光ファイバグレーティングデバイスおよび光ファイバレーザ
【課題】入力光強度および環境温度によらず安定した光学特性を有する光ファイバグレーティングデバイスおよびこれを用いた光ファイバレーザを提供すること。
【解決手段】コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、を備える。
【解決手段】コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバグレーティングデバイスおよび光ファイバレーザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバのコア部に周期的に変化する屈折率のグレーティングを形成することによって作製された光ファイバグレーティングが知られている。この光ファイバグレーティングは、形成したグレーティングによって、所定の波長を中心とする波長帯域の光を反射するものであり、たとえば反射型波長選択フィルタとして機能する。この光ファイバグレーティングは、たとえば光ファイバレーザにおいて光共振器を構成するために用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
この光ファイバグレーティングの反射波長帯域の中心波長は、形成したグレーティングの周期とコア部の実効屈折率とによって定まるブラッグ反射波長と一致する。ここで、この光ファイバグレーティングにおいては、グレーティングの周期とコア部の実効屈折率とは、いずれも温度依存性を有する。したがって、この光ファイバグレーティングにおいては、中心波長が環境温度によって変化してしまうという課題がある。そこで、従来の光ファイバグレーティングデバイスは、中心波長の変化を抑制するために、種々の温度補償機構を備えている(特許文献2、3参照)。
【0004】
たとえば、特許文献2に開示される光ファイバグレーティングデバイスは、光ファイバグレーティングの一端を台座部に固定し、他の一端を台座部とは線膨張係数が異なる材料からなる梁部に固定した構成を有する温度補償用パッケージを備えている。
【0005】
一方、特許文献3に開示される光ファイバグレーティングデバイスは、負の線膨張係数を有する円筒形状の基材のスリット内に光ファイバグレーティングを挿入し、この光ファイバグレーティングの両端部を基材内に接着剤で固定した構成を有する。
【0006】
特許文献2、3によれば、上記のいずれの光ファイバグレーティングデバイスも、上記したそれぞれの構成の温度補償機構を有する結果、中心波長の温度依存変化が抑制されている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6167066号明細書
【特許文献2】特開2003−4956号公報
【特許文献3】特開2001−318242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光ファイバグレーティングデバイスは、入力する光の強度が変化した場合に、中心波長が変化してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力光強度および環境温度によらず安定した光学特性を有する光ファイバグレーティングデバイスおよびこれを用いた光ファイバレーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、前記グレーティング形成部を除いた前記クラッド部の外周に形成した被覆部を備え、前記基台は、前記光ファイバグレーティングを前記被覆部において支持する支持溝を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、前記クラッド部を内側クラッドとし、前記被覆部を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部の外周と、前記被覆部の該グレーティング形成部に隣接する部分の外周とを覆うように形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部から漏洩する光を透過することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも高いことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも低いことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、UV硬化樹脂からなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記基台は、−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記収容溝は、V字状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記収容溝は、前記支持溝に比して幅広且つ深底に形成されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記支持溝は、V字状に形成されたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材に密着するように配置され、該樹脂部材を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記放熱部材は、前記基台の上部を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記放熱部材は、アルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、所定の張力を印加した状態で前記基台に固定されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材よりも高い硬度を有し、前記グレーティング形成部を挟むように配置され、前記光ファイバグレーティングを前記収容溝内に固着する補強樹脂部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明のいずれか1つに係る2つの光ファイバグレーティングデバイスと、前記2つの光ファイバグレーティングデバイス間に配置した希土類元素添加光ファイバと、前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給する励起光源と、を備え、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスの各反射波長帯域は重畳しており、前記励起光源が前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給することによって、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスのいずれか一方の端部から前記重畳した波長帯域内の発振波長を有するレーザ光を出力することを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記レーザ光を出力する出力端部側に配置され、前記レーザ光を受付け該レーザ光の波長を変換して出力する波長変換素子を備えたことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記希土類元素添加光ファイバおよび前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、偏波保持型光ファイバ構造を有し、前記一方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つと、前記他方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つとを重畳させて、該重畳した波長帯域内の発振波長を有する単一偏波のレーザ光を発振することを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸とファースト軸とが平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸が互いのファースト軸と平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも光ファイバグレーティングのグレーティング形成部の外周を覆うように形成され、グレーティング形成部を基台の収容溝内に固着するとともに、グレーティング形成部において発生する熱を基台に伝導する樹脂部材とを備えたことによって、光ファイバグレーティングの光学特性の温度依存変化および入力光強度依存変化が抑制されるので、入力光強度および環境温度によらず安定した光学特性を有する光ファイバグレーティングデバイスを実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスおよび光ファイバレーザの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。図1に示すように、この光ファイバグレーティングデバイス1は、光ファイバグレーティング11と、基台12と、樹脂部材13とを備える。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0035】
光ファイバグレーティング11は、正の線膨張係数を有する石英系ガラスからなる光ファイバ部111と、被覆部112、112とを備え、光ファイバ部111は、コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部113を有する。また、被覆部112、112は、グレーティング形成部113を除いた光ファイバ部111の外周に形成されている。
【0036】
また、基台12は、光ファイバグレーティング11のグレーティング形成部113を収容する収容溝121と、光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持する支持溝122、122とを備える。この基台12は、負の線膨張係数を有している。
【0037】
また、樹脂部材13は、UV硬化樹脂からなり、収容溝121と支持溝122、122とを充填するように形成されている。すなわち、この樹脂部材13は、グレーティング形成部113の外周と、被覆部112、112のグレーティング形成部113に隣接する部分の外周を覆うように形成されている。そして、樹脂部材13は、グレーティング形成部113を収容溝121内に固着するとともに、被覆部112、112の一部を支持溝122、122内に固着している。
【0038】
つぎに、光ファイバグレーティング11の構成について、さらに具体的に説明する。図2は、図1に示す光ファイバグレーティング11の概略断面と対応する屈折率分布とを示す図である。図2に示すように、光ファイバグレーティング11において、光ファイバ部111は、コア部1111とクラッド部1112とを備えている。また、屈折率分布については、コア部1111、クラッド部1112、被覆部112の順で低くなっている。その結果、光ファイバグレーティング11は、クラッド部1112を内側クラッドとし、被覆部112を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有している。なお、上記屈折率分布については、所定の波長の光がコア部1111をシングルモード伝搬し、クラッド部1112によってマルチモード伝搬するように設定されている。
【0039】
つぎに、基台12の構成について、さらに具体的に説明する。図3は、図1に示す光ファイバグレーティングデバイス1のA矢視図であり、図4は、B矢視図であり、図5は、図4におけるC-C線一部断面図である。
【0040】
図3〜5に示すように、基台12の互いに対向する各縁部には支持溝122、122がそれぞれ形成され、基台12の縁部の内側であって支持溝122、122の間の領域には収容溝121が形成されている。支持溝122、122は、V字状に形成されたV字溝であり、光ファイバグレーティング11の被覆部112の外径よりも大きい開口幅W1を有する。また、支持溝122、122は、一直線上に並ぶように形成される。このような支持溝122、122が光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持することによって、基台12は、収容溝121にグレーティング形成部113を弛みおよび曲げが殆ど無い状態で収容できる。
【0041】
また、支持溝122、122の深さD1は、被覆部112、112を支持溝122、122内に完全に収容できるような深さとされている。その結果、支持溝122、122は、光ファイバグレーティング11を基台12の上面から突出しないよう支持することができるので、光ファイバグレーティング11が外部のものと接触して破損することを防止できる。
【0042】
一方、収容溝121は、支持溝122、122よりも幅広且つ深底に形成されている。すなわち、収容溝121は、支持溝122、122の開口幅W1よりも大きい幅W2を有するとともに、支持溝122、122の深さD1よりも大きい深さD2を有する直方体状の溝である。その結果、グレーティング形成部113を収容溝121に収容する際および収容した状態で、グレーティング形成部113が収容溝121の内面に接触して傷付いたり破損したりすることが、確実に防止される。
【0043】
ここで、光ファイバグレーティングデバイス1に光を入力した場合について説明する。図6は、光ファイバグレーティングデバイス1に光を入力した場合について説明する説明図である。図6に示すように、光ファイバグレーティングデバイス1に紙面左方から光を入力すると、グレーティング形成部113のグレーティングの反射波長帯域内の波長を有する光は反射して紙面左方に出力し、それ以外の波長の光はグレーティング形成部113を透過して紙面右方に出力する。
【0044】
このとき、入力した光の一部はグレーティングによって吸収または散乱される。すると、吸収または散乱された光が熱に変換されることによって、グレーティング形成部113の温度が上昇する。上述したように、光ファイバ部111は正の線膨張係数を有するので、温度上昇によってグレーティング形成部113を伸長させようとする応力f1、f2が発生する。
【0045】
一方、グレーティング形成部113の外周を覆うように形成された樹脂部材13は、グレーティング形成部113において発生した熱を基台12に伝導する。その結果、基台12の温度が上昇する。上述したように、基台12は負の線膨張係数を有するので、温度上昇によって基台12を収縮させようとする応力f3、f4が発生する。
【0046】
ここで、グレーティング形成部113は、樹脂部材13によって基台12の収容溝121内に固着しているので、グレーティング形成部113に発生する応力f1、f2は、基台12に発生する応力f3、f4によってキャンセルされる。その結果、グレーティング形成部113の長さが伸長することが抑制されるので、グレーティングの中心波長の変化も抑制される。
【0047】
また、入力光の強度が増加すれば、グレーティング形成部113において発生する熱量も増加するので、応力f1、f2も増加する。しかし、同時に、基台12に伝導する熱量も増加するので、応力f3、f4も増加し、応力f1、f2がキャンセルされる。入力光の強度が減少する場合も同様である。
【0048】
すなわち、入力光強度の変化によるグレーティング形成部113の長さの変化は常に抑制される。その結果、光ファイバグレーティングデバイス1は、入力光強度によらず安定した中心波長を有するものとなる。
【0049】
一方、たとえば光ファイバグレーティングデバイス1の環境温度が上昇した場合は、グレーティング形成部113には応力f1、f2と同様の応力が発生し、基台12には応力f3、f4と同様の応力が発生する。しかしながら、上述したように、グレーティング形成部113は樹脂部材13によって基台12の収容溝121内に固着しているので、グレーティング形成部113に発生する応力は、基台12に発生する応力によってキャンセルされる。環境温度が下降した場合も同様である。
【0050】
したがって、この光ファイバグレーティングデバイス1は、入力光強度および環境温度によらず安定した反射中心波長を有するものとなる。また、この光ファイバグレーティングデバイス1は、簡単な構造を有しているので、低コストなものとなる。
【0051】
なお、この光ファイバグレーティングデバイスは、以下のように作製できる。はじめに、従来の方法を用いて作製した光ファイバグレーティング11と、収容溝121および支持溝122、122を形成した基台12とを用意する。つぎに、グレーティング形成部113が収容溝121に収容され、被覆部112、112が支持溝122、122に支持されるように、光ファイバグレーティング11を基台12に載置する。つぎに、樹脂部材13を、収容溝121および支持溝122、122に充填し、樹脂部材13に紫外線を照射して固化することによって、光ファイバグレーティングデバイス1が完成する。
【0052】
ここで、光ファイバグレーティング11を基台12に載置する際に、光ファイバグレーティング11に所定の張力を印加し、反射波長帯域が所望の中心波長を有するように光ファイバグレーティング11を伸長させた状態で、基台12の収容溝121および支持溝122、122に収容し、樹脂部材13によって固着することができる。
【0053】
なお、基台12の材質は、負の線膨張係数を有するものであれば特に限定されないが、たとえば、β−ユークリプタイトまたはβ−石英固溶体を主結晶とする多結晶体、ZrおよびHfの少なくともいずれかを含み、リン酸タングステン酸塩またはタングステン酸塩を主結晶とする多結晶体、および液晶ポリマーのいずれかとすればよい。なお、たとえば、石英系ガラスの線膨張係数は+0.5ppm/℃であるが、基台12が−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有するものであれば、石英系ガラスからなるグレーティング形成部113に発生する応力を効果的にキャンセルできる。このような材質としては、日本電気硝子社製のCERSAT(登録商標)がある。
【0054】
また、樹脂部材13は、たとえばUV硬化型エポキシ樹脂などのUV硬化樹脂からなる。しかし、樹脂材料13としては、UV硬化樹脂からなるものに限定されず、熱硬化樹脂等であっても、熱伝導率が十分に高く、グレーティング形成部113において発生した熱を効果的に基台12に伝導することができるものであればよい。さらに、ヤング率が十分に高く、グレーティング形成部113において発生した応力を、基台12において発生した応力によって効果的にキャンセルできるものであればよい。
【0055】
また、樹脂部材13の屈折率がクラッド部1112の屈折率よりも低い場合は、クラッド部1112を伝搬する光が樹脂部材13に漏洩することを防止できる。したがって、たとえば光をクラッド部1112内においてマルチモードで伝搬させたい場合は、樹脂部材13の屈折率をクラッド部1112の屈折率よりも低いものとすることが好ましい。
【0056】
また、樹脂部材13の屈折率がクラッド部1112の屈折率よりも高い場合は、クラッド部1112を伝搬する光を樹脂部材13に漏洩させることができる。したがって、たとえばコア部1111から漏洩した光がクラッド部1112を伝搬してしまうことを防止したい場合には、樹脂部材13の屈折率をクラッド部1112の屈折率よりも高いものとすることが好ましい。
【0057】
また、グレーティングによる散乱などによって、コア部1111を伝搬する光が、グレーティング形成部113から漏洩する場合がある。この漏洩光が樹脂部材13に到達した場合、樹脂部材13が漏洩光を吸収して発熱し、劣化するおそれがある。したがって、樹脂部材13は、グレーティング形成部113から漏洩する光を透過するものであることが好ましい。
【0058】
また、この光ファイバグレーティングデバイス1は、樹脂部材13を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えていてもよい。図7は、実施の形態1の変形例に係る光ファイバグレーティングデバイス1aを模式的に表した斜視概略図である。この光ファイバグレーティングデバイス1aは、光ファイバグレーティングデバイス1の上面に放熱部材14を備えたものである。この放熱部材14は、樹脂部材13および基台12の上面に密着させて配置されている。その結果、樹脂部材13を伝導して上面に到達した熱が効率的に放熱されるので、樹脂部材13に熱が蓄積して劣化することが防止される。さらに、基台12が有する熱も効率的に放熱されるので、基台12に熱が蓄積して劣化することが防止される。なお、この放熱部材14は、たとえば、熱伝導率が高いアルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることが好ましい。また、この放熱部材14は、樹脂部材13を保護する蓋としても機能しており、樹脂部材13の損傷、劣化などが防止される。
【0059】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスについて説明する。本実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスは、グレーティング形成部を挟むように配置され、光ファイバグレーティングを収容溝内に固着する補強樹脂部材を備えている。
【0060】
図8は、本実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。また、図9は、図8に示す光ファイバグレーティングデバイスのE矢視図である。図8、9に示すように、この光ファイバグレーティングデバイス2は、実施の形態1におけるものと同様の光ファイバグレーティング11と、基台22と、樹脂部材23と、補強樹脂部材24、24とを備える。
【0061】
基台22は、光ファイバグレーティング11のグレーティング形成部113を収容するV字状に形成された収容溝221を備えている。この収容溝221は、光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持する支持溝の役割も果たしている。また、基台22は、実施の形態1における基台12と同様に負の線膨張係数を有している。
【0062】
また、樹脂部材23は、実施の形態1における樹脂13と同様に、収容溝221を充填するように形成され、グレーティング形成部113の外周と、被覆部112、112のグレーティング形成部113に隣接する部分の外周を覆うように形成されている。そして、樹脂部材23は、グレーティング形成部113と、被覆部112、112の一部とを収容溝221内に固着している。
【0063】
また、補強樹脂部材24、24は、グレーティング形成部113を挟むように配置され、光ファイバグレーティング11を収容溝221内に固着している。ここで、補強樹脂部材24、24は、樹脂部材23よりも高い硬度を有するので、光ファイバグレーティング11は、樹脂部材23のみで固着する場合よりも一層強固に基台22に固着される。その結果、環境温度の変動に対する光ファイバグレーティングデバイス2の信頼性が一層向上する。また、補強樹脂部材24、24を備えることで、樹脂部材23に要求される硬度を低減できるので、樹脂部材23の材質の選択肢が広がり、たとえば、樹脂部材23として、熱伝導率が一層高いものを用いることができる。
【0064】
なお、樹脂部材23として、たとえば熱伝導率が1.3W/m・Kよりも大きい熱硬化樹脂であるジェル状のアルミナ含有シリコーン樹脂を用いることができる。また、補強樹脂部材24として、ショアD硬度が80よりも大きいUV硬化樹脂を用いることができる。
【0065】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る光ファイバレーザについて説明する。本実施の形態3に係る光ファイバグレーティングは、実施の形態1に係るものと同様の光ファイバグレーティングデバイスを用いて構成した光共振器を備えるものである。
【0066】
図10は、本実施の形態3に係る光ファイバレーザを模式的に表した概略図である。この光ファイバレーザ10は、励起光源である半導体レーザ素子21〜2nと、半導体レーザ素子21〜2nが出力する励起光を導波するマルチモード光ファイバ211〜21nと、マルチモード光ファイバ211〜21nが導波した励起光を結合し、ダブルクラッド光ファイバ31から出力させるTFB(Tapered Fiber Bundle)3と、光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有し、ダブルクラッド光ファイバ31と接続点C1において接続する光ファイバグレーティングデバイス1bと、光ファイバグレーティングデバイス1bと接続点C2において接続するダブルクラッド型の希土類元素添加光ファイバ4と、光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有し、希土類元素添加光ファイバ4と接続点C3において接続する光ファイバグレーティングデバイス1cと、光ファイバグレーティングデバイス1cと接続点C4において接続するシングルモード光ファイバ51を備えるコリメータ部品5と、コリメータ部品5の出力端側に配置されるとともに、光学ステージ61に載置された波長変換素子6とを備える。
【0067】
半導体レーザ素子21〜2nが出力する励起光の波長は915nm近傍である。また、光ファイバグレーティングデバイス1bは、中心波長が1064nmであり、中心波長およびその周辺の約2nmの幅の波長帯域における反射率が約100%であり、波長915nmの光はほとんど透過する。また、光ファイバグレーティングデバイス1cは、中心波長が1064nmであり、中心波長における反射率が10〜30%程度であり、反射波長帯域の半値全幅が約0.1nmであり、波長915nmの光はほとんど透過する。したがって、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、波長1064nmの光に対して光共振器を構成する。
【0068】
また、希土類元素添加光ファイバ4は、コア部にイットリビウム(Yb)イオンが添加されている。また、波長変換素子6は、PPLN等の非線形光学媒質からなる第二次高調波発生(SHG)素子である。また、光学ステージ61は、波長変換素子6の位置と角度を調整するものである。さらに、光学ステージ61は、ペルチェ素子などの冷却素子あるいはヒータなどの加熱素子が内蔵されており、これらの冷却または加熱素子によって波長変換素子6を所望の温度に調整する。
【0069】
つぎに、この光ファイバレーザ10の動作について説明する。半導体レーザ素子21〜2nが波長915nm近傍の励起光を出力すると、マルチモード光ファイバ211〜21nが各励起光を導波し、TFB3が導波した各励起光を結合してダブルクラッド光ファイバ31に出力する。ダブルクラッド光ファイバ31は結合した励起光をマルチモードで伝搬する。その後、光ファイバグレーティングデバイス1bがダブルクラッド光ファイバ31を伝搬した励起光を透過して、希土類元素添加光ファイバ4に到達させる。
【0070】
希土類元素添加光ファイバ4に到達した励起光は、希土類元素添加光ファイバ4の内側クラッド内をマルチモードで伝搬しながら、希土類元素添加光ファイバ4のコア部に添加したYbイオンを光励起し、波長1064nmを含む波長帯域を有する蛍光を発光させる。この蛍光は、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cが構成する光共振器内をシングルモードで往復しながら、Ybイオンの誘導放出作用により増幅され、発振波長1064nmにおいてレーザ発振する。
【0071】
図11は、各光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。なお、図11において、波長λ1は1064nmであり、反射率R1は約100%であり、反射率R2は10〜30%程度である。図11に示すように、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、それぞれ波長λ1を中心波長とする反射スペクトルS1、S2を有し、両者の反射波長帯域は重畳している。その結果、レーザ光は、出力スペクトルS3が示すように、重畳した反射帯域内の波長λ1で発振する。
【0072】
以上説明したように、発振波長1064nmのレーザ光が、光ファイバグレーティングデバイス1cの一端から出力する。つぎに、シングルモード光ファイバ51は、このレーザ光をコリメータ部品5に導波し、コリメータ部品5はこのレーザ光を平行光であるレーザ光L1として出力する。このレーザ光L1は、波長変換素子6に入力する。そして、波長変換素子6は、レーザ光L1を受付け、レーザ光L1の波長を変換し、波長532nmの波長変換レーザ光L2として出力する。なお、効率的に波長変換を行うためには、波長変換素子6が、レーザ光L1に対して、位相整合条件を満たすように配置されていることが好ましい。そのため、波長変換素子6は、光学ステージ61によって、その角度、位置、および温度が、位相整合条件を満たすように調整されている。
【0073】
ここで、半導体レーザ素子21〜2nが出力する各励起光の強度はたとえば10〜50Wであり、光ファイバグレーティングデバイス1bにはこれらの励起光が結合した強度50W以上の励起光が入力する。一方、光ファイバグレーティングデバイス1cの一端から出力するレーザ光の強度は1〜10Wである。すなわち、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cには、極めて高い強度の光が入力することとなる。
【0074】
しかしながら、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有するので、上述したような極めて高い強度の光が入力し、かつその強度が変化しても、反射波長帯域の変化がきわめて少ない。また、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、環境温度が変化しても、反射波長帯域の変化がきわめて少ない。したがって、この光ファイバレーザ10は、その出力強度や環境温度にかかわらず、発振波長がきわめて安定したレーザ光L1を出力することができる。
【0075】
さらに、上述した波長変換素子6の位相整合条件は、レーザ光L1の波長にも依存し、レーザ光L1の波長が位相整合条件を満たす波長から外れると、波長変換素子6の波長変換効率は急激に低下する。しかしながら、この光ファイバレーザ10は、レーザ光L1の波長がきわめて安定しているので、その出力強度や環境温度にかかわらず、波長変換効率を高い値に維持することができる。また、この光ファイバレーザ10は、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの中心波長を調整するための特別な温度調整手段を設ける必要がないので、低コストなものとなる。
【0076】
なお、この光ファイバレーザ10が備える光ファイバグレーティングデバイス1bにおいては、樹脂部材の屈折率が、クラッド部の屈折率よりも低いものとなっている。その結果、このクラッド部をマルチモードで伝搬する励起光が樹脂部材に漏洩しない。したがって、この光ファイバグレーティングデバイス1bは、励起光を効果的に希土類元素添加光ファイバ4に到達させることができる。
【0077】
また、上述したように、光ファイバグレーティングデバイス1cは、波長915nmの励起光をほとんど透過する。このため、希土類元素添加光ファイバ4において吸収されなかった残留励起光が、光ファイバグレーティングデバイス1cとシングルモード光ファイバ51との接続点C4に到達し、接続点C4においてシングルモード光ファイバ51のクラッド部に結合して伝搬し、波長変換素子6に到達してノイズ光を発生させる場合がある。そこで、この光ファイバレーザ10においては、上述したように、光ファイバグレーティングデバイス1cにおいて、樹脂部材の屈折率をクラッド部の屈折率よりも高くすることが好ましい。このようにすれば、光ファイバグレーティングデバイス1cにおいて、クラッド部を伝搬する残留励起光が樹脂部材に漏洩するので、残留励起光が接続点C4に到達することが防止される。その結果、波長変換素子6においてノイズ光が発生するのを防止できる。
【0078】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係る光ファイバレーザについて説明する。本実施の形態4に係る光ファイバレーザは、実施の形態3に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するが、希土類元素添加光ファイバおよび2つの光ファイバグレーティングが、偏波保持型光ファイバ構造を有し、単一偏波のレーザ光を発振させるものである。以下、本実施の形態3に係る希土類元素添加光ファイバおよび2つの光ファイバグレーティングデバイスの光ファイバ部について具体的に説明する。
【0079】
図12は、本実施の形態4に係る希土類元素添加光ファイバ4と2つの光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの光ファイバ部111b、111cとの各接続部を模式的に表した概略図である。なお、方向を説明するために、図12においてXY軸を定義している。図12に示すように、光ファイバ部111b、111cは、いずれも互いに直交する2軸方向についてコア部に複屈折特性を持たせた光ファイバであり、具体的には、それぞれコア部1111b、1111cと、クラッド部1112b、1112cと、クラッド部1112b、1112c内に、コア部1111bまたは1111cと一直線上に配列するように形成した応力付与母材1113b、1113cとを備えるPANDA型の偏波保持型光ファイバである。また、光ファイバ部111b、111cは、それぞれコア部1111b、1111cにグレーティングが形成されたグレーティング形成部113b、113cを有する。
【0080】
そして、光ファイバ部111b、111cは、応力付与母材1113bまたは1113cによって、互いに直交し、屈折率が異なるスロー軸(Slow軸)とファースト軸(Fast軸)とが形成されている。光ファイバ部111bについては、Slow軸がX軸方向に平行になっており、Fast軸がY軸方向に平行になっている。また、光ファイバ部111cについては、Fast軸がX軸方向に平行になっており、Slow軸がY軸方向に平行になっている。
【0081】
一方、希土類元素添加光ファイバ4も、コア部41と、クラッド部42と、クラッド部42内に、コア部41と一直線上に配列するように形成した応力付与母材43とを備えるPANDA型の偏波保持型光ファイバである。
【0082】
そして、希土類元素添加光ファイバ4も、応力付与母材43によって、直交するSlow軸とFast軸とが形成されている。なお、希土類元素添加光ファイバ4については、Fast軸がX軸方向に平行になっており、Slow軸がY軸方向に平行になっている。
【0083】
そして、光ファイバ部111bと希土類元素添加光ファイバ4とは、接続点C2において、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように接続している。一方、光ファイバ部111cと希土類元素添加光ファイバ4とは、接続点C3において、互いのSlow軸とSlow軸とが平行になるように接続している。その結果、光ファイバ部111b、111cは、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続していることとなる。
【0084】
本実施の形態4に係る光ファイバレーザは、光ファイバ部111b、111cと希土類元素添加光ファイバ4とを上記のように接続していることによって、単一偏波のレーザ光を発振することができる。以下、具体的に説明する。
【0085】
図13は、各光ファイバ部111b、111cの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。なお、図13において、波長λ1は1064nmであり、反射率R1は約100%であり、反射率R2は10〜30%程度である。ここで、光ファイバ部111b、111cは、コア部に複屈折性を持たせたものなので、反射スペクトルには、Slow軸とFast軸のそれぞれに対応する2つの反射波長帯が現われる。
【0086】
ここで、この複屈折率差を調整して、図13に示すように、光ファイバ部111bの反射スペクトルS4を、Fast軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ1を中心波長とするピークを有し、Slow軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ2を中心波長とするピークを有するスペクトル形状となるようにしておく。同様に、光ファイバ部111cの反射スペクトルS5を、Fast軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ3を中心波長とするピークを有し、Slow軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ1を中心波長とするピークを有するスペクトル形状となるようにしておく。すなわち、光ファイバ部111bのFast軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域と、光ファイバ部111cのSlow軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域とを重畳させるようにしておく。
【0087】
すると、希土類元素添加光ファイバ4において発生した蛍光のうち、Y軸方向の直線偏波を有するものについては、希土類元素添加光ファイバ4内をその偏光方向を維持したまま伝搬する。そして、光ファイバ部111b内に入射すると、Fast軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113bのグレーティングによって、波長λ1をピークとする反射帯域内の光だけが反射される。
【0088】
この反射した光は、希土類元素添加光ファイバ4内をその偏光方向を維持したまま伝搬し、光ファイバ部111cに入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113cのグレーティングによって、再び反射される。すなわち、Y軸方向の直線偏波を有する光に対しては、光ファイバ部111b、111cが光共振器を構成することになる。したがって、上記の反射が繰り返される結果、中心波長がλ1の出力スペクトルS6を有し、Y軸方向の直線偏波を有するレーザ光が発振する。
【0089】
一方、希土類元素添加光ファイバ4において発生した蛍光のうち、X軸方向の直線偏波を有するものについては、光ファイバ部111b内に入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113bのグレーティングによって、波長λ2をピークとする反射帯域内の光だけが反射される。
【0090】
しかし、この反射した光は、光ファイバ部111cに入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113cのグレーティングを透過してしまうので、レーザ発振は起こらない。同様に、X軸方向の直線偏波を有する光が光ファイバ部111c内に入射すると、グレーティング形成部113cのグレーティングによって、波長λ3をピークとする反射帯域内の光だけが反射されるが、この反射した光はグレーティング形成部113bのグレーティングを透過するので、レーザ発振は起こらない。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態4に係る光ファイバレーザにおいては、Y軸方向の直線偏波を有するレーザ光のみが発振する。すなわち、この光ファイバレーザは、単一偏波のレーザ光を発振する単一偏波光ファイバレーザとなる。さらに、この光ファイバレーザは、実施の形態3に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するので、その出力強度や環境温度にかかわらず、発振波長がきわめて安定したレーザ光および波長変換レーザ光を出力することができる。
【0092】
なお、上記実施の形態4では、偏波保持型光ファイバとしてPANDA型の光ファイバを用いたが、本発明はこれに限らず、コア部の断面形状が楕円である楕円コア型の光ファイバを用いてもよい。なお、楕円コア型の光ファイバにおいては、一般的にFast軸とSlow軸との複屈折率差が小さいので、各軸に対応する2つの反射波長帯域が近接する。しかし、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、環境温度や入射する光の強度に関わらず、反射波長帯域がシフトせずに安定しているので、2つの反射波長帯域が近接しているとしても、重畳することはない。その結果、環境温度や入射する光の強度に関わらず、確実に単一偏波でのレーザ発振が維持される。
【0093】
(実施例、比較例)
本発明の実施例として、実施の形態4に係る光ファイバレーザと同様のものを作製し、環境温度25℃において、励起光源から出力する励起光の強度を変化させながらコリメータ部品におけるレーザ光の出力および波長を測定し、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について調べた。また、比較例として、実施例に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するが、励起光源側に配置する光ファイバグレーティングとして温度補償機構を備えていないものを用い、コリメータ部品側に配置する光ファイバグレーティングとして特許文献2に開示されたものと同様の温度補償機構を備えるものと用いた光ファイバレーザを作製し、実施例と同様の方法を用いてレーザ光の出力と波長の変化量との関係について調べた。
【0094】
図14は、実施例と比較例とについて、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について示す図である。なお、波長変化量は、出力が約1Wの場合の発振波長を基準としたものである。図14に示すように、実施例に係る光ファイバレーザにおいては、出力に対する波長変化量が小さく、発振波長がきわめて安定していることが確認された。一方、比較例に係る光ファイバレーザにおいては、出力に対する波長変化量が、実施例の場合の6倍以上であり、きわめて大きかった。
【0095】
つぎに、環境温度を変化させた場合の実施例および比較例に係る光ファイバレーザの特性の変化について測定した。はじめに、環境温度を変化させた場合の、各光ファイバレーザに用いられている光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長の変化について測定した。
【0096】
図15は、実施例と比較例とについて、環境温度と各光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長との関係について示す図である。なお、図15において、HRは、励起光源側に配置する光ファイバグレーティングデバイスを表し、OCは、コリメータ部側に配置する光ファイバグレーティングデバイスを表す。図15に示すように、温度補償機構を備えていない比較例のHRは、中心波長の環境温度依存性が極めて大きく、その温度係数は24.2pm/℃であった。一方、従来の温度補償機構を備える比較例のOC、および実施例のHR、OCは、温度係数が小さく、その値はそれぞれ1.5pm/℃、0.6pm/℃、3.3pm/℃であった。
【0097】
つぎに、環境温度を変化させた場合の、実施例および比較例に係る光ファイバレーザの出力安定性について測定した。具体的には、環境温度を25℃として、各光ファイバレーザのレーザ光出力が約1Wになるように各励起光の強度を固定し、その後環境温度を変化させながら、各レーザ光出力の1時間以内の出力の変動幅を測定した。
【0098】
図16は、実施例と比較例とについて、環境温度とレーザ光出力の変動幅との関係について示す図である。図16に示すように、実施例に係る光ファイバレーザにおいては、環境温度が0〜70℃にわたって、レーザ光出力の変動幅が2%以内であり、きわめて安定していた。一方、比較例に係る光ファイバレーザにおいては、環境温度が変化するとHRの中心波長が大きく変化するので、環境温度が25℃前後の場合にしかレーザ発振が起こらず、またレーザ発振が起こったとしても、レーザ光出力の変動幅は大きく、きわめて不安定であった。
【0099】
また、実施例に係る光ファイバレーザの励起光の強度を増加し、レーザ光出力を約10Wとしたが、レーザ光出力の変動幅はきわめて安定していた。一方、環境温度25℃において、比較例に係る光ファイバレーザの励起光の強度を増加したところ、やがてレーザ発振が起こらなくなった。
【0100】
なお、上記実施の形態4においては、光ファイバ部111b、111cが、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続している。しかしながら、たとえば図12において、光ファイバ部111bを中心軸の回りに時計回りに90度回転させて希土類元素添加光ファイバ4と接続して、光ファイバ部111b、111cが、互いのSlow軸とFast軸とが平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続するようにしてもよい。この場合は、たとえばY軸方向の直線偏波を有するレーザ光のみを発振させる場合には、複屈折率差を調整し、光ファイバ部111b、111cのSlow軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域同士が重畳させるようにし、Fast軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域同士は重畳しないようにしておく。
【0101】
また、上記実施の形態3,4では、希土類元素添加光ファイバのコア部にYbイオンを添加したが、エルビウム(Er)イオンを添加したり、YbイオンとErイオンとを共添加したりしてもよい。この場合、励起光の波長はたとえば980nmとする。また、レーザ発振波長については、1064nmに限られず、各光ファイバグレーティングの中心波長を調整すれば発振波長を調整できる。
【0102】
また、上記実施の形態1〜4では、光ファイバグレーティングデバイスおよび希土類元素添加光ファイバとしてダブルクラッド型光ファイバを用いたが、いずれの場合もシングルモード光ファイバを用いてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態1、3、4では、収容溝は、支持溝よりも幅広且つ深底に形成されているが、基台の加工性を高めるために、実施の形態2のように、収容溝と支持溝とを同一形状のV字溝としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図2】図1に示す光ファイバグレーティングの概略断面と対応する屈折率分布とを示す図である。
【図3】図1に示す光ファイバグレーティングデバイスのA矢視図である。
【図4】図1に示す光ファイバグレーティングデバイスのB矢視図である。
【図5】図4におけるC-C線一部断面図である。
【図6】光ファイバグレーティングデバイスに光を入力した場合について説明する説明図である。
【図7】実施の形態1の変形例に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図8】実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図9】図8に示す光ファイバグレーティングデバイスのE矢視図である。
【図10】実施の形態3に係る光ファイバレーザを模式的に表した概略図である。
【図11】各光ファイバグレーティングデバイスの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。
【図12】実施の形態4に係る希土類元素添加光ファイバと2つの光ファイバグレーティングデバイスの光ファイバ部との各接続部を模式的に表した概略図である。
【図13】各光ファイバ部の反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。
【図14】実施例と比較例とについて、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について示す図である。
【図15】実施例と比較例とについて、環境温度と各光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長との関係について示す図である。
【図16】実施例と比較例とについて、環境温度とレーザ光出力の変動幅との関係について示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1、1a〜1c、2 光ファイバグレーティングデバイス
11 光ファイバグレーティング
111、111b、111c 光ファイバ部
112 被覆部
113、113b、113c グレーティング形成部
12、22 基台
121、221 収容溝
122 支持溝
13、23 樹脂部材
14 放熱部材
21〜2n 半導体レーザ素子
211〜21n マルチモード光ファイバ
3 TFB
31 ダブルクラッド光ファイバ
4 希土類元素添加光ファイバ
41、1111、1111b、1111c コア部
42、1112、1112b、1112c クラッド部
43、1113b、1113c 応力付与母材
5 コリメータ部品
51 シングルモード光ファイバ
6 波長変換素子
61 光学ステージ
10 光ファイバレーザ
C1〜C4 接続点
f1〜f4 応力
L1 レーザ光
L2 波長変換レーザ光
S1〜S6 スペクトル
W1、W2 幅
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバグレーティングデバイスおよび光ファイバレーザに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバのコア部に周期的に変化する屈折率のグレーティングを形成することによって作製された光ファイバグレーティングが知られている。この光ファイバグレーティングは、形成したグレーティングによって、所定の波長を中心とする波長帯域の光を反射するものであり、たとえば反射型波長選択フィルタとして機能する。この光ファイバグレーティングは、たとえば光ファイバレーザにおいて光共振器を構成するために用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
この光ファイバグレーティングの反射波長帯域の中心波長は、形成したグレーティングの周期とコア部の実効屈折率とによって定まるブラッグ反射波長と一致する。ここで、この光ファイバグレーティングにおいては、グレーティングの周期とコア部の実効屈折率とは、いずれも温度依存性を有する。したがって、この光ファイバグレーティングにおいては、中心波長が環境温度によって変化してしまうという課題がある。そこで、従来の光ファイバグレーティングデバイスは、中心波長の変化を抑制するために、種々の温度補償機構を備えている(特許文献2、3参照)。
【0004】
たとえば、特許文献2に開示される光ファイバグレーティングデバイスは、光ファイバグレーティングの一端を台座部に固定し、他の一端を台座部とは線膨張係数が異なる材料からなる梁部に固定した構成を有する温度補償用パッケージを備えている。
【0005】
一方、特許文献3に開示される光ファイバグレーティングデバイスは、負の線膨張係数を有する円筒形状の基材のスリット内に光ファイバグレーティングを挿入し、この光ファイバグレーティングの両端部を基材内に接着剤で固定した構成を有する。
【0006】
特許文献2、3によれば、上記のいずれの光ファイバグレーティングデバイスも、上記したそれぞれの構成の温度補償機構を有する結果、中心波長の温度依存変化が抑制されている。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6167066号明細書
【特許文献2】特開2003−4956号公報
【特許文献3】特開2001−318242号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の光ファイバグレーティングデバイスは、入力する光の強度が変化した場合に、中心波長が変化してしまうという課題がある。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、入力光強度および環境温度によらず安定した光学特性を有する光ファイバグレーティングデバイスおよびこれを用いた光ファイバレーザを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、前記グレーティング形成部を除いた前記クラッド部の外周に形成した被覆部を備え、前記基台は、前記光ファイバグレーティングを前記被覆部において支持する支持溝を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、前記クラッド部を内側クラッドとし、前記被覆部を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部の外周と、前記被覆部の該グレーティング形成部に隣接する部分の外周とを覆うように形成されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部から漏洩する光を透過することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも高いことを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも低いことを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材は、UV硬化樹脂からなることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記基台は、−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有することを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記収容溝は、V字状に形成されたことを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記収容溝は、前記支持溝に比して幅広且つ深底に形成されたことを特徴とする。
【0021】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記支持溝は、V字状に形成されたことを特徴とする。
【0022】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材に密着するように配置され、該樹脂部材を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えたことを特徴とする。
【0023】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記放熱部材は、前記基台の上部を覆うように形成されていることを特徴とする。
【0024】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記放熱部材は、アルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることを特徴とする。
【0025】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記光ファイバグレーティングは、所定の張力を印加した状態で前記基台に固定されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、上記発明において、前記樹脂部材よりも高い硬度を有し、前記グレーティング形成部を挟むように配置され、前記光ファイバグレーティングを前記収容溝内に固着する補強樹脂部材をさらに備えたことを特徴とする。
【0027】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明のいずれか1つに係る2つの光ファイバグレーティングデバイスと、前記2つの光ファイバグレーティングデバイス間に配置した希土類元素添加光ファイバと、前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給する励起光源と、を備え、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスの各反射波長帯域は重畳しており、前記励起光源が前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給することによって、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスのいずれか一方の端部から前記重畳した波長帯域内の発振波長を有するレーザ光を出力することを特徴とする。
【0028】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記レーザ光を出力する出力端部側に配置され、前記レーザ光を受付け該レーザ光の波長を変換して出力する波長変換素子を備えたことを特徴とする。
【0029】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記希土類元素添加光ファイバおよび前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、偏波保持型光ファイバ構造を有し、前記一方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つと、前記他方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つとを重畳させて、該重畳した波長帯域内の発振波長を有する単一偏波のレーザ光を発振することを特徴とする。
【0030】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸とファースト軸とが平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする。
【0031】
また、本発明に係る光ファイバレーザは、上記発明において、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸が互いのファースト軸と平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、負の線膨張係数を有する基台と、少なくとも光ファイバグレーティングのグレーティング形成部の外周を覆うように形成され、グレーティング形成部を基台の収容溝内に固着するとともに、グレーティング形成部において発生する熱を基台に伝導する樹脂部材とを備えたことによって、光ファイバグレーティングの光学特性の温度依存変化および入力光強度依存変化が抑制されるので、入力光強度および環境温度によらず安定した光学特性を有する光ファイバグレーティングデバイスを実現できるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、図面を参照して本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスおよび光ファイバレーザの実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。図1に示すように、この光ファイバグレーティングデバイス1は、光ファイバグレーティング11と、基台12と、樹脂部材13とを備える。以下、各構成要素について具体的に説明する。
【0035】
光ファイバグレーティング11は、正の線膨張係数を有する石英系ガラスからなる光ファイバ部111と、被覆部112、112とを備え、光ファイバ部111は、コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部113を有する。また、被覆部112、112は、グレーティング形成部113を除いた光ファイバ部111の外周に形成されている。
【0036】
また、基台12は、光ファイバグレーティング11のグレーティング形成部113を収容する収容溝121と、光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持する支持溝122、122とを備える。この基台12は、負の線膨張係数を有している。
【0037】
また、樹脂部材13は、UV硬化樹脂からなり、収容溝121と支持溝122、122とを充填するように形成されている。すなわち、この樹脂部材13は、グレーティング形成部113の外周と、被覆部112、112のグレーティング形成部113に隣接する部分の外周を覆うように形成されている。そして、樹脂部材13は、グレーティング形成部113を収容溝121内に固着するとともに、被覆部112、112の一部を支持溝122、122内に固着している。
【0038】
つぎに、光ファイバグレーティング11の構成について、さらに具体的に説明する。図2は、図1に示す光ファイバグレーティング11の概略断面と対応する屈折率分布とを示す図である。図2に示すように、光ファイバグレーティング11において、光ファイバ部111は、コア部1111とクラッド部1112とを備えている。また、屈折率分布については、コア部1111、クラッド部1112、被覆部112の順で低くなっている。その結果、光ファイバグレーティング11は、クラッド部1112を内側クラッドとし、被覆部112を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有している。なお、上記屈折率分布については、所定の波長の光がコア部1111をシングルモード伝搬し、クラッド部1112によってマルチモード伝搬するように設定されている。
【0039】
つぎに、基台12の構成について、さらに具体的に説明する。図3は、図1に示す光ファイバグレーティングデバイス1のA矢視図であり、図4は、B矢視図であり、図5は、図4におけるC-C線一部断面図である。
【0040】
図3〜5に示すように、基台12の互いに対向する各縁部には支持溝122、122がそれぞれ形成され、基台12の縁部の内側であって支持溝122、122の間の領域には収容溝121が形成されている。支持溝122、122は、V字状に形成されたV字溝であり、光ファイバグレーティング11の被覆部112の外径よりも大きい開口幅W1を有する。また、支持溝122、122は、一直線上に並ぶように形成される。このような支持溝122、122が光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持することによって、基台12は、収容溝121にグレーティング形成部113を弛みおよび曲げが殆ど無い状態で収容できる。
【0041】
また、支持溝122、122の深さD1は、被覆部112、112を支持溝122、122内に完全に収容できるような深さとされている。その結果、支持溝122、122は、光ファイバグレーティング11を基台12の上面から突出しないよう支持することができるので、光ファイバグレーティング11が外部のものと接触して破損することを防止できる。
【0042】
一方、収容溝121は、支持溝122、122よりも幅広且つ深底に形成されている。すなわち、収容溝121は、支持溝122、122の開口幅W1よりも大きい幅W2を有するとともに、支持溝122、122の深さD1よりも大きい深さD2を有する直方体状の溝である。その結果、グレーティング形成部113を収容溝121に収容する際および収容した状態で、グレーティング形成部113が収容溝121の内面に接触して傷付いたり破損したりすることが、確実に防止される。
【0043】
ここで、光ファイバグレーティングデバイス1に光を入力した場合について説明する。図6は、光ファイバグレーティングデバイス1に光を入力した場合について説明する説明図である。図6に示すように、光ファイバグレーティングデバイス1に紙面左方から光を入力すると、グレーティング形成部113のグレーティングの反射波長帯域内の波長を有する光は反射して紙面左方に出力し、それ以外の波長の光はグレーティング形成部113を透過して紙面右方に出力する。
【0044】
このとき、入力した光の一部はグレーティングによって吸収または散乱される。すると、吸収または散乱された光が熱に変換されることによって、グレーティング形成部113の温度が上昇する。上述したように、光ファイバ部111は正の線膨張係数を有するので、温度上昇によってグレーティング形成部113を伸長させようとする応力f1、f2が発生する。
【0045】
一方、グレーティング形成部113の外周を覆うように形成された樹脂部材13は、グレーティング形成部113において発生した熱を基台12に伝導する。その結果、基台12の温度が上昇する。上述したように、基台12は負の線膨張係数を有するので、温度上昇によって基台12を収縮させようとする応力f3、f4が発生する。
【0046】
ここで、グレーティング形成部113は、樹脂部材13によって基台12の収容溝121内に固着しているので、グレーティング形成部113に発生する応力f1、f2は、基台12に発生する応力f3、f4によってキャンセルされる。その結果、グレーティング形成部113の長さが伸長することが抑制されるので、グレーティングの中心波長の変化も抑制される。
【0047】
また、入力光の強度が増加すれば、グレーティング形成部113において発生する熱量も増加するので、応力f1、f2も増加する。しかし、同時に、基台12に伝導する熱量も増加するので、応力f3、f4も増加し、応力f1、f2がキャンセルされる。入力光の強度が減少する場合も同様である。
【0048】
すなわち、入力光強度の変化によるグレーティング形成部113の長さの変化は常に抑制される。その結果、光ファイバグレーティングデバイス1は、入力光強度によらず安定した中心波長を有するものとなる。
【0049】
一方、たとえば光ファイバグレーティングデバイス1の環境温度が上昇した場合は、グレーティング形成部113には応力f1、f2と同様の応力が発生し、基台12には応力f3、f4と同様の応力が発生する。しかしながら、上述したように、グレーティング形成部113は樹脂部材13によって基台12の収容溝121内に固着しているので、グレーティング形成部113に発生する応力は、基台12に発生する応力によってキャンセルされる。環境温度が下降した場合も同様である。
【0050】
したがって、この光ファイバグレーティングデバイス1は、入力光強度および環境温度によらず安定した反射中心波長を有するものとなる。また、この光ファイバグレーティングデバイス1は、簡単な構造を有しているので、低コストなものとなる。
【0051】
なお、この光ファイバグレーティングデバイスは、以下のように作製できる。はじめに、従来の方法を用いて作製した光ファイバグレーティング11と、収容溝121および支持溝122、122を形成した基台12とを用意する。つぎに、グレーティング形成部113が収容溝121に収容され、被覆部112、112が支持溝122、122に支持されるように、光ファイバグレーティング11を基台12に載置する。つぎに、樹脂部材13を、収容溝121および支持溝122、122に充填し、樹脂部材13に紫外線を照射して固化することによって、光ファイバグレーティングデバイス1が完成する。
【0052】
ここで、光ファイバグレーティング11を基台12に載置する際に、光ファイバグレーティング11に所定の張力を印加し、反射波長帯域が所望の中心波長を有するように光ファイバグレーティング11を伸長させた状態で、基台12の収容溝121および支持溝122、122に収容し、樹脂部材13によって固着することができる。
【0053】
なお、基台12の材質は、負の線膨張係数を有するものであれば特に限定されないが、たとえば、β−ユークリプタイトまたはβ−石英固溶体を主結晶とする多結晶体、ZrおよびHfの少なくともいずれかを含み、リン酸タングステン酸塩またはタングステン酸塩を主結晶とする多結晶体、および液晶ポリマーのいずれかとすればよい。なお、たとえば、石英系ガラスの線膨張係数は+0.5ppm/℃であるが、基台12が−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有するものであれば、石英系ガラスからなるグレーティング形成部113に発生する応力を効果的にキャンセルできる。このような材質としては、日本電気硝子社製のCERSAT(登録商標)がある。
【0054】
また、樹脂部材13は、たとえばUV硬化型エポキシ樹脂などのUV硬化樹脂からなる。しかし、樹脂材料13としては、UV硬化樹脂からなるものに限定されず、熱硬化樹脂等であっても、熱伝導率が十分に高く、グレーティング形成部113において発生した熱を効果的に基台12に伝導することができるものであればよい。さらに、ヤング率が十分に高く、グレーティング形成部113において発生した応力を、基台12において発生した応力によって効果的にキャンセルできるものであればよい。
【0055】
また、樹脂部材13の屈折率がクラッド部1112の屈折率よりも低い場合は、クラッド部1112を伝搬する光が樹脂部材13に漏洩することを防止できる。したがって、たとえば光をクラッド部1112内においてマルチモードで伝搬させたい場合は、樹脂部材13の屈折率をクラッド部1112の屈折率よりも低いものとすることが好ましい。
【0056】
また、樹脂部材13の屈折率がクラッド部1112の屈折率よりも高い場合は、クラッド部1112を伝搬する光を樹脂部材13に漏洩させることができる。したがって、たとえばコア部1111から漏洩した光がクラッド部1112を伝搬してしまうことを防止したい場合には、樹脂部材13の屈折率をクラッド部1112の屈折率よりも高いものとすることが好ましい。
【0057】
また、グレーティングによる散乱などによって、コア部1111を伝搬する光が、グレーティング形成部113から漏洩する場合がある。この漏洩光が樹脂部材13に到達した場合、樹脂部材13が漏洩光を吸収して発熱し、劣化するおそれがある。したがって、樹脂部材13は、グレーティング形成部113から漏洩する光を透過するものであることが好ましい。
【0058】
また、この光ファイバグレーティングデバイス1は、樹脂部材13を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えていてもよい。図7は、実施の形態1の変形例に係る光ファイバグレーティングデバイス1aを模式的に表した斜視概略図である。この光ファイバグレーティングデバイス1aは、光ファイバグレーティングデバイス1の上面に放熱部材14を備えたものである。この放熱部材14は、樹脂部材13および基台12の上面に密着させて配置されている。その結果、樹脂部材13を伝導して上面に到達した熱が効率的に放熱されるので、樹脂部材13に熱が蓄積して劣化することが防止される。さらに、基台12が有する熱も効率的に放熱されるので、基台12に熱が蓄積して劣化することが防止される。なお、この放熱部材14は、たとえば、熱伝導率が高いアルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることが好ましい。また、この放熱部材14は、樹脂部材13を保護する蓋としても機能しており、樹脂部材13の損傷、劣化などが防止される。
【0059】
(実施の形態2)
つぎに、本発明の実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスについて説明する。本実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスは、グレーティング形成部を挟むように配置され、光ファイバグレーティングを収容溝内に固着する補強樹脂部材を備えている。
【0060】
図8は、本実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。また、図9は、図8に示す光ファイバグレーティングデバイスのE矢視図である。図8、9に示すように、この光ファイバグレーティングデバイス2は、実施の形態1におけるものと同様の光ファイバグレーティング11と、基台22と、樹脂部材23と、補強樹脂部材24、24とを備える。
【0061】
基台22は、光ファイバグレーティング11のグレーティング形成部113を収容するV字状に形成された収容溝221を備えている。この収容溝221は、光ファイバグレーティング11を被覆部112、112において支持する支持溝の役割も果たしている。また、基台22は、実施の形態1における基台12と同様に負の線膨張係数を有している。
【0062】
また、樹脂部材23は、実施の形態1における樹脂13と同様に、収容溝221を充填するように形成され、グレーティング形成部113の外周と、被覆部112、112のグレーティング形成部113に隣接する部分の外周を覆うように形成されている。そして、樹脂部材23は、グレーティング形成部113と、被覆部112、112の一部とを収容溝221内に固着している。
【0063】
また、補強樹脂部材24、24は、グレーティング形成部113を挟むように配置され、光ファイバグレーティング11を収容溝221内に固着している。ここで、補強樹脂部材24、24は、樹脂部材23よりも高い硬度を有するので、光ファイバグレーティング11は、樹脂部材23のみで固着する場合よりも一層強固に基台22に固着される。その結果、環境温度の変動に対する光ファイバグレーティングデバイス2の信頼性が一層向上する。また、補強樹脂部材24、24を備えることで、樹脂部材23に要求される硬度を低減できるので、樹脂部材23の材質の選択肢が広がり、たとえば、樹脂部材23として、熱伝導率が一層高いものを用いることができる。
【0064】
なお、樹脂部材23として、たとえば熱伝導率が1.3W/m・Kよりも大きい熱硬化樹脂であるジェル状のアルミナ含有シリコーン樹脂を用いることができる。また、補強樹脂部材24として、ショアD硬度が80よりも大きいUV硬化樹脂を用いることができる。
【0065】
(実施の形態3)
つぎに、本発明の実施の形態3に係る光ファイバレーザについて説明する。本実施の形態3に係る光ファイバグレーティングは、実施の形態1に係るものと同様の光ファイバグレーティングデバイスを用いて構成した光共振器を備えるものである。
【0066】
図10は、本実施の形態3に係る光ファイバレーザを模式的に表した概略図である。この光ファイバレーザ10は、励起光源である半導体レーザ素子21〜2nと、半導体レーザ素子21〜2nが出力する励起光を導波するマルチモード光ファイバ211〜21nと、マルチモード光ファイバ211〜21nが導波した励起光を結合し、ダブルクラッド光ファイバ31から出力させるTFB(Tapered Fiber Bundle)3と、光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有し、ダブルクラッド光ファイバ31と接続点C1において接続する光ファイバグレーティングデバイス1bと、光ファイバグレーティングデバイス1bと接続点C2において接続するダブルクラッド型の希土類元素添加光ファイバ4と、光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有し、希土類元素添加光ファイバ4と接続点C3において接続する光ファイバグレーティングデバイス1cと、光ファイバグレーティングデバイス1cと接続点C4において接続するシングルモード光ファイバ51を備えるコリメータ部品5と、コリメータ部品5の出力端側に配置されるとともに、光学ステージ61に載置された波長変換素子6とを備える。
【0067】
半導体レーザ素子21〜2nが出力する励起光の波長は915nm近傍である。また、光ファイバグレーティングデバイス1bは、中心波長が1064nmであり、中心波長およびその周辺の約2nmの幅の波長帯域における反射率が約100%であり、波長915nmの光はほとんど透過する。また、光ファイバグレーティングデバイス1cは、中心波長が1064nmであり、中心波長における反射率が10〜30%程度であり、反射波長帯域の半値全幅が約0.1nmであり、波長915nmの光はほとんど透過する。したがって、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、波長1064nmの光に対して光共振器を構成する。
【0068】
また、希土類元素添加光ファイバ4は、コア部にイットリビウム(Yb)イオンが添加されている。また、波長変換素子6は、PPLN等の非線形光学媒質からなる第二次高調波発生(SHG)素子である。また、光学ステージ61は、波長変換素子6の位置と角度を調整するものである。さらに、光学ステージ61は、ペルチェ素子などの冷却素子あるいはヒータなどの加熱素子が内蔵されており、これらの冷却または加熱素子によって波長変換素子6を所望の温度に調整する。
【0069】
つぎに、この光ファイバレーザ10の動作について説明する。半導体レーザ素子21〜2nが波長915nm近傍の励起光を出力すると、マルチモード光ファイバ211〜21nが各励起光を導波し、TFB3が導波した各励起光を結合してダブルクラッド光ファイバ31に出力する。ダブルクラッド光ファイバ31は結合した励起光をマルチモードで伝搬する。その後、光ファイバグレーティングデバイス1bがダブルクラッド光ファイバ31を伝搬した励起光を透過して、希土類元素添加光ファイバ4に到達させる。
【0070】
希土類元素添加光ファイバ4に到達した励起光は、希土類元素添加光ファイバ4の内側クラッド内をマルチモードで伝搬しながら、希土類元素添加光ファイバ4のコア部に添加したYbイオンを光励起し、波長1064nmを含む波長帯域を有する蛍光を発光させる。この蛍光は、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cが構成する光共振器内をシングルモードで往復しながら、Ybイオンの誘導放出作用により増幅され、発振波長1064nmにおいてレーザ発振する。
【0071】
図11は、各光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。なお、図11において、波長λ1は1064nmであり、反射率R1は約100%であり、反射率R2は10〜30%程度である。図11に示すように、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、それぞれ波長λ1を中心波長とする反射スペクトルS1、S2を有し、両者の反射波長帯域は重畳している。その結果、レーザ光は、出力スペクトルS3が示すように、重畳した反射帯域内の波長λ1で発振する。
【0072】
以上説明したように、発振波長1064nmのレーザ光が、光ファイバグレーティングデバイス1cの一端から出力する。つぎに、シングルモード光ファイバ51は、このレーザ光をコリメータ部品5に導波し、コリメータ部品5はこのレーザ光を平行光であるレーザ光L1として出力する。このレーザ光L1は、波長変換素子6に入力する。そして、波長変換素子6は、レーザ光L1を受付け、レーザ光L1の波長を変換し、波長532nmの波長変換レーザ光L2として出力する。なお、効率的に波長変換を行うためには、波長変換素子6が、レーザ光L1に対して、位相整合条件を満たすように配置されていることが好ましい。そのため、波長変換素子6は、光学ステージ61によって、その角度、位置、および温度が、位相整合条件を満たすように調整されている。
【0073】
ここで、半導体レーザ素子21〜2nが出力する各励起光の強度はたとえば10〜50Wであり、光ファイバグレーティングデバイス1bにはこれらの励起光が結合した強度50W以上の励起光が入力する。一方、光ファイバグレーティングデバイス1cの一端から出力するレーザ光の強度は1〜10Wである。すなわち、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cには、極めて高い強度の光が入力することとなる。
【0074】
しかしながら、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイス1と同様の構成を有するので、上述したような極めて高い強度の光が入力し、かつその強度が変化しても、反射波長帯域の変化がきわめて少ない。また、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cは、環境温度が変化しても、反射波長帯域の変化がきわめて少ない。したがって、この光ファイバレーザ10は、その出力強度や環境温度にかかわらず、発振波長がきわめて安定したレーザ光L1を出力することができる。
【0075】
さらに、上述した波長変換素子6の位相整合条件は、レーザ光L1の波長にも依存し、レーザ光L1の波長が位相整合条件を満たす波長から外れると、波長変換素子6の波長変換効率は急激に低下する。しかしながら、この光ファイバレーザ10は、レーザ光L1の波長がきわめて安定しているので、その出力強度や環境温度にかかわらず、波長変換効率を高い値に維持することができる。また、この光ファイバレーザ10は、光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの中心波長を調整するための特別な温度調整手段を設ける必要がないので、低コストなものとなる。
【0076】
なお、この光ファイバレーザ10が備える光ファイバグレーティングデバイス1bにおいては、樹脂部材の屈折率が、クラッド部の屈折率よりも低いものとなっている。その結果、このクラッド部をマルチモードで伝搬する励起光が樹脂部材に漏洩しない。したがって、この光ファイバグレーティングデバイス1bは、励起光を効果的に希土類元素添加光ファイバ4に到達させることができる。
【0077】
また、上述したように、光ファイバグレーティングデバイス1cは、波長915nmの励起光をほとんど透過する。このため、希土類元素添加光ファイバ4において吸収されなかった残留励起光が、光ファイバグレーティングデバイス1cとシングルモード光ファイバ51との接続点C4に到達し、接続点C4においてシングルモード光ファイバ51のクラッド部に結合して伝搬し、波長変換素子6に到達してノイズ光を発生させる場合がある。そこで、この光ファイバレーザ10においては、上述したように、光ファイバグレーティングデバイス1cにおいて、樹脂部材の屈折率をクラッド部の屈折率よりも高くすることが好ましい。このようにすれば、光ファイバグレーティングデバイス1cにおいて、クラッド部を伝搬する残留励起光が樹脂部材に漏洩するので、残留励起光が接続点C4に到達することが防止される。その結果、波長変換素子6においてノイズ光が発生するのを防止できる。
【0078】
(実施の形態4)
つぎに、本発明の実施の形態4に係る光ファイバレーザについて説明する。本実施の形態4に係る光ファイバレーザは、実施の形態3に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するが、希土類元素添加光ファイバおよび2つの光ファイバグレーティングが、偏波保持型光ファイバ構造を有し、単一偏波のレーザ光を発振させるものである。以下、本実施の形態3に係る希土類元素添加光ファイバおよび2つの光ファイバグレーティングデバイスの光ファイバ部について具体的に説明する。
【0079】
図12は、本実施の形態4に係る希土類元素添加光ファイバ4と2つの光ファイバグレーティングデバイス1b、1cの光ファイバ部111b、111cとの各接続部を模式的に表した概略図である。なお、方向を説明するために、図12においてXY軸を定義している。図12に示すように、光ファイバ部111b、111cは、いずれも互いに直交する2軸方向についてコア部に複屈折特性を持たせた光ファイバであり、具体的には、それぞれコア部1111b、1111cと、クラッド部1112b、1112cと、クラッド部1112b、1112c内に、コア部1111bまたは1111cと一直線上に配列するように形成した応力付与母材1113b、1113cとを備えるPANDA型の偏波保持型光ファイバである。また、光ファイバ部111b、111cは、それぞれコア部1111b、1111cにグレーティングが形成されたグレーティング形成部113b、113cを有する。
【0080】
そして、光ファイバ部111b、111cは、応力付与母材1113bまたは1113cによって、互いに直交し、屈折率が異なるスロー軸(Slow軸)とファースト軸(Fast軸)とが形成されている。光ファイバ部111bについては、Slow軸がX軸方向に平行になっており、Fast軸がY軸方向に平行になっている。また、光ファイバ部111cについては、Fast軸がX軸方向に平行になっており、Slow軸がY軸方向に平行になっている。
【0081】
一方、希土類元素添加光ファイバ4も、コア部41と、クラッド部42と、クラッド部42内に、コア部41と一直線上に配列するように形成した応力付与母材43とを備えるPANDA型の偏波保持型光ファイバである。
【0082】
そして、希土類元素添加光ファイバ4も、応力付与母材43によって、直交するSlow軸とFast軸とが形成されている。なお、希土類元素添加光ファイバ4については、Fast軸がX軸方向に平行になっており、Slow軸がY軸方向に平行になっている。
【0083】
そして、光ファイバ部111bと希土類元素添加光ファイバ4とは、接続点C2において、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように接続している。一方、光ファイバ部111cと希土類元素添加光ファイバ4とは、接続点C3において、互いのSlow軸とSlow軸とが平行になるように接続している。その結果、光ファイバ部111b、111cは、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続していることとなる。
【0084】
本実施の形態4に係る光ファイバレーザは、光ファイバ部111b、111cと希土類元素添加光ファイバ4とを上記のように接続していることによって、単一偏波のレーザ光を発振することができる。以下、具体的に説明する。
【0085】
図13は、各光ファイバ部111b、111cの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。なお、図13において、波長λ1は1064nmであり、反射率R1は約100%であり、反射率R2は10〜30%程度である。ここで、光ファイバ部111b、111cは、コア部に複屈折性を持たせたものなので、反射スペクトルには、Slow軸とFast軸のそれぞれに対応する2つの反射波長帯が現われる。
【0086】
ここで、この複屈折率差を調整して、図13に示すように、光ファイバ部111bの反射スペクトルS4を、Fast軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ1を中心波長とするピークを有し、Slow軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ2を中心波長とするピークを有するスペクトル形状となるようにしておく。同様に、光ファイバ部111cの反射スペクトルS5を、Fast軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ3を中心波長とするピークを有し、Slow軸方向の偏光を有する光に対しては波長λ1を中心波長とするピークを有するスペクトル形状となるようにしておく。すなわち、光ファイバ部111bのFast軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域と、光ファイバ部111cのSlow軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域とを重畳させるようにしておく。
【0087】
すると、希土類元素添加光ファイバ4において発生した蛍光のうち、Y軸方向の直線偏波を有するものについては、希土類元素添加光ファイバ4内をその偏光方向を維持したまま伝搬する。そして、光ファイバ部111b内に入射すると、Fast軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113bのグレーティングによって、波長λ1をピークとする反射帯域内の光だけが反射される。
【0088】
この反射した光は、希土類元素添加光ファイバ4内をその偏光方向を維持したまま伝搬し、光ファイバ部111cに入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113cのグレーティングによって、再び反射される。すなわち、Y軸方向の直線偏波を有する光に対しては、光ファイバ部111b、111cが光共振器を構成することになる。したがって、上記の反射が繰り返される結果、中心波長がλ1の出力スペクトルS6を有し、Y軸方向の直線偏波を有するレーザ光が発振する。
【0089】
一方、希土類元素添加光ファイバ4において発生した蛍光のうち、X軸方向の直線偏波を有するものについては、光ファイバ部111b内に入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113bのグレーティングによって、波長λ2をピークとする反射帯域内の光だけが反射される。
【0090】
しかし、この反射した光は、光ファイバ部111cに入射すると、Slow軸方向の偏光方向を維持したまま伝搬し、グレーティング形成部113cのグレーティングを透過してしまうので、レーザ発振は起こらない。同様に、X軸方向の直線偏波を有する光が光ファイバ部111c内に入射すると、グレーティング形成部113cのグレーティングによって、波長λ3をピークとする反射帯域内の光だけが反射されるが、この反射した光はグレーティング形成部113bのグレーティングを透過するので、レーザ発振は起こらない。
【0091】
以上説明したように、本実施の形態4に係る光ファイバレーザにおいては、Y軸方向の直線偏波を有するレーザ光のみが発振する。すなわち、この光ファイバレーザは、単一偏波のレーザ光を発振する単一偏波光ファイバレーザとなる。さらに、この光ファイバレーザは、実施の形態3に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するので、その出力強度や環境温度にかかわらず、発振波長がきわめて安定したレーザ光および波長変換レーザ光を出力することができる。
【0092】
なお、上記実施の形態4では、偏波保持型光ファイバとしてPANDA型の光ファイバを用いたが、本発明はこれに限らず、コア部の断面形状が楕円である楕円コア型の光ファイバを用いてもよい。なお、楕円コア型の光ファイバにおいては、一般的にFast軸とSlow軸との複屈折率差が小さいので、各軸に対応する2つの反射波長帯域が近接する。しかし、本発明に係る光ファイバグレーティングデバイスは、環境温度や入射する光の強度に関わらず、反射波長帯域がシフトせずに安定しているので、2つの反射波長帯域が近接しているとしても、重畳することはない。その結果、環境温度や入射する光の強度に関わらず、確実に単一偏波でのレーザ発振が維持される。
【0093】
(実施例、比較例)
本発明の実施例として、実施の形態4に係る光ファイバレーザと同様のものを作製し、環境温度25℃において、励起光源から出力する励起光の強度を変化させながらコリメータ部品におけるレーザ光の出力および波長を測定し、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について調べた。また、比較例として、実施例に係る光ファイバレーザと同様の構成を有するが、励起光源側に配置する光ファイバグレーティングとして温度補償機構を備えていないものを用い、コリメータ部品側に配置する光ファイバグレーティングとして特許文献2に開示されたものと同様の温度補償機構を備えるものと用いた光ファイバレーザを作製し、実施例と同様の方法を用いてレーザ光の出力と波長の変化量との関係について調べた。
【0094】
図14は、実施例と比較例とについて、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について示す図である。なお、波長変化量は、出力が約1Wの場合の発振波長を基準としたものである。図14に示すように、実施例に係る光ファイバレーザにおいては、出力に対する波長変化量が小さく、発振波長がきわめて安定していることが確認された。一方、比較例に係る光ファイバレーザにおいては、出力に対する波長変化量が、実施例の場合の6倍以上であり、きわめて大きかった。
【0095】
つぎに、環境温度を変化させた場合の実施例および比較例に係る光ファイバレーザの特性の変化について測定した。はじめに、環境温度を変化させた場合の、各光ファイバレーザに用いられている光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長の変化について測定した。
【0096】
図15は、実施例と比較例とについて、環境温度と各光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長との関係について示す図である。なお、図15において、HRは、励起光源側に配置する光ファイバグレーティングデバイスを表し、OCは、コリメータ部側に配置する光ファイバグレーティングデバイスを表す。図15に示すように、温度補償機構を備えていない比較例のHRは、中心波長の環境温度依存性が極めて大きく、その温度係数は24.2pm/℃であった。一方、従来の温度補償機構を備える比較例のOC、および実施例のHR、OCは、温度係数が小さく、その値はそれぞれ1.5pm/℃、0.6pm/℃、3.3pm/℃であった。
【0097】
つぎに、環境温度を変化させた場合の、実施例および比較例に係る光ファイバレーザの出力安定性について測定した。具体的には、環境温度を25℃として、各光ファイバレーザのレーザ光出力が約1Wになるように各励起光の強度を固定し、その後環境温度を変化させながら、各レーザ光出力の1時間以内の出力の変動幅を測定した。
【0098】
図16は、実施例と比較例とについて、環境温度とレーザ光出力の変動幅との関係について示す図である。図16に示すように、実施例に係る光ファイバレーザにおいては、環境温度が0〜70℃にわたって、レーザ光出力の変動幅が2%以内であり、きわめて安定していた。一方、比較例に係る光ファイバレーザにおいては、環境温度が変化するとHRの中心波長が大きく変化するので、環境温度が25℃前後の場合にしかレーザ発振が起こらず、またレーザ発振が起こったとしても、レーザ光出力の変動幅は大きく、きわめて不安定であった。
【0099】
また、実施例に係る光ファイバレーザの励起光の強度を増加し、レーザ光出力を約10Wとしたが、レーザ光出力の変動幅はきわめて安定していた。一方、環境温度25℃において、比較例に係る光ファイバレーザの励起光の強度を増加したところ、やがてレーザ発振が起こらなくなった。
【0100】
なお、上記実施の形態4においては、光ファイバ部111b、111cが、互いのSlow軸が互いのFast軸と平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続している。しかしながら、たとえば図12において、光ファイバ部111bを中心軸の回りに時計回りに90度回転させて希土類元素添加光ファイバ4と接続して、光ファイバ部111b、111cが、互いのSlow軸とFast軸とが平行になるように希土類元素添加光ファイバ4に接続するようにしてもよい。この場合は、たとえばY軸方向の直線偏波を有するレーザ光のみを発振させる場合には、複屈折率差を調整し、光ファイバ部111b、111cのSlow軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域同士が重畳させるようにし、Fast軸方向の偏光を有する光に対する反射波長帯域同士は重畳しないようにしておく。
【0101】
また、上記実施の形態3,4では、希土類元素添加光ファイバのコア部にYbイオンを添加したが、エルビウム(Er)イオンを添加したり、YbイオンとErイオンとを共添加したりしてもよい。この場合、励起光の波長はたとえば980nmとする。また、レーザ発振波長については、1064nmに限られず、各光ファイバグレーティングの中心波長を調整すれば発振波長を調整できる。
【0102】
また、上記実施の形態1〜4では、光ファイバグレーティングデバイスおよび希土類元素添加光ファイバとしてダブルクラッド型光ファイバを用いたが、いずれの場合もシングルモード光ファイバを用いてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態1、3、4では、収容溝は、支持溝よりも幅広且つ深底に形成されているが、基台の加工性を高めるために、実施の形態2のように、収容溝と支持溝とを同一形状のV字溝としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】実施の形態1に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図2】図1に示す光ファイバグレーティングの概略断面と対応する屈折率分布とを示す図である。
【図3】図1に示す光ファイバグレーティングデバイスのA矢視図である。
【図4】図1に示す光ファイバグレーティングデバイスのB矢視図である。
【図5】図4におけるC-C線一部断面図である。
【図6】光ファイバグレーティングデバイスに光を入力した場合について説明する説明図である。
【図7】実施の形態1の変形例に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図8】実施の形態2に係る光ファイバグレーティングデバイスを模式的に表した斜視概略図である。
【図9】図8に示す光ファイバグレーティングデバイスのE矢視図である。
【図10】実施の形態3に係る光ファイバレーザを模式的に表した概略図である。
【図11】各光ファイバグレーティングデバイスの反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。
【図12】実施の形態4に係る希土類元素添加光ファイバと2つの光ファイバグレーティングデバイスの光ファイバ部との各接続部を模式的に表した概略図である。
【図13】各光ファイバ部の反射スペクトルと、レーザ発振光の出力スペクトルとの関係を示す図である。
【図14】実施例と比較例とについて、レーザ光の出力と波長の変化量との関係について示す図である。
【図15】実施例と比較例とについて、環境温度と各光ファイバグレーティングデバイスの反射中心波長との関係について示す図である。
【図16】実施例と比較例とについて、環境温度とレーザ光出力の変動幅との関係について示す図である。
【符号の説明】
【0105】
1、1a〜1c、2 光ファイバグレーティングデバイス
11 光ファイバグレーティング
111、111b、111c 光ファイバ部
112 被覆部
113、113b、113c グレーティング形成部
12、22 基台
121、221 収容溝
122 支持溝
13、23 樹脂部材
14 放熱部材
21〜2n 半導体レーザ素子
211〜21n マルチモード光ファイバ
3 TFB
31 ダブルクラッド光ファイバ
4 希土類元素添加光ファイバ
41、1111、1111b、1111c コア部
42、1112、1112b、1112c クラッド部
43、1113b、1113c 応力付与母材
5 コリメータ部品
51 シングルモード光ファイバ
6 波長変換素子
61 光学ステージ
10 光ファイバレーザ
C1〜C4 接続点
f1〜f4 応力
L1 レーザ光
L2 波長変換レーザ光
S1〜S6 スペクトル
W1、W2 幅
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、
前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、
少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、
を備えたことを特徴とする光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項2】
前記光ファイバグレーティングは、前記グレーティング形成部を除いた前記クラッド部の外周に形成した被覆部を備え、
前記基台は、前記光ファイバグレーティングを前記被覆部において支持する支持溝を備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項3】
前記光ファイバグレーティングは、前記クラッド部を内側クラッドとし、前記被覆部を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項4】
前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部の外周と、前記被覆部の該グレーティング形成部に隣接する部分の外周とを覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部から漏洩する光を透過することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項6】
前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項7】
前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項8】
前記樹脂部材は、UV硬化樹脂からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項9】
前記基台は、−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項10】
前記収容溝は、V字状に形成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項11】
前記収容溝は、前記支持溝に比して幅広且つ深底に形成されたことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項12】
前記支持溝は、V字状に形成されたことを特徴とする請求項2〜10のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項13】
前記樹脂部材に密着するように配置され、該樹脂部材を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項14】
前記放熱部材は、前記基台の上部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項13に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項15】
前記放熱部材は、アルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることを特徴とする請求項13または14に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項16】
前記光ファイバグレーティングは、所定の張力を印加した状態で前記基台に固定されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項17】
前記樹脂部材よりも高い硬度を有し、前記グレーティング形成部を挟むように配置され、前記光ファイバグレーティングを前記収容溝内に固着する補強樹脂部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1つに記載の2つの光ファイバグレーティングデバイスと、
前記2つの光ファイバグレーティングデバイス間に配置した希土類元素添加光ファイバと、
前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給する励起光源と、
を備え、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスの各反射波長帯域は重畳しており、前記励起光源が前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給することによって、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスのいずれか一方の端部から前記重畳した波長帯域内の発振波長を有するレーザ光を出力することを特徴とする光ファイバレーザ。
【請求項19】
前記レーザ光を出力する出力端部側に配置され、前記レーザ光を受付け該レーザ光の波長を変換して出力する波長変換素子を備えたことを特徴とする請求項18に記載の光ファイバレーザ。
【請求項20】
前記希土類元素添加光ファイバおよび前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、偏波保持型光ファイバ構造を有し、
前記一方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つと、前記他方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つとを重畳させて、該重畳した波長帯域内の発振波長を有する単一偏波のレーザ光を発振することを特徴とする請求項18または19に記載の光ファイバレーザ。
【請求項21】
前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸とファースト軸とが平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする請求項20に記載の光ファイバレーザ。
【請求項22】
前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸が互いのファースト軸と平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする請求項20に記載の光ファイバレーザ。
【請求項1】
コア部と該コア部の外周に形成したクラッド部とを備え、該コア部の長手方向の一部に所定の波長帯域の光を反射するグレーティングを形成したグレーティング形成部を有する光ファイバグレーティングと、
前記グレーティング形成部を収容する収容溝を備え、負の線膨張係数を有する基台と、
少なくとも前記グレーティング形成部の外周を覆うように形成され、該グレーティング形成部を前記収容溝内に固着するとともに該グレーティング形成部において発生する熱を前記基台に伝導する樹脂部材と、
を備えたことを特徴とする光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項2】
前記光ファイバグレーティングは、前記グレーティング形成部を除いた前記クラッド部の外周に形成した被覆部を備え、
前記基台は、前記光ファイバグレーティングを前記被覆部において支持する支持溝を備えることを特徴とする請求項1に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項3】
前記光ファイバグレーティングは、前記クラッド部を内側クラッドとし、前記被覆部を外側クラッドとするダブルクラッド型光ファイバ構造を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項4】
前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部の外周と、前記被覆部の該グレーティング形成部に隣接する部分の外周とを覆うように形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項5】
前記樹脂部材は、前記グレーティング形成部から漏洩する光を透過することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項6】
前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項7】
前記樹脂部材の屈折率は、前記光ファイバグレーティングのクラッド部の屈折率よりも低いことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項8】
前記樹脂部材は、UV硬化樹脂からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項9】
前記基台は、−70〜−80ppm/℃の線膨張係数を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項10】
前記収容溝は、V字状に形成されたことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項11】
前記収容溝は、前記支持溝に比して幅広且つ深底に形成されたことを特徴とする請求項2〜9のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項12】
前記支持溝は、V字状に形成されたことを特徴とする請求項2〜10のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項13】
前記樹脂部材に密着するように配置され、該樹脂部材を伝導した熱を放熱する放熱部材を備えたことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項14】
前記放熱部材は、前記基台の上部を覆うように形成されていることを特徴とする請求項13に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項15】
前記放熱部材は、アルミニウム、銅、鉄、およびニッケルの少なくとも一つを含む金属部材を用いて形成されることを特徴とする請求項13または14に記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項16】
前記光ファイバグレーティングは、所定の張力を印加した状態で前記基台に固定されていることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項17】
前記樹脂部材よりも高い硬度を有し、前記グレーティング形成部を挟むように配置され、前記光ファイバグレーティングを前記収容溝内に固着する補強樹脂部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1つに記載の光ファイバグレーティングデバイス。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1つに記載の2つの光ファイバグレーティングデバイスと、
前記2つの光ファイバグレーティングデバイス間に配置した希土類元素添加光ファイバと、
前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給する励起光源と、
を備え、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスの各反射波長帯域は重畳しており、前記励起光源が前記希土類元素添加光ファイバに励起光を供給することによって、前記2つの光ファイバグレーティングデバイスのいずれか一方の端部から前記重畳した波長帯域内の発振波長を有するレーザ光を出力することを特徴とする光ファイバレーザ。
【請求項19】
前記レーザ光を出力する出力端部側に配置され、前記レーザ光を受付け該レーザ光の波長を変換して出力する波長変換素子を備えたことを特徴とする請求項18に記載の光ファイバレーザ。
【請求項20】
前記希土類元素添加光ファイバおよび前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、偏波保持型光ファイバ構造を有し、
前記一方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つと、前記他方の光ファイバグレーティングデバイスの互いに直交する偏波の光に対する反射波長帯域のいずれか1つとを重畳させて、該重畳した波長帯域内の発振波長を有する単一偏波のレーザ光を発振することを特徴とする請求項18または19に記載の光ファイバレーザ。
【請求項21】
前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸とファースト軸とが平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする請求項20に記載の光ファイバレーザ。
【請求項22】
前記2つの光ファイバグレーティングデバイスは、互いのスロー軸が互いのファースト軸と平行になるように前記希土類元素添加光ファイバに接続していることを特徴とする請求項20に記載の光ファイバレーザ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−293004(P2008−293004A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−114313(P2008−114313)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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