説明

光合分岐回路及び光スイッチ

【課題】任意の隣接する2個の出力ポートに対して、2個の出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路から、出力ポートに至る2つの経路において、経路の途中で付加される位相が等しい光合分岐回路を提供すること。
【解決手段】第1段方向性結合器111の2つの出力は、それぞれ接続導波路121、122を介して、第2段方向性結合器131、132の片方の入力に接続されている。また、第1段方向性結合器112の2つの出力は、それぞれ接続導波路123、124を介して、第2段方向性結合器131、132の他方の入力に接続されている。
入力ポート11に入力された光波は、第1段方向性結合器112によって、第2段方向性結合器131、132へ分岐される。分岐された光波の一方は、第2段方向性結合器131によって出力ポート21、22へ、また他方は第2段方向性結合器132によって出力ポート23、24へ分岐される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光合分岐回路及び光スイッチに関し、より詳細には、光ファイバ通信等において使用される光合分岐回路光及びスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバ通信において、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)を用いた様々な光回路が用いられている。最も基本的な光回路は、2入力2出力の合分岐回路であり、入力された1つの光波を2つに分岐して出力したり、あるいは逆に、入力された2つの光波を1つに合流して出力したりするために使用される。PLCは、シリコン等の基板上に形成されたシリカ系ガラス光導波路で構成され、伝搬損失が低く、光ファイバとの接続性に優れ、単一の基板上に多数の回路を集積化できるなどの特長がある。
【0003】
PLC上に、2入力2出力の単位光合分岐回路を多段に接続することによって、多入力多出力の光合分岐回路を作製することができる。単位光合分岐回路としては、方向性結合器または、マルチモード干渉カプラを用いることができる。従来、2入力2出力の方向性結合器4個を多段接続して、4入力4出力の光合分岐回路を構成した例が知られている(非特許文献1参照)。
【0004】
図1は従来の4入力4出力の光合分岐回路の概略図である。図1に示す従来の光合分岐回路1は、PLC上に形成され、入力ポート11〜14に接続された入力導波路101〜104と、第1段方向性結合器111、112と、接続導波路121〜124と、第2段方向性結合器131、132、および出力ポート21〜24に接続された出力導波路161〜164により構成される。
【0005】
入力導波路101、102は第1段方向性結合器111の2つの入力に、また、入力導波路103、104は第1段方向性結合器112の2つの入力に接続されている。
【0006】
第1段方向性結合器111の2つの出力は、それぞれ接続導波路121、122を介して、第2段方向性結合器131、132の一方の入力に接続されている。また、第1段方向性結合器112の2つの出力は、それぞれ接続導波路123、124を介して、第2段方向性結合器131、132の他方の入力に接続されている。
【0007】
入力ポート11に入力された光波は、第1段方向性結合器111によって、第2段方向性結合器131、132へ分岐される。分岐された光波の一方は、第2段方向性結合器131によって出力ポート21、22へ、また他方は第2段方向性結合器132によって出力ポート23、24へ分岐される。従って、方向性結合器の結合率がいずれも50%である場合には、出力ポート21〜24から等パワーの光波が出力されることになる。
【0008】
また、光波が入力ポート12〜14に入力された場合も、同様に光波は4分岐されて、出力ポート21〜24から出力される。
【0009】
上記の光合分岐回路1において、出力ポート21〜24のうち任意の隣接する2つの出力ポートに対して、2つの出力ポートへの光分岐を担う方向性結合器から、出力ポートに至る2つの経路の光路長を等しく設計することで、出力ポート21〜24から出力される4つの光波が、特定の位相差を有するようにすることができる。ここで、隣接する2つの出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路とは、例えば、出力ポート21と22に対しては方向性結合器131、出力ポート22と23に対しては方向性結合器111、出力ポート23と24に対しては方向性結合器132である。
【0010】
上記の光合分岐回路1の出力ポート21〜24に、4個の位相シフタを有する反射型位相変調器2を接続することで、1入力4出力の光スイッチを構成することができる。位相変調器としては、熱光学効果や電気光学効果などによって動作する導波路型の位相変調器を用いることもできるし、もしくは液晶などを利用したバルク型の位相変調器を用いて、集光レンズを用いた空間光学系で光結合することもできる。
【0011】
図2は従来の1入力4出力の光スイッチの概略図である。図2に示す従来の光スイッチにおいて、光合分岐回路1の入力ポート11に入力された光波は、4分岐されて、かつ特定の位相差をもって各出力ポート21〜24から出力される。出力ポート21〜24から出力した光波は、それぞれ位相シフタ211〜214で位相を変調されるとともに、ミラー222で反射されて再び出力ポート21〜24に戻される。光合分岐回路1の出力ポート21〜24に入力された光波は、それぞれ4分岐されて入力ポート11〜14に到達する。このとき、各ポートから出力される光波のパワーは4つの光波の位相関係によって決まり、位相シフタ211〜214で付与される位相差に応じて、光が出力されるポートが定まる。
【0012】
さらに、出力ポート21〜24と反射型位相変調器2との間に波長合分波器を配置することで、入力ポート11に入力された波長分割多重信号のうち、任意の波長の光信号の方路を、入力ポート11〜14のうち任意のポートに切替えて出力する光スイッチを構成することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H. Arai et al., Technical Digest of OECC'96, Paper 19C2-3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、図1の従来の光合分岐回路では、隣接する出力ポート22と23から出力される2つの光波の位相差を考えた場合、方向性結合器131、132によって異なる位相が付加されてしまうという問題があった。そのため、図2の従来の光スイッチでは、位相変調器2の各位相シフタ212、213間の位相を精密に調整するのが困難であるという問題があった。
【0015】
光合分岐回路1の出力ポート21〜24から出力される光波の位相差は、入力ポート11〜14から出力ポート21〜24に至る各経路の光路長と、経路中に配置された各単位合分岐回路で付加される位相差によって決まる。ここで、単位合分岐回路で付加される位相差とは、分岐された2つの光波間の位相差のことであり、理想的な方向性結合器の場合はπ/2である。
【0016】
例えば、入力ポート11に入力された光波は、方向性結合器111で2分岐されて、接続導波路121と122に出力されるが、接続導波路122(方向性結合器のクロスポート)に出力される光波は、接続導波路121(方向性結合器のスルーポート)に出力される光波に対して、位相がπ/2進んでいる。同様に、方向性結合器131で2分岐された光波のうち、出力導波路162(クロスポート)に出力される光波は、接続導波路161(スルーポート)に出力される光波に対して、位相がπ/2進んでいる。また、方向性結合器132で2分岐された光波のうち、出力導波路164(クロスポート)に出力される光波は、接続導波路163(スルーポート)に出力される光波に対して、位相がπ/2進んでいる。この単位合分岐回路で付加される位相差は、製造誤差等の影響により変動する可能性があり、特にマルチモード干渉カプラの場合には、変動が大きい傾向がある。
【0017】
出力ポート22と23から出力される2つの光波の位相差を考えた場合、出力ポート22から出力される光波は、方向性結合器131のクロスポートを経由しているのに対して、出力ポート23から出力される光波は、方向性結合器132のスルーポートを経由しているので、方向性結合器131と132とによって付加される位相差が異なることになる。
【0018】
このような位相差は、特に、図2に示す光スイッチにおいて、位相変調器2の位相シフタ212、213間の位相差を精密に調整しようとしたときに問題となる。
【0019】
ここで、位相変調器2の各位相シフタ211〜214間の位相差の調整方法について説明する。位相シフタ211、212間の位相差を調整する場合、まず、それ以外の位相シフタを通過し、反射ミラー222により反射する光波を遮断する。これは、例えば、反射ミラー222の前にスリットを挿入するなどの方法により実施できる。そうしておいて、入力ポート11から光波を入力し、位相変調器2の位相シフタ211、212間の位相差を調整しながら、各入力ポート11〜14に反射されて出力される光パワーを観測する。
【0020】
このとき、出力ポート21、22への光分岐を担う方向性結合器131を分岐点として、マッハ‐ツェンダ干渉計(MZI)が構成されるので、位相シフタ211、212間の位相差を調整すると、MZIのスルーポートに相当する入力ポート11、12からの出力の和と、クロスポートに相当する入力ポート13、14からの出力の和とが変化する。入力ポート13、14からの出力の和が最大になるときが位相差0に相当し、入力ポート11、12からの出力の和が最大になるときが位相差πに相当することから、位相シフタ211、212間の位相差の設定を決定することができる。
【0021】
同様に、位相シフタ213、214間の位相差については、位相シフタ211、212を通過し、反射ミラー222により反射する光波を遮断した後、入力ポート11から光波を入力し、出力ポート23、24への光分岐を担う方向性結合器132を分岐点として構成されるMZIのスルーポートに相当する入力ポート11、12からの出力の和と、クロスポートに相当する入力ポート13、14からの出力の和を観測することによって、位相差の設定を決定することができる。
【0022】
しかしながら、位相シフタ212、213間の位相差は、この方法により調整することは困難である。この場合は、位相シフタ211、214を通過し、反射ミラー222により反射する光波を遮断した後、入力ポート11から光波を入力し、出力ポート22、23への光分岐を担う方向性結合器111を分岐点として構成されるMZIのスルーポートに相当する入力ポート11からの出力と、クロスポートに相当する入力ポート12からの出力を観測することになる。
【0023】
しかし、方向性結合器111から出力ポート22、23に至る経路のうち、出力ポート22に至る経路は方向性結合器131のクロスポートを通過するが、出力ポート23に至る経路は方向性結合器132のスルーポートを通過するので、方向性結合器131と132とによって付加される位相差が異なることになる。さらに、実際には、その付加される位相差は、製造誤差の影響により変動する可能性があるため、入力ポート11と12から出力される光パワーの測定から、位相シフタ212、213間の位相差を精密に求めることは困難であった。
【0024】
したがって、図2の従来の光スイッチでは、全ての位相シフタ211〜214間の位相差を精密に調整することが困難であり、その結果、光スイッチの消光比の劣化を招く要因となっていた。
【0025】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、任意の隣接する2個の出力ポートに対して、2個の出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路から、出力ポートに至る2つの経路において、経路の途中で付加される位相が等しい光合分岐回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、光合分岐回路であって、平面光波回路上に形成されたN個の入力ポートとN個の出力ポートを有する光合分岐回路であって(N:4以上の2のべき乗で表される整数)、N個の前記入力ポートのうち任意の1つに入力された光波を、N個の出力ポートの全てに分岐して出力するために、2入力2出力の単位光合分岐回路が多段に接続して構成されてなり、N個の前記出力ポートのうち任意の隣接する2つの出力ポートに対して、前記隣接する2つの出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路から、前記出力ポートに至る2つの経路の光路長が等しく設計され、かつ、前記経路の途中に配置された単位光合分岐回路の入出力位置関係が全て同一であることを特徴とする。
【0027】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光合分岐回路であって、Nが2n(n:2以上の整数)であるとすると、2(n-1)個の前記単位光合分岐回路を単位とする光合分岐回路ユニットがn段接続されており、前記各光合分岐ユニットの各単位光合分岐回路に接続された同一の前記光合分岐回路ユニットに属する2つの単位光合分岐回路の入出力関係は同じであり、第1段目の前記光合分岐回路ユニットの出力は前記出力ポートに接続され、第n段目の前記光合分岐回路ユニットの入力は入力ポートに接続されていることを特徴とする。
【0028】
請求項3に記載された発明は、光スイッチであって、請求項1又は2に記載の光合分岐回路と、前記光合分岐回路のN個の出力ポートに接続されたN個の位相シフタを有する反射型位相変調器と、を備え、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つに入力された光波は、前記N個の出力ポートから出された後、位相が前記反射型位相変換器により調整され、再度前記出力ポートから入力することにより、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つの入力ポートから出力することを特徴とする。
【0029】
請求項4に記載された発明は、光スイッチであって、請求項1又は2に記載の光合分岐回路と、前記光合分岐回路のN個の出力ポートの各々に接続された1入力M出力の波長合分波器(M:2以上の整数)と、前記波長合分波器の出力に接続されたM×N個の位相シフタを有する反射型位相変調器とを備え、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つに入力された波長分割多重光信号のうちの任意の波長の光信号は、前記N個の出力ポートから出力された後、前記波長合分波器により波長毎に分波され、その後、位相が前記反射型位相変調器により調整され、再度前記出力ポートから入力することにより、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つの入力ポートから出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、任意の隣接する2個の出力ポートに対して、2個の出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路から、出力ポートに至る2つの経路において、経路の途中で付加される位相が等しい光合分岐回路を提供することができる。
【0031】
このような光合分岐回路と反射型光変調器を用いて構成した光スイッチは、位相シフタ間の位相差を精密に調整することができるので、消光比の高い光スイッチを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】従来の光合分岐回路の概略図である。
【図2】従来の光スイッチの概略図である。
【図3】本発明に係る4入力4出力の光合分岐回路の概略図である。
【図4】本発明に係る8入力8出力の光スイッチの概略図である。
【図5】本発明に係る1入力4出力、波長数Mの光スイッチの概略図である
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施形態)
図3は本発明に係る4入力4出力の光分岐回路の概略図である。なお、以下の図において、図1と同一の機能を持つものは同一の符号を付するものとする。
【0034】
図3に示す光合分岐回路3は、PLC上に形成され、入力導波路102、103が第1段方向性結合器111の2つの入力に接続され、また、入力導波路101、104が第1段方向性結合器112の2つの入力に接続されている。
【0035】
第1段方向性結合器111の2つの出力は、それぞれ接続導波路121、122を介して、第2段方向性結合器131、132の片方の入力に接続されている。また、第1段方向性結合器112の2つの出力は、それぞれ接続導波路123、124を介して、第2段方向性結合器131、132の他方の入力に接続されている。
【0036】
入力ポート11に入力された光波は、第1段方向性結合器112によって、第2段方向性結合器131、132へ分岐される。分岐された光波の一方は、第2段方向性結合器131によって出力ポート21、22へ、また他方は第2段方向性結合器132によって出力ポート23、24へ分岐される。方向性結合器の結合率がいずれも50%である場合には、出力ポート21〜24から等パワーの光波が出力されることになる。
【0037】
また、光波が入力ポート12〜14に入力された場合も、同様に光波は4分岐されて、出力ポート21〜24から出力されることになる。
【0038】
図3の光合分岐回路3において、出力ポート21〜24のうち任意の隣接する2つの出力ポートに対して、2つの出力ポートへの光分岐を担う方向性結合器から、出力ポートに至る2つの経路の光路長は等しくなるように設計される。
【0039】
ここで、入力ポート11から入力され、出力ポート22と23から出力される2つの光波の位相差を考えた場合、出力ポート22、23から出力される光波は、方向性結合器112で分岐された後、それぞれ方向性結合器131、132のスルーポートを経由しているので、方向性結合器131と132とによって付加される位相差は等しくなる。
【0040】
(実施例1)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCを用いて、第1の実施形態に基づく光分岐回路を作製した。出力ポート端面に隣接する2ポートのみを反射するミラーを貼り付けて、入力ポート11から光波を入力したとき、各入力ポート11〜14に反射して出力される光パワーを観測した。入力ポート11からの出力は、光サーキュレータを介して、入力光と出力光を分離することによって観測した。
【0041】
出力ポート22と23からの出力のみを反射したとき、入力ポート13、14からの光出力の和は入力光に対して-2dB、入力ポート11、12からの光出力の和は-20dBであった。方向性結合器112を分岐点として構成されるMZIのクロスポートから光波が出力され、スルーポートへの出力は遮断されていることから、方向性結合器131、132で付与される位相差は等しく、設計どおりの光回路が実現されていることを確認した。
【0042】
(第2の実施形態)
図4は本発明に係る1入力8出力の光スイッチの概略図である。図4に示す光合分岐回路4は、PLC上に形成され、入力導波路104、105が第1段方向性結合器111の2つの入力に、入力導波路103、106が第1段方向性結合器112の2つの入力に、入力導波路102、107が第1段方向性結合器113の2つの入力に、入力導波路101、108が第1段方向性結合器114の2つの入力に、それぞれ接続されている。
【0043】
第1段方向性結合器111の2つの出力は、それぞれ第2段方向性結合器133、134の片方の入力に接続され、第1段方向性結合器114の2つの出力は、それぞれ第2段方向性結合器133、134の他方の入力に接続されている。第1段方向性結合器112の2つの出力は、それぞれ第2段方向性結合器131、132の片方の入力に接続され、第1段方向性結合器113の2つの出力は、それぞれ第2段方向性結合器131、132の他方の入力に接続されている。
【0044】
第2段方向性結合器131の2つの出力は、それぞれ第3段方向性結合器151、152の片方の入力に接続され、第2段方向性結合器133の2つの出力は、それぞれ第2段方向性結合器151、152の他方の入力に接続されている。第2段方向性結合器132の2つの出力は、それぞれ第3段方向性結合器153、154の片方の入力に接続され、第2段方向性結合器134の2つの出力は、それぞれ第3段方向性結合器153、154の他方の入力に接続されている。
【0045】
入力ポート11に入力された光波は、第1段方向性結合器114によって、第2段方向性結合器133、134へ分岐される。分岐された光波の一方は、第2段方向性結合器133によって第3段方向性結合器151、152へ、また他方は第2段方向性結合器134によって第3段方向性結合器153、154へ分岐される。第3段方向性結合器151〜154は、それぞれ光波を出力ポート21と22、23と24、25と26、27と28へ分岐する。方向性結合器の結合率がいずれも50%である場合には、出力ポート21〜28から等パワーの光波が出力されることになる。
【0046】
また、光波が入力ポート12〜18に入力された場合も、同様に光波は8分岐されて、出力ポート21〜28から出力されることになる。
【0047】
図4の光合分岐回路1において、出力ポート21〜28のうち任意の隣接する2つの出力ポートに対して、2つの出力ポートへの光分岐を担う方向性結合器から、出力ポートに至る2つの経路の光路長は等しくなるように設計される。
【0048】
ここで、入力ポート11から入力され、出力ポート22と23から出力される2つの光波の位相差を考えた場合、出力ポート22、23から出力される光波は、方向性結合器133で分岐された後、それぞれ方向性結合器151、152のスルーポートを経由しているので、方向性結合器133から出力ポート22、23それぞれまでの2つの経路において、方向性結合器151、152によって付加される位相差は等しくなる。同様に、出力ポート26と27から出力される2つの光波の位相差についても、方向性結合器134から出力ポート26、27それぞれまでの2つの経路において、方向性結合器153、154によって付加される位相差は等しくなる。
【0049】
さらに、出力ポート24と25から出力される2つの光波の位相差についても、方向性結合器114で分岐された後、それぞれ方向性結合器133のスルーポートと方向性結合器152のクロスポート、方向性結合器134のスルーポートと方向性結合器153のクロスポートを経由しているので、方向性結合器114から出力ポート24、25それぞれまでの2つの経路において、各方向性結合器によって付加される位相差は等しくなる。
【0050】
図4の光合分岐回路4の出力ポート21〜28には、8個の位相シフタ211〜218と反射ミラー222を含む反射型位相変調器2221が接続されている。
【0051】
光合分岐回路4の入力ポート11に入力された光波は、8分岐されて、かつ特定の位相差をもって各出力ポート21〜28から出力される。出力ポート21〜28から出力した光波は、それぞれ位相シフタ211〜218で位相を変調されるとともに、反射ミラー222で反射されて再び出力ポート21〜28に戻される。光合分岐回路4の出力ポート21〜28に入力された光波は、それぞれ8分岐されて入力ポート11〜18に到達する。このとき、各ポートから出力される光波のパワーは8つの光波の位相関係によって決まり、位相シフタ211〜218で付与される位相差に応じて、本実施形態に係る1入力8出力の光スイッチにおいて光が出力されるポートが定まる。
【0052】
ここで、位相変調器2の各位相シフタ211〜218間の位相差は、以下のようにして調整することができる。
【0053】
位相シフタ211、212間の位相差を調整する場合、まず、それ以外の位相シフタを通過し、反射ミラー222により反射する光波を遮断する。これは、例えば、反射ミラー222の前にスリットを挿入するなどの方法により実施できる。そうしておいて、入力ポート11から光波を入力し、位相変調器2の位相シフタ211、212間の位相差を調整しながら、各入力ポート11〜18に反射されて出力される光パワーを観測する。このとき、出力ポート21、22への光分岐を担う方向性結合器151を分岐点として、MZIが構成されるので、位相シフタ211、212間の位相差を調整すると、MZIのスルーポートに相当する入力ポート11、14、15、18からの出力の和と、クロスポートに相当する入力ポート12、13、16、17からの出力の和とが変化する。入力ポート12、13、16、17からの出力の和が最大になるときが位相差0に相当し、入力ポート11、14、15、18からの出力が最大になるときが位相差πに相当することから、位相シフタ211、212間の位相差の設定を決定することができる。
【0054】
本発明の構成では、隣接する2つの出力ポートへの光分岐を担う方向性結合器を分岐点とするMZIの2つのアームにおいて方向性結合器によって付加される位相差は等しいので、位相シフタ211、212間の位相差を調整する場合と同様に、全ての隣接する2つの位相シフタ間について、位相差の設定を決定することができる。
【0055】
(実施例2)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCを用いて、第2の実施形態に基づく光スイッチを作製した。第2の実施形態に述べた位相調整方法によって、全ての隣接する2つの位相シフタ間の位相差の設定を求めた。8つの出力ポートにおける消光比を測定した結果、いずれも25dB以上であった。
【0056】
本発明は、1入力N出力の光合分波回路(N:4以上の2のべき乗で表される整数)が可能であるが、Nが2n(n:2以上の整数)であるとすると、2(n-1)個の前記単位光合分岐回路を単位とする光合分岐回路ユニットがn段接続された構成となる。また、各光合分岐ユニットの各単位光合分岐回路に接続された同一の前記光合分岐回路ユニットに属する2つの単位光合分岐回路の入出力関係は同じになるように構成される。また、第1段目の前記光合分岐回路ユニットの出力は前記出力ポートに接続され、第n段目の前記光合分岐回路ユニットの入力は入力ポートに接続される構成をとる。
【0057】
(第3の実施形態)
図5は本発明に係る1入力4出力、波長数Mの光スイッチの概略図である。
【0058】
図5に示す光スイッチは、入力された波長多重光を出力導波路161〜164へ4つに分岐した後、それぞれの光波をM波長に分離する波長合分波器4個と、分離された4Mの光波を位相変調した後反射する反射型位相変調器2221とを有する。光合分岐回路と波長合分波器は同一のPLC上に形成されており、反射型位相変調器2221と集光レンズ234を用いた空間光学系で結合される。反射型位相変調器2221で位相変調されるとともに反射された4Mの光波は、再び波長合分波器171〜174へ入力されて、再び4つに波長多重された後、光合分岐回路により合分岐されて、入力ポート11〜14から出力される。
【0059】
図5に示す光スイッチにおいては、各波長に対して光波の位相を調節することが可能であるから、波長ごとに出力ポートを任意に設定することができる。
【0060】
(実施例3)
コアとクラッドの比屈折率差Δ=1.5%のシリカガラス系PLCと、反射型液晶光位相変調器を用いて、第3の実施形態に基づく光スイッチ(波長数M=40)を作製した。第2の実施形態に述べた位相調整方法と同様に、全ての隣接する2つの位相シフタ間の位相差の設定を求めた。4つの出力ポートにおける各波長の消光比を測定した結果、いずれも25dB以上であった。
【0061】
尚、以上で説明した各実施形態において、入力ポートと出力ポートを逆にして、N入力1出力の光スイッチとして使用することも可能である。
【符号の説明】
【0062】
1、3、4、5 光合分岐回路
11〜14 入力ポート
101〜104 入力導波路
111、112 第1段方向性結合器
121〜124 接続導波路
131、132 第2段方向性結合器
161〜164 出力導波路
21〜24 入力ポート
211〜214 位相シフタ
222 反射ミラー
234 集光レンズ
2221 反射型位相変調器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面光波回路上に形成されたN個の入力ポートとN個の出力ポートを有する光合分岐回路であって(N:4以上の2のべき乗で表される整数)、
N個の前記入力ポートのうち任意の1つに入力された光波を、N個の出力ポートの全てに分岐して出力するために、2入力2出力の単位光合分岐回路が多段に接続して構成されてなり、
N個の前記出力ポートのうち任意の隣接する2つの出力ポートに対して、前記隣接する2つの出力ポートへの光分岐を担う単位光合分岐回路から、前記出力ポートに至る2つの経路の光路長が等しく設計され、かつ、前記経路の途中に配置された単位光合分岐回路の入出力位置関係が全て同一であることを特徴とする光合分岐回路。
【請求項2】
Nが2n(n:2以上の整数)であるとすると、2(n-1)個の前記単位光合分岐回路を単位とする光合分岐回路ユニットがn段接続されており、
前記各光合分岐ユニットの各単位光合分岐回路に接続された同一の前記光合分岐回路ユニットに属する2つの単位光合分岐回路の入出力関係は同じであり、
第1段目の前記光合分岐回路ユニットの出力は前記出力ポートに接続され、第n段目の前記光合分岐回路ユニットの入力は入力ポートに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光合分岐回路。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光合分岐回路と、
前記光合分岐回路のN個の出力ポートに接続されたN個の位相シフタを有する反射型位相変調器と、
を備え、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つに入力された光波は、前記N個の出力ポートから出された後、位相が前記反射型位相変換器により調整され、再度前記出力ポートから入力することにより、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つの入力ポートから出力することを特徴とする光スイッチ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の光合分岐回路と、
前記光合分岐回路のN個の出力ポートの各々に接続された1入力M出力の波長合分波器(M:2以上の整数)と、
前記波長合分波器の出力に接続されたM×N個の位相シフタを有する反射型位相変調器と
を備え、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つに入力された波長分割多重光信号のうちの任意の波長の光信号は、前記N個の出力ポートから出力された後、前記波長合分波器により波長毎に分波され、その後、位相が前記反射型位相変調器により調整され、再度前記出力ポートから入力することにより、前記光合分岐回路のN個の入力ポートのうち任意の1つの入力ポートから出力することを特徴とする光スイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154332(P2011−154332A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17465(P2010−17465)
【出願日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】