説明

光ファイバ連結機構

【課題】光ファイバを固定したフェルール同士を容易かつ正確に連結する。
【解決手段】スリーブ13を用いて第1、第2のフェルール12、12同士を連結するため、カバー15の後方にリアホルダ17を結合する。第1、第2のフェルール12は共に、カバー部材15の後方に押さえばね16を介してリアホルダ17が固定されている。リアホルダ17を押してフェルール12をスリーブ13に嵌合する場合に、フェルール12は押さえばね16により弾性的に動きの自由度を有しているために、フェルール12をスリーブ13の中心に導くことができ、調芯が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば石英コアを有する光ファイバ同士を連結するための光ファイバ連結機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、従来の光ファイバの素線を固定したフェルール同士の調芯、つまり芯合わせをして突き合わせるための部材として、図16に示すように、円筒体に1条のスリット1を形成した金属製の割スリーブ2を介して連結することが開示されている。
【0003】
この割スリーブ2の内径は連結すべきフェルールの外径よりも小さく、割スリーブ2にフェルールを挿入する際に、割スリーブ2のスリット1が押し広げられることにより、フェルール同士を緊締する構造とされている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−164755号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、スリーブにより光ファイバを接合する場合においても、正確に位置合わせを行うには、光ファイバ側に或る程度の機構上の自由度を備えていなければ、接続性能に支障なくかつ接続作業を効率良く実施することができない。
【0006】
本発明の目的は、上述の課題を解消し、光ファイバを固定したフェルール同士を容易にかつ確実に連結し得る光ファイバ連結機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するための本発明に係る光ファイバ連結機構の技術的特徴は、光ファイバの素線をそれぞれ固定したフェルール同士を両側から挿入することにより前記光ファイバの素線同士を光接続する光ファイバ連結機構において、前記フェルールの後部にばね部材を介してリアホルダを取り付け、前記リアホルダをハウジングに装着することにより、前記フェルールを前記ハウジングに弾性的に挿着することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る光ファイバ連結機構によれば、スリーブに対し、両側のフェルールを確実にかつ容易に連結して調芯し、光ファイバの素線同士を正確に突き合わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明を図1〜図15に図示の実施例に基づいて詳細に説明する。
図1はフェルール同士をスリーブにより連結した状態の上方から見た縦断面図、図2は側方から見た縦断面図である。光ファイバ11をそれぞれ固定した両側の第1、第2のフェルール12、12がスリーブ13により連結されている。両側のフェルール12、12においては、光ファイバ11はフェルール12、12にそれぞれゴムスリーブ14、カバー15を用いて固定されている。更にカバー15には、押さえばね16、リアホルダ17が連結されている。
【0010】
図3はフェルール12同士を連結するスリーブ13の斜視図である。合成樹脂製のスリーブ13はフェルール12の外径部に嵌合する両側の環状部13a、13b間が例えば3本の条片状の橋絡部13cにより連結され、これらの橋絡部13cは弾発性を有し、両側から中央に向けてすぼまるように内側に膨出されている。また、例えば一方の環状部13bの周囲の3個所は平坦部13dが形成され、後述する第1のハウジング内に固定する際に回転が生じないようにされている。
【0011】
図4は合成樹脂製のフェルール12に光ファイバ11を挿入した状態の断面図である。フェルール12は先細の筒形とされ、中心に光ファイバ11が挿入される孔部が貫通して設けられ、先端側から細径孔部12a、小径孔部12b、中径孔部12c、大径孔部12dの径が異なる4つの孔部が形成されている。また、カバー15を錠止するための錠止爪12eが外側の上下部に設けられている。
【0012】
フェルール12の中径孔部12c内には、光ファイバ11に周設して合成ゴムから成る筒状のゴムスリーブ14がカバー15の中径部15bにより押し込まれている。
【0013】
カバー15は光ファイバ11を挿通する貫通孔15aを有し、フェルール12の中径孔部12c、大径孔部12dにそれぞれ入り込む中径部15b、大径部15cが設けられている。更に、フェルール12の後端部を覆うフード部15dにはフェルール12の錠止爪12eと係合する錠止枠15eが設けられ、後端の筒部には係止爪15fが外方に向けて突出されている。
【0014】
フェルール12はカバー15に比較して、精細な成型が必要なため材料を選定することが好ましい。フェルール12に適用できる材料としては、寸法安定性に優れたポニフェニレンサルファイド(PPS)などが好適である。スリーブ13、カバー15には、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂が熱変形温度が高く、高剛性、電気的特性、機械的特性に優れている点で好適である。
【0015】
ゴムスリーブ14は弾性変形し、精度良く加工、成型できる材料であれば特に問題はないが、加工性、成型性、耐熱性に優れている点において、シリコンゴムが好ましい。
【0016】
このフェルール12を組み立てるには、図4に示すように光ファイバ11の先端の耐熱被覆層11aを剥離して、石英コアから成る素線11bを露出し、ゴムスリーブ14を耐熱被覆層11a上に装着してから、素線11bをフェルール12の孔部内に挿入する。つまり、例えば直径0.23mmの素線11bをフェルール12の細径孔部12aに挿通し、更に先端をフェルール12の先端から十分な長さに突出し、ゴムスリーブ14を耐熱被覆層11a上を摺動させながら中径孔部12c内に押し込む。このとき、素線11bの直径は上述のように細径であり、挿通には困難が伴うが、フェルール12の小径孔部12bの先端にテーパを設けることにより、ガイド孔の役割を果たすことができる。
【0017】
ここで、フェルール12の後方からカバー15を押し込むと、図5に示すようにゴムスリーブ14はカバー15の中径部15bにより押し込まれて、中径孔部12c内において内径が縮小すると共に外径が拡大する。これにより、ゴムスリーブ14は光ファイバ11をフェルール12内で長手方向に移動しないように強固に固定することになる。
【0018】
このとき、カバー15の錠止枠15eはフェルール12の錠止爪12eを乗り越えて錠止することにより、フェルール12とカバー15の位置関係が確定し、分離不能になる。なお、フェルール12の先端部から突出した素線11bは、カッタなどによりフェルール12の先端面と面一に切断する。
【0019】
スリーブ13を用いてフェルール12同士を連結するためには、カバー15の後方に更にリアホルダ17を結合する。図6に示すように、第1、第2のフェルール12は共に、カバー部材15の後方に押さえばね16を介してリアホルダ17が固定されている。なお、スリーブ13に結合した一方のフェルール12側は上方から見た縦断面図を示し、他方のフェルール12側は側方から見た縦断面図を示している。
【0020】
図7の正面図、図8の平面図、図9の図7のA−A線に沿った断面図に示すように、押さえばね16は1枚の金属板を打抜き、曲成して形成され、カバー15の後端の筒部を覆う有底の略円筒状とされている。押さえばね16は有底の円筒状の基部16aの前方に拡開した3つのばね片16bを有し、ばね片16bの先端は当接部16cとされ、中間に外側に膨らんだばね部16dが形成されている。基部16aの周囲にカバー15の係止爪15fを受け入れる係止孔16eを有し、更に外側に向いて3つの爪部16fが形成されている。更に、基部16aの底部には光ファイバを通す孔部16gが形成されている。
【0021】
リアホルダ17は光ファイバ11を通線する貫通孔17aを有すると共に、カバー15の筒部及び押さえばね16の基部16aとを外側から覆い当接する形状とされ、押さえばね16の爪部16fを受け入れる孔部17bを有している。また、リアホルダ17の後方には、リアホルダ17を操作するための把持部17cが設けられている。
【0022】
カバー15の後部に押さえばね16の基部16aを嵌合し、更にリアホルダ17を取り付けると、押さえばね16のばね片16bがカバー15の本体部の後面に接し、このばね片16bの弾発力により、リアホルダ17はカバー15に対し若干の自由度を持って弾性的に固定される。
【0023】
このように組み立てた第1のフェルール12をスリーブ13の一端に連結してから、第2のフェルール12をこのスリーブ13に挿入すると、図1、図2に示すような連結した状態が得られる。この状態においては、フェルール12、12の先端部はそれぞれスリーブ13の環状部13a、13bに嵌合し、更に、フェルール12、12同士はスリーブ13の弾発性を有する橋絡部13cにより弾性的に保持され、素線11bの先端部同士がスリーブ13の中心に導かれ、調芯が可能となる。これにより、素線11bの先端部同士が突き合わされ、光ファイバ11同士の光伝達が可能となる。
【0024】
図10は紙面と直交する方向に配列した2個の第1のフェルール12を固定した第1のハウジング21の側方から見た縦断面図、図11は正面図である。第1のハウジング21の中心部に2個の筒部21aが設けられ、この筒部21aの先端側にそれぞれスリーブ13が収納されている。スリーブ13の円環部13bに設けた平坦部13dは筒部21a内に設けた図示しない平坦部と接合して、筒部21a内において回転しないようにされている。筒部21aの前端は開口部21bとされ、相手側の第2のフェルール12がスリーブ13内に挿入可能とされている。
【0025】
第1のフェルール12及び後方のカバー15、押さえばね16、リアホルダ17は、後方から筒部21a内に挿入され、第1のフェルール12はスリーブ13に挿入されている。この場合に、第1のフェルール12の後方には押さえばね16が用いられているために、リアホルダ17の後部を持って押し込むと、第1のフェルール12は姿勢を変えながら挿入される。
【0026】
筒部21aの後端部には孔部21cが設けられ、この孔部21c内にリアホルダ17の爪部17dが嵌入することにより、第1のフェルール12等は筒部21aに固定される。第1のハウジング21の前部にはフード部21eが設けられ、フード部21eの先端には、相手側の第2のハウジングとの嵌合を錠止するための錠止爪21fが設けられている。
【0027】
フード部21e内には、第2のフェルール12が連結されていない状態において、2つの筒部21aの開口部21bを閉止し、異物の侵入を防止するための可動の開閉板22が設けられている。開閉板22はフード部21e内の摺動溝21gに沿って前後方向に摺動自在とされ、軸22aを中心に開閉可能とされ、第2のフェルール12をスリーブ13に挿入する場合に、上昇して開口部21bを開放するようになっている。また、開閉板22の前面には凹部22bが設けられている。
【0028】
図12は第2のフェルール12を固定した第2のハウジング23の縦断面図であり、第2のハウジング23のフード23a内に第1のハウジング21と同様に紙面と直交する2個の筒部23bが設けられている。筒部23b内に第2のフェルール12が保持され、筒部23bの先端の開口23cから、第2のフェルール12の先細部が突出されている。また、第2のフェルール12の後方には、カバー15、押さえばね16、リアホルダ17が連結されていることは、第1のハウジング21と同様である。リアホルダ17の爪部17dは、第2のハウジング23の後部のフランジ部23dに係止されている。更に、フード部23aの内側には凸部23e、外側には錠止爪23f、押圧部23gが設けられている。
【0029】
この第2のフェルール12を筒部23b内に挿入する場合においても、押さえばね16の存在により容易に挿入することができる。
【0030】
第1、第2のハウジング21、23を結合する際には、図13に示すように第2のハウジング23のフード部23aを、第1のハウジング21のフード部21eに嵌合しながら押し込むと、フード部23aの先端は開閉板22の基部に突き当り、開閉板22は軸22aを中心に上昇を始める。
【0031】
更に、第2のハウジング23を押し込むと、図14に示すように開閉板22は上昇し水平に位置し、第2のハウジング23の凸部23eが開閉板22の凹部22bに嵌合し、開閉板22は第2のハウジング23の押し込みに伴って、そのまま後方に平行移動をする。
【0032】
続いて、第2のハウジング23を押し込むと、開閉板22が上昇しているので、図15に示すように第2のフェルール12の先端部が第1のハウジング21に固定したスリーブ13内に挿入される。これにより、両側の第1、第2のフェルール12、12同士が突き合わされ、素線11b同士が調芯され、光接続が可能となる。
【0033】
この第1、第2のフェルール12、12同士のスリーブ13への連結過程においても、フェルール12、12が押さえばね16により、筒部21a、23bに弾性的に固定されているので、フェルール12、12の動きには自由度があり、連結は容易である。そして、第1のハウジング21の錠止爪21fと第2ハウジング23の錠止爪23f同士が弾性的に嵌合して錠止がなされる。
【0034】
第1、第2のハウジング21、23を解離するには、第2のハウジング23の押圧部23gを押して、錠止爪23fを錠止爪21fから外して、第1のハウジング21から第2のハウジング23を引き抜けばよい。この引き抜きに伴って、開閉板22は第2のハウジング23の凸部23eにより前方に引き出され、第2のハウジング23が抜き取られると、開閉板22は図10に示すような位置に復元し、開口部21bを閉止する。
【0035】
これらの第1、第2のハウジング21、23において、筒部21a、23bからフェルール12を取り外すには、リアホルダ17の把持部17cをすぼめて、爪部17dの筒部21a、23bに対する係止を外して引き出せばよい。
【0036】
なお、ハウジング21、23内に固定するフェルール12の数は、実施例のように2個とは限らず、1個又は3個以上としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】フェルール同士をスリーブにより連結した状態の上方から見た縦断面図である。
【図2】側方から見た縦断面図である。
【図3】スリーブの斜視図である。
【図4】光ファイバ素線をフェルール内に挿入した状態の縦断面図である。
【図5】フェルールにカバーを装着した状態の縦断面図である。
【図6】スリーブによりフェルールを連結する場合の縦断面図である。
【図7】押さえばねの正面図である。
【図8】押さえばねの平面図である。
【図9】押さえばねの図7のA−A線に沿った断面図である。
【図10】第1のフェルールを固定した第1のハウジングの側方から見た縦断面図である。
【図11】第1のハウジングの正面図である。
【図12】第2のフェルールを固定した第2のハウジングの縦断面図である。
【図13】第1、第2のハウジングを結合する過程の縦断面図である。
【図14】第1、第2のハウジングを結合する過程の縦断面図である。
【図15】第1、第2のハウジングを結合した状態の縦断面図である。
【図16】従来例の割スリーブの斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
11 光ファイバ
12 フェルール
13 スリーブ
14 ゴムスリーブ
15 カバー
16 押さえばね
17 リアホルダ
21、23 ハウジング
22 開閉板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバの素線をそれぞれ固定したフェルール同士を両側から挿入することにより前記光ファイバの素線同士を光接続する光ファイバ連結機構において、前記フェルールの後部にばね部材を介してリアホルダを取り付け、前記リアホルダをハウジングに装着することにより、前記フェルールを前記ハウジングに弾性的に挿着することを特徴とする光ファイバ連結機構。
【請求項2】
前記ばね部材は略円筒状の基部と、その前方に複数個のばね片を設けたことを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ連結機構。
【請求項3】
前記フェルールの後部にカバー、前記ばね部材、リアホルダを順次に配列し、前記ばね部材は前記カバーと前記リアホルダとを弾性的な自由度を持たせて連結することを特徴とする請求項1に記載の光ファイバ連結機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−152196(P2008−152196A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−342677(P2006−342677)
【出願日】平成18年12月20日(2006.12.20)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】