説明

光モジュールおよび光結合方法

【課題】 光導波路と受光素子の光結合における光損失の低減、および、受光素子の応答の高速化を図る。
【解決手段】 光モジュール1は、光導波路3と、受光素子4とを有する。ここで、互いに直交する二方向であり、かつ、光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向をα方向とβ方向とする。光導波路3の出射端面6は、α方向とβ方向の一方向(例えばα方向)よりも他方向(β方向)の長さが長い形状である。受光素子4の受光面8は、出射端面6から出射した光信号のα方向とβ方向のそれぞれの拡がり角θα,θβ、および、出射端面6と受光面8との間隔L6-8が関与する受光面8での光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路と当該光導波路から出射した光を受ける受光素子とを有する光モジュールおよび光結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図10は、光モジュールの一例を模式的に表す平面図である(特許文献1参照)。この光モジュール60は、双方向光通信モジュールである。当該光モジュール60は、光導波路素子61と、回路部62とを有している。
【0003】
光導波路素子61は、透明基板(クラッド)70と、当該透明基板70に形成された送信用の光導波路(コア)71および受信用の光導波路(コア)72とを有する。送信用の光導波路71の両端面71a,71bのうち、一方の端面71aは、光信号が入射する入射端面として機能する。光導波路71の他方の端面71bは、光信号を出射する出射端面として機能する。この出射端面71bに対向して光ファイバ73の端面73aが配置される。出射端面71bから出射した光信号は、光ファイバ73の端面73aに入射し、当該光ファイバ73によって目的の送信相手に向けて伝送される。
【0004】
受信用の光導波路72の両端面72a,72bのうち、一方の端面72bと、光ファイバ73の端面73aとは、互いに対向して配置される(換言すれば、光ファイバ73の端面73aは、送信用の光導波路71の端面71bおよび受信用の光導波路72の端面72bの両方の端面に対向している)。受信用の光導波路72の端面72bは、光ファイバ73の端面73aから出射した光信号が入射する入射端面として機能する。光導波路72の他方の端面72aは、光信号を出射する出射端面として機能する。
【0005】
回路部62は、発光素子64と、駆動回路65と、受光素子66と、増幅回路67とを有している。それら発光素子64と駆動回路65と受光素子66と増幅回路67は、共通の回路基板68に形成される。
【0006】
発光素子64は、例えば半導体レーザ素子であり、駆動回路65から出力された送信信号(電気信号)を光信号に変換し当該光信号を発光部64aから出射する機能を有する。その発光部64aと、送信用の光導波路71の入射端面71aとは、対向配置し、発光部64aから出射した光信号は、入射端面71aから送信用の光導波路71に入射する。
【0007】
受光素子66は、光を受ける受光部66aを有する。その受光部66aは、受信用の光導波路72の出射端面72aと対向配置して当該出射端面72aから出射した光信号を受光する。受光素子66は、その受光した光信号を電気信号に変換し当該電気信号を出力する機能を有する。特許文献2には、受光素子の一つであるPN接合フォトダイオードの一例が示されている。
【0008】
増幅回路67は、受光素子66から出力された電気信号を増幅する回路である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−3855号公報
【特許文献2】特開2003−318435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、光通信のより一層の高速化が要求されている。この要求に応じて、受光素子における光−電気の変換速度(応答速度)の高速化の技術が検討されている。
【0011】
また、図10に示されるように、光導波路72の出射端面72aと、受光素子66の受光面66aとの間には、電気配線等に起因して隙間が生じてしまう。この隙間のために、光導波路72と受光素子66との光結合における光損失が発生してしまう。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされた。すなわち、本発明の目的は、光導波路と受光素子の光結合における光損失の低減、および、受光素子の応答の高速化を図ることができる光モジュールおよび光結合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光モジュールは、
光信号を伝送する光導波路と、
当該光導波路における光信号を出射する出射端面と間隙を介して配置され前記出射端面から出射した光信号を受ける受光面を有する受光素子と
を備え、
互いに直交する二方向であり、かつ、前記光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向をα方向とβ方向とした場合に、前記出射端面は、前記α方向と前記β方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状であり、
前記受光面は、前記出射端面から出射した光信号の前記α方向と前記β方向のそれぞれの拡がり角、および、前記出射端面と前記受光面との間隔が関与する前記受光面での光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを有している。
【0014】
本発明の光結合方法は、
互いに直交する二方向であり、かつ、光信号を伝送する光導波路の光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向をα方向とβ方向とした場合に、前記光導波路における光信号を出射する出射端面を、前記α方向と前記β方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状にし、
前記出射端面から出射した光信号を受ける受光素子は、前記出射端面から出射した光信号の前記α方向と前記β方向のそれぞれの拡がり角、および、前記出射端面との間隔が関与する光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを持つ受光面でもって光信号を受ける。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、光導波路と受光素子の光結合における光損失の低減、および、受光素子の応答の高速化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る第1実施形態の光モジュールを模式的に表す図である。
【図2】本発明に係る第2実施形態の光モジュールの説明に利用する図である。
【図3】図2に示される光導波路の出射端面から出射した光信号の近視野像の一例を表すモデル図である。
【図4】光導波路の出射端面から出射した光信号の拡がり角を説明する図である。
【図5】受光素子の受光面の一形態例を表す図である。
【図6】本発明に係る第2実施形態の効果の説明に利用する図である。
【図7】本発明に係る第3実施形態の光モジュールを模式的に表す図である。
【図8】本発明に係るその他の実施形態の説明に利用する図である。
【図9】本発明に係るさらにその他の実施形態を表す図である。
【図10】光モジュールの一形態例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
【0018】
(第1実施形態)
図1(a)は、本発明に係る第1実施形態の光モジュールを簡略化して表したモデル図である。第1実施形態の光モジュール1は、光導波路3と、受光素子4とを備えている。
【0019】
光導波路3は、例えば石英ガラス等により構成され光信号を伝送する光の通路である。この光導波路3は、光信号を出射する出射端面6を有する。ここで、図1(a)に示されるα方向(紙面に平行な方向)とβ方向(紙面に垂直な方向)を次のように定義する。つまり、α方向とβ方向は、互いに直交する二方向であり、かつ、光導波路3を伝送する光信号の伝送方向Aにもそれぞれ直交する二方向である。
【0020】
図1(b)は、光導波路3と受光素子4におけるβ方向から見た態様を模式的に表す図である。図1(a),(b)に示されるように、光導波路3の出射端面6は、α方向とβ方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状である。つまり、図1(a),(b)に示される例では、出射端面6の形状は、α方向の長さLよりもβ方向の長さLが長い形状となっている。
【0021】
受光素子4は、光導波路3の出射端面6と間隙を介し向き合って配置される。この受光素子4は、出射端面6から出射した光信号を受ける受光面8を有する。この受光面8は、出射端面6から出射した光信号のα方向の拡がり角θαとβ方向の拡がり角θβ、および、出射端面6と受光面8との間隔L6-8が関与する受光面8での前記光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを有している。これにより、受光面8は、α方向の長さLがβ方向の長さLよりも長い形状を有している。
【0022】
この第1実施形態の光モジュール1は、次のような効果を得ることができる。すなわち、光導波路3の出射端面6の形状は、α方向とβ方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状である。これにより、光導波路3の出射端面6から出射した光信号におけるα方向とβ方向のうちの一方向の拡がり角を他方向の拡がり角よりも小さく抑制できる。具体的には、図1(a),(b)に示す例では、出射端面6のβ方向の長さLは、出射端面6のα方向の長さLよりも長くなっている。その出射端面6の長さが長い方のβ方向の光信号の拡がり角θβは、短い方のα方向の光信号の拡がり角θαよりも小さく抑制される。このように光信号の拡がり角を抑制できることによって、光導波路3と受光素子4の光結合における光損失を低減できる。
【0023】
また、上記のように光信号の拡がりを抑制できる結果、出射端面6におけるα方向とβ方向の各長さが等しい場合に比べて、受光素子4の受光面8での遠視野像を小さくできる。これにより、受光面8の面積(受光面積)を小さくできる。その受光面積は、受光素子4の応答速度に関与しており、当該受光面積が小さくなるにつれて応答速度が速くなる。この第1実施形態では、上記のように、受光素子4の受光面積を小さくできるので、受光素子4の応答速度を速くできる。
【0024】
よって、この第1実施形態の光モジュール1は、光導波路と受光素子の光結合における光損失の低減、および、受光素子の応答の高速化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0025】
(第2実施形態)
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0026】
図2(a)は、第2実施形態の光モジュールを模式的に表す平面図である。この第2実施形態の光モジュール10は、受信モジュールである。当該光モジュール10は、PLC(Planar Lightwave Circuit(平面光回路))素子11と、受光素子12とを有している。
【0027】
PLC素子11は、基板(例えば石英系透明基板(クラッド))13と、当該基板13に形成されている光導波路(コア)14とを有する。光導波路14は、例えば1.55μm波長の光信号を伝送する伝送路である。図2(a)の例では、光導波路14は、幹導波路14Kと、複数の分岐導波路14a〜14dとを有する。複数の分岐導波路14a〜14dは、幹導波路14Kに共通に接続されている。ここでは、幹導波路14Kの端面14inは、光信号の入射端面である。また、各分岐導波路14a〜14dの各端面14outは、それぞれ、光信号の出射端面である。つまり、光導波路14は、光信号の分配機能を有する。この光導波路14において、入射端面14inから入射した光信号は、幹導波路14Kを通った後に各光導波路14a〜14dに分配され、各光導波路14a〜14dの出射端面14outからそれぞれ出射する。
【0028】
ここで、α方向とβ方向を、第1実施形態と同様に定義する。すなわち、α方向とβ方向は、互いに直交する二方向であり、かつ、光信号の伝送方向に直交する二方向である。図2(a)では、紙面に直交する方向をα方向とし、紙面に平行な方向をβ方向とする。
【0029】
図2(b)は、図2(a)に示すPLC素子11と受光素子12におけるβ方向から見た態様を模式的に表す図である。図2(c)は、出射端面14outを模式的に表している。この第2実施形態では、出射端面14outの形状は、α方向の長さL14αよりもβ方向の長さL14βが長い形状である。具体例を挙げると、出射端面14outの形状は、α方向の長さL14αが5μm、β方向の長さL14βが10μmというような、α方向とβ方向との長さの比が1対2である矩形状(長方形状)である。
【0030】
さらに、この第2実施形態では、光導波路14の入射端面14inは、出射端面14outと同じ形状および大きさを有する。さらに、光導波路14は、1カ所以上の湾曲部分15を有している。その湾曲部分において、光信号の伝送方向に直交する断面の形状は、入射端面14inや出射端面14outと同じ形状および大きさを有する。さらにまた、光導波路14における上記以外の部分も、分岐導波路14a〜14dと幹導波路14Kの接続部分を除いて、光信号の伝送方向に直交する断面の形状が、入射端面14inや出射端面14outと同じ形状および大きさを有する。
【0031】
この第2実施形態では、光導波路14の出射端面14outは、α方向よりもβ方向に長い長方形状である。このため、出射端面14outから出射した光信号の近視野像(NFP(near field pattern))は、図3に示されるように、β方向に長い楕円状パターン17となる。
【0032】
また、光導波路14の出射端面14outから空間に出射した光信号の拡がりは、次のようになる。すなわち、空間に出射した光信号の拡がりは光の干渉に基づくために、出射端面14outが、前記のように、α方向よりもβ方向に長い長方形状であると、β方向の拡がり角はα方向の拡がり角よりも小さくなる。具体例を挙げると、例えば、出射端面14outのα方向の長さL14αが5μm、β方向の長さL14βが10μmである場合に、図4(a)に示される光信号のα方向の拡がり角θαは約34度である。これに対して、図4(b)に示される光信号のβ方向の拡がり角θβは約17度である。
【0033】
受光素子12は、光信号を受ける受光面16を有し、当該受光面16で受光した光信号に応じた電気信号を出力する機能(つまり、光−電気の変換機能)を持つ。当該受光素子12は、例えばフォトダイオードであり、受光面16は、PN(Positive Negative)接合領域である。このような受光素子12は、受光面16が光導波路14の出射端面14outに対向するように配置される。この第2実施形態では、複数の受光素子12(12a〜12d)が、それぞれ、分岐導波路14a〜14dに対応して配設される。
【0034】
ところで、受光素子12の受光面16と、光導波路14の出射端面14outとの間には、電気配線等に起因した例えば30μm以上の隙間がある。この隙間により、受光素子12の受光面16において、光導波路14の出射端面14outから出射した光信号は、図3に示されるような近視野像(NFP)17をフーリエ変換した図5に示されるような遠視野像(FFP(far field pattern))18となる。この遠視野像18は、β方向よりもα方向に長い楕円状のパターン形状である。
【0035】
受光素子12の受光面16は、その遠視野像18に応じた形状および大きさを有する。例えば、受光面16は、遠視野像18と同様な形状を有し、かつ、光導波路14と受光素子12の位置合わせ工程におけるアライメント誤差を考慮した分、遠視野像18よりも大きな大きさを持つ。
【0036】
この第2実施形態の光モジュールでは、上記のように光導波路14の出射端面14outの形状は、α方向とβ方向の長さが同じではなく、β方向がα方向よりも長い長方形状となっている。これにより、次のような効果を得ることができる。すなわち、出射端面14outのα方向とβ方向の各長さが等しい場合には、出射端面14outから出射した光信号のα方向とβ方向の拡がり角は同様となる。これに対して、出射端面14outのβ方向がα方向よりも長い場合には、出射端面14outから出射した光信号のβ方向の拡がり角θβをα方向の拡がり角θαよりも抑えることができる。これにより、この第2実施形態の光モジュール10は、光導波路14と受光素子12の光結合における光損失を抑制できるという効果を奏することができる。
【0037】
また、上記のように、出射端面14outの形状を長方形状にすることにより、受光素子12の受光面16を小さくできる。すなわち、仮に出射端面14outの形状がα方向もβ方向も同じ長さである正方形状とすると、出射端面14outにおける近視野像(NFP)は、図6(a)の点線に示されるような円形状パターン20となる。また、その遠視野像(FFP)は、図6(b)の点線に示されるような円形状パターン21となる。
【0038】
これに対して、出射端面14outが長方形状である場合(その長方形状のα方向の長さは前記正方形状の一辺と同じだが、β方向の長さはそのα方向の長さよりも長い場合)には、出射端面14outにおける近視野像は、図6(a)の実線に示されるような楕円状パターン17となる。この楕円状パターンの近視野像17は、円形状パターンの近視野像20よりも大きい。
【0039】
しかし、長方形状の出射端面14outから出射した光信号のβ方向の拡がり角は前記の如く抑えられるから、楕円状の近視野像17に対応する遠視野像は、図6(b)の実線に示すような楕円形状のパターン18となる。つまり、光信号のβ方向の拡がり角が抑制される分、円形状の遠視野像21に比べて、楕円形状の遠視野像18は、小さくなる。このため、受光素子12の受光面16を小さくできる。
【0040】
その受光面16の大きさは、受光素子12における光−電気の変換速度に関連している。つまり、受光素子12における光−電気の変換速度に関わる時定数は、受光素子12の内部抵抗値Rと内部コンデンサ容量Cとの積に応じた値である。この時定数を小さくすることによって、受光素子12の応答性(つまり、光−電気の変換速度)を速くできる。受光面16と、受光素子12の内部コンデンサ容量とは、受光面16が小さくなるに従って受光素子12の内部コンデンサ容量が小さくなるというような関係がある。このため、上記のように受光面16を小さくできることによって、受光素子12における光−電気の変換速度を速くできる。すなわち、この第2実施形態の光モジュール10は、光信号の入射に対する電気信号の出力の応答性を向上できる。
【0041】
さらに、この第2実施形態では、光導波路14における湾曲部分15の断面形状が出射端面14outの形状と同様である。すなわち、その湾曲部分15の断面形状はα方向よりもβ方向の長さが長い長方形状である。このため、β方向の長さがα方向の長さと同じである場合に比べて、β方向の光の閉じ込めが強くなる。換言すれば、光導波路14からβ方向への光のしみ出しを小さく抑制できる。これにより、光の伝送損失の増加を防止しながら、光導波路14における湾曲部分15の曲がり具合を大きくできる。このことは、PLC素子11の小型化、換言すれば、光モジュール10の小型化を促進させることができる。
【0042】
(第3実施形態)
以下に、本発明に係る第3実施形態を説明する。
【0043】
図7は、第3実施形態の光モジュールを模式的に表す平面図である。この第3実施形態の光モジュール25は、受信モジュールであり、PLC素子26と、受光素子27とを有している。
【0044】
PLC素子26は、基板(例えば石英系透明基板(クラッド))30と、この基板30に形成された光導波路(コア)31とを有する。この第3実施形態では、光導波路31は、第2実施形態に述べた光導波路14と同様に、光の分配機能を有するが、その光の分配に、MMI(Multi Mode Interference(多モード干渉導波路))を用いている。
【0045】
すなわち、この第3実施形態では、光導波路30は、導波路32,34a,34bと、MMI33,35a,35bと、テーパ状導波路36a〜36dとを有している。導波路32の一端は光信号の入射端面31inである。この入射端面31inには、例えばマルチモードの光信号(1.55μm波長帯の光信号)が入射する。導波路32の他端は、MMI33の一端に接続している。このMMI33は、一入力二出力の機能を有する。当該MMI33の二出力端は、それぞれ、導波路34a,34bの一端に接続している。各導波路34a,34bの他端は、それぞれ、MMI35a,35bに接続している。MMI35a,35bも、MMI33と同様に、一入力二出力の機能を有する。各MMI35a,35bの二出力端は、それぞれ、テーパ状導波路36a〜36dの一端に接続している。各テーパ状導波路36a〜36dの他端は光信号の出射端面31outである。
【0046】
MMI33,35a,35bに光信号を導入する導波路32,34a,34bは、光信号の伝送方向に直交する断面(以下、単に断面と記す)が、正方形、あるいは、正方形に近い形状である必要がある。このため、導波路32,34a,34bの断面は、正方形、あるいは、正方形に近い形状である。具体例を挙げると、導波路32,34a,34bは、一辺の長さが約5μmの正方形状の断面を持つ導波路である。
【0047】
MMI33,35a,35bは、入射した光信号を波長の差異によって2つに分配し各光信号をそれぞれ出射する機能を有する。
【0048】
テーパ状導波路36a〜36dは、MMI35a,35bに接続している一端から他端である出射端面31outに向けて、図7に示されるように、β方向の長さが連続的に長くなっている。なお、α方向とβ方向は、第2実施形態で述べたα方向とβ方向と同様に定義されている。つまり、α方向とβ方向は、互いに直交する二方向であり、かつ、光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向である。図7では、紙面に直交する方向がα方向であり、紙面に平行な方向がβ方向である。
【0049】
テーパ状導波路36a〜36dにおいて、具体例を挙げると、MMI35a,35bに接続している一端の断面は、例えば、一辺が約5μmの正方形状(つまり、導波路32,34a,34bと同様の断面)である。これに対して、テーパ状導波路36a〜36dの各他端の断面、つまり、出射端面31outは、例えば、α方向の長さが約5μmであり、β方向の長さが約10μmである長方形状である。
【0050】
すなわち、この第3実施形態における出射端面31outは、第2実施形態における出射端面14outと同様の形状を有している。
【0051】
受光素子27は、第2実施形態で述べた受光素子12と同様の構成を有する。すなわち、受光素子27は、受光面28を有し、この受光面28で受光した光信号に応じた電気信号を出力する機能を有する。この受光素子27は、受光面28が光導波路31の出射端面31outに対向する位置に配置される。前述したように、この第3実施形態における出射端面31outは、第2実施形態における出射端面14outと同様の形状を有している。このため、出射端面31outから出射した光信号の受光面28での遠視野像(FFP)は、図5に示されるようなβ方向よりもα方向に長い楕円状パターン18である。このことから、この第3実施形態においても、第2実施形態における受光素子12の受光面16と同様に、受光素子27の受光面28は、β方向よりもα方向に長い楕円状であり、その大きさは、遠視野像18よりもアライメント誤差分、大きな大きさとなっている。
【0052】
この第3実施形態においても、第2実施形態と同様に、光導波路31の出射端面31outは、α方向よりもβ方向に長い長方形状であるから、第2実施形態で述べたと同様の効果を得ることができる。すなわち、第3実施形態の光モジュール25は、光導波路31と受光素子27との光結合における光損失の低減、および、受光素子27の応答の高速化を図ることができるという効果を得ることができる。
【0053】
(その他の実施形態)
なお、この発明は、第1〜第3の実施形態に限定されるものではなく、様々な実施の形態を採り得る。例えば、第3実施形態では、テーパ状導波路36a〜36dは、MMI35a,35bに接続する一端から出射端面31outに向かうに従ってβ方向の長さが長くなっていく態様である。これに対し、図8(a)、(b)に示されるようなテーパ状導波路38であってもよい。つまり、テーパ状導波路38は、出射端面38outに向かうに従ってβ方向の長さが短くなっていくテーパ状の態様を有し、かつ、その出射端面38outは、α方向の長さがβ方向よりも長い長方形状である。
【0054】
この出射端面38outから出射した光信号の近視野像(NFP)は、次のようになる。例えば、出射端面38outのα方向の長さL38αが約5μmであり、β方向の長さL38βが2μm以下であり、光信号の波長が1.55μmであるとする。この場合には、出射端面38outから出射した光信号の近視野像(NFP)は、図8(c)に示されるようなα方向よりもβ方向に長い楕円状のパターン40となる。
【0055】
このように、出射端面38outのβ方向の長さがα方向よりも短いのにも拘わらず、光信号の近視野像が、β方向に長い形状となる理由は、次の通りである。つまり、出射端面38outのβ方向の長さが2μm以下というように光信号の波長に近くなるために、β方向における光信号のしみ出しが多くなるからである。
【0056】
上記のような出射端面38outから出射した光信号を受ける受光素子の受光面は、第2や第3の実施形態と同様に、その光信号の近視野像40に対応する遠視野像(つまり、近視野像40のフーリエ変換後の像)に応じた形状および大きさを有する。
【0057】
上記のようなテーパ状導波路38を有する光導波路と、受光素子とを有する光モジュールにおいても、前記各実施形態と同様に、光導波路と受光素子の光結合における光損失の低減、および、受光素子の応答の高速化を図ることができる。
【0058】
さらに、第2や第3の実施形態では、光導波路14,31は、光信号の分配機能を有するものであるが、本発明は、その光分配機能を持たない他の光導波路を有する光モジュールにも適用可能である。例えば、本発明は、光信号の合波を行う機能を持つ光導波路を有する光モジュールにも適用できる。具体例を挙げると、本発明が適用された光モジュールは、例えば、第2実施形態に示した光導波路14の光信号の入り側と出側を逆にした図9(a)に示されるような光モジュール10’であってもよい。この光モジュール10’を構成するPLC素子11は、第2実施形態に示したPLC素子11と同様な構成を備えている。ただ、光導波路14の入射端面14inと出射端面14outが、第2実施形態とは互いに逆になっている。
【0059】
さらに、第3実施形態では、テーパ状導波路36a〜36dは、出射端面31outに向かって、α方向とβ方向とのうちの一方向の長さが変化していく態様である。これに対して、テーパ状導波路は、出射端面に向かって、α方向およびβ方向の長さが変化していく態様であってもよい。
【0060】
さらに、本発明の光モジュールは、第1〜第3の各実施形態に示した受信モジュールとしての機能に加えて、送信モジュールとしての機能をも備えていてもよい。つまり、本発明の光モジュールは、さらに、電気信号を光信号に変換して出射する発光素子と、当該発光素子から出射した光信号を伝送する送信用の光導波路とを有していてもよい。その送信用の光導波路における光信号の伝送方向に直交する断面の形状は、前記α方向と前記β方向のうちの一方向が他方向よりも長い形状であってもよい。
【符号の説明】
【0061】
1,10,25 光モジュール
3,14,31 光導波路
4,12,27 受光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を伝送する光導波路と、
当該光導波路における光信号を出射する出射端面と間隙を介して配置され前記出射端面から出射した光信号を受ける受光面を有する受光素子と
を備え、
互いに直交する二方向であり、かつ、前記光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向をα方向とβ方向とした場合に、前記出射端面は、前記α方向と前記β方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状であり、
前記受光面は、前記出射端面から出射した光信号の前記α方向と前記β方向のそれぞれの拡がり角、および、前記出射端面と前記受光面との間隔が関与する前記受光面での光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを有している光モジュール。
【請求項2】
前記光導波路は、光信号の伝送方向に直交する断面の前記α方向と前記β方向の各長さが等しい導波路部分と、前記出射端面に向けてα方向とβ方向の少なくとも一方向の長さが変化するテーパ状導波路部分とを有している請求項1記載の光モジュール。
【請求項3】
前記光導波路は、光信号が入射する入射端面も前記出射端面と同じ形状を有する請求項1記載の光モジュール。
【請求項4】
前記光導波路は、前記入射端面から前記出射端面に至るまでに少なくとも1カ所に湾曲した部分を有し、当該湾曲した部分における光信号の伝送方向に直交する断面は、前記α方向と前記β方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状を有する請求項3記載の光モジュール。
【請求項5】
前記出射端面から出射した光信号の近視野像は楕円状であり、
前記受光面の形状は、前記近視野像に対応する遠視野像である楕円状となっている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の光モジュール。
【請求項6】
前記光導波路は、平面基板に形成された平面光導波路である請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の光モジュール。
【請求項7】
前記受光素子は、フォトダイオードである請求項1乃至請求項6の何れか一つに記載の光モジュール。
【請求項8】
互いに直交する二方向であり、かつ、光信号を伝送する光導波路の光信号の伝送方向にもそれぞれ直交する二方向をα方向とβ方向とした場合に、前記光導波路における光信号を出射する出射端面を、前記α方向と前記β方向のうちの一方向の長さが他方向の長さよりも長い形状にし、
前記出射端面から出射した光信号を受ける受光素子は、前記出射端面から出射した光信号の前記α方向と前記β方向のそれぞれの拡がり角、および、前記出射端面との間隔が関与する光信号の遠視野像に応じた形状および大きさを持つ受光面でもって光信号を受ける光結合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−47795(P2012−47795A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187100(P2010−187100)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】