説明

光受信モジュール

【課題】誘電体基板上に形成された信号ラインのインピーダンスの調整を容易とした、光受信モジュールを提供する。
【解決手段】受光素子および回路素子が実装された誘電体積層パッケージと、受光素子に光ファイバを光学的に結合させるスリーブと、からなる光受信モジュールにおいて、誘電体積層パッケージは、少なくとも受光素子及び回路素子が実装される底部基板13aと、外部回路と電気的に接続する信号ラインが形成された配線基板13bと、金属層を有する上部基板13cと、を積層してなる。前記の配線基板13bの信号ライン18の一部に、上部基板13cの一部が重なるように配されると共に、信号ライン17と上部基板13cとの間に隙間を設けて、信号ラインのインピーダンスを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバによる光通信に用いられる光受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
光通信に用いられる光受信モジュールは、フォトダイオードなどの受光素子とトランスインピーダンスアンプ(TIA)などの集積回路(IC)を収納実装したパッケージと、受光素子に光ファイバを光学的に結合させるファイバ接続用のスリーブと、で構成される。上記のパッケージには、例えば、特許文献1に開示されるように、セラミック等の誘電体で形成された矩形枠状の誘電体基板を複数積層した形状のものを用いることが知られている。なお、スリーブは、調芯の後、パッケージに接着材等により接着一体化される。
【0003】
また、上記の特許文献1には、誘電体基板上に信号線(信号ライン)を形成すると共に、信号線の両側にグランド線(金属層)を配置するか、若しくは、基板の誘電体を介してグランド線を対向配置させてマイクロストリップ線路等を形成することが開示されている。そして、グランド線の間隔や幅を変えることで、信号線の静電容量を調整しインピーダンス整合をとることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−151053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献1には、誘電体積層パッケージを用いた光受信モジュールで、信号ラインを有する誘電体基板の上面側、若しくは下面側に金属層を有する誘電体基板を重ねることにより、信号ラインに対する静電容量(インピーダンス)を変え、外部回路とのインピーダンス整合を図ることが開示されている。
しかしながら、信号ラインに対して積層する誘電体基板の厚さは一定であるため、段階的なステップでしかインピーダンスを変えることができず、細かなインピーダンス整合を図ることは困難であった。
【0006】
本発明は、上述した実状に鑑みてなされたもので、誘電体基板上に形成された信号ラインのインピーダンスの調整を容易とした、光受信モジュールの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による光受信モジュールは、受光素子および回路素子が実装された誘電体積層パッケージと、受光素子に光ファイバを光学的に結合させるスリーブと、からなる光受信モジュールであって、誘電体積層パッケージは、少なくとも受光素子及び回路素子が実装される底部基板と、外部回路と電気的に接続する信号ラインが形成された配線基板と、金属層を有する上部基板と、を積層してなる。前記の配線基板の信号ラインの一部に、上部基板の一部が重なるように配されると共に、信号ラインと上部基板との間に隙間を設けて、信号ラインのインピーダンスが調整されていることを特徴とする。
【0008】
なお、前記の信号ラインは、平行導体からなる差動信号ラインで形成することができ、また、途中で平行導体の間隔が広げられ、ビアホールを経て外部回路への接続端子に電気的に接続される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、誘電体積層パッケージの大きさを増加させることなく、誘電体基板上に形成された信号ラインのインピーダンスの調整を細かに行うことができ、インピーダンス整合を良好にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明による光受信モジュールの一例を示す図である。
【図2】本発明による光受信モジュールの誘電体積層パッケージの概略を説明する図である。
【図3】本発明による光受信モジュールの信号ラインの一例を説明する図である。
【図4】図3の信号ラインの詳細を説明する図である。
【図5】信号ラインと誘電体層間の隙間幅とインピーダンスの変化状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図により本発明の概略を説明する。図1,2において、10は光受信モジュール、11は誘電体積層パッケージ(パッケージ)、12はスリーブ、12aはジョイントスリーブ、13は基板積層体部、13aは底部基板、13bは配線基板、13cは上部基板、14はシールリング、15はリッド、15aは光学窓部、16は端子部、17は信号ライン、17a,17bはライン部分、17cはビアホール接続部分、18はグランドライン、19はボンディングワイヤ、20は半導体デバイス、20aは端子電極を示す。
【0012】
本発明による光受信モジュール10は、例えば、図1(A)に示すように、誘電体積層パッケージ11(以下、パッケージという)に、スリーブ12を接着により結合一体化して構成される。パッケージ11は、図1(B)に示すように、アルミナや窒化アルミ等のセラミック誘電体からなる複数の基板を積層した基板積層体部13の上部に、金属製のシールリング14を介してリッド15を密封的に接合して成る。
【0013】
パッケージ11の基板積層体部13内には、図2に示すように、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードなどの受光素子やトランスインピーダンスアンプなどの回路素子等の半導体デバイス20が導電樹脂や半田等で実装される。また、半導体デバイス20の上面にある端子電極20aは、後述する信号ライン17等にボンディングワイヤ19により電気的に接続される。
【0014】
光受信モジュールのパッケージ11内の配線で、ボンディングワイヤ19によるインダクタンスを低減するのにワイヤ長さを短くするのが好ましい。このため、通常、半導体デバイスの端子電極20aの位置と信号ライン17の位置が、ほぼ同じ程度になるようにする。例えば、半導体デバイス20の実装面と信号ライン17とは、半導体デバイス20の高さ相当分の段差を有するように設けられる。他方、信号ライン17はビアホール等を介して外部回路に接続する必要があり、このため信号ライン17からビアホールまでは所定の配線長を有する。
【0015】
他方、信号ライン17は配線基板13b、底部基板13aのビアホール等を介して、外部回路に接続するための端子部16に接続する必要がある。例えば、配線基板13b上に形成されるビアホールは、構造上の制約や差動ビアホールのインピーダンス整合を取るため、基板端からビアホールまでに距離や、各ビアホール間の距離を離す必要がある。したがって、信号ライン17からビアホールまでは、所定の配線長を有することになる。
【0016】
基板積層体部13の上面には、金属製のシールリング14が半田付け等により接合され、このシールリング14を介して金属製のリッド15がシーム溶接または半田材で、気密に接合される。また、図では省略されているが、集光用レンズが基板積層体部13内、若しくは、リッド15の光学窓部15a等に固定されて配設される。
【0017】
基板積層体部13は、例えば、セラミック誘電体からなる外形が同一寸法の矩形状に形成された底部基板13a、フレーム枠状の中間の配線基板13b、フレーム枠状の上部基板13cを積層して構成される。底部基板13aは、半導体デバイス20等を導電接着剤や半田材で実装する実装面を有し、また、外部回路への接続用の端子部16を有している。中間の配線基板13bは、実装された半導体デバイス20等からの電気信号を外部回路に伝送する信号ライン、上記の底部基板13aの端子部16への電気接続を形成するビアホール(図4参照)等を有している基板である。上部基板13cは、配線基板13bと金属製のシールリング14との間に配された最上部に位置する基板で、上面にシールリング14を接合する金属層を有している。
【0018】
リッド15には、信号光が通る光学窓部15aが設けられていて、この光学窓部15aを中心として光ファイバを結合させるスリーブ12が接合される。スリーブ12は、ジョイントスリーブ12aを用いて、軸方向(Z方向)の調芯を行い、ジョイントスリーブ12aとリッド15の上面との間で、面方向(X,Y方向)の調芯を行った後、接合固定される。
スリーブ12及びジョイントスリーブ12aは、金属製(例えば、ステンレス材)又は樹脂製(例えば、ポリエーテルイミド)などで形成され、金属製の場合はYAG溶接等により接合固定され、樹脂製の場合はエポキシ系接着剤等で接合固定される。
【0019】
図3,4は、パッケージ11内の信号ライン17について説明する図である。図3(A)に示すように、配線基板13b上に設けられる信号ライン17は、例えば、対にされた平行導体からなる差動信号ラインで形成することができる。この平行導体は、例えば、半導体デバイス側にボンディングワイヤ接続されるライン部分17aと、端子部に通じるライン部分17bと、ビアホール23[(図4(B)参照]に接続されるビアホール接続部分17cと、で形成される。また、この信号ライン17の両側にグランドライン18を設け、コプレーナ線路として所定の特性インピーダンスが得られるようにすることができる。
【0020】
半導体デバイス側のライン部分17aは、半導体デバイスの端子電極の間隔に合わせた狭い間隔で形成することができる。しかし、ビアホール23は、その構造上ある程度の間隔が必要で、通常、その間隔は半導体デバイス側の端子電極間隔より大きい。このため、ビアホール接続部分17cの間隔に合わせて形成されるライン部分17bの間隔は、半導体デバイス側のライン部分17aの間隔より幅広となる。幅広のライン部分17bの領域E2は、幅狭のライン部分17aの領域E1よりインピーダンスが高くなり、インピーダンス整合させるのが難しくなる。
【0021】
本発明においては、配線基板13bとシールリング14との間に配されシールリングの接合に用いられる上部基板13cが、インピーダンスが高くなるライン部分17bを覆うように構成することを特徴とする。この場合、図3(A)に示すように、上部基板13cの内側縁部を点線位置まで延長させて覆うようにしても良いが、図3(B)に示すように、上部基板13cの形状を内側に寄せるようにしても良い。図3(B)の場合は、パッケージの外形寸法を距離Dだけ縮小することができ、小型化することも可能となる。
【0022】
上部基板13cの上面には、図3(C)及び図4に示すように、シールリングを接合するための金属層21が形成されていて、この金属層21を接地電位とすることによりグランド層とすることができる。この場合、上部基板13cが重なる信号ライン17の領域E2は、マイクロストリップ線路として見ることができ、その領域の誘電率を大きくすることができる。この結果、信号ライン17のライン部分17bの特性インピーダンスを低くすることが可能となる。
【0023】
しかしながら、上部基板13cに標準仕様のものを用いるとすれば、その誘電体層の厚さは均一で信号ライン17の特性インピーダンスを一様に低くすることができるとしても、整合させることができるとは限らない。したがって、図3(C)及び図4(B)(C)に示すように、信号ライン17と重なる部分の上部基板13cの誘電体層の厚さを変えることにより、インピーダンスの値を調整するようにする。
【0024】
具体的には、上部基板13cの下面側の誘電体層を部分的に削って信号ライン17と上部基板13cとの間に幅Gを有する隙間22を形成する。この結果、上部基板13cの誘電体層と隙間22の空気層の比率で、金属層21と信号ライン17間の誘電率を変えることができ、信号ライン17のインピーダンスを変えることができる。隙間22は、標準仕様の上部基板13cの一部を部分的に削りとるだけで容易に形成することができ、また、その削り量は変えることでインピーダンスを容易に調整することもできる。
【0025】
図5(A)は、信号ラインの具体例を説明する図である。配線基板13bは窒化アルミ(比誘電率8.8)で形成し、その基板上面に信号ライン17の平行導体を、導体幅W0.15mmで形成した。そして、信号ライン17の半導体デバイス側のライン部分17aの導体間の間隔S1を0.15mm、すなわち平行導体間のピッチP1を0.3mmとし、また、グランドライン18とライン部分17a間の間隔T1を0.15mmとした。他方、信号ライン17のビアホール側のライン部分17bの導体間の間隔S2を0.45mm、すなわち平行導体間のピッチP2を0.6mmとし、また、グランドライン18とライン部分17b間の間隔T2を0.45mmとした。
【0026】
上記のように形成した信号ライン17は、半導体デバイス側の幅狭のライン部分17aのインピーダンスは100Ω程度となる。一方、ビアホール側の幅広のライン部分17bのインピーダンスは140Ω程度となる。
図5(B)は、ビアホール側の幅広のライン部分17bの領域に、図3,4で説明したように、厚さ0.15mmの窒化アルミ(比誘電率8.8)の誘電体層に金属層を設けた上部基板13cが重ねるように積層し、ライン部分17bと上部基板13cの誘電体層との間の隙間幅Gを異ならせたときのインピーダンスの変化を示す図である。
【0027】
図5(B)に示すように、隙間の幅Gが小さければ、ライン部分17bのインピーダンスは低くなり、隙間の幅Gが大きければ、ライン部分17bのインピーダンスは高くなる。隙間の幅Gを0.02mm程度とすることにより、ビアホール側の幅広のライン部分17bのインピーダンスを100Ω程度とすることができ、半導体デバイス側の幅狭のライン部分17aのインピーダンスと整合させることができる。
【符号の説明】
【0028】
10…光受信モジュール、11…誘電体積層パッケージ(パッケージ)、12…スリーブ、12a…ジョイントスリーブ、13…基板積層体部、13a…底部基板、13b…配線基板、13c…上部基板、14…シールリング、15…リッド、15a…光学窓部、16…端子部、17…信号ライン、17a,17b…ライン部分、17c…ビアホール接続部分、18…グランドライン、19…ボンディングワイヤ、20…半導体デバイス、20a…端子電極、21…金属層(グランド層)、22…隙間、23…ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光素子および回路素子が実装された誘電体積層パッケージと、前記受光素子に光ファイバを光学的に結合させるスリーブと、からなる光受信モジュールであって、
前記誘電体積層パッケージは、少なくとも前記受光素子及び回路素子が実装される底部基板と、外部回路と電気的に接続する信号ラインが形成された配線基板と、金属層を有する上部基板と、を積層してなり、
前記配線基板の前記信号ラインの一部に、前記上部基板の一部が重なるように配されると共に、前記信号ラインと前記上部基板との間に隙間を設けて、前記信号ラインのインピーダンスが調整されていることを特徴とする光受信モジュール。
【請求項2】
前記信号ラインは、平行導体からなる差動信号ラインで形成されていることを特徴とする請求項1に記載の光受信モジュール。
【請求項3】
前記平行導体の間隔が途中から広げられて、ビアホールを介して外部回路への接続端子に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の光受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−73128(P2013−73128A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213618(P2011−213618)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】