説明

光及び湿気硬化型組成物

【課題】低いエネルギーの光照射でも良好な硬化性を有し、湿気硬化により十分な硬化膜を形成し得る光及び湿気硬化型組成物の提供。
【解決手段】(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(A)、ブロックアミン化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有してなる光及び湿気硬化型組成物。
前記(A)成分としては、2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物が好ましい。前記(B)成分としては、第1級及び/又は第2級アミンとケトン又はアルデヒドとの脱水反応物、さらにはケチミンが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にコーティング剤として有用な光及び湿気硬化型組成物に関し、光及び湿気硬化型組成物の技術に属する。
尚、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイルオキシ基とは、アクリロイル基オキシ又はメタクリロイル基オキシを意味する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材へのコーティングや塗膜の形成において(メタ)アクリレートを主成分とした光硬化型組成物が用いられている。
光硬化型組成物は、紫外線等の光照射により発生したラジカル重合反応により硬化膜を形成するものであり、秒単位で反応が完結するため生産効率が非常に高いものである。
【0003】
しかしながら、光硬化型組成物は、酸素による硬化阻害の問題があり、空気下等で十分な硬化膜を得るには、照射する光を高照度とする必要があるため、基材に変色や変形等の問題が生じる場合があった。又、前記した通り、光硬化型組成物は速硬化性であるが、逆に急激な反応であるため、硬化膜の収縮等の問題があった。又、基材の形状によっては影となる部分があり、ここでは光が十分に照射されないため、未硬化又は硬化不十分になってしまい、硬化膜の表面にタックが残る等の不具合が生じることがあった。更に、塗料等のように顔料等の隠蔽性の高いものを混合したものは、十分な照射エネルギーを得るために多大なエネルギーを必要とする場合があった。
【0004】
一方、光硬化とは異なる湿気硬化による硬化型組成物として、ブロックアミンと(メタ)アクリレートを含む硬化型組成物が知られている(特許文献1及び2)。
当該組成物は、ブロックアミンが湿気(水分)との反応で生成したアミンが(メタ)アクリリレートと付加反応することにより、硬化膜を形成する。
しかしながら、当該組成物は、光硬化型組成物の様に硬化のための光照射は必要ないものの、加熱又は数時間から数日間の室温放置が必要になり、生産効率に問題がある。又、当該組成物は、得られる硬化膜の硬度が不充分なものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−236812号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開平11−302327号公報(特許請求の範囲)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、低いエネルギーの光照射でも良好な硬化性を有し、湿気硬化により十分な硬化膜を形成し得る光及び湿気硬化型組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々の検討を行った結果、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物、ブロックアミン及び光重合開始剤を含む組成物が、低いエネルギーで硬化し、湿気硬化により十分な硬度を有する硬化膜を形成することを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の組成物によれば、低いエネルギーの光照射で硬化し、さらに湿気硬化により十分な硬度を有する硬化膜を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(A)〔以下、(A)成分という〕、ブロックアミン化合物(B)〔以下、(B)成分という〕並びに光重合開始剤(C)〔以下、(C)成分という〕を含有する光及び湿気硬化型組成物に関する。
以下、それぞれの成分について、説明する。
【0010】
1.(A)成分
(A)成分は、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であり、(B)成分が分解生成するアミンと反応し、より具体的にはマイケル付加反応を起し、硬化する化合物である。
(A)成分としては、モノマー、オリゴマー及びポリマーが挙げられ、以下、それぞれの化合物について説明する。
【0011】
1−1.モノマー
(A)成分においてモノマーとは、低分子量体を意味する。
モノマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する化合物及び(メタ)アクリロイルオキシを2個以上有する化合物を挙げることができる。
【0012】
(メタ)アクリロイルオキシ基を1個有する化合物としては、(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0013】
(メタ)アクリロイルオキシを2個以上有する化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及びプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びトリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート及びネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のグリコールジ(メタ)アクリレート;ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン核置換体及びビスフェノールFジ(メタ)アクリレート又はそのハロゲン核置換体等のビスフェノール型ジ(メタ)アクリレート;ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のポリオールポリ(メタ)アクリレート;前記ポリオールのアルキレンオキサイド付加物のポリ(メタ)アクリレート;イソシアヌル酸アルキレンオキサイドのジ又はトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これら以外にも、文献「最新UV硬化技術」[(株)技術情報協会、1991年発行]の53〜56頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0014】
1−2.オリゴマー
オリゴマーとしてはポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート及びポリエーテル(メタ)アクリレート等が挙げられる。尚、これらオリゴマーは、(メタ)アクリロイルオキシ基を2個有する化合物であるが、慣用に従い、特に断りのない限り単に(メタ)アクリレートと記載する。
【0015】
1−2−1.ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー
ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリエステルポリオールと(メタ)アクリル酸との脱水縮合物等が挙げられる。
ここで、ポリエステルポリオールとしては、ポリオールとのカルボン酸又はその無水物との反応物等が挙げられる。
ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリブチレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール及びジペンタエリスリトール等の低分子量ポリオール、並びにこれらのアルキレンオキサイド付加物等が挙げられる。
カルボン酸又はその無水物としては、オルソフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、アジピン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ヘキサヒドロフタル酸、テトラヒドロフタル酸及びトリメリット酸等の二塩基酸又はその無水物等が挙げられる。
これら以外のポリエステルポリ(メタ)アクリレートとしては、前記文献「UV・EB硬化材料」の74〜76頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0016】
1−2−2.エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー
エポキシ(メタ)アクリレートは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加反応させた化合物であり、前記文献「UV・EB硬化材料」の74〜75頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
エポキシ樹脂としては、芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0017】
芳香族エポキシ樹脂としては、具体的には、レゾルシノールジグリシジルエーテル;ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン又はそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;グリシジルフタルイミド;o−フタル酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。
これら以外にも、文献「エポキシ樹脂−最近の進歩−」(昭晃堂、1990年発行)2章や、文献「高分子加工」別冊9・第22巻増刊号エポキシ樹脂[高分子刊行会、昭和48年発行]の4〜6頁、9〜16頁に記載されている様な化合物を挙げることができる。
【0018】
脂肪族エポキシ樹脂としては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,6−ヘキサンジオール等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコール、ジブロモネオペンチルグリコール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ又はトリグリシジルエーテル、並びにペンタエリスリトール及びそのアルキレンオキサイド付加体のジ、トリ又はテトラグリジジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;水素添加ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加体のジ又はポリグリシジルエーテル;テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエーテル;ハイドロキノンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これら以外にも、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の3〜6頁に記載されている化合物を挙げることができる。これら芳香族エポキシ樹脂及び脂肪族エポキシ樹脂以外にも、トリアジン核を骨格に持つエポキシ化合物、例えばTEPIC[日産化学(株)]、デナコールEX−310[ナガセ化成(株)]等が挙げられ、又、前記文献「高分子加工」別冊エポキシ樹脂の289〜296頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
上記において、アルキレンオキサイド付加物のアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が好ましい。
【0019】
1−2−3.ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー
ポリエーテル(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ポリアルキレングリコール(メタ)ジアクリレートがあり、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート及びポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0020】
1−3.ポリマー
ポリマーとしては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、官能基を有する(メタ)アクリル系ポリマーに、側鎖に(メタ)アクリロイル基を導入したものであり、前記文献「UV・EB硬化材料」の78〜79頁に記載されているような化合物等が挙げられる。
【0021】
(A)成分としては、(メタ)アクリロイルオキシを2個以上有する化合物が、架橋構造を形成し、光照射されなかった又は光照射が不充分であった部分における硬化性がより優れたものとなるため好ましい。
【0022】
2.(B)成分
(B)成分はブロックアミンであり、水(湿気)によりアミンを生成する化合物である。
(B)成分としては、第1級及び/又は第2級アミン〔以下、これらをまとめて「アミン類」という〕とケトン又はアルデヒドとの脱水反応物を挙げることができる。当該化合物としては、ケチミン、エナミン及びアルジミン等が挙げられる。
【0023】
第1級アミンとしては、モノアミン、ジアミン及びポリアミンが挙げられる。
モノアミンとしては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、へプチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、トリメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、アニリン等を挙げることができる。
ジアミンとしては、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,13−ジアミノトリデカン、1,14−ジアミノテトラデカン、1,15−ジアミノペンタデカン、1,16−ジアミノヘキサデカン、1,17−ジアミノヘプタデカン、1,18−ジアミノオクタデカン、1,19−ジアミノノナデカン、1,20−ジアミノエイコサン、1,21−ジアミノヘンティコサン、1,22−ジアミノドコサン、1,23−ジアミノトリコサン、1,24−ジアミノテトラコサン、イソホロンジアミン、ジアミノジシクロへキシルメタン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、キシレンジアミン、フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジエチルフェニルメタン、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン等を挙げることができる。
ポリアミンとしては、トリ(メチルアミノ)へキサン等を挙げることができる。
【0024】
第2級アミンとしては、ジラウリルアミン、ジステアリルアミン、メチルラウリルアミン等のモノアミン、N,N′−ジラウリルプロピルアミン、N,N′−ジステアリルブチルアミン、N−ブチル−N′−ラウリルエチルアミン、N−ブチル−N′−ラウリルプロピルアミン及びN−ラウリル−N′−ステアリルブチルアミン等のジアミンを挙げることができる。
【0025】
その他のアミンとしては、N−ラウリルプロピレンジアミン及びN−ステアリルプロピレンジアミン等を挙げることができる。第1級・第2級混合ポリアミンとしては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン及びメチルアミノプロピルアミン等を挙げることができる。
【0026】
上記以外としては、特公昭38−20975に記載されているアミノ水素少なくとも1個含有のイミンとエポキシ基少なくとも1個を有する化合物好ましくはグリシジルエーテル又はエステルを反応して得られる水酸基含有イミン等が挙げられる。
【0027】
更に特開昭61−23723に記載されているポリアミンと置換基を有しうるエピハロヒドリン若しくはグリセリンジハロヒドリンとより合成される水酸基含有ポリアミンのケトイミン化合物類、該水酸基含有ポリアミンのアルドイミン化合物類、該ケトイミン化合物のモノエポキサイド付加反応生成物類、及び該アルドイミン化合物のモノエポキサイド付加反応生成物類よりなる群から選ばれた少なくとも1種よりなる化合物が挙げられる。
【0028】
ケトンとしては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−tert−ブチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、ジイソプロピルケトン及びジイソブチルケトン等の脂肪族ケトン;プロピオフェノン、ベンゾフェノン等の芳香族ケトン;シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等の環状ケトン;並びにアセト酢酸エチル等のβ−ジカルボニル化合物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、例えば、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド及びヘキシルアルデヒド等が挙げられる。
【0029】
(B)成分において、アミン類とケトン又はアルデヒドの反応は常法により反応させて得られたものが使用できる。
さらに、(B)成分としては、ケチミンを使用することが、保存安定性に優れるため好ましい。
ケチミンを構成するアミンとしては、第1級・第2級混合ポリアミンが好ましく、具体例としては前記で挙げたものが挙げられる。
ケチミンを構成するケトンしては、脂肪族ケトンが好ましく、具体例としては前記で挙げたものが挙げられる。
さらに、ケチミンとしては、第1級・第2級混合ポリアミンと脂肪族ケトンの反応物に、さらにエポキシ化合物を反応させた化合物が好ましい。この場合のエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル等が挙げられる。
当該化合物は市販されており、ジャパンエポキシレジン(株)製jERキュアH3及び同H30等が挙げられる。
【0030】
(A)成分と(B)成分の配合比としては、(A)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基当量と(B)成分の活性水素当量の比が1:2〜1:0.01が好ましく、1:1.1〜1:0.1がより好ましい。(B)成分の比を0.01以上にすることで、湿気硬化性が発現されて低エネルギーでの硬化が可能となり、2以下とすることにより、得られる硬化物の強度を高めることができる。
【0031】
3.(C)成分
本発明の組成物は、紫外線や可視光線等の光照射により硬化させて使用するものであり、(C)成分である光重合開始剤を配合する。
(C)成分としては、光硬化型組成物で通常使用される化合物で良く、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリノ−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン及びビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム等が挙げられる。
(C)成分は、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
【0032】
(C)成分の配合割合としては、組成物中に1〜10重量%であることが好ましく、3〜7重量%がより好ましい。
この割合を1重量%以上とすることにより硬化物表面の粘着性を低減することができ、10重量%以下とすることにより、得られる硬化物の強度を高めることができる。
【0033】
4.その他の成分
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分を必須とするものであるが、必要に応じて種々の成分を配合させることができる。
具体的には、シランカップリング剤、(A)成分以外のエチレン性不飽和化合物、希釈溶剤、重合禁止剤、酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、紫外線吸収剤及び顔料等が挙げられ、これら以外にも公知慣用のものを添加することができる。
【0034】
本発明においては、シランカップリング剤〔以下、(D)成分という〕を配合することで、組成物をガラスに対する密着性に優れるものとすることができるため好ましい。
(D)成分としては、不飽和二重結合を有するシラン化合物が好ましく、具体的には、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
(D)成分は、単独で使用しても良く、又は2種類以上組合せて使用しても良い。
【0035】
(A)成分以外のエチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリルアミド、ビニルホルムアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン及びビニル化合物等が挙げられる。
(メタ)アクリルアミドとしては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
ビニルホルムアミドとしては、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド及びN−ビニル−N−メチルアセトアミド等が挙げられる。
ビニル化合物としては、N−ビニルピロリドン及びN−ビニルカプロラクタム等のN−ビニル化合物、スチレン、ビニルトルエン及び酢酸ビニル等が挙げられる。
【0036】
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ベンゾキノン、p−t−ブチルカテコール及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0037】
5.製造・使用方法
本発明の組成物は、前記必須成分の(A)〜(C)成分と必要に応じてその他成分を攪拌・混合して製造すれば良い。
この場合、(A)成分又は(A)成分を含む混合物をあらかじめ調製しておき、これと(B)成分又は(B)成分を含む混合物を攪拌・混合して製造する方法が、得られる組成物の保存安定性に優れるため好ましい。
具体的な態様としては、(A)成分、又は(A)成分及びその他成分からなる混合物をあらかじめ製造しておき、これと(B)及び(C)成分を攪拌・混合するか、又は(A)及び(C)成分、必要に応じてその他成分からなる混合物をあらかじめ製造しておき、これと(B)成分を攪拌・混合して製造する方法が挙げられる。
この場合、(A)成分又は(A)成分を含む混合物の含水率が2,000ppm以下であるものが好ましく、より好ましくは500ppm以下である。
この含水率が2,000ppm以下である場合は、そのまま(B)成分又は(B)成分を含む混合物と攪拌・混合すれば良いが、事前混合物の含水率が2,000ppmを超過する場合は、事前混合物の含水率を低減させることが好ましい。事前混合物の含水率を低減させる方法としては、脱水剤による含水率低減や乾燥ガスを用いた含水率の低減等が挙げられる。脱水剤としては、従来使用されているもので良く、具体的には、モレキュラーシーブ及び硫酸マグネシウム等が挙げられる。
【0038】
前記は1液型組成物について説明したが、2液型組成物としても使用することができる。即ち、(A)成分又は(A)成分を含む混合物と(B)成分又は(B)成分を含む混合物を別々に用意しておき、使用直前にこれらを攪拌・混合して製造方法が挙げられる。2液型組成物にすることにより、組成物の保存安定性をより優れたものとすることができる。
【0039】
組成物の粘度としては、使用する目的に応じて適宜設定すれば良いが、組成物をスプレー塗工して使用する場合には、50〜200mPa・s(25℃)が好ましい。
【0040】
本発明の組成物の使用方法は、常法に従えば良い。
例えば、コーティングを目的としている基材に、組成物を塗布又は注入した後、光照射して組成物を硬化させ、その後数時間〜数日間放置して空気中の湿気により硬化させる方法等が挙げられる。
【0041】
基材としては、特に限定されず、具体的には、プラスチック、金属、紙及び木材等が挙げられる。
【0042】
塗工方法としては、組成物の粘度や目的に応じて適宜選択すれば良く、スプレー塗工、ロール塗工及びバー塗工等が挙げられる。
光照射条件としては、目的に応じて適宜設定すれば良く、150〜450nm波長域の光を発する高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ等を用いて、100〜1000mJ/cm2程度照射すればよい。
【0043】
本発明の組成物は、コーティング剤として好ましく使用することができる。
コーティング剤の具体的用途としては、顔料などを含む塗料等といった通常のコーティング用途に使用できる。特に、基材へのダメージが懸念されるコーティングの用途や隠蔽性の高い顔料等を配合した塗料として使用することができる。
より具体的には、本発明の光・湿気硬化の特定を生かして、プラズマディスプレイパネルの電極端子、モバイル機器(携帯電話、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ等)に使われる実装基板上の端子、屋外機器(給湯器、エアコン室外機等)に利用される基板の端子、洗濯機や温水洗浄便座、食器洗い乾燥器等の水周り機器に使用される実装基板上の端子等、光が当たりにくく影になる部分をもつ基材のコーティング等が挙げられる。
【実施例】
【0044】
以下に、実施例を具体的に挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下「部」及び「%」とは、特に断りのない限り、それぞれ「重量部」及び「重量%」を意味する。
【0045】
○実施例1
攪拌機、露点が−65℃以下の5容量%酸素を含む窒素が流入可能な配管を装備したフラスコに、(A)成分として、トリメチロールプロパントリアクリレート〔東亞合成(株)製アロニックスM−309、以下M−309という〕の100部を投入した。このM−203Sの含水率を平沼産業(株)製微量水分測定装置(AQ−7)により計測した結果、100ppmであった。
前記フラスコに、(B)成分のケチミン化合物〔ジャパンエポキシレジン(株)製jERキュアH30、以下H30という〕の20部と(C)成分のベンジルジメチルケタール〔BASFジャパン(株)製イルガキュア651。以下Irg−651という〕の3部を攪拌下に混合した。
【0046】
得られた組成物を使用して、下記評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0047】
(1)硬化時の紫外線照射量
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、得られた組成物を厚さ20μmでバーコーター塗工し、大気雰囲気下で高圧水銀ランプを用いて紫外線硬化した(紫外線:UV−A)。
【0048】
上記評価試験フィルムを指触により表面タックの有無を確認し、タックが消失するまでの紫外線照射量を測定した。その結果を表1に示す。
【0049】
(2)鉛筆硬度
上記評価フィルムをJIS−K5400における鉛筆引っかき試験により測定した。その結果を表1に示す。
(3)紫外線未照射部分の硬化性
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に、得られた組成物を厚さ20μmでバーコーター塗工し、暗所下23℃50%RHで7日間保管した後、指触により表面タックの有無を確認し、以下の水準で評価した。
○:表面タックあり、×:表面タックあり
【0050】
(4)組成物の保存安定性
得られた組成物をガラスのサンプル瓶に入れて、23℃で保管した。定期的に組成物の外観を観測し、ゲル化するまでの時間を測定し、以下の水準で評価した。
○:5時間以上ゲル化なし、×:5時間以内にゲル化
【0051】
○実施例2〜同6、比較例1〜同4
表1に示す成分を表1に示す割合で使用する以外は、実施例1と同様の方法で、組成物を製造した。
得られた組成物を使用して、実施例1と同様の方法で評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
表1及び表2中の略号は、前記で定義したもの以外は、下記を意味する。
・M−408:ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−408
・M−203S:トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−203S
・M−111:ノニルフェノールEO変性アクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−111
・M−1600:ウレタンアクリレート、東亞合成(株)製アロニックスM−1600
【0055】
実施例1〜同6の結果から、本発明の組成物は、いずれも低照射量のエネルギーで硬化し、湿気硬化により硬度も高くなるものであった。又、紫外線未照射で暗所下に放置した場合でも良好な硬化性に優れるものであった。さらに、保存安定性にも優れていた。
これに対して、比較例1及び同2の組成物は、実施例1及び2の組成物と比較して(B)成分を含まない点が相違するものである。比較例1及び同2の組成物と実施例1及び2の組成物とは、紫外線硬化型組成物としての成分は同じ成分を含むものであるが、(B)成分を含まない比較例1及び同2の組成物は、意外にもタックがなくなるまでに高いエネルギーが必要であった。又、比較例1及び同2の組成物は、当然、紫外線未照射部分の硬化性に劣るものであった。
次に、(C)成分を含まない比較例3の組成物は紫外線照射時には未硬化であり、室温放置数日後に硬化したが、実施例1の組成物と比較すると、硬化物の硬度が不充分であった。
ブロックされていないアミンを配合した比較例4の組成物は、配合直後から反応が進行して数十分でゲル化が起こってしまい、紫外線照射による評価ができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の湿気及び光硬化型組成物は、低エネルギーの光照射でも十分に硬化し、さらに湿気硬化による硬度に優れる硬化膜が得られるため、基材へのダメージが懸念されるコーティングの用途や隠蔽性の高い顔料等を配合した塗料として使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物(A)、ブロックアミン化合物(B)及び光重合開始剤(C)を含有してなる光及び湿気硬化型組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物を含む請求項1に記載の光及び湿気硬化型組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、第1級及び/又は第2級アミンとケトン又はアルデヒドとの脱水反応物である請求項1又は請求項2に記載の光及び湿気硬化型組成物。
【請求項4】
前記(B)成分がケチミンである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の光及び湿気硬化型組成物。
【請求項5】
前記(A)及び(B)成分を、(A)成分の(メタ)アクリロイルオキシ基当量と(B)成分の活性水素当量の比として1:1.1〜1:0.1の割合で含む請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の光及び湿気硬化型組成物。

【公開番号】特開2012−1671(P2012−1671A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−139670(P2010−139670)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(000003034)東亞合成株式会社 (548)
【Fターム(参考)】