説明

光ヘッドの製造方法

【課題】光の利用効率の高い光ヘッドの製造方法を提供する。
【解決手段】記録媒体への情報記録に用いる近接場光を発生する近接場光発生部と、近接場光発生部に光を導く光導波路と、を有して記録媒体の上を浮上して相対移動するスライダと、光導波路に光源からの光を導く線状導光体を有する光学素子と、を備えた光ヘッドの製造方法であって、光学素子に線状導光体を介して入射された光源からの光により、光学素子の該光が出射する部分に指標を形成する指標形成工程と、スライダと光学素子との相対位置を調整して、光学素子に形成された指標の位置と近接場光発生部の位置とを一致させる位置調整工程と、相対位置が調整されたスライダと光学素子とを接着する接着工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ヘッドの製造方法に関し、特に光アシスト式磁気記録ヘッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気記録方式では、記録密度が高くなると磁気ビットが外部温度等の影響を顕著に受けるようになる。このため高い保磁力を有する記録媒体が必要になるが、そのような記録媒体を使用すると記録時に必要な磁界も大きくなる。記録ヘッドによって発生する磁界は飽和磁束密度によって上限が決まるが、その値は材料限界に近づいており飛躍的な増大は望めない。そこで、記録時に局所的に加熱して磁気軟化を生じさせ、保磁力が小さくなった状態で記録し、その後に加熱を止めて自然冷却することにより、記録した磁気ビットの安定性を保証する方式が提案されている。この方式は熱アシスト磁気記録方式と呼ばれている。
【0003】
熱アシスト磁気記録方式では、記録媒体の加熱を瞬間的に行うことが望ましい。また、加熱する機構と記録媒体とが接触することは許されない。このため、加熱は光の吸収を利用して行われるのが一般的であり、加熱に光を用いる方式は光アシスト式と呼ばれている。
【0004】
光アシスト式で超高密度記録を行う場合、必要なスポット径は20nm程度になるが、通常の光学系では回折限界があるため、光をそこまで集光することはできない。
【0005】
そのため、入射光波長以下のサイズの光学的開口から発生する近視野光を利用する近視野光ヘッドが利用されているが、従来の近視野光ヘッドは光の利用効率が低いといった問題があった。そこでこのような問題に対応する為、種々の方法が検討がされている。
【0006】
例えば、ギャップを介して対向する一対の構造体を近接場光プローブ及び書き込み用磁気ヘッドとして兼用する。ギャップの間隔と幅を入射光の波長λよりも小さくすると反対面のギャップ位置から高強度の近接場光を発生する。この近接場光により加熱された媒体に、一対の構造体から記録磁界を付与して磁気的に書き込みを行う光アシスト磁気記録ヘッドが知られている(特許文献1参照)。
【0007】
また、近視野光を発生させる微小開口の周辺に、周期的凹凸構造を持つ金属膜を形成することで、プラズモンを介したエネルギー伝播機構を実現し、光の利用効率を向上させる近視野光ヘッドが知られている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−298302号公報
【特許文献2】特開2003−6913号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示されている光アシスト磁気記録ヘッドにおいては、近接場光を生じるギャップに光を照射することに関して、スライダの上部には溝が刻まれ、その溝に光ファイバが埋設され、光ファイバから出射された光ビームは、光プリズムにより反射され、透明誘電体ブロックを透過してギャップ付近において光スポットを形成するように照射されるようにしている。しかしながら、光ビームがギャップの位置を照射するように高精度に調整する方法に関しての記載は無く、スライダの上部に刻まれた溝の位置ずれや、溝に光ファイバを埋設する際の位置ずれ、また、光プリズムの反射面角度ずれ等により、光ビームがギャップの位置を精度よく照射することは困難なものと考えられる。つまり、光ファイバから出射された光の利用効率の低下を招く恐れがある。
【0009】
また、特許文献2に開示されている近視野光ヘッドにおいては、光ファイバから出射された光は、ミラー面で反射され、マイクロレンズで集光され近視野光発生器に照射されるようにしている。しかしながら、光ファイバから出射された光が近視野光発生器の位置を照射するように高精度に調整する方法に関しての記載は無く、光ファイバを埋設する際の位置ずれや、ミラー面の反射面角度ずれ、また、マイクロレンズの位置ずれ等により、光が近視野光発生器の位置を精度よく照射することは困難なものと考えられる。つまり、光ファイバから出射された光の利用効率の低下を招く恐れがある。
【0010】
光アシスト式では、記録媒体を光の吸収を利用して加熱している為、光の利用効率が低下すると、記録媒体を磁気軟化を生じる温度まで局所的に加熱することができず、記録ができなくなる。すなわち、光を効率よく入射させないと、記録可能な光量を得ることができない。
【0011】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたもので、光の利用効率の高い光ヘッドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は、下記の1乃至9のいずれか1項に記載の発明によって達成される。
【0013】
1.記録媒体への情報記録に用いる近接場光を発生する近接場光発生部と、
前記近接場光発生部に光を導く光導波路と、を有して前記記録媒体の上を浮上して相対移動するスライダと、
前記光導波路に光源からの光を導く線状導光体を有する光学素子と、
を備えた光ヘッドの製造方法であって、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に指標を形成する指標形成工程と、
前記スライダと前記光学素子との相対位置を調整して、前記光学素子に形成された前記指標の位置と前記近接場光発生部の位置とを一致させる位置調整工程と、
前記相対位置が調整された前記スライダと前記光学素子とを接着する接着工程と、
を有することを特徴とする光ヘッドの製造方法。
【0014】
2.前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面にフォトクロミック物質または色素を有する所定の層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記所定の層のみを感光させ透過率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【0015】
3.前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に光硬化性樹脂層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂層のみを硬化させ屈折率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【0016】
4.前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に感光性樹脂層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記感光性樹脂層のみを露光した後、現像することにより、前記感光性樹脂層の露光された部分のみ除去または残留させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【0017】
5.前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に開口形成用薄膜を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記開口形成用薄膜のみを開口させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【0018】
6.前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に光硬化性樹脂接着層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを感応させることにより前記指標を形成し、
前記接着工程は、
前記相対位置が調整された前記スライダと前記光学素子とを、前記光硬化性樹脂接着層の未硬化部分を用いて接着することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【0019】
7.前記光硬化性樹脂接着層は、フォトクロミック物質または色素を有し、
前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを感光させ透過率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記6に記載の光ヘッドの製造方法。
【0020】
8.前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを硬化させ屈折率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする前記6に記載の光ヘッドの製造方法。
【0021】
9.前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の面の該光が出射する部分に凹凸形状の前記指標を形成することを特徴とする前記1に記載の光ヘッドの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、光学素子に線状導光体を介して入射された光源からの光により、光学素子の該光が出射する部分に指標を形成し、スライダと光学素子との相対位置を調整することで、光学素子に形成された指標の位置と近接場光発生部の位置とを一致させた後、スライダと光学素子とを接着するようにした。
【0023】
これにより、光源からの光を近接場光発生部に高い精度で入射させることができ、光の利用効率の優れた光ヘッドを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下図面に基づいて、本発明に係る光ヘッドの製造方法の実施の形態を説明する。尚、本発明を図示の実施の形態に基づいて説明するが、本発明は該実施の形態に限られない。また、各実施の形態の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複の説明を適宜省略する。
〔実施形態1〕
図1に、本発明の実施形態に係る光アシスト式磁気記録ヘッド(以下、光ヘッドと称する。)を搭載した光記録装置(例えば、ハードディスク装置)の概略構成を示す。
【0025】
光記録装置1Aは、記録用のディスク(磁気記録媒体)2、支軸5を支点として矢印Aの方向(トラッキング方向)に回転可能に設けられたサスペンション4、サスペンション4に取り付けられたトラッキング用アクチュエータ6、サスペンション4の先端に取り付けられた光ヘッド3、及びディスク2を矢印Bの方向に回転させる図示しないモータ等を筐体1の中に備えており、光ヘッド3がディスク2の上で浮上しながら相対的に移動しうるように構成されている。
【0026】
図2は、実施形態1による光ヘッド3の構成を示す断面図である。光ヘッド3は、ディスク2に対する情報記録に光を利用する光ヘッドであって、光ヘッド3に光を導光する光ファイバー(線状導光体)11、ディスク2の被記録部分を近赤外レーザー光でスポット加熱するための光アシスト部(光導波路)16、光ファイバー11から出射する近赤外レーザー光を光アシスト部16に導く集光素子である屈折率分布型レンズ12、13及び光路偏向手段である偏向面14aを有する光学素子14、及び先の光導波路16、ディスク2の被記録部分に対して磁気情報の書き込みを行う磁気記録部17、ディスク2に記録されている磁気情報の読み取りを行う磁気再生部18を有するスライダ15等を備えている。また、光学素子14の近赤外レーザー光が出射する面f3には、光学素子14と後述のプラズモンプローブ(近接場光発生部)16fとの位置合わせを行う為の指標を形成する指標形成層31が成膜されている。また、面f3には、光学素子14とスライダ15とを接着する接着層41が形成されている。
【0027】
光学素子14は、光ファイバー11及び集光素子である屈折率分布型レンズ12、13を固定接着するためのV字状の溝(以降、V溝と称する。)が設けられている。図3は、光学素子14を斜視図で示し、14bはV溝、14aは偏向面を示している。
【0028】
なお、図2ではディスク2の記録領域の進入側から退出側(図の→方向)にかけて、磁気再生部18、光導波路16、磁気記録部17の順に配置されているが、配置順はこれに限らない。光導波路16の退出側直後に磁気記録部17が位置すればよいので、例えば、光導波路16、磁気記録部17、磁気再生部18の順に配置してもよい。
【0029】
光ファイバー11により導光される光は、例えば、半導体レーザーより出射される光であり、その光の波長は1.2μm以上の近赤外波長(近赤外帯域としては、0.8μmから2μm程度であり、具体的なレーザー光の波長としては、1310nm、1550nm等が挙げられる。)が好ましい。光ファイバー11の端面から出射した近赤外レーザー光は、集光素子である屈折率分布型レンズ12、13、偏向面14aを有する光学素子14によって、スライダ15に設けられた光導波路16の上面に集光され、この光アシスト部を成す光導波路16を導波して光ヘッド3からディスク2に向けて出射する。
【0030】
スライダ15は浮上しながら磁気記録媒体であるディスク2に対して相対的に移動するが、媒体に付着したごみや、媒体に欠陥がある場合には接触する可能性がある。その場合に発生する摩耗を低減するため、スライダの材質には耐摩耗性の高い硬質の材料を用いることが望ましい。例えば、Al23を含むセラミック材料、例えばAlTiCやジルコニア、TiNなどを用いれば良い。また、摩耗防止処理として、スライダ15のディスク2側の面に耐摩耗性を増すために表面処理を行っても良い。例えば、DLC(Diamond Like Carbon)被膜を用いると、近赤外光の透過率も高く、ダイヤモンドに次ぐHv=3000以上の硬度が得られる。
【0031】
また、スライダ15のディスク2と対峙する面には、浮上特性向上のための空気ベアリング面(ABS(Air Bearing Surface)面とも称する。)を有している。スライダ15の浮上はディスク2に近接した状態で安定させる必要があり、スライダ15に浮上力を抑える圧力を適宜加える必要がある。このため、光学素子14の上に固定されるサスペンション4は、光ヘッド3のトラッキングを行う機能の他、スライダ15の浮上力を抑える圧力を適宜加える機能を有している。
【0032】
光ヘッド3から出射した近赤外レーザー光が微小なスポットとしてディスク2に照射されると、ディスク2の照射された部分の温度が一時的に上昇してディスク2の保持力が低下する。その保持力の低下した状態の照射された部分に対して、磁気記録部17により磁気情報が書き込まれる。この光ヘッド3に関して以下に説明する。
【0033】
まず、集光素子を構成する屈折率分布型レンズ12,13に関して説明する。屈折率分布型レンズ(Graded Index Lens、以下、「GRINレンズ」と略す。)は、屈折率が一様でない(中心に近いほど屈折率が大きい)媒質を用いたレンズで、屈折率が連続的に変化することでレンズ作用をする円柱形状のレンズである。具体的なGRINレンズは、例えば、SiGRIN(登録商標)(シリカグリン、東洋ガラス(株))がある。GRINレンズの半径方向の屈折率分布n(r)は、次式(1)で表される。
n(r)=N0+NR2×r2 (1)
但し、
n(r):中心からの距離rの位置の屈折率
N0:中心部の屈折率
NR2:GRINレンズの集光能力を表す定数
GRINレンズは、半径方向に屈折率分布を持っていることから光軸を合わせることが容易であるという特徴を持っている。このため、光ファイバー11とGRINレンズ12とGRINレンズ13との光軸を容易に合わせることができる。また、光ファイバー11が石英からなる場合、GRINレンズ12とGRINレンズ13を成す材料も光ファイバー11と同様であることから、これらを溶融処理により接合して一体化することができる。この接合により、取り扱いが容易となると同時に、光ファイバー11、GRINレンズ12、GRINレンズ13それぞれが接する面での光損失が抑えられ光ファイバーにより導光された光を効率良くGRINレンズ13より出射することができる。
【0034】
GRINレンズ12及びGRINレンズ13で構成する集光素子は、光ファイバー11により導光された光をGRINレンズ13の光出射面より離れた位置に収束して光スポットを形成する構成としている。GRINレンズ12及びGRINレンズ13それぞれのNA(Numerical Aperture)は異なっており、GRINレンズ12及びGRINレンズ13を選択し、また、組み合わせ、それぞれの長さを適宜決めることで、光学素子が占める長さ、光学素子の光出射面から光スポット位置までの距離を決めることができる。
【0035】
GRINレンズ12及びGRINレンズ13の直径と光ファイバー11の直径とが±10%程度にほぼ同じことが好ましく、同じであることがより好ましい。上記の通り光ファイバー11とGRINレンズ12とGRINレンズ13は、溶融処理により接合することができるため、それぞれがほぼ同じ直径とすると直径の中心を合わせて接合する作業を容易とすることができる。
【0036】
光ファイバー11とGRINレンズ12とGRINレンズ13を接合して一体(以下、結合集光素子と称する。)すると、光ファイバー11により光源から導かれて光をGRINレンズ13の出射端面から離れて位置に光スポットを効率良く形成することができる。この結合集光素子を図3に示す光学素子14に設けてあるV溝14bの底に沿って、またGRINレンズ13の端面をV溝の閉じた端部に密着した状態で接着固定されている。V溝14bは、固定される結合集光素子の径、結合集光素子からの光の出射位置、偏向面14aまでの距離及び集光素子からの光の入射角度等を考慮されて設けられている。従って、上記の様にV溝14bに沿って結合集光素子を固定できるようにすることで容易に精度良く組み立てることができ、また光ファイバー11により光源から導かれた光を集光素子GRINレンズ12とGRINレンズ13により収束光とし、更に偏向面14aにより光束を偏向し、光学素子14の下面f3に光スポットを効率良く形成することができる。
【0037】
次に、光導波路16について説明する。光導波路16に後述の光スポットサイズ変換機能を持たせることで、光導波路16の入射面に形成された光スポットの径を、光導波路16の入射面での径に対して出射面で小さくすることができる。よって、より小さい光スポット径を記録媒体面に形成することができ、高記録密度化に対応することができる。
【0038】
光スポットサイズ変換機能を持つ光導波路の例として図4を示す。図4(a)、図4(b)は、光導波路の部分を光ヘッドが相対的に移動する方向から見た様子を示し、図4(c)は移動方向に対して垂直方向で且つ磁気記録面に対して平行方向から見た様子を模式的に示している。図4に示す光導波路は、コア16a(例えばSi)、サブコア16b(例えばSiON)及びクラッド16c(例えばSiO2)からなっている。その光導波路の光射出位置又はその近傍には、図4(c)に示す様に、近接場光発生用のプラズモンプローブ16fが配置されている。そのプラズモンプローブ16fの具体例を図5に示す。
【0039】
図5(a)は、三角形の平板状金属薄膜(材料例:アルミニウム、金、銀等)からなるプラズモンプローブ16f、図5(b)は、ボウタイ型の平板状金属薄膜(材料例:アルミニウム、金、銀等)からなるプラズモンプローブ16fを示し、何れも曲率半径20nm以下の頂点Pを有するアンテナからなっている。また、図5(c)は、開口を有する平板状金属薄膜(材料例:アルミニウム、金、銀等)からなるプラズモンプローブ16fを示し、曲率半径20nm以下の頂点Pを有するアンテナからなっている。これらのプラズモンプローブ16fに光が作用すると、その頂点P近辺に近接場光が発生して、非常に小さいスポットサイズの光を用いた記録又は再生を行うことが可能となる。つまり、光導波路の光射出位置又はその近傍にプラズモンプローブ16fを設けることにより局所プラズモンを発生させれば、光導波路で形成された光スポットのサイズを小さくすることができ、高密度記録に有利となる。なおコア16aの中央にプラズモンプローブ16fの頂点Pが位置することが好ましい。
【0040】
光アシスト式で超高密度記録を行う場合に必要なスポット径が20nm程度であり、光の利用効率を考えると、プラズモンプローブ16fにおけるモードフィールド(MFD)は0.3μm程度が望ましい。このMFDの大きさでは光の入射が困難であるため、スポット径を5μm程度から数100nmまで小さくするスポットサイズ変換を行う必要がある。
【0041】
図4において、コア16aの幅は、図4(c)が示す断面では光入力側から光出力側にかけて一定になっているが、図4(a)に示す断面ではサブコア16b内において光入力側から光出力側にかけて徐々に広くなるように変化している。この光導波路径の滑らかな変化によりモードフィールド径が変換される。つまり、光導波路のコア16aの幅は、図4(a)に示すように、光入力側で0.1μm以下、光出力側で0.3μmとなっているが、図4(b)に示すように、光入力側ではサブコア16bによりMFDが5μm程度の光導波路が構成され、その後徐々にコア16aに光結合してモードフィールド径が小さくすることができる。このように、光導波路の光出力側のモードフィールド径をdとし、光導波路の光入力側のモードフィールド径をDとしたとき、光導波路径を滑らかに変化させることによりモードフィールド径を変換して、D>dを満たすようにすることが好ましい。
【0042】
このような構成の光ヘッド3において、光ファイバー11と光学素子14は、製造方法が異なる為、それぞれ個別に製作して貼り合わせる。その際、部品個々の製作誤差、貼り合せ誤差等、後述する種々の誤差要因により光学素子14の下面f3からの光の出射位置は、設計基準位置からずれた位置となる。
【0043】
そこで、本発明は、光学素子14に光ファイバー11を介して入射された光源からの光により、光学素子14の下面f3から該光が出射する部分に指標を形成し、該指標の位置とプラズモンプローブ16fの位置とを一致させるようにスライダ15と光学素子14との相対位置を調整した後、スライダ15と光学素子14とを接着するようにした。これにより、光源からの光をプラズモンプローブ16fに高い精度で入射させることができ、光の利用効率を高めるようにするものである。
【0044】
ここで、光学素子14の下面f3からの光の出射位置の誤差要因について説明する。
【0045】
まず、部品個々の製作誤差としては、例えば、以下のような誤差が挙げられる。
【0046】
1.光ファイバー11の外形公差(例えば、シングルモードファイバで±2μm程度)、コアの位置誤差(例えば、シングルモードファイバで±1μm程度)、端面カット角度(例えば、シングルモードファイバで±0.5度程度)
2.GRINレンズ12、13の焦点距離誤差(長さ寸法誤差、例えば±10μm程度)、外径に対する中心位置ずれ(軸ずれ、例えば、シングルモードファイバと同等(製作精度や製作装置が同等として)±1μm程度)、光軸に対する端面カット角度(例えば、シングルモードファイバと同等(製作精度や製作装置が同等として)±0.5度程度)
3.光学素子14の光ファイバー11を埋設する為のV溝14bの位置ずれ。樹脂成形の場合、狙いに対して±10μm程度の位置ずれや、±1°程度の角度ずれが発生する。
【0047】
4.光学素子14の反射面角度ずれ、樹脂成形の場合、±1°程度の角度ずれが発生する。
【0048】
5.スライダ15のプラズモンプローブ16fと外形との誤差、1枚のウエハーに多数個製作後、ダイサーで切断して個々に分ける場合、切断精度は例えば±10μmとなる。
【0049】
次に、貼り合せ誤差としては、例えば、以下のような誤差が挙げられる。
【0050】
1.光ファイバー11とGRINレンズ12、13の貼り合せ誤差、通常のファイバ融着機を用いて、光出力が良好となる位置で融着した場合、製作誤差は±0.3μm程度となる。
【0051】
2.光ファイバー11のV溝14bへの埋設誤差、接着剤層が1〜5μm程度と想定すると、±2μm程度の位置ずれ。また、±1°程度の角度ずれが発生する。
【0052】
これらの誤差を累積すると、光スポットとプラズモンプローブ16fの位置ずれは、少なくとも10μmから大きいと50μm程度にもなってしまう。シングルモードファイバのコア径(もしくは、モードフィールド径)は3〜5μm程度。つまり、光学素子14とスライダ15とを設計通りの位置で接着(外形基準、もしくは個々に設けられた位置決めマーク基準)した場合、スライダ15の光導波路16に光が位置ずれして入射、あるいは、大きくずれた場合は光が入射できない場合がある。
【0053】
そこで、本発明は、このような誤差の影響を抑える為、光学素子14に光ファイバー11を介して入射された光源からの光により、光学素子14の下面f3から該光が出射する部分に指標を形成する。そして、該指標の位置とプラズモンプローブ16fの位置とを一致させるようにスライダ15と光学素子14との相対位置を調整することで、光スポットをプラズモンプローブ16fに効率よく入射させるようにするものである。以下に、その詳細を図6を用いて説明する。図6(a)は、光学素子14の側断面図、図6(b)は、光学素子14の裏面図である。
【0054】
最初に、図6(a)に示す様に、光学素子14の下面f3にフォトクロミック物質、または色素を有する後述の指標を形成する為の指標形成層31を成膜する。次に、光源からの光を光ファイバー11、GRINレンズ12、13、偏向面14aを介して光学素子14の下面f3に導光し、該導光された光Lにより、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する指標形成層31のみを感光させて透過率を変化させる。この指標形成層31の透過率が変化した部分を図6(b)に示す様に指標31aとする(指標形成工程)。色素を有する指標形成層31としては、光を吸収する色素と顔料等を含有した高分子支持体を組み合わせて薄膜(層)を形成する。レーザー光によって有機色素が熱分解すると、その部分の透過率が変化する。
【0055】
次に、光学顕微鏡を用い、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に形成された指標31aの座標を読取り、読取った座標にスライダ15を移動させてプラズモンプローブの相対位置を合わせる(位置調整工程)。
【0056】
最後に、相対位置が調整された光学素子14とスライダ15とを、前述の図2に示した様に接着する(接着工程)。光透過性を持った接着剤としては、紫外線硬化樹脂、または熱硬化樹脂を用いる。具体的には、例えば、ウレタン系、エポキシ系、水性高分子−イソシアネート系、アクリル系等の接着剤、ポリエーテルメタクリレート型、エステル系メタクリレート型、酸化型ポリエーテルメタクリレート等の嫌気性接着剤等が挙げられる。また、公知の方法を用いて接着剤中に帯電防止剤や各種のフィラーを混ぜても良い。前述の接着層41の形成方法としては特に限定されず通常の方法、例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、コンマコーター、バーコーター、スプレー塗布、インクジェット法等の方法を用いる。
【0057】
このように、本発明に係る光ヘッド3においては、光学素子14に光ファイバー11を介して入射された光源からの光Lにより、光学素子14の下面f3から該光Lが出射する部分に指標31aを形成する。そして、該指標31aの位置とプラズモンプローブ16fの位置とを一致させるようにスライダ15と光学素子14との相対位置を調整することで、光スポットをプラズモンプローブ16fに精度よく入射させることがでる。その結果、光の利用効率の優れた光ヘッドを実現することができる。
【0058】
尚、指標形成層31として、光硬化性樹脂層を成膜し、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する光硬化性樹脂層のみを硬化させて屈折率を変化させる。この光硬化性樹脂層の透過率が変化した部分を指標31aとしてもよい。
【0059】
また、指標形成層31として、図7、図8に示す様に、感光性樹脂層(ポジレジスト、ネガレジスト)を成膜し、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する感光性樹脂層のみを露光した後、現像することにより、感光性樹脂層の露光された部分のみ除去または残留させることにより指標31b、31cとしてもよい。
【0060】
また、指標形成層31として、図7に示す様に、開口形成用薄膜を成膜し、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する開口形成用薄膜のみを開口させる。この開口形成用薄膜の開口した部分を指標31bとしてもよい。開口形成用薄膜の材料としては、所定波長の光の吸収率が反射率よりも大きい材料、例えば、金属、金属化合物、合金、誘電体多層膜等を用いる。開口形成用薄膜の成膜には、真空蒸着法、スパッタリング法等の真空成膜法を用いる。開口形成用薄膜の開口には、高パワーのレーザー光(例えばNd:YAGレーザーの基本波や倍波、エキシマレーザー等)を用いる。開口形成用薄膜は融点がTmである材料で形成されており、集光された光スポットの中心部付近では、開口形成用薄膜が融点Tm以上に加熱される。このため、融点Tm以上に加熱されて溶融し開口が形成される。
〔実施形態2〕
図9は、実施形態2による光ヘッド3の構成を示す断面図である。実施形態2による光ヘッド3の要部構成は、図9に示す様に、実施形態1の場合と略同様であるので、その説明は省略し、構成の異なる指標形成層51について説明する。
【0061】
実施形態2の場合は、指標形成層51として、図10(a)に示す様に、フォトクロミック物質または色素を有する光硬化性樹脂接着層を成膜し、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する光硬化性樹脂接着層のみを感光させて透過率を変化させる。この指標形成層51の透過率が変化した部分を図10(b)に示す様に指標51aとする(指標形成工程)。次に、実施形態1の場合と同様の位置調整工程、接着工程を実行する。接着工程においては、光硬化性樹脂接着層の指標形成工程で未硬化のまま残留している部分を用いて接着する。
【0062】
このように、指標形成層51をフォトクロミック物質または色素を有する光硬化性樹脂接着材料で構成することで、接着工程における接着剤充填作業を省くことができ、工程を簡略することができる。
【0063】
尚、指標形成層51として、光硬化性樹脂層を成膜し、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に位置する光硬化性樹脂接着層のみを硬化させて屈折率を変化させる。この光硬化性樹脂層の透過率が変化した部分を指標51aとしてもよい。
〔実施形態3〕
図11は、実施形態3による光ヘッド3の構成を示す断面図である。実施形態3による光ヘッド3の要部構成は、図11に示す様に、実施形態1の場合と略同様であるので、その説明は省略し、形態の異なる指標14mについて説明する。
【0064】
実施形態3の場合は、指標形成層を用いずに図12に示す様に、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に直接凹凸形状を形成し、この凹凸形状を指標14mとする。凹凸形状の形成には、高パワーのレーザー光(例えばNd:YAGレーザーの基本波や倍波、エキシマレーザー等)を用いる。光学素子14は融点がTmである材料で形成されており、集光された光スポットの中心部付近では、光学素子14が融点Tm以上に加熱される。このため、融点Tm以上に加熱されて溶融し凹凸形状が形成される。
【0065】
このように、指標形成層を用いずに、光学素子14の下面f3の光Lが出射する部分に直接凹凸形状を形成することで、指標形成層の成膜作業を省くことができ、工程を簡略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施形態に係る光ヘッドを搭載した光記録装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態1による光ヘッドの構成を示す断面図である。
【図3】光ヘッドにおける光学素子構成を示す斜視図である。
【図4】光導波路の構成を示す断面図である。
【図5】プラズマンプローブの構成を示す図である。
【図6】実施形態1による指標を示す図である。
【図7】実施形態1の別例による指標を示す図である。
【図8】実施形態1の別例による指標を示す図である。
【図9】実施形態2による光ヘッドの構成を示す断面図である。
【図10】実施形態2による指標を示す図である。
【図11】実施形態3による光ヘッドの構成を示す断面図である。
【図12】実施形態3による指標を示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1A 光記録装置
1 筐体
2 ディスク
3 光ヘッド
4 サスペンション
5 支軸
6 アクチュエータ
11 光ファイバー(線状導光体)
12、13 屈折率分布型レンズ(GRINレンズ)
14 光学素子
14a 偏向面
14b V溝
14m 指標
15 スライダ
16 光アシスト部(光導波路)
16a コア
16b サブコア
16c クラッド
16f プラズモンプローブ
17 磁気記録部
18 磁気再生部
31、51 指標形成層
31a、31b、31c、51a 指標
41 接着層
f0 仮想光源
f1 面1
f2 面2
f3 面3
f4 面4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体への情報記録に用いる近接場光を発生する近接場光発生部と、
前記近接場光発生部に光を導く光導波路と、を有して前記記録媒体の上を浮上して相対移動するスライダと、
前記光導波路に光源からの光を導く線状導光体を有する光学素子と、
を備えた光ヘッドの製造方法であって、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に指標を形成する指標形成工程と、
前記スライダと前記光学素子との相対位置を調整して、前記光学素子に形成された前記指標の位置と前記近接場光発生部の位置とを一致させる位置調整工程と、
前記相対位置が調整された前記スライダと前記光学素子とを接着する接着工程と、
を有することを特徴とする光ヘッドの製造方法。
【請求項2】
前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面にフォトクロミック物質または色素を有する所定の層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記所定の層のみを感光させ透過率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項3】
前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に光硬化性樹脂層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂層のみを硬化させ屈折率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項4】
前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に感光性樹脂層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記感光性樹脂層のみを露光した後、現像することにより、前記感光性樹脂層の露光された部分のみ除去または残留させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項5】
前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に開口形成用薄膜を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記開口形成用薄膜のみを開口させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項6】
前記指標形成工程は、
前記光学素子の光が出射する面に光硬化性樹脂接着層を成膜し、前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを感応させることにより前記指標を形成し、
前記接着工程は、
前記相対位置が調整された前記スライダと前記光学素子とを、前記光硬化性樹脂接着層の未硬化部分を用いて接着することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項7】
前記光硬化性樹脂接着層は、フォトクロミック物質または色素を有し、
前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを感光させ透過率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項6に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項8】
前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の該光が出射する部分に位置する前記光硬化性樹脂接着層のみを硬化させ屈折率を変化させることにより前記指標を形成することを特徴とする請求項6に記載の光ヘッドの製造方法。
【請求項9】
前記指標形成工程は、
前記光学素子に前記線状導光体を介して入射された前記光源からの光により、前記光学素子の面の該光が出射する部分に凹凸形状の前記指標を形成することを特徴とする請求項1に記載の光ヘッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−293580(P2008−293580A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137606(P2007−137606)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】