説明

光ファイバ広域センサシステム

【課題】信号光送受および処理機能等を有する送受処理部を複数式有し、任意の送受処理部で任意のセンサアレイの共有化を可能とする光ファイバ広域センサシステムを提供する。
【解決手段】送受処理部20−iは、信号光源と送信ゲートとブースアンプを有する信号光源部21と、これに接続される往路伝送ファイバと、復路伝送ファイバに接続される受光部23とDMUX7と復調処理部8−1,8−2,…を有する信号受信部とを有する受信部とからなり、合分波増幅器30−iは送受用アンプ31と、多波長励起光源35と、送受用カプラ32と、2個のバス用カプラ33−1,33−2と、これらの間に接続されるバス用アンプ34とからなり、アレイ用合分波器40−iは、2個の合分波器41−1,41−2と、アレイ結合器42−1と、リモートアンプ43−1と、励起光分波器45−1とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中規模で、現場に電源等を用いない遠隔励起増幅機能を用いた光ファイバセンサアレイに係り、さらに、大規模で、これらセンサアレイとしては遠隔励起増幅機能を組み込んだものであるが、さらに中継機能を活用してより汎用的にネットワーク化して用いるセンサシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
海底地震観測等には、遠隔で広域なセンサアレイシステムの構築が要求されている。
【0003】
このような分野の技術としては、例えば、文献名:A.D.Kersey et al.,“Multiplexed Mach−Zehnder Ladder Array with Ten Sensor Elements”Electron.Lett.25,1298(1989)がある。
【0004】
光源より光パルスを送出し、遅延線を介して各センサ信号の時系列パルスを形成させる時分割多重伝送方式のセンサアレイが示されており、センサ信号の多重化数は主に、受光側での信号対雑音比SNRとの兼ね合いで決まる。
【特許文献1】なし
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来のシステム構成では、信号光の最大可能送出量は、非線形散乱の影響等で制約を受けており、センサアレイを100km付近まで伸ばそうとすると、多重化数は極めて低く抑えられる。そのため伝送損失補償等を行う必要がある。
【0006】
より遠隔に、より多数個のセンサを海底に展開する際でも、単独のアレイで構成する場合(中規模構成の部類)等には、信頼性を確保する上で、現場に極力電子回路等を必要としない遠隔励起光増幅機能の使用が考えられる。
【0007】
しかしながら、光増幅の利得は入力光量に依存し、100km前後程度の伝搬光でも信号の到達レベルはかなり高く、伝搬損失を補償する程の高い利得は得られない。
【0008】
そのため、合理的に入力光を低下させた状態で光増幅を用いる等の構成上の工夫が必要である。
【0009】
本発明は、上記状況に鑑みて、アレイを信号伝送光のパワー分割損を小さくすることにも有利なサブアレイに分割する構成をとり、高い利得を実現させることができる光ファイバ広域センサシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕送受処理部(20−i)と、合分波増幅器(30−i)と、アレイ用合分波器(40−i)とを備えた、干渉により信号光の位相変化を検出する方式のセンサアレイシステムにおいて、
(a)前記送受処理部(20−i)は、信号光源(1)とこの信号光源(1)に接続される送信ゲート(2)とこの送信ゲート(2)に接続されるブースアンプ(3)を有する信号光源部(21)と、この信号光源部(21)に接続される往路伝送ファイバと、復路伝送ファイバに接続される受光部(23)とこの受光部(23)に接続されるDMUX(7)とこのDMUX(7)に接続される復調処理部(8−1,8−2,…)を有する信号受信部とを有する受信部とからなり、
(b)前記合分波増幅器(30−i)は前記信号光源部(21)からの信号を受ける送受用アンプ(31)と、多波長励起光源(35)と、前記送受用アンプ(31)と前記多波長励起光源(35)に接続される送受用カプラ(32)と、この送受用カプラ(32)の両側に接続される2個のバス用カプラ(33−1,33−2)と、該2個のバス用カプラ(33−1,33−2)間に接続されるバス用アンプ(34)とからなり、
(c)前記アレイ用合分波器(40−i)は、2個の合分波器(41−1,41−2)と、該2個の合分波器(41−1,41−2)にそれぞれ接続されるアレイ結合器(42−1)と、このアレイ結合器(42−1)にそれぞれ接続されるとともに、ザブアレイに接続されるリモートアンプ(43−1)と、前記2個の合分波器(41−1,41−2)の両側に接続されるとともに、前記リモートアンプ(43−1)に接続される励起光分波器(45−1)とを備えることを特徴とする。
【0011】
〔2〕上記〔1〕記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、バスラインと前記サブアレイとを接続する前記アレイ用合分波器(40−i)は、2つの合分波器(41−1,41−2)を組み合わせ、特定の波長成分のみに対し前記サブアレイと接続させ、他の波長成分に対しては前記バスライン間との接続を行わせる構成であることを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【0012】
〔3〕上記〔1〕記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、送受処理部(20−i)とバスラインを接続する合分波増幅器(30−i)は、送受処理部(20−i)への入出力光専用アンプ(31)とバスライン通過光専用アンプ(34)に分離したことを特徴とする。
【0013】
〔4〕上記〔1〕記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、前記送受処理部(20−i)とバスライン間、バスラインとバスライン間は、広帯域の結合器を有することを特徴とする。
【0014】
〔5〕上記〔4〕記載の光ファイバセンサシステムにおいて、前記広帯域の結合器は、1個の送受用カプラ(32)と2個のバス用カプラ(33−1,33−2)とから構成されることを特徴とする。
【0015】
〔6〕上記〔1〕記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、前記送受処理部(20−i)は、信号光の波長選択および信号光の往復伝搬距離に基づいたセンサ信号のサンプルタイミングおよび同期検波用の位相選択機能とを有し、センサアレイを指定することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、上記のように構成したので、
〔A〕アレイを、信号伝送光のパワー分割損を小さくすることにも有利なサブアレイに分割する構成をとり、伝送路とサブアレイ間とにリモートポストアンプを配置し、入力光を低下させることにより、高い利得を実現させることができる。
【0017】
〔B〕信号対雑音比SNRは、入力レベルが最小となる光増幅器出力に依存する(雑音は増幅器の発生雑音)。センサアレイを通過した信号光はかなり微弱なため、リモートプリアンプは、伝送損失およびサブアレイの分割損を補う程度の利得を確保することが可能であり、可能な限り受光側から離れた点に配置した方が得策と見積もることができる。
【0018】
そのため、SNRの確保ひいてはセンサ数拡大をねらい、リモートプリアンプもまた、サブアレイと伝送路間とに配置するようにしたものである。
【0019】
〔C〕複数個の遠隔増幅器を配する構成に対応させ、各遠隔増幅器での励起に要する励起光量を減じないよう、励起光を信号光の通過するタイミングを見計らって該当する励起増幅器のみに順次供給していくことができる。
【0020】
〔D〕ネットワーク化を目指したより大規模なセンサシステムの構築を提案する。この場合、一般に、遠隔励起適用可能の規模を越えており、伝送幹線系は中継器の構成であり、センサアレイ自身は遠隔励起増幅の構成を想定する。
【0021】
本発明では、特に、信号光送受および処理機能等を有する送受処理部を複数式有し、任意の送受処理部で任意のセンサアレイの共有化を可能としたものである。
【発明の効果】
【0022】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0023】
(1)アナログ信号伝送ながらも、中継器(送受用アンプ、バス用アンプ)を用いた汎用的なセンサネットワークが形成できる。さらに、ネットワークからアプローチされるセンサアレイは遠隔励起増幅機能を持たせており、伝送損失補償が十分行え、伝送距離が飛躍的に延び、遠隔で、より広域で面的なセンサネットワーク構築が可能となる。
【0024】
(2)任意の情報センタから、任意のセンサアレイが選択可能であり、汎用的なセンサネットワークが可能となる。
【0025】
(3)センサアレイ内に電子回路、アクティブな切り換え器を用いておらず、システムの信頼性がより向上する。
【0026】
(4)遠隔励起光の有効な伝送距離はある程度限界があるが、電源の配備されている合分波増幅器に励起光源を配置することにより、さらに遠隔での遠隔励起増幅が可能である。また、送受用カプラの空き入力を介し、励起光をバスラインの両方向に送出させることを容易にしている。
【0027】
(5)送受処理部からバスライン間の接続において、センタ入出光とバスライン伝送光とを必要最小個数で、分離増幅した構成をとり、コスト低減とアンプゲイン設計等の単純化を図ることができる。
【0028】
(6)送受処理部からバスライン間の接続は、広い波長帯域成分を用いて行うことができる。
【0029】
(7)遠隔励起用光を隣接する合分波増幅器で供給させるため、陸岸近くで発生し易い送受処理部と合分波増幅器間ケーブルの切断等の事故に対しても、冗長構成としており、信頼性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の光ファイバ広域センサシステムは、送受処理部(20−i)と、合分波増幅器(30−i)と、アレイ用合分波器(40−i)とを備えた、干渉により信号光の位相変化を検出する方式のセンサアレイシステムにおいて、前記送受処理部(20−i)は、信号光源(1)とこの信号光源(1)に接続される送信ゲート(2)とこの送信ゲート(2)に接続されるブースアンプ(3)を有する信号光源部(21)と、この信号光源部(21)に接続される往路伝送ファイバと、復路伝送ファイバに接続される受光部(23)とこの受光部(23)に接続されるDMUX(7)とこのDMUX(7)に接続される復調処理部(8−1,8−2,…)を有する信号受信部とを有する受信部とからなり、前記合分波増幅器(30−i)は前記信号光源部(21)からの信号を受ける送受用アンプ(31)と、多波長励起光源(35)と、前記送受用アンプ(31)と前記多波長励起光源(35)に接続される送受用カプラ(32)と、この送受用カプラ(32)の両側に接続される2個のバス用カプラ(33−1,33−2)と、該2個のバス用カプラ(33−1,33−2)間に接続されるバス用アンプ(34)とからなり、前記アレイ用合分波器(40−i)は、2個の合分波器(41−1,41−2)と、該2個の合分波器(41−1,41−2)にそれぞれ接続されるアレイ結合器(42−1)と、このアレイ結合器(42−1)にそれぞれ接続されるとともに、ザブアレイに接続されるリモートアンプ(43−1)と、前記2個の合分波器(41−1,41−2)の両側に接続されるとともに、前記リモートアンプ(43−1)に接続される励起光分波器(45−1)とを備える。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0032】
図1は、本発明の参考例を示す遠隔励起増幅器を配置した多重センサシステムの構成図である。
【0033】
この参考例では、信号光増幅の遠隔励起増幅器はセンサアレイ内に分割配置している。信号光源1から送出された連続光は、送信ゲート2で後述する所定の光パルスに変換され、ブースタアンプ3で増幅され、長距離でなる往路伝送ファイバに入射される。
【0034】
センサアレイ4は、例えばアレイ結合カプラ4−1−1等を介して、サブアレイ4−2−1等に分割する。サブアレイ4−2−1等は、入射した信号光が所定の信号を検出した後、入力側に戻される構造をとっており、さらに、サブアレイ4−2−1内の各センサ部間には所定の遅延が施されており、戻り光はパルス列を形成する。各センサ部は、例えばセンシングファイバとリファレンスファイバで構成される干渉計であり、地震加速度に応じてセンシングファイバが伸縮あるいは屈折率変化を起こし、伝搬光の位相変化を発生する。リファレンスファイバ通過光と干渉させることにより、位相復調を行うことができ、信号検出が可能となる。
【0035】
アレイ結合カプラの後段には、例えばアレイ結合カプラ4−1−1と4−1−2の中間に、アンプ用遅延線4−3−1を伴ったリモートポストアンプ4−4−1を配置しており、接続される後段のサブアレイ4−2−1,4−2−2への信号入射光を増幅させる。また、サブアレイ4−2−1,4−2−2の戻り光の増幅のため、アレイ結合カプラ4−1−2と4−1−4との間に、リモートプリアンプ4−5−1を配置する。他のサブアレイに対しても同様の構成をとる。
【0036】
パルス列を形成する戻り光はアレイ結合カプラ4−1−4で結合され、復路伝送路を伝搬し、プリアンプ5に送られ増幅後、O/E変換器6で自乗検波され、DMUX7で後述するシーケンスによりセンサ信号のチャネル切換が行われ、復調処理器8−1等に送られる。各復調処理器8−1では、所定の復調方式に基づき、地震加速度等の所定信号がセンサ毎に復調される。
【0037】
リモートポストアンプおよびリモートプリアンプは、Erbium Doped Fiber Amplifier(EDFA)で構成されており、所定の高いレベルの励起光を必要とする。励起光も非線形散乱等の作用で最大入射光レベルは限定される。そのため、複数のアンプに同時供給すると、分割によるレベル低下が避けられない。
【0038】
パルスで送信し、時分割処理するセンサシステムにおいては、信号光の各アンプを通過するのは特定の時間帯のみであることに着目する。特定のアンプの励起を起こさせるため、該当する時間に到達するよう光源から時分割で送出する。また、励起光は、該当するアンプのみでの抽出が可能となるよう波長選択性を持たせる。
【0039】
励起光源9−1,9−2等は、波長の僅かに異なる励起光を発生しておき、後述するタイミングで励起光切換器10で所定のアンプに時間的に切り換えて供給する。センサアレイ側では、励起光分波器4−6−1等で、波長分離で抽出し、各リモートアンプに供給する。ポストアンプの供給時間を分離するため、前述のアンプ用遅延線4−3−1,4−3−2等を設定しておく。アンプ用遅延線4−3−1と4−3−2は、例えば、信号光のパルス幅以上の時間遅れを持たせておく。
【0040】
励起光波長は、信号光波長を1.5μm帯としており、通常、1.48μm帯が適する。
【0041】
図2はタイミング制御器11で制御する、励起光供給等の観点から示した動作タイミングを示す図であり、図2(a)は、本参考例での通常の基本動作の場合である。
【0042】
周期的に送信される信号光(送信ゲート2からの出力)は、リモートポストアンプ4−4−1および4−4−2に、アンプ用遅延線4−3−1の遅延量差により、時間差を伴って到達する。リモートポストアンプ4−4−1からの出力は、本構成ではサブアレイ4−2−1および4−2−2に送られ、リモートプリアンプ4−5−1の入力で示したように2個のサブアレイからの出力信号が交互に現れるように設定したものとする。
【0043】
また、リモートポストアンプ4−4−2からの出力は、同様な動作でリモートプリアンプ4−5−2に入力されるが、図に示すよう、リモートプリアンプ4−5−1の入力とリモートプリアンプ4−5−2の入力間での信号光は、時間分離できるようにアレイ構造で到達時間を設定する。
【0044】
因みに、この信号光は、復路伝送ファイバに戻された後、送信のタイミングを起点とした時間制御によるタイミング制御器11に基づき、DMUX7で信号選択されて、復調処理される。同様な時間制御により、各リモートアンプに信号光が到達する時刻を見計らい(図中、励起光分波器4−6入力のタイミング)、励起光切換器10より送出する。
【0045】
図2(b)は、遠隔励起増幅器をスイッチとして用いた場合で、該当するサブアレイの全信号を出力した後、サブアレイを順次切り換えて計測する場合のタイミング制御例である。例えば、図中の最初の送信信号光に対しては、リモートポストアンプ4−4−2および戻り光でのリモートプリアンプ4−5−2にはともに励起光を供給せず、その結果、信号光を断したと等価な作用となる。
【0046】
リモートポストアンプ4−4−1およびリモートプリアンプ4−5−1には規定通り供給し、次の送信信号に関しては、別のサブアレイを動作させるよう順次切り換えていく。送信信号間隔内にはサブアレイ内のセンサ信号だけが含まれるので、パルスデューティ比は大きく採れる。サブアレイの分割数をDとすると、デューティ比はほぼD倍となり、各サブアレイで賄えるセンサ数は概略√D倍となる。
【0047】
扱う計測対象の信号周波数が低い場合には、サンプリング周期も低く設定可能であり、順次、サブアレイの全信号をスキャンした後、切り換えていくことが可能となる。サブアレイ、ひいてはセンサアレイの拡大が可能となる。この動作もタイミング制御器11で制御し、送信周期、パルス幅も適宜、最適化(例えば、デューティ比を最大とする等)して使用する。
【0048】
なお、リモートポストアンプ4−4−1,4−4−2は、最大出力で抑えられるため、アレイ結合カプラでの分割で信号光レベルを1/2に落とし、さらに多段の結合カプラで分割していき、D(Dは2のべき乗)分割した段間に配置すると、信号光レベルは1/Dと落ち、アンプゲインは概略D倍に高められる。センサ数の拡大に換算して、前述と同様、伝送ファイバ上に配置した場合に比べて、概略√D倍となる。
【0049】
また、リモートプリアンプでは、微弱な信号光が入力されるため、通常高いアンプゲインが得られ、伝送損失およびサブアレイの分割損を補う程度の利得を確保することが可能である。ところで、EDFA等で規定される光信号対雑音比SNRは、EDFAの雑音で制約を受けるため、入力レベルが最小となる光増幅器出力で決まる。従って、リモートポストアンプと同様、D分割した段間に配置すると、信号光レベルはD倍に高められ、センサ数の拡大に換算して、概略√D倍となる。
【0050】
上記した参考例によれば、以下の効果を有する。
【0051】
(1)センサアレイ内に、光増幅器を設けた構成とするため、信号光の伝搬損失およびアレイ分割に伴う分岐損の損失補償が実現でき、遠隔でのセンサアレイ展開が可能となる。
【0052】
(2)EDFAの増幅度は、励起パワーと、入力する信号光のレベルとに依存する。往路側では、ポストアンプを入力信号レベルの低下するアレイ結合カプラの後段に配置したため、高い増幅度が得られ、伝送損失補償効果が増加する。
【0053】
(3)微小信号入力の場合のEDFAの増幅度は高く、リモートプリアンプは復路伝送路の損失およびアレイ分割に伴う分岐損の損失を十分に補償する利得が得られ、その分、信号光のSNRが改善される。
【0054】
(4)センサアレイをサブアレイに分割した構造をとると、サブアレイへの分岐損を含めたアレイでの信号光の総合消費パワーを減少させることができる。また、サブアレイ構造は、地震を面的(格子状、放射状等)に観測するアレイ構築の実現にも適合しやすい。
【0055】
(5)励起光を波長多重を併用した時分割多重伝送するため、複数個のアンプに分割損を生じないよう供給できるため、増幅する能力が確保可能となる。
【0056】
(6)計測信号が低周波を対象とする場合には、遠隔増幅器の励起制御を、通過する信号光のスイッチング機能として用い、1信号光に1サブアレイを対応させ、信号光のパルスデューティ比が大きくとれ、センサ数を拡大することが可能となる。従って、遠隔での、広域で面的な、センサネットワーク構築が可能となる。
【0057】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0058】
図3は本発明の実施例で、センサネットワーク化の一形態として、任意の送受処理部(情報センタ等)で任意のセンサアレイを共有化可能としたシステム構成図である。
【0059】
送受処理部20−i、20−j等はそれぞれ、参考例(図1参照)の信号光源1(但し波長可変とする)、送信ゲート2、ブースタアンプ3等で構成される信号光源部21、戻り光取り出しのサーキュレータ22およびその後段に接続されるプリアンプ5、新たに可変波長フィルタ、O/E変換器6等で構成される受光部23、センサ信号のチャネル選択を行うDMUX7、および、復調処理器8−1、8−2等で構成される。送信タイミングおよびセンサ信号選択タイミングは、タイミング制御器11より送出される。さらに、任意のセンサアレイを切り換える際の、後述する制御パラメータがセンサ切換制御器24より送出される。
【0060】
アレイ用合分波器40−i,40−h等は、2個の合分波器41−1および41−2を組み合わせ、波長選択で特定の波長の信号光のみの入出力を行う。合分波器は、アレイ導波路回折格子機能を有し、端子(1)−(2)間では特定の波長成分のみの入出力動作が行え、(1)−(3)間は他の波長成分が入出力可能である。(2)−(3)の接続はない構造である。各々のアレイ用合分波器は、異なった波長を選択するよう設定される。
【0061】
アレイ用合分波器40−iでは、例えば、特定波長λi の信号光が合分波器41−1(1)に入射すると、その波長成分のみをアレイ結合カプラ42−1側に抽出する。この抽出された信号光は、参考例(図1参照)の場合と同様の動作を行い、遠隔増幅されてサブアレイに送られ、戻り光は、合分波器41−2(1)側に戻される。リモートアンプ43−1等は、ポストアンプおよびプリアンプとして往復伝搬光の増幅を行う。
【0062】
一方、他のセンサアレイ用の信号成分(波長λi 以外の成分)に対しては、合分波器41−1(1)、合分波器41−2(2)間は素通りすることになる。また、合分波器41−2(1)側から入射する信号光に対しても、前記と同様の作用となる。
【0063】
後述する合分波増幅器30−iから送出される励起光は、励起光分波器U44−1、44−2等で波長選択され、リモートアンプ43−1、43−2等に供給される。また、合分波増幅器30−jから送出される励起光は、励起光分波器D45−1、45−2等で波長選択され、リモートアンプ43−1、43−2等に供給される。上記励起光の両者は、各リモートアンプの前方励起あるいは後方励起用の励起光となる。
【0064】
合分波増幅器30−i等は、送受処理部20−i等からの信号光を送受用アンプ31で増幅し、送受用カプラ32およびバス用カプラ33−1を介してアレイ用合分波器40−i側に送出する。アレイ用合分波器40−i側から送られてくる信号光は、バス用カプラ33−1および送受用カプラ32を介して取り込み、送受用アンプ(入出力光専用アンプ)31で増幅後、送受処理部20−i等に信号光を戻す働きを有す。
【0065】
また、送受処理部20−i等からの信号光は同様に、送受用カプラ32およびバス用カプラ33−2を介して他の方向のアレイ用合分波器40−h側に入出力が可能である。バスライン上を直進する信号光は、バス用カプラ33−1および33−2を介し、バス用アンプ(バスライン通過光専用アンプ)34を通過させることにより、増幅されながら伝搬可能である。
【0066】
さらに、アレイ用合分波器40−iおよび40−h等の隣接する両センサアレイでの遠隔増幅を行うため、多波長励起光源35を有し、送受用カプラ32とバス用カプラ33−1あるいは33−2とを介して、励起光を供給する。合分波増幅器30−i等には、送受処理器20−i等から、電源の供給を行う。
【0067】
送受処理部20−iが、アレイ用合分波器40−iに繋がるセンサアレイにアクセスするには、センサ切換制御器24から、該当する波長例えばλi を、信号光源部21に指定する。また、戻り光のλi 成分のみを抽出するよう、受光部23に指定する。信号光の往復伝搬距離に対応した、チャネル選択タイミングは、タイミング制御器11を介してDMUX7に、さらに、同期検波用の位相情報は復調処理器8−1,8−2等に指定される。
【0068】
信号光送受の基本動作は、参考例と同様であり、送受処理部20−iから波長λi の光パルスが送出されると、合分波増幅器30−iで増幅され、バスライン上の両方向に送り出される。バスライン上では、波長λi に該当するアレイ用合分波器、例えば40−iでのみ信号光が取り込まれ、遠隔増幅等を含むセンサアレイで信号検出が行われ、該センサアレイからの戻り光は、アレイ用合分波器40−iで再度バスライン上に戻される。送受処理部20−iには往路と同様の経路で戻り、受光部23で波長選択された後、所定の復調処理が施される。
【0069】
あるアレイ用合分波器、例えば40−iに繋がるセンサアレイにおけるリモートアンプへの励起光は、隣接する合分波増幅器、例えば、合分波増幅器30−iおよび30−jの両者から供給され、該当するアンプには両者分が合算されて供給される構造をとっている。極力、励起光量の減じない方式となる。
【0070】
上記した実施例によれば、以下の効果を有する。
【0071】
(1)アナログ信号伝送ながらも、中継器(送受用アンプ、バス用アンプ)を用いた汎用的なセンサネットワークが形成でき、さらに、ネットワークからアプローチされるセンサアレイは遠隔励起増幅機能を持たせている。
【0072】
(2)伝送損失補償が十分行え、伝送距離が飛躍的に延び、遠隔で、より広域で面的なセンサネットワーク構築が可能となる。
【0073】
(3)任意の情報センタから、任意のセンサアレイが選択可能であり、汎用的なセンサネットワークが可能となる。
【0074】
(4)センサアレイ内に電子回路、アクティブな切り換え器を用いておらず、システムの信頼性がより向上する。
【0075】
(5)遠隔励起光の有効な伝送距離はある程度限界があるが、電源の配備されている合分波増幅器に励起光源を配置することにより、さらに遠隔での遠隔励起増幅を可能としている。また、送受用カプラの空き入力を介し、励起光をバスラインの両方向に送出させることを容易に可能としている。
【0076】
(6)送受処理部からバスライン間の接続において、センタ入出光とバスライン伝送光とを必要最小個数で、分離増幅した構成をとり、コスト低減とアンプゲイン設計等の単純化が図れる。
【0077】
(7)送受処理部からバスライン間の接続は、広い波長帯域成分を用いて行える。
【0078】
(8)遠隔励起用光を隣接する合分波増幅器で供給させるため、陸岸近くで発生し易い送受処理部と合分波増幅器間ケーブルの切断等の事故に対しても、冗長構成で、信頼性が向上する。
【0079】
さらに、本発明は、次のような利用形態を有する。
【0080】
(1)実施例において、リモートポストアンプあるいはリモートプリアンプはEDFAを用いての集中型で説明しているが、伝送線の長い区間に渡って増幅作用を持たせる分布型、または、ラマン増幅器を用いての分布型等でも可能である。
【0081】
(2)実施例において、センサアレイはサブアレイで構成されているが、サブアレイがさらにサブアレイで構成されてもよい。
【0082】
(3)実施例において、アレイ用合分波器内の合分波器は同一波長で該センサアレイと接続する構造であるが、異なった波長成分での接続法とすることも可能である。
【0083】
(4)実施例において、信号光源と送信ゲートは一体型でも可能である。
【0084】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の光ファイバ広域センサシステムは、中継機能を活用してより汎用的にネットワーク化して用いるセンサシステムとして利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明の参考例を示す遠隔励起増幅器を配置した多重センサシステムの構成図である。
【図2】本発明の参考例を示すタイミング制御器で制御する、励起光供給等の観点から示した動作タイミングを示す図である。
【図3】本発明の実施例を示す、センサネットワーク化の一形態として、任意の送受処理部(情報センタ等)で任意のセンサアレイを共有化可能としたシステム構成図である。
【符号の説明】
【0087】
1 信号光源
2 送信ゲート
3 ブースタアンプ
4 センサアレイ
4−1−1,4−1−2,4−1−3,4−1−4,42−1 アレイ結合カプラ
4−2−1,4−2−2 サブアレイ
4−3−1,4−3−2 アンプ用遅延線
4−4−1,4−4−2 リモートポストアンプ
4−5−1,4−5−2 リモートプリアンプ
4−6−1,44−1,44−2,45−1、45−2 励起光分波器
5 プリアンプ
6 O/E変換器
7 DMUX
8−1,8−2 復調処理器
9−1,9−2 励起光源
10 励起光切換器
11 タイミング制御器
20−i,20−j 送受処理部
21 信号光源部
22 戻り光取り出しのサーキュレータ
23 受光部
24 センサ切換制御器
30−i,30−j 合分波増幅器
31 送受用アンプ
32 送受用カプラ
33−1,33−2 バス用カプラ
34 バス用アンプ
35 多波長励起光源
40−i,40−h アレイ用合分波器
41−1,41−2 合分波器
43−1,43−2 リモートアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送受処理部と、合分波増幅器と、アレイ用合分波器とを備えた、干渉により信号光の位相変化を検出する方式のセンサアレイシステムにおいて、
(a)前記送受処理部は、信号光源と該信号光源に接続される送信ゲートと該送信ゲートに接続されるブースアンプを有する信号光源部と、該信号光源部に接続される往路伝送ファイバと、復路伝送ファイバに接続される受光部と該受光部に接続される該受光部に接続されるDMUXと該DMUXに接続される復調処理部を有する信号受信部とを有する受信部とからなり、
(b)前記合分波増幅器は前記信号光源部からの信号を受ける送受用アンプと、多波長励起光源と、前記送受用アンプと前記多波長励起光源に接続される送受用カプラと、該送受用カプラの両側に接続される2個のバス用カプラと、該2個のバス用カプラ間に接続されるバス用アンプとからなり、
(c)前記アレイ用合分波器は、2個の合分波器と、該2個の合分波器にそれぞれ接続されるアレイ結合器と、該アレイ結合器にそれぞれ接続されるとともに、ザブアレイに接続されるリモートアンプと、前記2個の合分波器の両側に接続されるとともに、前記リモートアンプに接続される励起光分波器とを備えることを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、前記バスラインとセンサアレイとを接続するアレイ用合分波器は、2つの合分波器を組み合わせ、特定の波長成分のみに対し前記センサアレイと接続させ、他の波長成分に対してはバスライン間との接続を行わせる構成であることを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、送受処理部とバスラインを接続する合分波増幅器は、送受処理部への入出力光専用アンプとバスライン通過光専用アンプに分離したことを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【請求項4】
請求項1記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、前記送受処理部とバスライン間、バスラインとバスライン間は、広帯域の結合器を有することを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【請求項5】
請求項4記載の光ファイバセンサシステムにおいて、前記広帯域の結合器は、1個の送受用カプラと2個のバス用カプラとから構成されることを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。
【請求項6】
請求項1記載の光ファイバ広域センサシステムにおいて、前記送受信部は、信号光の波長選択および信号光の往復伝搬距離に基づいたセンサ信号のサンプルタイミングおよび同期検波用の位相選択機能とを有し、センサアレイを指定することを特徴とする光ファイバ広域センサシステム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−33910(P2008−33910A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165898(P2007−165898)
【出願日】平成19年6月25日(2007.6.25)
【分割の表示】特願2002−162598(P2002−162598)の分割
【原出願日】平成14年6月4日(2002.6.4)
【出願人】(504194878)独立行政法人海洋研究開発機構 (110)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】