説明

光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法

【課題】クラッド部の外径が125μmよりも小さい光ファイバであっても、光ファイバを挿入するための挿入孔の外径を小さくした特別なフェルールを用いることなく、汎用のフェルールを用いて他の光ファイバと容易に接続が可能である光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法を提供する。
【解決手段】第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部とを有する第1の光ファイバと、前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法に関するものであり、特に光通信用コード、光デバイス等へ好適な光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ホーリーファイバ(HF)やフォトニッククリスタルファイバ(PCF)と呼ばれる新しい光ファイバが注目されている(例えば、非特許文献1)。
【0003】
代表的なホーリーファイバの構成を図7に示す。図7において、ホーリーファイバ102は、コア部121と、コア部121の周囲に形成されたクラッド部122と、クラッド部122にコア部121の軸方向に沿って延びるように形成された複数の空孔123とから構成される。
【0004】
ホーリーファイバを始めとするこの種の光ファイバは、小さな曲率半径で曲げても光が漏れにくく、曲げに起因する伝送損失(曲げ損失)を低く抑えられるという特性を有する。このため、FTTH(Fiber To The Home)において宅内の光配線に適用されたり、装置内の光配線への適用が検討されたりしている。
【0005】
この種の光ファイバは、より小さな曲げ半径においても折れにくくするために、通常125μmの光ファイバの外径(クラッド部の外径)をさらに小さくする(例えば、80μm以下)ことが知られている(例えば、特許文献1、2)。なお、光ファイバの外径を小さくすることの更なる利点として、細径化することにより製造コストの低減が可能になることも挙げられる。
【0006】
特許文献2には、微細構造光ファイバを該微細構造光ファイバの外径と等しい外径を有する従来型光ファイバに融着や接着によって接続した光コネクタが記載されている。特許文献2では、このような光コネクタとすることで、研磨時に発生する研磨屑や研磨剤、及び光コネクタが使用される環境に含まれる水などの汚染物質が微細構造光ファイバに侵入するのを防止し、光ファイバ及び光コネクタの信頼性を高めている。
【0007】
また、特許文献3には、ホーリーファイバと同様にクラッド部に細孔を有し、曲げ損失を小さくすることができるフォトニッククリスタルファイバと、該フォトニッククリスタルファイバの外径と等しい外径を有する従来のシングルモードファイバ(SMF)とを低い接続損失で接続することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−307632号公報
【特許文献2】特開2004−220026号公報
【特許文献3】特開2006−350308号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】長谷川:”フォトニック結晶ファイバおよびホーリーファイバの開発動向”、月刊誌「オプトロニクス」、オプトロニクス(株)発行、No.7、pp.203−208(2001)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ホーリーファイバなどの光ファイバの端部に光コネクタを取り付けして他の光ファイバと接続させる際には、一般に光ファイバの端部にフェルールが取り付けられる。このとき、光ファイバとして特許文献1、2に記載されているようなクラッド部の外径が125μmよりも小さい光ファイバを用いる場合、従来ではフェルールとして光ファイバを挿入するための挿入孔の外径をクラッド部の外径に合わせて従来のフェルールよりも小さくした特別なフェルールが用いられている。
【0011】
しかし、このような光ファイバを挿入するための挿入孔の外径を小さくした特別なフェルールは、加工が難しく価格が高いなどの実用面での問題がある。このため、クラッド部の外径が125μmよりも小さいホーリーファイバなどの光ファイバを宅内や装置内の光配線へ適用することの妨げとなってしまうおそれがある。
【0012】
一方、クラッド部の外径が125μmよりも小さいホーリーファイバなどの光ファイバの周囲に、外径が125μmとなるように被覆を施すことで、クラッド部の外径が125±1μm程度であるSMF等の光ファイバに用いられる汎用のフェルールを光ファイバの端部に取り付けることも検討されている。しかし、クラッド部の外径が125μmよりも小さい光ファイバの周囲に被覆を施す際に、偏心なく精密に被覆を施して外径125μmの光ファイバとすることは、高度な製造技術を要するため、製造コストが高くなるなどの問題がある。また、被覆した部分の厚さが不均一の場合には、接続する他の光ファイバとの接続部分において光軸がずれてしまい、接続損失が増大するおそれもある。
【0013】
上記問題点に鑑み、本発明は、クラッド部の外径が125μmよりも小さい光ファイバであっても、光ファイバを挿入するための挿入孔(ファイバ挿入孔)の外径を小さくした特別なフェルールを用いることなく、汎用のフェルールを用いて他の光ファイバと容易に接続が可能である光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部と、を有する第1の光ファイバと、前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部と、を備えることを特徴とする光ファイバを提供する。
【0015】
また、本発明は、上記課題を解決するために、上記の本発明に係る光ファイバにおいて、以下のような改良や変更を加えることができる。
【0016】
(1)前記融着接続部は、前記第2の光ファイバから前記第1の光ファイバにかけて外径が漸次小さくなるテーパ状の形状を有する。
【0017】
(2)前記第1の光ファイバは、前記第1のクラッド部の外径が100μm以下であり、前記第2の光ファイバは、前記第2のクラッド部の外径が125±1μmである。
【0018】
(3)前記複数の空孔部は、前記融着接続部において前記第2の光ファイバで封止されている。
【0019】
また、上記課題を解決するために、第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部と、を有する第1の光ファイバの先端部に、前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバの先端部を接続してなる光ファイバの製造方法であって、前記第1のコア部と前記第2のコア部との光軸を合わせて、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの先端部同士を突き合わせする工程と、前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程と、を含むことを特徴とする光ファイバの製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、上記課題を解決するために、上記の本発明に係る光ファイバの製造方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
【0021】
(1)前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの先端部同士を突き合わせする工程は、前記第1のクラッド部の外径の位置に基づく前記第1のコア部の中心と、前記第2のクラッド部の外径の位置に基づく前記第2のコア部の中心とが、同一軸上に位置するように前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバを配置して前記コア部と前記コアとの光軸を合せる。
【0022】
(2)前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程は、前記融着接続部が、前記第2の光ファイバから前記第1の光ファイバにかけて外径が漸次小さくなるテーパ状の形状を有するように融着接続する。
【0023】
(3)前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程は、前記複数の空孔部が、前記融着接続部において前記第2の光ファイバで封止されるように融着接続する。
【0024】
また、上記課題を解決するために、第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部と、を有する第1の光ファイバと、前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバと、前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部と、を備える光ファイバの端部加工方法であって、第1の光ファイバの先端部と第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部がフェルールの内部に位置するように、前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程と、前記ファイバ挿入孔に挿入された前記光ファイバを前記ファイバ挿入孔に接着剤で接着固定する工程と、前記フェルールの端面を研磨する工程と、を含むことを特徴とする光ファイバの端部加工方法を提供する。
【0025】
また、本発明は、上記課題を解決するために、上記の本発明に係る光ファイバの端部加工方法において、以下のような改良や変更を加えることができる。
【0026】
(1)前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程は、前記接着剤が注入された前記ファイバ挿入孔に、該ファイバ挿入孔の端部において前記接着剤と前記光ファイバとの間にメニスカスが形成される速度で前記第2の光ファイバの融着接続されていない先端部側から前記光ファイバを挿入する。
【0027】
(2)前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程は前記フェルールを加熱して前記光ファイバを前記ファイバ挿入孔に挿入する。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、クラッド部の外径が125μmよりも小さい光ファイバであっても、光ファイバを挿入するための挿入孔の外径を小さくした特別なフェルールを用いることなく、汎用のフェルールを用いて他の光ファイバと容易に接続が可能である光ファイバおよびその製造方法、並びに光ファイバの端部加工方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る光ファイバを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る光ファイバの製造方法を示す側面断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る光ファイバの端部加工方法を示す側面断面図である。
【図4】フェルール内に挿入された光ファイバの周囲に気泡が発生した状態を示す概念図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る光ファイバの端部加工方法を示す側面断面図である。
【図6】(a)、(b)は本発明の実施の形態に係る光ファイバの端部加工方法において、光ファイバをフェルール内に挿入したときのキャピラリー部の端部を示す側面断面図である。
【図7】ホーリーファイバを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて具体的に説明する。
【0031】
[光ファイバ]
本発明の実施の形態に係る光ファイバを図1に示す。図1に示す光ファイバ1は、第1のコア部21と、該第1のコア部21の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部22と、該第1のクラッド部22に第1のコア部21の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部23とを有する第1の光ファイバ(ホーリーファイバ)2と、第1のコア部21と接続される第2のコア部31と、該第2のコア部31の周囲に形成されて第1のクラッド部22よりも大きい外径を有して第1のクラッド部22と接続される第2のクラッド部32とを有する第2の光ファイバ3と、第1の光ファイバの先端部と第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部11とから構成される。
【0032】
詳述すると、第1の光ファイバ2は、第1のコア部21の周囲に第1のクラッド部22が形成され、第1のクラッド部22に、第1のコア部21の軸心方向に沿って複数の空孔部23が形成されるホーリーファイバからなる。なお、図1に示すホーリーファイバ2にあっては6つの空孔部23が形成されているが、本発明の実施の形態はこれに限定されるものではない。本実施の形態において、第1のクラッド部22の外径は100μm以下が好ましく、80μm±1μmが好適である。第1のコア部21の直径は、一般的な光ファイバのコアの直径と同等の大きさである。
【0033】
第2の光ファイバ3は、例えば第2のコア部31と、第2のコア部31の周囲に形成される第2のクラッド部32とから構成されるシングルモードファイバからなる。本実施の形態において、第2のクラッド部32の外径は、光ファイバの一般的な寸法である125μm±1μmとされる。第2のコア部31の外径は、ホーリーファイバ2が備える第1のコア部21の外径と略同じである。
【0034】
本発明の実施の形態に係る光ファイバ1は、ホーリーファイバ2と、シングルモードファイバ3とが融着接続されて構成される。本実施の形態においては、ホーリーファイバ2の第1のクラッド部22の外径が80μm±1μmであり、シングルモードファイバ3の第2のクラッド部32の外径が125μm±1μmであり、ホーリーファイバ2よりもシングルモードファイバ3の方が外径が大きいため、両者が融着接続されることで、シングルモードファイバ(第2の光ファイバ)3において第2のクラッド部32の外径を有する部分の先端の位置からホーリーファイバ(第1の光ファイバ)2において第1のクラッド部22の外径を有する部分の先端の位置にかけて、外径が第2のクラッド部32の外径から第1のクラッド部22の外径へ漸次小さくなるテーパ状の形状を有する融着接続部11が形成される。ホーリーファイバ2が備える第1のコア部21と、シングルモードファイバ3が備える第2のコア部31とは、ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3が融着接続されることで光接続される。
【0035】
融着接続部11においては、第1のクラッド部22と第2のクラッド部32とが熱により融着するため、ホーリーファイバ2が備える空孔部23は、融着接続部11の近傍(少なくとも融着接続部11を含む範囲)において封止され、図1に示す空孔封止部12が形成される。
【0036】
[光ファイバの製造方法]
本発明の実施の形態に係る光ファイバの製造方法を図2に基づいて説明する。図2(a)はホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3を光ファイバの融着接続に用いる融着機上で対向させた状態を示す概念図、図2(b)は融着接続後の光ファイバの状態を示す概念図、図2(c)はシングルモードファイバ3を切断した状態を示す概念図である。
【0037】
図2(a)において、ホーリーファイバ2と、シングルモードファイバ3は、光ファイバの融着接続に用いられる図示してない融着機上で、各々の先端部の端面を近接して対向させて配置される。本実施の形態において、ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3との先端部同士を突き合わせ接続する際には、例えば、ホーリーファイバ2の外径から求められるホーリーファイバ2の中心(第1のクラッド部22の表面からホーリーファイバ2の外径の2分の1の距離に位置する部分)を第1のコア部21の中心の位置とし、同様に、シングルモードファイバ3の外径から求められるシングルモードファイバ3の中心を第2のコア部31の中心の位置として、この第1のコア部21と第2のコア部31の中心同士が同一軸上に位置するように光軸を合わせることが好ましい。ホーリーファイバ2は、側面から第1のコア部21を目視で確認することができないため、シングルモードファイバ同士のようにコアを基準に軸あわせをすることはできないためである。
【0038】
なお、融着機の種類は特に限定されるものではないが、多モードファイバ同士の接続等に用いられる軸調心機能を持つ融着機を用いもよく、また、軸調心機能を持たない融着機であっても、光ファイバを融着機にセットするだけで光軸が合うように、融着機に設けられたホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3とを配置するための位置決め用の溝(例えば、V溝)の深さを異ならせたものを用いればよい。
【0039】
このように融着機上で端面を近接して対向させて配置されたホーリーファイバ2と、シングルモードファイバ3は、各々の光ファイバの光軸を合せてから、すなわちホーリーファイバ2の第1のコア部21の中心とシングルモードファイバ3の第2のコア部31の中心とが同一軸上に位置するように光軸を合せてから各々の端面を突き合わせ、気体放電を発生させ、端面同士を接合させて融着接続する。
【0040】
図2(b)に、ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3の端面同士を融着接続した後の状態を示す。融着接続部11は、シングルモードファイバ3の外径からホーリーファイバ2の外径に漸次外径が小さくなり、テーパ状に滑らかに変化している。融着接続部11の近傍では、融着接続によりホーリーファイバ2の空孔部23が潰され、空孔封止部12が形成されている。
【0041】
すなわち、本実施の形態において、空孔部23を有するホーリーファイバ2がシングルモードファイバ3と融着接続されることにより、空孔部23を封止することができる効果が得られる。これにより、空孔部23への水分の進入や温度変化による結露の発生によって機械的強度の低下や光学的特性の変動が生じることが防がれるため、光ファイバの信頼性を高めることが可能となる。
【0042】
本実施の形態における融着接続において、わずかな軸ずれや角度ずれがあったとしても、ホーリーファイバ2の外径がシングルモードファイバ3の外径よりも小さいため、シングルモードファイバ3の外径以上にはみ出ることはない。したがって、光ファイバ1を例えば光ファイバのコネクタに用いられるフェルール等に形成された挿入孔(フェルール挿入孔)に挿入する際に、フェルール挿入孔の外径を特別な外径にせずとも、シングルモードファイバ3の外径(例えば125±1μm)からなるフェルール挿入孔を有する汎用のフェルールにホーリーファイバ2をフェルール挿入孔の内面に全く接触せずに挿入することができる。
【0043】
図2(c)に、ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3との端面同士を融着接続後、余分なシングルモードファイバ3を切断した状態を示す。本実施の形態において、融着接続する際には、作業性の面から、シングルモードファイバ3は十分な長さを持たせてあるが、融着接続後は、ホーリーファイバ2の空孔部23の封止及び他の光ファイバとの接続のための端部加工に用いる以外の部分は、余計な部分となってしまうため、融着接続後に、余分なシングルモードファイバ3を切断する。このように余分なシングルモードファイバ3を切断することにより、本実施の形態に係る光ファイバ1が得られる。なお、切断する箇所は、例えば図2(b)に破線で示すように、融着接続部11から所定の距離を置いた箇所である。ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3の融着接続後、当該個所を切断する。
【0044】
[光ファイバの端部加工方法]
(1)光ファイバの端部構造
本発明の実施の形態に係る光ファイバの端部構造を図3に示す。図3(a)は本実施の形態で用いられる光コネクタのフェルールを示す図であり、図3(b)は本実施の形態に係る光ファイバの端部構造を示す。
【0045】
図3(a)に示すフェルール4は、光コネクタに用いられる一般的な構成のフェルールである。フェルール4は、キャピラリー部41と、キャピラリー部41の端部に接続されたフランジ部43とから構成される。キャピラリー部41には、その長手方向全長に渡って、光ファイバを挿入するためのファイバ挿入孔42が設けられる。フランジ部43には、図3(b)に示すような光ファイバ1の周囲に被覆が形成されている光ファイバ心線24を保持するための円筒状の心線保持部44と、キャピラリー部41の端部に接続されると共にキャピラリー部41を保持するためのキャピラリー保持部46が形成されている。心線保持部44は、キャピラリー部41の長手方向と同方向に延びるように設けられている。心線保持部44の内部には、キャピラリー保持部46まで貫通してファイバ挿入孔42へ光ファイバ1を案内するように、光ファイバ心線24を挿入するための心線挿入孔45が設けられている。
【0046】
フランジ部43に設けられたキャピラリー保持部46に、キャピラリー部41が挿入嵌合され、フェルール4が構成される。このとき、ファイバ挿入孔42と、心線挿入孔44の中心線は略同一線上とされる。
【0047】
図3(b)に、本実施の形態に係る光ファイバ端部を示す。図3(b)に示す光ファイバ端部5は、フェルール4と、光ファイバ1とから構成される。光ファイバ1は、ホーリーファイバ2の先端部にシングルモードファイバ3が融着接続され、シングルモードファイバ3の余分な部分が切断された状態となっている。
【0048】
光ファイバ端部5においては、フェルール4はキャピラリー保持部46にキャピラリー部41が挿入嵌合された状態とされる。キャピラリー部41が備えるファイバ挿入孔42に、ホーリーファイバ2と、これに融着接続されたシングルモードファイバ3とから構成される光ファイバ1が挿入される。光ファイバ心線24は、心線保持部44に設けられた心線挿入孔45で保持される。光ファイバ1を構成するシングルモードファイバ3、ホーリーファイバ2とファイバ挿入孔42との空間、光ファイバ心線24と心線挿入孔45との間の空間は接着剤51が満たされ、光ファイバ1がフェルール4に固定保持される。
【0049】
シングルモードファイバ3が位置する側のキャピラリー部41の端面は、光ファイバ1をフェルール4に固定保持する接着剤51が硬化した後、研磨される。キャピラリー部41の端面が研磨されることにより、キャピラリー部41に研磨面47が形成され、研磨面47においてシングルモードファイバ3の端面が露出し、露出端33が形成される。露出端33により、本実施の形態に係る光ファイバ端部5を他の光ファイバに接続することが可能となる。なお、通常は、コネクタハウジングがフェルールを内包するように取付けられてコネクタプラグとされ、コネクタアダプタによりコネクタプラグ同士の接続がなされる。
【0050】
(2)光ファイバ端部の加工方法
図3(b)に示す光ファイバ端部5の加工方法は、一般的な光ファイバへのフェルール取り付けの作業と同様である。
【0051】
すなわち、図3(a)に示すフェルール4に形成された心線保持部44の端面から接着剤51を心線挿入孔45に注入する。接着剤51としては、エポキシ系等の熱硬化型を用いることが好適である。その後、心線保持部44の端面からキャピラリー部41の方向に光ファイバ1をシングルモードファイバ3の側から挿入して押し込む。シングルモードファイバ3が心線挿入孔45を通過し、ファイバ挿入孔42に挿入し、キャピラリー部41の端面からはみ出した状態にする。
【0052】
シングルモードファイバ3がキャピラリー部41の端面からはみ出したら、光ファイバ端部5を加熱して接着剤51を硬化させる。心線挿入孔45に注入された接着剤51は、光ファイバ1の挿入に伴って、心線挿入孔45及びファイバ挿入孔42の全域に行き渡っている。従って、光ファイバ端部5を加熱することにより、フェルール4内部に位置する光ファイバ1並びに光ファイバ心線24は、心線挿入孔45及びファイバ挿入孔42の内壁に、接着剤51を介して強固に固定保持される。
【0053】
接着剤51を硬化させたら、キャピラリー部41の端面をシングルモードファイバ3の端面を含む範囲で研磨し、研磨面47を形成すればよい。これにより、シングルモードファイバ3の研磨面がキャピラリー部41の端面に露出することになる。
【0054】
本発明の実施の形態に係る光ファイバ端部の加工方法を図5に示す。本実施の形態においては、フェルールを、フランジ側が上になるように垂直に立てて保持する。なお、図5においては、説明の便宜上フランジ部を省略し、フェルールを構成するキャピラリー部41のみ図示する。
【0055】
垂直に立てて保持されたキャピラリー部41のファイバ挿入孔42(及び心線挿入孔)に、エポキシ系熱硬化型の接着剤51を適量注入する。その後、上方から光ファイバ1をシングルモードファイバ3の側からゆっくり、ファイバ挿入孔42(及び心線挿入穴)に、図5に示す矢印の方向に挿入する。このとき、キャピラリー部41(フェルール)の周囲から、ヒータ6、6などの加熱手段により、キャピラリー部41(フェルール)を加熱して暖めるとより好適である。
【0056】
本実施の形態においては、ホーリーファイバ2とシングルモードファイバ3との接続部である融着接続部11がテーパ状の形状を有するため、上述の加工方法において、光ファイバ1を挿入する際に、融着接続部11のテーパ状の部分に気泡を抱きこみやすい。
【0057】
図4に、融着接続部11のテーパ状の部分に気泡が抱き込まれた状態を示す。図4において、キャピラリー部41に設けられたファイバ挿入孔42にシングルモードファイバ3及びホーリーファイバ2が挿入され、ファイバ挿入孔42とシングルモードファイバ3及びホーリーファイバ2との間に接着剤51が満たされている。ここで、シングルモードファイバ3とホーリーファイバ2との接続部である融着接続部11により形成されるテーパ状の部分に、気泡52、52が抱き込まれやすい。
【0058】
図4に示すような気泡52、52が発生してしまった場合、接着剤51を硬化するための加熱の際に気泡52、52が膨張しようとするため、シングルモードファイバ3もしくはホーリーファイバ2に強い応力を発生させて光ファイバを破断させることがあり、また、加熱時に光ファイバの破断に至らない場合でも、長期的には破断する可能性が大きくなる。また、光ファイバが微小に曲げられることによって発生する伝送損失の変動も生じやすいという問題がある。
【0059】
本実施の形態における、光ファイバの挿入速度の目安を図6に示す。図6(a)は光ファイバの挿入速度が速すぎる場合であり、図6(b)は光ファイバの挿入速度が適切な場合である。
【0060】
図6(a)に示すように、光ファイバの挿入速度が速すぎる場合、接着剤51の粘性のため、光ファイバ(図6(a)ではシングルモードファイバ3)の表面の動きに接着剤51が引っ張られて、液面が沈み、光ファイバの周囲に液面沈降部53が形成されてしまう。このような状態では、本実施の形態における光ファイバが備える融着接続部11でのファイバ外径が小さくなる変化に追随しにくく、気泡の抱き込みが発生し易い。
【0061】
図6(b)に示すように、光ファイバの挿入速度が適切であれば、光ファイバの接着剤51と接触する表面で接着剤51の表面張力による動きが支配的であるため、光ファイバと接着剤51との間にメニスカス54が形成される。この状態であれば、接着剤51の液面が先行して光ファイバの表面を濡らしていくため、気泡を抱き込みにくい。
【0062】
実際の速度決定にあっては、図6(a)に状態を避け、図6(b)の状態になるようにする。すなわち、接着剤51と、光ファイバとの間に形成されるメニスカス54が保持される速度で光ファイバをファイバ挿入孔42に挿入するとよい。
【0063】
なお、このような速度調整は、手作業では難しいので、直進動作ができる器具を利用することが望ましい。また、作業性上、この速度を上げたいときは、フェルールを図5に示すヒータ6等により加熱して緩めることによって接着剤51の粘度を低くすることが効果的である。
【0064】
このようにして得られる本実施の形態に係る光ファイバ端部にあっては、細径のホーリーファイバ2の部分も空隙なく接着剤51に覆われるため、信頼性上の問題は生じない。また、ホーリーファイバ2の被覆部である光ファイバ心線24も、ホーリーファイバ2と同じ接着剤で心線挿入孔45で固定されるので、光ファイバ心線24に張力や捻りが加わっても、ホーリーファイバ2側へ張力や捻りが伝播しにくい。
【0065】
[本発明の実施の形態の変形例]
本実施の形態における接着剤としては、フェルール内に気泡が発生するのを防止するために、粘度が低い熱硬化性樹脂、あるいはフェルールの取り付けに適用できる瞬間接着剤(例えば、エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社製、商品名:AT8816)等を用いることが好ましい。
【0066】
また、本実施の形態においては、単心コネクタ用のフェルールを用いて説明したが、MTコネクタやMPOコネクタのような多心コネクタフェルールも適用可能である。ただし、調心型の融着機を使用する場合には、光ファイバを一本ずつ融着接続して作製することが好ましい。
【0067】
[実施の形態の効果]
このように、本実施の形態においては、外径が125μmよりも小さいホーリーファイバの先端部に、該ホーリーファイバよりも外径が大きいシングルモードファイバを融着接続して光ファイバが構成される。そのため、光ファイバと他のファイバとの接続に際して、シングルモードファイバに用いられる汎用のフェルールを適用することができる。
【0068】
また、本実施の形態においては、外径が125μmよりも小さいホーリーファイバに対して、シングルモードファイバの外径と同等の外径からなるファイバ挿入孔を有する汎用のフェルールを適用することができるため、例えば特殊用途向けの外径が80μmよりも更に小さい極細径のホーリーファイバを他の光ファイバと接続する際にも、シングルモードファイバを用意することのみで、特殊なフェルールを用いることなく他の光ファイバと容易に接続することができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、光コネクタ以外の用途にも適用できる。たとえば、光導波路との接続、発光素子や受光素子との結合を、外径が125μmよりも小さいホーリーファイバで行う場合に、ホーリーファイバの先端に一般のシングルモードファイバを融着接続し、そのシングルモードファイバの部分を従来の方法にしたがって所定の部品のV溝に固定するなどすればよい。
【0070】
なお、ホーリーファイバのクラッド部に存在する空孔は、端部が開放されていると、空孔内部に水分が進入したり、温度変化による結露が発生したりすることによって機械的強度が低下したり、光学的特性の変動が生じることがある。このような問題を防止するために、従来では、接着剤を端面から挿入して空孔を封止する方法、端面から少し離れた部位をクラッド周囲から加熱して空孔をつぶす方法、端面と対向する位置から端面を融着機(気体放電により光ファイバを加熱溶融させて接続する装置)で加熱して空孔を封止する方法が知られている。しかし、接着剤で封止する方法においては、経年劣化の恐れがあることから、接着剤の選定、品質管理、封止作業等に細心の注意を払う必要があるという問題がある。また、加熱によって光ファイバ自体を融かす方法は、接着剤を用いる方法に比べ、経年劣化のおそれがなく、端面の研磨も容易である利点があるが、溶融する部分が局所的であることから、その部分を接続端面にするための切断作業が必要になるという問題がある。
【0071】
一方、本実施の形態では、第1の光ファイバの先端部に第2の光ファイバの先端部を融着接続によって接続したことにより、空孔が第2の光ファイバによって封止された状態となるため、上記のような問題を生じることがなく、他の光ファイバと容易に接続することができる。
【符号の説明】
【0072】
1…光ファイバ、2…第1の光ファイバ(ホーリーファイバ)、3…第2の光ファイバ(シングルモードファイバ)、4…フェルール、5…光ファイバ端部、6…ヒータ、11…融着接続部、12…空孔封止部、21…第1のコア部、22…第1のクラッド部、23…空孔部、24…光ファイバ心線、31…第2のコア部、32…第2のクラッド部、33…露出端、41…キャピラリー部、42…ファイバ挿入孔、43…フランジ部、44…心線保持部、45…心線挿入孔、46…キャピラリー保持部、47…研磨面、51…接着剤、52…気泡、53…液面沈降部、54…メニスカス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部と、を有する第1の光ファイバと、
前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバと、
前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部と、を備えることを特徴とする光ファイバ。
【請求項2】
前記融着接続部は、前記第2の光ファイバから前記第1の光ファイバにかけて外径が漸次小さくなるテーパ状の形状を有する請求項1記載の光ファイバ。
【請求項3】
前記第1の光ファイバは、前記第1のクラッド部の外径が100μm以下であり、前記第2の光ファイバは、前記第2のクラッド部の外径が125±1μmである請求項1又は2記載の光ファイバ。
【請求項4】
前記複数の空孔部は、前記融着接続部において前記第2の光ファイバで封止されている請求項1乃至3のいずれかに記載の光ファイバ。
【請求項5】
第1のコア部と、前記第1のコア部の周囲に形成され、外径が125μmよりも小さい第1のクラッド部と、前記第1のクラッド部に前記第1のコア部の軸心方向に延びるように形成された複数の空孔部と、を有する第1の光ファイバの先端部に、前記第1のコア部と接続される第2のコア部と、前記第2のコア部の周囲に形成されて前記第1のクラッド部よりも大きい外径を有して前記第1のクラッド部と接続される第2のクラッド部とを有する第2の光ファイバの先端部を接続してなる光ファイバの製造方法であって、
前記第1のコア部と前記第2のコア部との光軸を合わせて、前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの先端部同士を突き合わせする工程と、
前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程と、
を含むことを特徴とする光ファイバの製造方法。
【請求項6】
前記第1の光ファイバと前記第2の光ファイバとの先端部同士を突き合わせする工程は、前記第1のクラッド部の外径の位置に基づく前記第1のコア部の中心と、前記第2のクラッド部の外径の位置に基づく前記第2のコア部の中心とが、同一軸上に位置するように前記第1の光ファイバおよび前記第2の光ファイバを配置して前記第1のコア部と前記第2のコア部との光軸を合せる請求項5記載の光ファイバの製造方法。
【請求項7】
前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程は、前記融着接続部が、前記第2の光ファイバから前記第1の光ファイバにかけて外径が漸次小さくなるテーパ状の形状を有するように融着接続する請求項5又は6記載の光ファイバの製造方法。
【請求項8】
前記第1の光ファイバの先端部と前記第2の光ファイバの先端部とを突き合わせした部分を融着接続して融着接続部を形成する工程は、前記複数の空孔部が、前記融着接続部において前記第2の光ファイバで封止されるように融着接続する請求項5乃至7のいずれかに記載の光ファイバの製造方法。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の光ファイバの端部加工方法であって、
第1の光ファイバの先端部と第2の光ファイバの先端部とが融着接続されることによって形成された融着接続部がフェルールの内部に位置するように、前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程と、
前記ファイバ挿入孔に挿入された前記光ファイバを前記ファイバ挿入孔に接着剤で接着固定する工程と、
前記フェルールの端面を研磨する工程と、
を含むことを特徴とする光ファイバの端部加工方法。
【請求項10】
前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程は、前記接着剤が注入された前記ファイバ挿入孔に、該ファイバ挿入孔の端部において前記接着剤と前記光ファイバとの間にメニスカスが形成される速度で前記第2の光ファイバの融着接続されていない先端部側から前記光ファイバを挿入する請求項9記載の光ファイバの端部加工方法。
【請求項11】
前記光ファイバを前記フェルールに形成されたファイバ挿入孔に挿入する工程は前記フェルールを加熱して前記光ファイバを前記ファイバ挿入孔に挿入する請求項9又は10に記載の光ファイバの端部加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−123398(P2011−123398A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282564(P2009−282564)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】