光ファイバ用母材の堆積用バーナ
【課題】 噴出ポートの長辺方向にわたって安定した火炎流が得られ、ガス供給量を増やした場合でもバーナ間で火炎同士の干渉が発生せず、高い堆積速度が得られる光ファイバ用母材の堆積用バーナを提供する。
【解決手段】 複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート2内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設されていることを特徴としている。
【解決手段】 複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート2内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設されていることを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にバーナにガラス原料ガスの供給量を増やした場合において、生成するガラス微粒子の堆積効率を大幅に向上させる光ファイバ用母材の堆積用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ母材を製造するために、各種方法が提案されている。それらの方法のなかでも、回転する出発部材上にバーナ火炎中で生成したガラス微粒子を、バーナもしくは出発部材を相対往復運動させて付着堆積させ、スートを合成し、これを電気炉内で脱水、焼結させる外付け法(OVD法)は、比較的任意の屈折率分布のものが得られ、しかも、大口径の光ファイバ母材を量産できることから汎用されている。
【0003】
ガラス微粒子の堆積には、一般的にガス噴出ポートが同芯円状に配された多重管バーナが用いられている。このバーナは、中心部のガス噴出ポートからガラス原料ガスを、その外側のガス噴出ポートからは、可燃性ガス、助燃性ガス及びシールガスを噴出させる構造となっており、このようなバーナを複数本並べ、出発部材上にガラス微粒子を堆積させて光ファイバ用母材の製造を行っている。
【0004】
堆積速度をさらに向上させる方法に、ガス供給量を増やす方法がある。しかしバーナ本数を増やさないで、1本当たりのガス流量を増した場合、火炎が大きくなり、隣り合うバーナ間で火炎の干渉が大きくなるため、逆に堆積効率が低下し、思ったように堆積速度が向上しないという問題があった。
また、1本当たりのガス流量を増やさないで、バーナ本数を増やす場合は、バーナ火炎間の干渉の大きさは変わらないが、増設したバーナによって干渉する場所が増すために堆積効率が低下し、この場合も思ったように堆積速度が向上しないという問題があった。
【0005】
そこで、大容量のガスを流してもバーナ間で火炎同士が干渉しないバーナが提案されている。これには、特許文献1,2に記載の方法が挙げられる。
特許文献1では、断面形状が長方形及び楕円形の多重管バーナが提案され、特許文献2では、ガス噴出口がスリット形状のバーナが提案されている。
【特許文献1】特開平4-260616号公報
【特許文献2】特許第3798392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、スリット状のガス噴出口を有するスリットバーナのガス噴出ポートを示す概略図であり、図2は、長方形状のガス噴出ポートを有する多重管バーナのガス噴出ポートを示す概略図である。図において、符号1はガラス原料ガス噴出ポートであり、符号2は可燃性ガス噴出ポート、符号3は助燃性ガス噴出ポート、符号4はシールガス噴出ポート、符号5はバーナである。
しかしながら、図3に示すように、図1,2のバーナは、いずれもガス噴出口から出発部材6に向けて噴出された火炎流7は、噴出ポートの長辺方向(実線矢印方向)にわたるガス流分布の均一化が非常に困難で、渦流や偏流を生じるために、火炎が非常に不安定であり、堆積不整、バーナ先端へのスス付着等の問題があった。
【0007】
本発明は、噴出ポートの長辺方向にわたって安定した火炎流が得られ、ガス供給量を増やした場合でもバーナ間で火炎同士の干渉が発生せず、高い堆積速度が得られる光ファイバ用母材の堆積用バーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ用母材の堆積用バーナは、複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズルが互いに平行に配設されていることを特徴としている。
なお、可燃性ガスの線速をV1、小口径助燃性ガス噴出ノズルから噴出される助燃性ガスの線速をV2とするとき、V1<V2とするのが好ましい。
【0009】
本発明の堆積用バーナには、バーナにガスが供給される各ガスのポート根元(ガス導入部)に、ガスバッファ部となる拡張部を設け、該拡張部内に、複数のガス噴出孔を有するガス導入管をバーナの長辺方向に挿通し、該ガス噴出孔からガス噴出ポート内にガスを供給するのが好ましい。ガス導入管には、バーナ後壁に向かってガス噴出孔が設けられ、該ガス噴出孔から噴出されたガスが、バーナ後壁に衝突後、バーナ先端側に導かれる。
なお、前記バーナは、ガス噴出ポートがスリット状に配設されたスリットバーナ、またはガス噴出ポートの断面形状が長方形を有する角型多重管バーナ、もしくはガス噴出ポートの断面形状が楕円形を有する楕円型多重管バーナであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス供給量を増やした場合でも、バーナ間で火炎同士が干渉することなく、噴出ポートの長辺方向に亘って安定した火炎流が得られ、堆積速度が上がる等、極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ガス噴出ポートの長辺方向において、ガス流分布が不均一になると、渦流や偏流が発生する。その原因の一つは、可燃性ガスがポート出口で解放される際の膨張時にガス流の乱れが増大することにある。
そこで、本発明は、平行に並んだスリット状の噴出ポート群から構成されるスリットバーナ、又は断面が長方形状の同芯多重管で構成される多重管バーナにおいて、図4,5に示すように、可燃性ガス噴出ポート2内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8を噴出ポートの長辺方向(実線矢印方向)にライン状に配置することにより、図6に示すように、小口径助燃性ガス噴出ノズル8から噴出される助燃性ガス流9を流芯として、可燃性ガス流10を複数の助燃性ガス流9によって整流することにより、可燃性ガス流10は整流状態に保たれ、可燃性ガスの乱れを効率よく抑えることができる。この効果は、可燃性ガスの線速V1よりも助燃性ガスの線速V2が大きい場合に顕著である。
【0012】
渦流や偏流が発生する他の原因としては、バーナへの各ガスの導入量がバーナの長辺方向で不均一であり、バーナ出口においても、その不均一性が残存していることにある。そこで、この不均一性を改善するためにガス導入口を複数設けることもできるが、バーナの構造が複雑となり、かつバーナが大型化してしまう。
そこで図7,8に示すように、バーナの各ガスのポート根元(ガス導入部)内にガス導入管11をバーナの長辺方向に挿通し、このガス導入管11にライン状に設けられた複数のガス導入孔12からガスをバーナ内に導入し、ガス導入孔12から出たガスを大きな空間を有するバッファ部13の後壁面に衝突させることで量的に均一化されたガスは、その後バーナ先端14側に導かれる。
【0013】
これによりガス導入管を増やすことなく、効果的に長辺方向のガス量分布を均一化させることができる。なお、図7は、各ガスのポート根元の概略を示す斜視図であり、図8は、その側断面図である。図9は、各ガスのポート根元にガス導入管11が挿通された、本発明によるバーナの全体像を示す概略断面図であり、符号14はバーナ先端である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
実施例1;
図4に示された、可燃性ガス噴出ポート2内に、バーナの長辺方向(実線矢印方向)に複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設されたスリットバーナを使用してガラス微粒子の堆積を行った。
中心のガラス原料ガス噴出ポート1に、ガラス原料ガスとしてSiCl415L/min及び助燃性ガスとしてO230L/minを供給し、その外側の可燃性ガス噴出ポート2には、可燃性ガスとしてH2400L/min及び小口径助燃性ガス噴出ノズル8に助燃性ガスとしてO230L/minを供給し、さらにその外側の助燃性ガス噴出ポート3に助燃性ガスとしてO290L/min、さらに、ガス噴出ポート1と2及び2と3の間に設けられたシールガス噴出ポート4にシールガスとして10L/minをそれぞれ供給した。その結果、バーナの長辺方向において、可燃性ガスの線速均一性が向上し、図6に示すような安定した火炎が得られた。
この条件で、直径100mmφのガラス棒の周囲にガラス微粒子を堆積させたところ、その付着効率は66%であった。後述する比較例の付着効率55%と比べても特段に向上した。
【0015】
比較例1;
図1に示すようなスリットバーナを使用してガラス微粒子の堆積を行った。
中心のガラス原料ガス噴出ポート1に、ガラス原料ガスとしてSiCl415L/min及び助燃性ガスとしてO230L/min、その外側の可燃性ガス噴出ポート2に可燃性ガスとしてH2400L/min、さらにその外側の助燃性ガス噴出ポート3に助燃性ガスとしてO290L/min、ガス噴出ポート1と2及び2と3の間に設けられたシールガス噴出ポート4にシールガスとして10L/minをそれぞれ供給した。
その結果、図3に示すように、バーナの長辺方向においてガスの線速不均一にともなう渦や偏りが発生し、火炎が大きく乱れた。
この条件で、直径100mmφのガラス棒の周囲にガラス微粒子を堆積させたところ、その付着効率は55%であった。これらの結果を表1にまとめて示した。
【0016】
【表1】
【0017】
実施例2;
図5に示された、可燃性ガス噴出ポート2内に、バーナの長辺方向に複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設された角型の多重管バーナを使用した以外は、実施例1と同様にしてガラス微粒子の堆積を行った。
その結果、図2に示した従来の多重管バーナと比較して、火炎は極めて安定し、堆積速度も特段に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、ガラス微粒子の堆積効率が向上し、光ファイバ母材の生産性向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の、スリットバーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図2】従来の、角型多重管バーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図3】従来のスリットバーナの火炎流を模式的に示す概略図である。
【図4】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置されたスリットバーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図5】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置された角型多重管バーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図6】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置されたスリットバーナの火炎流を模式的に示す概略図である。
【図7】本発明になるバーナのガス導入部の概略を示す斜視図である。
【図8】図7の側断面図である。
【図9】本発明によるバーナの全体像の概略を示す断面図である。
【図10】本発明になるバーナのガス導入部の天井を示す上面図である。
【図11】従来のバーナのガス導入部の概略を示す斜視図である。
【0020】
1.ガラス原料ガス噴出ポート、
2.可燃性ガス噴出ポート、
3.助燃性ガス噴出ポート、
4.シールガス噴出ポート、
5.バーナ、
6.出発部材、
7.火炎流、
8.小口径助燃性ガス噴出ノズル、
9.助燃性ガス流、
10.可燃性ガス流、
11.ガス導入管、
12.ガス導入孔、
13.ガスバッファ部、
14.バーナ先端。
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にバーナにガラス原料ガスの供給量を増やした場合において、生成するガラス微粒子の堆積効率を大幅に向上させる光ファイバ用母材の堆積用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ母材を製造するために、各種方法が提案されている。それらの方法のなかでも、回転する出発部材上にバーナ火炎中で生成したガラス微粒子を、バーナもしくは出発部材を相対往復運動させて付着堆積させ、スートを合成し、これを電気炉内で脱水、焼結させる外付け法(OVD法)は、比較的任意の屈折率分布のものが得られ、しかも、大口径の光ファイバ母材を量産できることから汎用されている。
【0003】
ガラス微粒子の堆積には、一般的にガス噴出ポートが同芯円状に配された多重管バーナが用いられている。このバーナは、中心部のガス噴出ポートからガラス原料ガスを、その外側のガス噴出ポートからは、可燃性ガス、助燃性ガス及びシールガスを噴出させる構造となっており、このようなバーナを複数本並べ、出発部材上にガラス微粒子を堆積させて光ファイバ用母材の製造を行っている。
【0004】
堆積速度をさらに向上させる方法に、ガス供給量を増やす方法がある。しかしバーナ本数を増やさないで、1本当たりのガス流量を増した場合、火炎が大きくなり、隣り合うバーナ間で火炎の干渉が大きくなるため、逆に堆積効率が低下し、思ったように堆積速度が向上しないという問題があった。
また、1本当たりのガス流量を増やさないで、バーナ本数を増やす場合は、バーナ火炎間の干渉の大きさは変わらないが、増設したバーナによって干渉する場所が増すために堆積効率が低下し、この場合も思ったように堆積速度が向上しないという問題があった。
【0005】
そこで、大容量のガスを流してもバーナ間で火炎同士が干渉しないバーナが提案されている。これには、特許文献1,2に記載の方法が挙げられる。
特許文献1では、断面形状が長方形及び楕円形の多重管バーナが提案され、特許文献2では、ガス噴出口がスリット形状のバーナが提案されている。
【特許文献1】特開平4-260616号公報
【特許文献2】特許第3798392号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1は、スリット状のガス噴出口を有するスリットバーナのガス噴出ポートを示す概略図であり、図2は、長方形状のガス噴出ポートを有する多重管バーナのガス噴出ポートを示す概略図である。図において、符号1はガラス原料ガス噴出ポートであり、符号2は可燃性ガス噴出ポート、符号3は助燃性ガス噴出ポート、符号4はシールガス噴出ポート、符号5はバーナである。
しかしながら、図3に示すように、図1,2のバーナは、いずれもガス噴出口から出発部材6に向けて噴出された火炎流7は、噴出ポートの長辺方向(実線矢印方向)にわたるガス流分布の均一化が非常に困難で、渦流や偏流を生じるために、火炎が非常に不安定であり、堆積不整、バーナ先端へのスス付着等の問題があった。
【0007】
本発明は、噴出ポートの長辺方向にわたって安定した火炎流が得られ、ガス供給量を増やした場合でもバーナ間で火炎同士の干渉が発生せず、高い堆積速度が得られる光ファイバ用母材の堆積用バーナを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ用母材の堆積用バーナは、複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズルが互いに平行に配設されていることを特徴としている。
なお、可燃性ガスの線速をV1、小口径助燃性ガス噴出ノズルから噴出される助燃性ガスの線速をV2とするとき、V1<V2とするのが好ましい。
【0009】
本発明の堆積用バーナには、バーナにガスが供給される各ガスのポート根元(ガス導入部)に、ガスバッファ部となる拡張部を設け、該拡張部内に、複数のガス噴出孔を有するガス導入管をバーナの長辺方向に挿通し、該ガス噴出孔からガス噴出ポート内にガスを供給するのが好ましい。ガス導入管には、バーナ後壁に向かってガス噴出孔が設けられ、該ガス噴出孔から噴出されたガスが、バーナ後壁に衝突後、バーナ先端側に導かれる。
なお、前記バーナは、ガス噴出ポートがスリット状に配設されたスリットバーナ、またはガス噴出ポートの断面形状が長方形を有する角型多重管バーナ、もしくはガス噴出ポートの断面形状が楕円形を有する楕円型多重管バーナであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ガス供給量を増やした場合でも、バーナ間で火炎同士が干渉することなく、噴出ポートの長辺方向に亘って安定した火炎流が得られ、堆積速度が上がる等、極めて優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
ガス噴出ポートの長辺方向において、ガス流分布が不均一になると、渦流や偏流が発生する。その原因の一つは、可燃性ガスがポート出口で解放される際の膨張時にガス流の乱れが増大することにある。
そこで、本発明は、平行に並んだスリット状の噴出ポート群から構成されるスリットバーナ、又は断面が長方形状の同芯多重管で構成される多重管バーナにおいて、図4,5に示すように、可燃性ガス噴出ポート2内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8を噴出ポートの長辺方向(実線矢印方向)にライン状に配置することにより、図6に示すように、小口径助燃性ガス噴出ノズル8から噴出される助燃性ガス流9を流芯として、可燃性ガス流10を複数の助燃性ガス流9によって整流することにより、可燃性ガス流10は整流状態に保たれ、可燃性ガスの乱れを効率よく抑えることができる。この効果は、可燃性ガスの線速V1よりも助燃性ガスの線速V2が大きい場合に顕著である。
【0012】
渦流や偏流が発生する他の原因としては、バーナへの各ガスの導入量がバーナの長辺方向で不均一であり、バーナ出口においても、その不均一性が残存していることにある。そこで、この不均一性を改善するためにガス導入口を複数設けることもできるが、バーナの構造が複雑となり、かつバーナが大型化してしまう。
そこで図7,8に示すように、バーナの各ガスのポート根元(ガス導入部)内にガス導入管11をバーナの長辺方向に挿通し、このガス導入管11にライン状に設けられた複数のガス導入孔12からガスをバーナ内に導入し、ガス導入孔12から出たガスを大きな空間を有するバッファ部13の後壁面に衝突させることで量的に均一化されたガスは、その後バーナ先端14側に導かれる。
【0013】
これによりガス導入管を増やすことなく、効果的に長辺方向のガス量分布を均一化させることができる。なお、図7は、各ガスのポート根元の概略を示す斜視図であり、図8は、その側断面図である。図9は、各ガスのポート根元にガス導入管11が挿通された、本発明によるバーナの全体像を示す概略断面図であり、符号14はバーナ先端である。
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0014】
実施例1;
図4に示された、可燃性ガス噴出ポート2内に、バーナの長辺方向(実線矢印方向)に複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設されたスリットバーナを使用してガラス微粒子の堆積を行った。
中心のガラス原料ガス噴出ポート1に、ガラス原料ガスとしてSiCl415L/min及び助燃性ガスとしてO230L/minを供給し、その外側の可燃性ガス噴出ポート2には、可燃性ガスとしてH2400L/min及び小口径助燃性ガス噴出ノズル8に助燃性ガスとしてO230L/minを供給し、さらにその外側の助燃性ガス噴出ポート3に助燃性ガスとしてO290L/min、さらに、ガス噴出ポート1と2及び2と3の間に設けられたシールガス噴出ポート4にシールガスとして10L/minをそれぞれ供給した。その結果、バーナの長辺方向において、可燃性ガスの線速均一性が向上し、図6に示すような安定した火炎が得られた。
この条件で、直径100mmφのガラス棒の周囲にガラス微粒子を堆積させたところ、その付着効率は66%であった。後述する比較例の付着効率55%と比べても特段に向上した。
【0015】
比較例1;
図1に示すようなスリットバーナを使用してガラス微粒子の堆積を行った。
中心のガラス原料ガス噴出ポート1に、ガラス原料ガスとしてSiCl415L/min及び助燃性ガスとしてO230L/min、その外側の可燃性ガス噴出ポート2に可燃性ガスとしてH2400L/min、さらにその外側の助燃性ガス噴出ポート3に助燃性ガスとしてO290L/min、ガス噴出ポート1と2及び2と3の間に設けられたシールガス噴出ポート4にシールガスとして10L/minをそれぞれ供給した。
その結果、図3に示すように、バーナの長辺方向においてガスの線速不均一にともなう渦や偏りが発生し、火炎が大きく乱れた。
この条件で、直径100mmφのガラス棒の周囲にガラス微粒子を堆積させたところ、その付着効率は55%であった。これらの結果を表1にまとめて示した。
【0016】
【表1】
【0017】
実施例2;
図5に示された、可燃性ガス噴出ポート2内に、バーナの長辺方向に複数の小口径助燃性ガス噴出ノズル8が互いに平行に配設された角型の多重管バーナを使用した以外は、実施例1と同様にしてガラス微粒子の堆積を行った。
その結果、図2に示した従来の多重管バーナと比較して、火炎は極めて安定し、堆積速度も特段に向上した。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、ガラス微粒子の堆積効率が向上し、光ファイバ母材の生産性向上に大きく寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来の、スリットバーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図2】従来の、角型多重管バーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図3】従来のスリットバーナの火炎流を模式的に示す概略図である。
【図4】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置されたスリットバーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図5】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置された角型多重管バーナの噴出ポートを示す概略図である。
【図6】本発明の、可燃性ガス噴出ポート内にライン状に小口径助燃性ガス噴出ノズルが設置されたスリットバーナの火炎流を模式的に示す概略図である。
【図7】本発明になるバーナのガス導入部の概略を示す斜視図である。
【図8】図7の側断面図である。
【図9】本発明によるバーナの全体像の概略を示す断面図である。
【図10】本発明になるバーナのガス導入部の天井を示す上面図である。
【図11】従来のバーナのガス導入部の概略を示す斜視図である。
【0020】
1.ガラス原料ガス噴出ポート、
2.可燃性ガス噴出ポート、
3.助燃性ガス噴出ポート、
4.シールガス噴出ポート、
5.バーナ、
6.出発部材、
7.火炎流、
8.小口径助燃性ガス噴出ノズル、
9.助燃性ガス流、
10.可燃性ガス流、
11.ガス導入管、
12.ガス導入孔、
13.ガスバッファ部、
14.バーナ先端。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズルが互いに平行に配設されていることを特徴とする光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項2】
可燃性ガスの線速をV1、小口径助燃性ガス噴出ノズルから噴出される助燃性ガスの線速をV2とするとき、V1<V2である請求項1に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項3】
バーナにガスが供給される各ガスのポート根元に、ガスバッファ部となる拡張部を設け、該拡張部内に、複数のガス噴出孔を有するガス導入管をバーナの長辺方向に挿通し、該ガス噴出孔からガス噴出ポート内にガスを供給する請求項1又は2に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項4】
ガス導入管に、バーナ後壁に向かってガス噴出孔が設けられ、該ガス噴出孔から噴出されたガスが、バーナ後壁に衝突後、バーナ先端側に導かれる請求項3に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項5】
前記バーナは、ガス噴出ポートがスリット状に配設されたスリットバーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【請求項6】
前記バーナは、ガス噴出ポートの断面形状が長方形を有する角型多重管バーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【請求項7】
前記バーナは、ガス噴出ポートの断面形状が楕円形を有する楕円型多重管バーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【請求項1】
複数のガス噴出ポートを有し、これらのガス噴出ポートから少なくともガラス原料ガス、可燃性ガス及び助燃性ガスを噴出させ、ガラス原料ガスを火炎中で加水分解させてガラス微粒子を生成させるバーナにおいて、可燃性ガス噴出ポート内に、複数の小口径助燃性ガス噴出ノズルが互いに平行に配設されていることを特徴とする光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項2】
可燃性ガスの線速をV1、小口径助燃性ガス噴出ノズルから噴出される助燃性ガスの線速をV2とするとき、V1<V2である請求項1に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項3】
バーナにガスが供給される各ガスのポート根元に、ガスバッファ部となる拡張部を設け、該拡張部内に、複数のガス噴出孔を有するガス導入管をバーナの長辺方向に挿通し、該ガス噴出孔からガス噴出ポート内にガスを供給する請求項1又は2に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項4】
ガス導入管に、バーナ後壁に向かってガス噴出孔が設けられ、該ガス噴出孔から噴出されたガスが、バーナ後壁に衝突後、バーナ先端側に導かれる請求項3に記載の光ファイバ用母材の堆積用バーナ。
【請求項5】
前記バーナは、ガス噴出ポートがスリット状に配設されたスリットバーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【請求項6】
前記バーナは、ガス噴出ポートの断面形状が長方形を有する角型多重管バーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【請求項7】
前記バーナは、ガス噴出ポートの断面形状が楕円形を有する楕円型多重管バーナである請求項1乃至4のいずれかに記載の堆積用バーナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−137769(P2009−137769A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−312380(P2007−312380)
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月3日(2007.12.3)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】
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