説明

光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子

【課題】薄くても、白色光を十分な強度で反射できる光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子を提供すること。
【解決手段】コレステリック液晶を含むコレステリック液晶層1,2と、隣り合うコレス
テリック液晶層1,2の間に設けられ、等方性媒体からなる等方層3とを備え、コレステ
リック液晶層1,2におけるコレステリック液晶の螺旋のピッチ数が2以下で且つ螺旋の
掌性が同一であり、コレステリック液晶層1,2におけるコレステリック液晶の螺旋のピ
ッチが同一であり、コレステリック液晶の選択反射帯域の中心波長が500〜560nm
であり、等方層3の厚さが0.30μmより大きい、光反射フィルム10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子に係り、より詳細には、コレステリック液晶層を用いた光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子に関する。
【背景技術】
【0002】
コレステリック液晶は特定の波長範囲の光を選択的に反射する性質を有し、白色光を入射させると、特定の波長範囲の光を選択的に反射する。このため、コレステリック液晶層は、液晶ディスプレイの反射板や投影スクリーンそれ自体として使用することができる(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−106945号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、コレステリック液晶層を液晶ディスプレイの反射板や投影スクリーンそれ自体として使用する場合、コレステリック液晶層は、白色光を入射させる場合に白色光を反射することが望まれる。ところが、一般に、コレステリック液晶層で選択反射される光の波長範囲は可視光の全波長域をカバーするには至らない。即ちコレステリック液晶層の選択反射帯域幅は、螺旋ピッチPと複屈折Δnとの積によって決まり、一般的には150nmを超えることはなく、可視光領域である400nm〜800nmの約400nmには及ばない。そのため、可視光の全波長域を選択的に反射する光反射フィルム、即ち白色光の入射により白色光を反射する光反射フィルムを実現するためには、螺旋ピッチの異なる3種類以上のコレステリック液晶層を積層することが必要である。
【0004】
しかし、そのようなコレステリック液晶層の積層体を光反射フィルムとして用いる場合、十分な強度の白色光を反射させるためには各コレステリック液晶層の厚さを増大させる必要があり、光反射フィルムの厚さが全体として増大してしまう。一方、光反射フィルムの厚さを減少させると、反射光強度が弱まる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄くても、白色光を十分な強度で反射できる光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、コレステリック液晶を含む複数のコレステリック液晶層と、隣り合う前記コレステリック液晶層の間に設けられ、等方性媒体からなる等方層とを備えており、複数の前記コレステリック液晶層における前記コレステリック液晶の螺旋のピッチ数が2以下で且つ螺旋の掌性が同一であり、複数の前記コレステリック液晶層における前記コレステリック液晶の螺旋のピッチが同一であり、前記コレステリック液晶の選択反射帯域の中心波長が500〜560nmであり、前記等方層の厚さが0.3μmより大きい光反射フィルムである。
【0007】
この光反射フィルムによれば、薄くても、白色光を入射したときに白色光を十分な強度で反射することができる。
【0008】
通常、上記構成の光反射フィルムのように、複数のコレステリック液晶層の螺旋ピッチ及び螺旋の掌性が同一であれば、特定の波長域の光のみが選択的に反射される。しかも、前述したように、選択反射の波長帯域幅は一般には150nmを超えることはない。従って、上記構成の光反射フィルムに白色光を入射しても白色光を反射させることは困難であるはずである。しかも、各コレステリック液晶層の厚さを小さくすることによって光反射
フィルム全体の薄型化を図ると、各コレステリック液晶層からの反射光強度が減少するため、白色光の反射光強度が低下するはずである。
【0009】
しかし、本発明の光反射フィルムによれば、白色光を入射させると、各コレステリック液晶層の螺旋ピッチ及び螺旋の掌性を同一としているにもかかわらず、白色光を反射させることが可能である。具体的に述べると、本発明の光反射フィルムによれば、青色波長を中心とした選択反射波長帯域と、赤色波長を中心とした選択反射波長帯域と、緑色波長を中心とした選択反射波長帯域とが少なくとも発現し、結果的に、入射した白色光を白色光として反射することが可能となる。
【0010】
しかも、各コレステリック液晶層の厚さを薄くしても、十分な強度で白色光を反射させることができる。
【0011】
このような効果が得られる理由については定かではないが、本発明の光反射フィルムは、上記構成を有することで、全体として欠陥モードを有する1次元フォトニック結晶として作用したためではないかと考えられる。
【0012】
なお、コレステリック液晶の螺旋のピッチ数が2を超えると、着色が生じる。また、等方層の膜厚が0.30μm以下であると、反射スペクトルのピークの数が少なくなり、白色化しない。また各コレステリック液晶層のコレステリック液晶自体の選択反射帯域の中心波長が500〜560nmを外れても着色が生じる。
【0013】
また本発明は、互いに対向して配置される第1及び第2光反射フィルムと、前記第1光反射フィルムと前記第2光反射フィルムとの間に設けられ、異方性媒質を含有する異方性媒質層とを備えており、前記第1及び第2光反射フィルムが上記光反射フィルムであり、前記第1光反射フィルム、前記異方性媒質層及び前記第2光反射フィルムのうちの少なくともいずれかの層に、光励起により蛍光を発する色素が含まれており、前記第1光反射フィルムの反射スペクトルにおけるピークと、前記第2反射スペクトルにおけるピークとが可視光の波長領域において重なり合っており、前記色素から発せられる蛍光の発光帯が可視光の波長領域内にある、レーザ発振素子である。
【0014】
このレーザ発振素子によれば、第1光反射フィルム及び第2光反射フィルムとして、薄くても白色光を十分な強度で反射することが可能な光反射フィルムが用いられる。これにより、レーザ発振素子に対して、色素を励起させる光を照射すると、可視光の波長領域において3つ以上の発振ピークを観測することができる。このため、特定の波長を選択的にカットするフィルタを用いることにより、1つのレーザ発振素子でありながら3つ以上の発振ピークに対応する複数の波長のうち任意の波長の光を取り出すことができ、取り出す光の波長について選択の幅を広げることができる。なお、レーザ発振素子によれば、3つ以上の発振ピークが青色波長、緑色波長、赤色波長のぞれぞれの近傍に分布すると、白色光をレーザ発振することも可能となる。さらに本発明のレーザ発振素子によれば、色素を励起する光の照射エネルギーを調節することにより、発振ピークの本数を調節することもでき、これにより、発振波長を制御することもできる。この場合は、上述したようなフィルタを使用しなくて済むため、簡単な光学系で波長可変のレーザ発振素子を実現することができる。さらに第1光反射フィルム及び第2光反射フィルムについては薄くても十分な白色光を反射できるため、第1光反射フィルム及び第2光反射フィルムを薄くすることができ、ひいてはレーザ発振素子の小型化を図ることができる。
【0015】
本明細書において、「白色」とは、x−y色座標において、D65光源における白色原点(0.3127、0.3290)を中心とした半径0.05の円の内側にある座標で示されるものを言うこととする。
【0016】
また、本発明において、コレステリック液晶の透過スペクトルをマイクロスコープスペクトルメータ(ORC製TFM-120AFT-PC)により測定して得られたスペクトルにおいて、選択
反射帯域で透過率が60%となる2ヶ所の波長のうち短波長側の波長を「選択反射帯域の短波長端」とし、長波長側の波長を「選択反射帯域の長波長端」とし、それらの算出平均によって得られる値を選択反射波長帯域の中心波長と言うこととする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、薄くても、白色光を十分な強度で反射できる光反射フィルム及びこれを用いたレーザ発振素子が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0019】
(光反射フィルム)
図1は、本発明に係る光反射フィルムの好適な実施形態を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態の光反射フィルム10は、2つのコレステリック液晶層1,2を備えており、隣り合うコレステリック液晶層1,2の間に等方層3が設けられている。具体的には、等方層3は、コレステリック液晶層1,2によって挟まれており、コレステリック液晶層1,2のそれぞれに密着している。またコレステリック液晶層1には、等方層3と反対側に配向基板4が設けられ、配向基板4はコレステリック液晶層1と密着している。
【0020】
コレステリック液晶層1,2中のコレステリック液晶においては、液晶分子により螺旋構造が形成されている。具体的には、液晶分子のダイレクタの向きがコレステリック液晶層1,2の厚さ方向に沿って、言い換えると、コレステリック液晶1,2の表面に直交する方向に沿って、螺旋を巻くように変化している。コレステリック液晶は、この螺旋構造に起因して特定波長帯域の光を選択的に反射することが可能となっている。
【0021】
ここで、コレステリック液晶層1,2のコレステリック液晶の螺旋ピッチは互いに同一であり、螺旋の掌性も互いに同一である。具体的には、本実施形態では、コレステリック液晶層1,2の螺旋の掌性は左である。また、コレステリック液晶層1,2のコレステリック液晶の螺旋軸は互いに平行となっている。またコレステリック液晶の螺旋のピッチ数は2以下であり、コレステリック液晶層1,2のそれぞれの選択反射帯域の中心波長は500〜560nmである。
【0022】
等方層3は、等方性媒体で構成されている。等方性媒体は、等方性を有する媒体であれば特に制限されないが、等方性媒体としては、コレステリック液晶層1,2を溶解しない溶媒に溶け、コレステリック液晶に配向能を付与できる性質を持つ光学的に等方な材料であり、屈折率が1.55程度より小さい材料であることが好ましい。このような等方性媒体としては、例えばポリビニルアルコール(PVA)を好ましく用いることができる。これは、ポリイミドなどでは短波長側に吸収があるため黄色に着色するのに対し、PVAはほぼ完全に透明であり、白色光を反射させやすいからである。
【0023】
等方層3の厚さは0.3μmより大きくなっている。等方層3の厚さは、反射ピークの数が3ピーク以上得られるという理由から、好ましくは0.35〜1.5μmである。
【0024】
上記光反射フィルム10によれば、当該光反射フィルム10に対し、例えばコレステリック液晶層2側から、コレステリック液晶層2の表面に白色光を垂直入射させる。すると、各コレステリック液晶層1,2の螺旋ピッチ及び螺旋の掌性を同一としているにもかかわらず、白色光を反射させることが可能となるのである。具体的に述べると、光反射フィルム10によれば、青色波長を中心とした選択反射波長帯域と、赤色波長を中心とした選択反射波長帯域と、緑色波長を中心とした選択反射波長帯域とが少なくとも発現し、入射した白色光を白色光として反射するのである。
【0025】
しかも、各コレステリック液晶層1,2の厚さを薄くしても、十分な強度で白色光を反射させることができる。言い換えると、光反射フィルム10の厚さを一定に保持したまま、コレステリック液晶層1,2のうちいずれか一方のコレステリック液晶層を、もう一方のコレステリック液晶層の螺旋ピッチと異なるものとした場合に比べて、入射した白色光をより十分な強度の白色光として反射させることができるのである。さらに、上記実施形態では、コレステリック液晶層1,2が2つでも、入射した白色光が白色光として反射されるので、本実施形態の光反射フィルム10は、光反射フィルムの薄型化に十分に寄与することができる。
【0026】
次に、コレステリック液晶層1,2について詳細に説明する。
【0027】
(コレステリック液晶)
コレステリック液晶層1,2に含まれるコレステリック液晶は、選択反射波長帯域の中心波長が500〜560nmとなるものであれば特に制限されるものではない。このようなコレステリック液晶を構成する液晶物質には、高分子液晶物質と低分子液晶物質があり、高分子液晶物質としては、各種の主鎖型高分子液晶物質、側鎖型高分子液晶物質、またはこれらの混合物を用いることができる。
【0028】
主鎖型高分子液晶物質としては、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリカーボネート系、ポリイミド系、ポリウレタン系、ポリベンズイミダゾール系、ポリベンズオキサゾール系、ポリベンズチアゾール系、ポリアゾメチン系、ポリエステルアミド系、ポリエステルカーボネート系、ポリエステルイミド系等の高分子液晶物質、またはこれらの混合物等が挙げられる。
【0029】
また、側鎖型高分子液晶物質としては、ポリアクリレート系、ポリメタクリレート系、ポリビニル系、ポリシロキサン系、ポリエーテル系、ポリマロネート系、ポリエステル系等の直鎖状または環状構造の骨格鎖を有する物質に側鎖としてメソゲン基が結合した高分子液晶物質、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0030】
これらのなかでも合成や配向の容易さなどから、主鎖型高分子液晶物質が好ましく、その中でもポリエステル系が特に好ましい。
【0031】
ポリマーの構成単位としては、例えば芳香族あるいは脂肪族ジオール単位、芳香族あるいは脂肪族ジカルボン酸単位、芳香族あるいは脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位が好適な例として挙げられる。
【0032】
また低分子液晶物質としては、飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、不飽和ベンゼンカルボン酸誘導体類、ビフェニルカルボン酸誘導体類、芳香族オキシカルボン酸誘導体類、シッフ塩基誘導体類、ビスアゾメチン化合物誘導体類、アゾ化合物誘導体類、アゾキシ化合物誘導体類、シクロヘキサンエステル化合物誘導体類、ステロール化合物誘導体類などの末端に反応性官能基を導入した液晶性を示す化合物や、前記化合物誘導体類のなかで液晶性を示す化合物に架橋性化合物を添加した組成物などが挙げられる。
【0033】
(配向基板)
配向基板4は、透明であり且つコレステリック液晶層1を支持することが可能なものであれば特に制限されず、配向基板4としては、例えばポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、トリアセチルセルロース、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等のフィルム、又はこれらのフィルムの一軸延伸フィルムもしくは二軸延伸フィルム又はガラス基板等が例示できる。これらのフィルムはその製造方法によっては改めて配向能を発現させるための処理を行わなくともコレステリック液晶層1に使用されるコレステリック液晶に対して十分な配向能を示すものもあるが、配向能が不十分、または配向能を示さない等の場合には、必要によりこれらのフィルムを適度な加熱下に延伸したり、フィルム面をレーヨン布等で一方向に擦るいわゆるラビング処理を行ったり、フィルム上にポリイミド、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤等の公知の配向剤からなる配向膜を設けてラビング処理を行ったり、酸化珪素等の斜方蒸着処理を行ったり、あるいはこれらの処理を適宜組み合わせるなどして配向能を発現させたフィルムを用いても良い。また表面に規則的な微細溝を設けた各種ガラス板等も配向基板4として使用することができる。
【0034】
これらの中でも、配向基板4としては、フィルム上に、ラビング処理した配向膜(例えばポリビニルアルコール)を形成したものが好ましく用いられる。
【0035】
(光反射フィルムの製造方法)
次に、上記光反射フィルム10の製造方法について説明する。
【0036】
まず、透明な配向基板4を用意する。配向基板4としては、例えばラビング処理した配向膜が形成されたガラス基板が用いられる。
【0037】
次に、コレステリック液晶層1を構成するコレステリック液晶を溶媒と混合して所定濃度の液晶溶液を調製し、この液晶溶液を配向基板4の配向膜上に塗布する。これにより、コレステリック液晶が配向する。このとき、必要なら熱処理などによりコレステリック液晶の配向を形成する。熱処理は液晶相発現温度範囲に加熱することにより、該液晶物質が本来有する自己配向能により液晶を配向させるものである。熱処理の条件としては、用いる液晶物質の液晶相挙動温度(転移温度)により最適条件や限界値が異なるため一概には言えないが、通常10〜300℃、好ましくは30〜250℃の範囲である。あまり低温では、液晶の配向が十分に進行しないおそれがあり、また高温では、液晶物質が分解したり配向基板に悪影響を与えるおそれがある。また、熱処理時間については、通常3秒〜60分、好ましくは10秒〜30分の範囲である。3秒よりも短い熱処理時間では、液晶の配向が十分に完成しないおそれがあり、また60分を超える熱処理時間では、生産性が極端に悪くなるため、どちらの場合も好ましくない。
【0038】
上記液晶溶液を構成する溶媒は、用いるコレステリック液晶の種類により異なるが、通常トルエン、キシレン、ブチルベンゼン、テトラヒドロナフタレン、デカヒドロナフタレン等の炭化水素系、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン等のエステル系、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系、ジクロロメタン、四塩化炭素、テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系、ブチルアルコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール、ヘキシレングリコール等のアルコール系等が挙げられる。これらの溶媒は必要により適宜混合して使用してもよい。また、溶液の濃度は用いられるコレステリック液晶の分子量や溶解性、さらに最終的に目的とするコレステリック液晶層1の厚み等により異なるため一概には決定できないが、通常は1〜60質量%、好ましくは3〜40質量%である。
【0039】
また上記液晶溶液には、塗布を容易にするために界面活性剤を加えても良く、この界面活性剤としては、例えばイミダゾリン、第四級アンモニウム塩、アルキルアミンオキサイド、ポリアミン誘導体等の陽イオン系界面活性剤、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン縮合物、第一級あるいは第二級アルコールエトキシレート、アルキルフェノールエトキシレート、ポリエチレングリコール及びそのエステル、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸アミン類、アルキル置換芳香族スルホン酸塩、アルキルリン酸塩、脂肪族あるいは芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物等の陰イオン系界面活性剤、ラウリルアミドプロピルベタイン、ラウリルアミノ酢酸ベタイン等の両性系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンアルキルアミン等の非イオン系界面活性剤、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル及び親油基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基含有ウレタン等のフッ素系界面活性剤などが挙げられる。
【0040】
界面活性剤の添加量は、界面活性剤の種類や溶剤、あるいは塗布する配向基板4の配向膜にもよるが、通常、コレステリック液晶の質量に対する比率にして10ppm〜10%、好ましくは50ppm〜5%、さらに好ましくは0.01%〜1%の範囲である。
【0041】
また上記液晶溶液には、コレステリック液晶層1の耐熱性等を向上させるために、コレステリック液晶相の発現を妨げない程度のビスアジド化合物やグリシジルメタクリレート等の架橋剤等を添加し、後の工程で架橋することもできる。またアクリロイル基、ビニル基あるいはエポキシ基等の官能基を導入したビフェニル誘導体、フェニルベンゾエート誘導体、スチルベン誘導体などを基本骨格とした重合性官能基を予め液晶物質に導入しておきコレステリック相を発現させ架橋させてもよい。
【0042】
液晶溶液の塗布方法は、塗膜の均一性が確保される方法であれば、特に限定されることはなく公知の方法を採用することができる。例えば、ロールコート法、ダイコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スピンコート法などを挙げることができる。塗布の後に、ヒーターや温風吹きつけなどの方法による溶媒除去(乾燥)工程を入れても良い。塗布された膜の乾燥状態における膜厚は、例えば0.3μmより大きくなるようにする。膜厚が0.3μm以下の場合は、白色光を入射しても反射ピークの数が2本以下となり着色する。また、塗布された膜における液晶のピッチ数は2以下となるようにする。液晶の螺旋のピッチ数が2を超えると、白色光を入射しても着色する。
【0043】
このとき、膜厚は、例えば液晶溶液の塗布量を調節して液晶溶液の乾燥後に0.3μmより大きくなるように制御し、螺旋のピッチ数はコレステリック液晶に添加するキラルドーパントの量や配向のための熱処理の温度を調整して2以下となるように制御する。
【0044】
コレステリック液晶の配向を形成させた後は、配向の固定化を行う。この場合、コレステリック液晶の配向が熱処理などにより完成したのち、そのままの状態で配向基板4上のコレステリック液晶を、使用した液晶に適した手段を用いて固定化する。このような手段としては、例えば急冷によるガラス固定化、熱、紫外線、電子線などのエネルギー照射による架橋化などが挙げられる。
【0045】
次に、コレステリック液晶層1の上に上記と同様の配向膜である等方層3を例えばスピンコート法によって形成し、等方層3にラビング処理を施す。ここで、等方層3は、液晶溶液中の溶媒がコレステリック液晶層1中のコレステリック液晶を溶解することを防止する役目も担っている。このとき、等方層3は、ポリビニルアルコール(PVA)で構成されることが好ましい。この理由は次の通りである。即ち、PVAは水系溶媒に可溶であるため、コレステリック液晶層1中のコレステリック液晶が高分子液晶物質で構成されていても、コレステリック液晶層1を溶解することなく、コレステリック液晶層1上にPVA層を配向膜として形成することが可能である。また、形成されたPVA層は、コレステリック液晶層2を形成する際に、コレステリック液晶層1を溶解する溶媒に対してバリア層となり、さらにラビング処理を施すことが可能で配向膜としても機能する。さらに、配向膜がポリイミドである場合、バリア層となるような周密な膜とするためにはポリイミドの前駆体に対して300度近い高温での熱処理と必要である。この温度では、コレステリック液晶層1が液晶相から等方相となり配向状態も乱れ、均一なコレステリック液晶層1を保持できなくなる。これに対し、PVAの場合は、このような高温での熱処理を行わなくても周密なバリア層を形成することが可能であり、均一なコレステリック液晶層1を保持することができる。ここで、「周密」とは、嵩高く密度が高い状態を言う。また、ポリイミドでは短波長側に吸収があるため黄色に着色するのに対し、PVAはほぼ完全に透明である。
【0046】
次に、上記と同様にして、等方層3上にコレステリック液晶層2を形成する。
【0047】
なお、コレステリック液晶層2を予め作製している場合には、コレステリック液晶層2を、熱融着などによって等方層3を直接接着してもよい。こうして、光反射フィルム10が得られる。
【0048】
なお、上記製造方法によれば、コレステリック液晶層1,2のコレステリック液晶として螺旋ピッチの互いに異なる複数のコレステリック液晶を用意する必要がなくなる。このため、短波長側まで選択反射波長帯域を形成するために、ねじれ力の強いキラルなドーパントをコレステリック液晶に添加してコレステリック液晶層における螺旋ピッチを狭める必要がなくなり、光反射フィルムの作製が極めて容易となる。
【0049】
(光反射フィルムにおけるPVA層の膜厚を変化させた場合の反射スペクトルおよびx−y色座標のシミュレーション結果)
ABABAの構造を有する光反射フィルム(A:左ねじれ高分子コレステリック液晶からなるコレステリック液晶層、B:PVA層)について、PVA層の膜厚を変化させた場合の反射スペクトルとx−y色座標のシミュレーションを行った。シミュレーションは、下記条件下で、4×4マトリクス法で計算した。また、シミュレーションは、光反射フィルムに対して左円偏光を垂直入射させたものとして行った。
・各コレステリック液晶層の厚さ:3.18nm
・コレステリック液晶における螺旋のピッチ数:1
・コレステリック液晶のne:1.78
・コレステリック液晶のno:1.56
・コレステリック液晶についての選択反射帯域の中心波長:530nm
・PVA層の屈折率n:1.50
【0050】
x−y色座標値のシミュレーション結果を表1に、反射スペクトルのシミュレーション結果を図2に示す。なお、表1及び図2中、a1−h1は、光反射フィルムを区別するための記号を示すものである。
【表1】

【0051】
図2及び表1に示すように、PVA層の厚さが0.3μm以下のときは、反射スペクトルにおいて、鋭く大きいピークが2つしか現れなかった。また、x−y色座標値は、本明細書で言う白色に該当するものではなかった。
【0052】
これに対して、PVA層の厚さが0.3μmより大きくなると、反射スペクトルにおいて、鋭く大きいピークが3つ以上現れた。また、x−y色座標値は、本明細書で言う白色に該当するものであった。
【0053】
従って、シミュレーション結果によっても、PVA層の厚さが0.3μmより大きいと、白色光を入射させたときに白色光を十分な強度で反射できることが確認された。
【0054】
(光反射フィルムにおけるコレステリック液晶の螺旋ピッチ数を変化させた場合の反射スペクトルおよびx−y色座標のシミュレーション結果)
ABABAの構造を有する光反射フィルム(A:左ねじれ高分子コレステリック液晶からなるコレステリック液晶層、B:PVA層)について、コレステリック液晶層のコレステリック液晶における螺旋のピッチ数を変化させた場合の反射スペクトルとx−y色座標のシミュレーションを行った。シミュレーションは、下記条件下、上記と同様にして行った。また、シミュレーションは、光反射フィルムに対して左円偏光を垂直入射させたものとして行った。
・コレステリック液晶のne:1.78
・コレステリック液晶のno:1.56
・コレステリック液晶についての選択反射帯域の中心波長:530nm
・PVA層の屈折率n:1.50
・PVA層の膜厚:0.5μm
【0055】
x−y色座標値のシミュレーション結果を表2に、反射スペクトルのシミュレーション結果を図3に示す。なお、表2及び図3中、a2−e2は、光反射フィルムを区別するための記号を示すものである。
【表2】

【0056】
図3及び表2に示すように、コレステリック液晶層のピッチ数が3を超えると、鋭く大きい反射スペクトルが互いに近づいた。そして、x−y色座標値は、本明細書で言う白色に該当するものであった。
【0057】
これに対して、コレステリック液晶層のピッチ数が2以下であると、反射スペクトルにおいて、鋭く大きいピークが互いに分離されていた。そして、x−y色座標値は、本明細書で言う白色に該当するものであった。
【0058】
以上より、本発明の光反射フィルムの構成によって、シミュレーションによる結果ではあるが、本発明の目的である白色光の反射を達成できていることがおおよそ確認できた。
【0059】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、コレステリック液晶層が2つとなっているが、コレステリック液晶層は複数であればよく、3つ以上であっても構わない。この場合、隣り合うコレステリック液晶層の間に等方層3が設けられることが必要である。また、上記実施形態では、コレステリック液晶層1,2におけるコレステリック液晶の螺旋の掌性が左となっているが、複数のコレステリック液晶層の螺旋の掌性は互いに同一であれば、右であってもよい。
【0060】
(レーザ発振素子)
次に、本発明のレーザ発振素子の実施形態について図5を用いて説明する。図5は、本発明に係るレーザ発振素子の好適な実施形態を示す側面図である。なお、上記光反射フィルムに係る発明の実施形態と同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0061】
図5に示すように、本実施形態に係るレーザ発振素子100は、互いに対向して配置される第1光反射フィルム101と第2光反射フィルム102とを備えており、第1光反射フィルム101と第2光反射フィルム102との間には、異方性媒質を含む異方性媒質層103が設けられている。異方性媒質層103はさらに光励起により蛍光を発する色素を含有している。ここで、色素から発せられる蛍光の発光帯は可視光の波長領域内にある。また第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102はいずれも、上述した光反射フィルム10で構成されている。本実施形態では、第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102は、異方性媒質層103に対して面対称となるように設けられている。即ち、第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102においては、欠陥層103側から順次、コレステリック液晶層2、等方層3、コレステリック液晶層1及び配向基板4が配置されている。従って、第1光反射フィルム101の反射スペクトルにおけるピークと、第2反射スペクトル102におけるピークとが可視光の波長領域において重なり合っている。
【0062】
本実施形態のレーザ発振素子100によれば、第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102として、薄くても白色光を十分な強度で反射することが可能な光反射フィルム10が用いられている。これにより、レーザ発振素子100に対して、色素を励起させる光を照射すると、可視光の波長領域において3つ以上の発振ピークを観測することができる。このため、特定の波長を選択的にカットするフィルタを用いることにより、1つのレーザ発振素子でありながら、3つ以上の発振ピークに対応する複数の波長のうち任意の波長の光を取り出すことができ、取り出す光の波長について選択の幅を広げることができる。なお、レーザ発振素子100によれば、3つ以上の発振ピークが青色波長、緑色波長、赤色波長のぞれぞれの近傍に分布すると、白色光をレーザ発振することも可能となる。
【0063】
またレーザ発振素子100によれば、色素を励起する光の照射エネルギーを調節することにより、発振ピークの本数を調節することもでき、これにより、発振波長を制御することもできる。具体的には、光の照射エネルギーを高くすることにより、出現する発振ピークの本数を増加させることができる。この場合は、上述したようなフィルタを使用しなくて済むため、簡単な光学系で波長可変のレーザ発振素子を実現することができる。
【0064】
さらに第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102については薄くても十分な白色光を反射できるため、第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102を薄くすることができ、ひいてはレーザ発振素子100の小型化を図ることができる。
【0065】
異方性媒質層103において、異方性媒質は、異方性を有する媒質を含有するものであればよい。例えば異方性媒質は、低分子ネマチック液晶、高分子ネマチック液晶などで構成される。
【0066】
ここで、色素は、光励起により光を発することが可能であればいかなるもであってもよく、有機系色素または無機系色素のいずれであっても構わない。ここで、光励起により発せられる光には、蛍光のみならず燐光も含まれる。有機系色素としては、例えば、スチリル(Styryl)、キサンテン(Xanthene)、オキサジン(Oxazine)、クマリン(Coumarine)、スチルベン(Stilben)誘導体、オキサゾール(Oxazole)誘導体、オキサジアゾール(Oxadiazole)誘導体、p−オリゴフェニレン(Origophenylene)誘導体、4H−ピラニリデンプロパンジニトリル誘導体(DCM)が挙げられる。また、下記化学構造式:
【化1】


(上記式中、RがO(CH12Hである場合は、RはH又はt−Buを表し、RがCHCH(CHCH)CHCHCHCHである場合は、Rは水素又はt−Buを表し、mは1以上の整数を表す。)
で表される化合物、又は下記構造式:
【化2】


(上記式中、RがCHCH(CHCH)CHCHCHCHである場合は、RはH又はt−Buを表し、nは1以上の整数を表す。)
で表される化合物なども用いることができる。これらの化合物の分子量は特に規定されないが、5万以下であることが好ましい。分子量が5万以上の場合は粘性が高くなり配向性が悪化するため好ましくない。
【0067】
また、上記有機系色素としては、下記構造式:
【化3】


で表されるクォーターチオフェン(QT:Quarter Thiophene)も使用することができる。
【0068】
無機系色素としては、例えば硫化亜鉛、珪酸亜鉛、硫化亜鉛カドミウム、硫化カルシウム、硫化ストロンチウム、タングステン酸カルシウム、カナリーガラス、シアン化白金、アルカリ土類金属の硫化物、希土類化合物などが挙げられる。
上記色素のうち有機系色素が特に好ましい。この場合、液晶への溶解性に優れ、液晶の配向性を阻害しにくいという利点がある。
【0069】
なお、上記実施形態では、色素が異方性媒質層103中に含まれていると述べたが、色素は、必ずしも異方性媒質103中に含める必要はなく、例えば第1光反射フィルム101又は第2光反射フィルム102中に含まれていてもよい。この場合、色素は、第1光反射フィルム10及び第2光反射フィルム20のうち、例えばコレステリック液晶層1,2、又は等方層103中に含有させればよい。
【0070】
また上記実施形態では、第1光反射フィルム101及び第2光反射フィルム102が光反射フィルム10で構成されるとしたが、第1光反射フィルム101と第2光反射フィルム102とは必ずしも同一構成のものとする必要はなく、異なる構成であってもよい。但し、第1光反射フィルム101と第2光反射フィルム102とは、第1光反射フィルム101の反射スペクトルにおけるピークと、第2反射スペクトル102におけるピークとが可視光の波長領域において重なり合っている必要がある。
【0071】
さらに、第1光反射フィルム101で用いられるコレステリック液晶と、第2光反射フィルム102で用いられるコレステリック液晶とで、螺旋の掌性は同一でも異なるものであってもよいが、同一であることが好ましい。
【0072】
また、第1光反射フィルム101と第2光反射フィルム102とで、コレステリック液晶の螺旋のピッチ数は同一でも異なっていてもよいが、同一である方がレーザ発振が起こり易いため好ましい。
【0073】
第1光反射フィルム101における等方層と、第2光反射フィルム102における等方層とは、それぞれ0.3μmより大きい厚さを有していればよく、必ずしも同一である必要はない。
【実施例】
【0074】
次に、実施例を用いて、本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0075】
(実施例1)
まず掌性が左、即ちL構造のコレステリック液晶層(以下、「PCLCフィルム」)1を形成するための高分子コレステリック液晶溶液を次のようにして準備した。即ち、芳香族ポリエステルからなる高分子アキラルネマチック液晶と、芳香族ポリエステルからなる高分子キラルネマチック液晶との液晶混合物(新日本石油(株)製LCフィルム)を用い、これをクロロホルム中に溶解して高分子コレステリック液晶溶液を得た。ここで、液晶混合物中の高分子キラルネマチック液晶の混合比は、左ねじれ高分子キラルネマチック液晶が87質量%、高分子アキラルネマチック液晶が13質量%となるようにした。また、高分子コレステリック液晶溶液中の液晶混合物の濃度は10質量%とした。
【0076】
この高分子コレステリック液晶溶液を、一方向にラビング処理したポリイミド配向膜(JSR(株)製1254)を持つガラス基板上に回転数4000rpm、回転時間1分でスピンコートした後、コレステリック液晶溶液に対し180℃に加熱して2分間硬化処理した。こうして、ガラス基板上のポリイミド配向膜上に、良好に配向した厚さ0.484μm(=484nm)の高分子コレステリック液晶フィルム1を形成した。即ち配向基板4上にPCLCフィルム1を得た。このとき、PCLCフィルム1の螺旋軸はガラス基板の表面に垂直であった。またPCLCフィルム1について透過スペクトルを測定し、選択反射波長帯域において短波長端及び長波長端を算出した。そして、その算術平均により、PCLCフィルム1の選択反射の中心波長を決定した。その結果、選択反射の中心波長は532nmであった。またPCLCフィルム1の螺旋のピッチ数は484nm/(532/1.67)nm=1.52であった。ここで、コレステリック液晶のne、noはそれぞれ、1.78、1.56であり、上記「1.67」は、下記式:
【数1】


によって算出したものである。
【0077】
次に、PVA溶液をPCLCフィルム1上にスピンコートし、乾燥後、100℃で30分加熱し、厚さ0.35μmのPVA膜を得た。PVA溶液は、溶媒としての精製水にPVAを溶解することによって得た。このとき、PVA溶液中のPVA濃度が3質量%となるようにした。その後、PVA膜に対し、一定方向にラビング処理を施した。
【0078】
一方、PCLCフィルム2を形成するために、上記と同様にして高分子コレステリック液晶溶液を準備した。そして、この高分子コレステリック液晶溶液を用い、上記と同様にしてPVA膜上に、良好に配向した厚さ約0.484μmのPCLCフィルム2を形成した。このとき、PCLCフィルム2の螺旋軸はガラス基板の表面に垂直であった。
【0079】
またコレステリック液晶層1及びコレステリック液晶層2の積層体について透過スペクトルを測定し、選択反射波長帯域において短波長端及び長波長端を算出した。そして、その算術平均により、コレステリック液晶層1及びコレステリック液晶層2の積層体の選択反射の中心波長を決定した。その結果、選択反射の中心波長は532nmであった。またPCLCフィルムが同一材料で形成されているため、PCLCフィルム2は、PCLCフィルム1と同一の螺旋ピッチを有し、そのピッチ数は484nm/(532nm/1.67)=1.52ピッチであることが分かった。
【0080】
同様にして、PCLCフィルム2の上に、等方層であるPVA膜、PCLCフィルム、等方層であるPVA膜、PCLCフィルムを順次形成した。
【0081】
以上のようにして光反射フィルムを得た。光反射フィルムのうち配向基板を除いた部分の厚さは、0.484×4+0.35×3=2.98μmであった。
【0082】
(実施例2)
PCLCフィルムの数を3層とし、隣り合うPCLCフィルムによってPVAからなる等方層が挟まれるようにし、コレステリック液晶の螺旋のピッチ数を2.0、PVAからなる等方層の膜厚を0.50μmとしたこと以外は実施例1と同様にして光反射フィルムを作製した。作製した光反射フィルムのうち配向基板を除いた部分の厚さは2.0×(0.532/1.67)×3+0.50×2=2.91μmであった。
【0083】
(比較例1)
PCLCフィルムの数を3層とし、隣り合うPCLCフィルムによってPVAからなる厚さ0.52μmの等方層が挟まれるようにし、PCLCフィルムの螺旋のピッチ数を5.0とし、選択反射帯域の中心波長を540nmとしたこと以外は実施例1と同様にして光反射フィルムを作製した。作製した光反射フィルムのうち配向基板を除いた部分の厚さは5.0×(0.540/1.67)×3+0.52×2=5.89μmであった。
【0084】
(比較例2)
配向基板4上にPCLCフィルム1、厚さ0.52μmの等方層を形成し、PCLCフィルム1の螺旋のピッチ数を5.0とし、選択反射帯域の中心波長を540nmとしたこと以外は実施例1と同様にして光反射フィルムを作製した。作製した光反射フィルムのうち配向基板を除いた部分の厚さは5.0×(0.540/1.67)=1.62μmであった。
【0085】
(反射スペクトル及びx−y色座標の測定)
実施例1〜2および比較例1〜2で得られた光反射フィルムについて、反射スペクトルの測定を行った。結果を図4に示す。なお、反射スペクトルは、マイクロスコープスペクトルメータ(ORC製TFM-120AFT-PC)を用いて測定した。また、実施例1〜2および比較例1〜2で得られた光反射フィルムについて、x−y色座標を反射スペクトルから計算して求めた。結果を表3に示す。なお、表3の「層構成」について、「A」はコレステリック液晶層を、「B」は等方層を示している。またHXは、コレステリック液晶層の数がX個であることを意味する。
【表3】

【0086】
図4に示す結果より、実施例1〜2の光反射フィルムでは、青色波長付近を中心とした鋭い反射ピークと、緑色波長付近を中心とした鋭い反射ピークと、赤色波長付近を中心とした鋭い反射ピークとが確認された。また実際に、白色光源(白色LED ライト)を用いて、実施例1〜2の光反射フィルムに対し、光反射フィルムの厚さ方向に白色光を入射させたところ、光反射フィルムは白色に見えた。さらにx−y色座標も、本明細書で言う白色に相当するものであった。
【0087】
これに対し、比較例1〜2の光反射フィルムでは、複数の鋭い反射ピークが確認されなかった。また実際に、比較例1〜2の光反射フィルムに対しても実施例1〜2と同様にして白色光を入射させたところ、光反射フィルムは、緑色を示すことが確認された。さらにx−y色座標は、本明細書で言う白色から外れるものであった。
【0088】
なお、実施例2の光反射フィルムの反射スペクトルと、図3における「b2」の光反射フィルムの反射スペクトルのシミュレーション結果とを比較すると、結果が概ね類似しており、x−y色座標も互いに近い位置にあった。また、比較例1の光反射フィルムの反射スペクトルと、図3における「e2」の光反射フィルムの反射スペクトルのシミュレーション結果とを比較しても、結果が概ね類似しており、x−y色座標も互いに近い位置にあった。従って、上記シミュレーション結果と実施例及び比較例の結果とで大きな差は見られず、シミュレーション結果の信頼性も十分に高いものと考えられる。
【0089】
以上のことから、本発明の光反射フィルムによれば、薄くても、白色光を十分な強度で反射できることが確認された。
【0090】
(実施例3)
次に、実施例1で得られた光反射フィルム(コレステリック/PVA多層膜)M1を用いてレーザ発振素子の作製を試みた。すなわち、PCLCフィルムが4層、隣接するPCLCフィルムに挟まれたPVA膜が3層である光反射フィルムM1を2枚用意した。光反射フィルムM1において、ガラス基板よりもっとも遠い場所に位置するPCLC層同士を、直径2μmのスペーサービーズを介して、互いに向かい合うように重ねた。
【0091】
次に、レーザ発振用色素を含有した低分子ネマチック液晶を次のようにして用意した。即ちまず、メルク社製低分子ネマチック液晶(ZLI−2293)100重量部に、レーザ色素としてクマリン153(Lambda Physik社製)およびDCM(Exciton社製)が0.49重量部、0.15重量部の濃度となるよう混合した。これらレーザ色素の化学構造式は図6に示す通りである。こうして得られたレーザ色素含有低分子ネマチック液晶を88℃に加熱し等方相となった状態で、光反射フィルムM1同士を重ねてできた厚さ2μmの隙間に毛細管現象を利用して注入し、多層膜(レーザ発振素子)M2を得た。
【0092】
次に、Nd:YAGレーザの第3高調波をオプティカルパラメトリック発振器(Optical Parametric Oscillator:OPO)に入射することで得られる波長420nmのパルスレーザビームを多層膜M2に照射し、光励起した。
【0093】
照射エネルギーが21.5μJ/パルスの時には、図7に示すように、508nmに1つのピークを持つレーザ発振が多層膜M2より生じた。この時、発光スペクトルの色はCIE色座標上で(0.35,0.54)の黄緑色であり、ピーク波長は(0.04,0.79)の深緑色であった。
【0094】
照射エネルギーを高め31.1μJ/パルスとした時には、図8に示すように、508nmと488nmに2つのピークを持つレーザ発振が生じた。発光スペクトルの色はCIE色座標上で(0.30,0.55)の黄緑色であり、2つのピーク波長はそれぞれ(0.05,0.0.28)および(0.05,0.82)であった。
【0095】
さらに照射エネルギーを高め49.9μJ/パルスとした時には、図9に示すように、508nm、488nm、595nmに3つのピークを持つレーザ発振が生じた。この時、発光スペクトルの色はCIE色座標上で(0.29,0.51)の緑色であり、3つのピーク波長はそれぞれ(0.05,0.26)、(0.02,0.75)および(0.61,0.39)であった。なお、図7〜9には、発振スペクトルのグラフ中に、発振ピークと色座標との関係を示してある。
【0096】
このように本発明による光反射フィルムを用いることで容易にレーザ発振素子が得られることが分かり、また、励起エネルギーの調整によりレーザ光の発光ピークを調整できることが分かった。さらに、照射エネルギーを低くすることで可視光の波長領域に3つの発振ピークが観測されることが確認された。このことから、波長を選択的に反射するフィルタを用いれば、3種類の波長の光を取り出すことができることも分かった。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明に係る光反射フィルムの一実施形態を示す側面図である。
【図2】光反射フィルムにおけるPVA層の膜厚を変化させたときの反射スペクトルのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図3】光反射フィルムにおけるコレステリック液晶層のコレステリック液晶における螺旋ピッチ数を変化させたときの反射スペクトルのシミュレーション結果を示すグラフである。
【図4】実施例1〜2及び比較例1〜2の光反射フィルムに係る反射スペクトルの測定結果を示すグラフである。
【図5】本発明のレーザ発振素子の一実施形態を示す側面図である。
【図6】実施例3で用いたレーザ色素の化学構造式を示す図である。
【図7】実施例3に係るレーザ発振素子に21.5μJ/Pulseの照射エネルギーの励起光を照射したときのレーザ発振スペクトルを示すグラフである。
【図8】実施例3に係るレーザ発振素子に31.1μJ/Pulseの照射エネルギーの励起光を照射したときのレーザ発振スペクトルを示すグラフである。
【図9】実施例3に係るレーザ発振素子に49.9μJ/Pulseの照射エネルギーの励起光を照射したときのレーザ発振スペクトルを示すグラフである。
【符号の説明】
【0098】
1、2…コレステリック液晶層、3…等方層、10…光反射フィルム、100…レーザ発振素子、101…第1光反射フィルム、102…第2光反射フィルム、103…異方性媒質層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コレステリック液晶を含む複数のコレステリック液晶層と、
隣り合う前記コレステリック液晶層の間に設けられ、等方性媒体からなる等方層とを備えており、
複数の前記コレステリック液晶層における前記コレステリック液晶の螺旋のピッチ数が2以下で且つ螺旋の掌性が同一であり、
複数の前記コレステリック液晶層における前記コレステリック液晶の螺旋のピッチが同一であり、
前記コレステリック液晶の選択反射帯域の中心波長が500〜560nmであり、
前記等方層の厚さが0.3μmより大きい、光反射フィルム。
【請求項2】
前記等方性媒体がポリビニルアルコールである、請求項1に記載の光反射フィルム。
【請求項3】
互いに対向して配置される第1及び第2光反射フィルムと、
前記第1光反射フィルムと前記第2光反射フィルムとの間に設けられ、異方性媒質を含有する異方性媒質層とを備えており、
前記第1及び第2光反射フィルムが請求項1又は2に記載の光反射フィルムであり、
前記第1光反射フィルム、前記異方性媒質層及び前記第2光反射フィルムのうちの少なくともいずれかの層に、光励起により蛍光を発する色素が含まれており、
前記第1光反射フィルムの反射スペクトルにおけるピークと、前記第2反射スペクトルにおけるピークとが可視光の波長領域において重なり合っており、
前記色素から発せられる蛍光の発光帯が可視光の波長領域内にある、レーザ発振素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−3400(P2009−3400A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226575(P2007−226575)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】