説明

光再生装置及び光再生方法

【課題】回折光に直流成分を付与して再生像を得るホログラム再生方法をコリニア方式で実施する場合に、再生過程で発生するノイズを低減して、SNRの高い再生像を得ることができる光再生装置を提供する。
【解決手段】記録時にレンズ20で集光された記録光は、振幅変調マスク22Kを通過するときに、光遮断部22Aにより0次の回折成分が遮断される。即ち、記録光から直流成分が除去される。また、再生時にレンズ20で集光された読出し光(参照光及び付与する直流成分)は、振幅変調マスク22Sを通過するときに、振幅調整部22Dにより0次の回折成分の振幅が調整される。即ち、振幅調整部22Dの光透過率は、0次の回折成分の振幅が適正な値となるように予め設計されており、再生時に空間光変調器18で生成された直流成分は、その振幅が所定値まで減衰されて適正な振幅となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光再生装置及び光再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホログラフィック・データ・ストレージでは、1ページ当たりのデジタルデータを二次元符号化した信号光パターンを空間光変調器に表示して、画素毎に変調された信号光を生成し、この信号光をレンズによりフーリエ変換して参照光と共に光記録媒体に照射する。信号光と参照光との干渉により、光記録媒体にはデータページのフーリエ変換ホログラムが記録される。例えば、参照光の入射角度を変化させる角度多重方式など、種々の多重方式で複数ページのホログラムを多重記録することができる。
【0003】
本出願人は、同一のホログラムからポジティブ画像とネガティブ画像の2枚の再生像を撮像し、それらを比較することによって両者に共通のノイズを相殺して、再生像のSNR(信号対雑音比)を向上させる「ホログラム再生方法」を提案している(特許文献1、2)。再生像のSNRが向上することで、多重度を増加させ、1ページ当たりのデータ量を増加させて、高記録密度を実現することができる。また、この再生方法は、直流成分を除去して記録されたホログラムの再生、及び直流成分を除去せずに記録されたホログラムの再生の何れにも適用することができる。
【0004】
これらの「ホログラム再生方法」では、読み出し用の参照光を照射してホログラムから得られる回折光に、回折光と同位相の直流成分を付与してポジティブ画像を再生している。また、ホログラムから得られる回折光に、回折光とは逆位相の直流成分を付与してネガティブ画像を再生している。回折光の位相が、読み出し用の参照光の位相からπ/2ずれるとすると、付与する直流成分の位相を参照光に対してπ/2ずらせば、回折光と付与する直流成分とは同位相又は逆位相となる。ただし、これは、ホログラムの記録媒体として、記録光の干渉縞の強度分布と、それによって形成される屈折率分布、あるいは、光吸収率の分布が同位相である場合である。そのような記録媒体の例として、フォトポリマーがある。
【0005】
一方、記録光の干渉縞の強度分布と、それによって形成される屈折率分布の位相がずれる記録媒体もある。その位相のずれ量をθとすると、読み出し用の参照光とホログラムからの回折光との位相差は、π/2+θとなる。つまり、記録媒体の種類によって、読み出し用参照光と、回折光との位相差が異なる場合がある。しかしながら、この場合も、上記と同様に、この回折光と同位相、あるいは、逆位相となるように、付与する直流成分の位相を決めれば、ポジティブ画像あるいは、ネガティブ画像が得られる。このような記録媒体の例として、フォトリフラクティブ結晶(ニオブ酸リチウム(LiNbO)やチタン酸バリウム(BaTiO)など)があり、θ=π/2である。また、アゾポリマーの場合は、θ=πである。
【0006】
近時、ホログラフィックメモリの記録再生方式として「同軸記録方式(コリニア方式)」が提案されている。このコリニア方式では、信号光と参照光とは、同じ空間光変調器により変調されて生成される。生成された信号光と参照光とは、共通の光軸として同一のレンズにより集光される。これら信号光と参照光との干渉により、光記録媒体にホログラムが記録される。参照光を読出し光として照射することで、記録されたホログラムから信号光が再生される。
【0007】
【特許文献1】特開2007−179597号公報
【特許文献2】特開2007−179595号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のコリニア方式を用いて、回折光に直流成分を付与して再生像を得るホログラム再生方法を実施する場合には、再生時に、参照光と付与する直流成分とを同じ空間光変調器で生成することになる。付与する直流成分の位相が参照光に対してπ/2ずれるように、同じ空間光変調器で位相変調を行う場合には、必要以上に大きな振幅を持つ直流成分が生成される場合がある。付与する直流成分に対し、適切な位相と適切な振幅の両方を与えることは難しい。付与する直流成分の振幅が大き過ぎると、隣接ホログラムからの散乱が大きくなり、大きなノイズが発生する。その結果、再生像が劣化するという問題を生じる。
【0009】
本発明の目的は、回折光に直流成分を付与して再生像を得るホログラム再生方法をコリニア方式で実施する場合に、再生過程で発生するノイズを低減して、SNRの高い再生像を得ることができる光再生装置及び光再生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために請求項1に記載の光再生装置は、コヒーレント光を射出する光源と、2次元状に配列された複数の画素部で構成され、信号光を生成する場合に信号光パターンを表示し且つ付与する直流成分を生成する場合には透過パターンを表示する信号光領域と、前記信号光領域を取り囲むように配置され且つ前記信号光と同軸の参照光を生成する場合に参照光パターンを表示する参照光領域とを含み、前記光源から入射した光を表示パターンに応じて画素毎に変調して出力する空間光変調器と、前記空間光変調器から出力された光を光記録媒体の記録領域に集光する集光光学系と、前記光源と前記光記録媒体との間に配置され、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の位相が変調される場合には前記付与する直流成分の振幅を変調し、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の振幅が変調される場合には前記付与する直流成分の位相を変調するように、前記付与する直流成分の振幅及び位相の少なくとも一方を変調する直流成分変調素子と、を備え、振幅及び位相が変調された直流成分と読み出し用の参照光とを、前記光記録媒体の記録領域に集光し、前記記録領域に記録されたホログラムから得られた回折光に前記直流成分を付与して、前記ホログラムから信号光を再生することを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の光再生装置は、請求項1に記載の光再生装置において、前記付与する直流成分の振幅を変調する前記直流成分変調素子は、前記光源と前記空間光変調器との間の実空間、前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の実空間、又は前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の周波数空間の何れかに在る直流成分の光路上に配置され、前記付与する直流成分の位相を変調する前記直流成分変調素子は、前記光源と前記空間光変調器との間の実空間、又は前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の実空間の何れかに在る直流成分の光路上に配置される、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の光再生方法は、2次元状に配列された複数の画素部で構成され、信号光又は付与する直流成分を生成する信号光領域と、前記信号光領域を取り囲むように配置され且つ前記信号光と同軸の参照光を生成する参照光領域とを含み、入射した光を各領域に表示されたパターンに応じて画素毎に変調して出力する空間光変調器において、前記信号光領域に前記付与する直流成分を生成するための透過パターンを表示すると共に、前記参照光領域に読出し用の参照光を生成するための参照光パターンを表示するステップと、前記空間光変調器に光源からコヒーレント光を照射して、読出し用の参照光と前記付与する直流成分とを生成するステップと、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の位相が変調される場合には前記付与する直流成分の振幅を変調し、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の振幅が変調される場合には前記付与する直流成分の位相を変調するように、前記付与する直流成分の振幅及び位相の少なくとも一方を変調するステップと、振幅及び位相が変調された直流成分と読出し用の参照光とを、光記録媒体のホログラムが記録された記録領域に集光し、前記記録領域に記録されたホログラムから得られた回折光に前記直流成分を付与して、前記ホログラムから信号光を再生するステップと、を含むことを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の光再生方法は、請求項3に記載の光再生方法において、前記空間光変調器の信号光領域に表示した透過パターンで前記付与する直流成分の位相を変調する場合には、前記付与する直流成分の振幅を変調する、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の光再生方法は、請求項3に記載の光再生方法において、前記光源から予め振幅が変調された光を前記空間光変調器に入射させて、振幅が変調された直流成分を生成する場合には、前記付与する直流成分の位相を変調する、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の光再生方法は、請求項3〜5の何れか1項に記載の光再生方法において、前記付与する直流成分の位相を変調する場合には、信号光と参照光との干渉による干渉縞の強度分布の位相とホログラムとして記録された屈折率分布の位相とのずれ量をθとして、(π/2+θ)で与えられる読出し用の参照光と回折光との位相差に基づいて、付与する直流成分と回折光の高次成分とが同位相又は逆位相となるように、前記付与する直流成分の位相を変調する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように各請求項に係る発明によれば、以下の効果がある。
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、回折光に直流成分を付与して再生像を得るホログラム再生方法をコリニア方式で実施する場合に、再生過程で発生するノイズを低減して、SNRの高い再生像を得ることができる、という効果がある。
【0018】
請求項2に記載の発明によれば、実空間又は周波数空間の何れかで直流成分の振幅を変調することができると共に、空間光変調器の下流側又は上流側に在る何れかの実空間で直流成分の位相を変調することができる、という効果がある。
【0019】
請求項3に記載の発明によれば、回折光に直流成分を付与して再生像を得るホログラム再生方法をコリニア方式で実施する場合に、再生過程で発生するノイズを低減して、SNRの高い再生像を得ることができる、という効果がある。
【0020】
請求項4に記載の発明によれば、空間光変調器により振幅が変調された直流成分に対し、位相を変調するだけでよい、という効果がある。
【0021】
請求項5に記載の発明によれば、予め振幅が変調された光を空間光変調器に入射させて振幅が変調された直流成分に対し、位相を変調するだけでよい、という効果がある。
【0022】
請求項6に記載の発明によれば、付与する直流成分と回折光の高次成分とが同位相又は逆位相となるように、付与する直流成分の位相を変調することができる、という効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態の一例を詳細に説明する。
上述した通り、記録光の干渉縞の強度分布と、それによって形成される屈折率分布の位相がずれる記録媒体もある。その位相のずれ量をθとすると、読み出し用の参照光とホログラムからの回折光との位相差は、π/2+θとなる。即ち、記録媒体の種類によって、読み出し用参照光と、回折光との位相差が異なる場合がある。以下では、簡単のため、記録媒体としてフォトポリマーを用いる場合を例にとって説明する。つまり、θ=0の場合である。しかし、記録媒体はこれに限られるものではなく、任意に選択できる。
【0024】
本発明における、付与する直流成分の位相制御に関する要点は以下の通りである。即ち、再生像を形成する、直流成分とホログラムからの回折光(高次成分)とが同位相あるいは逆位相となるように、付与する直流成分の位相を決める。そのときに考慮することは、上述したように、ホログラムの回折による位相シフト(π/2+θ)である。
【0025】
<第1の実施の形態>
第1の実施の形態では、記録時には直流成分を除去してホログラムを記録し、再生時には直流成分を付与してホログラムを再生する場合について説明する。より詳しくは、記録時には、信号光及び参照光の直流成分を除去して、直流成分が除去された信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録する。また、再生時には、読み出し用の参照光をホログラムに照射し、ホログラムから回折された回折光に直流成分を付与して、元の信号光の明暗画像又はその反転画像を再生する。付与する直流成分は、再生像を高いSNRで得られるように、その振幅及び位相が変調されている。第1の実施の形態では、付与する直流成分の位相を空間光変調器により調整し、付与する直流成分の振幅を後述する振幅変調マスクにより周波数空間で調整している。この振幅変調マスクが「直流成分変調素子」に相当する。
【0026】
(光記録再生装置の概略構成)
図1は本発明の第1の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。この光記録再生装置は、光軸を共通とする信号光と参照光とを、同じ方向から1光束の記録光として光記録媒体に照射する「同軸記録方式(コリニア方式)」の光記録再生装置である。本実施の形態では、透過型の空間光変調器(SLM:spatial light modulator)と透過型の光記録媒体とを用いる「同軸透過型」の光記録再生装置について説明する。
【0027】
光記録再生装置には、コヒーレント光であるレーザ光を発振する光源10が設けられている。光源10としては、例えば、発振波長が532nmの緑色レーザ光を発振するレーザ光源が用いられる。光源10の光出射側には、光路に対し挿入又は退避(開閉)が可能なシャッター12、直交する直線偏光成分間に1/2波長の光路差を与える1/2波長板14、所定の偏光方向の光を通過させる偏光板15、拡大・コリメート光学系であるビームエキスパンダ16、及び画素毎に入射光を変調する透過型の空間光変調器18が、光源10の側から光路に沿ってこの順に配置されている。
【0028】
透過型の空間光変調器18としては、液晶シャッターアレイ等の液晶型の空間光変調素子を用いることができる。空間光変調器18は、パターン発生器(図示せず)を介してコンピュータ等で構成された制御装置(図示せず)に接続されている。空間光変調器18の各画素部は、この制御装置により駆動制御される。また、シャッター12も、コンピュータ等の制御装置(図示せず)に接続された駆動装置(図示せず)により駆動されて開閉する。
【0029】
パターン発生器は、制御装置から供給されたデジタルデータを明暗画像で表して、空間光変調器18に表示する信号光パターンを生成する。信号光パターンは、例えば、二値のデジタルデータ「0,1」が「暗(黒画素)、明(白画素)」で表現されたデジタルパターン等である。空間光変調器18の表示面には、信号光パターンの外に、参照光パターンも表示される。参照光パターンは、例えば、ランダムパターン等である。空間光変調器18は、表示された信号光パターンや参照光パターンに応じて入射したレーザ光を変調して、信号光や参照光を生成する。空間光変調器18は、生成した信号光や参照光を、後述するレンズ20側に射出する。
【0030】
図2(A)は空間光変調器18の表示面18Aに設定された表示領域と該領域に表示される記録用パターンの一例を示す平面図である。空間光変調器18の表示面18Aには、表示面18Aの大きさ等に応じて、信号光領域18Sと参照光領域18Rとが予め設定されている。信号光領域18S及び参照光領域18Rの形状及び大きさは、適宜変更することができる。
【0031】
図2(A)に示すように、本実施の形態では、空間光変調器18の表示面18Aには、矩形状の信号光領域18Sと、この信号光領域18Sを取り囲むリング状の参照光領域18Rと、が各々配置されている。記録時、信号光領域18Sには、信号光を生成するための信号光パターンが表示される。また、記録時、参照光領域18Rには、参照光を生成するための参照光パターンが表示される。
【0032】
図2(B)は空間光変調器18の表示面18Aに表示される再生用パターンの一例を示す平面図である。再生時、参照光領域18Rには、参照光を生成するための参照光パターンが表示される。また、再生時、信号光領域18Sには、付与する直流成分を生成するための透過パターンが表示される。透過パターンは、輝度が0以外の同一輝度の画素群から構成されている。この透過パターンにより、信号光領域18Sに入射したレーザ光の振幅及び位相が均一に変調され、付与する直流成分が生成される。付与する直流成分の位相が、参照光の位相とはπ/2だけずれるように、レーザ光が変調される。
【0033】
空間光変調器18の光透過側には、レンズ20、直流成分変調素子として直流成分の振幅を調整する振幅変調マスク22、レンズ24、及びレンズ26が、空間光変調器18側から光路に沿ってこの順に配置されている。レンズ20、レンズ24、及びレンズ26の各々は、フーリエ変換レンズである。レンズ20は、入射光をフーリエ変換して集光し、振幅変調マスク22に照射する。レンズ24は、入射光を逆フーリエ変換して平行光化し、レンズ26にリレーする。また、レンズ26は、入射光をフーリエ変換して集光し、光記録媒体28に照射する。
【0034】
振幅変調マスク22は、レンズ20のフーリエ変換面に配置されている。振幅変調マスク22は、図示しない保持部材により着脱可能に保持されており、記録時と再生時とで、適宜取り替えることができる。後述する通り、記録時には、記録用の振幅変調マスク22Kを用いて、周波数空間で直流成分を除去する。また、再生時には、再生用の振幅変調マスク22Sを用いて、周波数空間で直流成分の振幅を適正な値に調整する。
【0035】
ここで、直流成分の適正な振幅値は、ホログラムからの回折光(信号光の高次成分)の強度Iと信号光パターンの白率γとで決める。ポジティブ画像を再生する場合は、10(γI/(1−γ))1/2以下であることが望ましい。さらに、望ましくは、5(γI/(1−γ))1/2以下0.5(γI/(1−γ))1/2以上である。一方、ネガティブ画像を再生する場合は、上記のγを1−γで置き換える。なぜなら、信号光パターンの反転画像の白率は、1−γであるからである。なお、振幅変調マスク22の詳細な構成については後述する。
【0036】
レンズ26の光出射側には、光記録媒体28を保持する保持ステージ(図示せず)が設けられている。保持ステージは、制御装置(図示せず)に接続された駆動装置(図示せず)により駆動されて、光軸方向又は光軸と垂直な面方向に移動する。保持ステージは、例えば、光記録媒体28の膜厚方向の中心位置がレンズ26の焦点位置となる基準位置で、光記録媒体28を保持する。
【0037】
光記録媒体28は、光照射による屈折率変化によりホログラムを記録可能な光記録媒体である。このような光記録媒体28としては、例えば、フォトポリマー材料、フォトリフラクティブ材料、銀塩感光材料等の記録材料を用いた光記録媒体が挙げられる。
【0038】
光記録媒体28の光透過側には、レンズ30及びセンサアレイ32が配置されている。レンズ30は、フーリエ変換レンズであり、入射光を逆フーリエ変換して平行光化し、センサアレイ32の受光面に再生像を結像させる。センサアレイ32は、CCDやCMOSアレイ等の撮像素子で構成され、受光した再生光を電気信号に変換して出力する。センサアレイ32は、制御装置(図示せず)に接続されている。センサアレイ32は、受光面に結像された再生像を撮像し、得られた画像データを制御装置(図示せず)に出力する。
【0039】
(振幅変調マスク)
振幅変調マスク22は、レンズ20のフーリエ変換面に配置されている。図3はフーリエ変換像を模式的に示す平面図である。空間光変調器18で生成された信号光や参照光は、レンズ20によりフーリエ変換される。ωω平面で表されるフーリエ変換面には、フーリエ変換像34が結像される。信号光パターンや参照光パターンとして、チェッカーパターンのような周期的パターンを用いた場合には、フーリエ変換像34は、パターンの周期性に起因した回折パターンとなり、0次〜n次の回折成分を有することになる。この周波数空間における0次の回折成分が「直流成分」である。
【0040】
また、ここでの次数とは、フーリエ変換レンズ(レンズ20)の焦点距離をfs、記録波長をλ、空間光変調器18の画素ピッチをd/2とした場合に、ω軸とω軸の交点38に在る0次の回折成分の輝点から、ζ=fsλ/dの距離ごとに現れる輝点の順位のことである。なお、図3では0次〜2次の回折成分を図示している。フーリエ変換像34の点線で囲った領域36には、0次〜1次の回折成分が存在する。
【0041】
何次までの回折成分を使用してホログラムの記録・再生を行うかは、適宜選択することができる。本実施の形態では、2次以上の回折成分を除去して、1次以下の回折成分だけを使用する場合について説明する。図4(A)及び(B)は振幅変調マスクの平面図である。振幅変調マスク22としては、図4(A)に示す記録用の振幅変調マスク22Kと、図4(B)に示す再生用の振幅変調マスク22Sと、が用意されている。
【0042】
図4(A)に示すように、記録用の振幅変調マスク22Kは、図3に示すフーリエ変換像34に対応して、0次の回折成分を遮断する光遮断部22Aと、1次以下の回折成分を透過する光透過部22Bと、2次以上の回折成分を遮断する光遮断部22Cと、から構成されている。振幅変調マスク22Kは、平面視が矩形状の平板であり、矩形状の光遮断部22Aと、光遮断部22Aを取り囲む外形が矩形状の光透過部22Bと、光透過部22Bを取り囲む枠状の光遮断部22Cと、が1枚の平板内に設けられている。
【0043】
図4(B)に示すように、再生用の振幅変調マスク22Sは、図3に示すフーリエ変換像34に対応して、0次の回折成分を一部透過する振幅調整部22Dと、1次以下の回折成分を透過する光透過部22Bと、2次以上の回折成分を遮断する光遮断部22Cと、から構成されている。即ち、振幅変調マスク22Sは、光遮断部22Aを振幅調整部22Dに置き換えた以外は、図4(A)に示す振幅変調マスク22Kと同じ構成を備えている。
【0044】
記録時にレンズ20で集光された記録光は、振幅変調マスク22Kを通過するときに、光遮断部22Aにより0次の回折成分が遮断される。即ち、記録光から直流成分が除去される。また、再生時にレンズ20で集光された読出し光(参照光及び付与する直流成分)は、振幅変調マスク22Sを通過するときに、振幅調整部22Dにより0次の回折成分の振幅が調整される。即ち、振幅調整部22Dの光透過率は、0次の回折成分の振幅が適正な値となるように予め設計されており、再生時に空間光変調器18で生成された直流成分は、その振幅が所定値になるまで減衰されて適正な振幅値を有するようになる。
【0045】
振幅変調マスク22は、例えば、透明基板に対し光吸収材を付加して光遮断部や振幅調整部を形成し、平板状に作製することができる。透明基板としては、ガラスやプラスチック等、使用する波長の光に対し透明な板状体を用いることができる。光吸収材としては、顔料や色素等の色材、NDフィルタ等の吸収型の光減衰器を用いることができる。光遮断部は、例えば、透明基板に黒色顔料を塗布するなど、使用する波長の光を全部吸収する光吸収材で形成することができる。振幅調整部は、例えば、透明基板にカラー顔料を塗布する、NDフィルタを貼り付けるなど、使用する波長の光を一部吸収する光吸収材で形成することができる。
【0046】
なお、上記の実施の形態では、記録時と再生時とで振幅変調マスク22を取り替える例について説明したが、図5(A)及び(B)に示すように、記録用の振幅変調マスク22Kと再生用の振幅変調マスク22Sとを1つの保持部材40に保持して、レンズ20の集光スポット42に対し保持部材40を矢印A方向に移動させてもよい。記録時には、図5(A)に示すように、レンズ20の集光スポット42が、記録用の振幅変調マスク22Kと重なるようにする。また、再生時には、図5(B)に示すように、レンズ20の集光スポット42が、再生用の振幅変調マスク22Sと重なるようにする。
【0047】
(光記録再生装置の記録・再生動作)
次に、図1に示す光記録再生装置の記録・再生の動作について説明する。
まず、ホログラムを記録する場合には、シャッター12を開いて、光源10からレーザ光を照射する。同時に、空間光変調器18に記録用パターンを表示する(図2(A)参照)。光源10から発振されたレーザ光は、シャッター12を通過し、1/2波長板14と偏光板15とにより光強度や偏光方向が調整される。例えば、偏光板15はS偏光のみを透過させる配置とし、1/2波長板14によりレーザ光の偏光方向を制御することによって、S偏光の光強度が調整される。偏光板15を通過した光は、ビームエキスパンダ16により大径の平行光に変換され、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18では、表示された記録用パターンに応じてレーザ光が変調され(S偏光→P偏光)、信号光と参照光とが生成される。
【0048】
本実施の形態では、図2(A)に示すように、空間光変調器18には信号光領域18S及び参照光領域18Rが設定されている。信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された信号光パターンに応じて変調され、信号光が生成される。また、参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、参照光が生成される。
【0049】
空間光変調器18で生成された記録光は、レンズ20で集光され、記録用の振幅変調マスク22Kに照射される。レンズ20で集光された記録光は、不要な周波数成分が振幅変調マスク22Kでカットされ、残部が振幅変調マスク22Kを通過する。即ち、振幅変調マスク22Kでは、光遮断部22Aにより0次の回折成分が遮断され(直流成分が除去され)、光遮断部22Cにより2次以上の回折成分が遮断されて、1次の回折成分だけが光透過部22Bを透過する。振幅変調マスク22Kを通過した記録光は、レンズ24により平行光に変換される。
【0050】
レンズ24により平行光に変換された記録光、即ち、直流成分が除去された信号光と参照光とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28に同時に且つ同軸で照射される。信号光と参照光とが集光される位置において、信号光と参照光とが干渉して形成された干渉縞が、光記録媒体28にホログラムとして記録される。
【0051】
光記録媒体28に記録されたデータを読み出す場合(再生時)には、シャッター12を開いて、光源10からレーザ光を照射する。同時に、空間光変調器18に再生用パターンを表示する(図2(B)参照)。光源10から発振されたレーザ光は、記録の場合と同様にして、シャッター12を通過し、1/2波長板14と偏光板15とにより光強度や偏光方向が調整され、ビームエキスパンダ16により大径の平行光に変換されて、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18では、表示された再生用パターンに応じてレーザ光が変調され、参照光と付与する直流成分とが生成される。
【0052】
本実施の形態では、図2(B)に示すように、空間光変調器18には信号光領域18S及び参照光領域18Rが設定されている。参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、読み出し用の参照光が生成される。また、信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された透過パターンに応じて変調され、参照光との位相差がπ/2の直流成分が生成される。
【0053】
空間光変調器18で生成された参照光と直流成分とは、レンズ20で集光され、再生用の振幅変調マスク22Sに照射される。レンズ20で集光された参照光と直流成分とは、不要な周波数成分が振幅変調マスク22Sでカットされ、残部が振幅変調マスク22Sを通過する。即ち、振幅変調マスク22Sでは、振幅調整部22Dにより0次の回折成分の一部が遮断され(一部は透過されて、直流成分の振幅が適正化される)、光遮断部22Cにより2次以上の回折成分が遮断されて、1次の回折成分が光透過部22Bを透過する。振幅変調マスク22Sを通過した参照光と直流成分とは、レンズ24により平行光に変換される。
【0054】
レンズ24により平行光に変換された参照光と直流成分とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28のホログラムが記録された領域に照射される。即ち、光記録媒体28には、参照光が読出し光として照射されると共に、参照光とは位相がπ/2だけずれた直流成分が照射される。照射された参照光は、光記録媒体28を透過するときにホログラムによって回折され、参照光とは位相がπ/2だけずれた透過回折光がレンズ30側に射出される。また、付与する直流成分は回折されずに光記録媒体28を透過する。その結果、参照光とは位相がπ/2だけずれた直流成分が、レンズ30側に射出される。
【0055】
射出された回折光と付与する直流成分とは、レンズ30により逆フーリエ変換されて平行光化され、センサアレイ32の受光面に再生像が結像される。直流成分が除去された信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録した場合には、読み出し用の参照光をホログラムに照射すると、直流成分が除去された信号光が回折光として再生される。この回折光に同位相の直流成分を付与することで、元の信号光が復元される。従って、センサアレイ32の受光面に結像される再生像は、回折光に直流成分が付与されて復元された元の信号光の画像である。付与する直流成分の振幅を適正な大きさとすることで、元の信号光の画像が高いSNRで再生される。
【0056】
なお、上記では、回折光に同位相の直流成分を付与することで、元の信号光の画像(ポジティブ画像)が再生される例について説明したが、回折光に逆位相の直流成分を付与することで、元の信号光の反転画像(ネガティブ画像)を得ることもできる。
【0057】
回折光の位相が参照光の位相からπ/2だけずれると共に、直流成分の位相が参照光の位相からπ/2だけずれた結果として、回折光の直流成分の位相と付与する直流成分の位相とが同位相となる場合と、回折光の直流成分の位相と付与する直流成分の位相とが逆位相となる場合と、が発生し得る。同位相となる場合には、回折光と直流成分との干渉により、正の振幅が増加しポジティブ画像が再生される。逆位相となる場合には、回折光と直流成分との干渉により、負の振幅が増加しネガティブ画像が再生される。
【0058】
センサアレイ32は、受光した光を電気信号に変換して出力する。即ち、センサアレイ32は、受光面に結像された再生像(ポジティブ画像及びネガティブ画像)を撮像し、得られた画像データを制御装置(図示せず)に出力する。これにより、得られた画像データに基づいて、信号光に重畳されたデジタルデータが復号される。なお、センサアレイ32では、信号光データの1画素を複数の受光素子により受光する、オーバーサンプリングを実施することが好ましい。例えば、1ビットのデータを4個(2×2)の受光素子により受光する。
【0059】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態では、記録時には直流成分を除去せずにホログラムを記録し、再生時には直流成分を付与してホログラムを再生する場合について説明する。より詳しくは、記録時には、信号光及び参照光の直流成分を除去せずに、信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録する。また、再生時には、読み出し用の参照光をホログラムに照射し、ホログラムから回折された回折光に直流成分を付与して、元の信号光の明暗画像又はその反転画像を再生する。付与する直流成分は、再生像を高いSNRで得られるように、その振幅及び位相が変調されている。第2の実施の形態では、付与する直流成分の位相を空間光変調器により調整し、付与する直流成分の振幅を後述する振幅変調板により実空間で調整している。この振幅変調板が「直流成分変調素子」に相当する。
【0060】
(光記録再生装置の概略構成)
図6は本発明の第2の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。この光記録再生装置は、レンズ20とレンズ24との間から振幅変調マスク22を取り除き、代わりにレンズ24とレンズ26との間の実空間に振幅変調板50を配置した以外は、図1に示す第1の実施の形態に係る光記録再生装置と同じ構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。振幅変調板50は、再生時に、レンズ24とレンズ26との間の実空間に直流成分変調素子として挿入され、付与する直流成分の振幅を実空間において適正な値に調整する。
【0061】
(振幅変調板)
図7は振幅変調板が配置された様子を示す斜視図である。振幅変調板50は、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、図示しない保持部材により保持されて、光路に対し挿入又は退避が可能に配置されている。振幅変調板50は、コンピュータ等の制御装置(図示せず)に接続された駆動装置(図示せず)により駆動されて移動する。
【0062】
空間光変調器18の信号光領域18Sで生成された光は、実空間の信号光光路52Sを通過する。一方、空間光変調器18の参照光領域18Rで生成された光は、実空間の参照光光路52Rを通過する。付与する直流成分は、空間光変調器18の信号光領域18Sで生成されるため、信号光と同様に信号光光路52Sを通過する。従って、再生時には、振幅変調板50を、付与する直流成分の光路上、即ち、信号光光路52S上に配置する。
【0063】
振幅変調板50としては、直流成分の振幅を減衰させる光減衰器を用いることができる。例えば、NDフィルタ等の直流成分を吸収する光吸収フィルタを用いることができる。また、本実施の形態のように、光源10と空間光変調器18との間に1/2波長板14と偏光板(第1偏光子)15とを配置し、偏光変調された光(例えば、P偏光又はS偏光)でホログラムの記録や再生を行う場合には、振幅変調板50として他の偏光板(第2偏光子)を回転可能に配置し、偏光板(第2偏光子)の回転角度により、付与する直流成分の振幅を調整してもよい。
【0064】
また、振幅変調板50として、直流成分の特定の偏光成分を減衰させる偏光板あるいは波長板を用いることができる。例えば、1/2波長板あるいは1/4波長板を用いて、その回転角度により付与する直流成分の振幅を調整しても良い。この場合は、振幅と共に位相も変調されるが、信号光領域18Sの輝度を制御することで、参照光に対してπ/2の位相差をもつ直流成分を生成できる。
【0065】
(光記録再生装置の記録・再生動作)
次に、図6に示す光記録再生装置の記録・再生の動作について説明する。
まず、ホログラムを記録する場合には、振幅変調板50を光路から退避させ、第1の実施の形態と同様にして、空間光変調器18により信号光と参照光とを生成する。空間光変調器18で生成された記録光は、レンズ20、レンズ24でリレーされて、平行光化される。レンズ24で平行光化された信号光は、信号光光路52Sを通過してレンズ26に入射する。レンズ24で平行光化された参照光は、参照光光路52Rを通過してレンズ26に入射する。
【0066】
レンズ26に入射された記録光、即ち、信号光と参照光とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28に同時に且つ同軸で照射される。信号光と参照光とが集光される位置において、信号光と参照光とが干渉して形成された干渉縞が、光記録媒体28にホログラムとして記録される。なお、本実施の形態では、上述した通り、記録時に、信号光及び参照光の直流成分を除去していない。
【0067】
光記録媒体28に記録されたデータを読み出す場合(再生時)には、振幅変調板50を光路に挿入し、第1の実施の形態と同様にして、空間光変調器18により参照光と付与する直流成分とを生成する。第1の実施の形態と同様に、空間光変調器18によって、参照光との位相差がπ/2の直流成分が生成される。
【0068】
空間光変調器18で生成された参照光と直流成分とは、レンズ20、レンズ24でリレーされて、平行光化される。レンズ24で平行光化された直流成分は、信号光光路52Sを通過し、信号光光路52S上に配置された振幅変調板50により振幅が適正な値に調整されてレンズ26に入射する。レンズ24で平行光化された参照光は、参照光光路52Rを通過してレンズ26に入射する。
【0069】
レンズ26に入射された参照光と直流成分とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28のホログラムが記録された領域に照射される。即ち、光記録媒体28には、参照光が読出し光として照射されると共に、参照光とは位相がπ/2だけずれた直流成分が照射される。照射された参照光は、光記録媒体28を透過するときにホログラムによって回折され、参照光とは位相がπ/2だけずれた透過回折光がレンズ30側に射出される。また、付与する直流成分は回折されずに光記録媒体28を透過する。その結果、参照光とは位相がπ/2だけずれた直流成分が、レンズ30側に射出される。
【0070】
射出された回折光と付与する直流成分とは、レンズ30により逆フーリエ変換されて平行光化され、センサアレイ32の受光面に再生像が結像される。直流成分を除去せずに信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録した場合には、読み出し用の参照光をホログラムに照射すると、元の信号光が回折光として再生される。この回折光に逆位相の直流成分を付与することで、元の信号光の反転画像が再生される。従って、センサアレイ32の受光面に結像される再生像は、回折光に直流成分が付与されて再生された元の信号光の反転画像である。付与する直流成分の振幅を適正な大きさとすることで、元の信号光の反転画像が高いSNRで再生される。センサアレイ32は、受光した光を電気信号に変換して、画像データを制御装置(図示せず)に出力する。
【0071】
また、上記では、回折光に逆位相の直流成分を付与することで、元の信号光の反転画像(ネガティブ画像)が再生される例について説明したが、回折光に直流成分を付与しないことで又は回折光に同位相の直流成分を付与することで、元の信号光の画像(ポジティブ画像)を得ることもできる。
【0072】
(変形例)
なお、上記では、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、振幅変調板50を配置する例について説明したが、図8に示すように、振幅変調板50を、ビームエキスパンダ16と空間光変調器18との間の実空間に配置してもよい。振幅変調板50は、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、図示しない保持部材により保持されて、光路に対し挿入又は退避が可能に配置されている。また、振幅変調板50は、空間光変調器18の信号光領域18Sに照射される平行光の光路上に配置されている。
【0073】
ホログラムを記録する場合には、振幅変調板50を光路から退避させる。光源10から射出されたレーザ光は、第1の実施の形態と同様にして、ビームエキスパンダ16により平行光に変換され、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18の信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された信号光パターンに応じて変調され、信号光が生成される。空間光変調器18の参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、参照光が生成される。
【0074】
ホログラムを再生する場合には、振幅変調板50を光路に挿入する。光源10から射出されたレーザ光は、第1の実施の形態と同様にして、ビームエキスパンダ16により平行光に変換され、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18の参照光領域18Rには、振幅が調整されていないレーザ光が照射される。参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、参照光が生成される。これに対し、空間光変調器18の信号光領域18Sには、振幅変調板50により振幅が調整されたレーザ光が照射される。信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された透過パターンに応じて変調され、参照光との位相差がπ/2で且つ適正な振幅を有する直流成分が生成される。
【0075】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態では、第2の実施の形態と同様に、記録時には、信号光及び参照光の直流成分を除去せずに、信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録する。また、再生時には、読み出し用の参照光をホログラムに照射し、ホログラムから回折された回折光に直流成分を付与して、元の信号光の明暗画像又はその反転画像を再生する。付与する直流成分は、再生像を高いSNRで得られるように、その振幅及び位相が変調されている。第3の実施の形態では、空間光変調器に入射する光の振幅を予め調整しておいて、空間光変調器で生成された「付与する直流成分」の位相を、後述する位相変調板により実空間で調整する。この位相変調板が「直流成分変調素子」に相当する。
【0076】
(光記録再生装置の概略構成)
図9は本発明の第3の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。この光記録再生装置は、レンズ20とレンズ24との間から振幅変調マスク22を取り除き、代わりにレンズ24とレンズ26との間の実空間に位相変調板54を配置した以外は、図1に示す第1の実施の形態に係る光記録再生装置と同じ構成であるため、同じ構成部分には同じ符号を付して説明を省略する。位相変調板54は、再生時に、レンズ24とレンズ26との間の実空間に直流成分変調素子として挿入され、付与する直流成分の位相を実空間において調整する。
【0077】
(位相変調板)
位相変調板54は、図7に示した振幅変調板50と同様に、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、図示しない保持部材により保持されて、光路に対し挿入又は退避が可能に配置されている。位相変調板54は、コンピュータ等の制御装置(図示せず)に接続された駆動装置(図示せず)により駆動されて移動する。
【0078】
空間光変調器18の信号光領域18Sで生成された光は、実空間の信号光光路52Sを通過する。一方、空間光変調器18の参照光領域18Rで生成された光は、実空間の参照光光路52Rを通過する。付与する直流成分は、空間光変調器18の信号光領域18Sで生成されるため、信号光と同様に信号光光路52Sを通過する。従って、再生時には、位相変調板54を、付与する直流成分の光路上、即ち、信号光光路52S上に配置することで、付与する直流成分の位相が参照光の位相からπ/2ずれるように変調される。
【0079】
位相変調板54としては、付与する直流成分の位相を遅延させる位相フィルタを用いることができる。例えば、付与する直流成分の位相を所定量だけ遅延させる所定厚さのガラス板を、位相フィルタとして用いることができる。上述した通り、光記録材料がフォトポリマーの場合には、回折光の位相が、読み出し用の参照光の位相からπ/2ずれる。ホログラムを照射する直流成分と参照光との関係では、付与する直流成分の位相をπ/2だけ遅延させる位相フィルタを用いることができる。他の光記録材料では、回折光と読み出し用の参照光との位相差はπ/2ではないこともあり得る。例えば、ニオブ酸リチウム(LiNbO)やチタン酸バリウム(BaTiO)などのフォトリフラクティブ結晶を用いる場合には、遅延させる位相は「0」又は「π」である。
【0080】
また、位相変調板54としては、ホログラムからの再生光(信号光の高次成分)と、付与した直流成分との位相差を0あるいはπにする位相フィルタを用いることができる。ホログラムからの回折光と付与する直流成分との関係では、位相差=0で再生像はポジ画像となり、位相差=πで再生像はネガ画像となる。
【0081】
(光記録再生装置の記録・再生動作)
次に、図9に示す光記録再生装置の記録・再生の動作について説明する。
まず、ホログラムを記録する場合には、位相変調板54を光路から退避させ、第1の実施の形態と同様にして、空間光変調器18により信号光と参照光とを生成する。空間光変調器18で生成された記録光は、レンズ20、レンズ24でリレーされて、平行光化される。レンズ24で平行光化された信号光は、信号光光路52Sを通過してレンズ26に入射する。レンズ24で平行光化された参照光は、参照光光路52Rを通過してレンズ26に入射する。
【0082】
レンズ26に入射された記録光、即ち、信号光と参照光とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28に同時に且つ同軸で照射される。信号光と参照光とが集光される位置において、信号光と参照光とが干渉して形成された干渉縞が、光記録媒体28にホログラムとして記録される。なお、本実施の形態では、上述した通り、記録時に、信号光及び参照光の直流成分を除去していない。
【0083】
光記録媒体28に記録されたデータを読み出す場合(再生時)には、位相変調板54を光路に挿入し、シャッター12を開いて、光源10からレーザ光を照射する。レーザ光源からは、位相の揃ったコヒーレント光が射出される。同時に、空間光変調器18に再生用パターンを表示する(図2(B)参照)。
【0084】
光源10から発振されたレーザ光は、記録の場合と同様にして、シャッター12を通過し、1/2波長板14と偏光板15とにより光強度や偏光方向が調整され、ビームエキスパンダ16により大径の平行光に変換されて、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18では、表示された再生用パターンに応じてレーザ光が変調され、参照光と付与する直流成分とが生成される。このとき、空間光変調器18に照射するレーザ光の振幅を、予め制限しておくことで、空間光変調器18によって、適切な振幅を有する直流成分が生成される。空間光変調器18では、付与する直流成分の位相の調整は行わない。
【0085】
空間光変調器18で生成された参照光と直流成分とは、レンズ20、レンズ24でリレーされて、平行光化される。レンズ24で平行光化された直流成分は、信号光光路52Sを通過し、信号光光路52S上に配置された位相変調板54により位相が適正な値に調整されてレンズ26に入射する。即ち、付与する直流成分は、位相変調板54により、参照光との位相差がπ/2になるように遅延される。また、レンズ24で平行光化された参照光は、参照光光路52Rを通過してレンズ26に入射する。
【0086】
レンズ26に入射された参照光と直流成分とは、レンズ26によりフーリエ変換されて集光され、光記録媒体28のホログラムが記録された領域に照射される。即ち、光記録媒体28には、参照光が読出し光として照射されると共に、参照光とは位相がπ/2だけずれ且つ振幅が適正化された直流成分が照射される。照射された参照光は、光記録媒体28を透過するときにホログラムによって回折され、参照光とは位相がπ/2だけずれた透過回折光がレンズ30側に射出される。また、付与する直流成分は回折されずに光記録媒体28を透過する。その結果、参照光とは位相がπ/2だけずれた直流成分が、レンズ30側に射出される。
【0087】
射出された回折光と付与する直流成分とは、レンズ30により逆フーリエ変換されて平行光化され、センサアレイ32の受光面に再生像が結像される。直流成分を除去せずに信号光と参照光との干渉によりホログラムを記録した場合には、読み出し用の参照光をホログラムに照射すると、元の信号光が回折光として再生される。この回折光に逆位相の直流成分を付与することで、元の信号光の反転画像が再生される。従って、センサアレイ32の受光面に結像される再生像は、回折光に直流成分が付与されて再生された元の信号光の反転画像である。付与する直流成分の振幅を適正な大きさとすることで、元の信号光の反転画像が高いSNRで再生される。センサアレイ32は、受光した光を電気信号に変換して、画像データを制御装置(図示せず)に出力する。
【0088】
(変形例1)
なお、上記では、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、位相変調板54を配置する例について説明したが、第2の実施の形態の変形例(図8参照)と同様に、位相変調板54を、ビームエキスパンダ16と空間光変調器18との間の実空間に配置してもよい。位相変調板54は、レンズ24とレンズ26との間の実空間に、図示しない保持部材により保持されて、光路に対し挿入又は退避が可能に配置されている。また、位相変調板54は、空間光変調器18の信号光領域18Sに照射される平行光の光路上に配置されている。
【0089】
ホログラムを記録する場合には、位相変調板54を光路から退避させる。光源10から射出されたレーザ光は、第1の実施の形態と同様にして、ビームエキスパンダ16により平行光に変換され、空間光変調器18に照射される。空間光変調器18の信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された信号光パターンに応じて変調され、信号光が生成される。空間光変調器18の参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、参照光が生成される。
【0090】
ホログラムを再生する場合には、位相変調板54を光路に挿入する。光源10から射出されたレーザ光は、第1の実施の形態と同様にして、ビームエキスパンダ16により平行光に変換され、空間光変調器18に照射される。上述した通り、空間光変調器18に照射するレーザ光の振幅は予め調整されている。
【0091】
空間光変調器18の参照光領域18Rには、振幅が調整されたレーザ光が照射される。参照光領域18Rに入射したレーザ光は、表示された参照光パターンに応じて変調され、参照光が生成される。これに対し、空間光変調器18の信号光領域18Sには、振幅が調整され、更に位相変調板54により位相が調整されたレーザ光が照射される。信号光領域18Sに入射したレーザ光は、表示された透過パターンに応じて変調され、参照光との位相差がπ/2で且つ適正な振幅を有する直流成分が生成される。
【0092】
(変形例2)
図9の位相変調板54の代わりに、位相と振幅の変調が可能な空間光変調器(第2空間光変調器)を用いることもできる。例えば、液晶型空間光変調器である。この場合、空間光変調器18としては、液晶型ではなく、振幅のみを変調するDMDを用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。
【図2】(A)は空間光変調器の表示面に設定された表示領域と該領域に表示される記録用パターンの一例を示す平面図であり、(B)は空間光変調器の表示面に表示される再生録用パターンの一例を示す平面図である。
【図3】フーリエ変換像を模式的に示す平面図である。
【図4】(A)及び(B)は振幅変調マスクの平面図である。
【図5】(A)及び(B)は、記録用の振幅変調マスクと再生用の振幅変調マスクとを1つの保持部材に保持する変形例を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。
【図7】振幅変調板が配置された様子を示す斜視図である。
【図8】本発明の第2の実施の形態に係る光記録再生装置の変形例の構成を示す概略図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る光記録再生装置の構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0094】
10 光源
12 シャッター
14 1/2波長板
15 偏光板
16 ビームエキスパンダ
18 空間光変調器
18R 参照光領域
18S 信号光領域
18A 表示面
20 レンズ
22 振幅変調マスク
22K 振幅変調マスク(記録用)
22S 振幅変調マスク(再生用)
22A 光遮断部
22B 光透過部
22C 光遮断部
22D 振幅調整部
24 レンズ
26 レンズ
28 光記録媒体
30 レンズ
32 センサアレイ
34 フーリエ変換像
36 領域
38 交点
40 保持部材
42 集光スポット
50 振幅変調板
52R 参照光光路
52S 信号光光路
54 位相変調板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コヒーレント光を射出する光源と、
2次元状に配列された複数の画素部で構成され、信号光を生成する場合に信号光パターンを表示し且つ付与する直流成分を生成する場合には透過パターンを表示する信号光領域と、前記信号光領域を取り囲むように配置され且つ前記信号光と同軸の参照光を生成する場合に参照光パターンを表示する参照光領域とを含み、前記光源から入射した光を表示パターンに応じて画素毎に変調して出力する空間光変調器と、
前記空間光変調器から出力された光を光記録媒体の記録領域に集光する集光光学系と、
前記光源と前記光記録媒体との間に配置され、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の位相が変調される場合には前記付与する直流成分の振幅を変調し、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の振幅が変調される場合には前記付与する直流成分の位相を変調するように、前記付与する直流成分の振幅及び位相の少なくとも一方を変調する直流成分変調素子と、
を備え、
振幅及び位相が変調された直流成分と読み出し用の参照光とを、前記光記録媒体の記録領域に集光し、前記記録領域に記録されたホログラムから得られた回折光に前記直流成分を付与して、前記ホログラムから信号光を再生する光再生装置。
【請求項2】
前記付与する直流成分の振幅を変調する前記直流成分変調素子は、前記光源と前記空間光変調器との間の実空間、前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の実空間、又は前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の周波数空間の何れかに在る直流成分の光路上に配置され、
前記付与する直流成分の位相を変調する前記直流成分変調素子は、前記光源と前記空間光変調器との間の実空間、又は前記空間光変調素子と前記光記録媒体との間の実空間の何れかに在る直流成分の光路上に配置される、
ことを特徴とする請求項1に記載の光再生装置。
【請求項3】
2次元状に配列された複数の画素部で構成され、信号光又は付与する直流成分を生成する信号光領域と、前記信号光領域を取り囲むように配置され且つ前記信号光と同軸の参照光を生成する参照光領域とを含み、入射した光を各領域に表示されたパターンに応じて画素毎に変調して出力する空間光変調器において、前記信号光領域に前記付与する直流成分を生成するための透過パターンを表示すると共に、前記参照光領域に読出し用の参照光を生成するための参照光パターンを表示するステップと、
前記空間光変調器に光源からコヒーレント光を照射して、読出し用の参照光と前記付与する直流成分とを生成するステップと、
前記空間光変調器で前記付与する直流成分の位相が変調される場合には前記付与する直流成分の振幅を変調し、前記空間光変調器で前記付与する直流成分の振幅が変調される場合には前記付与する直流成分の位相を変調するように、前記付与する直流成分の振幅及び位相の少なくとも一方を変調するステップと、
振幅及び位相が変調された直流成分と読出し用の参照光とを、光記録媒体のホログラムが記録された記録領域に集光し、前記記録領域に記録されたホログラムから得られた回折光に前記直流成分を付与して、前記ホログラムから信号光を再生するステップと、
を含む光再生方法。
【請求項4】
前記空間光変調器の信号光領域に表示した透過パターンで前記付与する直流成分の位相を変調する場合には、前記付与する直流成分の振幅を変調する、ことを特徴とする請求項3に記載の光再生方法。
【請求項5】
前記光源から予め振幅が変調された光を前記空間光変調器に入射させて、振幅が変調された直流成分を生成する場合には、前記付与する直流成分の位相を変調する、ことを特徴とする請求項3に記載の光再生方法。
【請求項6】
前記付与する直流成分の位相を変調する場合には、信号光と参照光との干渉による干渉縞の強度分布の位相とホログラムとして記録された屈折率分布の位相とのずれ量をθとして、(π/2+θ)で与えられる読出し用の参照光と回折光との位相差に基づいて、付与する直流成分と回折光の高次成分とが同位相又は逆位相となるように、前記付与する直流成分の位相を変調する、ことを特徴とする請求項3〜5の何れか1項に記載の光再生方法。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−223939(P2009−223939A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−66187(P2008−66187)
【出願日】平成20年3月14日(2008.3.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】