説明

光分解性カップリング剤

【課題】光照射の前後で接触角を大きく変化させ、光照射前においては充分な撥液性能を有すると共に、光照射後においては充分な親水性能を有することが可能な新規な光分解性カップリング剤を提供する。
【解決手段】撥液基を備えた光分解性基と、前記光分解性基に官能基(カルボキシ基、スルホ基)を介して連結された付着基(クロロシリル基又はアルコキシシリル基)とを有し、撥液基が末端にフッ化アルキル鎖を有するものであり、官能基が光分解後に水酸基を残基とするものである光分解性カップリング剤を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、疎水性から親水性に変性し得るカップリング剤、より詳しくは、光照射の前後で撥液性が大きく変化し、光照射された際に撥液性能を有する基が解離し、親水性能を有する置換基が生じる光分解性カップリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
シランカップリング剤は、異質材料間の接着性を改良する目的で使用されるほか、撥液機能の変化等による基材の化学的表面改質等にも用いられる。
例えば、下記する特許文献1においては、光分解性保護基でアミノ基、スルホ基、チオール基、又はリン酸基を保護したシラン化合物、例えば、下記一般式(1)で表されるシラン化合物や下記一般式(2)で表されるシラン化合物を含有する光分解性カップリング剤が示され、光照射により、接触角が変化する点が開示されている。
【0003】
【化1】

(一般式〔1〕中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、R1はアルキル基を表し、R2は水素原子又はアルキル基を表し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又はアルコキシ基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは整数を表す。)
【化2】

(一般式〔2〕中、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子を表し、R1はアルキル基を表し、R2は水素原子又はアルキル基を表し、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子又はアルコキシ基を表す。mは1〜3の整数を表し、nは整数を表す。)
【0004】
また、下記する特許文献2においては、UV照射によって画像化可能で、かつ単分子の厚さを有する光パターニング可能な膜(自己組織化単分子膜(SAM))を用い、このSAMの分子を下記一般式(3)で表される構造とすることで、SAMが疎水性能及び/又は疎油性能と親水性能とを呈するように構成し、分子がUV照射された際に、疎水性能及び/又は疎油性能を有する構造が解離し、親水性能を有する置換基を生じさせるようにすることが提案されている。
【0005】
【化3】

[一般式(3)中、Rは独立に水素原子、−OR(Rは炭素数1〜10のアルキル鎖を表す。)、−NH(CO)R(Rは炭素数1〜10のアルキル鎖、又は炭素数1〜10のフッ化アルキル鎖を表す。)、−N(R(Rは炭素数1〜5のアルキル鎖を表す。)、又は−S(R)(Rは炭素数1〜10のアルキル鎖を表す。)を表す。
はN−ヒドロキシコハク酸イミド基(スルフォニル基で置換されていても良い。)を表す。
は−X−(CH2)−Xlを表す。ここで、Xは−CH−又は−O−を表し、nは0又は1〜10の整数を表し、Xは−OZ,−Z,又は

を表す。Yは−(CH)−又は−O−を表し、Zは炭素数1〜20のフルオロアルキル基を表し、mは0又は1〜10の整数を表す。
は−NO又は水素原子を表す。
は水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基を表す。]
【0006】
【特許文献1】特開2003−321479号公報
【特許文献2】特開2006−104155号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述した特許文献1に示される構成において、光照射前後の接触角の変化を見ると、前記一般式(1)で表されるシラン化合物の場合は約70度から約50度に変化し(同文献の表3、表4参照)、前記一般式(2)で表されるシラン化合物の場合は約60度から約40度に変化し(同文献の表5参照)、いずれのシラン化合物も親水性能は増加するものの、光分解性基に連結された撥液基が非フッ素系であるため、光照射前後での接触角差は20度程度と小さく、表面物性が大きく変化しているとは言いがたく、実用面での利用はしにくいものである。
【0008】
また、前述した特許文献2の構成においては、光分解性基に連結された撥液基がフッ化アルキル鎖であり、高い撥液性能を期待できるが(約90〜100度)、光照射後の接触角は50度程度であり(同文献0103〜0105参照)、実用的な利用を考えると、充分に大きな接触角差が得られているとは言い難い。しかも、光分解後の残基がNHであるため、塩基処理を施しても接触角の低下を期待することができず、親水性能を一層高めること、換言すれば、接触角差をより大きくすることは難しいものであった。
【0009】
尚、特許文献2の構成においては、RがN―ヒドロキシコハク酸イミド基であるため、金薄膜等の基材を予めアミノシラン化合物の単分子膜でコートしておき、その後、この単分子膜に前記(3)式で示される分子を結合させるという2段階の操作を経て基材表面を修飾する必要があるため、操作工程が多くなる不都合もある。
【0010】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、光照射の前後で接触角を大きく変化させることができ、また、光分解後の塩基処理を可能にして親水性能を一層高めることで、光照射前の接触角との差を一層大きくすることが可能な光分解性カップリング剤を提供することを主たる課題としている。また、基材表面に対して1段階の操作で修飾することが可能な光分解性カップリング剤を提供することをも課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を達成するために、本発明者らは、光照射前後での接触角の差を充分に大きく確保することができる光分解性カップリング剤について、従来のカップリング剤の問題点を精査し、鋭意研究を重ねた結果、撥液基を供えた光分解性基と光分解後の残基との組み合わせに特徴を持たせることで、照射前後の接触角差を従来得られなかった大きなものとし、また、塩基処理による一層の接触角差の増大を可能とし、実用的に充分に利用し得る光分解性カップリング剤の合成に成功し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明に係る光分解性カップリング剤は、撥液基を備えた光分解性基と、前記光分解性基に官能基を介して連結された付着基とを有し、前記撥液基は末端にフッ化アルキル鎖を有するものであり、前記官能基は光分解後に水酸基を残基とするものであることを特徴としている。
【0013】
ここで、付着基としては、例えば、無機材料に付着可能なクロロシリル基又はアルコキシシリル基などが考えられ、そのような光分解性カップリング剤の例として、官能基がカルボキシ基であるものは、下記一般式(4)で表される構成が考えられる。
【0014】
【化4】

(一般式(4)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数を表す。)
【0015】
また、官能基がスルホ基であるものは、下記一般式(5)で表される構成が考えられる。
【0016】
【化5】

(一般式(5)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数を表す。)
【0017】
また、付着基は、クロロシリル基又はアルコキシシリル基を末端に有し、前記官能基との間にエーテル鎖を有するものであってもよく、そのような光分解性カップリング剤の例として、官能基がカルボキシ基であるものは、下記一般式(6)で表される構成が考えられる。
【0018】
【化6】

(一般式(6)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数、mは3以上の整数を表す。)
【0019】
また、官能基がスルホ基であるものは、下記一般式(7)で表される構成が考えられる。
【0020】
【化7】

(一般式(7)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数、mは3以上の整数を表す。)
【0021】
以上のようなカップリング剤において、光分解前の接触角が約110度、光分解後の接触角が約40度、光分解後に塩基処理した場合の接触角が約20度となるものが実用上望ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明に係る光分解性カップリング剤によれば、光照射前後で接触角を大きく変化させることで撥液性を大きく変化させ、光照射前においては充分な撥液性能を有すると共に、光照射後においては充分な親水性能を発揮させることが可能な光分解性カップリング剤を提供することが可能となる。
【0023】
また、官能基が光分解後に水酸基を残基とするので、光分解後に塩基処理を施すことにより、接触角を一層低下させて親水性能を高めることが可能となり、光照射前と比べた接触角差を一層大きくすることが可能となる。さらに、付着基を、例えば、クロロシリル基又はアルコキシシリル基としたり、クロロシリル基又はアルコキシシリル基を末端に有し、官能基との間にエーテル鎖を有するものとすれば、基材表面に対して1段階の操作で修飾することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の最良の実施形態を説明する。
【0025】
本発明の光分解性カップリング剤は、撥液基を備えた光分解性基と、この光分解性基に官能基を介して連結された付着基とを備え、撥液基が末端にフッ化アルキル鎖を有するものであり、また、官能基が光分解後に水酸基を残基とするものである。
【0026】
付着基としては、無機材料に付着可能なシランカップリング剤であれば、クロロシリル基又はアルコキシシリル基としても、クロロシリル基又はアルコキシシリル基を末端に有し、官能基との間にエーテル鎖を有するものであってもよい。
【0027】
また、光分解後に水酸基が残基となる官能基としては、カルボキシ基、スルホ基であることが好ましい。このような構成においては、フッ化アルキル鎖を有する光分解性基で、カルボキシ基又はスルホ基を保護したシラン化合物を含有する光分解性シランカップリング剤が構成される。
【0028】
ここで、撥液基を構成する末端にフッ化アルキル鎖を有するものは、直鎖状のものでも分岐鎖状のものでもよく、特に、疎水性を高めるためにパーフルオロアルコキシ基(C2n+1O基)が好ましい。パーフルオロアルコキシ基Rは −O(CH)(CF)Fまたはその分岐鎖異性体を含み、pは1〜10の整数であるのが好ましく、qは0または1〜10の整数であるのが好ましい。
【0029】
また、このような撥液基を備えた光分解性基は、光照射により離脱する任意の基をいい、例えば、2−ニトロベンジル誘導体骨格を有する基、ジメトキシベンゾイン基、2−ニトロピペロニルオキシカルボニル(NPOC)基、2−ニトロベラトリルオキシカルボニル(NVOC)基、α−メチル−2−ニトロピペロニルオキシカルボニル(MeNPOC)基、α−メチル−2−ニトロベラトリルオキシカルボニル(MeNVOC)基、2,6−ジニトロベンジルオキシカルボニル(DNBOC)基、α−メチル−2,6−ジニトロベンジルオキシカルボニル(MeDNBOC)基、1−(2−ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(NPEOC)基、1−メチル−1−(2−ニトロフェニル)エチルオキシカルボニル(MeNPEOC)基、9−アントラセニルメチルオキシカルボニル(ANMOC)基、1−ピレニルメチルオキシカルボニル(PYMOC)基、3′−メトキシベンゾイニルオキシカルボニル(MBOC)基、3′,5′−ジメトキシベンゾイルオキシカルボニル(DMBOC)基、7−ニトロインドリニルオキシカルボニル(NIOC)基、5,7−ジニトロインドリニルオキシカルボニル(DNIOC)基、2−アントラキノニルメチルオキシカルボニル(AQMOC)基、α,α−ジメチル−3,5−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、5−ブロモ−7−ニトロインドリニルオシキカルボニル(BNIOC)基等を挙げることができるが、2−ニトロベンジル誘導体骨格を有する基が特に好ましい。
【0030】
上述した光分解性カップリング剤であれば、特に限定されるものではないが、下記一般式(8)〜(11)で表されるシラン化合物であることが好ましい。
【0031】
【化8】

上記一般式(8)中、Xはハロゲン基又はアルコキシ基を表し、Xで表されるハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等を挙げることができるが、Xはハロゲン原子であるよりもアルコキシ基であることが好ましい。nは整数を表し、出発原料の入手の容易さの点から、1〜20の整数であることが好ましく、2〜15の整数であることがより好ましい。
【0032】
は水素原子又はアルキル基を表し、Rで表されるアルキル基は、直鎖状であっても分岐状であってもよく、また不飽和結合を有していてもよく、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基や、ホルミル基、アセチル基等のアシル基などの置換基を有していてもよい。上記アルキル基としては、炭素数が制限されるものではないが、炭素数1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基や、ビニル基、アリル基、2−プロペニル基、2−ブテニル基、2−ペンテニル基、2−ヘプチニル基等のアルケニル基や、プロパルギル基等のアルキニル基等を具体的に挙げることができ、これらの中でも特にメチル基を好適なものとして挙げることができる。
【0033】
一般式(8)中、Rは水素原子又はアルコキシ基を表す。X及びRで表されるアルコキシ基としては、炭素数は特に制限されるものではないが、炭素数1〜6のアルコキシ基であることが好ましく、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、プロポシキ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基等が挙げられるが、これらの中でもメトキシ基、エトキシ基が特に好ましい。
は、パーフルオロアルコキシ基を表す。
【0034】
【化9】

上記一般式(9)中、Xはハロゲン原子で代表されるハロゲン基又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。一般式(9)におけるX、R、R、Rについては、一般式(8)におけるX、R、R、Rと同様であり、nについても、一般式(8)におけるnと同様である。
【0035】
【化10】

上記一般式(10)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。一般式(10)におけるX、R、R、Rについては、一般式(8)におけるX、R、R、Rと同様である。nは0以上の整数、mは3以上の整数を表す。
【0036】
【化11】

一般式(11)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。一般式(11)におけるX、R、R、Rについては、一般式(8)におけるX、R、R、Rと同様である。また、n、mについても、一般式(10)におけるn、mと同様である。
【0037】
以上の各カップリング剤は、基材表面を直接修飾するための付着基を備えているので、基材に対して1段階の操作で付着させることができ、操作工程を削減することが可能となる。また、末端にフッ化アルキル鎖を有する撥液基を備えた光分解性基を有するので、基材表面に付着させた場合の接触角を大きくすることが可能となり、光照射させて撥液性能を有する基を解離させ、親水性能を有する残基(水酸基)が生じるので、光照射後においては、良好な親水性能を呈し、接触角を小さくすることが可能となる。このため、光照射前後での接触角差を大きくすることが可能となる。また、光分解後に水酸基が残基となることから、塩基処理が可能となり、接触角を一層小さくして、光照射前の接触角との差を一層大きくすることが可能となる。
【0038】
以下において、上述した光分解性カップリング剤の実施例として、末端にフッ化アルキル鎖を持つ光分解性2−ニトロベンジルエステルとしてカルボン酸やスルホン酸を保護した下記に示すシランカップリング剤1−3の合成例をあげるが、本発明は、これに限定されるものではない。尚、以下の実施例において、水とはイオン交換蒸留水を指す。
【0039】
【化12】

【実施例1】
【0040】
末端にフッ化アルキル鎖を持つ光分解性基でカルボキシ基を保護したシランカップリング剤1(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエート)は、前記一般式(8)で示すシランカップリング剤のうち、X=OCH3, n=4, R1=CH3, R2=OCH3, Rf=O(CH2)3(CF2)7CF3としたエルテル型のカップリング剤である。
【0041】
このカップリング剤1の合成経路を図1に示す。4-hydroxy-3-methoxyacetophenoneのAr-OHをbenzyl bromideにより保護し、ニトロ化、脱保護し、それぞれ4 - 6を得た。6をWilliamson法により1-iodo-1H,1H,2H,2H,3H,3H-perfluoroundecaneと反応させ7を得、還元を行なって8を得た。8と4-pentenoic acidを反応させ、前駆体9を得て、最後にKarstedt 触媒(Platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane complex)を使ったヒドロシリル化を行ないフッ化アルキル鎖を含む光分解性エステル型シランカップリング剤1を合成した。収率は図1に示す通りである。
【0042】
まず、200 mL ナスフラスコに4-hydroxy-3-methoxyacetophenone 16.9 g (0.102 mol), acetone 120 mL, K2CO314.1 g (0.102 mol) を入れ、室温で30分撹拌した。撹拌後、benzyl bromide 17.8 g (0.104 mol) を加え oil bath 上76℃で4時間還流した。その後濃縮し、H2O 100 mL を入れ chloroform 100 mL (4 times) で抽出、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、再結晶 (ethyl acetate)、真空乾燥を行ない白色固体23.5 g (4−ベンジロキシ−3−メトキシアセトフェノン) を得た(化13:(4)の合成)。
【0043】
【化13】

【0044】
上記合成した4−ベンジロキシ−3−メトキシアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield; 23.5 g (91.7 mmol, 90%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.55-7.32 (m, 7H) Ar-H
=6.89 (d, 1H, J=8.4 Hz) Ar-H
=5.24 (s, 2H) Ar-OCH2Ph
=3.95 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.55 (s, 3H) CH3CO-
FT-IR (KBr)
1670 cm-1 (C=O)
【0045】
次に、氷浴上で300 mL ナスフラスコに4-benzyloxy-3-methoxyacetophenone 21.4 g (83.5 mmol), acetic acid 100 mL, fuming HNO3 10 mL を入れ、そのまま終夜撹拌した。撹拌後、cold water 120 mL を入れ固体を析出させ、吸引ろ過を行ない、H2O で固体を洗浄、再結晶(ethyl acetate)、真空乾燥を行ない黄色固体16.9 g (4−ベンジロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)を得た(化14:(5)の合成)。
【0046】
【化14】

【0047】
上記合成した4−ベンジロキシ−3−メトキシアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield; 16.9 g (56.1 mmol, 67%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.67 (s, 1H) Ar-H
=7.35-7.46 (m, 5H) Ar-H
=6.77 (s, 1H) Ar-H
=5.22 (s, 2H) Ar-OCH2Ph
=3.98 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.49 (s, 3H) CH3CO-Ar
FT-IR (KBr)
1699 cm-1 (C=O)
1517, 1337 cm-1 (NO2)
【0048】
次に、300 mL ナスフラスコに4-benzyloxy-5-methoxy-2-nitroacetophenone 11.8 g (39.2 mmol), CF3COOH 120 mL を入れ終夜撹拌した。撹拌後、濃縮し1N NaOH 100 mL, 1N HCl 100 mL を入れ chloroform 100 mL (4 times)で抽出、5%NaHCO3 aq 100mL (1 time)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、濃縮、再結晶(chloroform-hexane)、真空乾燥を行ない黄色固体 5.72 g(4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノン)を得た(化15:(6)の合成)。
【0049】
【化15】

【0050】
上記合成した4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロアセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield; 5.72 g (27.3 mmol, 69%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.67 (s, 1H) Ar-H
=6.80 (s, 1H) Ar-H
=5.94 (s, 1H) Ar-OH
=4.02 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.49 (s, 3H) CH3CO-Ar
FT-IR (KBr)
1675 cm-1 (C=O)
1530, 1334 cm-1 (NO2)
【0051】
次に、窒素気流下で100 mL 二口ナスフラスコに4-hydroxy-5-methoxy-2-nitroacetophenone 1.01 g (4.80 mmol), dry DMF 8 mL, K2CO3 0.747 g (5.41 mmol, 1.1 eq.)を入れ室温で30分撹拌し、1-iodo-1H,1H,2H,2H,3H,3H-perfluoroundecane 2.88 g (4.90 mmol)を加えoil bath 上85℃で75分加熱撹拌した。反応後、H2O 75 mL, 2N HCl aq. 10 mL を少しずつ反応液に加え、ethyl acetate 30 mL (5 times)で抽出し、H2O 100 mL (4 times)で洗浄した。これにanhydrous MgSO4を加え乾燥、ろ過、濃縮、column chromatography (hexane : ethyl acetate = 2 : 1)による精製、真空乾燥を行い、白黄色固体2.69 g(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)アセトフェノン)を得た(化16:(7)の合成)。
【0052】
【化16】

【0053】
上記合成した5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)アセトフェノンの同定結果を以下に示す。
Yield; 2.69 g (4.01 mmol, 84%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.61 (s, 1H) Ar-H
=6.77 (s, 1H) Ar-H
=4.18 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=3.97 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.51 (s, 3H) CH3CO-Ar
=2.42-2.17 (m, 4H) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
FT-IR (KBr)
1702 cm-1 (C=O)
1524, 1347 cm-1 (NO2)
【0054】
次に、氷浴上で100 mL ナスフラスコに5-methoxy-2-nitro-4-(1H,1H,2H,2H,3H,3H-
perfluoroundecyloxy)acetophenone 1.73 g (2.58 mmol), THF 8 mL, methanol 2 mL を入れて撹拌しNaBH4 0.222 g (5.87 mmol, 2.3 eq.)を少しずつ加えた。その後、氷浴上で25分撹拌した。反応液を濃縮し、H2O 50 mL を加え、chloroform 30 mL (3 times)で抽出、H2O 50 mL (2 times) で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥を行ない黄色固体1.62 g(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エタノール)を得た(化17:(8)の合成)。
【0055】
【化17】

【0056】
上記合成した1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エタノールの同定結果を以下に示す。
Yield; 1.62 g (2.41 mmol, 93%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.58 (s, 1H) Ar-H
=7.32 (s, 1H) Ar-H
=5.59 (m, 1H) HO-CH(CH3)-Ar
=4.15 (t, 2H, J=6.2 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=3.98 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.37-2.28 (m, 2H) Ar-O(CH2)2CH2(CF2)7-
=2.21-2.17 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=1.56 (d, 3H, J=6.2 Hz) HO-CH(CH3)-Ar
IR (KBr)
3451 cm-1 (O-H)
1523, 1334 cm-1 (NO2)
【0057】
次に、窒素気流下、氷浴上で100 mL 二口ナスフラスコに1-ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride 1.67 g (8.71 mmol, 2.2 eq.), THF 10 mL を入れ10分撹拌し、[(1) 1.10 g (11.0 mmol, 2.7 eq.), (2) 2.70 g (4.02 mmol), DMAP 0.703 g] / THF 25 mL を滴下し、そのまま10分撹拌後、室温、窒素雰囲気下で16時間撹拌した。その後、反応溶液を濃縮し、H2O 80 mL, 1N HCl aq. 20 mL を加え ethyl acetate 50 mL (3 times)で抽出、5%NaHCO3aq 100 mL (2 times)で洗浄、anhydrous MgSO4 で乾燥、ろ過、濃縮、column chromatography (hexane : ethyl acetate = 2 : 1)による精製、濃縮、真空乾燥を行ない白褐色固体2.89 g(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 4−ペンテノエート)を得た(化18:(9)の合成)。
【0058】
【化18】

【0059】
上記合成した1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 4−ペンテノエートの同定結果を以下に示す。
Yield; 2.89 g (3.83 mmol, 95%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.58 (s, 1H) Ar-H
=7.02 (s, 1H) Ar-H
=6.48 (q, 1H, J=6.5 Hz) -CO2CH-Ar
=5.82 (m, 1H) CH2=CH-
=5.07-4.98 (m, 2H) CH2=CH-
=4.14 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=3.95 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.48-2.05 (m, 8H) -(CH2)2CO2-, Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=1.62 (d, 3H, J=6.4 Hz) -CO2CH(CH3)-Ar
FT-IR (KBr)
1728 cm-1 (C=O)
1522, 1338 cm-1 (NO2)
【0060】
次に、10 mL ナスフラスコに(2) 0.238 g (0.315 mmol)を入れ、真空乾燥し、その後、窒素気流下で(1) 0.341 g (2.79 mmol), Karstedt 触媒(Platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane complex, 3wt% solution in xylene) 2 dropsを加え、窒素雰囲気下にし、室温で終夜撹拌した。その後、column chromatography (hexane : ethyl acetate : TMOS = 4 : 1 : 0.2) を行い、濃縮、真空乾燥し、淡黄色固体0.143 g (1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエート)を得た(化19:(1)の合成)。
【0061】
【化19】

【0062】
上記合成した1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエートの同定結果を以下に示す。
Yield; 0.143 g (0.163 mmol, 52%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.58 (s, 1H) Ar-H
=7.01 (s, 1H) Ar-H
=6.46 (q, 1H, J=6.4 Hz) -CO2CH-Ar
=4.13 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=3.95 (s, 3H) Ar-OCH3
=3.55 (s, 9H) (CH3O)3SiCH2-
=2.41-2.28 (m, 4H) -CH2CO2-, Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=2.21-2.14 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=1.70-1.40 (m, 7H) (CH3O)3SiCH2(CH2)2-, -CO2CH(CH3)-Ar
=0.639 (t, 2H, J=8.3 Hz) (CH3O)3SiCH2CH2-
FT-IR (KBr)
1724 cm-1 (C=O)
1523, 1339 cm-1 (NO2)
【実施例2】
【0063】
末端にフッ化アルキル鎖を持つ光分解性基でカルボキシ基を保護したシランカップリング剤2(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル2−[3−(トリメトキシシリル)プロピロキシ]アセテート
)は、前記一般式(10)で示すシランカップリング剤のうち、X=OCH3, n=0, m=3, R1=CH3, R2=OCH3, Rf=O(CH2)3(CF2)7CF3としたエルテル型のカップリング剤である。
【0064】
このカップリング剤1の合成経路を図2に示す。アリルアルコールとクロロ酢酸をカップリングさせ、エーテル鎖を持つカルボン酸10を合成した。次いで、Scheme 1で合成した8とカップリングさせ、最後にKarstedt 触媒を使ったヒドロシリル化を行ない、2を得た。収率は図2に示す通りである。
【0065】
まず、窒素雰囲気下で氷浴中の100 mL 二口ナスフラスコに61 % NaH 2.98 g (75.8 mmol, 2.2 eq)を入れdry hexane (20 mL×2 times)でNaHの油分を洗浄し、dry THF 15 mLを滴下して入れ撹拌した。次いでdry THF 15 mLに溶解したallyl alcohol 2.01 g (34.6 mmol)を滴下し、15分撹拌した。その後dry THF 30 mLに溶解したchloroacetic acid 3.25 g (34.4 mmol)を滴下し5分撹拌し、氷浴を外して室温で180分撹拌した。ここで溶液がゲル化していたのでdry THF 30 mLを加え終夜撹拌した。これをエバポレーターで濃縮し、H2O 180 mL、2N HCl 20 mL加えて、chloroform (50 mL×4 times)で抽出した。chloroform層を洗浄(sat. NaCl 40 mL×3 times)後、anhydrous MgSO4で乾燥し、ろ過、濃縮、真空乾燥を行い黄色液体と無色液体の混合物3.26 g(2−(2−プロペニロキシ)アセチックアシド)を得た(化20:(10)の合成)。
【0066】
【化20】

【0067】
上記合成した2−(2−プロペニロキシ)アセチックアシドの同定結果を以下に示す。
Crude Yield 3.36 g (27.6 mmol) 80 %
1H-NMR (CDCl3 / TMS) 400 MHz
δ=4.12, 4.14 (4H, m) -CH2-O-CH2-CO
=5.31 (2H, m) CH2=CH-
=5.91 (1H, m) CH2=CH-
IR (NaCl)
1732 cm-1 (CO)
3084 cm-1 (OH)
【0068】
次に、窒素雰囲気下で氷浴中の50mL二口ナスフラスコに1-ethyl-3-(dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride 0.43 g (2.24 mmol, 3.0 eq)とTHF 10mLを入れ撹拌した。これに、1-[5-methoxy-2-nitro-4-(1H,1H,2H,2H,3H,3H-perfluoroundecyloxy)phenyl]ethanol 0.50 g (0.74 mmol),2-(2-propenyloxy)acetic acid 0.27 g (2.29 mmol, 3.1 eq),DMAP 0.10 g (0.82 mmol, 1.1 eq),THF 10 mLを窒素雰囲気下で滴下、室温で終夜撹拌し、これを濃縮した。H2O 90 mL,2N HCl 10 mLを加えてethyl acetate (50 mL × 3 times)で抽出し、ethyl acetate層を5% NaHCO3 (30 mL × 3 times)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥し、ろ過、濃縮、真空乾燥を行った。カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate = 4 : 1)により分離精製し、濃縮、真空乾燥を行い黄色固体0.42 g(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 2−(2−プロペニロキシ)アセテート)を得た(化21:(11)の合成)。
【0069】
【化21】

【0070】
上記合成した1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 2−(2−プロペニロキシ)アセテートの同定結果を以下に示す。
Yield 0.42 g (0.54 mmol) 73 %
1H-NMR (CDCl3 / TMS) 400 MHz
δ = 1.65 (3H, d, J = 6.4 Hz) -CH-CH3
= 2.16 ~ 2.21 (2H, m) Ar-O-CH2-CH2-CH2-(CF2)7CF3
= 2.32 ~ 2.34 (2H, m) Ar-O-CH2-CH2-CH2-(CF2)7CF3
= 3.94 (3H, s) Ar-OCH3
= 4.07 ~ 4.16 (6H, m) Ar-O-CH2-(CH2)2(CF2)7CF3, CH2-CO2
= 5.21 ~ 5.32 (2H, m) CH2=CH-
= 5.87 ~ 5.94 (1H, m) CH2=CH-
= 6.59 (1H, q, J = 6.4 Hz) -CO2-CH-Ar
= 7.04 (1H, s) Ar-H
= 7.59 (1H, s) Ar-H
IR (KBr)
1338 and 1523 cm-1 (NO2)
1745 cm-1 (CO)
【0071】
次に、1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 2−(2−プロペニロキシ)アセテート 0.41 g(0.53 mmol)を20 mLナスフラスコに入れ真空乾燥3時間行った。その後、trimethoxysilane 0.47 g(3.85 mmol),Karstedt触媒を4滴入れ、窒素雰囲気下において室温で終夜間撹拌した。中圧カラムクロマトグラフィー(hexane : ethyl acetate : tetramethoxysilane = 4 : 1 : 0.10)を行い単離精製し、濃縮した。真空乾燥(湯浴中60℃)を行い黄色粘体0.16 g(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル2−[3−(トリメトキシシリル)プロピロキシ]アセテート)を得た(化22:(2)の合成)。
【0072】
【化22】

【0073】
上記合成した1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル2−[3−(トリメトキシシリル)プロピロキシ]アセテートの同定結果を以下に示す。
Yield 0.16 g (0.18 mmol) 34 %
1H-NMR (CDCl3 / TMS) 500 MHz
δ = 0.68 (2H, t, J = 8.3 Hz) -Si-CH2-CH2-
= 1.65 (3H, d, J = 6.4 Hz) -CH-CH3
= 1.72 (2H, quint, J = 7.5 Hz) -Si-CH2-CH2-CH2-
= 2.16 ~ 2.19 (2H, m) Ar-O-CH2-CH2-CH2-(CF2)7CF3
= 2.32 (2H, m) Ar-O-CH2-CH2-CH2-(CF2)7CF3
= 3.50 (2H, t, J = 6.7 Hz) -CH2-O-CH2-CO2
= 3.56 (9H, s) (CH3O)3-Si-
= 4.09 ~ 4.15 (4H, m) Ar-O-CH2-(CH2)2(CF2)7CF3,
-CH2-O-CH2-CO2-
= 6.57 (1H, q, J = 6.4 Hz) -CO2-CH-Ar
= 7.03 (1H, s) Ar-H
= 7.58 (1H, s) Ar-H
IR (KBr)
1367 and 1522 cm-1 (NO2)
1755 cm-1 (CO)
【実施例3】
【0074】
末端にフッ化アルキル鎖を持つ光分解性基でスルホ基を保護したシランカップリング剤3(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 4−(トリメトキシシリル)ブタンスルフォネート)は、前記一般式(9)で示すシランカップリング剤のうち、X=OCH3, n=4, R1=H, R2=OCH3, Rf=O(CH2)3(CF2)7CF3としたスルホネート型のカップリング剤である。
【0075】
このカップリング剤1の合成経路を図3に示す。4-bromo-1-buteneをスルホ化し、thionyl chlorideとの反応により12を合成した。Vanillineの-OHをbenzyl bromideにより保護し、ニトロ化、脱保護し13 - 15を得た。15をWilliamson法により1-iodo-1H,1H,2H,2H,3H,3H-perfluoroundecaneと反応させ16を得、還元を行なって17を得た。1712を反応させ、前駆体のスルホネート18を得て、最後にKarstedt 触媒を使ったヒドロシリル化を行ないフッ化アルキル鎖を含む光分解性スルホネート型シランカップリング剤3を合成した。収率は図3に示す通りである。
【0076】
先ず、300 mL ナスフラスコに4-bromo-1-butene 4.05 g (30.0 mmol)を入れ、EtOH 150 mL, H2O 30 mL を加えた。oil bath 上でこれに sodium sulfite 3.81 g (30.2 mmol)をH2O 50 mL に溶かしたものを滴下し、その後90℃で6時間還流した。これを濃縮し、湯浴60℃で真空乾燥を行ない白色固体を得た。これにice bath 上、窒素気流下でdry DMF 15 mL を加え、thionyl chloride 10mL, dry DMF 15 mL を滴下し40分撹拌した。その後、ice bath を外し、室温で40分撹拌した。その後 ice water 100 mL に入れ、hexane 100 mL (4 times)で抽出し、water 100 mL (4 times)で洗い、anhydrous MgSO4 で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥し、黄色液体 2.11 g(3−ブテネスルフォニルクロライド)を得た(化23:(12)の合成)。
【0077】
【化23】

【0078】
上記合成した3−ブテネスルフォニルクロライドの同定結果を以下に示す。
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=5.90-5.83 (m, 1H) CH2=CH-
=5.29-5.23 (m, 2H) CH2=CH-
=3.77 (m, 2H) -CH2CH2SO2-
=2.83 (m, 2H) -CH2CH2SO2-
FT-IR (NaCl)
1649 cm-1 (C=C)
1373, 1166 cm-1 (S=O)
【0079】
次に、200 mL ナスフラスコにvanilline 16.5 g (0.109 mol), acetone 130 mL, K2CO3 15.1 g (0.109 mol)を入れ、室温で25分撹拌した。撹拌後、benzyl bromide 18.6 g (0.109 mol) を加えoil bath 上66℃で4時間還流した。その後濃縮し、H2O 200 mL を入れ chloroform 100 mL (3 times) で抽出、H2O 100 mL (2 times)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、再結晶(ethyl acetate-hexane)、真空乾燥を行ない、白色固体 20.6 g(4−ベンジロキシ−3−メトキシベンザルデヒド)を得た(化24:(13)の合成)。
【0080】
【化24】

【0081】
上記合成した4−ベンジロキシ−3−メトキシベンザルデヒドの同定結果を以下に示す。
Yield; 20.6 g (85.0 mmol, 78%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=9.84 (s, 1H) CHO-Ar
=7.45-7.31 (m, 7H) Ar-H
=6.99 (d, 1H, J=8.2 Hz) Ar-H
=5.26 (s, 2H) Ar-OCH2Ph
=3.96 (s, 3H) Ar-OCH3
FT-IR (KBr)
1675 cm-1 (C=O)
【0082】
次に、氷浴上で300 mL ナスフラスコに4-benzyloxy-3-methoxybenzaldehyde 21.5 g (88.7 mmol), acetic acid 180 mL を入れ撹拌し、冷えたところでfuming HNO3 44 mL を1.5時間かけて滴下した。そのまま3時間撹拌した後氷浴を外し24時間撹拌した。撹拌後、反応溶液をcold water 300 mL の中に入れ固体を析出させ、吸引ろ過を行ない、H2Oで固体を洗浄、固体をethyl acetate に溶かしanhydrous MgSO4で乾燥、濃縮、再結晶(ethyl acetate)、真空乾燥を行ない黄色固体18.9 g (4−ベンジロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンザルデヒド)を得た(化25:(14)の合成)。
【0083】
【化25】

【0084】
上記合成した4−ベンジロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンザルデヒドの同定結果を以下に示す。
Yield; 18.9 g (65.9 mmol, 74%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=10.4 (s, 1H) CHO-Ar
=7.67 (s, 1H) Ar-H
=7.47-7.35 (m, 6H) Ar-H
=5.28 (s, 2H) Ar-OCH2Ph
=5.02 (s, 3H) Ar-OCH3
FT-IR (KBr)
1678 cm-1 (C=O)
1510, 1330 cm-1 (NO2)
【0085】
次に、氷浴上で300 mL ナスフラスコに4-benzyloxy-5-methoxy-2-nitrobenzaldehyde 16.0 g (55.7 mmol), CF3COOH 100 mL を入れ54℃で2時間撹拌し、温度を60℃に上げて1.5時間撹拌し、反応後、反応液をcold hexane 300 mL に入れて固体を析出させた。吸引ろ過を行ないhexaneで固体を洗浄、真空乾燥を行ない暗黄色固体10.5 g (4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンザルデヒド)を得た(化26:(15)の合成)。
【0086】
【化26】

【0087】
上記合成した4−ヒドロキシ−5−メトキシ−2−ニトロベンザルデヒドの同定結果を以下に示す。
Yield; 10.5 g (53.2 mmol, 96%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=10.4 (s, 1H) CHO-Ar
=7.68 (s, 1H) Ar-H
=7.46 (m, 5H) Ar-H
=6.22 (s, 1H) Ar- OH
=4.07 (s, 2H) Ar-OCH3
FT-IR (KBr)
3163 cm-1 (O-H)
1673 cm-1 (C=O)
1522, 1327 cm-1 (NO2)
【0088】
次に、窒素気流下で50 mL 二口ナスフラスコに6-nitrovanilline 1.55 g (7.84 mmol), dry DMF 10 mL, K2CO3 1.16 g (8.39 mmol)を入れ室温で20分撹拌し、1-iodo-1H,1H,2H,2H,3H,3H-perfluoroundecane 4.63 g (7.87 mmol)を加えoil bath 上86℃で80分加熱撹拌した。反応後、冷水70 mL, 1N HCl aq. 10 mL を少しずつ反応液に加え、ethyl acetate 50 mL (3times)で抽出、sat. NaCl aq. 100 mL (6 times)による洗浄、anhydrous MgSO4を加え乾燥、ろ過、濃縮、column chromatography (hexane : ethyl acetate = 2 : 1)による精製、真空乾燥を行い、淡黄色固体4.47 g (5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンザルデヒド)を得た(化27:(16)の合成)。
【0089】
【化27】

【0090】
上記合成した5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンザルデヒドの同定結果を以下に示す。
Yield; 4.47 g (6.80 mmol, 87%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=10.46 (s, 1H) CHO-Ar
=7.61 (s, 1H) Ar-H
=7.43 (s, 1H) Ar-H
=4.24 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=4.01 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.43-2.20 (m, 4H) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
FT-IR (KBr)
1687 cm-1 (C=O)
1523, 1335 cm-1 (NO2)
【0091】
次に、氷浴上で100 mL ナスフラスコに5-methoxy-2-nitro-4-(1H,1H,2H,2H,3H,3H-
perfluorodecyloxy)benzaldehyde 1.11 g (1.70 mmol), THF 10 mLを入れて撹拌しNaBH40.138 g (3.65 mmol, 2.2 eq.)を少しずつ加えた。その後、氷浴上で30分、室温で20分撹拌した。反応液を濃縮し、H2O 100 mL を加え、chloroform 50 mL (4 times)で抽出、H2O 100 mL (2 times) で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、真空乾燥を行ない淡黄色固体0.957 g(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジルアルコホール)を得た(化28:(17)の合成)。
【0092】
【化28】

【0093】
上記合成した5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジルアルコホールの同定結果を以下に示す。
Yield; 0.957 g (1.45 mmol, 86%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.71 (s, 1H) Ar-H
=7.20 (s, 1H) Ar-H
=4.97 (s, 2H) HO-CH2-Ar
=4.16 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=4.00 (s, 3H) Ar-OCH3
=2.70 (br, 1H) HO-CH2-Ar
=2.43-2.29 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=2.18 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
FT-IR (KBr)
3420 cm-1 (OH)
1523, 1326 cm-1 (NO2)
【0094】
次に、氷浴上、窒素気流下で50 mL 二口ナスフラスコに(1) 0.570 g (3.73 mmol, 2.1 eq.), THF 3 mLを入れ、[(2) 1.18 g (1.80 mmol), DMAP 0.091 g, Et3N 1 mL ] / THF 12 mL を滴下した。そのまま窒素雰囲気下で10分撹拌して、反応溶液を濃縮し、H2O 80 mL, 1N HCl aq. 20 mL を加え ethyl acetate 30 mL (3 times)で抽出、sat. NaCl aq. 50 mL (2 times)で洗浄、anhydrous MgSO4で乾燥、ろ過、濃縮、column chromatography (hexane : ethyl acetate = 4 : 1)による精製、濃縮、真空乾燥を行ない黄褐色固体0.854 g(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 3−ブテンスルフォネート)を得た(化29:(18)の合成)。
【0095】
【化29】

【0096】
上記合成した5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 3−ブテンスルフォネートの同定結果を以下に示す。
Yield; 0.854g (1.10 mmol, 61%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.75 (s, 1H) Ar-H
=7.19 (s, 1H) Ar-H
=5.84 (m, 1H) CH2=CHCH2-
=5.66 (s, 2H) -SO3CH2-Ar
=5.21-5.14 (m, 2H) CH2=CHCH2-
=4.17 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2(CH2)2(CF2)7-
=3.99 (s, 3H) Ar-OCH3
=3.31 (t, 2H, J=7.9 Hz) CH2=CHCH2CH2SO3-
=2.67 (q, 2H, J=7.8 Hz) CH2=CHCH2CH2SO3-
=2.42-2.31 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=2.23-2.18 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
【0097】
次に、10 mL ナスフラスコに(2) 51.5 g (66.2 μmol) を入れ、真空乾燥し、その後、窒素気流下で (1) 0.383 g (3.13 mmol), Karstedt 触媒 4 dropsを加え、窒素雰囲気下にし、室温で終夜撹拌した。その後、column chromatography (hexane : ethyl acetate : TMOS = 4 : 1 : 0.2) を行ない、濃縮、真空乾燥し、白色固体0.031g(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 4−(トリメトキシシリル)ブタンスルフォネート) を得た(化30:(3)の合成)。
【0098】
【化30】

【0099】
上記合成した5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 4−(トリメトキシシリル)ブタンスルフォネートの同定結果を以下に示す。
Yield; 31 mg (34.4μmol, 52%)
1H-NMR (CDCl3/TMS) 400 MHz
δ=7.74 (s, 1H) Ar-H
=7.20 (s, 1H) Ar-H
=5.65 (s, 2H) -SO3CH2-Ar
=4.17 (t, 2H, J=6.0 Hz) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=3.99 (s, 3H) Ar-OCH3
=3.57 (s, 9H) (CH3O)3SiCH2-
=3.23 (t, 2H, J=7.6 Hz) -CH2CH2SO3-
=2.42-2.29 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=2.23-2.16 (m, 2H) Ar-OCH2CH2CH2(CF2)7-
=1.96 (quint, 2H, J=7.7 Hz) -CH2CH2SO3-
=1.64-1.58 (m, 2H) (CH3O)3CH2CH2-
=0.682 (t, 2H, J=8.2 Hz) (CH3O)3CH2-
FT-IR (KBr)
1527, 1335 cm-1 (NO2)
1361, 1150 cm-1 (S=O)
【0100】
以上の工程で得られたシランカップリング剤1(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエート)、シランカップリング剤2(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル2−[3−(トリメトキシシリル)プロピロキシ]アセテート)、及びシランカップリング剤3(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 4−(トリメトキシシリル)ブタンスルフォネート)を用いたシリコンウェハの表面修飾・光照射による接触角の値は、それぞれ表1に示す通りである。
【0101】
【表1】

【0102】
シリコンウェハの表面修飾は1, 3のbenzene溶液(about 2.0-3.5 mM)で60分還流、あるいは2のtoluene溶液で180分還流することにより行なった。その結果、110°付近まで接触角は上がり、表面が撥水性となることを示した。この状態で光照射すると、光分解は次式のようになされ、この光照射(λ>300 nm)によって官能基へ変換した。12からカルボキシ基へ変換したときは、それぞれ61°と56°であったのに対し、3からスルホ基へ変換したときには36°とより親水性となった。カルボン酸エステル型の1, 2で修飾された表面はスルホネート型の3よりも光分解に要するエネルギーは少なかった。これは官能基の違いによるものではなく、光分解性基(ベンジル位にメチル基がある、ない)の違いであると考えられる。
【0103】
また、上述したシランカップリング剤1及びシランカップリング剤3の0.2w%トルエン溶液に、室温で15分間シリコン基板を漬け込み、乾燥後110℃ホットプレート上で15分間熱処理を行った。その接触角はいずれも110°であった。350nmカットフィルターにて350nm以下の光をカットした高圧水銀灯からの光を、基板に照射させた後、110℃ホットプレートで15分熱処理し、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38w%水溶液に1分間漬け込み、その後純水で洗浄した。3で修飾した基板に対する照射時間と接触角の関係を図4に示す。25J/cm2の照射で、トルエンで洗浄した場合は接触角が42°になるのに対し、TMAHで洗浄した場合は、20°となった。1で修飾した基板は、TMAH洗浄後で40°であった。したがって、光照射後において、塩基処理の処理剤を適切に選択することで、光照射後の接触角を一層低下させることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】図1は、シランカップリング剤1(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル 5−(トリメトキシシリル)ペンタノエート)を合成する過程を示す図である。
【図2】図2は、シランカップリング剤2(1−[5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)フェニル]エチル2−[3−(トリメトキシシリル)プロピロキシ]アセテート)を合成する過程を示す図である。
【図3】図3は、シランカップリング剤3(5−メトキシ−2−ニトロ−4−(1H,1H,2H,2H,3H,3H−パーフルオロウンデシロキシ)ベンジル 4−(トリメトキシシリル)ブタンスルフォネート)を合成する過程を示す図である。
【図4】図4は、シランカップリング剤3で修飾した基板に対する照射時間と接触角の関係を示す特性線図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撥液基を備えた光分解性基と、前記光分解性基に官能基を介して連結された付着基とを有し、
前記撥液基は末端にフッ化アルキル鎖を有するものであり、
前記官能基は光分解後に水酸基を残基とするものであることを特徴とする光分解性カップリング剤。
【請求項2】
前記付着基は、クロロシリル基又はアルコキシシリル基であることを特徴とする請求項1記載の光分解性カップリング剤。
【請求項3】
下記一般式(1)で表されることを特徴とする請求項1又は2記載の光分解性カップリング剤。

(一般式(1)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数を表す。)
【請求項4】
下記一般式(2)で表されることを特徴とする請求項1又は2記載の光分解性カップリング剤。

(一般式(2)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数を表す。)
【請求項5】
前記付着基は、クロロシリル基又はアルコキシシリル基を末端に有し、前記官能基との間にエーテル鎖を有するものであることを特徴とする請求項1記載の光分解性カプリング剤。
【請求項6】
下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項1又は5記載の光分解性カップリング剤。

(一般式(3)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数、mは3以上の整数を表す。)
【請求項7】
下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1又は5記載の光分解性カップリング剤。

(一般式(4)中、Xはハロゲン原子又はアルコキシ基を表し、Rは水素原子又はアルキル基を表し、Rは水素原子又はアルコキシ基を表し、Rはパーフルオロアルコキシ基を表す。nは0以上の整数、mは3以上の整数を表す。)
【請求項8】
光分解前の接触角が約110度、光分解後の接触角が約40度、光分解後に塩基処理した場合の接触角が約20度となることを特徴とする請求項1記載の光分解性カップリング剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−50321(P2008−50321A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−230368(P2006−230368)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【出願人】(592218300)学校法人神奈川大学 (243)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】