説明

光ファイバの接続構造および光ファイバの接続方法

【課題】屈折率整合剤を介してホーリー光ファイバを接続する光ファイバの接続構造を提供することにある。
【解決手段】2つの光ファイバ10,20同士の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤40を介し2つの光ファイバ10,20同士が突き合わされて、屈折率整合剤40が変形した状態で2つの光ファイバ10,20同士が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバの接続構造および光ファイバの接続方法に関し、詳細にはコアの周囲に空孔を有する光ファイバの接続構造および光ファイバの接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光ファイバはコアとクラッドの材料による屈折率差のみで光を閉じ込める構造であり、光ファイバの曲げ半径を小さくすると曲げによる放射損失が増大するため、曲げ半径の限界値を30mm程度として使用していた。従来の光ファイバの曲げ半径の限界値にくらべて、曲げ半径を小さくできる光ファイバとしてホーリー光ファイバがある。
【0003】
ここで、図6に、ホーリー光ファイバの断面の模式図を示す。ホーリー光ファイバ100は、図6に示すように、コア部101と、コア部101の周囲を囲むクラッド部102と、クラッド部102にコア部101を囲むように周期的に形成された、複数(図中6個)の空孔103を有する。このようにホーリー光ファイバ100は、コア部101周囲のクラッド部102に空孔103を存在させることでクラッド部102の実効的な屈折率を下げて、コア部101とクラッド部102間の屈折率差を大きくして、曲げによる放射損失の増加を抑える光ファイバである。ホーリー光ファイバ100は、曲げや捻りへの耐性が大きいため、従来の光ファイバでは成し得ない径で光ファイバを曲げることができるため、住宅内光配線等への検討が進んでいる。
【0004】
【特許文献1】特開2004−133276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、光ファイバの接続具として、屈折率整合剤を介して光ファイバを接続するメカニカルスプライスがある。メカニカルスプライスは、V溝基板、蓋部材、およびV溝基板と蓋部材を一体化するクランパより構成される。メカニカルスプライスではV溝基板部と蓋部を重ねることで光ファイバの調心部を形成している。調心部における光ファイバが突き合う位置には予め屈折率整合剤を充填している。屈折率整合剤は光ファイバのコアの屈折率と同程度の屈折率を有し、接続する光ファイバ間における空隙を埋めて空気によるフレネル反射を抑制する。メカニカルスプライスにてホーリー光ファイバを接続する場合、通常使用されるメカニカルスプライス内に充填された屈折率整合剤は液状であるため、毛細管現象と想定される理由により屈折率整合剤が空孔内へ流入して損失が増加する課題がある。
【0006】
ホーリー光ファイバをメカニカルスプライスで接続する方法としては3つの方法が提案されている。一つ目は樹脂を光ファイバ端面の空孔内へ充填、硬化させることで端面を封止したホーリー光ファイバをメカニカルスプライスで接続する方法である(例えば、特許文献1参照)。予め空孔を封止しておくことで、メカニカルスプライス内の屈折率整合剤が空孔内へ流入することを防ぐことができる。しかしながら、工事現場において光ファイバ端面を封止することは煩雑な作業となり、通常の光ファイバをメカニカルスプライスで接続する場合に比べて時間を要する課題がある。
【0007】
二つ目の方法はメカニカルスプライス内の屈折率整合剤の屈折率をクラッド以下とし、屈折率整合剤が空孔内へ流入しても損失が発生しないようにする方法である。この二つ目の方法ではホーリー光ファイバの端面を処理することなく接続することができる。しかしながら、屈折率は温度により変化するため、温度変化に対する信頼性が課題である。
【0008】
三つ目の方法は、屈折率整合剤を固形の粘着性部材とし単一層の状態として接続するホーリー光ファイバ間へ介在させる方法である。メカニカルスプライスへ適用する場合は、メカニカルスプライス内でシート形状である屈折率整合剤を保持するための支持部材を必要とするため、通常のメカニカルスプライスの構造を変更しなければならない。通常のメカニカルスプライス構造のままで使用するためには、予めホーリー光ファイバ端面へ固形の屈折率整合剤を付着させる作業を必要とする。しかしながら、工事現場において光ファイバ端面へ固形の屈折率整合剤を付着させることは困難であり、時間も要する課題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、屈折率整合剤を介してホーリー光ファイバを接続する光ファイバの接続構造および光ファイバの接続方法を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決する第1の発明に係る光ファイバの接続構造は、接続する2つの光ファイバのうちの少なくとも一方がコアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバであり、前記2つの光ファイバが光接続器で調心して接続された光ファイバの接続構造であって、前記2つの光ファイバ同士の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤を介し前記2つの光ファイバ同士が突き合わされて、前記屈折率整合剤が変形した状態で前記2つの光ファイバ同士が接続されていることを特徴とする。
【0011】
上述した課題を解決する第2の発明に係る光ファイバの接続構造は、第1の発明に係る光ファイバの接続構造であって、前記屈折率整合剤が変形して浸入した時に前記ホーリー光ファイバの空孔内に浸入し、前記ホーリー光ファイバの空孔内に浸入した屈折率整合剤の長さが最大150μm以下であることを特徴とする。
【0012】
上述した課題を解決する第3の発明に係る光ファイバの接続構造は、第1または第2の発明に係る光ファイバの接続構造であって、前記屈折率整合剤が室温硬化型シリコーン樹脂であり、その常温での屈折率(ナトリウムD線)が1.460から1.467であり、且つその硬度(ショアA)が4から7であることを特徴とする。
【0013】
上述した課題を解決する第4の発明に係る光ファイバの接続構造は、第3の発明に係る光ファイバの接続構造であって、前記室温硬化型シリコーン樹脂に石英ガラス系フィラーが含有され、前記室温硬化型シリコーン樹脂の硬化触媒として、ヒドロシリル化反応を誘起する触媒を含有することを特徴とする。
前記室温硬化型シリコーン樹脂に石英ガラス系フィラーが含有されることで、硬化物の硬さ、硬化前の粘度を適宜調整できる。
前記室温硬化型シリコーン樹脂の硬化触媒として、ヒドロシリル化反応を誘起する触媒を含有することで、湿気や水分などが無く周囲が覆われているところでも硬化することができ、余分の副生成物を無くすことができる。
【0014】
上述した課題を解決する第5の発明に係る光ファイバ接続方法は、接続する2つの光ファイバのうちの少なくとも一方がコアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバであり、前記2つの光ファイバを光接続器で調心して接続する光ファイバの接続方法であって、前記光接続器内に、前記2つの光ファイバ同士の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤を配置すると共に、前記屈折率整合剤を介して前記2つの光ファイバを対向して配置し、前記光接続器で前記2つの光ファイバを調心しつつ、前記光接続器内で前記2つの光ファイバ同士を突き合わせて、前記屈折率整合剤を変形させた状態で前記2つの光ファイバ同士を接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る光ファイバの接続構造によれば、光ファイバの押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤により、ホーリー光ファイバを良好な接続損失でメカニカルスプライス等の光接続器で接続することが可能になる。光ファイバの押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤を介することにより、ホーリー光ファイバへの端面処理が一切不要であり、メカニカルスプライスや現場組立光コネクタ等の接続器の構造も従来のまま使用できる。すなわち、ホーリー光ファイバを従来の光ファイバと同じ取扱で接続できる。ホーリー光ファイバの空孔への屈折率整合剤の浸入も最低限に抑えているため、温度変化による特性への影響はない。また、室温で硬化する樹脂を材質としているため、屈折率整合剤の製造において加熱やUV光照射のプロセスが必要ない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例1】
【0017】
以下に、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造につき、図面を参照して具体的に説明する。
図1は、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造を模式的に示す図であり、図1(a)に光ファイバ同士を接続する前の状態を示し、図1(b)に光ファイバ同士を接続した状態を示す。図2は、図1におけるII−II線の断面図であり、図3は、図1におけるIII−III線の断面図であり、図4は図1におけるIV−IV線の断面図である。本実施例においては、2つのホーリー光ファイバをメカニカルスプライスで接続する場合を示す。図5は、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造における屈折率整合剤の空孔への浸入深さと波長1.55μmで測定した接続損失との関係を示すグラフである。図5における横軸はメカニカルスプライス内で接続した2つのホーリー光ファイバの空孔へ浸入した屈折率整合剤の長さの和dであり、縦軸は接続損失である。
【0018】
本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造では、図1に示すように、2つのホーリー光ファイバ10,20が光接続器であるメカニカルスプライス30に内蔵された屈折率整合剤40を介して接続されている。ホーリー光ファイバ10,20は、コア部11,21と、コア部11,21の周囲を囲うクラッド部12,22と、クラッド部12,22にコア部11,21を囲むように周期的に形成された複数の空孔13,23とをそれぞれ有する。
【0019】
屈折率整合剤40は室温硬化型のシリコーン樹脂である。この屈折率整合剤40は、主剤と硬化剤の2液で構成され、主剤と硬化剤を一定の比率で混ぜ合わせることで、室温にて硬化する。硬化後の屈折率整合剤(固形状の屈折率整合剤)40の硬度(ショアA)は4から7程度であり、光ファイバの押圧により変形可能な硬度とする。
【0020】
この際用いる主剤および硬化剤は具体的には付加型液状シリコーン樹脂であり、主剤は不飽和結合を含有したビニル基含有オルガノポリシロキサン、硬化剤はハイドロジェンオルガノポリシロキサンで微量の白金化合物を含有させている。この白金化合物の存在により主剤と硬化剤は容易に付加反応〔ヒドロシリル化〕を行うことで硬化することが基礎となっている。触媒としては、ヒドロシリル化反応に用いられるものであればいずでも使用することができ、例えば、塩化白金酸、そのアルコール変性物、白金のビニルシロキサン錯体等を挙げることができる。具体的には、白金のテトラビニルシラン、カルボニルビニルメチル、ジビニルテトラメチルジシロキサン、シクロビニルメチルシロキサン等の錯体や白金のオクチルアルデヒド/オクタノール錯体等が挙げられる。
【0021】
本発明に用いられる白金触媒を含有させるシリコーン系オイルとしては、メチルシリコーンオイル、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、ジフェニルシリコーンオイル、ジメチル−フェニルメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フロロシリコーンオイル等が挙げられ、白金触媒を溶解し、シリコーン混合溶液からなる接合材と相溶するものであり、例えばフェルールの粗面を平滑にぬらすほどの低い粘度であればいずれも使用できる。
【0022】
メカニカルスプライス30の調心部は、光ファイバの調心を行うV溝基板31と、V溝基板31上に配置された光ファイバを押さえる蓋部材32と、図示しないV溝基板31と蓋部材32とを一体化するクランパを有する。
【0023】
ここで、2つのホーリー光ファイバ10,20をメカニカルスプライス30で接続する方法について詳述する。
最初に、図1(a)に示すように、V溝基板31上に、2つのホーリー光ファイバ10,20の端面10A,20Aを対向して配置すると共に、これら2つのホーリー光ファイバ10,20の間に上述した固形状の屈折率整合剤40を配置する。続いて、これら2つのホーリー光ファイバ10,20の上方に蓋部材32を配置する。このとき、ホーリー光ファイバ10,20の周囲には隙間33が存在する。
【0024】
続いて、図1(b)に示すように、これら2つのホーリー光ファイバ10,20を押圧してホーリー光ファイバ10,20の端面10A,20A同士を突き合わせる。このとき、ホーリー光ファイバ10,20により固形状の屈折率整合剤40は押圧されて変形する。すなわち、ホーリー光ファイバ10,20により押圧されて変形した固形状の屈折率整合剤40の一部はホーリー光ファイバ10,20の周囲の隙間33を充填する状態へ変形し、また、一部は空孔13,23内へ浸入した状態となる。
【0025】
図1(b)におけるII−II断面では、図2に示すように、固形状の屈折率整合剤40がホーリー光ファイバ20の周囲の隙間33に存在すると共に、ホーリー光ファイバ20の空孔23内に存在する。また、図1(b)におけるIII−III断面では、図3に示すように、固形状の屈折率整合剤40がホーリー光ファイバ20の周囲の隙間33に存在する一方、ホーリー光ファイバ20の空孔23には存在しない。さらに、図1(b)に示すIV−IV断面では、図4に示すように、固形状の屈折率整合剤40がホーリー光ファイバ20の周囲の隙間33およびホーリー光ファイバ20の空孔23内に存在しない。すなわち、ホーリー光ファイバ10,20の端面10A,20A同士が突き合う箇所に近い位置では空孔13,23内へ屈折率整合剤40が浸入しており、ホーリー光ファイバ10,20が突き合う箇所から遠くなるにつれ、屈折率整合剤40の空孔13,23内への浸入がなくなり、さらに遠くなるとホーリー光ファイバ10,20の周囲やV溝基板31のV溝31a上にも屈折率整合剤40は存在しなくなる。
【0026】
ここで、屈折率整合剤40が空孔13,23内へ浸入することは接続損失増加の一因となる。メカニカルスプライス30で接続したホーリー光ファイバ10,20の接続損失を測定し、接続損失を測定後にホーリー光ファイバ10,20を取り出し、ホーリー光ファイバ10,20の端面10A,20Aから空孔13内へ浸入した屈折率整合剤40の長さを測定した。
【0027】
図5に示すように、空孔13,23内へ浸入した屈折率整合剤40の長さの和dと接続損失は比例関係にあり、空孔13,23内へ浸入する屈折率整合剤40の長さを150μm以下とすることで接続損失を0.5dB以下とすることが可能である。屈折率整合剤40は固形状であり、メカニカルスプライス30へ内蔵する屈折率整合剤40の量を調整することで、空孔13,23内へ浸入する屈折率整合剤40の長さの和dを抑制することが可能である。空孔13,23内へ浸入する屈折率整合剤40の長さを150μm以下とするためには、メカニカルスプライス30へ内蔵する屈折率整合剤40の量について、幅はV溝31aの幅以下を目途として、長さをV溝31aの長さ方向に沿って150μm以下とする。メカニカルスプライス30へ内蔵するときの屈折率整合剤40の形状がV溝31aの長さ方向で長さが150μm以下であれば、形状によらず良好な接続損失を実現できる。屈折率整合剤40の形状を直方体、立方体、球体として硬化させた上でメカニカルスプライス30等の接続器へ内蔵することで、屈折率整合剤40を適量分だけを接続器へ内蔵しやすくなる効果がある。
【0028】
屈折率の値は波長、温度により異なる。ここでは、波長としてはNaのD線、温度として25℃における測定値を屈折率として示す。屈折率整合剤40の常温における屈折率は使用するホーリー光ファイバ10,20のコア11,21の常温における屈折率と一致するように調整している。例えば、屈折率整合剤40の屈折率は1.460から1.467の範囲のいずれかの値となるように調整したものを使用する。シリコーン樹脂を材質とした屈折率整合剤40では、屈折率を1.460から1.467の範囲で調整する場合、シリコーン樹脂に石英ガラス粉を混合して使用することがある。また、屈折率整合剤40は温度変化とともに屈折率が変化し、固形状の屈折率整合剤40の−40℃から75℃にける温度範囲における温度係数は−4.0×10-4/℃以上、0未満とした。この温度係数であれば、−40℃から75℃の温度範囲にて反射減衰量を40dB以上とすることができる。
【0029】
また、この本発明のシリコーン樹脂を材質とした屈折率整合剤では、シリコーン樹脂に添加剤(フィラー)として石英ガラス粉を混合させてもよい。石英ガラス系フィラーの含有率を変化させることによって硬度および硬化前の粘度を変化させ、固体化された屈折率整合剤をホーリー光ファイバにより傷つくことの無い最適な硬度を得ることができた。具体的にはショアAが4から7の範囲の硬さであればファイバにより固体化された屈折率整合剤が傷つくことなく、またファイバとの界面への空気の混入を防ぐことができ、液状の屈折率整合剤と同様に損失増加あるいは反射損失の増加を防ぐことが可能であった。また、このフィラー入りの屈折率整合剤の硬化前の粘度は10000cp程度に調整することが可能である。
【0030】
また触媒として副生成物が無い白金触媒を用いることにより、通常のシリコーン樹脂の硬化反応でみられる、アルコールなどの副生成物が無く損失増加、硬化物の硬度、屈折率などの長期信頼性に悪影響を与えることがなかった。
【0031】
したがって、本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造50によれば、光ファイバ10,20の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤40により、ホーリー光ファイバ10,20を良好な接続損失でメカニカルスプライス30等の接続器で接続することが可能になる。光ファイバ10,20の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤40を介することにより、ホーリー光ファイバ10,20への端面処理が一切不要であり、メカニカルスプライス30や現場組立光コネクタ等の光接続器の構造も従来のまま使用できる。すなわち、ホーリー光ファイバ10,20を従来の光ファイバと同じ取扱で接続できる。ホーリー光ファイバ10,20の空孔13,23への屈折率整合剤40の浸入も最低限に抑えているため、温度変化による特性への影響はない。また、室温で硬化する樹脂を材質としているため、屈折率整合剤40の製造において加熱やUV光照射のプロセスが必要ない。
【0032】
接続する2つの光ファイバのどちらか一方のみがホーリー光ファイバであり、もう一方が通常の光ファイバであっても同様の効果を得ることができる。また、固形状の屈折率整合剤40を内蔵したメカニカルスプライス30にて通常の光ファイバ同士を接続することも可能である。通常の光ファイバを接続した場合は、ホーリー光ファイバを使用した場合と比較して、空孔への浸入による損失増加がないため、同じ屈折率整合剤の量で接続した場合はより良好な接続損失となる。
【0033】
本発明の固形状の屈折率整合剤40はコア11,21の周囲に存在する空孔13,23の数によらず効果があり、多数の空孔を有するフォトニック結晶ファイバの接続へも適用できる。
【0034】
固形状の屈折率整合剤40を使用する光接続器の形態として、メカニカルスプライス30の他に現場組立用光コネクタやMTコネクタもある。現場組立用光コネクタとは、メカニカルスプライスの機構を組み込んだ光コネクタである。あらかじめ工場にて接続側の端面を研磨した光ファイバをフェルールへ接着固定しておき、フェルールへ接着された光ファイバの研磨端面と反対側でメカニカルスプライスにて光ファイバと接続することで、工事現場にて光ファイバの端面に光コネクタを成端することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造を模式的に示す図である。
【図2】図1におけるII−II線の断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線の断面図である。
【図4】図1におけるIV−IV線の断面図である。
【図5】本発明の第1の実施例に係る光ファイバの接続構造における屈折率整合剤の空孔への浸入深さと波長1.55μmで測定した接続損失との関係を示すグラフである。
【図6】ホーリー光ファイバの断面を模式的に示した図である。
【符号の説明】
【0036】
10,20 ホーリー光ファイバ
11,21 コア部
12,22 クラッド部
13,23 空孔
30 メカニカルスプライス
31 V溝基板
32 蓋部材
33 空隙
40 屈折率整合剤
50 光ファイバの接続構造
d 屈折率整合剤の空孔への浸入長さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続する2つの光ファイバのうちの少なくとも一方がコアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバであり、前記2つの光ファイバが光接続器で調心して接続された光ファイバの接続構造であって、
前記2つの光ファイバ同士の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤を介し前記2つの光ファイバ同士が突き合わされて、前記屈折率整合剤が変形した状態で前記2つの光ファイバ同士が接続されている
ことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項2】
請求項1に記載された光ファイバの接続構造であって、
前記屈折率整合剤が変形した時に前記ホーリー光ファイバの空孔内に浸入し、前記ホーリー光ファイバの空孔内に浸入した屈折率整合剤の長さが最大150μm以下である
ことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された光ファイバの接続構造であって、
前記屈折率整合剤が室温硬化型シリコーン樹脂であり、その常温での屈折率(ナトリウムD線)が1.460から1.467であり、且つその硬度(ショアA)が4から7である
ことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項4】
請求項3に記載された光ファイバの接続構造であって、
前記室温硬化型シリコーン樹脂に石英ガラス系フィラーが含有され、前記室温硬化型シリコーン樹脂の硬化触媒として、ヒドロシリル化反応を誘起する触媒を含有する
ことを特徴とする光ファイバの接続構造。
【請求項5】
接続する2つの光ファイバのうちの少なくとも一方がコアの周囲に複数の空孔を有するホーリー光ファイバであり、前記2つの光ファイバを光接続器で調心して接続する光ファイバの接続方法であって、
前記光接続器内に、前記2つの光ファイバ同士の押圧により変形する硬度を有する固形状の屈折率整合剤を配置すると共に、前記屈折率整合剤を介して前記2つの光ファイバを対向して配置し、
前記光接続器で前記2つの光ファイバを調心しつつ、前記光接続器内で前記2つの光ファイバ同士を突き合わせて、前記屈折率整合剤を変形させた状態で前記2つの光ファイバ同士を接続する
ことを特徴とする光ファイバの接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2009−42335(P2009−42335A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204970(P2007−204970)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【Fターム(参考)】