説明

光信号受信回路

【課題】耐ノイズ性を高めつつ、ノイズ光を誤検知しても消費電力を抑えることができる光信号受信回路を提供する。
【解決手段】光信号受信回路10は、光信号を受信して電流信号を出力するフォトダイオードPDと、復調信号を出力する信号処理回路20と、信号処理回路20の電流源を制御する電流源制御回路30とを備えている。電流源制御回路30は、フォトダイオードPDからの電流信号に応じて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力する第1の制御回路32と、光信号検出信号に基づいて信号処理回路20のアクティブ型のバンドパスフィルタである第1のBPF回路23へバイアス電流を供給する第1の電流源回路33と、第1のBPF回路23からの信号でキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力する第2の制御回路35と、キャリア検出信号に基づいて信号処理回路20へバイアス電流を供給する第2の電流源回路36とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光信号を受信して復調する光信号受信回路に関し、特に、待機電力を抑え、ノイズ光による誤動作での消費電力を抑えることができる光信号受信回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ、ビデオ、エアコンなどの家電製品は、リモコンから遠隔操作できるので、わざわざ操作者が家電製品のある位置まで近寄らなくてよいため、利便性が高い。このような家電製品には、リモコンからの光信号を受信して信号処理するための光信号受信回路が設けられている。光信号は、操作者がリモコンを操作することで送信されるため、光信号受信回路にしてみれば、いつ光信号が送信されるかわからない。従って、光信号受信回路を、光信号を受信可能な動作状態としておくことが必要である。しかし、常に光信号受信回路を動作状態としておくと無駄な待機電力を消費してしまう。
【0003】
無駄な待機電力を減少させることができる従来の光信号受信回路として、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。
【0004】
特許文献1には、送信機から送られてきた赤外線信号を受信する従来の信号処理回路に対し、赤外線信号を検出する信号検出回路として信号判定回路と連続ノイズ判定回路とを付加して赤外線信号の初期(リードパルス部)を検出し、その検出信号で電源スイッチをONする第1の電源切替回路と、希望する赤外線信号を受信したことを検出して電源スイッチを制御する第2の電源切替回路とを設けた赤外線受信装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−224525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の赤外線受信装置では、連続ノイズ判定回路が赤外線信号のリードパルス部が9ms以上となるPPM信号が印加されていることを検出し、信号判別回路がカウンタにより38KHz付近の信号が8パルス以上であることを検出し、この2回路の論理積により9ms以上のリードパルス部を持つ正規のリモコン信号か否かを判別することにより電源スイッチをオンにしているため、除外対象とすべき約5msのバースト長となるインバータ蛍光灯は排除することができる。つまり、この赤外線受信装置は、リモコン信号のフォーマットに規定されたリードパルス部の時間幅が、比較的長い場合に適している。
【0007】
従って、リモコン信号のリードパルス部(リーダコードのパルス幅)が9msより短い条件では、インバータ蛍光灯などのバースト長より短く、リーダコードのパルス幅が3ms程度のものでは更に短いため、リーダコードの時間幅によりノイズ光か否かを判定するこの方式では誤検知するおそれがある。一旦、誤検知してしまうと、信号処理回路全体の電源が供給されるため無駄な電力を消費する。
【0008】
そこで本発明は、耐ノイズ性を高めつつ、ノイズ光を誤検知しても消費電力を抑えることができる光信号受信回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光信号受信回路は、光信号を受信して電流信号を出力するフォトダイオードと、前記フォトダイオードからの信号を復調して出力する信号処理回路と、前記信号処理回路の電流源を光信号に基づいて制御する電流源制御回路とを備え、前記信号処理回路は、前記フォトダイオードにより変換された電流信号を電圧信号へ変換するIVアンプと、前記電圧信号に基づいてキャリア成分が含まれる帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第1のBPF回路と、前記BPF回路により選択された信号を復調する復調回路を備え、前記電流源制御回路は、前記フォトダイオードにより変換された電流信号を増幅した信号を出力する光信号検出用アンプと、前記光信号検出用アンプからの信号のキャリア成分の帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第2のBPF回路と、前記光信号検出用アンプからの信号に基づいて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力する第1の制御回路と、前記第1の制御回路からの光信号検出信号に基づいて前記第2のBPF回路へバイアス電流を供給する第1の電流源回路と、前記第2のBPF回路により選択された信号に基づいてキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力する第2の制御回路と、前記第2の制御回路からのキャリア検出信号に基づいて前記信号処理回路へバイアス電流を供給する第2の電流源回路とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光信号受信回路は、キャリア成分が含まれていることを条件に光信号を検出すため耐ノイズを向上させることができ、誤検知により回路全体へ電流を供給する場合より消費電力を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1に係る光信号受信回路を示すブロック図
【図2】図1に示す光信号受信回路の光信号検出用アンプの一例を示す図
【図3】図1に示す光信号受信回路の第1の制御回路の一例を示す図
【図4】図1に示す光信号受信回路の第2の制御回路の一例を示す図
【図5】本発明の実施の形態2に係る光信号受信回路を示すブロック図
【図6】図5に示す光信号受信回路の第1の制御回路の一例の構成とBPF入力切替回路の切替機能とを説明するための図
【図7】図5に示す光信号受信回路の第2の制御回路の一例の構成とBPF入力切替回路の切替機能とを説明するための図
【図8】バンドパスフィルタを説明するための図、(A)はバンドパスフィルタのQ値が小さい場合を示す周波数特性図、(B)はバンドパスフィルタのQ値が大きい場合を示す周波数特性図
【図9】バンドパスフィルタのQ値と応答時間の関係を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0012】
本願の第1の発明は、光信号を受信して電流信号を出力するフォトダイオードと、フォトダイオードからの信号を復調して出力する信号処理回路と、信号処理回路の電流源を光信号に基づいて制御する電流源制御回路とを備え、信号処理回路は、フォトダイオードにより変換された電流信号を電圧信号へ変換するIVアンプと、電圧信号に基づいてキャリア成分が含まれる帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第1のBPF回路と、BPF回路により選択された信号を復調する復調回路を備え、電流源制御回路は、フォトダイオードにより変換された電流信号を増幅した信号を出力する光信号検出用アンプと、光信号検出用アンプからの信号のキャリア成分の帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第2のBPF回路と、光信号検出用アンプからの信号に基づいて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力する第1の制御回路と、第1の制御回路からの光信号検出信号に基づいて第2のBPF回路へバイアス電流を供給する第1の電流源回路と、第2のBPF回路により選択された信号に基づいてキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力する第2の制御回路と、第2の制御回路からのキャリア検出信号に基づいて信号処理回路へバイアス電流を供給する第2の電流源回路とを備えたことを特徴とした光信号受信回路である。
【0013】
第1の発明によれば、まず、光信号検出用アンプがフォトダイオードにより変換された電流信号を増幅した信号を出力し、第1の制御回路が光信号検出用アンプからの信号に基づいて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力することで、第1の電流源回路が第2のBPF回路へバイアス電流を供給する。次に、第2の制御回路が、第2のBPF回路により選択された信号に基づいてキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力し、第2の電流源回路が第2の制御回路からのキャリア検出信号に基づいて信号処理回路へバイアス電流を供給する。このように、第1の制御回路が誤検知して第1の電流源回路がバイアス電流を供給しても第2のBPF回路だけしか供給されず、第2のBPF回路がキャリア成分の有無を判定することで、キャリア成分を含まないノイズ光を信号として判定することができる。従って、本発明は、キャリア成分が含まれていることを条件に光信号を検出するため耐ノイズを向上させることができる。また、本発明は、誤検知により回路全体へ電流を供給する場合より消費電力を抑えることができる。
【0014】
本願の第2の発明は、第1の発明において、第2のBPF回路は、信号処理回路の第1のBPF回路を兼用したものであり、光信号検出用アンプからの信号は、該第1のBPF回路へ入力され、第2の制御回路への信号は、該第1のBPF回路から入力され、第1の電流源回路は、該第1のBPF回路へバイアス電流を供給することを特徴とした光信号受信回路である。
【0015】
第2の発明によれば、第2のBPF回路を第1のBPF回路と兼用することができるので、回路規模を小さくできる。また、信号処理回路のバンドパスフィルタは比較的Q値が高く設定されている。従って、光信号かノイズ光かの判定に、帯域幅を狭いバンドパスフィルタを使用することができるので、誤検知の確率を低減することができる。
【0016】
本願の第3の発明は、第1または第2の発明において、光信号検出用アンプは、フォトダイオードに流れる電流信号を流す第1のトランジスタと、第1のトランジスタに流れる電流信号の所定倍の電流が流れる第2のトランジスタとによりカレントミラー回路を構成したものであり、第2のトランジスタに流れる電流を第1の制御回路へ電流信号として出力すると共に、第2のトランジスタに流れる電流に応じた電圧を第2のBPF回路へ電圧信号として出力することを特徴とした光信号受信回路である。
【0017】
第3の発明によれば、光信号検出用アンプがカレントミラー回路により構成されていることで、待機時においては第1のトランジスタおよび第2のトランジスタにほとんど電流が流れないので、待機時の消費電流を抑えることができる。
【0018】
本願の第4の発明は、第1から第3のいずれかの発明において、第1の制御回路は、所定の時定数で設定された積分回路と、積分回路による積分電圧と予め設定された閾値電圧とを比較して、積分電圧が高いときに第1の電流源回路へバイアス電流の供給を指示する比較器とを備えたことを特徴とした光信号受信回路である。
【0019】
第4の発明によれば、積分回路に設定された時定数より短いパルス幅のノイズ光は、積分回路の充電が満たされる前にノイズ光が無くなることで比較器により閾値電圧より低いとして判定されるため、パルス幅の短いノイズ光を誤検知してしまうことを防止することができる。
【0020】
本願の第5の発明は、第1から第4のいずれかの発明において、第2の制御回路は、所定の時定数で設定された積分回路と、積分回路による積分電圧と予め設定された閾値電圧とを比較して、積分電圧が高いときに第1の電流源回路へバイアス電流の供給を指示する比較器とを備えたことを特徴とした光信号受信回路である。
【0021】
第5の発明によれば、ノイズ光にキャリア成分が含まれていても、ノイズ光のパルス数が少ない場合には、積分回路の充電が満たされる前にノイズ光が無くなることで比較器により閾値電圧より低いとして判定されるため、パルス数が少ないキャリア成分を含むノイズ光を誤検知してしまうことを防止することができる。
【0022】
本願の第6の発明は、第5の発明において、第2の制御回路の積分回路は、放電の時定数が、リモコン信号のフォーマットにより規定されるトレーラコードの時間の最大値より長くなるように設定されていることを特徴とした光信号受信回路である。
【0023】
第6の発明は、第2の制御回路の積分回路は、時定数が、リモコン信号のフォーマットにより規定されるトレーラコードの時間の最大値より長くなるように設定されていることを特徴とした光信号受信回路である。
【0024】
第6の発明によれば、第2の制御回路の積分回路の時定数を、トレーラコードの時間の最大値より長くしているので、トレーラ期間(信号休止期間)を含む繰り返しの光信号によるリモコン信号であっても安定動作が可能である。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の実施の形態1に係る光信号受信回路を図1から図4に基づいて説明する。図1に示す光信号受信回路10は、リモコンからの赤外線による光信号(リモコン信号)を受信して復調する機能を備えている。
【0026】
光信号受信回路10は、フォトダイオードPDと、信号処理回路20と、電流源制御回路30と、光信号切替回路40とを備えている。
【0027】
フォトダイオードPDは、光信号を受信し、光信号を電流信号に変換する。
【0028】
信号処理回路20は、フォトダイオードからの信号を復調して出力するものである。信号処理回路20は、IVアンプ21と、ACアンプ22と、第1のBPF回路23と、復調回路24とを備えている。
【0029】
IVアンプ21は、受光することでフォトダイオードPDに流れる電流を電圧に変換して増幅し、電圧信号として出力する電流電圧変換器である。
【0030】
ACアンプ22は、IVアンプ21からの電圧信号を更に増幅する増幅器である。このACアンプ22は、リモコン用規格の周波数特性を有している。
【0031】
第1のBPF回路23は、ACアンプ22からの信号からキャリア成分が含まれる帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである。
【0032】
復調回路24は、検波回路、積分回路、コンパレータなどで形成され、キャリア(搬送波)を除去し波形整形を行う回路である。
【0033】
電流源制御回路30は、信号処理回路20の電流源をリモコンからの光信号に基づいて制御するものである。電流源制御回路30は、光信号検出用アンプ31と、第1の制御回路32と、第1の電流源回路33と、第2のBPF回路34と、第2の制御回路35と、第2の電流源回路36とを備えている。
【0034】
光信号検出用アンプ31は、フォトダイオードPDにより変換された電流信号を増幅した信号を出力する増幅器である。例えば、光信号検出用アンプ31を、図2に示すようなカレントミラーにより構成することができる。
【0035】
図2に示す光信号検出用アンプ31は、フォトダイオードPDへ光信号に応じた電流Ipdを流すトランジスタ(第1のトランジスタ)31aと、トランジスタ31aに流れる電流信号を所定倍した電流を流すトランジスタ(第2のトランジスタ)31b,31cによるカレントミラー回路と、トランジスタ31bとグランドとの間に接続された抵抗31dとにより形成されている。本実施の形態では、トランジスタ31a(フォトダイオードPD)に流れるN倍の電流がトランジスタ31b,31cに流れるように設定されている。
【0036】
この光信号検出用アンプ31は、トランジスタ31cに流れる電流を電流信号(Iout=Ipd×N)として第1の制御回路32へ出力し、トランジスタ31cからの電流が抵抗31dに流れることによる電圧信号(Vout=Ipd×抵抗値×N)を第2のBPF回路34へ出力している。
【0037】
第1の制御回路32は、光信号検出用アンプ31からの電流信号に基づいて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力するものである。例えば、第1の制御回路32を、図3に示すような回路により形成することができる。
【0038】
図3に示す第1の制御回路32は、コンデンサ32aおよび定電流源32bによる積分回路と、オペアンプ32cによる比較器と、トランジスタ32dとを備えている。
【0039】
コンデンサ32aは、光信号検出用アンプ31からの電流信号を、所定の時定数で積分する。定電流源32bは、コンデンサ32aによる充電を放電する放電回路として機能する。オペアンプ32cは、コンデンサ32aによる積分電圧と、基準電圧(Vref)とを比較して、積分電圧の方が高い場合にトランジスタ32dへの光信号検出信号(切替信号)を出力する。トランジスタ32dは、光信号検出信号に基づいて、第1の電流源回路33から第2のBPF回路34へのバイアス電流を流すためのスイッチ33aを制御するスイッチ制御トランジスタである。
【0040】
第1の電流源回路33は、第1の制御回路32からの光信号検出信号に基づいて第2のBPF回路34へバイアス電流を供給する電流源である。
【0041】
第2のBPF回路34は、光信号検出用アンプ31からの光信号が変換された電圧信号のキャリア成分の帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである。
【0042】
第2の制御回路35は、第2のBPF回路34により選択された信号に基づいてキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力する。例えば、第2の制御回路35を、図4に示すような回路により形成することができる。
【0043】
図4に示す第2の制御回路35は、トランスコンダクタンスアンプ35aと、コンデンサ35bおよび定電流源35cによる積分回路と、オペアンプ35dと、トランジスタ35eとを備えている。
【0044】
トランスコンダクタンスアンプ35aは、第2のBPF回路34からの電圧信号に応じた電流信号を出力する増幅器である。
【0045】
コンデンサ35bは、光信号検出用アンプ31からの電流信号を、所定の時定数で積分する積分回路として機能する。定電流源35cは、コンデンサ35bに充電された電荷を放電する放電回路として機能する。オペアンプ35dは、コンデンサ35bによる積分電圧と、基準電圧(Vref)とを比較して、積分電圧の方が高い場合にトランジスタ35eへのキャリア検出信号(切替信号)を出力する。
【0046】
トランジスタ35eは、キャリア検出信号(切替信号)に基づいて、第2の電流源回路36から信号処理回路20へバイアス電流を流すためのスイッチ36aを制御するスイッチ制御トランジスタである。
【0047】
本実施の形態1では、コンデンサ35bと定電流源35cとによる積分回路の放電時間が、リモコン信号のフォーマットを規定する最大値より長くなるように、約100msに設定されている。
【0048】
第2の電流源回路36は、第2の制御回路35からのキャリア検出信号に基づいて、スイッチ36aを制御して、信号処理回路20へ電流を供給するバイアス電流源である。この第2の電流源回路36からのバイアス電流により、信号処理回路20のIVアンプ21、ACアンプ22、第1のBPF回路23および復調回路24の電流が供給される。
【0049】
光信号切替回路40は、第2の制御回路35からのキャリア検出信号に基づいて、フォトダイオードPDからの出力を、信号処理回路20(IVアンプ21)または光信号検出用アンプ31のいずれかに切替える機能を備えている。
【0050】
以上のように構成された本発明の実施の形態1に係る光信号受信回路の動作を図面に基づいて説明する。
【0051】
初期状態では、図1に示す第1の制御回路32から光信号検出信号が出力されていないため第1の電流源回路33からはバイアス電流が出力されていない。また、第2の制御回路35から光信号のキャリアを検出したことを示すキャリア検出信号が出力されていないため、第2の電流源回路36からはバイアス電流が出力されておらず、光信号切替回路40はフォトダイオードPDからの出力を光信号検出用アンプ31へ入力させるように接続している。
【0052】
まず、フォトダイオードPDが光信号を受信すると、図2に示すように光信号検出用アンプ31では、光信号に応じた電流がトランジスタ31aに流れる。トランジスタ31aに電流が流れることにより、トランジスタ31aとカレントミラー構成を組むトランジスタ31b,31cにN倍の電流信号が流れ、光信号検出用アンプ31から第1の制御回路32へ出力される。また、電流信号は抵抗31dにより電圧信号として第2のBPF回路34へ出力される。
【0053】
第1の制御回路32では、図3に示すように、コンデンサ32aに電流信号が充電され、電位が上昇する。オペアンプ32cでは、コンデンサ32aの電位と基準電圧(Vref)とを比較して、コンデンサ32aの電位が高い場合にはトランジスタ32dへの光信号検出信号(切替信号)を出力する。
【0054】
第1の制御回路32から第1の電流源回路33へ光信号検出信号が出力されることで、第1の電流源回路33は、スイッチ33aをオンして、アクティブ型のバンドパスフィルタである第2のBPF回路34へバイアス電流を出力して動作させる。
【0055】
第1の電流源回路33は、回路動作のオン/オフを電源Vccのスイッチ動作ではなく、電流源のスイッチ動作としているため、スイッチ33aのオン抵抗の影響が少ないので低電圧動作にも好適である。
【0056】
第2のBPF回路34では、光信号検出用アンプ31からの電圧信号を入力して、キャリア成分の帯域のみを選択する。
【0057】
第2の制御回路35では、トランスコンダクタンスアンプ35aにより第2のBPF回路34からの電圧信号に応じた電流信号に変換する。トランスコンダクタンスアンプ35aからの電流信号は、コンデンサ35bに充電されることで、コンデンサ35bの電位が上昇する。オペアンプ35dでは、コンデンサ35bの電位と基準電圧(Vref)とを比較して、コンデンサ35bの電位が高い場合にはトランジスタ35eへのキャリア検出信号(切替信号)を出力する。
【0058】
第2の制御回路35から第2の電流源回路36へ光信号検出信号が出力されることで、第2の電流源回路36内のスイッチ36aがオンして、信号処理回路20へバイアス電流を出力する。
【0059】
第2の電流源回路36は、回路動作のオン/オフを電源Vccのスイッチ動作ではなく、電流源のスイッチ動作としているため、スイッチ36aのオン抵抗の影響が少ないので低電圧動作にも好適である。
【0060】
これにより信号処理回路20に電流が供給されるため、これ以降の光信号は、IVアンプ21、ACアンプ22、第1のBPF回路23および復調回路24により、順次、電流信号や電圧信号に変換されながら復調される。
【0061】
フォトダイオードPDが入力した光がリモコンから送信された光信号でなく、時間幅の短いノイズ光である場合には、コンデンサ32aによる時定数より短い充電時間しか与えられないため、コンデンサ32aに十分に充電されずに、定電流源32bにより放電される。従って、コンデンサ32aによる時定数より短いパルス幅のノイズ光は、コンデンサ32aの充電が満たされる前にノイズ光が無くなることでコンデンサ32aの電位が基準電圧(Vref)を上回らないため、オペアンプ32cからは光信号検出信号(切替信号)が出力されない。これにより、フォトダイオードPDが受信した光が、リモコン信号のリーダコードのパルス幅として規定された時間より短い光ノイズである場合には、第1の電流源回路33は第2のBPF回路34へバイアス電流が出力されない。
【0062】
特許文献1に記載された赤外線受信装置では、光信号のパルスをカウントすることで、光信号かノイズ光かを判別する方法を取っているが、光ノイズの周波数が光信号の周波数と合致してしまうと、数パルスのノイズで即座に応答してしまい誤検知の確率が高くなる。
【0063】
本実施の形態1に係る光信号受信回路10では、フォトダイオードPDが入力した光が、リーダコードのパルス幅として規定された時間を満たし、ノイズ光にキャリア成分が含まれていても、ノイズ光のパルス数が少なく、キャリア成分を含んだ信号が所定時間継続しなければ、コンデンサ35bの充電が満たされる前にノイズ光が無くなることで、オペアンプ35dの電位が基準電圧(Vref)を上回らないため、オペアンプ35dからはキャリア検出信号(切替信号)が出力されないので、第2の制御回路35の判定により信号処理回路20へは電流が供給されない。
【0064】
従って、誤検知の確率を低く抑えることができる。また、光ノイズを誤検知しても、誤検知のときに回路全体に通電してしまう特許文献1の赤外線受信装置受信回路と異なり、電流消費を第2のBPF回路34のみに抑えることができるため、一定の省エネルギー化を図ることができる。
【0065】
また、第2の制御回路35のコンデンサ35bと定電流源35cとによる積分回路の放電の時定数が、リモコン信号のフォーマットにより規定されるトレーラコードの時間の最大値より長くなる100msに設定されていることにより、例えば、チャンネルのアップ・ダウンの際の光信号や音量のアップ・ダウンの際の光信号のように、トレーラ期間(信号休止期間)を含む繰り返しの光信号によるリモコン信号であっても、トレーラ期間後の光信号も確実に捉えることができるので、安定動作が可能である。
【0066】
また、図1から図4に示す本実施の形態1に係る光信号受信回路10によれば、光信号を待ち受ける待機状態で電流が流れる量が少ないので、待機状態の消費電流をほぼ0Aとすることができる。
【0067】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係る光信号受信回路について、図5から図9に基づいて説明する。なお、図5においては、図1と同じ構成のものは同符号を付して説明を省略する。
【0068】
図5に示す本発明の実施の形態2に係る光信号受信回路10aは、図1に示す光信号受信回路10における電流源制御回路30の第2のBPF回路34を、信号処理回路20a内の第1のBPF回路23と兼用したことを特徴としたものである。
【0069】
信号処理回路20aと電流源制御回路30aとのバンドパスフィルタを兼用とするために、電流源制御回路30aには、光信号検出用アンプ31からの出力と、ACアンプ22からの出力とを切替、第1のBPF回路23へ入力するBPF入力切替回路37が設けられている。
【0070】
このBPF入力切替回路37は、図5、図6、図7に示すように、第1の制御回路32からの信号と光信号切替回路40からの出力された信号とをORする論理和回路38からの信号に基づいて、ACアンプ22からの信号または光信号検出用アンプ31からの信号のいずれか一方の信号を切替えて第1のBPF回路23へ出力する。
【0071】
つまり、BPF入力切替回路37は、第1の制御回路32からの光信号検出信号が有効である、または第2の制御回路35からのキャリア検出信号が無効であることを条件に、光信号検出用アンプ31からの信号を第1のBPF回路23へ入力させる。
【0072】
また、第1のBPF回路23からの出力を復調回路24と第2の制御回路35とに出力している。また、第1の電流源回路33は、第1のBPF回路23へバイアス電流を供給している。
【0073】
このように図1に示す第2のBPF回路34を省略し、信号処理回路20a内の第1のBPF回路23を兼用することで、回路規模を縮小することができる。
【0074】
また、信号処理回路20a内の第1のBPF回路23では受信精度を高めるためにQ値が高く設定される。第1のBPF回路23では、Q値は10に設定され、高い部類に属する。
【0075】
従って、図8(B)に示すQ値が高いバンドパスフィルタは、図8(A)に示すQ値が低いバンドパスフィルタより信号を通過させる帯域幅が狭いので、帯域幅が広いバンドパスフィルタでは通過するような中心周波数を外れたノイズ光であっても除去することができる。
【0076】
また、図9からも判るように、Q値の高いバンドパスフィルタは、応答時間が長くなる特性となるため、出力信号の立ち上がりが遅くなる。これは、同一周波数の光ノイズが1、2パルスのみ入力された場合でも出力電圧が低いままなので、第2の制御回路35内の積分電圧が上昇せず、誤動作しないという利点がある。
【0077】
従って、信号処理回路20a内の第1のBPF回路23を、電流源制御回路30aにて行うノイズ判定のバンドパスフィルタと兼用することで、高い耐ノイズ性を確保することができる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、耐ノイズ性を高めつつ、ノイズ光を誤検知しても消費電力を抑えることができるので、光信号を受信して復調する光信号受信回路に好適である。
【符号の説明】
【0079】
10,10a 光信号受信回路
20,20a 信号処理回路
21 IVアンプ
22 ACアンプ
23 第1のBPF回路
24 復調回路
30,30a 電流源制御回路
31 光信号検出用アンプ
31a,31b,31c トランジスタ
31d 抵抗
32 第1の制御回路
32a コンデンサ
32b 定電流源
32c オペアンプ
32d トランジスタ
33 第1の電流源回路
33a スイッチ
34 第2のBPF回路
35 第2の制御回路
35a トランスコンダクタンスアンプ
35b コンデンサ
35c 定電流源
35d オペアンプ
35e トランジスタ
36 第2の電流源回路
36a スイッチ
37 BPF入力切替回路
38 論理和回路
40 光信号切替回路
PD フォトダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光信号を受信して電流信号を出力するフォトダイオードと、前記フォトダイオードからの信号を復調して出力する信号処理回路と、前記信号処理回路の電流源を光信号に基づいて制御する電流源制御回路とを備え、
前記信号処理回路は、
前記フォトダイオードにより変換された電流信号を電圧信号へ変換するIVアンプと、
前記電圧信号に基づいてキャリア成分が含まれる帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第1のBPF回路と、
前記BPF回路により選択された信号を復調する復調回路を備え、
前記電流源制御回路は、
前記フォトダイオードにより変換された電流信号を増幅した信号を出力する光信号検出用アンプと、
前記光信号検出用アンプからの信号のキャリア成分の帯域のみを選択するアクティブ型のバンドパスフィルタである第2のBPF回路と、
前記光信号検出用アンプからの信号に基づいて光信号を検出した場合に、光信号検出信号を出力する第1の制御回路と、
前記第1の制御回路からの光信号検出信号に基づいて前記第2のBPF回路へバイアス電流を供給する第1の電流源回路と、
前記第2のBPF回路により選択された信号に基づいてキャリア成分を検出した場合に、キャリア検出信号を出力する第2の制御回路と、
前記第2の制御回路からのキャリア検出信号に基づいて前記信号処理回路へバイアス電流を供給する第2の電流源回路とを備えたことを特徴とする光信号受信回路。
【請求項2】
前記第2のBPF回路は、前記信号処理回路の前記第1のBPF回路を兼用したものであり、
前記光信号検出用アンプからの信号は、該第1のBPF回路へ入力され、
前記第2の制御回路への信号は、該第1のBPF回路から入力され、
前記第1の電流源回路は、該第1のBPF回路へバイアス電流を供給する請求項1記載の光信号受信回路。
【請求項3】
前記光信号検出用アンプは、前記フォトダイオードに流れる電流信号を流す第1のトランジスタと、前記第1のトランジスタに流れる電流信号の所定倍の電流が流れる第2のトランジスタとによりカレントミラー回路を構成したものであり、
前記第2のトランジスタに流れる電流を前記第1の制御回路へ電流信号として出力すると共に、前記第2のトランジスタに流れる電流に応じた電圧を前記第2のBPF回路へ電圧信号として出力する請求項1または2記載の光信号受信回路。
【請求項4】
前記第1の制御回路は、所定の時定数で設定された積分回路と、前記積分回路による積分電圧と予め設定された閾値電圧とを比較して、積分電圧が高いときに前記第1の電流源回路へバイアス電流の供給を指示する比較器とを備えた請求項1から3のいずれかの項に記載の光信号受信回路。
【請求項5】
前記第2の制御回路は、所定の時定数で設定された積分回路と、前記積分回路による積分電圧と予め設定された閾値電圧とを比較して、積分電圧が高いときに前記第1の電流源回路へバイアス電流の供給を指示する比較器とを備えた請求項1から4のいずれかの項に記載の光信号受信回路。
【請求項6】
前記第2の制御回路の積分回路は、放電の時定数が、リモコン信号のフォーマットにより規定されるトレーラコードの時間の最大値より長くなるように設定されている請求項5記載の光信号受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−48316(P2013−48316A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185501(P2011−185501)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】