光偏向装置、光走査装置および画像形成装置
【課題】光学結晶で偏向した光ビームを照射対象物の所定の位置に一定時間以上照射しても、光ビームのビームスポット径の歪みを抑制することができる光偏向装置、光走査装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】光偏向素子3で+θ1偏向された光のうちの半分が、第1ハーフミラー43により反射され、照射対象物Tの所定の位置Aに照射される。また、光偏向素子3で−θ1偏向された光のうち半分が、第2ハーフミラ−43により反射され、反転ミラー46で反転され再び第2ハーフミラー44へ入射する。そして、第2ハーフミラー44、第1ハーフミラー43を透過した光が、照射対象物Tの偏向角度が+θ1のときの光が照射する箇所と同じ箇所Aに照射される。
【解決手段】光偏向素子3で+θ1偏向された光のうちの半分が、第1ハーフミラー43により反射され、照射対象物Tの所定の位置Aに照射される。また、光偏向素子3で−θ1偏向された光のうち半分が、第2ハーフミラ−43により反射され、反転ミラー46で反転され再び第2ハーフミラー44へ入射する。そして、第2ハーフミラー44、第1ハーフミラー43を透過した光が、照射対象物Tの偏向角度が+θ1のときの光が照射する箇所と同じ箇所Aに照射される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向装置、光走査装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子を用いた光偏向器が記載されている。
この光学結晶は、光軸方向に複数のプリズム部が配列され、結晶の上面と下面とにそれぞれ電極が設けられている。電極間に電圧を印加すると、ポッケルス効果により、プリズム部の屈曲率が変化する。その結果、光学結晶に入射した光が、光学結晶のプリズム部に入射すると、所定角度偏向される。そして、複数のプリズム部を通過することで、光学結晶へ入射した光ビームを設定された偏角角度に偏向して、光学結晶から出射させることができる。また、一方の電極の極性がプラス極性となるような電圧を印加したときと、一方の電極の極性がマイナス極性となるような電圧を印加したときとで、光学結晶に入射した光ビームは、光軸を挟んで互いに反対方向に偏向される。また、電圧の絶対値が同じ値であれば、一方の電極の極性がプラス極性となるような電圧を印加したときの光ビームの光軸に対する偏角角度と、一方の電極の極性がマイナス極性となるような電圧を印加したときの光ビームの光軸に対する偏向角度が同じとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記電気光学効果を有する光学結晶は、印加する電圧値により偏向角度を瞬時に変更することができ、また、精度の高い偏向を行うことができる。そして、このような性質を生かし、例えば、画像形成装置における光走査装置の感光体への照射位置の副走査方向のズレを補正する素子として用いることが検討されている。
【0004】
しかしながら、上記電気光学効果を有する光学結晶においては、一定の電圧を連続して印加して、光ビームをある偏向角度で照射対象物(例えば、感光体)の所定の位置に一定時間以上光ビームを照射し続けると、照射対象物に照射された光ビームのビームスポット径が歪む所謂フォトリフラクション現象が生じるという課題があった。
【0005】
上述のフォトリフラクション現象は、次のようにして発生する。光学結晶に光ビームを照射すると光学結晶内に存在する欠陥準位からキャリア(電荷)が励起される。キャリアが発生した状態で1方向に電界が長時間作用すると、この電界によりキャリアが移動(キャリアドリフト)して結晶内の別の欠陥準位にトラップされる。また、その箇所に他の欠陥準位で発して移動してきたキャリアもトラップされ、その箇所にキャリアが集まり、一種の空間電荷層が形成される。この空間電荷層が光学結晶の内部電界を形成し、その内部電界が、電極間に印加した外部電界の作用を阻害し、光学結晶内部の屈折率を変化させる。その結果、光学結晶内部で光が散乱され、光ビームが歪む。これが、フォトリフラクション現象である。
【0006】
また、強い電界を光学結晶に発生させるために高電圧を電極間に一定時間印加し続けると、部分的に絶縁破壊が起こり、キャリアが電極から光学結晶内に注入されてしまう。この光学結晶内に注入されたキャリアも、キャリアドリフトして結晶内のキャリアが集まった欠陥準位にトラップされてしまい、上述した空間電荷層が形成されやすい要因となっている。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光学結晶で偏向した光ビームを照射対象物の所定の位置に一定時間以上照射しても、光ビームのビームスポット径の歪みを抑制することができる光偏向装置、光走査装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光源と、上記光源から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子と、上記光偏向素子に電圧を印加する電圧印加手段と、上記光偏向素子から出射された光ビームを照射対象物へ導くための光学系とを備えた光偏向装置において、上記光偏向素子に電圧を印加していないときに上記光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成し、上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を周期的に印加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光偏向素子に電圧を印加していないときに光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、照射対象物への照射位置を同じにしている。よって、以下のような電圧を光偏向素子に印加することで、光ビームのビームスポット径の歪みを抑制して、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができる。すなわち、極性が異なる電圧を周期的に印加するのである。光学結晶の光偏向素子にプラス極性の電圧値を印加したときと、マイナス極性の電圧を印加したときとで、光ビームは、光軸を挟んで互いに反対方向に偏向される。また、光学結晶は、上述したように、一方の偏向角度から他方の偏向角度へ瞬時に光ビームの偏向角度を変えることができる。よって、電圧極性を周期的に変更することで、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができる。
【0010】
このように、極性が異なる電圧を周期的に印加することで、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができるので、このとき、一定方向の電界が形成され続けることはない。よって、光学結晶内に発生したキャリアの電界の影響による移動が抑制され、光学結晶内に一種の空間電荷層が形成されるのを抑制することができる。よって、空間電荷層による電界の作用の阻害を抑制することができ、光学結晶内部の屈折率の変化を抑制することができ、光ビームが歪んでしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る光偏向装置の概略構成図。
【図2】同光偏向装置の要部拡大構成図。
【図3】光偏向素子の断面図。
【図4】ニオブ酸リチウム材料で製造した光偏向素子の印加電圧と偏向角との関係を示すグラフ。
【図5】光偏向素子の動作電圧の周波数に対する出力光電圧をプロットしたグラフ。
【図6】光偏向素子に印加する電圧パターンの一例を示す図。
【図7】図6に示す電圧パターンを印加したときの照射対象物上の光ビームの位置を示す図。
【図8】光源出力を一定にしたときの照射対象物上光ビームの光強度を示す図。
【図9】照射対象物上光ビームの光強度を一定にしたときの光源出力を示す図。
【図10】100Hzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図11】1KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図12】10KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図13】変形例1の光偏向装置の要部を示す概略構成図。
【図14】変形例2の光偏向装置の要部を示す概略構成図。
【図15】画像形成装置の概略構成図。
【図16】本実施形態の光偏向装置が搭載された露光装置の概略構成図。
【図17】中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図18】スキュー補正時の光偏向素子に印加する印加電圧パターンの一例を示す図。
【図19】出力光電圧測定装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る光偏向装置1の概略構成図である。
図に示すように、光偏向装置1は、光源2と、電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子3と、光偏向素子3により偏向された光ビームを図示しない照射対象物へ導くための光学系4とを備えている。また、光偏向素子3に電圧を印加する電圧印加手段としての電圧供給部5、電圧供給部5を制御して、光偏向素子3に印加する電圧を制御して偏角角度を制御したり、光源2に印加する電圧を制御して光源が出力する光強度を制御する制御部6を有している。
【0014】
制御部6は、図示しない外部電源からの電圧を昇圧させる機能を有している。これは、後述するように、光偏向素子3で光ビームには、数100V〜数kVの電圧を印加するので、制御部6には、電圧を昇圧させる機能が必要となる。また、制御部6は、周波数を変換する機能ももち、極性が異なる電圧を比較的柔軟に変化させることができる。
【0015】
上記電圧供給部5、制御部6は、電子回路によって実現することができ、場合によっては外部からのコンピューター制御によって、より複雑な電圧を光偏向素子3に供給することも可能である。
【0016】
光源2は、半導体レーザ、固体レーザ、ガスレーザなどであり、光源2から出射される光は、レーザ光であり、波長は0.4ミクロンから4ミクロンの範囲である。光偏向素子3への光入力は、半導体レーザからの出力光をレンズにより光偏向素子3の端面から入射させる方法や、光ファイバーを介して端面に入射させる方法を用いることができる。半導体レーザからの出力光は基本的には直線偏光であるので、偏光方向は電圧印加方向と平行な直線偏光方向として光ビームを光偏向素子3に入射する。光ビーム径は1mm程度であり、偏向角や解像点数に基づいて、光学レンズなどを光偏向素子3と光源2と間に設けて光ビームを調整して、光偏向素子3に入射される。
【0017】
図2は、光偏向装置の要部拡大構成図であり、図3は、光偏向素子3の断面図である。以下の説明では、光軸方向をX方向、光偏向素子3の偏向方向(光走査方向)をY方向、X方向およびY方向に直交する方向(紙面に対して垂直方向)をZ方向として、説明する。
光偏向素子3は光学結晶基板で形成されている。ここで光学結晶とは、具体的には、ニオブ酸リチウム、マグネシウム添加ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム、それらの混晶材料などに代表される酸化物の強誘電性結晶である。この光学結晶でできた基板に複数の分極反転領域3aが光軸方向に並んで形成されている。これら分極反転領域3aは、三角形形状の連鎖で形成されるプリズム型の分極ドメインを分極反転技術によって形成する。分極反転領域3aの三角形状の幅や高さは、偏向角などの素子の仕様によって、適宜決定される。例えば、幅1mm、高さ2mmの二等辺三角形の形状などである。
【0018】
上述したように、光源2から出射されるレーザ光は、直線偏光であり、偏光の振動方向は、電圧印加によって生じる電界と平行な方向である。光偏向素子3は、このような電界を印加したときにポッケルス係数が大きくなるような結晶軸を用いている。
【0019】
図3に示すように、光偏向素子3のXY平面に電極3bが形成されており、電極3bで分極反転領域3aを挟み込んでいる。光源2からの光ビームは、光偏向素子3の図中左側の面(ZY平面)から入射し、電極3b間を透過して、図中右側のZY平面から出射する。
【0020】
電極3bに電圧を印加すると、電極3bに挟まれた光学結晶内に電界生じ、その電界の大きさに対応して電気光学効果(ポッケルス効果)により光学結晶の屈折率が変化する。ポッケルス効果は電界に1次比例するので、電界の方向(正負)によって屈折率の変化量も正負に変化する。分極反転領域3aでは結晶軸が180度回転しているために、同じ方向に電界が発生していても、分極反転領域3aが形成されている部分と形成されていない部分とでの屈折率変化量の符号が異なる。つまり、分極反転領域3aで屈折率が−(Δn)変化するように電圧が印加されると、分極反転領域3a以外では+(Δn)変化するのである。よって、分極反転領域3aと分極反転領域ではない部分とに屈折率の差が生じる。このため、分極反転領域3aと分極反転領域ではない部分との境界で光の進行方向が徐々に変化していき、出力側では、ある偏向角θの出力を得ることができる。
【0021】
図4は、ニオブ酸リチウム材料で製造した光偏向素子3の印加電圧Vと偏向角θの関係を示すである。
図に示すように、電圧が大きくなるにつれてポッケルス効果により屈折率変化が大きくなるため、線形に偏向角θも大きくすることができる。図4においては、光が伝搬する部分の厚みが10μmの光偏向素子3で調べたため、最大偏向角を得るための電圧も、150V程度と低電圧で駆動させることができた。また、図4からわかるように、任意電圧を印加することで、任意偏向角を実現できる。つまり、偏向角と偏向周波数を電圧源によってのみ決定させることができるのである。このような駆動は、機械的な駆動では困難であり、ランダムアクセスによる偏向方向の走査も可能である。また、図4からわかるように、印加電圧がプラス極性のときは、偏角角度は、光軸に対してプラス方向(図2中の上側:+Y方向)に偏向し、印加電圧がマイナス極性のときは、光軸に対してマイナス方向(図2中下側:−Y方向)に偏向させることがわかる。また、印加する電圧の絶対値が同じ場合、プラス側とマイナス側とで偏向角度が、ほぼ同じであることもわかる。
【0022】
図5は、光偏向素子3の動作電圧の周波数に対する出力光電圧をプロットしたグラフである。出力光電圧は、光偏向素子3から出力された光を光検出器で検出したときの光検出器の出力電圧値である。具体的には、出力光電圧値は、以下のようにして測定されたものである。
図19は出力光電圧測定装置の概略構成図である。
図に示すように、光偏向素子3よりも光進行方向下流側に、第1光学系101と、透過率可変フィルター102と、第2光学系103と、光検出器104とが配置されている。第1光学系101は、光路を平行にするもので、第2光学系102は光を光検出器104に集光するものである。透過率可変フィルター102は、光偏向素子3の偏向角度が+θMAX(光偏向素子3が+方向に偏向可能な最大偏向角度)のとき、透過率が最大となり、偏角角度が−θMAX(光偏向素子3が−方向に偏向可能な最大偏向角度)のとき、透過率が最小となるものである。光偏向素子3に電圧を供給する電圧供給部5は、シグナルジェネレータ5bとアンプ5aとからなり、シグナルジェネレータ5bから出力される数ボルトの電圧をアンプ5aで100倍に増幅して光偏向素子3に印加している。
【0023】
出力光電圧の測定は、次のように行う。
光偏向素子3に、一定の周波数で極性が変化する電圧を印加する。その結果、光偏向素子3からは、−θと+θ(θの絶対値は、同じ)に偏向された光が、交互に第1光学系101に入射する。+θに偏向された光は、透過率可変フィルター102により遮光されずに、そのほとんどが透過率可変フィルター102を透過して、光検出器104に入射する。その結果、光検出器104により所定の出力光電圧が出力される。一方、−θに偏向された光は、透過率可変フィルター102によりそのほとんどが遮光され、わずかな光が光検出器104に入射する。その結果、光検出器104から出力される出力光電圧は、大幅に低下する。これにより、光検出器104には、光偏向素子3に印加した電圧と同じような周波数の出力光電圧が、検出される。上記図5では、光偏向素子3の動作電圧の周波数に対する出力光電圧の最大値(+θのときの出力光電圧)をプロットしたものである。
【0024】
図5に示すように、周波数が0.1Hzから20kHzまでは一定した出力光電圧を示していることがわかる。よって、このときは、光偏向素子3は、光源2からの光を所定の角度に偏向できていることがわかる。一方、20kHz以上の場合は、印加電圧を発生させる電圧源の性能により、光偏向素子3が、光源2からの光を所定角度(+θ)偏向することができず、出力光電圧が落ちてしまっている。
【0025】
これは、今回、測定に使用した100倍増幅のアンプ5aは20kHz以上の周波数に対して対応していない。このため、高周波の電圧シグナルを正確に100倍に増幅することができなくなり、高周波になるほど増幅度が低下して、光偏向素子3への印加電圧が低下し、偏向角度が小さくなる。その結果、光検出器へ入射する光強度が低下して、出力光電圧(最大値)が低下してしまった。これは、アンプ5aの性能に依存しているので、100kHzまで対応したアンプを使うことで20kHz以上でも所定の偏角角度に偏向でき、一定の出力光電圧(最大値)を得ることができる。
【0026】
このことから、従来の共振現象を用いた光偏向素子3と比較して、高速スキャンかつランダムスキャンでの動作が可能である。また、この光偏向素子3は任意の周波数に対して複雑な偏向をさせることが可能であるので、100kHz程度までであれば、偏向走査の範囲や偏向走査のスピードなどを適宜変更することができるなど、柔軟な偏向が可能となる。たとえば、100Hzで電圧を変化させて、比較的遅いスキャン動作を行っていたところを局所的に10kHzで電圧を変化させて、高速スキャンに切り替えることも可能であるし、電圧を任意に変化させて、スキャン範囲を任意に切り替えることも可能である。
【0027】
先の図2に示すように、光偏向素子3から出射した光を、照射対象物Tへ導くための光学系4は、コリメート光学系41、ガラスなどの透過部材45に2枚のハーフミラー43,44を隣り合わせて設けた立方体形状の光学部品42を有している。
【0028】
光学部品42は、光偏向素子3によりプラス方向(図中一点鎖線で示す光軸に対して上側)に偏向された光ビームが、第1ハーフミラー43の反射面に対して45°の角度で入射し、光偏向素子3によりマイナス方向(図中一点鎖線で示す光軸に対して下側)に偏向された光ビームが、第2ハーフミラー44の反射面に対して45°の角度で入射するように配置されている。また、光学系4には、第2ハーフミラー44で反射した光を反転させる反転ミラー46を備えている。
【0029】
図2においては、コリメート光学系41は概念的に凸レンズを一枚だけを記載しているが、波面収差などを取り除くためにレンズ群で構成されている。レンズの焦点距離は10mm程度に設定してあり、光偏向素子3からの出力端が焦点位置になるように配置してある。
【0030】
第1、第2ハーフミラー43、44の反射率は50%程度であり、反転ミラー46は、光を100%反射するミラーであり、アルミニウムやクロムなどをガラスにコートしたミラーである。
【0031】
従来、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射する場合は、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続ける必要があった。しかし、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けると、上述したように、フォトリフラクション現象が発生し、光偏向素子3から出射された光が歪んでしまうという課題があった。本実施形態においては、上述したように光学系4を構成したことにより、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けずとも、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射することができる。以下に、具体的に説明する。
【0032】
図2に示すように、+θ1で出力された光はコリメート光学系41を通過して、第1ハーフミラー43の反射面に入射角45度で入射する。第1ハーフミラ−43に入射した光のうち、半分の光は、第1ハーフミラー43を透過し、残りの半分の光は、第1ハーフミラー43により反射され、その反射光は、照射対象物Tの所定の位置Aに照射される。また、−θ1で出力された光は、コリメート光学系41を通過して、第2ハーフミラー44の反射面に入射角45度で入射する。第2ハーフミラ−43に入射した光のうち、第2ハーフミラー43により反射された反射光が、反転ミラー46へ垂直に入射し反転して再び第2ハーフミラー44へ入射角45度で入射する。第2ハーフミラー44へ入射した反転光のうち、第2ハーフミラー44を透過した光は、透過部材45内を進んで、第1ハーフミラー43へ入射角45度で入射する。このとき、第1ハーフミラー43の偏向角度が+θのときの光が入射する箇所と反対側の箇所に光が入射する。そして、第1ハーフミラー43に入射した光のうち、第1ハーフミラー43を透過した光が、照射対象物Tの偏向角度が+θ1のときの光が照射する箇所と同じ箇所Aに照射される(なお、図2では、光の進路が混ざらないように少しずらして記載している。)
【0033】
このように、第1ハーフミラー43と第2ハーフミラー44の接合点と光偏向素子3の出力端の光軸(光偏向素子に電圧を印加していないときに光ビームが出射するところ)とを一致させ、ハーフミラーの光軸に対する傾斜角度(本実施形態では45°)を適切にすることにより、+θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットと、−θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置を一致させることができる。
【0034】
このように、本実施形態においては、+θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置と、−θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置とを一致させているので、図6に示すような電圧波形を、光偏向素子3に印加し、光偏向素子3に印加する電圧の極性が切り替わる瞬間は、光源2の出力をOFFにすることで、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けずとも、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射することができる。具体的には、時間周期Sがミリ秒またはマイクロ秒オーダーの電圧を印加することで、光ビームを照射対象物Tの所定の位置で照射させ続けることができる。
【0035】
このように、本実施形態においては、照射対象物Tの所定位置に光ビームを照射させ続けるとき、ミリ秒またはマイクロ秒オーダーで電圧の極性が切り替わることで、光学結晶にビーム光を照射することで発生したキャリアが電界の影響で移動するのを抑制することができる。よって、キャリアがある欠陥準位にトラップされて空間電荷層が形成されるのを抑制することができ、光学結晶内部の屈折率変化が生じるのを抑制することができる。これにより、光ビームが歪むフォトリフラクション現象が発生するのを抑制することができる。
【0036】
また、図6に示すように、光偏向素子3に印加する電圧値が±V1のときは、光偏向素子3が、+θ1と−θ1の偏角角度で光ビームを出射し、図7に示すように、照射対象物TのAの位置に光ビームが照射される。そして、図6に示すように、光偏向素子3に印加する電圧値が±V2になると、光偏向素子3が、+θ2と−θ2の偏角角度で光ビームを出射(図2参照)し、図7に示すように、照射対象物TのBの位置に光ビームが照射される。このように、電圧値の絶対値を変えることで、照射対象物Tの照射位置を瞬時に変えることができる。また、電圧値を精度よく制御することで、照射対象物Tの所定位置に精度よく光ビームを照射することができる。
【0037】
偏向角度が+θのときは、第1ハーフミラー43で50%の光が反射されて、照射対象物Tに照射されるので、照射対象物Tに照射される光強度は、光源2から出射される光強度の半分である。一方、偏向角度が−θのときは、第2ハーフミラー44で50%の光が反射されて、その50%の光が反転ミラー46で反転した後、再び第2ハーフミラー44へ入射する。そして、この50%の光のうちの半分の25%の光が第1ハーフミラー43へ入射し、第1ハーフミラー43に入射した25%の光の半分の12.5%の光が、照射対象物Tへ入射する。このように、偏向角度が−θのときは、照射対象物Tに照射される光強度は、光源2から出射される光強度の(1/8)である。よって、図8(b)に示すように、光源2の出力が一定の場合、図8(a)に示すように、照射対象物Tの所定の位置に光の強度が4倍異なる光が周期的に照射されてしまう。
【0038】
このため、図9(b)に示すように、制御部6で、−θで偏向させる電圧を光偏向素子3に印加したときは、+θで偏向させる電圧を光偏向素子3に印加したときの光パワーに対して4倍の光パワーで出力するように、光源2を制御する。これにより、図9(a)に示すように、照射対象物Tの所定の位置に照射される光強度を一定とすることができる。
また、この場合、光偏向素子3への印加電圧の極性の切り替えに合わせて、光源2から出射する光強度を変更させることになるため、光強度の切り替えもミリ秒またはマイクロ秒オーダー周期で行うことになる。しかし、本実施形態においては、光源2として半導体レーザーを用いているので、MHz以上の高速なスイッチングスピードが可能であることから、上記の短い周期に対する反応速度にも対応可能であり、光偏向素子3への印加電圧の極性の切り替えに対して、光源2から出射する光強度の変更が遅延することはない。
【0039】
次に、レーザ光を光学結晶に入射し、印加周波数に対する照射対象物Tへのビーム形状の時間変化について調べた検証実験について説明する。
検証実験に用いた光学結晶は酸化マグネシウムがドープされたニオブ酸リチウムであり、この光学結晶にレーザ光(波長532nm、パワー1mW)を入射すると同時に、交流電圧600Vを光学結晶に周波数を変化させて印加した。
図10は、100Hzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図であり、図11は、1KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図である。また、図12は、10KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図である。
【0040】
図10(a)に示すように、100Hzの交流電圧を印加したときは、電圧印加直後は明瞭なビームスポットが形成されていたが、図10(b)に示すように30分後のビーム形状は縦長で不明確なビーム形状に変化した。これは、100Hzでは、光学結晶内に発生したフォトキャリアの移動を十分に抑制することはできず、前述したフォトリフラクション現象による不均一な屈折率分布が生じ、その屈折率分布によって光が散乱されているためと考えられる。
【0041】
また、図11(a)、(b)に示すように、1kHzの場合も、100Hzのときと同様、電圧印加直後は明瞭なビーム形状が形成されていたが、30分後は、フォトリフラクションの影響を受けてビーム形状が不明確となった。
【0042】
一方、図12(a)、(b)に示すように、10kHzの交流電圧を光学結晶に印加したときは、電圧印加直後から30分経過後まで、明瞭なビーム形状が維持され、ビーム形状がほとんど歪んでいないことがわかる。これは、高周波(短い時間周期)で電圧の極性が変化すると、光を照射したときに光学結晶内部で発生したフォトキャリアが電界変化に追随することができないために、フォトキャリアの移動が抑制され、結果的にフォトリフラクション現象によるビーム歪が起こりにくくなったと考えられる。
【0043】
さらに、図12(c)に示すように、60分間光学結晶に電圧を印加し続けても、ビーム形状はほとんど変化せず、明瞭の状態を維持することができた。このことからも、10kHz以上の高周波を光学結晶に印加することで、フォトリフラクションによるビーム歪を抑制できることがわかる。
【0044】
上記のような検証実験から、照射対象物Tの所定の位置にビームを照射するときに、光偏向素子3に入射する電圧を、10kHz以上の高周波数にすることで、光ビームを照射対象物の所定の位置で照射させ続けたときの光の歪みを抑制することができる。
【0045】
電気光学効果は高速な周波数動作が可能であるので、電圧極性を10KHz以上で変化させて偏向角度を+θから−θへ瞬時に変化させることができる。また、光源2として、MHz以上の高速な反応速度にも対応可能な半導体レーザーを用いることで、光源2の高速なON/OFF制御に対応することができる。よって、電圧極性を10KHz以上で変化させて偏向角度を+θから−θへ瞬時に変化させながら照射対象物Tの所定位置に光を照射し続けることができる。また、電圧の絶対値を変更するだけで、照射対象物Tへの照射位置を変更することができるので、kHzオーダで照射対象物Tへの照射位置をランダムで変更することができる。このような動作はMEMSなどの機械駆動の偏光素子では実現がかなり困難である。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。
【0047】
[変形例1]
図13は、変形例1の光偏向装置1Aの要部を示す概略構成図である。
図13に示すように、この変形例1の光偏向装置1Aは、第1、第2ハーフミラーの代わりに第1、第2偏光ビームスプリッター431,441を設け、第2偏光ビームスプリッター441と反転ミラー46との間に1/4波長板47を配置したものである。
偏光ビームスプリッターは、ある特定の直線偏光に対しては反射し、それとは直交する直線偏光に対しては透過する性質を持ち、多層膜や異方性材料により形成される光素子である。また、1/4波長板47は、は2つの直交する偏光成分の位相をπ、すなわち、1/4波長ずらすことができるものであり、直線偏光の光を円偏光に変換、あるいは円偏光の光を直線偏光に変換することができるものである。
【0048】
上述したように、本実施形態においては、光源2として半導体レーザを用いており、光源2から直線偏光の光が出射され、電圧印加方向と平行な直線偏光方向(紙面に対して
垂直方向)として光ビームを光偏向素子3に入射する。第1偏光ビームスプリッター431は、紙面と直交する方向に振動する直線偏光(以下、S波という)の光は、反射し、紙面と平行に振動する直線偏光(以下、P波という)の光は透過するように配置されているので、光偏向素子3、コリメート光学系41を通過した+θ偏向された光は、第1偏光ビームスプリッターで全反射して、照射対象物Tの所定の位置へ入射する。
【0049】
第2偏光ビームスプリッター441も第1偏光ビームスプリッター431と同様、S波の光は反射し、P波の光は透過するように配置されているので、光偏向素子3、コリメート光学系41を通過した−θ偏向された光は、第2偏光ビームスプリッター441で全反射される。第2偏光ビームスプリッター441で全反射された光は、1/4波長板47に入射し、円偏光に変換されて反転ミラー46へ入射する。反転ミラー46で反射された反射光の円偏光の回転方向は、反転ミラー46へ入射する入射光の円偏光の回転方向とは逆になる。よって、反転ミラー46の反射光が1/4波長板に入射すると、反射光は、紙面と平行に振動する直線偏光(P波)に変換される。このP波の光は、第2偏光ビームスプリッター441、第1偏光ビームスプリッター431を通過して、光偏向素子3で+θ偏光したときの光が入射する照射対象物Tの同じ位置に入射される。
【0050】
このように、変形例1の光偏向装置1Aにおいては、照射対象物Tへ照射される光の強度を+θに偏向したとき、−θに偏向したときいずれも、光源2から出力されたときの光強度と同じにすることができる。よって、変形例1の光偏向装置1Aにおいては、実施形態に比べて、光源2の出力を抑えて、所定の光強度の光を照射対象物Tへ照射することができ、消費電力を削減することができる。しかし、変形例1においては、高価な偏光ビームスプリッターや、波長板を設けるので、ハーフミラーで構成された実施形態に比べて、装置のコストが高くなるとうデメリットをもつ。よって、実施形態のハーフミラーの構成を採用するか、変形例1の構成を採用するかは、装置の仕様などにより適宜決めればよい。
【0051】
[変形例2]
図14は、変形例2の光偏向装置1Bの要部を示す概略構成図である。
上述した変形例1の光偏向装置1Aにおいては、光偏向素子3により+θ偏向された光が、照射対象物Tに照射されるときの直線偏光の位相と、光偏向素子3により−θ偏向された光が、照射対象物Tに照射されるときの直線偏光の位相とが、π(1/4波長)異なっている。よって、照射対象物Tのビーム形状に、干渉縞が生じるおそれがあった。そこで、この変形例2は、照射対象物Tのビーム形状に干渉縞を生じさせず、また、照射対象物Tへ照射される光の強度低下を抑えるように光学系を構成した。
【0052】
図14に示すように、この変形例2の光偏向装置1Bは、光偏向素子3で+θ偏向された光が入射する光学部品42の面には、ハーフミラー43を設け、光偏向素子3で−θ偏向された光が入射する光学部品42の面には、偏光ビームスプリッター442を設けたものである。また、この変形例2は、変形例1と同様、偏光ビームスプリッター442と反転ミラー46との間に1/4波長板47が配置されている。また、コリメート光学系41と偏光ビームスプリッター442との間には、1/2波長板47が設けられている。偏光ビームスプリッター442は、P波(紙面に対して平行に振動する直線偏光)の光は、反射し、S波(紙面に対して垂直に振動する直線偏光)の光は、透過するように、配置されている。1/2波長板48は、入射光の直線偏光を、それと直交する直線偏光に変換するものである。
【0053】
光偏向素子3で+θに偏向された光は、実施形態と同様、ハーフミラー43により反射された50%の光が、照射対象物Tの所定の位置に入射する。
【0054】
一方、光偏向素子3で−θに偏向された光は、1/2波長板48に入射して、S波から、P波に変換されて、偏光ビームスプリッター442に入射する。偏光ビームスプリッター442は、P波は反射するので、偏光ビームスプリッターに入射した光は、全反射する。偏光ビームスプリッター442で反射した光は、変形例2と同様、1/4波長板47で円偏光に変換されて、反転ミラー46に入射する。反転ミラー46で反射した反射光は、変形例1同様、反転ミラー46へ入射する入射光の円偏光の回転方向とは逆方向となって、再び1/4波長板47に入射する。1/4波長板47に入射した光は、偏光ビームスプリッター442に入射した直線偏光とは、90度ずれた直線偏光のS波に変換されて、偏光ビームスプリッター442へ入射する。偏光ビームスプリッター442は、S波の光は、透過するので、そのまま偏光ビームスプリッター442を透過し、50%の光がハーフミラー43を透過して、光偏向素子3で+θ偏光したときの光が入射する照射対象物Tの同じ位置に入射される。
【0055】
このように、変形例2の光偏向装置1Bは、照射対象物Tに照射される光偏向素子3により+θに偏向された光と、照射対象物Tに照射される光偏向素子3により−θに偏向された光とを、ともにS波にすることができる。これにより、照射対象物Tに照射されたビームスポットに干渉縞が生じるのを防止することができる。また、−θに偏向された光の光源2に対する強度の減少を50%に抑えることができ、実施形態の2枚のハーフミラーを設けた構成に比べて、−θに偏向された光の光源2に対する強度の減少を抑えることができる。よって、実施形態に比べて、光源2の出力を抑えて、所定の光強度の光を照射対象物Tへ照射することができ、消費電力を削減することができる。
【0056】
また、上記では、光軸に対して+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度と、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度とが同じとき、照射対象物Tの同じ位置に光ビームが照射するよう光学系4を構成したが、光軸に対して+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度と、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度とが異なるときに、照射対象物Tの同じ位置に光ビームが照射するよう光学系4を構成してもよい。例えば、+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度がθ1で、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度がθ2のときに、照射対象物Tの同じ位置に照射するよう光学系4を構成するのである。そして、照射対象物Tに対する照射位置を変更するときは、+方向に光軸に対する偏向角度がθ2となるよう偏向し、−方向に光軸に対する偏向角度がθ3となるように偏向することで、+方向に偏向した光と、−方向に光を偏向したときとで、照射対象物Tの同じ位置に光を偏向する。
【0057】
次に、画像形成装置の光走査装置たる露光装置に副走査方向のずれを調整する調整手段として上述した光偏向装置1〜1Bを用いた例について説明する。
図15は、画像形成装置の要部構成を示す構成図である。図15に示すように、この画像形成装置は、シアン(C),イエロー(Y),マゼンタ(M),ブラック(BK)の有色トナー像を作像するための4つの画像形成ユニット301Y,M,C,BKを備えている。以下添字C,Y,M,BKはシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色をそれぞれ示す。この画像形成ユニット301C,Y,M,BKは、それぞれ各色のトナー像を担持し、図中矢印A方向に回転する感光体302Y,M,C,BKを備えている。この各色用の各感光体302としては、通常OPC感光体が用いられる。これら各感光体302Y,M,C,BKの周囲には、各感光体302表面を一様に帯電する帯電装置303Y,M,C,BKや、一様に帯電された各感光体302表面を画像データに基づきレーザ光を露光走査して静電潜像を形成する露光装置304Y,M,C,BK、各感光体302表面に形成される静電潜像を現像する現像装置305Y,M,C,BK、トナー像転写後の各感光体302表面をクリーニングするクリーニング装置306Y,M,C,BK、クリーニング後の各感光体302表面の残留電荷を除去する図示しない除電装置等を備えている。上記現像装置305Y,M,C,BKには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。なお、画像データとは、図示しない外付けのスキャナによる原稿読取で得られた画像情報や、外部のパーソナルコンピュータから送られている画像情報等である。また、画像形成ユニット301Y,M,C,BKは、感光体302の周囲に配設される帯電装置303、現像装置305、クリーニング装置306とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ本体に対して着脱可能になっている。
【0058】
また、上記プリンタは、画像形成ユニット301の下方に、感光体302Y,M,C,BKに現像されたトナー画像を転写材たる用紙Pに転写する中間転写ユニット310を備えている。この中間転写ユニット310は、駆動ローラを含む複数の張架ローラ311,312,313により張架されて図中矢印B方向に回転駆動する中間転写ベルト320を備えている。中間転写ユニット310は、感光体302Y,M,C,BKと所定の電圧が印加される一次転写ローラ314Y,M,C,BKとの間に中間転写ベルト320を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット310は二次転写バックアップローラ313と所定の電圧が印加される二次転写ローラ315の間に中間転写ベルト320を挟み込んで二次転写ニップを形成している。上記画像形成ユニット301Y,M,C,BKで現像された感光体302Y,M,C,BK上の有色トナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト320に順次重ね合わされて一次転写される。中間転写ベルト320上に転写された4色重ね合わせ有色トナー像は、二次転写ニップで用紙Pに二次転写されることになる。
【0059】
また、上記プリンタは、中間転写ユニット310の下方に、図示しない給紙カセット、レジストローラ対316、転写搬送ベルト317、定着装置318等を備えている。給紙カセットは、プリンタの筺体内に出し入れ可能に構成され、収容する用紙Pの一番上の用紙を一枚づつレジストローラ対316に向けて送り出す。レジストローラ対316は、給紙カセットにより供給された用紙Pをローラ間に挟み込み、中間転写ベルト320上の4色重ね合わせ有色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。転写搬送ベルト317は、二次転写バイアスローラ315により二次転写(一括転写)された用紙Pを定着装置318に向けて搬送する。定着装置318は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラと、これに向けて押圧される加圧ローラとの当接による定着ニップに用紙Pを挟み込み、加熱や加圧の作用によりトナー像を定着せしめる。
【0060】
このような構成のプリンタにおいては、次のように画像形成が行われる。例えばシアン用の画像形成ユニット301Cでは、帯電装置303Cにより一様に帯電された感光体302Cの表面に、露光装置304Cで変調及び偏向されたレーザ光が走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体302C上の静電潜像は、現像装置305Cで現像されてイエロー色のトナー像となる。中間転写ベルト320を挟んで一次転写ローラ314Cに対向する一次転写ニップでは、感光体302C上のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された後の感光体302Cの表面は、クリーニング装置315Cでクリーニングされ、除電装置により表面が初期化され次の静電潜像の形成に備えられる。
【0061】
他の画像形成ユニット310Y,M、BKについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト320の移動に同期して実行され、中間転写ベルト320上に、4色重ね合わせトナー像が形成される。一方、給紙カセットから給送された用紙Pは、レジストローラ対316により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップで4色重ね合わせトナー像が用紙Pに一括転写される。4色重ね合わせトナー像が一括転写された用紙Pは、転写搬送ベルト317によって搬送され、定着装置318による加熱・加圧作用により定着処理が施され、機外に排出される。
【0062】
なお、上記二次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト320上に残った残留トナーは、クリーニング部材330によって中間転写ベルト320から除去される。
【0063】
図16は、光走査装置であり光書込手段たる露光装置304の概略構成図である。
露光装置304は、図1に示した光偏向装置1、ポリゴンスキャナ501、fθレンズ507、湾曲軸型トロイダルレンズ508、反射ミラー511などを有し、これらが光学ハウジング504に収納されている。
【0064】
光偏向装置1の光源2から照射された光ビームは、光偏向素子3、コリメート光学系41、光学系4を通過して、照射対象物Tであるポリゴンスキャナ501のポリゴンミラーに入射する。ポリゴンミラーに入射した光は、ポリゴンミラーの反射面に反射しながら主走査方向(感光体表面上における軸線方向に相当する方向)に偏向せしめられる。そして、ポリゴンミラーによって一定の角速度で主走査方向に偏向せしめられる光ビームの偏向方向の移動速度を等速に変換するfθレンズ507、面倒れを補正するための湾曲軸型トロイダルレンズ508、折り返しミラー511を順次経由した後、ハウジング504外に放たれて、図示しない感光体の表面に達し、感光体表面を光走査する。
【0065】
上記光偏向装置1は、光偏向素子3が、副走査方向に光を偏向するように配置されている。すなわち、光源2からの光が、紙面と直交する方向に照射されるように、上記光偏向装置1が、光学ハウジング504に配置されているのである。
【0066】
上記光偏向装置1は、各色の副走査方向の色ずれが抑制されるように、光偏向素子3で光源2の光を副走査方向に偏向して、副走査方向のズレを調整する。また、プラス方向、マイナス方向のどちらも副走査方向に光を調整できるように、光偏向素子3が偏向可能な最大偏向角度θMAXの半分の偏角角度のとき、感光体の副走査方向基準位置に光が照射されるよう、露光装置304内の各光学素子の姿勢などが調整されている。
【0067】
以下に、各色の副走査方向の色ずれを補正する色ずれ量補正処理について説明する。
図15に示すように、画像形成ユニット301Bkの右側方には、中間転写ベルト320のおもて面の一端と他端とに対して所定の間隙を介して対向するように配設された2つの光学センサ321が配置されている。中間転写ベルト320の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、図17に示すようなシェブロンパッチと呼ばれるY,M,C,Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチは、図17に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。図17が1セットとなり、このセットが連続して形成される。
【0068】
中間転写ベルト302の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチ内の各色トナー像を光学センサ321で検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。このようなシェブロンパッチ内のY,M,Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ321で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tky、tkm、tkcについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、各色の露光装置の光偏向装置内の光偏向素子3の偏向角度(光偏向素子3への印加電圧の絶対値)を補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。
【0069】
また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、感光体への光走査時における光偏向素子3に印加する印加電圧パターンを例えば、図18に示すような印加電圧パターンに補正する。このように補正することにより、感光体上の走査線が副走査方向にも走査され、トナー像のスキューズレを低減することができる。
【0070】
このように、副走査方向ズレの補正やスキュー補正に本実施形態の光偏向装置を用いることで、精度の高い副走査方向の補正を行うことができる。また、感光体に照射される光ビームの形状が歪むのを抑制することができ、本実施形態の光偏向装置を用いても高画質な画像を維持することができる。
【0071】
また、上記においては、画像形成装置の露光装置304に本実施形態の光偏向装置を適用した例について説明したが、例えば、試験管に入った細胞などの試料にレーザー光を当て、試料の状態を検知する装置にも本実施形態の光偏向装置を適用することができる。本実施形態の光偏向装置を上記装置に適用することにより、試料を、一方向に並べて、連続して各試験管の試料の状態を検知することが可能となる。すなわち、ある試料に一定時間試料を当てて、試料の状態を検知した後、光偏向素子への印加電圧を変更することにより、隣の試料に光を照射することができる。しかも、本実施形態の光偏向装置を用いることにより、一定時間試料に光ビームを照射し続けても、光ビームが歪むことがないので、良好に試料の状態を検知することができる。
【0072】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(16)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
光源2と、光源2から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子3と、光偏向素子3に電圧を印加する電圧供給部5などの電圧印加手段と、光偏向素子3から出射された光ビームを照射対象物Tへ導くための光学系4とを備えた光偏向装置1において、光偏向素子3に電圧を印加していないときに光偏向素子3から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ光偏向素子3によって光ビームを偏向したときと、一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ光偏向素子3によって光ビームを偏向したときとで、照射対象物Tへの照射位置が同じ位置となるよう、光学系4を構成し、電圧印加手段は、光偏向素子3に極性の異なる電圧を周期的に印加する。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、光ビームのビーム歪みを抑制して、照射対象物Tの所定の位置に所定時間光ビームを照射することができる。
【0073】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の光偏向装置1において、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に上記光偏向素子3により偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度が、上記一方向に偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度と同じとき、照射対象物Tへの照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系4を構成した。
かかる構成を備えることで、容易に照射対象物Tへの照射位置が同じとなる光学系4を構成することができる。
【0074】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の光偏向装置1において、上記電圧印加手段は、マイナス極性のときの電圧の絶対値と、プラス極性のときの電圧の絶対値とを同じ値にした。
かかる構成とすることで、上記一方向と、この一方向に対して光軸を挟んで反対方向とに、同じ偏向角度で光ビームを偏向することができる。
【0075】
(4)
また、上記(1)乃至(3)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記電圧印加手段は、上記光偏向素子3に極性の異なる電圧を10KHz以上の周波数で印加する。
かかる構成を備えることで、検証実験で説明したように、長時間、照射対象物Tの所定の位置に光ビームを照射し続けても、ビーム歪みが生じないようにすることができる。
【0076】
(5)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、上記光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物Tへ導く第1ハーフミラー43と、上記第1ハーフミラー43の反射面に対して反射面が直交するように、上記第1ハーフミラー43に隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームのうち半分を反射する第2ハーフミラーと、上記第2ハーフミラー44から反射された光を反転させる反転ミラー46とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることで、実施形態で説明したように、光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に同じ偏向角度だけ光ビームを偏向したときとの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、偏光ビームスプリッターや1/4波長板などの高価な部材を使用せずに、光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときと、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に同じ偏向角度だけ光ビームを偏向したときとの照射対象物Tへの照射位置を同じにすることができ、後述する(7)や(8)に記載の態様の光偏向装置に比べて、装置を安価にすることができる。
【0077】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の光偏向装置1において、光偏向素子3に印加する電圧と同じ周期で、光源2の光量を変化させる。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、光偏向素子3により光軸に対して一方向に偏向したときの照射対象物Tへの光ビームの光強度と、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に偏向したときの照射対象物Tへの光ビームの光強度とが異なるのを防止することができる。
【0078】
(7)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを反射して、上記照射対象物Tへ導く第1偏光ビームスプリッター431と、上記第1偏光ビームスプリッター431の反射面に対して反射面が直交するように、上記第1偏光ビームスプリッターに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームを反射する第2偏光ビームスプリッター441と、上記第2偏光ビームスプリッター441から反射された光を反転させる反転ミラー46と、上記反転ミラー46の反射面と対向するように配置された1/4波長板47とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることでも、変形例1で説明したように、光偏向素子3により光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に同角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、光源からの光強度を低下させることなく、照射対象物Tへ光ビームを照射することができる。よって、上記(3)に記載の態様の光偏向装置に比べて、光源のビーム出力を抑えて、照射対象物T上に所定の光強度の光ビームを照射することができ、上記(3)に記載の態様の光偏向装置に比べて、装置の消費電力を低減することができる。
【0079】
(8)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物Tへ導くハーフミラー43と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームが入射する1/2波長板48と、上記ハーフミラー43の反射面に対して反射面が直交するように、上記ハーフミラー43に隣接配置され、上記1/2波長板を通過した光ビームを反射する偏光ビームスプリッター442と、上記偏光ビームスプリッター442から反射された光を反転させる反転ミラー46と、上記反転ミラー46の反射面と対向するように配置された1/4波長板47とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることでも、変形例2で説明したように、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に同角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、光軸に対して一方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの偏光方向と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの偏光方向とを同じにすることができる。これにより、照射対象物T上のビームスポットに干渉縞が生じるのを防止することができる。
また、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの光強度の低下を、上記(5)に記載の態様の光偏向装置に比べて、抑えることができる。よって、上記(5)に記載の態様の光偏向装置に比べて、光源のビーム出力を抑えて、照射対象物T上に所定の光強度の光ビームを照射することができ、装置の消費電力を低減することができる。
【0080】
(9)
光源2と、上記光源2から発射された光束を主走査方向に偏向走査せしめるポリゴンスキャナ501などの偏向手段と、上記偏向手段によって偏向せしめられた光束を感光体302などの被走査面に導くfθレンズ507、トロイダルレンズ508、反射ミラー511などの複数の光学素子とを備えた露光装置304などの光走査装置において、上記被走査面の副走査方向のずれを調整する調整手段を設け、上記調整手段として、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の光偏向装置を用いた。
かかる構成を備えることで、被走査面の副走査方向のズレや、走査線の傾き(スキュー)を精度よく補正することができる。また、被走査面に照射される光ビームが歪むのを抑制することができる。
【0081】
(10)
また、潜像を担持する感光体302など潜像担持体と、潜像担持体の表面に潜像を書き込むための露光装置304などの光書込手段とを備えた画像形成装置において、上記光書込手段として、上記(9)に記載の態様の光走査装置を用いる。
かかる構成を備えることで、画像の副走査方向のズレや画像の傾きが抑制された高品位な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:光偏向装置
2:光源
3:光偏向素子
3a:分極反転領域
3b:電極
4:光学系
5:電圧供給部
6:制御部
41:コリメート光学系
42:光学部品
43,44:ハーフミラー
45:透過部材
46:反転ミラー
47:1/4波長板
48:1/2波長板
302:感光体
304:露光装置
321:光学センサ
431,441,442:偏光ビームスプリッター
T:照射対象物
θ:偏向角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開平10−288798号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、光偏向装置、光走査装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子を用いた光偏向器が記載されている。
この光学結晶は、光軸方向に複数のプリズム部が配列され、結晶の上面と下面とにそれぞれ電極が設けられている。電極間に電圧を印加すると、ポッケルス効果により、プリズム部の屈曲率が変化する。その結果、光学結晶に入射した光が、光学結晶のプリズム部に入射すると、所定角度偏向される。そして、複数のプリズム部を通過することで、光学結晶へ入射した光ビームを設定された偏角角度に偏向して、光学結晶から出射させることができる。また、一方の電極の極性がプラス極性となるような電圧を印加したときと、一方の電極の極性がマイナス極性となるような電圧を印加したときとで、光学結晶に入射した光ビームは、光軸を挟んで互いに反対方向に偏向される。また、電圧の絶対値が同じ値であれば、一方の電極の極性がプラス極性となるような電圧を印加したときの光ビームの光軸に対する偏角角度と、一方の電極の極性がマイナス極性となるような電圧を印加したときの光ビームの光軸に対する偏向角度が同じとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記電気光学効果を有する光学結晶は、印加する電圧値により偏向角度を瞬時に変更することができ、また、精度の高い偏向を行うことができる。そして、このような性質を生かし、例えば、画像形成装置における光走査装置の感光体への照射位置の副走査方向のズレを補正する素子として用いることが検討されている。
【0004】
しかしながら、上記電気光学効果を有する光学結晶においては、一定の電圧を連続して印加して、光ビームをある偏向角度で照射対象物(例えば、感光体)の所定の位置に一定時間以上光ビームを照射し続けると、照射対象物に照射された光ビームのビームスポット径が歪む所謂フォトリフラクション現象が生じるという課題があった。
【0005】
上述のフォトリフラクション現象は、次のようにして発生する。光学結晶に光ビームを照射すると光学結晶内に存在する欠陥準位からキャリア(電荷)が励起される。キャリアが発生した状態で1方向に電界が長時間作用すると、この電界によりキャリアが移動(キャリアドリフト)して結晶内の別の欠陥準位にトラップされる。また、その箇所に他の欠陥準位で発して移動してきたキャリアもトラップされ、その箇所にキャリアが集まり、一種の空間電荷層が形成される。この空間電荷層が光学結晶の内部電界を形成し、その内部電界が、電極間に印加した外部電界の作用を阻害し、光学結晶内部の屈折率を変化させる。その結果、光学結晶内部で光が散乱され、光ビームが歪む。これが、フォトリフラクション現象である。
【0006】
また、強い電界を光学結晶に発生させるために高電圧を電極間に一定時間印加し続けると、部分的に絶縁破壊が起こり、キャリアが電極から光学結晶内に注入されてしまう。この光学結晶内に注入されたキャリアも、キャリアドリフトして結晶内のキャリアが集まった欠陥準位にトラップされてしまい、上述した空間電荷層が形成されやすい要因となっている。
【0007】
本発明は以上の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、光学結晶で偏向した光ビームを照射対象物の所定の位置に一定時間以上照射しても、光ビームのビームスポット径の歪みを抑制することができる光偏向装置、光走査装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、光源と、上記光源から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子と、上記光偏向素子に電圧を印加する電圧印加手段と、上記光偏向素子から出射された光ビームを照射対象物へ導くための光学系とを備えた光偏向装置において、上記光偏向素子に電圧を印加していないときに上記光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成し、上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を周期的に印加することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光偏向素子に電圧を印加していないときに光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、照射対象物への照射位置を同じにしている。よって、以下のような電圧を光偏向素子に印加することで、光ビームのビームスポット径の歪みを抑制して、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができる。すなわち、極性が異なる電圧を周期的に印加するのである。光学結晶の光偏向素子にプラス極性の電圧値を印加したときと、マイナス極性の電圧を印加したときとで、光ビームは、光軸を挟んで互いに反対方向に偏向される。また、光学結晶は、上述したように、一方の偏向角度から他方の偏向角度へ瞬時に光ビームの偏向角度を変えることができる。よって、電圧極性を周期的に変更することで、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができる。
【0010】
このように、極性が異なる電圧を周期的に印加することで、照射対象物の所定の位置に光ビームを照射し続けることができるので、このとき、一定方向の電界が形成され続けることはない。よって、光学結晶内に発生したキャリアの電界の影響による移動が抑制され、光学結晶内に一種の空間電荷層が形成されるのを抑制することができる。よって、空間電荷層による電界の作用の阻害を抑制することができ、光学結晶内部の屈折率の変化を抑制することができ、光ビームが歪んでしまうのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る光偏向装置の概略構成図。
【図2】同光偏向装置の要部拡大構成図。
【図3】光偏向素子の断面図。
【図4】ニオブ酸リチウム材料で製造した光偏向素子の印加電圧と偏向角との関係を示すグラフ。
【図5】光偏向素子の動作電圧の周波数に対する出力光電圧をプロットしたグラフ。
【図6】光偏向素子に印加する電圧パターンの一例を示す図。
【図7】図6に示す電圧パターンを印加したときの照射対象物上の光ビームの位置を示す図。
【図8】光源出力を一定にしたときの照射対象物上光ビームの光強度を示す図。
【図9】照射対象物上光ビームの光強度を一定にしたときの光源出力を示す図。
【図10】100Hzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図11】1KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図12】10KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物のビーム形状を撮影した図。
【図13】変形例1の光偏向装置の要部を示す概略構成図。
【図14】変形例2の光偏向装置の要部を示す概略構成図。
【図15】画像形成装置の概略構成図。
【図16】本実施形態の光偏向装置が搭載された露光装置の概略構成図。
【図17】中間転写ベルトに形成されるシェブロンパッチを示す拡大模式図。
【図18】スキュー補正時の光偏向素子に印加する印加電圧パターンの一例を示す図。
【図19】出力光電圧測定装置の概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る光偏向装置1の概略構成図である。
図に示すように、光偏向装置1は、光源2と、電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子3と、光偏向素子3により偏向された光ビームを図示しない照射対象物へ導くための光学系4とを備えている。また、光偏向素子3に電圧を印加する電圧印加手段としての電圧供給部5、電圧供給部5を制御して、光偏向素子3に印加する電圧を制御して偏角角度を制御したり、光源2に印加する電圧を制御して光源が出力する光強度を制御する制御部6を有している。
【0014】
制御部6は、図示しない外部電源からの電圧を昇圧させる機能を有している。これは、後述するように、光偏向素子3で光ビームには、数100V〜数kVの電圧を印加するので、制御部6には、電圧を昇圧させる機能が必要となる。また、制御部6は、周波数を変換する機能ももち、極性が異なる電圧を比較的柔軟に変化させることができる。
【0015】
上記電圧供給部5、制御部6は、電子回路によって実現することができ、場合によっては外部からのコンピューター制御によって、より複雑な電圧を光偏向素子3に供給することも可能である。
【0016】
光源2は、半導体レーザ、固体レーザ、ガスレーザなどであり、光源2から出射される光は、レーザ光であり、波長は0.4ミクロンから4ミクロンの範囲である。光偏向素子3への光入力は、半導体レーザからの出力光をレンズにより光偏向素子3の端面から入射させる方法や、光ファイバーを介して端面に入射させる方法を用いることができる。半導体レーザからの出力光は基本的には直線偏光であるので、偏光方向は電圧印加方向と平行な直線偏光方向として光ビームを光偏向素子3に入射する。光ビーム径は1mm程度であり、偏向角や解像点数に基づいて、光学レンズなどを光偏向素子3と光源2と間に設けて光ビームを調整して、光偏向素子3に入射される。
【0017】
図2は、光偏向装置の要部拡大構成図であり、図3は、光偏向素子3の断面図である。以下の説明では、光軸方向をX方向、光偏向素子3の偏向方向(光走査方向)をY方向、X方向およびY方向に直交する方向(紙面に対して垂直方向)をZ方向として、説明する。
光偏向素子3は光学結晶基板で形成されている。ここで光学結晶とは、具体的には、ニオブ酸リチウム、マグネシウム添加ニオブ酸リチウムやタンタル酸リチウム、それらの混晶材料などに代表される酸化物の強誘電性結晶である。この光学結晶でできた基板に複数の分極反転領域3aが光軸方向に並んで形成されている。これら分極反転領域3aは、三角形形状の連鎖で形成されるプリズム型の分極ドメインを分極反転技術によって形成する。分極反転領域3aの三角形状の幅や高さは、偏向角などの素子の仕様によって、適宜決定される。例えば、幅1mm、高さ2mmの二等辺三角形の形状などである。
【0018】
上述したように、光源2から出射されるレーザ光は、直線偏光であり、偏光の振動方向は、電圧印加によって生じる電界と平行な方向である。光偏向素子3は、このような電界を印加したときにポッケルス係数が大きくなるような結晶軸を用いている。
【0019】
図3に示すように、光偏向素子3のXY平面に電極3bが形成されており、電極3bで分極反転領域3aを挟み込んでいる。光源2からの光ビームは、光偏向素子3の図中左側の面(ZY平面)から入射し、電極3b間を透過して、図中右側のZY平面から出射する。
【0020】
電極3bに電圧を印加すると、電極3bに挟まれた光学結晶内に電界生じ、その電界の大きさに対応して電気光学効果(ポッケルス効果)により光学結晶の屈折率が変化する。ポッケルス効果は電界に1次比例するので、電界の方向(正負)によって屈折率の変化量も正負に変化する。分極反転領域3aでは結晶軸が180度回転しているために、同じ方向に電界が発生していても、分極反転領域3aが形成されている部分と形成されていない部分とでの屈折率変化量の符号が異なる。つまり、分極反転領域3aで屈折率が−(Δn)変化するように電圧が印加されると、分極反転領域3a以外では+(Δn)変化するのである。よって、分極反転領域3aと分極反転領域ではない部分とに屈折率の差が生じる。このため、分極反転領域3aと分極反転領域ではない部分との境界で光の進行方向が徐々に変化していき、出力側では、ある偏向角θの出力を得ることができる。
【0021】
図4は、ニオブ酸リチウム材料で製造した光偏向素子3の印加電圧Vと偏向角θの関係を示すである。
図に示すように、電圧が大きくなるにつれてポッケルス効果により屈折率変化が大きくなるため、線形に偏向角θも大きくすることができる。図4においては、光が伝搬する部分の厚みが10μmの光偏向素子3で調べたため、最大偏向角を得るための電圧も、150V程度と低電圧で駆動させることができた。また、図4からわかるように、任意電圧を印加することで、任意偏向角を実現できる。つまり、偏向角と偏向周波数を電圧源によってのみ決定させることができるのである。このような駆動は、機械的な駆動では困難であり、ランダムアクセスによる偏向方向の走査も可能である。また、図4からわかるように、印加電圧がプラス極性のときは、偏角角度は、光軸に対してプラス方向(図2中の上側:+Y方向)に偏向し、印加電圧がマイナス極性のときは、光軸に対してマイナス方向(図2中下側:−Y方向)に偏向させることがわかる。また、印加する電圧の絶対値が同じ場合、プラス側とマイナス側とで偏向角度が、ほぼ同じであることもわかる。
【0022】
図5は、光偏向素子3の動作電圧の周波数に対する出力光電圧をプロットしたグラフである。出力光電圧は、光偏向素子3から出力された光を光検出器で検出したときの光検出器の出力電圧値である。具体的には、出力光電圧値は、以下のようにして測定されたものである。
図19は出力光電圧測定装置の概略構成図である。
図に示すように、光偏向素子3よりも光進行方向下流側に、第1光学系101と、透過率可変フィルター102と、第2光学系103と、光検出器104とが配置されている。第1光学系101は、光路を平行にするもので、第2光学系102は光を光検出器104に集光するものである。透過率可変フィルター102は、光偏向素子3の偏向角度が+θMAX(光偏向素子3が+方向に偏向可能な最大偏向角度)のとき、透過率が最大となり、偏角角度が−θMAX(光偏向素子3が−方向に偏向可能な最大偏向角度)のとき、透過率が最小となるものである。光偏向素子3に電圧を供給する電圧供給部5は、シグナルジェネレータ5bとアンプ5aとからなり、シグナルジェネレータ5bから出力される数ボルトの電圧をアンプ5aで100倍に増幅して光偏向素子3に印加している。
【0023】
出力光電圧の測定は、次のように行う。
光偏向素子3に、一定の周波数で極性が変化する電圧を印加する。その結果、光偏向素子3からは、−θと+θ(θの絶対値は、同じ)に偏向された光が、交互に第1光学系101に入射する。+θに偏向された光は、透過率可変フィルター102により遮光されずに、そのほとんどが透過率可変フィルター102を透過して、光検出器104に入射する。その結果、光検出器104により所定の出力光電圧が出力される。一方、−θに偏向された光は、透過率可変フィルター102によりそのほとんどが遮光され、わずかな光が光検出器104に入射する。その結果、光検出器104から出力される出力光電圧は、大幅に低下する。これにより、光検出器104には、光偏向素子3に印加した電圧と同じような周波数の出力光電圧が、検出される。上記図5では、光偏向素子3の動作電圧の周波数に対する出力光電圧の最大値(+θのときの出力光電圧)をプロットしたものである。
【0024】
図5に示すように、周波数が0.1Hzから20kHzまでは一定した出力光電圧を示していることがわかる。よって、このときは、光偏向素子3は、光源2からの光を所定の角度に偏向できていることがわかる。一方、20kHz以上の場合は、印加電圧を発生させる電圧源の性能により、光偏向素子3が、光源2からの光を所定角度(+θ)偏向することができず、出力光電圧が落ちてしまっている。
【0025】
これは、今回、測定に使用した100倍増幅のアンプ5aは20kHz以上の周波数に対して対応していない。このため、高周波の電圧シグナルを正確に100倍に増幅することができなくなり、高周波になるほど増幅度が低下して、光偏向素子3への印加電圧が低下し、偏向角度が小さくなる。その結果、光検出器へ入射する光強度が低下して、出力光電圧(最大値)が低下してしまった。これは、アンプ5aの性能に依存しているので、100kHzまで対応したアンプを使うことで20kHz以上でも所定の偏角角度に偏向でき、一定の出力光電圧(最大値)を得ることができる。
【0026】
このことから、従来の共振現象を用いた光偏向素子3と比較して、高速スキャンかつランダムスキャンでの動作が可能である。また、この光偏向素子3は任意の周波数に対して複雑な偏向をさせることが可能であるので、100kHz程度までであれば、偏向走査の範囲や偏向走査のスピードなどを適宜変更することができるなど、柔軟な偏向が可能となる。たとえば、100Hzで電圧を変化させて、比較的遅いスキャン動作を行っていたところを局所的に10kHzで電圧を変化させて、高速スキャンに切り替えることも可能であるし、電圧を任意に変化させて、スキャン範囲を任意に切り替えることも可能である。
【0027】
先の図2に示すように、光偏向素子3から出射した光を、照射対象物Tへ導くための光学系4は、コリメート光学系41、ガラスなどの透過部材45に2枚のハーフミラー43,44を隣り合わせて設けた立方体形状の光学部品42を有している。
【0028】
光学部品42は、光偏向素子3によりプラス方向(図中一点鎖線で示す光軸に対して上側)に偏向された光ビームが、第1ハーフミラー43の反射面に対して45°の角度で入射し、光偏向素子3によりマイナス方向(図中一点鎖線で示す光軸に対して下側)に偏向された光ビームが、第2ハーフミラー44の反射面に対して45°の角度で入射するように配置されている。また、光学系4には、第2ハーフミラー44で反射した光を反転させる反転ミラー46を備えている。
【0029】
図2においては、コリメート光学系41は概念的に凸レンズを一枚だけを記載しているが、波面収差などを取り除くためにレンズ群で構成されている。レンズの焦点距離は10mm程度に設定してあり、光偏向素子3からの出力端が焦点位置になるように配置してある。
【0030】
第1、第2ハーフミラー43、44の反射率は50%程度であり、反転ミラー46は、光を100%反射するミラーであり、アルミニウムやクロムなどをガラスにコートしたミラーである。
【0031】
従来、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射する場合は、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続ける必要があった。しかし、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けると、上述したように、フォトリフラクション現象が発生し、光偏向素子3から出射された光が歪んでしまうという課題があった。本実施形態においては、上述したように光学系4を構成したことにより、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けずとも、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射することができる。以下に、具体的に説明する。
【0032】
図2に示すように、+θ1で出力された光はコリメート光学系41を通過して、第1ハーフミラー43の反射面に入射角45度で入射する。第1ハーフミラ−43に入射した光のうち、半分の光は、第1ハーフミラー43を透過し、残りの半分の光は、第1ハーフミラー43により反射され、その反射光は、照射対象物Tの所定の位置Aに照射される。また、−θ1で出力された光は、コリメート光学系41を通過して、第2ハーフミラー44の反射面に入射角45度で入射する。第2ハーフミラ−43に入射した光のうち、第2ハーフミラー43により反射された反射光が、反転ミラー46へ垂直に入射し反転して再び第2ハーフミラー44へ入射角45度で入射する。第2ハーフミラー44へ入射した反転光のうち、第2ハーフミラー44を透過した光は、透過部材45内を進んで、第1ハーフミラー43へ入射角45度で入射する。このとき、第1ハーフミラー43の偏向角度が+θのときの光が入射する箇所と反対側の箇所に光が入射する。そして、第1ハーフミラー43に入射した光のうち、第1ハーフミラー43を透過した光が、照射対象物Tの偏向角度が+θ1のときの光が照射する箇所と同じ箇所Aに照射される(なお、図2では、光の進路が混ざらないように少しずらして記載している。)
【0033】
このように、第1ハーフミラー43と第2ハーフミラー44の接合点と光偏向素子3の出力端の光軸(光偏向素子に電圧を印加していないときに光ビームが出射するところ)とを一致させ、ハーフミラーの光軸に対する傾斜角度(本実施形態では45°)を適切にすることにより、+θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットと、−θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置を一致させることができる。
【0034】
このように、本実施形態においては、+θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置と、−θの偏向角が照射対象物Tに形成する光スポットの位置とを一致させているので、図6に示すような電圧波形を、光偏向素子3に印加し、光偏向素子3に印加する電圧の極性が切り替わる瞬間は、光源2の出力をOFFにすることで、光偏向素子3に一定の電圧を長時間印加し続けずとも、照射対象物Tの所定の位置に一定時間、光ビームを照射することができる。具体的には、時間周期Sがミリ秒またはマイクロ秒オーダーの電圧を印加することで、光ビームを照射対象物Tの所定の位置で照射させ続けることができる。
【0035】
このように、本実施形態においては、照射対象物Tの所定位置に光ビームを照射させ続けるとき、ミリ秒またはマイクロ秒オーダーで電圧の極性が切り替わることで、光学結晶にビーム光を照射することで発生したキャリアが電界の影響で移動するのを抑制することができる。よって、キャリアがある欠陥準位にトラップされて空間電荷層が形成されるのを抑制することができ、光学結晶内部の屈折率変化が生じるのを抑制することができる。これにより、光ビームが歪むフォトリフラクション現象が発生するのを抑制することができる。
【0036】
また、図6に示すように、光偏向素子3に印加する電圧値が±V1のときは、光偏向素子3が、+θ1と−θ1の偏角角度で光ビームを出射し、図7に示すように、照射対象物TのAの位置に光ビームが照射される。そして、図6に示すように、光偏向素子3に印加する電圧値が±V2になると、光偏向素子3が、+θ2と−θ2の偏角角度で光ビームを出射(図2参照)し、図7に示すように、照射対象物TのBの位置に光ビームが照射される。このように、電圧値の絶対値を変えることで、照射対象物Tの照射位置を瞬時に変えることができる。また、電圧値を精度よく制御することで、照射対象物Tの所定位置に精度よく光ビームを照射することができる。
【0037】
偏向角度が+θのときは、第1ハーフミラー43で50%の光が反射されて、照射対象物Tに照射されるので、照射対象物Tに照射される光強度は、光源2から出射される光強度の半分である。一方、偏向角度が−θのときは、第2ハーフミラー44で50%の光が反射されて、その50%の光が反転ミラー46で反転した後、再び第2ハーフミラー44へ入射する。そして、この50%の光のうちの半分の25%の光が第1ハーフミラー43へ入射し、第1ハーフミラー43に入射した25%の光の半分の12.5%の光が、照射対象物Tへ入射する。このように、偏向角度が−θのときは、照射対象物Tに照射される光強度は、光源2から出射される光強度の(1/8)である。よって、図8(b)に示すように、光源2の出力が一定の場合、図8(a)に示すように、照射対象物Tの所定の位置に光の強度が4倍異なる光が周期的に照射されてしまう。
【0038】
このため、図9(b)に示すように、制御部6で、−θで偏向させる電圧を光偏向素子3に印加したときは、+θで偏向させる電圧を光偏向素子3に印加したときの光パワーに対して4倍の光パワーで出力するように、光源2を制御する。これにより、図9(a)に示すように、照射対象物Tの所定の位置に照射される光強度を一定とすることができる。
また、この場合、光偏向素子3への印加電圧の極性の切り替えに合わせて、光源2から出射する光強度を変更させることになるため、光強度の切り替えもミリ秒またはマイクロ秒オーダー周期で行うことになる。しかし、本実施形態においては、光源2として半導体レーザーを用いているので、MHz以上の高速なスイッチングスピードが可能であることから、上記の短い周期に対する反応速度にも対応可能であり、光偏向素子3への印加電圧の極性の切り替えに対して、光源2から出射する光強度の変更が遅延することはない。
【0039】
次に、レーザ光を光学結晶に入射し、印加周波数に対する照射対象物Tへのビーム形状の時間変化について調べた検証実験について説明する。
検証実験に用いた光学結晶は酸化マグネシウムがドープされたニオブ酸リチウムであり、この光学結晶にレーザ光(波長532nm、パワー1mW)を入射すると同時に、交流電圧600Vを光学結晶に周波数を変化させて印加した。
図10は、100Hzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図であり、図11は、1KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図である。また、図12は、10KHzの交流電圧を印加したときの照射対象物Tのビーム形状を撮影した図である。
【0040】
図10(a)に示すように、100Hzの交流電圧を印加したときは、電圧印加直後は明瞭なビームスポットが形成されていたが、図10(b)に示すように30分後のビーム形状は縦長で不明確なビーム形状に変化した。これは、100Hzでは、光学結晶内に発生したフォトキャリアの移動を十分に抑制することはできず、前述したフォトリフラクション現象による不均一な屈折率分布が生じ、その屈折率分布によって光が散乱されているためと考えられる。
【0041】
また、図11(a)、(b)に示すように、1kHzの場合も、100Hzのときと同様、電圧印加直後は明瞭なビーム形状が形成されていたが、30分後は、フォトリフラクションの影響を受けてビーム形状が不明確となった。
【0042】
一方、図12(a)、(b)に示すように、10kHzの交流電圧を光学結晶に印加したときは、電圧印加直後から30分経過後まで、明瞭なビーム形状が維持され、ビーム形状がほとんど歪んでいないことがわかる。これは、高周波(短い時間周期)で電圧の極性が変化すると、光を照射したときに光学結晶内部で発生したフォトキャリアが電界変化に追随することができないために、フォトキャリアの移動が抑制され、結果的にフォトリフラクション現象によるビーム歪が起こりにくくなったと考えられる。
【0043】
さらに、図12(c)に示すように、60分間光学結晶に電圧を印加し続けても、ビーム形状はほとんど変化せず、明瞭の状態を維持することができた。このことからも、10kHz以上の高周波を光学結晶に印加することで、フォトリフラクションによるビーム歪を抑制できることがわかる。
【0044】
上記のような検証実験から、照射対象物Tの所定の位置にビームを照射するときに、光偏向素子3に入射する電圧を、10kHz以上の高周波数にすることで、光ビームを照射対象物の所定の位置で照射させ続けたときの光の歪みを抑制することができる。
【0045】
電気光学効果は高速な周波数動作が可能であるので、電圧極性を10KHz以上で変化させて偏向角度を+θから−θへ瞬時に変化させることができる。また、光源2として、MHz以上の高速な反応速度にも対応可能な半導体レーザーを用いることで、光源2の高速なON/OFF制御に対応することができる。よって、電圧極性を10KHz以上で変化させて偏向角度を+θから−θへ瞬時に変化させながら照射対象物Tの所定位置に光を照射し続けることができる。また、電圧の絶対値を変更するだけで、照射対象物Tへの照射位置を変更することができるので、kHzオーダで照射対象物Tへの照射位置をランダムで変更することができる。このような動作はMEMSなどの機械駆動の偏光素子では実現がかなり困難である。
【0046】
次に、本実施形態の変形例について、説明する。
【0047】
[変形例1]
図13は、変形例1の光偏向装置1Aの要部を示す概略構成図である。
図13に示すように、この変形例1の光偏向装置1Aは、第1、第2ハーフミラーの代わりに第1、第2偏光ビームスプリッター431,441を設け、第2偏光ビームスプリッター441と反転ミラー46との間に1/4波長板47を配置したものである。
偏光ビームスプリッターは、ある特定の直線偏光に対しては反射し、それとは直交する直線偏光に対しては透過する性質を持ち、多層膜や異方性材料により形成される光素子である。また、1/4波長板47は、は2つの直交する偏光成分の位相をπ、すなわち、1/4波長ずらすことができるものであり、直線偏光の光を円偏光に変換、あるいは円偏光の光を直線偏光に変換することができるものである。
【0048】
上述したように、本実施形態においては、光源2として半導体レーザを用いており、光源2から直線偏光の光が出射され、電圧印加方向と平行な直線偏光方向(紙面に対して
垂直方向)として光ビームを光偏向素子3に入射する。第1偏光ビームスプリッター431は、紙面と直交する方向に振動する直線偏光(以下、S波という)の光は、反射し、紙面と平行に振動する直線偏光(以下、P波という)の光は透過するように配置されているので、光偏向素子3、コリメート光学系41を通過した+θ偏向された光は、第1偏光ビームスプリッターで全反射して、照射対象物Tの所定の位置へ入射する。
【0049】
第2偏光ビームスプリッター441も第1偏光ビームスプリッター431と同様、S波の光は反射し、P波の光は透過するように配置されているので、光偏向素子3、コリメート光学系41を通過した−θ偏向された光は、第2偏光ビームスプリッター441で全反射される。第2偏光ビームスプリッター441で全反射された光は、1/4波長板47に入射し、円偏光に変換されて反転ミラー46へ入射する。反転ミラー46で反射された反射光の円偏光の回転方向は、反転ミラー46へ入射する入射光の円偏光の回転方向とは逆になる。よって、反転ミラー46の反射光が1/4波長板に入射すると、反射光は、紙面と平行に振動する直線偏光(P波)に変換される。このP波の光は、第2偏光ビームスプリッター441、第1偏光ビームスプリッター431を通過して、光偏向素子3で+θ偏光したときの光が入射する照射対象物Tの同じ位置に入射される。
【0050】
このように、変形例1の光偏向装置1Aにおいては、照射対象物Tへ照射される光の強度を+θに偏向したとき、−θに偏向したときいずれも、光源2から出力されたときの光強度と同じにすることができる。よって、変形例1の光偏向装置1Aにおいては、実施形態に比べて、光源2の出力を抑えて、所定の光強度の光を照射対象物Tへ照射することができ、消費電力を削減することができる。しかし、変形例1においては、高価な偏光ビームスプリッターや、波長板を設けるので、ハーフミラーで構成された実施形態に比べて、装置のコストが高くなるとうデメリットをもつ。よって、実施形態のハーフミラーの構成を採用するか、変形例1の構成を採用するかは、装置の仕様などにより適宜決めればよい。
【0051】
[変形例2]
図14は、変形例2の光偏向装置1Bの要部を示す概略構成図である。
上述した変形例1の光偏向装置1Aにおいては、光偏向素子3により+θ偏向された光が、照射対象物Tに照射されるときの直線偏光の位相と、光偏向素子3により−θ偏向された光が、照射対象物Tに照射されるときの直線偏光の位相とが、π(1/4波長)異なっている。よって、照射対象物Tのビーム形状に、干渉縞が生じるおそれがあった。そこで、この変形例2は、照射対象物Tのビーム形状に干渉縞を生じさせず、また、照射対象物Tへ照射される光の強度低下を抑えるように光学系を構成した。
【0052】
図14に示すように、この変形例2の光偏向装置1Bは、光偏向素子3で+θ偏向された光が入射する光学部品42の面には、ハーフミラー43を設け、光偏向素子3で−θ偏向された光が入射する光学部品42の面には、偏光ビームスプリッター442を設けたものである。また、この変形例2は、変形例1と同様、偏光ビームスプリッター442と反転ミラー46との間に1/4波長板47が配置されている。また、コリメート光学系41と偏光ビームスプリッター442との間には、1/2波長板47が設けられている。偏光ビームスプリッター442は、P波(紙面に対して平行に振動する直線偏光)の光は、反射し、S波(紙面に対して垂直に振動する直線偏光)の光は、透過するように、配置されている。1/2波長板48は、入射光の直線偏光を、それと直交する直線偏光に変換するものである。
【0053】
光偏向素子3で+θに偏向された光は、実施形態と同様、ハーフミラー43により反射された50%の光が、照射対象物Tの所定の位置に入射する。
【0054】
一方、光偏向素子3で−θに偏向された光は、1/2波長板48に入射して、S波から、P波に変換されて、偏光ビームスプリッター442に入射する。偏光ビームスプリッター442は、P波は反射するので、偏光ビームスプリッターに入射した光は、全反射する。偏光ビームスプリッター442で反射した光は、変形例2と同様、1/4波長板47で円偏光に変換されて、反転ミラー46に入射する。反転ミラー46で反射した反射光は、変形例1同様、反転ミラー46へ入射する入射光の円偏光の回転方向とは逆方向となって、再び1/4波長板47に入射する。1/4波長板47に入射した光は、偏光ビームスプリッター442に入射した直線偏光とは、90度ずれた直線偏光のS波に変換されて、偏光ビームスプリッター442へ入射する。偏光ビームスプリッター442は、S波の光は、透過するので、そのまま偏光ビームスプリッター442を透過し、50%の光がハーフミラー43を透過して、光偏向素子3で+θ偏光したときの光が入射する照射対象物Tの同じ位置に入射される。
【0055】
このように、変形例2の光偏向装置1Bは、照射対象物Tに照射される光偏向素子3により+θに偏向された光と、照射対象物Tに照射される光偏向素子3により−θに偏向された光とを、ともにS波にすることができる。これにより、照射対象物Tに照射されたビームスポットに干渉縞が生じるのを防止することができる。また、−θに偏向された光の光源2に対する強度の減少を50%に抑えることができ、実施形態の2枚のハーフミラーを設けた構成に比べて、−θに偏向された光の光源2に対する強度の減少を抑えることができる。よって、実施形態に比べて、光源2の出力を抑えて、所定の光強度の光を照射対象物Tへ照射することができ、消費電力を削減することができる。
【0056】
また、上記では、光軸に対して+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度と、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度とが同じとき、照射対象物Tの同じ位置に光ビームが照射するよう光学系4を構成したが、光軸に対して+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度と、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度とが異なるときに、照射対象物Tの同じ位置に光ビームが照射するよう光学系4を構成してもよい。例えば、+方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度がθ1で、−方向に偏向させたときの光軸に対する偏向角度がθ2のときに、照射対象物Tの同じ位置に照射するよう光学系4を構成するのである。そして、照射対象物Tに対する照射位置を変更するときは、+方向に光軸に対する偏向角度がθ2となるよう偏向し、−方向に光軸に対する偏向角度がθ3となるように偏向することで、+方向に偏向した光と、−方向に光を偏向したときとで、照射対象物Tの同じ位置に光を偏向する。
【0057】
次に、画像形成装置の光走査装置たる露光装置に副走査方向のずれを調整する調整手段として上述した光偏向装置1〜1Bを用いた例について説明する。
図15は、画像形成装置の要部構成を示す構成図である。図15に示すように、この画像形成装置は、シアン(C),イエロー(Y),マゼンタ(M),ブラック(BK)の有色トナー像を作像するための4つの画像形成ユニット301Y,M,C,BKを備えている。以下添字C,Y,M,BKはシアン、イエロー、マゼンタ、ブラックの各色をそれぞれ示す。この画像形成ユニット301C,Y,M,BKは、それぞれ各色のトナー像を担持し、図中矢印A方向に回転する感光体302Y,M,C,BKを備えている。この各色用の各感光体302としては、通常OPC感光体が用いられる。これら各感光体302Y,M,C,BKの周囲には、各感光体302表面を一様に帯電する帯電装置303Y,M,C,BKや、一様に帯電された各感光体302表面を画像データに基づきレーザ光を露光走査して静電潜像を形成する露光装置304Y,M,C,BK、各感光体302表面に形成される静電潜像を現像する現像装置305Y,M,C,BK、トナー像転写後の各感光体302表面をクリーニングするクリーニング装置306Y,M,C,BK、クリーニング後の各感光体302表面の残留電荷を除去する図示しない除電装置等を備えている。上記現像装置305Y,M,C,BKには、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。なお、画像データとは、図示しない外付けのスキャナによる原稿読取で得られた画像情報や、外部のパーソナルコンピュータから送られている画像情報等である。また、画像形成ユニット301Y,M,C,BKは、感光体302の周囲に配設される帯電装置303、現像装置305、クリーニング装置306とを1つのユニットとして共通の支持体に支持するものであり、プリンタ本体に対して着脱可能になっている。
【0058】
また、上記プリンタは、画像形成ユニット301の下方に、感光体302Y,M,C,BKに現像されたトナー画像を転写材たる用紙Pに転写する中間転写ユニット310を備えている。この中間転写ユニット310は、駆動ローラを含む複数の張架ローラ311,312,313により張架されて図中矢印B方向に回転駆動する中間転写ベルト320を備えている。中間転写ユニット310は、感光体302Y,M,C,BKと所定の電圧が印加される一次転写ローラ314Y,M,C,BKとの間に中間転写ベルト320を挟み込んで一次転写ニップを形成する。また、中間転写ユニット310は二次転写バックアップローラ313と所定の電圧が印加される二次転写ローラ315の間に中間転写ベルト320を挟み込んで二次転写ニップを形成している。上記画像形成ユニット301Y,M,C,BKで現像された感光体302Y,M,C,BK上の有色トナー像は、一次転写ニップで中間転写ベルト320に順次重ね合わされて一次転写される。中間転写ベルト320上に転写された4色重ね合わせ有色トナー像は、二次転写ニップで用紙Pに二次転写されることになる。
【0059】
また、上記プリンタは、中間転写ユニット310の下方に、図示しない給紙カセット、レジストローラ対316、転写搬送ベルト317、定着装置318等を備えている。給紙カセットは、プリンタの筺体内に出し入れ可能に構成され、収容する用紙Pの一番上の用紙を一枚づつレジストローラ対316に向けて送り出す。レジストローラ対316は、給紙カセットにより供給された用紙Pをローラ間に挟み込み、中間転写ベルト320上の4色重ね合わせ有色トナー像に同期させ得るタイミングで二次転写ニップに送り出す。転写搬送ベルト317は、二次転写バイアスローラ315により二次転写(一括転写)された用紙Pを定着装置318に向けて搬送する。定着装置318は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラと、これに向けて押圧される加圧ローラとの当接による定着ニップに用紙Pを挟み込み、加熱や加圧の作用によりトナー像を定着せしめる。
【0060】
このような構成のプリンタにおいては、次のように画像形成が行われる。例えばシアン用の画像形成ユニット301Cでは、帯電装置303Cにより一様に帯電された感光体302Cの表面に、露光装置304Cで変調及び偏向されたレーザ光が走査されながら照射されて静電潜像が形成される。感光体302C上の静電潜像は、現像装置305Cで現像されてイエロー色のトナー像となる。中間転写ベルト320を挟んで一次転写ローラ314Cに対向する一次転写ニップでは、感光体302C上のトナー像が用紙Pに転写される。トナー像が転写された後の感光体302Cの表面は、クリーニング装置315Cでクリーニングされ、除電装置により表面が初期化され次の静電潜像の形成に備えられる。
【0061】
他の画像形成ユニット310Y,M、BKについても、上述した画像形成行程が中間転写ベルト320の移動に同期して実行され、中間転写ベルト320上に、4色重ね合わせトナー像が形成される。一方、給紙カセットから給送された用紙Pは、レジストローラ対316により所定のタイミングで送出されて二次転写ニップに搬送される。そして、二次転写ニップで4色重ね合わせトナー像が用紙Pに一括転写される。4色重ね合わせトナー像が一括転写された用紙Pは、転写搬送ベルト317によって搬送され、定着装置318による加熱・加圧作用により定着処理が施され、機外に排出される。
【0062】
なお、上記二次転写時に転写されずに上記中間転写ベルト320上に残った残留トナーは、クリーニング部材330によって中間転写ベルト320から除去される。
【0063】
図16は、光走査装置であり光書込手段たる露光装置304の概略構成図である。
露光装置304は、図1に示した光偏向装置1、ポリゴンスキャナ501、fθレンズ507、湾曲軸型トロイダルレンズ508、反射ミラー511などを有し、これらが光学ハウジング504に収納されている。
【0064】
光偏向装置1の光源2から照射された光ビームは、光偏向素子3、コリメート光学系41、光学系4を通過して、照射対象物Tであるポリゴンスキャナ501のポリゴンミラーに入射する。ポリゴンミラーに入射した光は、ポリゴンミラーの反射面に反射しながら主走査方向(感光体表面上における軸線方向に相当する方向)に偏向せしめられる。そして、ポリゴンミラーによって一定の角速度で主走査方向に偏向せしめられる光ビームの偏向方向の移動速度を等速に変換するfθレンズ507、面倒れを補正するための湾曲軸型トロイダルレンズ508、折り返しミラー511を順次経由した後、ハウジング504外に放たれて、図示しない感光体の表面に達し、感光体表面を光走査する。
【0065】
上記光偏向装置1は、光偏向素子3が、副走査方向に光を偏向するように配置されている。すなわち、光源2からの光が、紙面と直交する方向に照射されるように、上記光偏向装置1が、光学ハウジング504に配置されているのである。
【0066】
上記光偏向装置1は、各色の副走査方向の色ずれが抑制されるように、光偏向素子3で光源2の光を副走査方向に偏向して、副走査方向のズレを調整する。また、プラス方向、マイナス方向のどちらも副走査方向に光を調整できるように、光偏向素子3が偏向可能な最大偏向角度θMAXの半分の偏角角度のとき、感光体の副走査方向基準位置に光が照射されるよう、露光装置304内の各光学素子の姿勢などが調整されている。
【0067】
以下に、各色の副走査方向の色ずれを補正する色ずれ量補正処理について説明する。
図15に示すように、画像形成ユニット301Bkの右側方には、中間転写ベルト320のおもて面の一端と他端とに対して所定の間隙を介して対向するように配設された2つの光学センサ321が配置されている。中間転写ベルト320の幅方向の一端部と他端部とにそれぞれ、図17に示すようなシェブロンパッチと呼ばれるY,M,C,Kの各色トナー像からなる色ずれ検知用画像を形成する。シェブロンパッチは、図17に示すように、Y,M,C,Kの各色のトナー像を主走査方向から約45[°]傾けた姿勢で、副走査方向であるベルト移動方向に所定ピッチで並べたラインパターン群である。図17が1セットとなり、このセットが連続して形成される。
【0068】
中間転写ベルト302の幅方向の両端部にそれぞれ形成したシェブロンパッチ内の各色トナー像を光学センサ321で検知することで、各色トナー像における主走査方向(感光体軸線方向)の位置、副走査方向(ベルト移動方向)の位置、主走査方向の倍率誤差、主走査方向からのスキューをそれぞれ検出する。このようなシェブロンパッチ内のY,M,Cトナー像について、Kトナー像との検知時間差を光学センサ321で読み取っていく。同図では、紙面上下方向が主走査方向に相当し、左から順に、Y,M,C,Kトナー像が並んだ後、これらとは姿勢が90[°]異なっているK,C,M,Yトナー像が更に並んでいる。基準色となるKとの検出時間差tky、tkm、tkcについての実測値と理論値との差に基づいて、各色トナー像の副走査方向のズレ量、即ちレジストズレ量を求める。そして、そのレジストズレ量に基づいて、各色の露光装置の光偏向装置内の光偏向素子3の偏向角度(光偏向素子3への印加電圧の絶対値)を補正して、各色トナー像のレジストズレを低減する。
【0069】
また、ベルト両端部間での副走査方向ズレ量の差に基づいて、各色トナー像の主走査方向からの傾き(スキュー)を求める。そして、その結果に基づいて、感光体への光走査時における光偏向素子3に印加する印加電圧パターンを例えば、図18に示すような印加電圧パターンに補正する。このように補正することにより、感光体上の走査線が副走査方向にも走査され、トナー像のスキューズレを低減することができる。
【0070】
このように、副走査方向ズレの補正やスキュー補正に本実施形態の光偏向装置を用いることで、精度の高い副走査方向の補正を行うことができる。また、感光体に照射される光ビームの形状が歪むのを抑制することができ、本実施形態の光偏向装置を用いても高画質な画像を維持することができる。
【0071】
また、上記においては、画像形成装置の露光装置304に本実施形態の光偏向装置を適用した例について説明したが、例えば、試験管に入った細胞などの試料にレーザー光を当て、試料の状態を検知する装置にも本実施形態の光偏向装置を適用することができる。本実施形態の光偏向装置を上記装置に適用することにより、試料を、一方向に並べて、連続して各試験管の試料の状態を検知することが可能となる。すなわち、ある試料に一定時間試料を当てて、試料の状態を検知した後、光偏向素子への印加電圧を変更することにより、隣の試料に光を照射することができる。しかも、本実施形態の光偏向装置を用いることにより、一定時間試料に光ビームを照射し続けても、光ビームが歪むことがないので、良好に試料の状態を検知することができる。
【0072】
以上に説明したものは一例であり、本発明は、次の(1)〜(16)態様毎に特有の効果を奏する。
(1)
光源2と、光源2から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子3と、光偏向素子3に電圧を印加する電圧供給部5などの電圧印加手段と、光偏向素子3から出射された光ビームを照射対象物Tへ導くための光学系4とを備えた光偏向装置1において、光偏向素子3に電圧を印加していないときに光偏向素子3から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ光偏向素子3によって光ビームを偏向したときと、一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ光偏向素子3によって光ビームを偏向したときとで、照射対象物Tへの照射位置が同じ位置となるよう、光学系4を構成し、電圧印加手段は、光偏向素子3に極性の異なる電圧を周期的に印加する。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、光ビームのビーム歪みを抑制して、照射対象物Tの所定の位置に所定時間光ビームを照射することができる。
【0073】
(2)
また、上記(1)に記載の態様の光偏向装置1において、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に上記光偏向素子3により偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度が、上記一方向に偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度と同じとき、照射対象物Tへの照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系4を構成した。
かかる構成を備えることで、容易に照射対象物Tへの照射位置が同じとなる光学系4を構成することができる。
【0074】
(3)
また、上記(2)に記載の態様の光偏向装置1において、上記電圧印加手段は、マイナス極性のときの電圧の絶対値と、プラス極性のときの電圧の絶対値とを同じ値にした。
かかる構成とすることで、上記一方向と、この一方向に対して光軸を挟んで反対方向とに、同じ偏向角度で光ビームを偏向することができる。
【0075】
(4)
また、上記(1)乃至(3)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記電圧印加手段は、上記光偏向素子3に極性の異なる電圧を10KHz以上の周波数で印加する。
かかる構成を備えることで、検証実験で説明したように、長時間、照射対象物Tの所定の位置に光ビームを照射し続けても、ビーム歪みが生じないようにすることができる。
【0076】
(5)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、上記光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物Tへ導く第1ハーフミラー43と、上記第1ハーフミラー43の反射面に対して反射面が直交するように、上記第1ハーフミラー43に隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームのうち半分を反射する第2ハーフミラーと、上記第2ハーフミラー44から反射された光を反転させる反転ミラー46とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることで、実施形態で説明したように、光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に同じ偏向角度だけ光ビームを偏向したときとの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、偏光ビームスプリッターや1/4波長板などの高価な部材を使用せずに、光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときと、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に同じ偏向角度だけ光ビームを偏向したときとの照射対象物Tへの照射位置を同じにすることができ、後述する(7)や(8)に記載の態様の光偏向装置に比べて、装置を安価にすることができる。
【0077】
(6)
また、上記(5)に記載の態様の光偏向装置1において、光偏向素子3に印加する電圧と同じ周期で、光源2の光量を変化させる。
かかる構成を備えることで、実施形態で説明したように、光偏向素子3により光軸に対して一方向に偏向したときの照射対象物Tへの光ビームの光強度と、上記一方向に偏向された光ビームに対して光軸を挟んで反対方向に偏向したときの照射対象物Tへの光ビームの光強度とが異なるのを防止することができる。
【0078】
(7)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを反射して、上記照射対象物Tへ導く第1偏光ビームスプリッター431と、上記第1偏光ビームスプリッター431の反射面に対して反射面が直交するように、上記第1偏光ビームスプリッターに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームを反射する第2偏光ビームスプリッター441と、上記第2偏光ビームスプリッター441から反射された光を反転させる反転ミラー46と、上記反転ミラー46の反射面と対向するように配置された1/4波長板47とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることでも、変形例1で説明したように、光偏向素子3により光軸に対して一方向に所定角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に同角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、光源からの光強度を低下させることなく、照射対象物Tへ光ビームを照射することができる。よって、上記(3)に記載の態様の光偏向装置に比べて、光源のビーム出力を抑えて、照射対象物T上に所定の光強度の光ビームを照射することができ、上記(3)に記載の態様の光偏向装置に比べて、装置の消費電力を低減することができる。
【0079】
(8)
また、上記(1)乃至(4)いずれかに記載の態様の光偏向装置1において、上記光学系4は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物Tへ導くハーフミラー43と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームが入射する1/2波長板48と、上記ハーフミラー43の反射面に対して反射面が直交するように、上記ハーフミラー43に隣接配置され、上記1/2波長板を通過した光ビームを反射する偏光ビームスプリッター442と、上記偏光ビームスプリッター442から反射された光を反転させる反転ミラー46と、上記反転ミラー46の反射面と対向するように配置された1/4波長板47とを備えた。
光学系4をかかる構成にすることでも、変形例2で説明したように、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に同角度だけ光ビームを偏向したときの照射対象物Tへの照射位置とを同じ位置にすることができる。
また、光軸に対して一方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの偏光方向と、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの偏光方向とを同じにすることができる。これにより、照射対象物T上のビームスポットに干渉縞が生じるのを防止することができる。
また、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向したときに照射対象物Tに照射される光ビームの光強度の低下を、上記(5)に記載の態様の光偏向装置に比べて、抑えることができる。よって、上記(5)に記載の態様の光偏向装置に比べて、光源のビーム出力を抑えて、照射対象物T上に所定の光強度の光ビームを照射することができ、装置の消費電力を低減することができる。
【0080】
(9)
光源2と、上記光源2から発射された光束を主走査方向に偏向走査せしめるポリゴンスキャナ501などの偏向手段と、上記偏向手段によって偏向せしめられた光束を感光体302などの被走査面に導くfθレンズ507、トロイダルレンズ508、反射ミラー511などの複数の光学素子とを備えた露光装置304などの光走査装置において、上記被走査面の副走査方向のずれを調整する調整手段を設け、上記調整手段として、上記(1)乃至(8)いずれかに記載の態様の光偏向装置を用いた。
かかる構成を備えることで、被走査面の副走査方向のズレや、走査線の傾き(スキュー)を精度よく補正することができる。また、被走査面に照射される光ビームが歪むのを抑制することができる。
【0081】
(10)
また、潜像を担持する感光体302など潜像担持体と、潜像担持体の表面に潜像を書き込むための露光装置304などの光書込手段とを備えた画像形成装置において、上記光書込手段として、上記(9)に記載の態様の光走査装置を用いる。
かかる構成を備えることで、画像の副走査方向のズレや画像の傾きが抑制された高品位な画像を得ることができる。
【符号の説明】
【0082】
1:光偏向装置
2:光源
3:光偏向素子
3a:分極反転領域
3b:電極
4:光学系
5:電圧供給部
6:制御部
41:コリメート光学系
42:光学部品
43,44:ハーフミラー
45:透過部材
46:反転ミラー
47:1/4波長板
48:1/2波長板
302:感光体
304:露光装置
321:光学センサ
431,441,442:偏光ビームスプリッター
T:照射対象物
θ:偏向角
【先行技術文献】
【特許文献】
【0083】
【特許文献1】特開平10−288798号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
上記光源から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子と、
上記光偏向素子に電圧を印加する電圧印加手段と、
上記光偏向素子から出射された光ビームを照射対象物へ導くための光学系とを備えた光偏向装置において、
上記光偏向素子に電圧を印加していないときに上記光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成し、
上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を周期的に印加することを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
請求項1の光偏向装置において、
上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に上記光偏向素子により偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度が、上記一方向に偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度と同じとき、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成したことを特徴とする光偏向装置。
【請求項3】
請求項2の光偏向装置において、
上記電圧印加手段は、マイナス極性のときの電圧の絶対値と、プラス極性のときの電圧の絶対値とを同じ値にしたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、
上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を10KHz以上の周波数で印加することを特徴とする光偏向装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、上記光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物へ導く第1ハーフミラーと、
上記第1ハーフミラーの反射面に対して反射面が直交するように、上記第1ハーフミラーに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームのうち半分を反射する第2ハーフミラーと、
上記第2ハーフミラーから反射された光を反転させる反転ミラーとを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項6】
請求項5の光偏向装置において、
上記偏向素子に印加する電圧と同じ周期で、上記光源の光量を変化させることを特徴とする光偏向装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを反射して、上記照射対象物へ導く第1偏光ビームスプリッターと、
上記第1偏光ビームスプリッターの反射面に対して反射面が直交するように、上記第1偏光ビームスプリッターに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームを反射する第2偏光ビームスプリッターと、
上記第2偏光ビームスプリッターから反射された光を反転させる反転ミラーと、
上記反転ミラーの反射面と対向するように配置された1/4波長板とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項8】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物へ導くハーフミラーと、
上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームが入射する1/2波長板と、
上記ハーフミラーの反射面に対して反射面が直交するように、上記ハーフミラーに隣接配置され、上記1/2波長板を通過した光ビームを反射する偏光ビームスプリッターと、
上記第2偏光ビームスプリッタから反射された光を反転させる反転ミラーと、
上記反転ミラーの反射面と対向するように配置された1/4波長板とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項9】
光源と、
上記光源から発射された光束を主走査方向に偏向走査せしめる偏向手段と、
上記偏向手段によって偏向せしめられた光束を被走査面に導く複数の光学素子とを備えた光走査装置において、
上記被走査面の副走査方向のずれを調整する調整手段を設け、
上記調整手段として、請求項1乃至8いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
潜像を担持する潜像担持体と、
該潜像担持体の表面に潜像を書き込むための光書込手段とを備えた画像形成装置において、
上記光書込手段として、請求項9の光走査装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
光源と、
上記光源から出射された光ビームを偏向する電気光学効果を有する光学結晶からなる光偏向素子と、
上記光偏向素子に電圧を印加する電圧印加手段と、
上記光偏向素子から出射された光ビームを照射対象物へ導くための光学系とを備えた光偏向装置において、
上記光偏向素子に電圧を印加していないときに上記光偏向素子から出射する光ビームの光軸に対して一方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときと、上記一方向に所定角度だけ偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に所定角度だけ上記光偏向素子によって光ビームを偏向したときとで、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成し、
上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を周期的に印加することを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
請求項1の光偏向装置において、
上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に上記光偏向素子により偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度が、上記一方向に偏向された光ビームの光軸に対する偏角角度と同じとき、上記照射対象物への照射位置が同じ位置となるよう、上記光学系を構成したことを特徴とする光偏向装置。
【請求項3】
請求項2の光偏向装置において、
上記電圧印加手段は、マイナス極性のときの電圧の絶対値と、プラス極性のときの電圧の絶対値とを同じ値にしたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項4】
請求項1乃至3いずれかの光偏向装置において、
上記電圧印加手段は、上記光偏向素子に極性の異なる電圧を10KHz以上の周波数で印加することを特徴とする光偏向装置。
【請求項5】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、上記光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物へ導く第1ハーフミラーと、
上記第1ハーフミラーの反射面に対して反射面が直交するように、上記第1ハーフミラーに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームのうち半分を反射する第2ハーフミラーと、
上記第2ハーフミラーから反射された光を反転させる反転ミラーとを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項6】
請求項5の光偏向装置において、
上記偏向素子に印加する電圧と同じ周期で、上記光源の光量を変化させることを特徴とする光偏向装置。
【請求項7】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームを反射して、上記照射対象物へ導く第1偏光ビームスプリッターと、
上記第1偏光ビームスプリッターの反射面に対して反射面が直交するように、上記第1偏光ビームスプリッターに隣接配置され、上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームを反射する第2偏光ビームスプリッターと、
上記第2偏光ビームスプリッターから反射された光を反転させる反転ミラーと、
上記反転ミラーの反射面と対向するように配置された1/4波長板とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項8】
請求項1乃至4いずれかの光偏向装置において、
上記光学系は、光軸に対して一方向に偏向された光ビームのうち、半分の光を反射して、上記照射対象物へ導くハーフミラーと、
上記一方向に偏向された光ビームに対して上記光軸を挟んで反対方向に偏向された光ビームが入射する1/2波長板と、
上記ハーフミラーの反射面に対して反射面が直交するように、上記ハーフミラーに隣接配置され、上記1/2波長板を通過した光ビームを反射する偏光ビームスプリッターと、
上記第2偏光ビームスプリッタから反射された光を反転させる反転ミラーと、
上記反転ミラーの反射面と対向するように配置された1/4波長板とを備えたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項9】
光源と、
上記光源から発射された光束を主走査方向に偏向走査せしめる偏向手段と、
上記偏向手段によって偏向せしめられた光束を被走査面に導く複数の光学素子とを備えた光走査装置において、
上記被走査面の副走査方向のずれを調整する調整手段を設け、
上記調整手段として、請求項1乃至8いずれかの光偏向装置を用いたことを特徴とする光走査装置。
【請求項10】
潜像を担持する潜像担持体と、
該潜像担持体の表面に潜像を書き込むための光書込手段とを備えた画像形成装置において、
上記光書込手段として、請求項9の光走査装置を用いることを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−64773(P2013−64773A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202008(P2011−202008)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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