説明

光吸収コーティングが設けられる光透過性の基体及び光吸収コーティングを生成する方法

少なくとも部分的に光吸収コーティングが設けられる光透過性の基体を開示する。光吸収コーティングは、ゾル−ゲル・マトリクスに組み込まれた安定顔料を有する。コーティングは少なくとも有機顔料を有し、顔料を安定化するようアミノシランが存在する。更に、光源を受容する光伝達ランプ管を有する電球を開示する。かかるランプ管は、上述の光透過性の基体を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に光吸収コーティングが設けられる光透過性の基体にかかり、かかる光吸収コーティングは、ゾル−ゲル・マトリクスに組み込まれた安定顔料を有する。本発明は更に、光源を受容する光伝達ランプ管を有する電球に係り、かかるランプ管は、上述の光透過性の基体を有する。本発明は、更に、光吸収コーティング自体にかかる。
【背景技術】
【0002】
光吸収コーティングが設けられる光透過性の基体は、一般的な照明目的用の(白熱)ランプ上又はその前面でカラー層として使用され得る。担体は、例えば、平ら又は平らではなく、またランプによって生成された光の軌道上に置かれるよう指定された、一片のガラスで作られたカラー・フィルタを有し得る。かかる適用は、しばしば屋外照明に使用される。光透過性の基体の他の例は、電球の光源の上方に置かれたランプ管である。かかる電球は、主に車輌の方向指示器ランプとして、例えば、自動車の赤いテール・ライト及びブレーキ・ライトの赤色の光源として、使用される。前述の電球は信号機にも使われ得る。
【0003】
冒頭の段落で言及した種類の電球は、本出願者によって出願された国際公開第01/20641号パンフレット(特許文献1)より既知である。
【0004】
国際公開第01/20641号パンフレットによる電球は、顔料はゾル−ゲル・マトリクスに組み込まれており、且つ、温度400℃まで耐え得る、光学的に透明な非散乱の光吸収コーティングが設けられる。顔料が組み込まれるゾル−ゲル・マトリクスは、テトラエトキシシラン(TEOS)がゾル−ゲル前駆体として使用されるときは、約500−800nmの最大の層の厚さに達することが可能であり、メチルメトキシシラン(MTMS)がゾル−ゲル前駆体として使用されるときは、層の最大の厚さは約2−3μmとなる。
【0005】
特許文献1によれば、顔料は、有機ポリマを用いて安定化される。硬化温度によって、前述のポリマは、硬化処理においてコーティングから部分的に消え、更に、高温に達するとランプの動作中に燃え尽き得る。これは、コーティング層の収縮、又は、上昇した気孔率のいずれかを生じさせるか、あるいは、その両方の組合せを生じさせる。
【特許文献1】国際公開第01/20641号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前文に従った電球を与え、上述の不利点を未然に防ぐことを目的とする。更に本発明は、特に自動車用照明器具に適用されうる赤色のコーティングを与えることを目的とする。更に本発明は、かかる電球に適合するランプ管を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このために、前文に従った電球は、コーティングが少なくとも有機顔料を有すること、及び、顔料を安定化させるようアミノシランが存在することを特徴とする。
【0008】
顔料用の安定剤としてのアミノシランの使用は、層における有機分解の大幅な減少に繋がり、結果として耐用期間中変化しないランプのコーティングとなる。更に、顔料の粒子とゾル−ゲルのネットワークとの間に化学結合が形成されるため、コーティングの機械的性質は強化される。
【0009】
アミノシランは、必要量では層においていかなる容積も殆ど占めないため、より高い粒子量の分解を含むコーティングを作ることが可能である。有機安定剤は大変大きな容量を取るため、これは有機安定剤が使用される場合とは対照的である。
【0010】
自動車産業では、無色フィルタ及び有色ランプを備えた後部照明器具、即ち停止及びテール・ランプ及び点滅ランプを有することが望まれている。あめ色の点滅ランプは既に存在する。しかしながら、許容範囲内のカラー・ポイントの安定性を伴う赤色のランプを与えるのは非常に困難である。高い初期光束出力を有するには、有機顔料がコーティングに必要である。一般的に、有機顔料は、ランプに比較的高い光束出力を与えるが、低い温度安定度を有する。一方、無機顔料は、比較的低い光束出力を与えるが、高い温度安定度を有する。
【0011】
コーティングにアミノシランを加えることによって、温度安定度は極めて向上される。アミノシランは抗酸化能力を有し、それはコーティングの有機顔料の安定化に好ましい効果を有する。
【0012】
特定の一実施例では、x−アルキル−アミノプロピルトリアルコキシシランが安定剤として使用され、アルキル基は、メチル基、エチル基、又はフェニル基であり得、また、アルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基であり得る。
【0013】
望ましくは、特に(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、又は、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリエトキシシラン等の、(N,N−ジメチルアミノプロピル)トリアルコキシシランが、安定剤として使用される。
【0014】
有利な一実施例では、コーティングは有機顔料及び無機顔料のどちらも有する。
【0015】
この方法では、最適な効果、即ち高い光束出力且つ高い温度安定度が達成される。
【0016】
赤色コーティング用の有機顔料の有利な一例として、クロモフタル(Cromophtal)A2B(登録商標)について言及することができる。上述の用途用の特定の無機顔料の一例は、Feである。
【0017】
特定の一実施例では、酸化アルミニウムが、生成中にコーティングに加えられる。
【0018】
生成中に、ペースト顔料に酸化アルミニウムを加えることによって、酸化アルミニウムは粉剤助剤として働く。これは、顔料のより小さな粒度分布につながり、結果として、コーティングの散乱の減少を防ぐ。更に、酸化アルミニウムは、コーティングの顔料用の安定剤としての役割も成す。酸化アルミニウムは、塗付及び乾燥工程中に顔料が凝集すること防ぐ。コーティングの顔料に酸化アルミニウムを加えることによる他の効果は、その温度安定度が非常に上がることである。コーティングに酸化アルミニウムが無いランプのカラーポイントの転換は、コーティングに酸化アルミニウムがあるランプのカラーポイントの転換よりも大きい。
【0019】
本発明は、また、光源を受容する光伝達ランプ管を有する電球に係る。かかるランプ管は、上述に従った光透過性の基体を構成する。
【0020】
この場合、少なくともランプ管の部分は、上述の光吸収コーティングが設けられる。
【0021】
上述の通り、かかる電球は、車輌の方向指示器ランプとして、例えば、自動車の赤いテール・ライト及びブレーキ・ライトの赤色の光源として、使用され得る。
【0022】
更に、本発明は、上述に従った光吸収コーティング、及び、光吸収コーティング等を具備するランプ管に係る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のこれらの及び他の面は、以下に説明される実施例を参照して明らかにされ且つ説明されるであろう。
【0024】
図は単純に略図であり実寸大ではない。特に明確にするために、中には強く誇張された寸法もある。図中、同一の参照符号は、可能な限り同一の部分を参照する。
【0025】
図1は、本発明による電球を図示し、部分的に切り取られて、一部分は側面図で、他の部分は断面図で示す。電球は、例えばガラスで作られ、気密に閉じられ、且つ、図中中心4を備えた(らせん形状の)タングステン白熱体である電気素子2が内部にある、光伝達ランプ管1を有し、軸5上に位置決めされ、また、ランプ管から外側へと出る電流導体6に結合される。図示するランプは、Ar/Ne混合物等の不活性ガスを充填されており、その充填圧力は5バールをわずかに上回る。
【0026】
ランプ・キャップ10は、ランプ管1に堅く接続される。ランプ・キャップ10は、合成樹脂の筐体11を有する。筐体11は、軸5に対して少なくとも略垂直な平らなベース部7を有する。ランプ管1は、軸5に対して少なくとも略垂直な平面上に置かれた、絶縁材料である板8を用いて、気密に閉じられる。電気素子2は、ランプの製造中に板8に対して予め定義された位置に取り付けられる。ランプ管1の板8は、リッジ等の固定手段9によってベース部に対してしっかり押し込まれるため、電気素子2は、埋込みボルト等の参照手段12に対して予め定義された位置に入る。埋込みボルト12は、ランプ・キャップの部分を形成し、図2中に見られる通り、リフレクタ(反射体)等のサポート30に衝合するよう設計される。
【0027】
ランプ・キャップは、また、スクリーン13を具備し、且つ、ランプ管1の電流導体6に結合される、接点部材14を有する。弾性の中間部15は、図中リフレクタとランプ・キャップを結合するよう設計された弾性の金具である結合手段17を具備し、筐体11を伴う一体的な全体を形成する。中間部の弾性のある動きは、中間部が中空であるよう作られることで得られ、それによって壁のみが中間部として残り壁の主な部分は、軸5に対して垂直に走る2つの溝18を用いて、取除かれる。壁の残りの部分は、次の溝の近くに、軸5の周りに例えば180°の角度で回転するブリッジ19を形成する。
【0028】
電球のランプ管1は、約22mmという比較的小さい軸寸法を有し、例えば5ワット乃至25ワットの比較的高い電力を消費するのに好適である。この場合、電球は約6000時間の耐用年数を有する。
【0029】
本発明によれば、ランプ管1の少なくとも一部分は、2μm乃至3μmの平均厚さを有する光吸収コーティング3で覆われる。
【0030】
図2は、図中透明板33を備えたリフレクタである支持材30とアダプタ25とを具備する電球を示す。アダプタ及びリフレクタを備えたランプのこの構造では、リフレクタは溝32に保持されたゴム製の環31を具備し、ゴム製の環は、ランプ・キャップとリフレクタとの間の開口部26を、気密に封止する。アダプタは、アダプタの底板28を介して気密に通過する標準化された接点ポイント27を具備し、ランプ・キャップ10の接点部材14に結合される。
【0031】
図中、ランプ・キャップ10は、電気素子2の中心4で頂点35を有し且つ頂半角25°を有する円錐36内に略完全に収まるように見える。電気素子2から発する光は、障害が略無く反射面34に到達でき、透明な板33の方向に、少なくとも略軸方向に反射される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】部分的に切り取られ且つ部分的に断面にされた、ランプ・キャップを有する本発明による電球の側面図である。
【図2】リフレクタ及びアダプタを具備する電球を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゾル−ゲル・マトリクスに組み込まれた安定顔料を有する光吸収コーティングを少なくとも部分的に具備する光透過性の基体であって、
前記コーティングは少なくとも有機顔料を有し、また、前記顔料を安定化させるようアミノシランが存在することを特徴とする、光透過性の基体。
【請求項2】
安定剤としてx−アルキル−アミノプロピルトリアルコキシシランが使用され、アルキル基は、メチル基、エチル基、又はフェニル基であり得、また、アルコキシ基は、メトキシ基又はエトキシ基であり得ることを特徴とする、請求項1記載の光透過性の基体。
【請求項3】
前記コーティングは、有機顔料及び無機顔料の両方を有することを特徴とする、請求項1記載の光透過性の基体。
【請求項4】
酸化アルミニウムが、前記コーティングの生成中に前記コーティングに加えられることを特徴とする、請求項1乃至3記載の光透過性の基体。
【請求項5】
光源を受容する光伝達ランプ管を有する電球であって、
前記ランプ管は、請求項1乃至4のうちいずれか一項記載の光透過性の基体を有する、電球。
【請求項6】
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載の基体が有する、光吸収コーティング。
【請求項7】
ゾル−ゲル・マトリクスに組み込まれた安定顔料を有する光吸収コーティングが設けられるランプ管であって、
前記コーティングは、少なくとも有機顔料を有し、また、請求項1乃至8のうちいずれか一項記載の前記顔料を安定化させるようアミノシランが存在することを特徴とする、ランプ管。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−510517(P2006−510517A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−506673(P2005−506673)
【出願日】平成15年10月27日(2003.10.27)
【国際出願番号】PCT/IB2003/004753
【国際公開番号】WO2004/044487
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips Electronics N.V.
【住所又は居所原語表記】Groenewoudseweg 1,5621 BA Eindhoven, The Netherlands
【Fターム(参考)】