説明

光半導体素子の製造方法

【課題】樹脂上の絶縁膜におけるクラックの発生を抑制することができる光半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】メサ構造14が主面2a上に形成された半導体基板2の主面2a上に樹脂を塗布し、メサ構造14を誘電体樹脂層9によって埋め込む。メサ構造14上の誘電体樹脂層9に対してエッチングを行い、誘電体樹脂層9に開口9aを形成することによりコンタクト層13を露出させる。コンタクト層13及び誘電体樹脂層9を覆う絶縁膜16を形成する。メサ構造14上の絶縁膜16に対してエッチングを行い、絶縁膜16に開口16aを形成することによりコンタクト層13を再び露出させる。このとき、開口16aの一端部16cは、主部16bと比べて幅広の部分を有する。その後、メサ構造14上に電極50を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、光半導体素子及びその製造方法が開示されている。この光半導体素子は、光導波路を含むメサ構造と、該メサ構造を埋め込む樹脂層とを備えている。メサ構造上には樹脂層の開口が形成されており、樹脂層の表面及び該開口の側面は絶縁膜によって覆われている。メサ構造上には、メサ構造に電流を供給するための電極が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−205025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
いわゆるリッジ構造やハイメサ構造といったメサ構造の側面が、樹脂によって埋め込まれた構造を備える光半導体素子がある(例えば特許文献1を参照)。図12は、このような光半導体素子の構造例を示す断面図であり、光導波方向に垂直な断面を示している。図12に示される光半導体素子100は、半導体基板101と、半導体基板101上に設けられた光導波路層102と、光導波路層102上に設けられたクラッド層103と、クラッド層103上に設けられたコンタクト層104とを備えている。光導波路層102、クラッド層103及びコンタクト層104は、光導波方向に延びるメサ構造105を構成している。メサ構造105の両側面は、絶縁膜106によって覆われている。また、メサ構造105の両側方には樹脂層107が設けられており、樹脂層107によってメサ構造105が埋め込まれている。コンタクト層104の上方には、絶縁膜106及び樹脂層107の開口が形成されており、樹脂層107の表面上及び該開口の側面上には、絶縁膜110が形成されている。樹脂層107の開口内にはオーミック電極膜108が形成されており、オーミック電極膜108はコンタクト層104と接触している。オーミック電極膜108上及び樹脂層107上にわたって、メッキ配線層109が設けられている。
【0005】
図12に示された構造を備える光半導体素子は、例えば以下の方法によって作製される。まず、光導波路層102、クラッド層103、及びコンタクト層104を半導体基板101上に成長させる。次に、所定の光導波方向に延びるエッチングマスクをコンタクト層104上に形成する。そして、このエッチングマスクを用いてコンタクト層104、クラッド層103、及び光導波路層102をエッチングすることにより、これらの層102〜104を含むメサ構造105を形成する。この後、エッチングマスクを除去する。
【0006】
続いて、メサ構造105および半導体基板101を覆う絶縁膜106を形成したのち、半導体基板101上に樹脂層107を塗布することにより、メサ構造105を埋め込む。そして、メサ構造105上に開口を有するレジストマスクを樹脂層107上に形成し、このレジストマスクを用いて樹脂層107及び絶縁膜106をエッチングすることにより、樹脂層107及び絶縁膜106に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を露出させる。この後、レジストマスクを除去する。
【0007】
続いて、樹脂層107の表面及び開口、並びに露出したコンタクト層104を覆うように絶縁膜110を形成する。そして、メサ構造105上に開口を有するレジストマスクを絶縁膜110上に形成したのち、このレジストマスクを用いて絶縁膜110をエッチングすることにより、絶縁膜110に開口を形成してメサ構造105のコンタクト層104を再び露出させる。
【0008】
続いて、レジストマスクを除去したのち、コンタクト層104上にオーミック電極膜108を形成し、更に、オーミック電極膜108上から樹脂層107上にかけてメッキ配線層109を形成する。こうして、図12に示された構造を備える光半導体素子100が作製される。
【0009】
しかしながら、上述した製造方法には、次のような課題がある。図13は、絶縁膜110をエッチングしてメサ構造105のコンタクト層104を露出させた後の状態を示す斜視図であって、光導波方向における絶縁膜110の開口の一端部付近を示している。上述した製造方法では絶縁膜110に開口110aを形成するが、これにより、メサ構造105の両側に位置する絶縁膜110は、互いに分離されることとなる。したがって、これらの絶縁膜110には、例えば樹脂層107の圧縮応力などに起因して、外側方へ向かう応力(図中の矢印A1)が働く。そして、この応力によって、光導波方向における開口110aの端部に応力集中が生じる。この応力集中によって、絶縁膜110には、図13に示されるクラックCRが発生する。クラックCRは、光半導体素子100の長期にわたる信頼性に影響を及ぼすおそれがある。
【0010】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、樹脂上の絶縁膜におけるクラックの発生を抑制することができる光半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するために、本発明による光半導体素子の第1の製造方法は、(1)所定の光導波方向に延びるメサ構造が主面上に形成された基板の主面上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(2)メサ構造上の樹脂に対してエッチングを行い、樹脂に第1の開口を形成することによりメサ構造の頂部を露出させる樹脂エッチング工程と、(3)メサ構造の頂部及び樹脂を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(4)メサ構造上の絶縁膜に対してエッチングを行い、絶縁膜に第2の開口を形成することによりメサ構造の頂部を再び露出させる絶縁膜エッチング工程と、(5)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有し、第2の開口が、光導波方向に延びる主部と、光導波方向における該主部の両端に位置する一端部及び他端部とを有し、一端部及び他端部のうち少なくとも一方が、主部と比べて幅広の部分を有することを特徴とする。
【0012】
この第1の製造方法では、絶縁膜エッチング工程において絶縁膜に第2の開口を形成する際、第2の開口の一端部及び他端部のうち少なくとも一方を、主部と比べて幅広の部分を有するように形成する。第2の開口の端部をこのような形状に形成することによって、絶縁膜の外側方へ向かう応力A1(図13参照)が第2の開口の端部に集中したときの集中応力の大きさを低減し、絶縁膜におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0013】
また、上述した第1の製造方法は、第2の開口の一端部及び他端部のうち少なくとも一方の輪郭が、所定の曲率半径を有する180°より広角の円弧によって構成されており、所定の曲率半径が主部の幅の半分より大きいことを特徴としてもよい。絶縁膜の第2の開口の端部がこのような形状を有することによって、第2の開口の端部に集中する応力をより効果的に低減することができる。
【0014】
また、本発明による光半導体素子の第2の製造方法は、(1)所定の光導波方向に延びるメサ構造が主面上に形成された基板の主面上に樹脂を塗布し、メサ構造を樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、(2)メサ構造上の樹脂に対してエッチングを行い、樹脂に第1の開口を形成することによりメサ構造の頂部を露出させる樹脂エッチング工程と、(3)メサ構造の頂部及び樹脂を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、(4)メサ構造上の絶縁膜に対してエッチングを行い、絶縁膜に第2の開口を形成することによりメサ構造の頂部を再び露出させる絶縁膜エッチング工程と、(5)メサ構造上に電極を形成する電極形成工程とを有し、(6)絶縁膜エッチング工程の際に、光導波方向における第2の開口の一端部及び他端部のうち少なくとも一方を、第1の開口の外部に形成することを特徴とする。
【0015】
この第2の製造方法では、絶縁膜エッチング工程において絶縁膜に第2の開口を形成する際、第2の開口の一端部及び他端部のうち少なくとも一方を、樹脂の第1の開口の外部に形成する。第2の開口の端部をこのような位置に形成することによって、絶縁膜の外側方へ向かう応力A1(図13参照)が第2の開口の端部に集中したときの集中応力の大きさを低減し、絶縁膜におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明による光半導体素子の製造方法によれば、樹脂上の絶縁膜におけるクラックの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、一実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。
【図2】図2は、光変調器のII−II線に沿った断面を示す図である。
【図3】図3は、一実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図4】図4は、一実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図5】図5は、一実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図6】図6は、一実施形態に係る製造方法の各工程を示す断面図である。
【図7】図7は、絶縁膜エッチング工程後における絶縁膜の形状を示す斜視図であって、光導波方向における開口の一端部付近を示す図である。
【図8】図8は、図7に示されるVIII−VIII線に沿った断面を示す図である。
【図9】図9は、絶縁膜エッチング工程後における絶縁膜の形状の変形例を示す斜視図であって、光導波方向における開口の一端部付近を示す図である。
【図10】図10は、図9に示されるX−X線に沿った断面を示す図である。
【図11】図11は、図9に示されるXI−XI線に沿った断面を示す図である。
【図12】図12は、光半導体素子の構造例を示す断面図である。
【図13】図13は、光半導体素子の製造過程における課題を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明による光半導体素子の製造方法の実施の形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
(実施の形態)
図1は、本実施形態に係る製造方法により製造される光半導体素子の例として、マッハツェンダー型の光変調器の構成を示す平面図である。また、図2は、この光変調器1AのII−II線に沿った断面を示す図である。この光変調器1Aは、2本の光導波路10,20と、入射側分波器30と、出射側合波器40と、2つの電極50,60とを備えている。光導波路10及び20、並びに入射側分波器30及び出射側合波器40は、図2に示される共通の半導体基板2の主面2a上に形成されている。半導体基板2は、第1導電型(例えばn型)の半導体からなる基板であり、半導体基板2としては、例えばn型InP基板が好適である。また、図2に示されるように、光変調器1Aは、半導体基板2の裏面2b上に形成された電極80を更に備えている。
【0020】
光導波路10,20は、入射側分波器30と出射側合波器40との間に延設されており、その一端は入射側分波器30に結合され、他端は出射側合波器40に結合されている。また、光導波路10,20は、その延在方向に交差する方向に並んで配置されている。光導波路10は、光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cを含む。光導波領域10a、位相制御領域10b及び光導波領域10cは、光導波方向(すなわち光導波路10の延在方向)にこの順で配列されている。同様に、光導波路20は、光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cを含む。光導波領域20a、位相制御領域20b及び光導波領域20cは、光導波方向(すなわち光導波路20の延在方向)にこの順で配列されている。
【0021】
入射側分波器30は、外部から光変調器1Aに入射した入射光L1を、光導波路10,20それぞれに分波する。出射側合波器40は、光導波路10,20それぞれを伝搬した光を合波する。入射側分波器30及び出射側合波器40は、例えばMMIカプラによって好適に構成される。
【0022】
電極50は位相制御領域10b上に形成されており、電極60は位相制御領域20b上に形成されている。電極50,60それぞれは、ワイヤボンディングのためのボンディングパッド50a,60aそれぞれを有している。
【0023】
図2を参照して、位相制御領域10b付近の構造について説明する。なお、位相制御領域20b付近の構造も、図2と同様である。位相制御領域10bは、光導波路層11と、クラッド層12と、コンタクト層13とを有している。光導波路層11は、アンドープ半導体からなる。このアンドープ半導体としては、GaInAsP、AlGaInAs、AlInAs及びGaInAs等を例示することができる。光導波路層11は、単一の層(バルク層)からなってもよく、井戸層を該井戸層よりバンドギャップが大きいバリア層によって挟み込んだ量子井戸構造を有していてもよい。
【0024】
クラッド層12及びコンタクト層13は、第2導電型(例えばp型)の半導体からなる。クラッド層12のp型半導体としては、例えばp型InPが好適である。コンタクト層13のp型半導体としては、例えばp型InGaAsが好適である。クラッド層12及びコンタクト層13は、所定の光導波方向に延びるメサ構造14を成している。このメサ構造14の両側面上には、絶縁膜15が設けられている。絶縁膜15は、メサ構造14の両側面上からメサ構造14の周囲の半導体基板2上にわたって設けられている。絶縁膜15は、例えばSiNやSiOといったシリコン化合物からなる。絶縁膜15の厚さは、例えば300nmである。
【0025】
メサ構造14の両側面は、誘電体樹脂層9により埋め込まれている。誘電体樹脂層9は、例えばBCBやポリイミドといった樹脂からなり、メサ構造14の周囲の半導体基板2上に設けられている。半導体基板2の主面2aを基準とする誘電体樹脂層9の表面の高さは、主面2aを基準とするメサ構造14の高さより高い。誘電体樹脂層9の層厚は、例えば2μmである。誘電体樹脂層9は、メサ構造14上に開口9a(第1の開口)を有する。誘電体樹脂層9の表面及び開口9aの側面は、絶縁膜16によって覆われている。絶縁膜16は、例えばSiNやSiOといったシリコン化合物からなる。絶縁膜16の厚さは、例えば200nmである。絶縁膜16は、メサ構造14上に開口16a(第2の開口)を有する。
【0026】
電極50は、オーミック電極膜51と、メッキ配線層52とを有する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に設けられており、メサ構造14のコンタクト層13と接触している。オーミック電極膜51は、例えばAu/Zn/Auといった積層構造を有する。メッキ配線層52は、例えばAuメッキによって形成される。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆っており、また誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込んでいる。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって(本実施形態では、オーミック電極膜51上から絶縁膜16上にわたって)設けられている。
【0027】
以上の構成を備える光変調器1Aの製造方法について説明する。図3〜図6は、光変調器1Aの製造方法の各工程を示す断面図であり、図1に示されたII−II断面の製造過程を示している。
【0028】
まず、図3(a)に示されるように、光導波路層11、クラッド層12、及びコンタクト層13を半導体基板2の主面2a上に順次成長させる(成長工程)。なお、これらの層11〜13の成長は、例えば有機金属気相成長法(OMVPE;Organo Metaric Vapor Phase Epitaxy)によって好適に行われる。
【0029】
次に、図3(b)に示されるように、所定の光導波方向に延びるエッチングマスク70をコンタクト層13上に形成する(マスク形成工程)。エッチングマスク70は、例えば次のようにして形成される。まず、プラズマCVD法を用いて、SiNといった絶縁膜をコンタクト層13上の全面に形成する。次に、この絶縁膜上に通常のフォトリソグラフィ技術を用いて所定の光導波方向に延びるレジストマスクを形成する。そして、このレジストマスクを用いて、絶縁膜に対しプラズマエッチングを施す。こうして、絶縁膜からなるエッチングマスク70が形成される。
【0030】
続いて、図3(c)に示されるように、エッチングマスク70を用いて、少なくともコンタクト層13及びクラッド層12に対してドライエッチングを行い、光導波方向に延びるメサ構造を形成する(メサ形成工程)。本実施形態では、コンタクト層13、クラッド層12、光導波路層11及び半導体基板2の一部をエッチングしており、メサ構造14は、これらの層11〜13及び半導体基板2の一部を含んでいる。本工程では、メサ構造14をドライエッチング(例えばプラズマエッチング)によって形成することにより、メサ構造14の側面を半導体基板2の主面2aに対して垂直に近づけることができるので、光を効率良く閉じ込める為に好適な光導波路層11の側面が得られる。なお、光導波方向と直交する方向におけるメサ構造14の幅W1は、例えば1.5μmである。
【0031】
続いて、エッチングマスク70を除去したのち、図4(a)に示されるように、メサ構造14を覆う絶縁膜15を形成する(第1の絶縁膜形成工程)。一実施例では、プラズマCVDによってSiNからなる絶縁膜15を製膜する。続いて、半導体基板2上において、例えばBCBやポリイミドといった樹脂を、メサ構造14が完全に埋め込まれる程度の厚さにスピン塗布したのち、該樹脂の熱硬化を行う。これにより、誘電体樹脂層9が形成される(樹脂形成工程)。
【0032】
続いて、図4(b)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク71を誘電体樹脂層9上に形成する。なお、このレジストマスク71の開口の幅W2は、メサ構造14の幅W1よりも広く形成され、一実施例では10μmである。そして、図5(a)に示されるように、レジストマスク71を用いてメサ構造14上の誘電体樹脂層9及び絶縁膜15に対してエッチングを行うことにより、開口9aを形成し、コンタクト層13(メサ構造14の頂部)を露出させる(樹脂エッチング工程)。このエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。プラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCF及びOの混合ガスが好適である。
【0033】
続いて、レジストマスク71を除去したのち、図5(a)に示されるように、絶縁膜16を形成する(第2の絶縁膜形成工程)。絶縁膜16は、誘電体樹脂層9の表面、開口9aの側面、及びコンタクト層13を覆う。一実施例では、プラズマCVDによってSiOからなる絶縁膜16を製膜する。
【0034】
続いて、図5(b)に示されるように、通常のフォトリソグラフィ技術を用いて、メサ構造14上に開口を有するレジストマスク72を、誘電体樹脂層9の表面上及び開口9aの側面上に形成する。そして、図5(c)に示されるように、レジストマスク72を用いて、絶縁膜16をエッチングすることにより開口16aを形成する(絶縁膜エッチング工程)。この工程におけるエッチング方法としては、例えばプラズマエッチング等のドライエッチングが好適である。SiOから成る絶縁膜16に対してプラズマエッチングを行う場合、エッチャントガスとしては、例えばCFガスが好適である。この工程ののち、レジストマスク72を除去する(図6(a))。
【0035】
ここで、図7は、上述した絶縁膜エッチング工程後における絶縁膜16の形状を示す斜視図であって、光導波方向における開口16aの一端部付近を示す図である。また、図8は、図7に示されるVIII−VIII線に沿った断面を示す図である。図7に示されるように、絶縁膜エッチング工程によって形成される開口16aは、光導波方向に延びる主部16bと、光導波方向における該主部16bの両端に位置する一端部16c及び他端部(図示せず)とを有する。光導波方向における一端部16cの長さは、例えば5μmである。そして、一端部16cは、主部16bと比べて幅広の部分を有する。なお、ここでいう幅広とは、光導波方向と直交する方向における当該部分の幅(図8に示される幅W3)が、同方向における主部16bの幅(図6(a)に示される幅W4)より広いことを意味する。一実施例では、W3=3μmであり、W4=1μmである。このような部分を一端部16cが有することによって、一端部16cの輪郭の一部に、主部16bの輪郭から拡幅される部分が存在することとなる。一実施例では、図7に示されるように、開口16aの一端部16cの輪郭が、所定の曲率半径Rを有する180°より広角の円弧によって構成されており、この曲率半径Rは、主部16bの幅W4の半分より大きい。
【0036】
続いて、図6(b)に示されるように、メサ構造14上に電極50(位相制御領域20bの場合は電極60)を形成する(電極形成工程)。具体的には、いわゆるリフトオフ法を用いてメサ構造14上にオーミック電極膜51を形成したのち、Auメッキを施すことにより、メッキ配線層52をオーミック電極膜51上に形成する。オーミック電極膜51は、メサ構造14上に形成された絶縁膜16の開口16aを塞ぐように形成され、メサ構造14のコンタクト層13と接触する。メッキ配線層52は、オーミック電極膜51を完全に覆い、且つ誘電体樹脂層9の開口9aを埋め込むように形成される。メッキ配線層52は、メサ構造14上から誘電体樹脂層9上にわたって形成される。
【0037】
以上に説明した本実施形態による製造方法では、絶縁膜エッチング工程において絶縁膜16に開口16aを形成する際、光導波方向における開口16aの一端部16cの形状を、図7に示されたような形状、すなわち主部16bと比べて幅広の部分を有するような形状とする。これにより、一端部16cにおける輪郭線の長さが図13のような開口形状と比較して長くなるので、開口16aの外側方へ向かう絶縁膜16の応力が一端部16cに集中したときの集中応力の大きさを低減することができる。したがって、本実施形態による製造方法によれば、絶縁膜16におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態のように、開口16aの一端部16cの輪郭が、曲率半径Rを有する180°より広角の円弧によって構成され、曲率半径Rは主部16bの幅W4の半分より大きいことが好ましい。一端部16cがこのような形状を有することによって、一端部16cに集中する応力を均等に分散することができるので、一端部16cに集中する応力をより効果的に低減することができる。
【0039】
なお、本実施形態では絶縁膜16の開口16aの一端部16cの形状について例示したが、他端部についても一端部16cと同様の形状を有することによって、上述した効果を好適に奏することができる。すなわち、開口16aの一端部16c及び他端部のうち何れか一方のみが図7に示されたような形状を有しても良いし、一端部16c及び他端部の双方が図7に示されたような形状を有しても良い。
【0040】
(変形例)
続いて、上述した実施形態の絶縁膜エッチング工程(図5(c))によって形成される、絶縁膜16の開口16aの形状に関する変形例について説明する。なお、本変形例では、絶縁膜エッチング工程以外の工程については上記実施形態と同様なので、詳細な説明を省略する。
【0041】
図9〜図11は、本変形例における絶縁膜16の開口16aの形状を示す図である。図9は、絶縁膜エッチング工程後における絶縁膜16の形状を示す斜視図であって、光導波方向における開口16aの一端部付近を示す図である。また、図10は、図9に示されるX−X線に沿った断面を示す図であり、図11は、図9に示されるXI−XI線に沿った断面を示す図である。
【0042】
図9〜図11に示されるように、本変形例では、絶縁膜エッチング工程(図5(c)参照)によって形成される開口16aが、光導波方向に延びる主部16dと、光導波方向における該主部16dの両端に位置する一端部16e及び他端部(図示せず)とを有する。そして、光導波方向における開口16aの一端部16eを、誘電体樹脂層9の開口9aの外部に形成する。一実施例では、図9に示されるように、絶縁膜16の開口16aを、誘電体樹脂層9の開口9aの端部を超えるように光導波方向に延伸させる。開口9aの端縁からの開口16aの延伸距離は、例えば5μmである。その結果、開口16aの一端部16eは、光導波方向において誘電体樹脂層9の開口9aの端部の外側に位置することとなる。
【0043】
本変形例による製造方法では、絶縁膜エッチング工程において、絶縁膜16の開口16aを上述したような形状とする。誘電体樹脂層9の開口9aの外部では、絶縁膜16に生じる応力(開口16aの外側方へ向かう応力)が弱くなるので、一端部16eにおける集中応力の大きさを低減することができる。したがって、本変形例によれば、絶縁膜16におけるクラックの発生を効果的に抑制することができる。
【0044】
なお、本変形例では絶縁膜16の開口16aの一端部16eの形状について例示したが、他端部についても一端部16eと同様の形状を有することによって、上述した効果を好適に奏することができる。すなわち、開口16aの一端部16e及び他端部のうち何れか一方のみが図9に示されたような形状を有しても良いし、一端部16e及び他端部の双方が図9に示されたような形状を有しても良い。
【0045】
本発明による光半導体素子の製造方法は、上述した実施形態に限られるものではなく、他に様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態では、InP系化合物半導体によって構成される光半導体素子を製造する際に本発明を適用した例を示したが、本発明は、他の種々の半導体によって構成される光半導体素子を製造する際にも適用可能である。
【0046】
また、上述した実施形態では、本発明の方法によって製造される光半導体素子としてマッハツェンダー型の光変調器を例示したが、本発明による製造方法は、メサ構造が樹脂によって埋め込まれる構造を備える種々の光半導体素子に適用可能である。
【0047】
また、上述した実施形態では、絶縁膜の開口の端部が主部と比べて幅広の部分を有する例と、絶縁膜の開口の端部を樹脂の開口の外部に形成する例とをそれぞれ説明したが、絶縁膜の開口の端部が樹脂の開口の外部に形成され、且つ、絶縁膜の開口の端部が主部と比べて幅広の部分を有する場合には、絶縁膜におけるクラックの発生を顕著に抑制することができる。
【符号の説明】
【0048】
1A…光変調器、2…半導体基板、2a…主面、2b…裏面、9…誘電体樹脂層、9a…開口、10,20…光導波路、10a,20a…光導波領域、10b,20b…位相制御領域、10c,20c…光導波領域、11…光導波路層、12…クラッド層、13…コンタクト層、14…メサ構造、15,16…絶縁膜、16a…開口、16b,16d…主部、16c,16e…一端部、30…入射側分波器、40…出射側合波器、50,60,80…電極、50a,60a…ボンディングパッド、51…オーミック電極膜、52…メッキ配線層、70…エッチングマスク、71,72…レジストマスク、L1…入射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の光導波方向に延びるメサ構造が主面上に形成された基板の前記主面上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂に対してエッチングを行い、前記樹脂に第1の開口を形成することにより前記メサ構造の頂部を露出させる樹脂エッチング工程と、
前記メサ構造の頂部及び前記樹脂を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記メサ構造上の前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記絶縁膜に第2の開口を形成することにより前記メサ構造の頂部を再び露出させる絶縁膜エッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有し、
前記第2の開口が、前記光導波方向に延びる主部と、前記光導波方向における該主部の両端に位置する一端部及び他端部とを有し、前記一端部及び他端部のうち少なくとも一方が、前記主部と比べて幅広の部分を有することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。
【請求項2】
前記第2の開口の前記一端部及び他端部のうち少なくとも一方の輪郭が、所定の曲率半径を有する180°より広角の円弧によって構成されており、
前記所定の曲率半径が前記主部の幅の半分より大きいことを特徴とする、請求項1に記載の光半導体素子の製造方法。
【請求項3】
所定の光導波方向に延びるメサ構造が主面上に形成された基板の前記主面上に樹脂を塗布し、前記メサ構造を前記樹脂によって埋め込む樹脂形成工程と、
前記メサ構造上の前記樹脂に対してエッチングを行い、前記樹脂に第1の開口を形成することにより前記メサ構造の頂部を露出させる樹脂エッチング工程と、
前記メサ構造の頂部及び前記樹脂を覆う絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記メサ構造上の前記絶縁膜に対してエッチングを行い、前記絶縁膜に第2の開口を形成することにより前記メサ構造の頂部を再び露出させる絶縁膜エッチング工程と、
前記メサ構造上に電極を形成する電極形成工程と
を有し、
前記絶縁膜エッチング工程の際に、前記光導波方向における前記第2の開口の一端部及び他端部のうち少なくとも一方を、前記第1の開口の外部に形成することを特徴とする、光半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−44794(P2013−44794A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−180662(P2011−180662)
【出願日】平成23年8月22日(2011.8.22)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】