説明

光ファイバ検出構成要素を有するガイドワイヤ及び送達カテーテル、並びに関連システム及び方法

診断もしくは治療処置、物質又は機器を、ヒト又は動物被検者の身体内に位置する標的領域に送達するための方法、システム、及び機器である。組織穿通カテーテルは、標的領域付近の身体管腔内に位置決めされる。次いで、中空の穿通器が組織穿通カテーテルから前進させられ、身体管腔から穿通され、身体管腔で穿通カテーテルは標的領域の方向に組織の中に位置決めされる。その後、細長い光学機器(例えば、光学的に装備されたガイドワイヤ又はカテーテル)が中空の穿通器を通って前進させられ、標的領域の方向に組織を通って前進し続けされる。細長い光学機器は、光学処理機器(例えば、分光計)に接続され、この機器は、細長い光学機器がいつ標的領域に入ったかを表示する光学的に測定されたデータ(例えば、スペクトル反射、pH、酸素濃度、温度)を提供する。次いで、細長い光学機器が、標的領域の中への診断もしくは治療モダリティ、物質又は機器の送達を促進するために用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には、医療処置のための方法及び装置に関し、より詳細には、身体内の特定の部位への物質又は機器のカテーテルに基づく送達のために使用可能な方法及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器(例えば、カテーテル、針、カニューレ又は他の送達機器)を、ヒト又は動物被検者の身体内の特定の標的領域(例えば、或るタイプの組織、疾患部位、腫瘍、壊死又は亀裂のある領域内、など)の中に挿入することが望ましい場合がある。例えば、診断もしくは治療モダリティ又は物質(例えば、色素、薬剤、生物細胞、遺伝子治療製剤、栄養分、放射線、熱、など)、又は機器(例えば、電極、センサ、物質送達機器、など)を、被検者の身体内の特定の標的位置に送達することが望まれるときに、カテーテル、針、カニューレ又は他の送達装置が身体に挿入され、標的領域内に位置決めされるまで前進させられることがある。その後、そのカテーテル、針、カニューレ又は他の送達装置を介して、診断もしくは治療モダリティ、物質又は機器が、標的領域の中に送達される。幾つかのケースにおいて、医療機器(例えば、カテーテル、針、カニューレ又は他の送達機器)は、被検者の身体の外側の場所から標的領域の中に直接挿入される。他のケースにおいて、医療機器のこうした配置を促進するために介在機器が用いられることがある。例えば、幾つかの方法において、被検者の脈管構造の中に穿通カテーテルが最初に挿入され、標的領域付近の血管の中に前進させられる。次いで、穿通器(penetrator)(例えば、中空針)が、穿通カテーテルから標的領域の一般的な方向に血管管腔に隣接する組織の中に前進させられ、次いで、カテーテル、針、カニューレ又は他の送達装置が穿通器を通り、介在組織を通って、標的領域の中に前進させられる。こうした方法の例は、米国特許第5,830,222号明細書(Makower)、第6,068,638号明細書(Makower)、第6,159,225号明細書(Makower)、第6,190,353号明細書(Makower、他)、第6,283,951号明細書(Flaherty、他)、第6,375,615号明細書(Flaherty、他)、第6,508,824号明細書(Flaherty、他)、第6,544,230号明細書(Flaherty、他)、第6,579,311号明細書(Makower)、第6,602,241号明細書(Makower、他)、第6,655,386号明細書(Makower、他)、第6,660,024号明細書(Flaherty、他)、第6,685,648号明細書(Flaherty、他)、第6,709,444号明細書(Makower)、第6,726,677号明細書(Flaherty、他)、及び第6,746,464号明細書(Makower)に記載されたものを含み、こうした米国特許の各々の開示の全体を本明細書に援用する。
【0003】
カテーテル、針、カニューレ又は他の送達装置が意図された標的領域にいつ入ったかを判定することは課題になることがある。幾つかの状況において、標的領域にいつ入ったかを判定するために放射線写真イメージングを用いることができる。しかしながら、この手法は、標的領域が周囲組織から放射線写真により区別できることを要件とする。放射線写真ガイダンスの使用はまた、長時間の蛍光透視又は多重X線を要求することがあり、結果として費用、及び被検者と手技を行う医療関係者への放射線被爆が生じる。
【0004】
放射線を使用せずに、特定の標的領域内でのカテーテル、カニューレ、針又は他の医療機器の位置決めを誘導するのに便利な及び使用可能な光学システムが望ましい。こうした光学システムは、カテーテル、カニューレ、針又は他の医療機器が標的領域にいつ入ったかを検出するだけでなく、挿入及び除去中に機器を追跡するのに用いることもできることが好ましい。
【0005】
先行技術には、身体内のカテーテル又は機器の場所を検出することができるとする多くの光学機器がある。例えば、米国特許第5,423,321号明細書(Fontenot)は、異なる長さの多数の光誘導ファイバを有するカテーテルを記載している。カテーテルは、器官又は血管の中に挿入され、可視光又は近赤外光が光誘導ファイバを通って送達される。次いで、カテーテルから放出された光が器官又は血管の壁を通って観測され、それによりカテーテルの位置が示される。外科用切断具が血管にいつ接近するかを判定するための検出システムも記載されている。
【0006】
米国特許第7,273,056号明細書(Wilson、他)は、光学的に誘導されるカテーテルを記載しており、小さいレーザ・ダイオードがカテーテルの遠位端に挿入され、レーザ・ダイオードからの光がカテーテルを貫通して延びる光ファイバを通過する。光は、組織による吸収が最小限である波長となるように選択され、約620nmから約1100nmまでの範囲内であることが好ましい。これに用いられるものとしては組織吸収が最小に近い780nmが好ましい。光は、(カテーテルの近位端における)ファイバの端部を出て、組織を通って患者の皮膚の外側に到達し、そこで測定される。その光パターンは、他の周波数の光をフィルタ除去する暗視ゴーグルによって観測される。この検出された光は、ファイバの端部を突き止めることを可能にし、その位置の正確さは、ファイバ先端部と身体の外側との間の組織の厚さに依存する。この方法は、小さな子供については、及び成人の皮膚表面の数センチメートル内のカテーテルについては、非常に正確である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該技術分野では、特定の体内の標的領域内でのカテーテル、カニューレ、針及び他の機器の光学的に誘導される位置決めのための新しい機器及び方法を開発することが今なお必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、診断もしくは治療処置、物質又は機器を、ヒト又は動物被検者の身体内に位置する標的領域に送達するための方法が提供される。一般に、こうした方法は、(A)他の領域から標的領域を区別する組織変数の光学測定のために使用可能な、細長いシャフト、光伝達ファイバ、及び反射光戻しファイバを備える、細長い光学機器を提供するステップと、(B)被検者の身体内の身体管腔に位置決め可能なカテーテル・シャフトと、カテーテル・シャフトがその中に位置決めされる、カテーテルから身体管腔の外側の場所に前進可能な穿通器であって、遠位開口部をもつ管腔を有する前記穿通器と、を備える組織穿通カテーテル機器を提供するステップと、(C)該組織穿通カテーテルを身体管腔内に位置決めするステップと、(D)該穿通器を該穿通カテーテルから該穿通カテーテルが位置決めされる身体管腔の外側の位置に前進させるステップと、(E)該細長い光学機器を該穿通器の管腔を通って遠位開口部の外に及び組織を通って標的領域の方向に前進させるステップと、(F)該光伝達ファイバを通じて光を送達し、該反射光戻しファイバから受光した反射光を用いて、前述の組織変数を測定するステップと、(G)該細長い光学機器が標的領域内にあることを前述の組織変数が示すときを判定するステップと、(H)標的領域の中への診断もしくは治療モダリティ、物質又は機器の送達を促進させるための該細長い光学機器を用いるステップと、を含む。
【0009】
さらに、本発明によれば、上記にまとめられた方法を実行するために使用可能なシステムが提供される。一般に、こうしたシステムは、(A)細長いカテーテル・シャフトと、カテーテル・シャフトから前進可能な、管腔を有する穿通器と、を備える穿通カテーテル機器と、(B)他の領域から標的領域を区別する組織変数の光学測定のために使用可能な、細長いシャフト、光伝達ファイバ、及び反射光戻しファイバを備え、該穿通器の管腔を通って前進可能な、細長い光学機器と、を備える。
【0010】
さらにまた、本発明によれば、該細長い光学機器は、標的領域の中への診断もしくは治療モダリティ、物質又は機器の送達を促進するために使用可能ないかなるタイプの細長い機器であってもよい。例えば、幾つかのケースにおいて、該細長い光学機器は、ガイドワイヤを備えることができる。こうしたガイドワイヤが標的領域の中に前進させられた後で、1つ又は複数の他の処置機器(例えば、カテーテル)が、次いで、ガイドワイヤ上で前進させられて、所望の療法、物質又は機器を標的領域に送達するのに用いられてもよい。他のケースにおいて、該細長い光学機器は、所望の療法、物質又は機器を標的領域に送達するために、標的位置の中に前進させられた後で、それ自体使用可能な、送達カテーテルであってもよい。
【0011】
本発明のさらなる態様、詳細、及び実施形態は、本発明の以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読むことにより、当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】光学センサを装備した細長い機器(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)と組み合わされた組織穿通カテーテルを含む、本発明のシステムの側面図である。
【図1A】図1の領域1Aの拡大図である。
【図2】本発明のガイドワイヤ機器に装備される光学センサの側面図である。
【図2A】図2の2A−2A線に沿った断面図である。
【図2B】図2の2B−2B線に沿った断面図である。
【図2C】図2の領域2Cの拡大線図である。
【図3】本発明の送達カテーテルに装備される光学センサの側面図である。
【図3A】図3の3A−3A線に沿った断面図である。
【図3B】図3の3B−3B線に沿った断面図である。
【図3C】図3の領域3Cの拡大図である。
【図4】本発明の細長い機器(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)に装備される光学センサと組み合わせて使用可能な二股ケーブル組立体の側面図である。
【図4A】図4の領域4Aの拡大図である。
【図4B】図4の領域4Bの拡大図である。
【図4C】図4の4C−4C線に沿った断面図である。
【図5A】細長い機器に装備される光学センサ(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)をヒト又は動物被検者の身体内の所望の標的領域の中に前進させるために図1のシステムが用いられる、経管的な方法におけるステップを示す図である。
【図5B】細長い機器に装備される光学センサ(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)をヒト又は動物被検者の身体内の所望の標的領域の中に前進させるために図1のシステムが用いられる、経管的な方法におけるステップを示す図である。
【図5C】細長い機器に装備される光学センサ(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)をヒト又は動物被検者の身体内の所望の標的領域の中に前進させるために図1のシステムが用いられる、経管的な方法におけるステップを示す図である。
【図5D】細長い機器に装備される光学センサ(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)をヒト又は動物被検者の身体内の所望の標的領域の中に前進させるために図1のシステムが用いられる、経管的な方法におけるステップを示す図である。
【図6】心臓の異なる領域を通って前進させられる際に、カテーテルに装備される光学センサによって生成された、スペクトル反射データの例を示すグラフである。
【図7】心筋梗塞の中に前進させられ、治療又は診断物質をその梗塞巣の中に送達するのに用いられる際に、カテーテルに装備される光学センサによって生成された、スペクトル反射データの例を示すグラフである。
【図8】本発明の細長い機器に装備される光学センサ(例えば、ガイドワイヤ又はカテーテル)の一実施形態を用いる正常の及び虚血性の心筋における心筋組織酸素飽和レベルを比較する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の詳細な説明及び添付の図面は、幾つかの、必ずしも全てではない本発明の例又は実施形態を説明することを意図したものである。この詳細な説明及び添付の図面の内容は、多少なりとも本発明の範囲を制限しない。
【0014】
本発明は、光学的検知(例えば、反射分光法)を使用して、身体の特定の組織(例えば、炎症、感染、虚血、過剰増殖又は新形成、壊死、水腫、などによって冒された組織)を他の組織又は解剖学的構造から区別し、それにより特定のタイプの標的組織の中への所望の処置、機器、又は物質の標的化された送達を促進する、方法、システム、及び機器(例えば、ガイドワイヤ及びカテーテル)を提供する。
【0015】
図1は、本発明のシステム10の例を示す。このシステム10は一般に、ハンドピース14、カテーテル本体12、及びカテーテル本体12から前進可能な穿通器30を有する組織穿通カテーテル機器と、穿通器30を通って穿通器30の前方に位置する組織の中に前進可能な細長い光学機器22(例えば、ガイドワイヤ又は送達カテーテル)との組み合わせを含む。細長い光学機器22の近位端は、光源80と、分光計82、又は組織から反射された光を組織に関する識別情報に変換することができる他の反射光処理機器に取り付けられる。分光計82又は他の処理機器は、分光計82又は他の処理機器から受信した情報をさらに処理し、分析し、及び/又は表示するようにプログラムされるコンピュータ84に接続されてもよい。
【0016】
本発明の幾つかの実施形態は、固体、液体、又は気体から反射又は散乱された波長の関数として光を研究する反射分光法に基づいて動作することができる。反射分光法に基づいて動作する実施形態において、光源80からの光は、細長い光学機器22を通って遠位方向に移動し、細長い光学機器22の遠位端を出ていく。次いで、反射光が、細長い光学機器22を通って近位方向に移動し、分光計82によって受光される。次いで、分光計82からの信号が、コンピュータ84又は他のモニタ/ディスプレイ機器によって受信され、この機器がこれらの信号を処理し、分光計によって測定された吸収スペクトルをグラフィック又は他の適切な形式で表示する。細長い光学機器22が組織及び/又は体液の中を前進することになる組織及び/又は体液のタイプに応じて、種々のタイプの反射分光法(例えば、可視光、赤外光、紫外光、など)が採用されてもよい。梗塞のある心臓組織を梗塞のない心臓組織から区別することが望まれる場合のような、幾つかの実施形態において、光源80は、近赤外光(例えば、830 Douglas Ave、Dunedin、Florida34698所在のOcean Optics,Inc.から入手可能なModel HL−20000 タングステン光源)を発光することができ、分光計82は、近赤外分光計(例えば、830 Douglas Ave、Dunedin、Florida 34698の所在のOcean Optics,Inc.から入手可能なModel USB 4000 NIR分光計)であってもよい。
【0017】
組織穿通カテーテル
図1に示されているように、組織穿通カテーテルは、ハンドピース14の近位端上のガイドワイヤ挿入ポート16からカテーテル本体12の遠位端DE上の開口部を貫通して延びて、組織穿通カテーテルがガイドワイヤ25上を前進することを可能にする管腔を有することができる。こうした管腔はまた、その管腔の中に放射線写真造影液、生理食塩水、薬物又は他の流体を注入又は輸液することを促進するために、シリンジ20又は他の輸液装置を取り付けることが可能なポート18を有することができる。オペレータが穿通器30の前進及び後退を制御できるようにするために、ハンドピース14上に穿通器制御ノブ15が設けられてもよい。図1及び図5A〜図5Dに示されるように、穿通器30は、組織穿通カテーテルの本体12から横方向に進む直線の又は湾曲した中空針を備えることができる。図1Aに示されているように、組織穿通カテーテルは、穿通器30はカテーテル本体内での後退した位置に存在しているときに、穿通器30がその後カテーテル本体から前進する軌道又は方向を予測するのに使用可能な、配向システム13を随意的に組み入れることができる。これは、穿通器30がその後カテーテル本体12から前進するときに、どこか他の領域にではなく標的領域の中に前進するように、オペレータが穿通器30を前進させる前にカテーテル本体12の回転方向の配向(向き)を調節することを可能にする。幾つかの実施形態において、この配向システム13は、標的領域TAをイメージングすることができる脈管内超音波イメージング装置42と、穿通器30がその後前進することになる予測された軌道のインジケータを超音波画像上に与えるインジケータ(例えば、超音波エコー、ポインタ、電子インジケータ、など)との組み合わせを備えることができる。代替的に、配向システム13は、蛍光透視又はX線によって見ることができる1つ又は複数の放射線写真マーキングを備えることができ、これは穿通器30がその後カテーテル本体12から前進することになる半径方向を示す。こうした配向システム13の例は、米国特許第5,830,222号明細書(Makower)、第6,068,638号明細書(Makower)、第6,159,225号明細書(Makower)、第6,190,353号明細書(Makower、他)、第6,283,951号明細書(Flaherty、他)、第6,375,615号明細書(Flaherty、他)、第6,508,824号明細書(Flaherty、他)、第6,544,230号明細書(Flaherty、他)、第6,579,311号明細書(Makower)、第6,602,241号明細書(Makower、他)、第6,655,386号明細書(Makower、他)、第6,660,024号明細書(Flaherty、他)、第6,685,648号明細書(Flaherty、他)、第6,709,444号明細書(Makower)、第6,726,677号明細書(Flaherty、他)、及び第6,746,464号明細書(Makower)に十分に記載されており、こうした米国特許の各々の開示の全体を本明細書に援用する。また、こうした組織穿通カテーテルの1つの市販の例は、Santa Rosa、California所在のMedtronic Cardiovascular,Inc.から入手可能なPioneer(商標)カテーテルである。
【0018】
細長い光学機器
細長い光学機器22は、穿通器30の開口遠位端から前進可能であり、光源80から細長い光学機器22の遠位端に隣接する組織の中に光を送達する。これはまた、組織からの反射光を分光計82に戻るように伝達する。こうした細長い光学機器22は、非管状構成(例えば、プローブ又はガイドワイヤ)であってもよいし、又は、管状(例えば、1つ又は複数の管腔を有するカテーテル)であってもよい。幾つかの実施形態において、細長い光学機器22は、前述の光学ガイダンス能力に加え、エネルギーに基づく処置(例えば、レーザ、無線周波数エネルギー、他の電磁気エネルギー、熱、光線療法、力、圧力、など)を、細長い光学機器22が前進させられる標的組織の中に直接放出する能力を含むことができる。図2〜図2Cに示される例のような他の実施形態において、細長い光学機器22が光学誘導の下で特定の標的組織の中に前進し、次いで、その標的組織の中への別のカテーテル又は他の機器の前進を誘導するために用いられることができるように、細長い光学機器22は、前述の光学ガイダンス能力を有するガイドワイヤ22aを含むことができる。図3〜図3C及び図5A〜図5Dに示されたもののようなさらに他の実施形態において、細長い光学機器22は、前述の光学ガイダンス能力、ならびに、標的組織の中に所望の機器(例えば、電極又は植込み可能機器)又は物質(1つ又は複数)を送達するための送達管腔(1つ又は複数)又は他の送達装置を有するカテーテルを含むことができる。
【0019】
光学的に誘導されるガイドワイヤの実施形態
図2〜図2Cの特定の例において、細長い光学機器22はガイドワイヤ22aを含む。この光学的に誘導されるガイドワイヤ22aは、細長いシャフト50を備え、シャフト50の中を長さ方向に延びる光送達ファイバ58及び反射光戻しファイバ59を有する。一般に、ガイドワイヤ・シャフト50は、管状コア54の中を貫通して延びる管腔56を有する管状コア54を取り囲む外側螺旋ワイヤ・コイル52を備える。ボアの中心を貫通して長さ方向に延びるボアを有する端部プラグ60が、ガイドワイヤ本体50の遠位端上に取り付けられる。光ファイバ58、59の双方の遠位端は、研磨され接着剤又はポッティング材料によって取り付けられ、又は端部プラグ60の中央ボア内に(又は潜在的にそれを越えて延びる)他の方法で設置される。このようにして、光送達ファイバ58を通って遠位方向に伝達された光が、ガイドワイヤ22bの遠位端に遠位方向に隣接して位置する組織の中に向けられることになり、その組織から反射された光が、反射光戻しファイバ59によって受光され、それを通じて近位方向に伝達される。光源80から入ってくる光を光送達ファイバ58に、及び反射光戻しファイバ59からの反射光を分光計82又は他の処理機器に搬送する、図4〜図4Dに示され後述されるタイプの二股光ケーブル又は他の適切なケーブルへの、ガイドワイヤ22aの接続を促進するために、ガイドワイヤ・シャフト50の近位端上に、光学コネクタ24aが配置される。この光学的に誘導されるガイドワイヤ22aは、いかなる適切な長さ、直径及び可撓性のものであってもよい。このガイドワイヤ22aを、冠状血管の中に前進させられた穿通カテーテルの穿通器30の中に前進させることが望ましい用途について、心筋の亀裂のある又は疾患のある領域に配置する目的のために、こうしたガイドワイヤ22aは、約170cmから約190cmまでの長さ、約60ミクロンから約180ミクロンまでの直径、及び穿通器30を通って誘導するのに十分なだけの可撓性、しかし穿通器30の遠位端を出た後で心筋組織を通って前進するのに十分なだけの少なくともその遠位部における剛性、を有することが好ましい。
【0020】
多くの用途のために、光学的に誘導されるガイドワイヤ22aの遠位先端部は、その組織を通る前進を促進するために斜角をつけられる(beveled)つまり鋭利にされてもよく、又は随意的に、組織穿通能力の強化のために放出する遠位先端部を組み入れてもよい。例えば、RFエネルギー放出によって強化された組織穿通を提供するために、ガイドワイヤ22aの遠位先端部上に又はその付近に無線周波数電極が配置されてもよい。或いは代替的に、ガイドワイヤ22aの遠位先端部は、超音波により振動するように適合されてもよく、それにより組織を通って穿通するその能力が改善される。
【0021】
光学的に誘導される送達カテーテルの実施形態
図3〜図3Cの特定の例において、細長い光学機器22は、バルクヘッド74によって光ファイバ管腔78から分離された1つ又は複数の作業管腔76をもつ細長いカテーテル・シャフト70を有する送達カテーテル22bを含む。光送達ファイバ58及び反射光戻しファイバ59は、光ファイバ管腔78を長さ方向に貫通して延びる。光送達ファイバ58を通って遠位方向に伝達された光が、送達カテーテル22bの遠位端のすぐそばに隣接する組織の中に向けられ、その組織から反射された光が、反射光戻しファイバ59によって受光され、それを通じて近位方向に伝達されるように、これらのファイバ58、59の双方の遠位端が、研磨され、接着剤、ポッティング材料によって光ファイバ管腔78の遠位端内に(又は潜在的にそれを越えて延びる)取り付けられ又は他の方法で位置決めされる。カテーテル22bを二股光ケーブルに、又は光源80から入ってくる光を光送達ファイバ58に及び反射光戻しファイバ59からの反射光を分光計82又は他の処理機器に搬送する別の適切なケーブルに、接続するのを促進するために、カテーテル・シャフト70の近位端上に、コネクタ24Bが配置される。さらに、作業管腔(1つ又は複数の)76を通して、送達カテーテル22bの遠位端が配置されている標的組織の中に、物質(例えば、薬剤、生物製剤、細胞、遺伝子治療製剤、放射線写真造影剤、など)又は機器(例えば、ワイヤ/電極、物質送達インプラント、センサ、など)を送達するのを促進するために、作業管腔(1つ又は複数の)76と連通する近位コネクタ24b上に、ポート25が形成される。
【0022】
このシステムに用いられる光学コネクタは、830 Douglas Ave、Dunedin、Florida 34698所在のOcean Optics,Inc.から入手可能なもののような市販の光学コネクタから選択されてもよい。
【0023】
作業管腔(1つ又は複数の)76を通じて送達することができる物質の例は、以下のものに限定されないが、薬剤(血栓溶解薬、血小板抑制薬、抗再狭窄薬、ベータ遮断薬、イオンチャネル拮抗薬、陽性又は陰性変力薬(positive or negative ionotropic agents)、抗不整脈薬、抗生物質、鎮痛薬、化学療法薬、他の抗腫瘍薬、など)、天然又は組換え蛋白(例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経細胞増殖因子(NGF)、又は肝細胞増殖因子(HGF)のような血管由来の蛋白)、細胞又は細胞性の製剤(例えば、幹細胞(成体又は胚性)、他の前駆細胞(progenetor cell)、筋細胞、筋芽細胞、膵島細胞、ドパミン分泌細胞、遺伝子又は遺伝子治療製剤(例えば、遺伝子治療用途のための遺伝子含有ウイルス・ベクター、細胞への電気泳動的伝達のための遺伝物質、プラスミド、ウイルス・ベクター、遺伝子改変された細胞、裸のDNA、など)、イメージング用の造影剤又は色素、フィラー又は膨張性薬剤(例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、他のグリコサミノグルカン)、放射線標識された診断材料もしくは薬剤又は他の追跡可能な物質、放射性ペレット、放射線治療製剤、上記のいずれかの混合物を、単独で、溶液中に、又はいずれかの送達物質又はマトリクス(例えば、その元の注入部位から離れる物質の播種を抑制し又はゆっくりと分布させるために用いられるポリマー・マトリクス)、透析溶液又は微小透析溶液、或いは任意の治療、イメージング、診断又は他の目的のために送達カテーテルを通して導入することができる、任意の他のタイプの物質と組み合わされたもの、を含む。さらに、腫瘍又は他の望まれない組織の中への無線周波数吸収エンハンサ(例えば、カーボンナノ粒子)の標的化された送達のために送達カテーテル22bを用いることができ、次いで、無線周波数エネルギーが組織を通過することができ、結果として治療加熱、又は、必要であれば、無線周波数吸収エンハンサが送達された領域内の組織の熱壊死/剥離がもたらされる。こうした療法の例は、「Enhanced Systems And Methods For RF−Induced Hyperthermia II」と題する米国特許出願公開番号第2007/0250139号明細書(Kanzius)、「Enhanced Systems And Methods For RF−Induced Hyperthermia」と題する第2006/0190063号明細書(Kanzius)、「Systems And Methods For Combined RF−Induced Hyperthermia And Radioimmunotherapy」と題する第2005/0273143号明細書(Kanzius、他)、「Systems And Methods For RF−Induced Hyperthermia Using Biological Cells And Nanoparticles As RF Enhancer Carriers」と題する第2005/0251234号明細書(Kanzius、他)、及び「System And Method For RF−Induced Hyperthermia」と題する第2005/0251233号明細書(Kanzius)に記載されており、こうした公開された特許出願の各々の開示の全体を本明細書に援用する。
【0024】
図3〜図3Cは、単一の作業管腔76を有する送達カテーテル22bの実施形態を示すが、送達カテーテル22bが代替的に2つ又は3以上の作業管腔76を有することができることが理解される。成分物質が、それらがカテーテル22bを出る際に及び/又は標的組織内で組み合わされて、結果として生じる物質を形成するように、別個のストリームの成分物質の同時導入のために、2つ又は3以上の作業管腔76を有するこうしたカテーテル22bが用いられてもよい。このようにしてその場で形成することができる多数の成分物質の一例は、血小板ゲル(PG)又は自己血小板ゲル(APG)である。親特許である米国特許出願11/426,219号明細書、ならびに、米国特許出願公開2006/0041242号明細書及び第2005/209564号明細書に記載されるように、PG及びAPGは、心筋組織の中に直接送達されたときに、心臓機能の改善、及び/又は、心筋梗塞又は心筋への他の損傷後の有害な心室リモデリングの防止を示しており、これらの開示の全体を本明細書に援用する。この療法において、亀裂又は他の心筋損傷内の又は付近の1つ又は複数の場所で心筋の中に注入される直前、注入中、又は注入後に、血小板含有成分(例えば、多血小板血漿(PRP))がトロンビン含有成分(例えばトロンビン溶液)と組み合わされる。血小板含有成分(例えば、PRP)は、トロンビン含有成分と組み合わされて、所望の治療効果をもたらす血小板ゲル(PG)を形成する。こうしたPGは、血小板含有成分中に含有された血小板がトロンビン含有成分中に含有されたトロンビンによって活性化されるときに形成される。自己PRPは被検者自身の血液から得ることができ、それにより有害反応又は感染のリスクを著しく低下させる。自己PRPが血小板含有成分として用いられるとき、結果として生じたPGは自己血小板ゲル(APG)と呼ばれる。トロンビンをPRPのような血小板含有血漿産物に加えることは、米国特許第6,444,228号明細書に詳細に記載されており、その開示の全体を本明細書に援用する。PRPはまた、種々の整形外科及び他の用途にも用いられている。
【0025】
2つ又は3以上の作業管腔76を有するカテーテル22bを用いてその場で形成することができる多数の成分物質の他の例は、多成分組織接着剤及びシーラント(例えば、Deerfield、Illinois所在のBaxter Healthcare Corporationから商業的に入手可能なTisseel VH(商標)フィブリン・シーラント)、組織の膨張、フィリング又は拡張のような種々の治療又は美容用途のためにその場で形成し又は拡張することができる組織膨張性薬剤、フィラー、又はポリマー材料(例えば、ヒドロゲル)、及び種々のプロドラッグと活性薬との組み合わせを含むが、これらに限定されない。
【0026】
光学的に誘導される送達カテーテル22bは、いかなる適切な長さ、直径、及び可撓性のものであってもよい。送達カテーテル22bを大腿の部位で挿入し、脈管構造を通って(例えば、組織穿通カテーテルを通じて又は独立して)心筋の亀裂のある、疾患のある又は機能不全の領域の中に送達カテーテル22bを前進させることが望ましい用途には、こうした送達カテーテル22bは、少なくとも幾つかの実施形態において、約100インチの長さを有することができ、約0.25mmから約0.5mmまでの外径を有することができ、好ましくは蛇行した脈管構造を通って誘導するのに十分なだけの可撓性をもちながら、同時に、心筋組織を穿通しそれを通って前進するのに十分なだけの剛性をもつことが好ましい。他のカテーテル・サイズも使用可能とすることができる。
【0027】
多くの用途には、送達カテーテル22bは、ステンレス鋼ハイポチューブ(hypotube)から形成されてもよく、又は、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエーテルブロックアミド(例えば、Pebax(商標))、などのような適切なポリマー材料から形成されてもよい。幾つかの実施形態において、送達カテーテル22bの遠位先端部は、その組織を通る前進を促進するために斜角をつけられつまり鋭利にされてもよく、或いは随意的に、送達カテーテル22bは、組織穿通能力の強化のためにエネルギーを放出する遠位先端部を有してもよい。例えば、RFエネルギー放出によって強化された組織穿通を提供するために、送達カテーテル22bの遠位先端部上に又は付近に無線周波数電極が配置されてもよい。或いは代替的に、送達カテーテル22bの遠位先端部は、超音波により振動するように適合されてもよく、それにより組織を通って穿通するその能力が改善される。
【0028】
カテーテルのイメージングと患者の身体内のカテーテルの位置の判定を可能にするために、随意的に、送達カテーテル22bのすべて又は一部は、放射線不透過性であってもよく、または、図3Cに示されている金属製マーカ・バンド71のような1つ又は複数の放射線不透過性のマーカが、送達カテーテル上に(例えば、その遠位先端部に又は付近に)形成されてもよい。
【0029】
薬剤、物質又は装置が、数日、数週間、又は数ヶ月の期間にわたって標的部位に慢性的に送達されるような幾つかの用途において、送達カテーテル22bは、穿通カテーテルが除去された後、留置されたままにされてもよい。これを促進するために、近位コネクタ24bは、血管穿通カテーテルの近位への引き出し及び除去中に、送達カテーテル22bが所定位置に残っている状態で、送達カテーテル22bから除去することができるように、取り外し可能つまり除去可能であってもよい。その後、送達カテーテル22bの近位端は、体外に出されたままにされてもよく、作業管腔(1つ又は複数の)76を通る所望の物質又は装置の時折の又は連続的な送達を促進するために、送達カテーテル22bの近位端に近位コネクタ24b又はいかなる他の適切なコネクタ、注入ポート、又はハブが取り付けられてもよい。代替的に、望むときに皮下に植込まれたポートを通じて物質を輸液し又は注入することができるように、送達カテーテルの近位端は、皮下に植込まれたポートに取り付けられてもよい。代替的に、幾つかの場合において、送達カテーテル22bの近位端は、(1つ又は複数の)作業管腔76を通じた(1つ又は複数の)物質の輸液のために、ポンプ又は送達機器に接続されてもよい。
【0030】
送達カテーテルは、所望の方法を達成するために必要に応じて直線状であってもよいし又は湾曲していてもよい。必ずしもすべてではない幾つかの場合において、送達カテーテルは、マイクロカテーテルとして当該技術分野では公知のタイプの非常に小直径のカテーテルを構成することができる。
【0031】
図4に示されたような方法において、細長い光学機器22の近位端は、第1近位ケーブル・アーム32及び第2近位ケーブル・アーム36を有する二股光ケーブルに接続される。この二股ケーブルの遠位部は、管29の中を光送達ファイバ72及び反射光戻しファイバ74が貫通して延びる、管29を備える。ケーブルの反射光戻しファイバ74は、第1近位ケーブル・アーム32を通って延び続け、光学コネクタ34によって分光計又は他の処理機器82に接続される。ケーブルの光送達ファイバ72は、第2近位ケーブル・アーム36を通って延び続け、光学コネクタ38によって光源80に接続される。
【0032】
使用方法
図5A〜図5Dは、疾患のある又は亀裂のある組織、腫瘍、特定の解剖学的構造、又は体腔、などの領域のような標的領域TA内に細長い光学機器22の遠位先端部を配置するための図1のシステムを用いる方法におけるステップを示す。最初に、図5Aに示されているように、組織穿通カテーテル本体12は、被検者の脈管構造を通って標的領域TA付近の血管Vの管腔内の位置まで前進させられる。組織穿通カテーテルが、付随するインジケータ又は放射線写真マーキング(図示せず)を備えた脈管内超音波装置42のような、配向指示システム13を装備する場合、こうした配向指示システムは、必要に応じて、穿通器30がその後カテーテル本体12から前進するときに、どこか他の方向ではなく標的領域TAの方へ確実に前進するようにするために、血管V内のカテーテル本体12の回転の配向を調節するのに用いることができる。その後、図5Bに示されているように、穿通器30がカテーテル本体12から標的領域TAの方向に前進させられる。次いで、図5Cに示されるように、細長い光学機器22は、穿通器の管腔を通って、穿通器の遠位端の外に、及び穿通器30の遠位端と標的領域TAとの間に存在する組織を通って前進させられる。次いで、光学的に伝送された情報(例えば、スペクトル反射、pH、酸素飽和、温度、など)が、分光計82又は他の処理機器及びコンピュータ84によって処理され、そして最後に、細長い光学機器22の遠位端が図5Dに示されているように標的領域TA内にいつ入るのかを判定するために、オペレータによって使用される。
【0033】
コンピュータ84は、分光計82又は他の処理機器から受信した信号を使用して、細長い光学機器22、22a、22bの遠位端が所望の標的組織タイプの中にいつ前進したかを判定するためにオペレータによって使用可能なグラフィック表示又は他のタイプの表示される情報をもたらす。このコンピュータ84は、このタスクのためにいかなる適切なソフトウェアでプログラムされてもよい。例えば、白色光範囲で行われる測定(例えば、慢性的に亀裂のある組織の検出)には、コンピュータ84は、830 Douglas Ave、Dunedin、Florida 34698所在のOcean Optics、Inc.から入手可能なOOIBase32ソフトウェアを使用することができる。代替的に、近赤外(NIR)範囲において行われる測定(例えば、急性の梗塞の検出)には、コンピュータ84は、同じく830 Douglas Ave、Dunedin、Florida 34698所在のOcean Optics、Inc.から入手可能なSpectraSuite(商標)ソフトウェアを使用することができる。
【0034】
図6は、外植されたブタ心臓から集められたデータを示すグラフである。図に示されるような幾つかの場合において、光源80から放出された光の波長は、細長い光学機器22、22a、22bが組織を通って前進させられる際のインターバルで変化することがあり、コンピュータ84は、反射した光の強度対波長を示すグラフを表示することができる。図6に示されているように、強度対波長曲線は、組織タイプごとに変化し、したがって、こうした曲線は、細長い光学機器22、22a、22bの遠位先端部が現在配置されている組織タイプの光吸収品質を示す「サイン」を提供することができる。一例として、図6は、大動脈壁A、心臓の心外膜表面上の熱瘢痕ESTS、心外膜表面脂肪ESF、心外膜中央の正常の組織MENT、及び血液Bに対する強度対波長曲線を示す。
【0035】
種々のタイプの疾患のある又は病的に冒された組織を周囲組織から区別するために、スペクトル反射が用いられてもよい。図7は、オペレータが心筋内細胞注入のために本明細書で開示された本発明を用いた場合に彼又は彼女が見ることになるものの例であり、横軸は時間測定単位を表し、縦軸は、光強度の測定単位を表す。この例において、前述のような細長い光学機器22、22a、22bは、光源80によって放出された光の波長は一定のままである状態で、亀裂のある心筋壁を通って前進することができる。コンピュータ84は、組織を通る細長い光学機器22、22a、22bの穿通深さに関連する反射光の強度のグラフィック表示を提供する。これに関して、図7は、細長い光学機器22、22a、22bがその心外膜表面からその心内膜表面の方へ亀裂のある心室壁を通って貫壁的に前進させられる際に生成した強度対時間のグラフを示す。特に、図7に示されているように、機器が心筋に入る際に、それは最初に正常の又は健康な心筋組織(T=1ないし2.5)を通って前進し、したがって、結果としておよそ30の反射信号強度が得られる。その後、機器が前進し続ける際に、この装置は反射光の強度の実質的な増加によって示される亀裂のある組織(T=2.5ないし8.5)の中に進む。この梗塞区域内に位置決めされた状態で、所望の治療又は診断物質(例えば、薬物、或いは溶液中に懸濁される心臓筋細胞又は心臓幹細胞のような細胞製剤)が機器の作業管腔を通じて注入され、したがって、結果として注入アーチファクト又は丸みのあるピーク(T=6.2における)がもたらされる。
【0036】
多くの臨床の状況では、所望の診断又は治療物質が梗塞区域の中に注入された後で、単純に機器を引き出すことが望ましいであろう。しかしながら、この例は、物質が梗塞区域の中に注入された後で、機器がさらに心筋壁を通り抜けて心室の中に前進させられた場合に、オペレータが何を見ることになるのかを示す。これに関して、図7に示されるように(T=8.5ないし10.2において)、機器の遠位端が心内膜を通って心臓の心室の中に前進するときに、反射光の信号強度が急激に落ち、それにより機器が心腔に入ったことの明らかな表示を提供する。この心腔に入ることを検出する能力は、オペレータが患者の血流の中への特定の物質の不慮の注入を回避できるようにするのに特に有用である。例えば、機器の最初の挿入の間に、反射光の強度が液体又は血液と一致するレベルまで落ちる場合、オペレータは、機器の遠位端が遠くに移動し過ぎて、血液で満たされた心腔に入ったことを知ることになる。オペレータは、次いで、診断又は治療物質を注入する前に、反射光の強度が機器の遠位端が梗塞区域内に位置決めされることを示す位置まで機器を引き戻し、及び/又は、再挿入することができる。これは、心腔又は患者の血流の中に直接注入された場合に、注入される物質が血液の凝固又は他の全身毒性を引き起こすときに、特に重要であろう。他方では、この心腔に入ることを検出する能力はまた、緊急の心内薬剤注入が望まれるときのような心腔又は血流の中への物質の目的のある送達のために用いられてもよい。
【0037】
図7の例において、機器は、心室の中に例証的に前進させられた後で、梗塞区域(T=12から14.2まで)を通って引き戻され、健康な心筋組織(T=14.2からT=18まで)を通って引き戻されて、除去される。この例は、健康な心筋、亀裂のある心筋、及び血液を区別するためのスペクトル反射の使用を例証するが、同方法は、他のタイプの組織を区別するために用いられてもよい。例えば、この技術はまた、水腫状の脳組織と正常の脳組織とを識別するために用いられてもよい。Thiagrajah、J.R.他、「Noninvasive Early Detection of Brain Edema in Mice by Near−Infrared Scattering」、Journal of Neuroscience Research、80、p.293−299(2005)を参照されたい。
【0038】
前述の例はスペクトル反射を使用するが、特定の組織変数(例えば、酸素飽和、pH、温度)を測定することができる特殊化された光学センサを同様に用いることができることが認識される。例えば、幾つかの実施形態において、細長い光学機器22、22a、又は22bは、光ファイバ上に取り付けられた、つまり設置された光学センサを備えることができ、分光光度計又は他の処理機器82は、その光学センサから信号を受信し、こうした受信信号に基づいて、検出された組織変数の読取値を提供するように特別に設計されてもよい。本発明に用いるために光学センサを光ファイバ上に設置することができるような幾つかの限定ではない例は、米国特許第7,209,606号明細書(Cantin、他)に記載されており、この明細書を本明細書に援用する。この方法の例は、開胸ブタの正常の及び虚血性心筋における組織酸素レベルを測定するために光学酸素センサを用いた図8において示されている。この例において、市販の光ファイバ酸素センサ(830Douglas Ave、Dunedin、Florida34698所在のOcean Optics,Inc.から入手可能なFOXY酸素センサ#18G)を有する細長い光学機器22を18ゲージ針の先端部の内側に設置し、次いで、この針を心筋の中に前進させた。0%酸素標準として37度の窒素パージされた空気を用いてセンサを校正し、100%酸素標準として働くブタの動脈血にアクセスした。細長い光学機器22を左心室の前側の自由壁の中に挿入し、安定化させた。数分のデータ記録後に、LADの対角血管(diagonal vessels)を縫合して虚血性区域を作成し、そこにプローブを配置した。図8は、機器22の遠位先端部が正常の及び急性虚血性心筋組織内に位置決めされたときの、100秒間にわたる相対的組織酸素飽和レベルの差異を示す。
【0039】
組織の中に存在する水の量に基づいて、生存可能な、水腫状の、又は壊死のいずれかとして組織を分類するためにMRI又はNIRを用いるための技術が確立されている。S.Merrit他、「Coregistration Of Diffuse Optical Spectroscopy And Magnetic Resonance Imaging In A Rat Tumor Model」、Appl Opt.、1;42(16)、p.2951−9(2003年6月)。これらの技術は、送達カテーテル又は他の処置機器を、特定の病理(例えば、壊死組織、腫瘍組織、など)によって冒される組織内の所望の標的位置に誘導するために本発明において用いられてもよい。問い合わせしている光の波長は、組織の特定のタイプを突き止めるためにシステムを最適化するように変化されてもよい。例えば、以下の表1は、組織の特定のタイプを区別する目的のために用いられてもよい、或る波長をまとめたものである。表1に示された波長における信号強度は、病理に比例している。例えば、慢性心筋梗塞における600nmでの非常に特異なピークは、瘢痕のある組織を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
水腫又は含水量に基づいて組織を区別するための光学分光法に関するさらなる詳細は、Nighswander−Rempel S.P.他、「Regional Variations In Myocardial Tissue Oxygenation Mapped By Near−Infrared Spectroscopic Imaging」、J Mol Cell Cardiol.、34(9)、p.1195−203(2002年9月);Merritt S、他、「Coregistration Of Diffuse Optical Spectroscopy And Magnetic Resonance Imaging In A Rat Tumor Model」、Appl Opt.、1;42(16)p.2951−9(2003年6月)、及び、Cuccia D. J.他、「In Vivo Quantification Of Optical Contrast Agent Dynamics In Rat Tumors By Use Of Diffuse Optical Spectroscopy With Magnetic Resonance Imaging Coregistration」、Appl Opt.、1;42(16)p.2940−50(2003年6月)を含む、種々の刊行物において入手可能である。
【0042】
本発明は、本発明の特定の例又は実施形態を参照しながら上記で説明されたが、本発明の意図された思想及び範囲から逸脱することなく、これらの例及び実施形態に種々の追加、削除、改変及び修正を行うことができることが認識される。例えば、本明細書で説明される1つの実施形態又は例のいずれかの要素又は属性は、そうすることが実施形態又は例をその意図された使用に不適切なものにしない限り、別の実施形態又は例に組み入れ又は共に用いられてもよい。また、方法又はプロセスのステップが特定の順序で説明され、列挙され、又は特許請求される場合、こうしたステップは、そうすることが実施形態又は例を、新規なもの、当業者に明白なものにしないか、又はその意図された使用に不適切なものにしない限り、いかなる他の順序で実施されてもよい。すべての妥当な追加、削除、修正、及び改変は、説明された例及び実施形態の均等物と考えられ、それらは以下の請求項の範囲内に含められる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断もしくは治療処置、物質又は機器を、ヒト又は動物被検者の身体内に位置する標的領域に送達するための方法であって、
(A)他の領域から標的領域を区別する組織変数の光学測定のために使用可能な、細長いシャフト、光伝達ファイバ、及び反射光戻しファイバを備える、細長い光学機器を提供するステップと、
(B)被検者の身体内の身体管腔に位置決め可能なカテーテル・シャフトと、前記カテーテル・シャフトが身体管腔の外側の場所の中に位置決めされる、カテーテルから身体管腔の外側の場所に前進可能な穿通器であって、遠位開口部をもつ管腔を有する穿通器と、を備える組織穿通カテーテル機器を提供するステップと、
(C)前記組織穿通カテーテルを身体管腔内に位置決めするステップと、
(D)前記穿通器を前記穿通カテーテルから前記穿通カテーテルが位置決めされる身体管腔の外側の位置に前進させるステップと、
(E)前記細長い光学機器を前記穿通器の管腔を通って遠位開口部の外に及び標的領域の方向に組織を通って前進させるステップと、
(F)前記光伝達ファイバを通じて光を送達し、前記反射光戻しファイバから受光した反射光を用いて、前記組織変数を測定するステップと、
(G)前記細長い光学機器が前記標的領域内にあることを前記組織変数が示すときを判定するステップと、
(H)前記標的領域の中への診断もしくは治療モダリティ、物質又は機器の送達を促進するための細長い光学機器を用いるステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記区別する変数が、pH、水素イオン濃度、酸素濃度、溶存酸素濃度、温度、及び前記標的領域に存在する組織のタイプについての既知のスペクトル反射データと適合するスペクトル反射データからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記細長い光学機器がガイドワイヤを備え、前記ステップHが、i)前記ガイドワイヤ上で前記標的領域の中に処置カテーテルを前進させること、及び、ii)前記処置カテーテルを用いて診断もしくは治療処置、物質又は機器を前記標的領域の中に送達すること、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記細長い光学機器が送達カテーテルを備え、前記ステップHが、前記送達カテーテルを用いて診断もしくは治療処置、物質又は機器を前記標的領域に送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記送達カテーテルが少なくとも1つの作業管腔を有し、前記ステップHが、物質又は機器を前記少なくとも1つの作業管腔を通じて前記標的領域の中に送達することを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップHが、薬剤、血栓溶解薬、血小板抑制薬、抗再狭窄薬、ベータ遮断薬、イオンチャネル拮抗薬、陽性又は陰性変力薬(positive or negative ionotropic agents)、抗不整脈薬、抗生物質、鎮痛薬、化学療法薬、抗腫瘍薬、天然又は組換え蛋白、血管由来の蛋白、血管内皮増殖因子(VEGF)、線維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PDGF)、神経細胞増殖因子(NGF)、肝細胞増殖因子(HGF))、細胞、細胞性の製剤、成体幹細胞、胚性幹細胞、前駆細胞、筋細胞、筋芽細胞、膵島細胞、ドパミン分泌細胞、遺伝子、遺伝子治療製剤、遺伝子含有ウイルス・ベクター、細胞への電気泳動的伝達のための遺伝物質、プラスミド、ウイルス・ベクター、遺伝子改変された細胞、裸のDNA、造影剤、色素、放射線標識された診断材料、放射線標識された薬剤、透析溶液、微小透析溶液、放射性ペレット、放射線治療製剤、無線周波数吸収エンハンサ、ナノ粒子、カーボンナノ粒子、多血小板血漿、トロンビン溶液、血小板ゲル、自己血小板ゲル、フィラー、膨張性薬剤、コラーゲン、ヒアルロン酸、及びグリコサミノグルカンからなる群から選択される物質を送達することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記送達カテーテルが複数の作業管腔を有し、前記ステップHが、複数の物質が前記標的領域内で組み合わされるようにするために、前記複数の作業管腔を通じて別個のストリームで複数の物質を送達することを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の物質が、組み合わされて前記標的領域内で血小板ゲルを形成する、
i)多血小板血漿と、ii)トロンビン含有溶液と、を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記標的領域が前記被検者の心筋内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記標的領域が器官内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記標的領域が病変部位内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記病変部位が腫瘍を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標的領域が別の身体管腔内にある、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記標的領域が前記被検者の心臓内にあり、前記ステップCが、冠状血管静脈に前記組織穿通カテーテルの位置決めを含み、前記ステップDが、前記標的領域から離間して配置された前記被検者の心筋内の位置に前記穿通器を前進させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップHが、物質溶出インプラント、放射性インプラント、塞栓部材、マーカ、放射線不透過性のマーカ、カテーテル、カニューレ、ワイヤ、電極、センサ、及びインプラントからなる群から選択される機器の前記標的領域の中への送達を促進するための前記細長い光学機器を用いることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記組織穿通カテーテルが、前記穿通器がその後前進することになる方向を予測するために使用可能な配向インジケータをさらに備え、前記ステップDを実行する前に、前記方法が、前記穿通器がその後前記標的領域の方向に前進する可能性を高めるために、必要に応じて前記配向インジケータを用いて前記身体管腔内でのカテーテル本体の回転方向の配向を調節するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
システムであって、
細長いカテーテル・シャフトと、前記カテーテル・シャフトから前進可能な管腔を有する穿通器と、を備える穿通カテーテル機器と、
他の領域から標的領域を区別する組織変数の光学測定のために使用可能な、細長いシャフトと、光伝達ファイバと、反射光戻しファイバとを備える細長い光学機器と、を備え、
前記細長い光学機器が前記穿通器の前記管腔を通って前進可能である、
ことを特徴とするシステム。
【請求項18】
前記細長い光学機器がガイドワイヤを備える、
請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記細長い光学機器が送達カテーテルを備える、
請求項17に記載のシステム。
【請求項20】
前記送達カテーテルが、物質又は機器を送達することができる少なくとも1つの作業管腔を有する、
請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記送達カテーテルが、物質又は機器を送達することができる単一の作業管腔を有する、
請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
前記送達カテーテルを通じて別個のストリームで少なくとも2つの物質を輸液することができるように、前記送達カテーテルが少なくとも2つの作業管腔を有する、
請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記物質が前記送達カテーテルを出た後で組み合わされるように、前記作業管腔が隣接位置で前記送達カテーテルを出る、
請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記組織穿通カテーテルが、前記穿通器がその後前記穿通カテーテル・シャフトから前進する方向を判定するために使用可能な、予測するために使用可能な、配向インジケータをさらに備える、
請求項17に記載のシステム。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−517582(P2011−517582A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550754(P2010−550754)
【出願日】平成21年3月2日(2009.3.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/035751
【国際公開番号】WO2009/114324
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(502129357)メドトロニック カルディオ ヴァスキュラー インコーポレイテッド (125)
【Fターム(参考)】