成を示す図である。
【図19】変更例に係るセンサパターンの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。
【0014】
<技術的原理>
まず、図1ないし図10を参照して、本実施の形態に適用される技術的原理について説明する。なお、ここでは、一つの記録層中に、信号層が、深さ方向に複数存在する記録媒体に対してレーザ光が照射される場合が想定されている。以下では、このように配された複数の信号層のうち、レーザ光が収束される信号層を特に、「ターゲット信号層」と称する。このような記録媒体は、上述のマイクロホログラム方式または2光子吸収方式による記録によって生成される。
【0015】
図1(a)は、ターゲット信号層によって反射されたレーザ光(信号光)が、平行光の状態でアナモレンズ等の非点収差素子に入射されたときの信号光と迷光の収束状態を示す図である。なお、“迷光1”は、レーザ光入射面側から見てターゲット信号層よりも一つ奥側にある信号層にて反射されたレーザ光であり、“迷光2”は、ターゲット信号層よりも一つ手前にある信号層にて反射されたレーザ光である。また、同図は、信号光がターゲット信号層にフォーカス合わせされたときの状態を示している。
【0016】
図示の如く、アナモレンズの作用により、図中の“曲面方向”に信号光が収束することによって面S1に焦線が生じ、さらに、この曲面方向に垂直な図中の“平面方向”に信号光が収束することによって面S2に焦線が生じる。そして、面S1と面S2の間の面S0において、信号光のスポットが最小(最小錯乱円)となる。非点収差法に基づくフォーカス調整では、面S0に光検出器の受光面が置かれる。
【0017】
なお、ここではアナモレンズにおける非点収差作用を簡単に説明するために、便宜上、“曲面方向”と“平面方向”と表現しているが、実際には、互いに異なる位置に焦線を結ぶ作用がアナモレンズによって生じれば良く、図1中の“平面方向”においてアナモレンズが曲率を持っていても良い。なお、アナモレンズに収束状態でレーザ光が入射する場合は、“平面方向”におけるアナモレンズの形状は直線状(曲率半径=∞)となり得る。
【0018】
同図(a)に示す如く、迷光1の焦線位置(同図では、非点収差素子による2つの焦線位置の間の範囲を“収束範囲”と示す)は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子に接近しており、また、迷光2の焦線位置は、信号光の焦線位置よりも非点収差素子から離れている。
【0019】
図1(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における信号光のビーム形状を示す図である。真円で非点収差素子に入射した信号光は、面S1上で楕円となり、面S0上で略真円となった後、面S2上にて再び楕円となる。ここで、面S1上のビーム形状と面S2上のビーム形状は、それぞれの長軸が互いに垂直の関係となっている。
【0020】
ここで、同図(a)および(b)のように、平行光部分におけるビームの外周に、反時計方向に8つの位置(位置1〜8:同図では丸囲み数字で表記)を設定すると、位置1〜8を通る光線は、非点収差素子によってそれぞれ収束作用を受ける。なお、位置4と位置8は、曲面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置しており、位置2と位置6は、平面方向に平行な直線にて平行光部分のビーム断面を2分割する場合の分割線上に位置している。位置1、3、5、7はそれぞれ、位置2、4、6、8によって区分される外周円弧の中間にある。
【0021】
平行光部分において位置4と位置8を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射する。このため、これら位置4、8を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置4、8を通る。同様に、平行光部分において位置1、3、5、7を通る光線も、面S1にて曲面方向の焦線へと収束された後に面S0へと入射するため、面S0上では、同図(d)に示す位置1、3、5、7を通る。これに対し、平行光部分において位置2、6を通る光線は、面S1で曲面方向の焦線へと収束されずに面S0へと入射する。このため、これら位置2、6を通る光線は、面S0上において、同図(d)に示す位置2、6を通る。
【0022】
図2(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光1のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光1の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線および平面方向の焦線の何れかに収束された後に面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0023】
図3(b)〜(e)は、それぞれ、平行光部分および面S1、S0、S2上における迷光2のビーム形状と光線通過位置を示す図である。同図(b)に示すように、迷光2の外周にも、上記信号光の場合と同様に8つの位置1〜8を設定すると、これら8つの位置1〜8を通る光線は、曲面方向の焦線と平面方向の焦線の何れへも収束されることなく面S0へと入射する。このため、平行光部分において位置1〜8を通る光線は、面S0上において、それぞれ、同図(d)に示す位置1〜8を通る。
【0024】
図4は、以上に説明した平行光部分および面S1、S0、S2上におけるビーム形状と光線の通過位置を、信号光、迷光1および迷光2を対比して示す図である。同図中の(c)の段を対比して分かるとおり、平行光部分において位置1を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束は、それぞれ、面S0上において、互いに異なる外周位置を通過する。同様に、平行光部分において位置3,4,5,7,8を通過した信号光、迷光1および迷光2の光束も、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光2の光束は、面S0において、同じ外周位置を通過する。この場合も、平行光部分において位置2,6を通過した信号光と迷光1の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過し、また、平行光部分において位置2、6を通過した迷光1と迷光2の光束は、面S0において、互いに異なる外周位置を通過する。
【0025】
次に、以上の現象を考慮して、平行光部分における信号光および迷光1、2の領域分割パターンと、面S0上における信号光および迷光1、2の照射領域との関係について検討する。
【0026】
まず、図5(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に対して45°傾いた2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。なお、この分割パターンは、従来の非点収差法に基づく領域分割に対応するものである。
【0027】
この場合、上述の現象により、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0028】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図6(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れか一方が必ず重なる。このため、各光束領域の信号光を光検出器上のセンサパターンで受光すると、少なくとも、同じ光束領域における迷光1または迷光2が対応するセンサパターンに同時に入射し、これにより検出信号に劣化が生じる。
【0029】
これに対し、図7(a)に示すように、平行光部分における信号光および迷光1、2を、平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で分割し、4つの光束領域A〜Dに区分したとする。この場合、上述の現象から、光束領域A〜Dの信号光は、面S0上において、同図(b)のように分布する。また、光束領域A〜Dの迷光1および迷光2は、上述の現象により、それぞれ、同図(c)および(d)のように分布する。
【0030】
ここで、面S0上における信号光と迷光1、2を光束領域毎に取り出すと、各光の分布は、図8(a)ないし(d)のようになる。この場合、各光束領域の信号光には、同じ光束領域の迷光1および迷光2の何れも重ならない。このため、各光束領域内の光束(信号光、迷光1、2)を異なる方向に離散させた後に、信号光のみをセンサパターンにて受光するように構成すると、対応するセンサパターンには信号光のみが入射し、迷光の入射を抑止することができる。これにより、迷光による検出信号の劣化を回避することができる。
【0031】
以上のように、信号光および迷光1、2を平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させて面S0上において離間させることにより、信号光のみを取り出すことができる。本実施の形態は、この原理を基盤とするものである。
【0032】
図9は、図7(a)に示す4つの光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向を、それぞれ、異なる方向に、同じ角度だけ変化させたときの、面S0上における信号光と迷光1、2の分布状態を示す図である。ここでは、同図(a)に示すように、光束領域A〜Dを通る光束(信号光、迷光1、2)の進行方向が、それぞれ、方向Da、Db、Dc、Ddに、同じ角度量α(図示せず)だけ変化している。なお、方向Da、Db、Dc、Ddは、平面方向と曲面方向に対して、それぞれ、45°の傾きを持っている。
【0033】
この場合、方向Da、Db、Dc、Ddにおける角度量αを調節することにより、S0平面上において、同図(b)に示すように各光束領域の信号光と迷光1、2を分布させることができる。その結果、図示の如く、信号光のみが存在する信号光領域をS0平面上に設定することができる。この信号光領域に光検出器のセンサパターンを設定することにより、各領域の信号光のみを、対応するセンサパターンにて受光することができる。
【0034】
図10は、センサパターンの配置方法を説明する図である。同図(a)および(b)は、従来の非点収差法に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図であり、同図(c)および(d)は、上述の原理に基づく光束の分割方法とセンサパターンを示す図である。ここで、トラック方向は、平面方向および曲面方向に対して45°の傾きを持っている。なお、同図(a)および(b)では、説明の便宜上、光束が8つの光束領域a〜hに区分されている。また、同図(a)、(b)、(d)では、トラック溝による回折の像(トラック像)が実線で示され、同図(b)、(d)では、オフフォーカス時のビーム形状が点線によって示されている。
【0035】
なお、トラック溝による信号光の0次回折像と一次回折像の重なり状態は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)で求められることが知られており、同図(a)、(b)、(d)のように、4つの光束領域a、d、e、hに一次回折像が収まる条件は、波長/(トラックピッチ×対物レンズNA)>√2となる。
【0036】
従来の非点収差法では、光検出器のセンサP1〜P4(4分割センサ)が同図(b)のように設定される。この場合、光束領域a〜hの光強度に基づく検出信号成分をA〜Hで表すと、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PP(トラッキングエラー信号)は、
FE=(A+B+E+F)−(C+D+G+H) …(1)
PP=(A+B+G+H)−(C+D+E+F) …(2)
の演算により求まる。
【0037】
これに対し、上記図9(b)の分布状態では、上述の如く、信号光領域内に、図10(c)の状態で信号光が分布している。この場合、同図(a)に示す光束領域a〜hを通る信号光は、同図(d)のようになる。すなわち、同図(a)の光束領域a〜hを通る信号光は、光検出器のセンサパターンが置かれる面S0上では、同図(d)に示す光束領域a〜hへと導かれる。
【0038】
したがって、同図(d)に示す光束領域a〜hの位置に、同図(d)に重ねて示す如くセンサP11〜P18を設定すれば、同図(b)の場合と同様の演算処理によって、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号を生成することができる。すなわち、この場合も、光束領域a〜hの光束を受光するセンサパターンからの検出信号をA〜Hで表すと、同図(b)の場合と同様、フォーカスエラー信号FEとプッシュプル信号PPは、上記式(1)、(2)の演算により取得することができる。
【0039】
以上のように、本原理によれば、平行光部分における信号光および迷光1、2を、図1の平面方向と曲面方向に平行な2つの直線で4つの光束領域A〜Dに分割し、これら光束領域A〜Dを通る光を分散させ、さらに、分散させた後の各光束領域A〜Dにおける信号光を、2分割された受光部(2分割センサ)によって個別に受光することにより、従来の非点収差法に基づく場合と同様の演算処理にて、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)を生成することができる。
【0040】
加えて、本原理によれば、信号光領域に配された各センサからの信号を加算することにより、再生RF信号が生成され得る。上記の如く、信号光領域には迷光が重ならないため、こうして得られた再生RF信号は、高品質なものとなる。
【0041】
<実施例1>
以下、上記原理に基づく実施例について説明する。なお、本実施例は、上記マイクロホログラム方式の記録媒体に対応可能な光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。ここでは、記録媒体としてディスクが用いられる。
【0042】
図11(a)に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。レーザ光源101は、波長660nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「サーボ光」という)を出射する。レーザ光源102は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「記録再生光」という)を出射する。ダイクロイックプリズム103は、レーザ光源101から出射されたサーボ光を透過し、レーザ光源102から出射された記録再生光を反射する。ダイクロイックプリズム103により、サーボ光と記録再生光は光軸が整合される。
【0043】
104は、無偏光のビームスプリッタである。ダイクロイックプリズム103側からビームスプリッタ104に入射したサーボ光および記録再生光は、一部がビームスプリッタ104により反射され、残りがビームスプリッタを透過する。以下、本実施例において、ビームスプリッタ104にて反射されたサーボ光および記録再生光を、それぞれ、サーボ光SLおよび記録再生光RL1と称し、ビームスプリッタ104を透過した記録再生光を、記録再生光RL2と称する。
【0044】
ビームスプリッタ104により反射されたサーボ光SLおよび記録再生光RL1は、コリメートレンズ105により平行光に変換された後、回折ホログラム106に入射される。
【0045】
回折ホログラム106は、サーボ光SLと記録再生光RL1のうち、記録再生光RL1の波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム106は、記録再生光RL1を所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム106は、アクチュエータ106aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ107による記録再生光RL1の焦点位置は、回折ホログラム106を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム106を透過したサーボ光SLと記録再生光RL1は、対物レンズ107により、ディスクD上に収束される。
【0046】
ビームスプリッタ104を透過した記録再生光RL2は、コリメートレンズ108にて平行光に変換された後、ミラー109を介してシャッタ110に入射する。シャッタ110は、駆動信号により、記録再生光RL2を透過させる状態と、記録再生光RL2を遮光する状態に切り替えられる。シャッタ110は、記録時には透過状態とされ、再生時には遮光状態とされる。シャッタ110を透過した記録再生光RL2は、ミラー111、112を介して回折ホログラム113に入射する。
【0047】
回折ホログラム113は、記録再生光RL2の波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム113は、記録再生光RL2を所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム113は、アクチュエータ113aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ114による記録再生光RL2の焦点位置は、回折ホログラム113を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム113を透過した記録再生光RL2は、対物レンズ114により、ディスクD上に収束される。
【0048】
図11(b)は、ディスクDに対するサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の照射状態を示す図である。ディスクDは、一つの記録層D0とサーボ層D1を備える。サーボ層D1は、記録層D0の対物レンズ107側の面に配されている。また、サーボ層D1には、ディスクDの内周から外周に向かって螺旋状にトラックTが形成されている。サーボ層D1は、サーボ光SLに対しては高い反射率を有するが、記録再生光RL1に対しては低い反射率を有する材料から形成されている。
【0049】
記録時において、対物レンズ107は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により、サーボ光SLがトラックT上にフォーカスされ、サーボ光SLの焦点スポットがトラックTを追従するように駆動される。このとき、記録再生光RL1は、回折ホログラム106によって、記録層D0中の所定の深さ位置にフォーカスされる。また、対物レンズ114は、対物レンズ107に連動して駆動される。たとえば、対物レンズ114は、対物レンズ107と一体化され、対物レンズ107とともに一体的に駆動される。対物レンズ114から入射される記録再生光RL2は、回折ホログラム113によって、記録層D0中の、記録再生光RL1と同じ深さ位置にフォーカスされる。こうして、記録再生光RL1、RL2が同じ深さ位置にフォーカスされ、この位置に干渉による記録マークが形成される。これにより、記録層D0中の所定の深さ位置に信号層D2が形成される。
【0050】
図11(a)に戻り、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、入射時の光路を逆行してビームスプリッタ104に入射し、一部が検出レンズ115に入射する。検出レンズ115は、入射したサーボ光SLに非点収差を導入する。非点収差が導入されたサーボ光SLは、分光素子116に入射する。なお、検出レンズ115は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0051】
分光素子116には、入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子116は、かかる回折パターンによって、図9(a)に示すように、入射されたサーボ光SLを4つの光束に区分し、各光束の進行方向を変化させる。なお、分光素子116の構成および機能については、追って図12を参照して説明する。
【0052】
一方、ディスクDに照射された記録再生光RL1、RL2は、ビームスプリッタ103から対物レンズ107までの光路、または、ビームスプリッタ103から対物レンズ114までの光路を進んで、ビームスプリッタ104に入射し、一部が検出レンズ115へと向かう。検出レンズ115に入射した記録再生光RL1、RL2は、サーボ光SLと同様、検出レンズ115により非点収差が導入される。その後、記録再生光RL1、RL2は、分光素子116によって回折され、4つの光束に分離される。
【0053】
こうして分光素子116により分離されたサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117により受光される。このとき、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、受光面上において、それぞれ、図9(b)のように分布する。ただし、サーボ層D1は1層のみであるため、サーボ光SLの迷光は生じない。後述の如く、分光素子116によるサーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の回折角は、互いに相違する。このため、サーボ光SLの信号光領域と、記録再生光RL1、RL2の信号光領域は、大きさが異なっている。本実施例では、記録再生光RL1、RL2の信号光領域が、サーボ光SLの信号光領域よりも大きくなっている。
【0054】
光検出器117は、図11(c)に示す如く、サーボ光SLの照射位置に配されたセンサP21〜P28と、記録再生光RL1、RL2の照射位置に配されたセンサP31〜P34を有する。これらセンサは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0055】
記録時には、レーザ光源101が常時発光され、また、レーザ光源102は、記録信号に応じてON/OFF制御される。このとき、シャッタ110は、透過状態とされる。よって、ディスクDには、サーボ光SLと、記録再生光RL1、RL2が照射される。記録再生光RL1、RL2の収束位置は、回折ホログラム106、113の位置を光軸方向に変位させることにより、所定の深さ位置に調整される。
【0056】
また、再生時には、レーザ光源101、102の両方が常時発光され、シャッタ110は、遮光状態とされる。よって、ディスクDには、記録再生光RL2は照射されず、サーボ光SLと、記録再生光RL1が照射される。このとき、記録再生光RL1の収束位置は、回折ホログラム106の位置を光軸方向に変位させることにより、再生対象の信号層(ターゲット信号層)の位置に合わされる。
【0057】
なお、記録時には、シャッタ110が透過状態に設定されるため、ビームスプリッタ104を透過したサーボ光もディスクDに照射される。しかし、このサーボ光は、サーボ層D1に対して大きくフォーカスがずれるため、このサーボ光がサーボ層D1により反射されて、光検出器117に入射されても、各センサから出力される信号に対する影響は無視できるものとなる。
【0058】
図12(a)は、分光素子116を検出レンズ115側から見たときの平面図である。
【0059】
分光素子116は、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図示の如く、4つの回折領域116a〜116dに区分されている。これら回折領域116a〜116dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL1、RL2)が入射するよう、分光素子116が検出レンズ115の後段に配置される。
【0060】
回折領域116a〜116dは、入射されたサーボ光SLを、1次回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、入射された記録再生光RL1、RL2を2次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。また、各領域における1次回折角(サーボ光SL)は互いに同じであり、各領域における2次回折角(記録再生光RL1、RL2)も互いに同じとなっている。記録再生光RL1、RL2の2次回折角は、サーボ光SLの1次回折角よりも大きい。これにより、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117の受光面上で、それぞれ、図12(b)のように分布する。
【0061】
なお、回折領域116a〜116dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する2次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ブレーズ型の回折パターンにおいて、回折効率は、ホログラムパターンのブレーズ高さにより調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。
【0062】
図13は、ブレーズ高さと回折効率の関係のシミュレーション例である。この場合、回折領域116a〜116dの回折パターンは、ブレーズ高さが同図のAの値になるように設定される。これにより、サーボ光SLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率と、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する2次回折の回折効率の両方が、90%以上に確保できる。
【0063】
なお、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、サーボ光SLでは、回折次数×波長=660となり、記録再生光RL1、RL2では、回折次数×波長=910となる。よって、記録再生光RL1、RL2の回折角は、サーボ光SLの回折角の1.5倍程度になる。これにより、図12(b)に示す如く、サーボ光SLの信号光領域は、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の内側となる。
【0064】
本実施例では、サーボ光SLの信号光領域の角部分に、図11(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の角部分に、図11(c)に示すセンサP31〜P34が配置される。これにより、各センサによって、サーボ光SLの信号光のみを受光でき、記録再生光RL1、RL2の信号光のみを受光できる。
【0065】
記録時に、記録途中の信号層以外に既に記録済みの信号層が記録層中D0中に存在すると、当該記録済み信号層から反射された記録再生光RL1、RL2が迷光となって光検出器117に入射する。また、再生時には、再生対象のターゲット信号層以外の信号層から反射された記録再生光RL1が、迷光となって光検出器117に入射する。これらの場合、記録再生光RL1、RL2の迷光は、上記技術的原理で説明したように、光検出器117の受光面上において、記録再生光RL1、RL2の信号光領域の周りに分布する(図12(b)参照)。
【0066】
上記のように、センサP21〜P28は、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域の角部に配置され、また、センサP31〜P34は、図12(b)に示す記録再生光RL1、RL2の信号光領域の角部に配置される。よって、記録再生光RL1、RL2の迷光が、センサP21〜P28およびセンサP31〜P34に入射することはない。
【0067】
なお、サーボ光SLは一つのサーボ層D1のみに反射されるため、サーボ光SLの迷光は生じない。したがって、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域の周りには、サーボ光SLの迷光は分布せず、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、図12(b)に示すサーボ光SLの信号光領域内にのみ分布することになる。したがって、サーボ光SLの迷光が、記録再生光用のセンサP31〜P34に入射することはない。
【0068】
このように、本実施例によれば、図11(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子116を検出レンズ115と光検出器117との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる。
【0069】
また、本実施例では、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2が、それぞれ、光検出器117の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子116が構成されているため、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2の信号光領域がコンパクトになり、よって、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2のセンサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0070】
なお、本実施例では、センサP21〜P28から出力される信号を、図10を参照して説明した方法で演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。なお、センサP31〜P34から出力される信号は、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号の生成には用いられず、再生RF信号の生成のために、単に、加算されるのみである。よって、センサP31〜P34は、センサP21〜P28のように2つのセンサで一つの光束を受光するよう構成されている必要はなく、上記の如く、一つの光束を一つのセンサで受光するよう構成されていれば良い。
【0071】
<実施例2>
本実施例は、上記2格子吸収方式の記録媒体に対応可能な光ピックアップ装置に本発明を適用したものである。ここでも、記録媒体としてディスクが用いられる。
【0072】
図14(a)に、本実施例に係る光ピックアップ装置の光学系を示す。レーザ光源201は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「サーボ光SL」という)を出射する。レーザ光源202は、波長405nm程度のレーザ光(以下、本実施例において「記録再生光RL」という)を出射する。ダイクロイックプリズム203は、レーザ光源201から出射されたサーボ光SLを透過し、レーザ光源202から出射された記録再生光RLを反射する。ダイクロイックプリズム203により、サーボ光SLと記録再生光RLは光軸が整合される。
【0073】
204は、偏光ビームスプリッタである。ダイクロイックプリズム203側から偏光ビームスプリッタ204に入射したサーボ光SLおよび記録再生光RLは、偏光ビームスプリッタ204により反射される。
【0074】
偏光ビームスプリッタ204により反射されたサーボ光SLおよび記録再生光RLは、コリメートレンズ205により平行光に変換された後、回折ホログラム206に入射される。
【0075】
回折ホログラム206は、サーボ光SLと記録再生光RLのうち、記録再生光RLの波長帯の光のみに作用する。回折ホログラム206は、記録再生光RLを所定角度だけ発散させる機能と開口制限する機能を有している。また、回折ホログラム206は、アクチュエータ206aにより、駆動信号に応じて光軸方向に変位可能に支持されている。対物レンズ208による記録再生光RLの焦点位置は、回折ホログラム206を光軸方向に変位させることにより、深さ方向に調節可能である。回折ホログラム206を透過したサーボ光SLと記録再生光RLは、1/4波長板207により円偏光に変換された後、対物レンズ208により、ディスクD上に収束される。
【0076】
図14(b)は、ディスクDに対するサーボ光SLと記録再生光RLの照射状態を示す図である。ディスクDは、一つの記録層D0とサーボ層D1を備える。サーボ層D1は、記録層D0の対物レンズ208側の面に配されている。また、サーボ層D1には、ディスクDの内周から外周に向かって螺旋状にトラックTが形成されている。サーボ層D1は、サーボ光SLに対しては高い反射率を有するが、記録再生光RLに対しては低い反射率を有する材料から形成されている。
【0077】
記録・再生時において、対物レンズ208は、対物レンズアクチュエータ(図示せず)により、サーボ光SLがトラックT上にフォーカスされ、サーボ光SLの焦点スポットがトラックTを追従するように駆動される。このとき、記録再生光RLは、回折ホログラム206によって、記録層D0中の所定の深さ位置にフォーカスされる。
【0078】
すなわち、記録時には、レーザ光源201が常時発光されて、対物レンズ208の制御が行われる。このとき、記録再生光RLの収束位置は、回折ホログラム206の位置を光軸方向に変位させることにより、所定の深さ位置に調整される。この状態にて、レーザ光源202が、記録信号に応じて、短パルス、高出力で発光制御される。これにより、記録再生光RLの収束位置において2光子吸収が生じ、この位置に記録マークが形成される。こうして、記録層D0中に信号層D2が形成される。
【0079】
また、再生時には、レーザ光源201が常時発光されるとともに、レーザ光源102が、2光子吸収が生じない強度で発光される。このとき、記録再生光RLの収束位置は、回折ホログラム206の位置を光軸方向に変位させることにより、再生対象の信号層(ターゲット信号層)の位置に合わされる。
【0080】
図14(a)に戻り、サーボ層D1によって反射されたサーボ光SLは、入射時の光路を逆行して偏光ビームスプリッタ204に入射する。このとき、サーボ光SLは、再度、1/4波長板207を通ることにより、偏光ビームスプリッタ204に対しP偏光となっている。こうして、サーボ光SLは、偏光ビームスプリッタ204を透過して検出レンズ209に入射する。検出レンズ209は、入射したサーボ光SLに非点収差を導入する。非点収差が導入されたサーボ光SLは、分光素子210に入射する。なお、検出レンズ209は、上記技術的原理における非点収差素子に相当する。
【0081】
分光素子210には、入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。分光素子210は、かかる回折パターンによって、図9(a)に示すように、入射されたサーボ光SLを4つの光束に区分し、各光束の進行方向を変化させる。なお、分光素子210の構成および機能は、図12で説明した分光素子116と同様である。ただし、本実施例の分光素子210は、回折次数と回折効率が、図12の分光素子116と相違している。これについては、追って、図15を参照して説明する。
【0082】
ディスクD中の信号層で反射された記録再生光RLは、入射時の光路を逆行して偏光ビームスプリッタ204に入射する。このとき、記録再生光RLは、再度、1/4波長板207を通ることにより、偏光ビームスプリッタ204に対しP偏光となっている。こうして、記録再生光RLは、偏光ビームスプリッタ204を透過して検出レンズ209に入射する。検出レンズ209は、入射した記録再生光RLに非点収差を導入する。その後、記録再生光RLは、分光素子210によって回折され、4つの光束に分離される。
【0083】
こうして分光素子210により分離されたサーボ光SLと記録再生光RLは、光検出器211により受光される。このとき、サーボ光SLと記録再生光RLは、受光面上において、それぞれ、図9(b)のように分布する。ただし、サーボ層D1は1層のみであるため、サーボ光SLの迷光は生じない。後述の如く、分光素子210によるサーボ光SLと記録再生光RLの回折角は、互いに相違する。このため、サーボ光SLの信号光領域と、記録再生光RLの信号光領域は、大きさが異なっている。本実施例では、上記実施例1と同様、記録再生光RLの信号光領域が、サーボ光SLの信号光領域よりも大きくなっている。
【0084】
図14(c)に示す如く、光検出器211は、上記実施例1の光検出器117と同様、サーボ光SLの照射位置に配されたセンサP21〜P28と、記録再生光RLの照射位置に配されたセンサP31〜P34を有する。これらセンサは、図1に示す面S0上に配置されている。
【0085】
次に、図15を参照して分光素子210の構成および特性について説明する。なお、図15(a)は、分光素子210を検出レンズ209側から見た図である。
【0086】
分光素子210は、上記実施例1の分光素子116と同様、正方形形状の透明板にて形成され、光入射面にブレーズ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図12(a)と同様、4つの回折領域210a〜210dに区分されている。これら回折領域210a〜210dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL)が入射するよう、分光素子210が検出レンズ209の後段に配置される。
【0087】
回折領域210a〜210dは、入射されたサーボ光SLを、1次回折作用により方向Va1〜Vd1に回折させ、入射された記録再生光RLを1次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させる。方向Va1〜Vd1は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致しており、方向Va2〜Vd2もまた、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。記録再生光RLの回折角は、サーボ光SLの回折角よりも大きい。これにより、サーボ光SLと記録再生光RLは、光検出器211の受光面上で、それぞれ、図15(b)のように分布する。
【0088】
なお、回折領域210a〜210dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(405nm)に対する1次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ブレーズ型の回折パターンにおいて、回折効率は、ホログラムパターンのブレーズ高さにより調整され、回折角度は、回折パターンのピッチにより調整される。
【0089】
図16は、ブレーズ高さと回折効率の関係のシミュレーション例である。この場合、回折領域210a〜210dの回折パターンは、ブレーズ高さが同図のBの値になるように設定される。これにより、サーボ光SLの波長(405nm)に対する1次回折の回折効率と、記録再生光RLの波長(660nm)に対する1次回折の回折効率の両方が、80%以上に確保できる。
【0090】
実施例1の説明でも述べたように、回折角は、回折次数に波長を乗じた値に比例する。本実施例では、サーボ光SLでは、回折次数×波長=405となり、記録再生光RLでは、回折次数×波長=660となる。よって、記録再生光RLの回折角は、サーボ光SLの回折角の1.5倍程度になる。これにより、図15(b)に示す如く、サーボ光SLの信号光領域は、記録再生光RLの信号光領域の内側となる。
【0091】
本実施例では、サーボ光SLの信号光領域の角部分に、図14(c)に示すセンサP21〜P28が配置され、記録再生光RLの信号光領域の角部分に、図14(c)に示すセンサP31〜P34が配置される。これにより、上記実施例1と同様、各センサによって、サーボ光SLの信号光のみを受光でき、記録再生光RLの信号光のみを受光できる。
【0092】
このように、本実施例によれば、図14(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子210を検出レンズ209と光検出器211との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本実施例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを防止することができる。
【0093】
また、本実施例においても、サーボ光SLと記録再生光RLが、それぞれ、光検出器211の受光面上において、正方形の異なる4つの頂角の位置に導かれるように、分光素子210が構成されているため、サーボ光SLと記録再生光RLの信号光領域がコンパクトになり、よって、サーボ光SLと記録再生光RLのセンサパターンの配置領域をコンパクトにすることができる。
【0094】
なお、本実施例においても、上記実施例1と同様、センサP21〜P28から出力される信号を、図10を参照して説明した方法で演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。
【0095】
以上、上記原理に基づく2つの実施例について説明したが、上記原理による効果は、図17に示すように、迷光1の平面方向の焦線位置が面S0(信号光のスポットが最小錯乱円となる面)よりも非点収差素子に接近した位置にあり、且つ、迷光2の曲面方向の焦線位置が面Sよりも非点収差素子から離れた位置にあるときに奏され得るものである。すなわち、この関係が満たされていれば、信号光と迷光1、2の分布は上記図8に示す状態となり、面S0において、信号光と迷光1、2が重なり合わないようすることができる。換言すれば、この関係が満たされる限り、たとえ、信号光の曲面方向の焦線位置よりも迷光1の平面方向の焦線位置が面S0に接近し、あるいは、信号光の平面方向の焦線位置よりも迷光2の曲面方向の焦線位置が面S0に接近したとしても、上記原理に基づく本発明ないし実施例の効果は奏され得る。
【0096】
<変更例>
以下、上記実施例1、2の変更例について説明する。
【0097】
図18は、変更例1の構成を示す図である。本変更例では、上記実施例1における分光素子116の機能が変更され、これに応じて、光検出器117上のセンサパターンが変更されている。なお、この変更例は、実施例2にも同様に適用可能である。
【0098】
同図(a)は、分光素子116を検出レンズ115側から見た図である。分光素子116は、上記実施例1の場合と同様、正方形形状の透明板にて形成されている。ただし、本変更例では、分光素子116の光入射面に、ブレーズ型ではなくステップ型の回折パターン(回折ホログラム)が形成されている。光入射面は、図12(a)と同様、4つの回折領域116a〜116dに区分されている。これら回折領域116a〜116dに、それぞれ、図9(a)の光束領域A〜Dを通過したレーザ光(サーボ光SL、記録再生光RL1、RL2)が入射するよう、分光素子116が検出レンズ115の後段に配置される。
【0099】
回折領域116a〜116dは、入射された記録再生光RL1、RL2を1次回折作用により方向Va2〜Vd2に回折させ、入射されたサーボ光SLは、ほぼ回折させずに直進させる。方向Va2〜Vd2は、図9(a)の方向Da〜Ddに一致している。これにより、サーボ光SLと記録再生光RL1、RL2は、光検出器117の受光面上で、それぞれ、図18(b)のように分布する。
【0100】
なお、回折領域116a〜116dの回折パターンは、サーボ光SLの波長(660nm)に対する0次回折の回折効率が高く、且つ、記録再生光RL1、RL2の波長(405nm)に対する1次回折の回折効率が高くなるよう設定される。ステップ型の回折パターン(回折ホログラム)において、回折効率は、回折ホログラムのステップ数と1ステップあたりの高さにより調整され、回折角度は、回折ホログラムのピッチにより調整される。本変更例では、たとえば、4ステップ型の回折ホログラムが用いられる。
【0101】
光検出器117のセンサパターンは、図18(b)に示す記録再生光RL1、RL2とサーボ光SLの分布に応じて、図18(c)のように変更される。すなわち、サーボ光受光用の4分割センサP41〜P44が、サーボ光SLの照射位置に配置される。4分割センサP41〜P44は、分割線の交点を、サーボ光SLの光軸が貫くように配置される。センサP31〜P34の配置は、上記実施例1と同様である。
【0102】
なお、本変更例では、センサP41〜P44から出力される信号を、従前の非点収差法および1ビームプッシュプル法に従って演算することにより、フォーカスエラー信号とプッシュプル信号(トラッキングエラー信号)が生成され得る。
【0103】
本変更例においても、図18(c)に示すセンサパターンに、ディスクDからの不要な迷光が入射するのを回避することができる。また、同時に、サーボ光と記録再生光を、同じ受光面にて分離して受光することができる。さらに、これらの効果を、分光素子116を検出レンズ115と光検出器117との間に配置するとの極めて簡素な構成により実現できる。すなわち、本変更例によれば、簡素な構成で、ディスクDにより反射された記録再生光とサーボ光を分離して受光することができ、且つ、記録再生光とサーボ光を受光する光検出器に迷光が入射するのを抑止することができる。
【0104】
図19は、変更例2の構成を示す図である。本変更例では、上記実施例1、2および変更例1における光検出器117、211の構成が変更されている。
【0105】
同図(a)では、上記実施例1、2における光検出器117、211のセンサパターンが変更されている。すなわち、ここでは、センサP31〜P34が、コネクタCにより短絡されている。
【0106】
同図(b)では、上記変更例1における光検出器117のセンサパターンが変更されている。すなわち、ここでは、センサP31〜P34が、コネクタCにより短絡されている。
【0107】
センサP31〜P34は、再生RF信号を生成するためのものであり、これら各センサからの信号が加算されて、再生RF信号が生成される。センサパターンP31〜P34を図19に示すように短絡すると、センサP31〜P34の何れか一つから信号を引き出すことにより、再生RF信号を得ることができる。したがって、これらセンサからの信号を別途加算するための加算器が不要となる。また、各センサからの信号を個別にI/V変換して加算器により加算する場合に比べ、I/V変換する際に生じるノイズを低減することができる。
【0108】
以上に述べた変更例の他にも、本発明の実施形態は種々変更可能である。
【0109】
たとえば、上記実施例1、2および変更例1、2では、サーボ光用のレーザ光源と記録再生光用のレーザ光源を個別に配置し、各レーザ光源から出射されたレーザ光をダイクロイックプリズムで結合するようにしたが、一つのCAN内に、サーボ光用のレーザ素子と記録再生光用のレーザ素子を配置して、サーボ光と記録再生光が、僅かなギャップにて、同じ方向に出射されるようにしても良い。この場合、各レーザ素子から出射されたサーボ光と記録再生光の光軸を、回折格子等によって整合させるようにするのが好ましい。
【0110】
また、上記実施例1、2および変更例1、2では、記録と再生の両方に用いられる光ピックアップ装置の構成を例示したが、再生専用の光ピックアップ装置に本発明を適用することも可能である。この場合、たとえば、図11(a)に示す構成のうち、コリメートレンズ108〜対物レンズ114の構成が省略される。
【0111】
さらに、上記実施例1、2および変更例1、2では、回折ホログラム106、113、206を光軸方向に変位させることによって、記録再生光の焦点位置を光軸方向に変化させるようにしたが、液晶レンズ等、他の手段を用いて、記録再生光の焦点位置を光軸方向に変化させても良い。
【0112】
また、上記実施例1では、無偏光のビームスプリッタ104を用いたが、これに替えて、偏光ビームスプリッタを用いても良い。この場合、回折ホログラム106と対物レンズ107の間、および、回折ホログラム113と対物レンズ114の間に、それぞれ、1/4波長板が配される。これら2つの1/4波長板は、これにより円偏光に変換された記録再生光RL1、RL2が、記録層D0中で互いに干渉し合うように調整される。
【0113】
また、上記実施例1、2および変更例1、2では、分光素子116、210が検出レンズ115、209の後段に配されたが、分光素子116、210を検出レンズ115、209の前段に配しても良い。
【0114】
さらに、記録媒体は、ディスクに限らず、光カード等、他の媒体であっても良い。本発明は、光カード等の他の媒体に対応する光ピックアップ装置にも適用され得る。
【0115】
この他、本発明の実施の形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0116】
101、201 レーザ光源(第2のレーザ光源)
102、202 レーザ光源(第1のレーザ光源)
106、206 回折ホログラム(焦点位置調整器)
106a、206a アクチュエータ(焦点位置調整器)
107、208 対物レンズ
115、209 検出レンズ(非点収差素子)
116、210 分光素子
117、211 光検出器
P21〜P28 センサ(第2のセンサパターン)
P31〜P34 センサ(第1のセンサパターン)
P41〜P44 センサ(第2のセンサパターン)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録層とサーボ層が積層された記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップ装置において、
第1の波長を有する第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
前記第1および第2のレーザ光源から出射された前記第1および第2のレーザ光を前記記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記対物レンズによる前記第1のレーザ光の焦点位置を光軸方向に変化させる焦点位置調整器と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の光束を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、少なくとも前記第1のレーザ光の光束を4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第2のレーザ光の光束よりも外側を進むように、回折作用を付与する分光素子と、
前記4つの光束に分離された前記第1のレーザ光を受光して再生信号を生成するための第1のセンサパターンと、前記第2のレーザ光を受光して前記対物レンズの制御に用いるサーボ信号を生成するための第2のセンサパターンとを有する光検出器と、を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、さらに、前記第2のレーザ光の光束を前記第1および第2の直線で4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第1のレーザ光の光束よりも内側を進むように、回折作用を付与し、
前記第2のセンサパターンは、前記分光素子により分離された前記第2のレーザ光の各光束を受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記第2のレーザ光の光束の一部を回折させずに透過させ、
前記第2のセンサパターンは、回折されず前記分光素子を透過した前記第2のレーザ光の光束を受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、分離後の各光束が前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるように構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のセンサパターンを構成する前記4つの光束を受光するセンサが、電気的に互いに接続されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のレーザ光を、前記対物レンズからの入射方向と反対の方向から前記記録媒体に照射する光学系を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項1】
記録層とサーボ層が積層された記録媒体にレーザ光を照射する光ピックアップ装置において、
第1の波長を有する第1のレーザ光を出射する第1のレーザ光源と、
前記第1の波長とは異なる第2の波長を有する第2のレーザ光を出射する第2のレーザ光源と、
前記第1および第2のレーザ光源から出射された前記第1および第2のレーザ光を前記記録媒体上に収束させる対物レンズと、
前記対物レンズによる前記第1のレーザ光の焦点位置を光軸方向に変化させる焦点位置調整器と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光に非点収差を導入する非点収差素子と、
前記記録媒体によって反射された前記第1および第2のレーザ光の光束を、前記非点収差素子による収束方向に平行な第1の直線と、前記第1の直線に垂直な第2の直線により4分割したとき、少なくとも前記第1のレーザ光の光束を4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第2のレーザ光の光束よりも外側を進むように、回折作用を付与する分光素子と、
前記4つの光束に分離された前記第1のレーザ光を受光して再生信号を生成するための第1のセンサパターンと、前記第2のレーザ光を受光して前記対物レンズの制御に用いるサーボ信号を生成するための第2のセンサパターンとを有する光検出器と、を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、さらに、前記第2のレーザ光の光束を前記第1および第2の直線で4分割した4つの光束が互いに分離され、且つ、これら4つの光束が前記第1のレーザ光の光束よりも内側を進むように、回折作用を付与し、
前記第2のセンサパターンは、前記分光素子により分離された前記第2のレーザ光の各光束を受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項3】
請求項1に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、前記第2のレーザ光の光束の一部を回折させずに透過させ、
前記第2のセンサパターンは、回折されず前記分光素子を透過した前記第2のレーザ光の光束を受光する、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記分光素子は、分離後の各光束が前記光検出器の受光面上において正方形の異なる4つの頂角の位置にそれぞれ導かれるように構成されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のセンサパターンを構成する前記4つの光束を受光するセンサが、電気的に互いに接続されている、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載の光ピックアップ装置において、
前記第1のレーザ光を、前記対物レンズからの入射方向と反対の方向から前記記録媒体に照射する光学系を備える、
ことを特徴とする光ピックアップ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2011−70752(P2011−70752A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−223512(P2009−223512)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】
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