説明

光ファイバ素線、光ファイバテープ心線および光ファイバケーブル

【課題】伝送損失の増加を低減しかつ強度低下を低減する光ファイバ素線、光ファイバテープ心線および光ファイバケーブルを提供する。
【解決手段】光ファイバの外周表面に一次被覆層が被覆されている光ファイバ素線において、前記一次被覆層は紫外線硬化型樹脂を含み、前記紫外線硬化型樹脂は、反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含み、非反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含むことを特徴とする光ファイバ素線を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットロッドなどの収容体に収容して光ファイバケーブルを構成するのに好適な光ファイバ素線、およびこれを用いた光ファイバテープ心線と光ファイバケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ素線は、光ファイバ本体を樹脂等で被覆した構造をとり、製造直後から高い破断強度を有する。一般的に、光ファイバ素線は、コアおよびクラッドからなるガラスファイバ又はプラスチックファイバの上に軟質一次被覆層と硬質二次被覆層からなる外径250μmのものが用いられる。
【0003】
光ファイバ素線は、種々の使用条件下で長期間使用した場合に、初期の高い破断強度を維持する特性が要求される。特に、実際の光ファイバが敷設される環境において、光の伝送特性やファイバの初期破断強度を長期にわたり維持するための耐久性が要求される。特に、温水中雰囲気下での耐久性、高温高湿雰囲気下における光ファイバ耐久性が強く求められる。
【0004】
光ファイバケーブルは、収容心線数が1000心を超えるものが敷設運用されているが、さらに回線を使用する加入者が増えるにつれ、増設が必要となる。光ファイバケーブルを敷設する管路も限界に達することが予想され、光ファイバケーブルの細径高密度化が必要となる。
【0005】
スロット型の光ファイバケーブルは、スロットロッドの外周面に形成された複数の螺旋状のスロット溝(収容体)内に、光ファイバテープ心線(以下、「テープ心線」と略記する。)が複数枚重ねられた状態で収容される。スロットロッドは、ポリエチレンなどのプラスチックからなる長尺体で、その中心には金属撚線や繊維強化プラスチック(FRP)ロッド等からなるテンションメンバが設けられる。スロットロッドの周上にはポリエステルテープ等のテープを巻回したテープ巻回層が設けられ、その上にポリエチレン等からなるシース層が被覆される。
【0006】
テープ心線は、光ファイバ素線を複数本平行に並べ、紫外線硬化性樹脂等からなる一括被覆層を使用して被覆した構成をとる。光ファイバケーブルを構成する際に、スロットロッドに収容できるテープ心線の数を多くするために、テープ心線の一括被覆層の厚さは薄くする。光ファイバケーブルを細径化すると、スロットは浅く、そして狭くしなければならない。
【0007】
細径化した光ファイバケーブルを曲げると、テープ心線は、スロット内を自由に動くことが難しく、局所的に固定される。そのため、光ファイバケーブルの長手方向に圧縮の力を受けた部分は座屈して、テープ心線および光ファイバ素線は複雑に曲がる。さらに、低温状況で光ファイバケーブルが収縮すると、スロット壁面からの側圧が増加し、テープ心線の端部に位置する光ファイバ素線が長手方向に圧縮される。そのため、ガラス製の光ファイバの場合、ファイバが座屈してマイクロベンドを引き起こし、伝送損失が増加する。さらに、ガラスファイバが突き出し被覆が除去され、ファイバ強度が低下する問題がある。特に、テープ心線を構成する光ファイバ素線が8本以上の幅広の場合に、このような問題が生じ易い傾向がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−122209号公報
【特許文献2】特開2006−215445号公報
【特許文献3】特開2006−249264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、細径高密度化された光ファイバケーブルを曲げた場合でも、伝送損失が増加するのを防止するために、テープ心線を構成する光ファイバ素線のガラスファイバと被覆の間に0.3N/mmの引抜力を加えたときの応力の緩和開始時間を1.5分以内に短くする事を開示する。特許文献2は、光ファイバ強度の低下を抑制するために、光ファイバ素線の第一次被覆層の紫外線硬化樹脂に、低分子量(非反応性)のシランカップリング剤を0.1質量部以上、3.0質量部以下含むものを開示する。特許文献3は、ファイバ強度が高い液状硬化性樹脂組成物を提供し、ラジカル重合性の官能基を有さないアルコキシシラン化合物0.1〜10質量%、およびヒンダードアミン化合物0.01〜1質量%を含有するものを開示する。
【0010】
しかしながら、いずれの特許文献も、長期的な使用の信頼性の確保の下、伝送損失の増加および強度低下の両方を低減する光ファイバに関する教示が無い。後述するように、光ファイバ素線に非反応性のシランカップリング剤を比較的多く配合しすぎると、ケーブル化後に光ファイバケーブルを曲げたことによる伝送損失の増加が大きくなってしまう問題がある。
【0011】
本発明は、長期的な使用の信頼性を確保し、伝送損失の増加および強度低下の両方を低減する光ファイバ素線、テープ心線および光ファイバケーブルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
光ファイバの外周表面に一次被覆層が被覆されている光ファイバ素線において、前記一次被覆層は樹脂を含み、前記樹脂は、反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含み、非反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含むことを特徴とする光ファイバ素線を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光ファイバ素線は、長期的な使用の信頼性を確保するとともに、細径高密度化された光ファイバ素線、テープ心線、および光ファイバケーブルを曲げた場合でも、伝送損失の増加および強度低下の両方を低減することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の一実施形態に係る多心(400心)光ファイバケーブルを示す概略断面図である。
【図1B】本発明の一実施形態に係る多心(1000心)光ファイバケーブルを示す概略断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るテープ心線を示す概略断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線を示す概略断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る引き抜き試験用試料の概略図である。
【図5】光ファイバケーブルのヒートサイクル試験における伝送損失増加の例を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態において、反応性シランカップリング剤の添加量を固定し、非反応性シランカップリング剤の添加量を変化させた場合の伝送損失増加最大値およびZSA(ゼロストレスエージング)後のファイバ破断強度15%残存率の値をプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する図面で、同一機能を有するものは同一符号をつけ、その繰り返しの説明は省略する。
【0016】
図1Aおよび1Bは、本発明の一実施形態に係る多心光ファイバケーブル1の概略断面を示す。多心光ファイバケーブル1は、スロット内に配置された複数のテープ心線2、複数のテープ心線2を収容する複数のスロット溝(収容体)を有するスロットロッド3、スロットロッド3の中心のテンションメンバ4、シース層5、および押さえテープ巻回層6を含む。
【0017】
図2は、本発明の一実施形態に係るテープ心線2の概略断面を示す。テープ心線2は、複数本(この例では8本)の光ファイバ素線2-1およびそれを覆う一括被覆層2-2を含む。
【0018】
図3は、本発明の一実施形態に係る光ファイバ素線の概略断面を示す。この例では、直径125μmの光ファイバ本体2-1-1は、一次軟質被覆層2-1-2で覆われ、さらに二次硬質被覆層2-1-3で覆われる。
【0019】
ここで、本発明の一実施形態に係る光ファイバは、シングルモード伝送用であっても良いし、マルチモード伝送用であっても良い。光ファイバが有するコアやクラッドの材料に限定は無く、例えば、石英など従来から用いられている材料を用いることができる。本実施形態の光ファイバは、ガラス光ファイバやプラススチック光ファイバ等、通常光ファイバに用いられる材料であればいずれを用いても良い。
【0020】
本実施形態の一次軟質被覆層2-1-2は、ポリエーテルウレタンアクリレートをオリゴマーとして、これに官能基の種類を変えた単官能アクリレートモノマーおよびビニルモノマー、および光開始剤を添加して硬化フィルムのヤング率を0.5〜2.0MPaに調整し、さらに、反応性および非反応性のシランカップリング剤の量を変化させてガラスファイバとの密着性を調整した紫外線硬化型樹脂を含む。つまり、本実施形態において、一次軟質被覆層に含まれる紫外線硬化型樹脂は、反応性シランカップリング剤と非反応性シランカップリング剤との両方を含む。
【0021】
反応性シランカップリング剤は、一次軟質被覆層に含まれる紫外線硬化型樹脂の骨格に組み込まれるシランカップリング剤であって、例えば、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランであるが、これに限定されない。非反応性シランカップリング剤は、ラジカル重合性の官能基を有さないシランカップリング剤であって、例えば、ジエトキシジメチルシランである。ここで、反応性とはラジカル重合性のことであるが、これに限定されない。
【0022】
二次硬質被覆層2-1-3は、硬化フィルムのヤング率が550〜850MPaの紫外線硬化型樹脂を含む。本実施形態では、限定されないが、一次被覆の外径は185〜195μmで、二次被覆の外径は約245μmである。
【0023】
実際に作製した光ファイバの被覆層のヤング率は、製造条件に影響される。そのため、シート(樹脂をシート状にUV硬化させたフィルム)を作製して測定するのではなく、実際に製造した光ファイバから実測する。
【0024】
引抜応力の測定は、例えば、光ファイバ素線2-1を約200mmの長さに切断したものを用意する。図4(a)に示すように、端部から約20mmの位置で被覆に切り込みを入れて切り込み部9を形成し、切り込み部9のガラスファイバを露出させる。図4(a)に示すように、サンドペーパーを長方形に切った台紙7の端部に光ファイバ素線の端部20mmの一部分を、接着剤8を用いて接着し固定する。このとき切り込み部9に接着剤8が回り込まない程度に接着剤8と切り込み部9の間隔を空ける。接着剤8には、硬化した際に容易に変形しないもの、例えば、ゼリー状アロンアルファ(登録商標)(東亞合成株式会社製)を用いる。
【0025】
そして、図4(b)に示すように、被覆切り込み部9から10mmの位置で接着剤8および光ファイバ2-1を切断する。台紙7と光ファイバ2-1の台紙7に接着していない片端を引張試験装置でチャッキングする。被覆の切り込み部9と光ファイバ2-1のチャッキングの距離は100mmである。台紙7と光ファイバ2-1の接着部分を固定した状態で、引抜速度5mm/minで光ファイバ2-1を引っ張ることで、図4(b)の斜線で示す接着部分から切り込み部9までのガラスファイバを引っ張り、応力の最大値を追跡する。その結果を表1に示す。表1の引抜応力の値は、6回繰り返し測定した結果の平均の値である。
【0026】
ファイバ破断強度の測定は、例えば、光ファイバ素線2-1を約2mの長さに切断したものを用意する。その光ファイバ素線の両端をそれぞれ引張試験装置のマンドレル(φ100mm)に巻いて固定する。両マンドレル間の距離は500mmである。引張速度2.5%/min.で、光ファイバ2-1を引っ張り、破断強度を測定する。光ファイバ素線を85℃/85%RH、30日間ZSA後、同様に破断強度を測定する。ZSA後の15%残率の結果を表1に示す。表1のZSAの値は、ZSA後のファイバ破断強度15%残存率[%]である。
【0027】
上記実施形態の光ファイバ素線に厚さ約5μmの着色層を施したものを4本平行に並べ、一括被覆した厚さ320μm、幅1.1mmの4心テープ心線を作製した。この4心テープ心線を60℃温水浸漬させ、200日後、各心線の伝送損失を波長1.55μmで測定した。その結果を表1に示す。
【0028】
上記実施形態の光ファイバ素線に厚さ約5μmの着色層を施したものを8本平行に並べ、一括被覆した厚さ320μm、幅2.10mmの8心テープ心線を作製した。この8心テープ心線を用いて、図1Aに示すような外径が14.6mmで、溝の螺旋ピッチが600mm、深さが4.0mmからなる5つのスロット溝を備えるS型スロットを用いた400心ケーブルを作製した。各スロット溝のテープ心線の積層枚数は10枚である。
【0029】
この400心ケーブルの構造は、スロットの径が小さく、溝の深さが浅く、上下のスペースが80μm以下であるため、ケーブルを曲げたときにテープ心線が摩擦により長手方向に移動出来なくなった際に、曲げの内側でテープ心線が弛み、その可動領域(ウインドウ)を超えて壁面に当たるためにテープ心線が座屈し、光ファイバ素線を長手方向に圧縮してマイクロベンドを引き起こす。その結果、伝送損失の増加が生じ易い。
【0030】
この400心ケーブル1000m長を胴径1400mmのドラムに巻き取り、ヒートサイクル槽に入れて、−30℃〜70℃のヒートサイクル試験を3サイクル行い、該400心ケーブル内の各光ファイバの伝送損失を波長1.55μmで測定した。伝送損失の変化の一例を図5に示す。図5において、太線は温度変化を、細線は伝送損失の変化を示す。
【0031】
伝送損失の増加を示したのは、各溝の最深部のテープ心線の両端の光ファイバ素線のみである。図5の例のように、低温と高温側で伝送損失は増加する。伝送損失が最大となったのは、1サイクル目に温度が−30℃に到達した時点である。その後のサイクルにおいては、伝送損失の増加は比較的緩やかである。光ファイバの伝送損失増加の最大値を求めた結果を表1に示す。
【0032】
【表1】

*非反応性: 非反応性シランカップリング剤添加量[質量部]
反応性: 反応性シランカップリング剤添加量[質量部]
引抜応力: 引抜応力[N]
伝送損失: 伝送損失増加最大値[dB/km]を波長1.55μmで測定
ZSA: ZSA後のファイバ破断強度15%残存率[%]
60℃温水: 60℃温水200日後の伝送損失値[dB/km]波長1.55μmで測定
判定: ◎十分に実用的な使用に耐えられる、○実用的な使用に耐えられる、×実用的な使用に好ましくない、の3段階で評価
【0033】
本発明に係る当業者ならば理解されるように、光ファイバの使用の長期的な信頼性において、伝送損失増加最大値および60℃温水200日後の伝送損失値は光ファイバの伝送損失の増加を評価する一種の指標であり、引抜応力も、光ファイバ素線のガラスファイバと被覆の間の密着力を示すことから、伝送損失の一種の指標であるといえる。また、ZSA後のファイバ破断強度15%残存率の値は光ファイバの強度低下を評価する一種の指標である。
【0034】
本発明に係る当業者ならば理解されるように、光ファイバの伝送損失増加の点から、引抜応力[N]の値は5〜12程度が実用的な使用に関して好ましい。伝送損失増加最大値[dB/km](測定波長1.55μm)の値は0.1以下が実用的な使用に関して好ましい。ZSA後のファイバ破断強度15%残存率[%]の値は90以上が実用的な使用に関して好ましい。そして、60℃温水浸漬後の伝送損失値[dB/km](測定波長1.55μm)の値は0.1以下が実用的な使用に関して好ましい。
【0035】
比較例1は、非反応性シランカップリング剤の添加量が0であり、ZSAの値が80と比較的低いため実用的な使用に関して好ましくない。比較例2は、反応性シランカップリング剤の添加量が0であり、60℃温水の値が0.4と比較的大きいため実用的な使用に関して好ましくない。比較例3は、反応性シランカップリング剤の添加量が1であり、伝送損失増加最大値が0.14と比較的大きいため実用的な使用に関して好ましくない。そして、比較例4は、非反応性シランカップリング剤の添加量が1であり、伝送損失増加最大値が0.14と比較的大きいため実用的な使用に関して好ましくない。
【0036】
図6は、本実施形態に係る表1の各値を基に、反応性シランカップリング剤の添加量が0.3質量部の場合において、非反応性シランカップリング剤の添加量を種々変化させた場合における伝送損失増加最大値およびZSA後のファイバ破断強度15%残存率の値をプロットした図である。図6から、非反応性シランカップリング剤を添加しない場合、伝送損失増加最大値は0.03と低いが、ZSA後のファイバ破断強度15%残存率の値も80と低く、伝送損失の増加および強度低下の両方を低減することはできない。非反応性シランカップリング剤の添加量を増加させると、伝送損失増加最大値は増加し、ZSA後のファイバ破断強度15%残存率の値も増加する傾向がある。従って、非反応性シランカップリング剤の添加量を変えるだけでは、伝送損失の増加および強度低下の両方を低減することはできない。
【0037】
表1に示されるように、非反応性シランカップリング剤の添加量と反応性シランカップリング剤の添加量を最適にしないと、伝送損失増加最大値の増加を低減し、かつ強度低下を低減することはできない。言い換えると、本実施形態に係る光ファイバ本体を覆う1次被覆層に含まれる非反応性シランカップリング剤と反応性シランカップリング剤の量を最適化することで、光ファイバの伝送損失の増加および強度低下の両方を低減することができる。
【0038】
表1に示されるように、非反応性シランカップリング剤の添加量を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含み、引抜応力が5N以上かつ12N以下の光ファイバ素線(実施例1〜6)は、伝送損失増加最大値が0.1dB/km以下である。よって、非反応性シランカップリング剤の添加量を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下を含む実施形態が、実用的な使用に関して好ましい。
【0039】
非反応性シランカップリング剤の添加量を0.5質量部以下含む実施例1〜4に係る光ファイバ素線は、伝送損失増加最大値が0.07dB/km以下である。よって、さらに好適には、非反応性シランカップリング剤の添加量は0.05質量部以上かつ0.5質量部以下であることがよい。
【0040】
本実施形態に係る光ファイバ素線(実施例1〜6)は、ZSA後のファイバ破断強度15%残率が90%以上と十分に大きく、長期的な光ファイバの使用における信頼性の点で、十分に実用的な使用に耐えられる。
【0041】
非反応性シランカップリング剤を0.05〜0.75質量部含む場合であっても、反応性シランカップリング剤を0.05質量部より少なく含み、引抜応力が5N未満の光ファイバ素線(比較例2)では、60℃温水200日後の伝送損失値が0.4と著しく大きい。表1から、60℃温水200日後の伝送損失の増加を抑え得るのは、反応性シランカップリング剤の添加量が0.05質量部以上の場合である。
【0042】
そして、非反応性シランカップリング剤を0.05〜0.75質量部含む場合であっても、反応性シランカップリング剤の添加量が0.75質量部より大きく、引抜応力が12Nより大きい光ファイバ素線(比較例3)では、伝送損失増加最大値が0.14と著しく大きい。よって、反応性シランカップリング剤の添加量を0.75質量部以下にすることによって、伝送損失の増加が抑えられる。よって、反応性シランカップリング剤の添加量を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下を含む実施形態が、実用的な使用に関して好ましい。
【0043】
本発明は、上記実施形態の400心の光ファイバケーブルに限定されるものではなく、図1Bに示す1000心の光ファイバケーブル、並びに、さらに細径高密度化された1000心を超える多心光ファイバケーブルにも適用することができる。
【符号の説明】
【0044】
1 光ファイバケーブル
2 テープ心線
3 スロットロッド
4 テンションメンバ
5 シース層
6 押さえテープ巻回層
2−1 光ファイバ素線
2−2 一括被覆層
2−1−1 光ファイバ本体
2−1−2 一次軟質被覆層
2−1−3 二次硬質被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの外周表面に一次被覆層が被覆されている光ファイバ素線において、
前記一次被覆層は樹脂を含み、
前記樹脂は、反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含み、非反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.75質量部以下含むことを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項2】
請求項1記載の光ファイバ素線において、前記光ファイバと前記一次被覆層の間に50%/minの引抜力を加えたときの応力が5N以上かつ12N以下であることを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項3】
請求項1記載の光ファイバ素線において、前記樹脂は、非反応性シランカップリング剤を0.05質量部以上かつ0.5質量部以下含むことを特徴とする光ファイバ素線。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の光ファイバ素線を複数備え、
前記複数の光ファイバ素線のそれぞれは、さらに二次被覆層および着色層で被覆され、
前記複数の光ファイバ素線は、平行に並べられて一括被覆層で被覆されていることを特徴とする光ファイバテープ心線。
【請求項5】
請求項4記載の光ファイバテープ心線と、
前記光ファイバテープ心線を複数枚重ねて収容する収容体を含むことを特徴とする光ファイバケーブル。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−25613(P2012−25613A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165041(P2010−165041)
【出願日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【特許番号】特許第4865891号(P4865891)
【特許公報発行日】平成24年2月1日(2012.2.1)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】