説明

光受信装置および光増幅装置

【課題】光伝送品質を向上させること。
【解決手段】光受信装置100は、励起光源101と、光増幅媒体103と、光損失媒体104と、光モニタ107と、光受信機106と、光源駆動部110と、を備えている。励起光源101は、励起光を出力する。光増幅媒体103には、入力光と励起光が入力される。光損失媒体104には、光増幅媒体103からの出力光が入力される。光モニタ107は、光損失媒体104からの出力光のパワーを検出する。光源駆動部110は、光モニタ107で検出した出力光のパワーが一定になるように励起光源101を制御する。光受信機106は、光損失媒体104からの出力光を受信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光受信装置および光増幅装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光伝送システムでは、光信号の送出部や伝送経路の途中において、光ファイバの脱着や損失変動などにより、伝送される信号光のパワーが変動する場合がある。たとえば、複数の異なる波長の光信号を多重化するWDM(Wavelength Division Multiplexing)のネットワークにおいては、ROADM(Reconfigurable Optical Add/Drop Multiplexer)やOXC(Optical Cross−Connect)などが用いられる。このようなネットワークにおいては、光信号の挿入や分岐、光伝送路の切り替え、光伝送ファイバ断線などの障害により、光の入出力チャネル数や信号光レベルの急激な変化が生じる場合がある。
【0003】
また、複数の異なる波長の光信号が多重化されたWDM信号を一括して増幅する光増幅装置を光中継器として用いるネットワークがある。このようなネットワークにおいては、波長多重数の変化に伴う入力光レベルの変化に対して、光出力パワーを所定のレベルに光増幅装置がすみやかに制御できない場合には、伝送する波長ごとの信号光パワーの変動が発生する。
【0004】
光受信機を備えた光受信装置においては、これらの過渡的な変動によって光受信レベルがダイナミックレンジを逸脱すると、インサービスの伝送信号が影響を受けてエラーを生じる恐れがある。このため、光受信機に入力されるオーバーシュート/アンダーシュート量をダイナミックレンジ内に抑制できる構成が用いられる。
【0005】
たとえば、多値の差動位相変調方式の光受信装置においては、光受信機に到達した信号光を遅延させた光を参照光とし、参照光と信号光との干渉により光信号の位相検出を行うため、光受信機のダイナミックレンジは高い光レベルの限られた範囲に制約される。このため、光受信機の前段に光増幅装置を設けることで、光受信機のダイナミックレンジまで信号光のレベルを引き上げる構成がある。
【0006】
光増幅装置には、たとえば、エルビウム(Er3+)添加ファイバ(EDF:Erbium−Doped Fiber)を光増幅用媒体としたEDFA(EDF Amplifier)が用いられる。EDFAは、励起光源から出力される励起光を注入したEDFを光信号が進行することにより、誘導放出を生じさせて信号光の光パワーを増幅する。
【0007】
また、光受信機の前段に設けられる光増幅装置においては、制約されたダイナミックレンジを目標として、光受信機の光入力パワーが所定のレベルに制御されるよう、ALC(Auto Level Control:レベル一定制御)方式の制御が行われる。ただし、ALCを行う構成においても、信号光のパワーが急激に変動すると、光増幅装置の利得が追従できず、光受信機の受信パワーがダイナミックレンジから逸脱することがある。
【0008】
これに対して、たとえば、光入力パワーの低下からの復旧や光サージを検出し、EDFからの光出力パワーが定常状態に戻るまでの期間、波長可変光フィルタの透過波長を光信号の波長帯域外に変更し、超過した光パワーが光受信器へ入力されることを阻止する技術が開示されている(たとえば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平8−331048号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来技術では、光伝送品質を向上させることが困難という問題がある。たとえば、上記特許文献1に示す技術では、中心波長に強度が集中した線幅を持つ信号光が光フィルタにより阻止されると、光信号が疎通せずに光信号断となる場合がある。また、上記特許文献1に示す技術では、たとえば波長可変光や光フィルタ制御部を設けることになるため、構成が複雑で高価になる。
【0011】
開示の光受信装置および光増幅装置は、上述した問題点を解消するものであり、光伝送品質を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、開示技術は、励起光を出力する励起光源と、入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、前記光損失媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
開示の光受信装置および光増幅装置によれば、光伝送品質を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる光受信装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、光損失の大きさと利得の応答特性との関係を示すグラフである。
【図3−1】図3−1は、光損失媒体を設けないと仮定した場合において光入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図3−2】図3−2は、実施の形態1にかかる光受信装置において光入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す参考図である。
【図4−1】図4−1は、光損失媒体を設けないと仮定した場合において光入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図4−2】図4−2は、実施の形態1にかかる光受信装置において光入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す参考図である。
【図5】図5は、実施の形態1にかかる光受信装置の変形例を示す図である。
【図6】図6は、信号光の波長と利得の応答特性との関係を示すグラフである。
【図7−1】図7−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図7−2】図7−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図7−3】図7−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図8−1】図8−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図8−2】図8−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図8−3】図8−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態2の光受信装置の構成例を示す図である。
【図10】図10は、実施の形態2にかかるコヒーレント検波方式の光受信機の一例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態2にかかる光受信装置を適用した受信局の一例を示す図である。
【図12−1】図12−1は、光信号の波長と光受信パワーの過多変動特性との関係を示すグラフである。
【図12−2】図12−2は、光信号の波長と光受信パワーの過少変動特性との関係を示すグラフである。
【図13】図13は、対応情報が示す波長と光損失との関係を示すグラフである。
【図14】図14は、波長と光損失とを対応付けるテーブルの一例を示す図である。
【図15】図15は、実施の形態2にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図16−1】図16−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図16−2】図16−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図16−3】図16−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図17−1】図17−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図17−2】図17−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図17−3】図17−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。
【図18】図18は、実施の形態2にかかる光受信装置の変形例を示す図である。
【図19】図19は、実施の形態3にかかる光受信装置の構成例を示す図である。
【図20】図20は、実施の形態3にかかるコヒーレント検波方式の光受信機の一例を示す図である。
【図21】図21は、実施の形態3にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図22】図22は、実施の形態3にかかる光受信装置の変形例を示す図である。
【図23】図23は、実施の形態4にかかる光受信装置の構成例を示す図である。
【図24】図24は、実施の形態4にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。
【図25】図25は、実施の形態4にかかる光受信装置の変形例を示す図である。
【図26】図26は、実施の形態5にかかる光受信装置の構成例を示す図である。
【図27】図27は、実施の形態6にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。
【図28】図28は、実施の形態7にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。
【図29】図29は、実施の形態8にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に添付図面を参照して、開示技術の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
<光受信装置の構成例>
図1は、実施の形態1にかかる光受信装置の構成例を示す図である。実施の形態1にかかる光受信装置100は、入力された信号光を増幅して受信する光受信装置である。図1に示すように、光受信装置100は、励起光源101と、合波部102と、光増幅媒体103と、光損失媒体104と、分岐部105と、光受信機106と、光モニタ107と、ALC基準部108と、比較演算部109と、光源駆動部110と、を備えている。
【0017】
光受信装置100へ入力された信号光は、合波部102へ入力される。励起光源101は、光源駆動部110から出力される駆動電流に応じたパワーの励起光を生成し、生成した励起光を合波部102へ出力する。励起光源101には、たとえば、LD(Laser Diode:レーザーダイオード)を用いることができる。合波部102は、入力された信号光(入力光)と、励起光源101から出力された励起光と、を合波する。合波部102は、合波した信号光および励起光を光増幅媒体103へ出力する。
【0018】
光増幅媒体103は、合波部102から出力された信号光および励起光を透過させることで、合波部102から出力された信号光を増幅する。光増幅媒体103は、増幅した信号光を光損失媒体104へ出力する。光増幅媒体103には、たとえば、エルビウム(Er3+)添加ファイバ(EDF)を用いることができる。光増幅媒体103は、光増幅媒体103の出力パワーが高くなるほど、入力される励起光のパワーの変化に対する利得の応答が速くなる特性を有する。
【0019】
光損失媒体104は、光増幅媒体103から出力された信号光を減衰させる。光損失媒体104は、減衰させた信号光を分岐部105へ出力する。分岐部105は、光損失媒体104から出力された信号光を分岐し、分岐した各信号光をそれぞれ光受信機106および光モニタ107へ出力する。
【0020】
光受信機106は、分岐部105から出力された信号光を受信する。光受信機106は、受信結果を示す情報信号を出力する。光モニタ107は、分岐部105から出力された信号光のパワーをモニタし、モニタしたパワーを示す信号を比較演算部109へ出力する。ALC基準部108は、所定のパワーを示す基準信号を比較演算部109へ出力する。基準信号が示す所定のパワーは、具体的には、光受信機106によって受信される信号光の目標のパワーである。光受信機106によって受信される信号光の目標のパワーは、たとえば、光受信機106のダイナミックレンジ内の光レベルに設定される。
【0021】
比較演算部109は、光モニタ107からの信号とALC基準部108からの基準信号とを比較する。そして、比較演算部109は、光モニタ107からの信号が示すパワーと、ALC基準部108からの基準信号が示すパワーと、の差分を示す差分信号を光源駆動部110へ出力する。したがって、比較演算部109が出力する差分信号は、光受信機106によって受信される信号光のパワーの目標値と、光受信機106によって実際に受信されている信号光のパワーと、の差分を示す。
【0022】
光源駆動部110は、比較演算部109から出力された差分信号に基づく駆動電流を励起光源101へ出力することで、励起光源101が出力する励起光のパワーを制御する制御部である。具体的には、光源駆動部110は、差分信号が示す差分が小さくなるよう(たとえば0になるように)に励起光源101への駆動信号を変化させる。たとえば、光源駆動部110は、差分信号に基づいて、光受信機106によって受信されている信号光のパワーが目標のパワーより低い場合は、励起光源101から出力される励起光のパワーが増加するように励起光源101への駆動信号を変化させる。
【0023】
また、光源駆動部110は、差分信号に基づいて、光受信機106によって受信されている信号光のパワーが目標のパワーより高い場合は、励起光源101から出力される励起光のパワーが低下するように励起光源101への駆動信号を変化させる。これにより、光受信機106によって受信される信号光のパワーが一定となるように励起光のパワーを増減させるALCのフィードバックループを実現することができる。
【0024】
また、光受信装置100は、光増幅媒体103の後段に光損失媒体104を備えているため、光損失媒体104がない場合に比べて、光モニタ107によってモニタされるパワーが低くなる。このため、ALCにより、励起光源101から出力される励起光のパワーが高くなり、その結果、光増幅媒体103からの出力パワーも高くなる。これにより、励起光のパワーの変化に対する光増幅媒体103の利得の応答が速くなる。
【0025】
<光増幅媒体の利得の応答特性>
図2は、光損失の大きさと利得の応答特性との関係を示すグラフである。図2は、励起光パワーの周期的な変調に対してEDFの利得が追従する速さを示す。図2において、横軸は、励起光のパワーの周期的な変調の周波数[kHz]を示している。縦軸は、光増幅媒体103における交流成分の利得[dB]を示している。
【0026】
応答特性201〜203は、それぞれ光損失媒体104における光損失が0[dB]、2[dB]および4[dB]である場合の、励起光の変調の周波数に対する光増幅媒体103における交流成分の利得の特性を示している。なお、光損失媒体104における光損失は、光増幅媒体103の出力パワーの増加分に相当する。光信号の波長はたとえば1563.45[nm]である。
【0027】
励起光の変調の周波数が比較的低い場合は、光増幅媒体103における利得は励起光のパワーの変化に追従する。このため、励起光の変調の周波数が比較的低い場合は、光増幅媒体103の利得はほぼ一定である。一方、励起光の変調の周波数が比較的高い場合は、光増幅媒体103における利得は励起光のパワーの変化に追従できなくなる。このため、励起光の変調の周波数が比較的高い場合は、光増幅媒体103における利得は、励起光の変調の周波数が高くなるほど小さくなる。たとえば、励起光の変調の周波数が100[kHz]以上である場合は、光増幅媒体103における利得の応答は微小となる。
【0028】
応答特性201〜203において、たとえば、変調の周波数が比較的低い場合の一定の利得(約+28[dB])を基準として、基準の利得から3[dB]低下する変調の周波数は、それぞれ380[Hz]、540[Hz]、860[Hz]となっている。したがって、光損失媒体104における光損失が大きいほど、利得が低下する変調の周波数が高くなり、励起光のパワーの変化に対して光増幅媒体103の利得の応答が速くなる。光増幅媒体103の出力パワーが大きくなると光増幅媒体103の利得の応答が速くなる特性は、1563.45[nm]と異なる波長の光についても同様である。
【0029】
<光入力パワーの変動時の各特性の変化>
図3−1は、光損失媒体を設けないと仮定した場合において光入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図3−2は、実施の形態1にかかる光受信装置において光入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す参考図である。図3−1,図3−2のグラフ310,320,330,340において、横軸は共通の時間[ms]を示している。
【0030】
図3−1,図3−2のグラフ310の縦軸は、光受信装置100へ入力される信号光のパワー(光入力パワー)[dBm]を示している。ここで、光受信装置100へ入力される信号光の波長は1563.45[nm]とする。グラフ310の光入力パワー変化311は、光受信装置100へ入力される信号光のパワーの時間変化を示している。
【0031】
図3−1,図3−2のグラフ320の縦軸は、光増幅媒体103へ入力される励起光のパワー[mW]を示している。グラフ320の励起光パワー応答321は、ALCによる、光入力パワー変化311に対する励起光のパワーの応答を示している。
【0032】
図3−1,図3−2のグラフ330の縦軸は、光増幅媒体103による信号光の利得[dB]を示している。グラフ330の利得応答331は、励起光パワー応答321に対する利得の応答を示している。グラフ330の利得応答332は、励起光パワー応答321に対して、光受信機106によって受信される信号光のパワーを一定に保つ、光増幅媒体103の利得の理想的な応答を参考として示している。
【0033】
図3−1,図3−2のグラフ340の縦軸は、光受信機106によって受信される信号光のパワー(光受信パワー)の変化量[dB]を示している。グラフ340の光受信パワー変化341は、光受信機106によって受信される信号光のパワーの時間変化を示している。
【0034】
また、図3−1,図3−2は、光入力パワー変化311に示すように、光受信装置100への光入力パワーが、−11.0[dBm]から150[μs]かけて6[dB]増加した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。
【0035】
まず、光受信装置100に光損失媒体104を設けないと仮定した場合について参考として説明する。この場合の光受信装置100の各特性の変化は図3−1のようになる。光受信装置100への光入力パワーが急激に増加すると、図3−1の励起光パワー応答321に示すように、光源駆動部110によるALCによって励起光のパワーが急激に低下する。励起光のパワーが低下すると、図3−1の利得応答331に示すように、光増幅媒体103の利得は低下する。ここで、励起光のパワーが急激に低下すると、光増幅媒体103の利得応答331は理想的な利得応答332に比べて遅延する。
【0036】
このため、光増幅媒体103の利得の低下が遅延する。光入力パワーの増加時に光増幅媒体103の利得の低下が遅延すると、図3−1の光受信パワー変化341に示すように、光受信機106の光受信パワーは増加する。図3−1に示す例では、光受信機106の光受信パワーは2.9[dB]増加している。
【0037】
また、光受信装置100への光入力パワーが急激に低下すると、図3−1の励起光パワー応答321に示すように、光源駆動部110によるALCによって励起光のパワーが急激に増加する。励起光のパワーが増加すると、図3−1の利得応答331に示すように、光増幅媒体103の利得は増加する。ここで、励起光のパワーが急激に増加すると、光増幅媒体103の利得応答331が理想的な利得応答332に比べて遅延する。
【0038】
このため、光増幅媒体103の利得の増加が遅延する。光入力パワーの低下時に光増幅媒体103の利得の増加が遅延すると、図3−1の光受信パワー変化341に示すように、光受信機106の光受信パワーは低下する。図3−1に示す例では、光受信機106の光受信パワーは1.0[dB]低下している。
【0039】
たとえば、光受信機106のダイナミックレンジが最大+1.8[dB]、最小−1.0[dB]に定められている場合は、図3−1に示す例では光受信機106の光受信パワーがダイナミックレンジを逸脱することになる。
【0040】
これに対して、光受信装置100においては、光増幅媒体103の後段に光損失媒体104を設ける。ここで、光損失媒体104の光損失を4[dB]とする。この場合は、光源駆動部110によるALCにより、光増幅媒体103の出力パワーは4[dB]増加する。この場合は、光受信装置100の各特性は図3−2のようになる。
【0041】
具体的には、光損失媒体104を設けることで、光モニタ107によってモニタされる信号光のパワーが低下する。これに対して、光源駆動部110は、図3−1,図3−2のグラフ320を比較すると分かるように、励起光のパワーを増加させる。
【0042】
この結果、光増幅媒体103の出力パワーが増加する。光増幅媒体103の出力パワーが増加すると、励起光のパワーの変化に対して光増幅媒体103の利得の応答が速くなる(たとえば図2参照)。これにより、図3−2のグラフ330に示すように、光受信装置100への光入力パワーの増加に対する、光増幅媒体103の利得の低下の遅延が小さくなる。このため、図3−2のグラフ340に示すように、光受信機106の光受信パワーの増加を抑えることができる。図3−2に示す例では、光受信機106の光受信パワーの増加は1.5[dB]に抑えられている。
【0043】
また、図3−2のグラフ330に示すように、光受信装置100への光入力パワーの低下に対する、光増幅媒体103による利得の増加の遅延が小さくなる。このため、光受信機106の光受信パワーの低下を抑えることができる。図3−2に示す例では、光受信機106の光受信パワーの低下は0.5[dB]に抑えられている。
【0044】
たとえば、光受信機106のダイナミックレンジが最大+1.8[dB]、最小−1.0[dB]に定められている場合は、図3−2に示す例では光受信機106の光受信パワーはダイナミックレンジに収まる。このため、伝送信号のエラーを抑えることができる。このように、光損失媒体104を設けることで、光入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0045】
図4−1は、光損失媒体を設けないと仮定した場合において光入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図4−2は、実施の形態1にかかる光受信装置において光入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す参考図である。
【0046】
図4−1,図4−2において、図3−1,図3−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図4−1,図4−2は、光入力パワー変化311に示すように、光受信装置100への光入力パワーが、−17.5[dBm]から150[μs]かけて4.5[dB]低下した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。
【0047】
まず、光受信装置100に光損失媒体104を設けないと仮定した場合について説明する。図4−1に示す場合も、図3−1に示した場合と同様に、光受信装置100への光入力パワーが急激に増加すると、図4−1の光受信パワー変化341に示すように、光受信機106の光受信パワーは増加する。図4−1に示す例では、光受信機106の光受信パワーは1.2[dB]増加している。
【0048】
また、光受信装置100への光入力パワーが元に戻ると、図4−1の励起光パワー応答321に示すように、光源駆動部110によるALCにより励起光のパワーが増加する。ただし、利得応答331が遅いため、図4−1の光受信パワー変化341に示すように、光受信機106の光受信パワーが一時的に低下する。図4−1に示す例では、光受信機106の光受信パワーは0.4[dB]低下している。
【0049】
これに対して、光受信装置100においては、光増幅媒体103の後段に光損失媒体104を設けることで、各特性は図4−2のようになる。具体的には、光損失媒体104を設けることで、図4−2のグラフ330に示すように、光受信装置100への光入力パワーの増加に対する、光増幅媒体103による利得の低下の遅延が小さくなる。このため、図4−2のグラフ340に示すように、光受信機106の光受信パワーの増加を抑えることができる。図4−2に示す例では、光受信機106の光受信パワーの増加は0.3[dB]に抑えられている。
【0050】
また、図4−2のグラフ330に示すように、光受信装置100への光入力パワーの低下に対する、光増幅媒体103による利得の増加の遅延が小さくなる。このため、光受信機106の光受信パワーの低下を抑えることができる。図4−2に示す例では、光受信機106の光受信パワーの低下は0.1[dB]に抑えられている。
【0051】
このように、光損失媒体104を設けることで、光入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0052】
<光受信装置の変形例>
図5は、実施の形態1にかかる光受信装置の変形例を示す図である。図5において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図5に示すように、実施の形態1にかかる光受信装置100において、分岐部105を光増幅媒体103と光損失媒体104との間に設けてもよい。この場合は、ALC基準部108が出力する基準信号は、光受信機106の目標の光受信パワーに光損失媒体104の光損失分を加算したパワーを示す信号とする。
【0053】
この場合も、光源駆動部110によるALCにより、光受信機106の光受信パワーを目標のパワーで一定にすることができる。また、ALCの目標値は、光受信機106の目標の光受信パワーに光損失媒体104の光損失分を加算したパワーとなるため、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくし、光増幅媒体103の利得の応答を速くすることができる。このため、光入力パワーの変化による光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0054】
このように、実施の形態1にかかる光受信装置100によれば、光受信機106の光受信パワーが一定になるように利得が制御される光増幅媒体103の後段に光損失媒体104を設けることで、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくすることができる。これにより、光入力パワーの変化に伴う励起光のパワーの変化に対する光増幅媒体103の利得の応答を速くし、光入力パワーの変化による光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。このため、簡単な構成で光伝送品質の向上を図ることができる。また、特定の波長に強度が集中した線幅を持つ信号光が入力されても、光フィルタを用いる構成のように光信号断となることを回避することができる。
【0055】
(実施の形態2)
光損失媒体104の光損失が大きいと、ALCによって励起光のパワーが大きくなる。たとえば、光受信装置100への光入力パワーが−17.5[dBm]である場合の励起光のパワーは、図4−1に示す例では49.5[mW]であるのに対し、図4−2に示す例では92.2[mW]となる。このため、励起光源101の消費電力が大きくなる。
【0056】
また、たとえば、光受信装置100をWDM光伝送システムの受信局における各チャネルに適用する場合は、各チャネルの光受信装置100において消費電力が大きくなるため、受信局における合計の消費電力はさらに大きくなる。これに対して、実施の形態2にかかる光受信装置100においては、信号光の波長と光増幅媒体の利得の応答特性との関係を利用して、信号光の波長に応じて光損失を設定することで消費電力の増加を抑える。
【0057】
<信号光の波長と光増幅媒体の利得の応答特性との関係>
図6は、信号光の波長と利得の応答特性との関係を示すグラフである。図6において、横軸は、励起光のパワーの周期的な変調の周波数[kHz]を示している。縦軸は、光増幅媒体103における交流成分の利得[dB]を示している。応答特性601〜603は、信号光の波長がそれぞれ1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]である場合の、励起光の変調の周波数に対する光増幅媒体103の利得の特性を示している。
【0058】
応答特性601〜603において、光増幅媒体103の出力パワーは同じであるとする。応答特性601〜603において、励起光の変調の周波数が比較的低い場合は、光増幅媒体103の利得はほぼ一定である。一方、励起光の変調の周波数が比較的高い場合は、光増幅媒体103における利得は、励起光の変調の周波数が高くなるほど小さくなる。
【0059】
応答特性601〜603において、たとえば、変調の周波数が比較的低い場合の一定の利得(約28[dB])を基準として、基準の利得から3[dB]低下する変調の周波数は、それぞれ750[Hz]、510[Hz]、380[Hz]となっている。このように、信号光の波長が短いほど、利得が低下する変調の周波数が高くなる。すなわち、信号光の波長が短いほど、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる。
【0060】
<実施の形態1にかかる信号波長ごとの光入力パワーの変動時の各特性の変化>
図7−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図7−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図7−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図7−1〜図7−3において、図3−1,図3−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
図7−1〜図7−3は、光入力パワー変化311に示すように、実施の形態1にかかる光受信装置100への光入力パワーが、−11.0[dBm]から150[μs]かけて6[dB]増加した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。信号光の波長が1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]である場合の各特性の変化は、それぞれ図7−1〜図7−3のようになる。
【0062】
図7−1〜図7−3のグラフ330に示すように、信号光の波長が短いほど、励起光のパワーの変化に対する光増幅媒体103の利得応答331が速くなる。このため、信号光の波長が短いほど、光受信機106の光受信パワーの変動が抑えられる。具体的には、光受信機106の光受信パワーは、波長1563.45[nm]では最大+2.9[dB]、最小−1.0[dB]で変動する。また、光受信機106の光受信パワーは、波長1546.12[nm]では最大+1.8[dB]、最小−0.8[dB]で変動する。また、光受信機106の光受信パワーは、波長1528.77[nm]では最大+0.6[dB]、最小−0.2[dB]で変動する。
【0063】
図8−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図8−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図8−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図8−1〜図8−3において、図4−1,図4−2に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
図8−1〜図8−3は、実施の形態1にかかる光受信装置100への光入力パワーが、−17.5[dBm]から150[μs]かけて4.5[dB]低下した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。信号光の波長が1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]である場合の各特性の変化は、それぞれ図8−1〜図8−3のようになる。
【0065】
図8−1〜図8−3のグラフ330に示すように、信号光の波長が短いほど、励起光のパワーの変化に対する光増幅媒体103の利得応答331が速くなる。このため、信号光の波長が短いほど、光受信機106の光受信パワーの変動が抑えられる。具体的には、光受信機106の光受信パワーは、波長1563.45[nm]では最大+1.2[dB]、最小−0.4[dB]で変動する。また、光受信機106の光受信パワーは、波長1546.12[nm]では最大+0.7[dB]、最小−0.4[dB]で変動する。また、光受信機106の光受信パワーは、波長1528.77[nm]では最大+0.4[dB]、最小−0.1[dB]で変動する。
【0066】
たとえば、光受信機106への光入力パワーの許容範囲が最大+1.8[dB]、最小−1.0[dB]に定められているとする。この場合は、図7−1〜図7−3および図8−1〜図8−3に示すように、波長1528.77[nm]の光信号では光パワーの変動が最大+0.6[dB]、最小−0.3[dB]と許容範囲に抑えられる。これに対して、波長1563.45[nm]の光信号では光パワーの変動が最大+2.9[dB]、最小−1.0[dB]となり、許容範囲を超過する。
【0067】
<光受信装置の構成例>
図9は、実施の形態2の光受信装置の構成例を示す図である。図9において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図9に示すように、実施の形態2にかかる光受信装置100は、図1に示した光損失媒体104に代えて、可変光減衰媒体901(VOA:Variable Optical Attenuator)と、局発波長取得部902と、メモリ903と、減衰量制御部904と、を備えている。光増幅媒体103は、透過させた信号光を可変光減衰媒体901へ出力する。
【0068】
可変光減衰媒体901は、光増幅媒体103から出力された信号光を可変の減衰量(減衰率)により減衰させる可変光減衰器である。可変光減衰媒体901の減衰量は、減衰量制御部904によって制御される。これにより、光増幅媒体103から出力された信号光に可変の光損失を与えることができる。ここで、光受信機106は、局部発振光を用いて信号光を受信するコヒーレント検出方式の光受信機であるとする。
【0069】
局発波長取得部902は、光受信機106においてコヒーレント検波に用いられる局部発振光の波長λi2を示す波長情報を光受信機106から取得する。局発波長取得部902は、取得した波長情報を減衰量制御部904へ出力する。メモリ903には、波長と減衰量とを対応付ける対応情報(たとえば数式やテーブル)が記憶されている。
【0070】
減衰量制御部904は、局発波長取得部902から出力された波長情報に基づいて、可変光減衰媒体901の減衰量を制御する。具体的には、減衰量制御部904は、局発波長取得部902から出力された波長情報が示す局部発振光の波長λi2に対応する減衰量を、メモリ903に記憶された対応情報に基づいて取得する。そして、減衰量制御部904は、可変光減衰媒体901の減衰量を、取得した減衰量となるように制御する。
【0071】
たとえば、光増幅媒体103の利得の応答が比較的遅くなる波長(長波長)の光信号を受信する場合は、可変光減衰媒体901に比較的大きな減衰量を設定して、励起光のパワーの変化に対する利得の応答を速める。これにより、光受信機106への光入力パワーの許容範囲に抑えることができる。一方、利得の応答が比較的速くなる波長(短波長)の光信号を受信する場合は、可変光減衰媒体901に比較的小さな減衰量を設定することで、励起光のパワーを抑えて励起光源101の消費電力を抑えることができる。
【0072】
また、可変光減衰媒体901および減衰量制御部904は、たとえば信号光の波長に応じて減衰量を変化させればよい。したがって、たとえば信号光のパワーに追従して減衰量を変化させる構成に比べて、減衰量の応答特性は遅くてもよい。このため、可変光減衰媒体901および減衰量制御部904は、低価格の部品で実現することも可能である。
【0073】
<コヒーレント検波方式の光受信機>
図10は、実施の形態2にかかるコヒーレント検波方式の光受信機の一例を示す図である。コヒーレント検波方式の一例として、コヒーレント偏波多重4値位相変調(DP−QPSK:Dual Polarization−Quadrature Phase Shift Keying)方式の光受信機106(コヒーレント受信機)について説明する。図10に示すように、光受信機106は、偏波分波器1001と、局部発振光源1002と、分波器1003と、受信部1004と、受信部1005と、信号処理部1006と、波長制御部1007と、を備えている。
【0074】
光受信機106へ入力された信号光(波長λi)は、2つの直交偏波(X偏波およびY偏波とする)により偏波多重されている。偏波分波器1001は、光受信機106へ入力された信号光を偏波に応じて分波する。偏波分波器1001は、分波した各信号光のうちのX偏波の信号光を受信部1004へ出力する。また、偏波分波器1001は、分波した各信号光のうちのY偏波の信号光を受信部1005へ出力する。
【0075】
局部発振光源1002は、局部発振光(LO)を生成して分波器1003へ出力する。分波器1003は、局部発振光源1002から出力された局部発振光を分波する。分波器1003は、分波した各局部発振光のうちの一方を受信部1004へ出力する。また、分波器1003は、分波した各局部発振光のうちの他方を受信部1005へ出力する。
【0076】
受信部1004は、分波器1003から出力された局部発振光を用いたコヒーレント検波により、偏波分波器1001から出力されたX偏波の信号光を受信する。具体的には、受信部1004は、信号光と局部発振光とを互いに光の位相に応じて干渉させ(混合)し、信号光を同相干渉成分の電気信号XIと直交干渉成分の電気信号XQに変換する。受信部1004は、変換した電気信号XI,XQを信号処理部1006へ出力する。
【0077】
受信部1005は、分波器1003から出力された局部発振光を用いたコヒーレント検波により、偏波分波器1001から出力されたY偏波の信号光を受信する。具体的には、受信部1005は、信号光と局部発振光とを互いに光の位相に応じて干渉させ(混合)し、信号光を同相干渉成分の電気信号YIと直交干渉成分の電気信号YQに変換する。受信部1005は、変換した電気信号YI,YQを信号処理部1006へ出力する。
【0078】
信号処理部1006は、受信部1004から出力された各電気信号XI,XQを所定の信号処理によって情報信号に変換する。また、信号処理部1006は、受信部1005から出力された各電気信号YI,YQを所定の信号処理によって情報信号に変換する。信号処理部1006による信号処理には、たとえば復調や誤り検出などの処理が含まれる。
【0079】
波長制御部1007は、局部発振光源1002によって出力される局部発振光の波長を、光受信機106によって受信する信号光の波長λi1と一致するように制御する。したがって、局部発振光源1002によって出力される局部発振光の波長λi2は、光受信機106によって受信される信号光の波長λi1とほぼ等しくなる。波長制御部1007は、局部発振光の波長λi2を示す波長情報を局発波長取得部902へ出力する。
【0080】
<光受信装置を適用した受信局>
図11は、実施の形態2にかかる光受信装置を適用した受信局の一例を示す図である。図11に示す受信局1100は、WDMの光伝送システムにおける受信局の一例である。受信局1100は、波長λ1〜λn(n=1,2,3,…)の各信号光が波長多重されたWDM信号光を受信する。具体的には、受信局1100は、アレー導波路回折格子1110(AWG:Arrayed Waveguide Grating)と、光受信装置1121〜112nと、を含んでいる。
【0081】
アレー導波路回折格子1110は、受信局1100へ入力されたWDM信号光を波長に応じて分波する分波器である。光源駆動部110は、分波した波長λ1〜λnの信号光をそれぞれ光受信装置1121〜112nへ出力する。光受信装置1121〜112nのそれぞれは、アレー導波路回折格子1110から出力された信号光を受信する。
【0082】
光受信装置1121〜112nのそれぞれには、たとえば図9に示した光受信装置100を適用することができる。これにより、光受信装置1121〜112nのそれぞれにおいて、光受信機106の光受信パワーの変動を抑えて受信特性を向上させるとともに、励起光源101の消費電力を抑えることができる。なお、光受信装置1121〜112nのそれぞれには、他の実施の形態にかかる光受信装置100(たとえば図1,図19,図23,図26)を適用することもできる。
【0083】
<光信号の波長と光受信パワーの変動特性との関係>
図12−1は、光信号の波長と光受信パワーの過多変動特性との関係を示すグラフである。図12−2は、光信号の波長と光受信パワーの過少変動特性との関係を示すグラフである。図12−1,図12−2の横軸は、可変光減衰媒体901に設定される光損失(減衰量)[dB]を示している。
【0084】
図12−1の縦軸は、光受信機106の光受信パワーにおける過多なパワーへの変動(過多変動)[dB]を示している。過多変動特性1211〜1213は、信号光の波長がそれぞれ1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]である場合の、可変光減衰媒体901の光損失に対する光受信機106の光受信パワーの過多変動の特性を示している。
【0085】
図12−2の縦軸は、光受信機106の光受信パワーにおける過少なパワーへの変動(過少変動)[dB]を示している。過少変動特性1221〜1223は、信号光の波長がそれぞれ1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]である場合の、可変光減衰媒体901の光損失に対する光受信機106の光受信パワーの過少変動の特性を示している。
【0086】
また、図12−1,図12−2は、光受信装置100への光入力パワーが、−11.0[dBm]から150[μs]かけて6[dB]増加した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。図12−1の閾値1214は、光受信機106の光受信パワーの許容範囲の最大値である。ここでは、閾値1214は+1.8[dB]を示している。図12−2の閾値1224は、光受信機106の光受信パワーの許容範囲の最小値である。ここでは、閾値1224は−1.0[dB]を示している。
【0087】
図12−1,図12−2に示すように、信号光の波長が1528.77[nm]である場合は、可変光減衰媒体901の光損失を0[dB]とすることで光受信機106の光受信パワーの変動を許容範囲に抑えつつ、消費電力を抑えることができる。また、信号光の波長が1546.12[nm]である場合は、可変光減衰媒体901の光損失を1[dB]とすることで光受信機106の光受信パワーの変動を許容範囲に抑えつつ、消費電力を抑えることができる。また、信号光の波長が1563.45[nm]である場合は、可変光減衰媒体901の光損失を4[dB]とすることで光受信機106の光受信パワーの変動を許容範囲に抑えることができる。
【0088】
したがって、メモリ903には、たとえば、波長1528.77[nm]と光損失0[dB]、波長1546.12[nm]と光損失1[dB]、波長1563.45[nm]と光損失4[dB]をそれぞれ対応付けた対応情報を記憶しておく。このように、メモリ903の対応情報においては、たとえば、各波長について、光受信機106の光受信パワーの変動を許容範囲に抑えることができる光損失の中で最小の光損失を対応付けておくとよい。これにより、光受信機106の光受信パワーの変動を許容範囲に抑えつつ、励起光源101の消費電力を抑えることができる。
【0089】
<対応情報の例>
図13は、対応情報が示す波長と光損失との関係を示すグラフである。図13において、横軸は信号光の波長[nm]を示し、縦軸は可変光減衰媒体901の光損失(減衰量)[dB]を示している。関係1310は、信号光の波長と、光受信パワーの変動を許容範囲に抑えることができる可変光減衰媒体901の光損失との関係(相関)を示している。
【0090】
たとえば、関係1310においては、波長1528.77[nm]と光損失0[dB]、波長1546.12[nm]と光損失1[dB]、波長1563.45[nm]と光損失4[dB]がそれぞれ対応している。たとえば、関係1310は、下記(1)式に示す3次関数により近似される。上記(1)式において、Lossは可変光減衰媒体901に設定する光損失を示している。a3,a2,a1は係数を示している。λiは信号光の波長を示している。
【0091】
Loss=a3×λi3+a2×λi2+a1×λi+a0 …(1)
【0092】
メモリ903には、たとえば上記(1)式および係数a3,a2,a1,a0が対応情報として記憶される。減衰量制御部904は、局発波長取得部902から出力された波長情報と、メモリ903に記憶された上記(1)式および係数a3,a2,a1,a0と、に基づいて光損失Lossを算出する。そして、減衰量制御部904は、算出した光損失Lossを可変光減衰媒体901に設定する。ここで、波長情報が示す局部発振光の波長λi2は、信号光の波長λi1とほぼ等しい。このため、減衰量制御部904は、波長情報が示す局部発振光の波長λi2を上記(1)式の波長λiとして用いて光損失Lossを算出する。
【0093】
図14は、波長と光損失とを対応付けるテーブルの一例を示す図である。図14に示すテーブル1400は、図13に示した関係1310を示すテーブルの一例である。テーブル1400においては、信号光の波長[nm]と可変光減衰媒体901の光損失[dB]とが対応付けられている。メモリ903には、たとえばテーブル1400が対応情報として記憶されていてもよい。減衰量制御部904は、局発波長取得部902から出力された波長情報が示す波長に対応する光損失をテーブル1400から取得し、取得した光損失を可変光減衰媒体901に設定する。
【0094】
<光損失の設定処理>
図15は、実施の形態2にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態2にかかる光受信装置100は、たとえば図15に示す各ステップを実行することによって可変光減衰媒体901の光損失を制御する。まず、光受信機106の波長制御部1007が、局部発振光源1002が出力する局部発振光の波長λi2を信号光の波長λi1と一致するように制御する(ステップS1501)。つぎに、局発波長取得部902が、ステップS1501によって制御された局部発振光の波長λi2を光受信機106から取得する(ステップS1502)。
【0095】
つぎに、減衰量制御部904が、メモリ903に記憶された対応情報に基づいて、ステップS1502によって取得された局部発振光の波長λi2に対応する光損失(減衰量)を取得する(ステップS1503)。つぎに、減衰量制御部904が、可変光減衰媒体901の光損失(減衰量)を、ステップS1503によって取得された光損失となるように制御し(ステップS1504)、一連の処理を終了する。以上の各ステップにより、信号光の波長λi1に応じた光損失を励起光源101に設定することができる。
【0096】
<信号波長ごとの光入力パワーの変動時の各特性の変化>
図16−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図16−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図16−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦増加した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図16−1〜図16−3において、図7−1〜図7−3に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0097】
図16−1〜図16−3は、実施の形態2にかかる光受信装置100への光入力パワーが、−11.0[dBm]から150[μs]かけて6[dB]増加した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。図16−1〜図16−3に示す例では、図13に示す関係1310に基づいて、波長1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]について、それぞれ0[dB]、1[dB]、および4[dB]の減衰量が設定されている。
【0098】
図17−1は、波長1528.77[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図17−2は、波長1546.12[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図17−3は、波長1563.45[nm]の信号光の入力パワーが一旦低下した後に元のパワーに復旧する時の各特性の変化例を示す図である。図17−1〜図17−3において、図8−1〜図8−3に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0099】
図17−1〜図17−3は、実施の形態2にかかる光受信装置100への光入力パワーが、−17.5[dBm]から150[μs]かけて4.5[dB]低下した後に、150[μs]かけて元のパワーに復旧した例を示している。図17−1〜図17−3に示す例では、図13に示す関係1310に基づいて、波長1528.77[nm]、1546.12[nm]および1563.45[nm]について、それぞれ0[dB]、1[dB]、および4[dB]の減衰量が設定されている。
【0100】
図16−1および図17−1に示すように、信号光の波長が1528.77[nm]である場合は、光受信機106の光受信パワーの変動は最大+0.6[dB]、最小−0.2[dB]に抑えられている。図16−2および図17−2に示すように、信号光の波長が1546.12[nm]である場合は、光受信機106の光受信パワーの変動は最大+1.5[dB]、最小−0.6[dB]に抑えられている。
【0101】
図16−3および図17−3に示すように、信号光の波長が1563.45[nm]である場合は、光受信機106の光受信パワーの変動は最大+1.5[dB]、最小−0.5[dB]に抑えられている。したがって、各波長において、光受信機106の光受信パワーの変動が許容範囲に収まっている。
【0102】
<光受信装置の変形例>
図18は、実施の形態2にかかる光受信装置の変形例を示す図である。図18において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図18に示すように、実施の形態2にかかる光受信装置100において、分岐部105を光増幅媒体103と可変光減衰媒体901との間に設けてもよい。この場合は、ALC基準部108が出力する基準信号は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す信号とする。たとえば、ALC基準部108は、可変光減衰媒体901の光損失を減衰量制御部904から取得し、取得した光損失に基づいて、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す基準信号を出力する。
【0103】
この場合も、光源駆動部110によるALCにより、光受信機106の光受信パワーを目標のパワーで一定にすることができる。また、ALCの目標値は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーとなるため、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくし、光増幅媒体103の利得の応答を速くすることができる。このため、光入力パワーの変化による光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0104】
このように、実施の形態2にかかる光受信装置100によれば、実施の形態1にかかる光受信装置100と同様の効果を奏するとともに、信号光の波長に基づいて可変光減衰媒体901の減衰量(光損失)を制御することができる。たとえば、光受信装置100は、信号光の波長が短いほど、可変光減衰媒体901の減衰量が小さくなるように制御する。これにより、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる波長(短波長)の信号光を受信する場合に、可変光減衰媒体901の減衰量を小さく設定して励起光のパワーを低くし、消費電力を抑えることができる。
【0105】
(実施の形態3)
<光受信装置の構成例>
図19は、実施の形態3にかかる光受信装置の構成例を示す図である。図19において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図19に示すように、実施の形態3にかかる光受信装置100は、図9に示した構成に加えて、周波数差検出部1901と、信号波長算出部1902と、を備えている。
【0106】
周波数差検出部1901は、たとえば光受信機106に設けられる。周波数差検出部1901は、局部発振光と信号光の周波数差Δλiを検出する。周波数差検出部1901による周波数差Δλiについては後述する(図20参照)。周波数差検出部1901は、検出した周波数差Δλiを示す周波数差情報を信号波長算出部1902へ出力する。
【0107】
局発波長取得部902は、局部発振光の波長λi2を示す波長情報を信号波長算出部1902へ出力する。信号波長算出部1902は、周波数差検出部1901から出力された周波数差情報と、局発波長取得部902から出力された波長情報と、に基づいて、信号光の波長λi1を算出する。たとえば、信号波長算出部1902は、下記(2)式によって波長λi1を算出する。
【0108】
λi1 = λi2 + Δλi …(2)
【0109】
上記(2)式において、λi2は局部発振光の波長情報が示す波長である。Δλiは周波数差情報が示す周波数差である。信号波長算出部1902は、算出した波長λi1を示す波長情報を減衰量制御部904へ出力する。減衰量制御部904は、信号波長算出部1902から出力された波長情報が示す波長に対応する光損失をメモリ903の対応情報から取得し、取得した光損失(減衰量)を可変光減衰媒体901に設定する。
【0110】
<コヒーレント検波方式の光受信機>
図20は、実施の形態3にかかるコヒーレント検波方式の光受信機の一例を示す図である。図20において、図10に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図20に示すように、実施の形態3にかかる光受信機106は、図10に示した構成において、信号処理部1006に周波数差検出部1901を備えている。
【0111】
周波数差検出部1901は、局部発振光の波長λi2と信号光の波長λi1の周波数差Δλiを検出する。たとえば、光受信機106がイントラダイン方式の光受信機である場合は、周波数差検出部1901は、信号光と干渉させる局部発振光と信号光の周波数差Δλiを検出する。そして、信号処理部1006は、周波数差検出部1901によって検出した周波数差Δλiに基づいて、信号光の周波数差の補償を行う。
【0112】
また、周波数差検出部1901は、周波数差Δλiを示す周波数差情報を信号波長算出部1902へ出力する。これにより、信号波長算出部1902は、局部発振光の波長λi2と信号光の波長λi1の周波数差Δλiを示す周波数差情報を光受信機106から取得することができる。
【0113】
図21は、実施の形態3にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態3にかかる光受信装置100は、たとえば図21に示す各ステップを実行することによって可変光減衰媒体901の減衰量を制御する。まず、波長制御部1007が、局部発振光源1002が出力する局部発振光の波長λi2を信号光の波長λi1と一致するように制御する(ステップS2101)。
【0114】
つぎに、局発波長取得部902が、ステップS2101によって制御された局部発振光の波長λi2を光受信機106から取得する(ステップS2102)。つぎに、周波数差検出部1901が、信号光と局部発振光の周波数差Δλiを検出する(ステップS2103)。つぎに、信号波長算出部1902が、ステップS2102によって取得された波長λi2と、ステップS2103によって検出された周波数差Δλiと、に基づいて信号光の波長λi1を算出する(ステップS2104)。
【0115】
つぎに、減衰量制御部904が、メモリ903に記憶された対応情報に基づいて、ステップS2104によって算出された信号光の波長λi1に対応する減衰量を取得する(ステップS2105)。つぎに、減衰量制御部904が、可変光減衰媒体901の減衰量を、ステップS2105によって取得された減衰量となるように制御し(ステップS2106)、一連の処理を終了する。以上の各ステップにより、信号光の波長λi1に応じた光損失を励起光源101に設定することができる。
【0116】
<光受信装置の変形例>
図22は、実施の形態3にかかる光受信装置の変形例を示す図である。図22において、図19に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図22に示すように、実施の形態2にかかる光受信装置100において、分岐部105を光増幅媒体103と可変光減衰媒体901との間に設けてもよい。この場合は、ALC基準部108が出力する基準信号は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す信号とする。たとえば、ALC基準部108は、可変光減衰媒体901の光損失を減衰量制御部904から取得し、取得した光損失に基づいて、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す基準信号を出力する。
【0117】
この場合も、光源駆動部110によるALCにより、光受信機106の光受信パワーを目標のパワーで一定にすることができる。また、ALCの目標値は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーとなるため、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくし、光増幅媒体103の利得の応答を速くすることができる。このため、光入力パワーの変化による光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0118】
このように、実施の形態3にかかる光受信装置100によれば、実施の形態2にかかる光受信装置100と同様の効果を奏するとともに、局部発振光の波長λi2と周波数差Δλiとに基づいて信号光の波長λi1を算出することができる。これにより、局部発振光と信号光との間に周波数差Δλiがあっても信号光の波長λi1を精度よく算出し、可変光減衰媒体901の減衰量の制御を精度よく行うことができる。このため、消費電力をさらに抑えることができる。
【0119】
(実施の形態4)
<光受信装置の構成例>
図23は、実施の形態4にかかる光受信装置の構成例を示す図である。図23において、図9に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図23に示すように、実施の形態4にかかる光受信装置100は、図9に示した局発波長取得部902に代えて信号波長取得部2301を備えている。
【0120】
信号波長取得部2301は、光受信装置100が受信する信号光の波長λi1を示す波長情報を、光受信装置100とインタフェースする外部の装置から取得する。たとえば、信号波長取得部2301は、光受信装置100が受信する信号光の送信元の光送信装置から波長情報を取得する。または、信号波長取得部2301は、光受信装置100を含む光通信システムの通信を管理する管理装置から波長情報を取得する。
【0121】
信号波長取得部2301は、取得した波長情報を減衰量制御部904へ出力する。減衰量制御部904は、信号波長取得部2301から出力された波長情報が示す波長に対応する光損失をメモリ903の対応情報から取得し、取得した光損失(減衰量)を可変光減衰媒体901に設定する。
【0122】
<光損失の設定処理>
図24は、実施の形態4にかかる光損失の設定処理の一例を示すフローチャートである。実施の形態4にかかる光受信装置100は、たとえば図24に示す各ステップを実行することによって可変光減衰媒体901の減衰量を制御する。まず、信号波長取得部2301、信号光の波長λi1を外部から取得する(ステップS2401)。
【0123】
つぎに、減衰量制御部904が、メモリ903に記憶された対応情報に基づいて、ステップS2401によって取得された信号光の波長λi1に対応する減衰量を取得する(ステップS2402)。つぎに、減衰量制御部904が、可変光減衰媒体901の減衰量を、ステップS2402によって取得された減衰量となるように制御し(ステップS2403)、一連の処理を終了する。
【0124】
以上の各ステップにより、信号光の波長λi1に応じた光損失を励起光源101に設定することができる。なお、局部発振光源1002が出力する局部発振光の波長λi2を信号光の波長λi1と一致するように制御する処理は、たとえば光損失の設定処理とは別に波長制御部1007により実行される。
【0125】
<光受信装置の変形例>
図25は、実施の形態4にかかる光受信装置の変形例を示す図である。図25において、図23に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図25に示すように、実施の形態2にかかる光受信装置100において、分岐部105を光増幅媒体103と可変光減衰媒体901との間に設けてもよい。この場合は、ALC基準部108が出力する基準信号は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す信号とする。たとえば、ALC基準部108は、可変光減衰媒体901の光損失を減衰量制御部904から取得し、取得した光損失に基づいて、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーを示す基準信号を出力する。
【0126】
この場合も、光源駆動部110によるALCにより、光受信機106の光受信パワーを目標のパワーで一定にすることができる。また、ALCの目標値は、光受信機106の目標の光受信パワーに可変光減衰媒体901の光損失分を加算したパワーとなるため、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくし、光増幅媒体103の利得の応答を速くすることができる。このため、光入力パワーの変化による光受信機106の光受信パワーの変動を抑えることができる。
【0127】
このように、実施の形態4にかかる光受信装置100によれば、実施の形態1にかかる光受信装置100と同様の効果を奏するとともに、信号光の波長に基づいて可変光減衰媒体901の減衰量(光損失)を制御することができる。これにより、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる波長(短波長)の信号光を受信する場合に、可変光減衰媒体901の減衰量を小さく設定して励起光のパワーを低くし、消費電力を抑えることができる。
【0128】
また、実施の形態2〜4において、局部発振光または信号光の波長があらかじめ判明している場合は、あらかじめ判明している波長に対応する光損失をあらかじめ可変光減衰媒体901に設定するようにしてもよい。この場合は、可変光減衰媒体901を固定の減衰量の光減衰媒体としてもよい。また、この場合は、局発波長取得部902、メモリ903、信号波長算出部1902または信号波長取得部2301を省いた構成にしてもよい。これにより、簡単な構成によって消費電力を抑えることができる。
【0129】
(実施の形態5)
<光受信装置の構成例>
図26は、実施の形態5にかかる光受信装置の構成例を示す図である。図26において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。図26に示すように、実施の形態5にかかる光受信装置100の光損失媒体104は、入力される光の波長に応じて光損失が異なる波長特性2601を有する。波長特性2601においては、光の波長が短いほど損失量が小さくなっている。たとえば、波長特性2601における波長と光損失との関係は、たとえば、図13に示した関係1310と同様の関係とする。これにより、信号光の波長に応じて、光受信機106の光受信パワーの変動が許容範囲内となる光損失を信号光に与えることができる。
【0130】
このように、実施の形態5にかかる光受信装置100によれば、実施の形態1にかかる光受信装置100と同様の効果を奏するとともに、簡単な構成によって信号光の波長に応じた光損失を光信号に与えることができる。これにより、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる波長(短波長)の信号光を受信する場合に、可変光減衰媒体901の減衰量を小さく設定して励起光のパワーを低くし、消費電力を抑えることができる。
【0131】
(実施の形態6)
<光増幅装置の構成例>
図27は、実施の形態6にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。図27において、図1に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態6にかかる光増幅装置2700は、入力された信号光を増幅する光増幅装置である。図27に示すように、光増幅装置2700は、図1に示した光受信装置100において光受信機106を省いた構成である。
【0132】
分岐部105は、分岐した信号光を光増幅装置2700の後段へ出力する。この場合は、ALC基準部108が出力する基準信号が示す所定のパワーは、光増幅装置2700から出力される信号光の目標のパワーである。
【0133】
ここで、一例として、光増幅装置2700を光伝送システムの光中継器に適用する場合について説明する。光伝送システムにおいては、光増幅装置2700からの出力パワーの変動が累積すると、受信局での光受信機のダイナミックレンジを逸脱して、インサービスの伝送信号の受信エラーを引き起こす恐れがある。このため、光伝送システムの構成から各々の光増幅装置2700の出力パワーの変動の許容範囲が定められる。
【0134】
実施の形態6にかかる光増幅装置2700では、光増幅媒体103の後段に光損失媒体104を設けることで、光増幅媒体103の光出力パワーを大きくすることにより、光入力パワーの変化に伴う励起光のパワーの変化に対する光増幅媒体103の利得の応答を速くする。これにより、光入力パワーの変化による光増幅装置2700の出力パワーの変動を定められた許容範囲内に抑えることができる。
【0135】
これにより、光入力パワーの変化による光増幅装置2700の出力パワーの変動を定められた許容範囲内に抑えることができる。このため、簡単な構成で光伝送品質の向上を図ることができる。
【0136】
(実施の形態7)
<光増幅装置の構成例>
図28は、実施の形態7にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。図28において、図23または図27に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態7にかかる光増幅装置2700は、入力された信号光を増幅する光増幅装置である。図28に示すように、光増幅装置2700は、図23に示した光受信装置100において光受信機106を省いた構成である。
【0137】
このように、実施の形態7にかかる光増幅装置2700によれば、実施の形態6にかかる光増幅装置2700と同様の効果を奏するとともに、信号光の波長に基づいて可変光減衰媒体901の光損失を制御することができる。これにより、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる波長(短波長)の信号光を受信する場合に、可変光減衰媒体901の減衰量を小さく設定して励起光のパワーを低くし、消費電力を抑えることができる。
【0138】
また、実施の形態7において、局部発振光または信号光の波長があらかじめ判明している場合は、あらかじめ判明している波長に対応する光損失をあらかじめ可変光減衰媒体901に設定するようにしてもよい。この場合は、可変光減衰媒体901を固定の減衰量の光減衰媒体としてもよい。また、この場合は、メモリ903、減衰量制御部904および信号波長取得部2301を省いた構成にしてもよい。これにより、簡単な構成によって消費電力を抑えることができる。
【0139】
(実施の形態8)
<光増幅装置の構成例>
図29は、実施の形態8にかかる光増幅装置の構成例を示す図である。図29において、図26または図27に示した部分と同様の部分については同一の符号を付して説明を省略する。実施の形態8にかかる光増幅装置2700は、入力された信号光を増幅する光増幅装置である。図29に示すように、光増幅装置2700は、図26に示した光受信装置100において光受信機106を省いた構成である。
【0140】
このように、実施の形態8にかかる光増幅装置2700によれば、実施の形態6にかかる光受信装置100と同様の効果を奏するとともに、簡単な構成によって信号光の波長に応じた光損失を光信号に与えることができる。これにより、光増幅媒体103の利得の応答が速くなる波長(短波長)の信号光を受信する場合に、可変光減衰媒体901の減衰量を小さく設定して励起光のパワーを低くし、消費電力を抑えることができる。
【0141】
以上説明したように、光受信装置および光増幅装置によれば、光伝送品質を向上させることができる。
【0142】
上述した各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0143】
(付記1)励起光を出力する励起光源と、
入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、
前記光損失媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、
前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、
前記光損失媒体からの出力光を受信する受信機と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【0144】
(付記2)所定のパワーを示す基準信号を出力する基準部と、
前記モニタで検出した出力光のパワーと、前記基準部からの基準信号が示すパワーと、の差分を出力する比較演算部と、を更に備え、
前記制御部は、前記比較演算部の出力が小さくなるように前記励起光源を制御することを特徴とする付記1に記載の光受信装置。
【0145】
(付記3)前記光損失媒体は、減衰量が可変の可変光減衰器であり、
前記制御部は、前記入力光の波長を示す波長情報に基づいて前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする付記1または2に記載の光受信装置。
【0146】
(付記4)前記制御部は、前記波長情報に基づいて、前記励起光のパワーの変化に対する前記光増幅媒体の利得の応答特性が速くなるように前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする付記3に記載の光受信装置。
【0147】
(付記5)前記受信機は、局部発振光を出力する局部発振光源を備えるコヒーレント受信機であり、
前記波長情報として、前記局部発振光の波長を示す波長情報を用いることを特徴とする付記3または4に記載の光受信装置。
【0148】
(付記6)前記受信機は、局部発振光を出力する局部発振光源を備えるコヒーレント受信機であり、
前記局部発振光と前記入力光の周波数差および前記局部発振光の波長を示す波長情報に基づいて、前記入力光の波長情報を求めることを特徴とする付記3または4に記載の光受信装置。
【0149】
(付記7)前記光損失媒体は、入力される光の波長が短いほど損失量が小さい特性を有することを特徴とする付記1〜6のいずれか一つに記載の光受信装置。
【0150】
(付記8)励起光を出力する励起光源と、
入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、
前記光損失媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、
前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光増幅装置。
【0151】
(付記9)所定のパワーを示す基準信号を出力する基準部と、
前記モニタで検出した出力光のパワーと、前記基準部からの基準信号が示すパワーと、の差分を出力する比較演算部と、をさらに備え、
前記制御部は、前記比較演算部の出力が小さくなるように前記励起光源を制御することを特徴とする付記8に記載の光増幅装置。
【0152】
(付記10)前記光損失媒体は、減衰量が可変の可変光減衰器であり、
前記入力光の波長を示す波長情報に基づいて、前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする付記8または9に記載の光増幅装置。
【0153】
(付記11)前記制御部は、前記波長情報に基づいて、前記励起光のパワーの変化に対する前記光増幅媒体の利得の応答特性が速くなるように前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする付記10に記載の光増幅装置。
【0154】
(付記12)前記光損失媒体は、入力される光の波長が短いほど損失量が小さい特性を有することを特徴とする付記8〜11のいずれか一つに記載の光増幅装置。
【0155】
(付記13)励起光を出力する励起光源と、
入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、
前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、
前記光損失媒体からの出力光を受信する受信機と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【符号の説明】
【0156】
100 光受信装置
101 励起光源
102 合波部
103 光増幅媒体
104 光損失媒体
105 分岐部
106 光受信機
107 光モニタ
108 ALC基準部
109 比較演算部
110 光源駆動部
201,202,203,601,602,603 応答特性
310,320,330,340 グラフ
311 光入力パワー変化
321 励起光パワー応答
331,332 利得応答
341 光受信パワー変化
901 可変光減衰媒体
902 局発波長取得部
903 メモリ
904 減衰量制御部
1001 偏波分波器
1002 局部発振光源
1003 分波器
1004,1005 受信部
1006 信号処理部
1007 波長制御部
1100 受信局
1110 アレー導波路回折格子
1121〜112n 光受信装置
1211,1212,1213 過多変動特性
1214,1224 閾値
1221,1222,1223 過少変動特性
1310 関係
1400 テーブル
1901 周波数差検出部
1902 信号波長算出部
2301 信号波長取得部
2601 波長特性
2700 光増幅装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出力する励起光源と、
入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、
前記光損失媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、
前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、
前記光損失媒体からの出力光を受信する受信機と、
を備えることを特徴とする光受信装置。
【請求項2】
所定のパワーを示す基準信号を出力する基準部と、
前記モニタで検出した出力光のパワーと、前記基準部からの基準信号が示すパワーと、の差分を出力する比較演算部と、を更に備え、
前記制御部は、前記比較演算部の出力が小さくなるように前記励起光源を制御することを特徴とする請求項1に記載の光受信装置。
【請求項3】
前記光損失媒体は、減衰量が可変の可変光減衰器であり、
前記制御部は、前記入力光の波長を示す波長情報に基づいて前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の光受信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記波長情報に基づいて、前記励起光のパワーの変化に対する前記光増幅媒体の利得の応答特性が速くなるように前記可変光減衰器の減衰量を制御することを特徴とする請求項3に記載の光受信装置。
【請求項5】
前記受信機は、局部発振光を出力する局部発振光源を備えるコヒーレント受信機であり、
前記波長情報として、前記局部発振光の波長を示す波長情報を用いることを特徴とする請求項3または4に記載の光受信装置。
【請求項6】
前記受信機は、局部発振光を出力する局部発振光源を備えるコヒーレント受信機であり、
前記局部発振光と前記入力光の周波数差および前記局部発振光の波長を示す波長情報に基づいて、前記入力光の波長情報を求めることを特徴とする請求項3または4に記載の光受信装置。
【請求項7】
励起光を出力する励起光源と、
入力光と前記励起光が入力される光増幅媒体と、
前記光増幅媒体からの出力光が入力される光損失媒体と、
前記光損失媒体からの出力光のパワーを検出するモニタと、
前記モニタで検出した出力光のパワーが一定になるように前記励起光源を制御する制御部と、
を備えることを特徴とする光増幅装置。

【図1】
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【図2】
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【図3−1】
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【図3−2】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【図7−3】
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【図8−1】
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【図8−2】
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【図8−3】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12−1】
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【図12−2】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16−1】
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【図16−2】
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【図16−3】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【公開番号】特開2012−175582(P2012−175582A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37687(P2011−37687)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】