説明

光変調器

【課題】小型化が可能な光変調器を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態によるマッハツェンダ型の光変調器は、アーム導波路が形成された電気光学材料の第1の基板と、アーム導波路に結合したY分岐部およびY合波部の少なくとも一方が形成された第2の基板とを備える。第1の基板は、アーム導波路上に形成された変調用の第1の電極を備え、第2の基板は、第1の電極に結合する第2の電極を備える。第1および第2の電極は、誘電体の接着剤で接合される。このように、電極間を誘電体の接着剤で接合することにより、DCブロック用のキャパシタンスを形成することができる。また、この接着剤は、電極間の接合のみならず、基板間の接合にも使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関する。より詳細には、本発明は、マッハツェンダ型の光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
光通信技術の発展に伴って、高速で安定性の高い光変調器が必要とされている。高速の光変調器として、マッハツェンダ型の光変調器が知られている。マッハツェンダ型の光変調器では、入力光を分岐し、分岐した光に位相差を与えて合波することにより、変調された出力光を得る。
【0003】
図1に、従来のマッハツェンダ型の光変調器を示す。このマッハツェンダ型光変調器100は、電気光学効果を有する光学基板(ニオブ酸リチウム結晶(LiNbO、以下LNと記す)など)110上に、入力光が入射される入力導波路112と、入力導波路からの光を分岐するY分岐部114と、分岐した光を導波する2つのアーム導波路116a,116bと、これら2つのアーム導波路からの光を合波するY合波部118と、合波した光を出力する出力導波路120とを備えている。これら導波路は、光学基板にTiなどの金属を選択的に拡散させて形成することができる。その後、基板表面全体にSiOなどのバッファ層を設け、アーム導波路上にAuなどの金属電極122a,122bが形成される。電極122a,122bには、光変調器を変調する高周波信号源124がDCバイアス回路127を介して接続されている。また、これら電極間には、終端抵抗170とDCブロック用のキャパシタ171が接続されている。また、DCバイアス回路127には、変調器の動作点を設定するためのDC電源128が接続されている。
【0004】
入力導波路112に入射した入力光は、Y分岐部114で2つに分岐される。分岐した光は、アーム導波路116a,116bを伝搬する間、電極122a,122bに印加された変調信号により電気光学効果の影響を受けて、位相が変化する。すなわち、電極に印加された変調信号によって、アーム導波路間の位相差を変えることができる。アーム導波路116a,116bからの光をY合波部118で合波すると、これら2つの光の位相差に応じて、強度が変調された光が出力導波路120から出射される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−154164号公報
【特許文献2】特開平5−100194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のマッハツェンダ型の光変調器では、DCブロック用のキャパシタ171が電極に接続されている。その理由は、このキャパシタが無いと、DC成分が終端抵抗で熱として消費されるために消費電力が増大し、発生した熱がLNなどの光学基板へと伝わり、動作不良の原因となるからである。もう一つの理由は、このキャパシタが無いと、DCバイアス印加時に終端抵抗で電圧降下が生じ、より高い電圧が必要となるからである。このDCブロック用のキャパシタによって、光変調器のサイズおよびコストが増大する。
【0007】
このDCブロック用のキャパシタを削減するために、光変調器の動作点を設定するための電極を別途設け、変調用の電極には、変調信号を直接印加する方法も知られている(特許文献2)。この方法では、DCブロック用のキャパシタは削減することができるものの、動作点設定用の電極が新たに必要になる。この電極のために、光変調器のサイズおよびコストが増大する。なお、サイズを増大せずに、動作点設定用の電極を設けると、変調用の電極の長さが制限され、導波路の相互作用長が短くなり、高周波特性が劣化する。
【0008】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、DCブロック用のキャパシタの数を削減し、小型化が可能な光変調器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、このような目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、マッハツェンダ型の光変調器であって、アーム導波路が形成された電気光学材料の第1の基板と、前記アーム導波路に結合したY分岐部およびY合波部の少なくとも一方が形成された第2の基板とを備え、前記電気光学材料の第1の基板は、前記アーム導波路上に形成された変調用の第1の電極を備え、前記第2の基板は、前記第1の電極に結合する第2の電極を備え、前記第1および前記第2の電極は、誘電体の接着剤で接合されたことを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光変調器であって、前記接着剤は、前記第1および第2の基板の接合に使用されることを特徴とする。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の光変調器であって、前記第2の電極は、終端抵抗を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれかに記載の光変調器であって、複数のマッハツェンダ干渉計を備えたことを特徴とする。
【0013】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から4のいずれかに記載の光変調器であって、前記第2の基板は、石英系の基板であることを特徴とする。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれかに記載の光変調器であって、前記第1の基板は、ニオブ酸リチウム結晶からなる光学基板であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】マッハツェンダ型光変調器の構成例を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態によるマッハツェンダ型光変調器の構成例を示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態によるマッハツェンダ型光変調器の構成例を示す図である。
【図4】本発明のマッハツェンダ型光変調器の電極間に接着剤で形成されるキャパシタンスを説明するための図である。
【図5】本発明の第3の実施形態によるマッハツェンダ型光変調器の構成例を示す図である。
【図6】本発明の第4の実施形態によるマッハツェンダ型光変調器の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による光変調器においては、2つの基板を組み合わせ、一方の基板に配置した電極と、他方の基板に配置した電極との間を誘電体層が形成されるように接着剤で接合することによって、誘電体層をDCブロック用のキャパシタンスとして機能させることができる。これらの基板として、例えば、一方にニオブ酸リチウム結晶(LN)などの電気光学材料の基板を用い、他方に石英やシリコンなどの常誘電体の基板を用いてもよい。この場合、電気光学材料の基板には、マッハツェンダ型光変調器のアーム導波路を形成し、その上に変調用の電極を設けることができる。
【0017】
図2に、本発明の第1の実施形態による光変調器を示す。このマッハツェンダ型光変調器200は、電気光学材料のLN基板210と、石英基板230とから構成されている。LN基板230には、入力光が入射される入力導波路212と、入力導波路からの光を分岐するY分岐部214と、分岐した光を導波する2つのアーム導波路216a,216bとが形成されている。また、LN基板のアーム導波路216a,216bには、変調用の電極222a,222bが設けられている。石英基板230には、LN基板の2つのアーム導波路216a,216bと光学的に結合される2つのアーム導波路232a,232bと、これら2つの分岐導波路からの光を合波するY合波部234と、合波した光を出力する出力導波路236とが形成されている。
【0018】
また、LN基板上の電極222a,222bには、DCバイアス回路227と外部の高周波信号源224が接続されている。また、DCバイアス回路227には、変調器の動作点を設定するためのDC電源228が接続されている。また、石英基板上には、電極238a,238bが設けられ、外部の終端抵抗270に接続されている。電極222a,222bは、誘電体の接着剤226a,226bを用いて石英基板上の電極238a,238bに接続されている。後述するように、この接着剤により、これら電極間にDCブロック用のキャパシタンスが形成される。なお、本発明においては、石英基板230は、LN基板210と別の基板であればよく、石英系の基板でなくてもよい。
【0019】
入力導波路212に入射した入力光は、Y分岐部214で2つに分岐される。分岐した光は、アーム導波路216a,216bに伝搬する。LN基板の導波路216a,216bを伝搬する光は、電極222a,222bに印加された変調信号により、その位相が変調される。その位相変調量は、変調信号の印加電圧および作用長によって決定される。ここで、この変調信号にDC成分を重畳し、光変調器200の動作点を設定する。本発明においては、LN基板210の電極222a,222bと、石英基板230の電極238a,238bとの間に接着剤226a,226bで形成されたキャパシタンスによってDC成分がブロックされるため、DC電流が抵抗270に流れて熱として消費されることを防ぐことができる。そのため消費電力を小さくすることができる。また、抵抗でDC成分による熱が発生しないため、光変調器の動作が安定する。さらには、抵抗によるDC電圧降下がないため、DCバイアス電圧を小さくすることができる。LN基板と石英基板の微小な接合部によってもDCブロック用のキャパシタンスと同様の機能を実現することから、LN基板のサイズを増加することなくDCブロック用のキャパシタンスを削減できる。そのため装置の小型化が可能となる。
【0020】
次に、LN基板の導波路216a,216bを伝搬した光は、石英基板230のアーム導波路232a,232bに結合し、Y合波部234で合波され、出力導波路236から出力光が出射される。
【0021】
図3に、本発明の第2の実施形態による光変調器を示す。この実施形態では、出力側の基板だけでなく、入力側の基板もLN基板とは異なる基板(例えば、石英基板)で形成している。これにより、より多くの箇所で接着剤を用いたキャパシタンスを形成することができる。
【0022】
このマッハツェンダ型光変調器300は、電気光学材料のLN基板310と、2つの石英基板330,360とから構成されている。前段の石英基板330には、入力光が入射される入力導波路332と、入力導波路からの光を分岐するY分岐部334と、分岐した光を導波する2つのアーム導波路336a,336bとが形成されている。LN基板310には、前段の石英基板の2つのアーム導波路336a,336bと光学的に結合される2つのアーム導波路312a,312bが形成され、LN基板のアーム導波路には、変調用の電極314a,314bが設けられている。変調用の電極314bには、コイル329を介してDC電源328が接続されており、変調器の動作点を設定することができる。後段の石英基板360には、LN基板の2つのアーム導波路312a,312bと光学的に結合される2つのアーム導波路362a,362bと、これら2つのアーム導波路からの光を合波するY合波部364と、合波した光を出力する出力導波路366とが形成されている。
【0023】
また、前段の石英基板上には、電極338a,338bが設けられ、外部の高周波信号源324に接続されている。電極338a,338bは、誘電体の接着剤326a,326bを用いてLN基板上の電極314a,314bに接続されている。同様に、後段の石英基板上には、電極368a,368bが設けられ、外部の終端抵抗370に接続されている。同様に、電極368a,368bは、誘電体の接着剤328a,328bを用いてLN基板上の電極314a,314bに接続されている。後述するように、この接着剤により、これら電極間にDCブロック用のキャパシタンスが形成される。なお、本発明においては、石英基板330,360は、LN基板310と別の基板であればよく、石英系の基板でなくてもよい。
【0024】
入力導波路332に入射した入力光は、Y分岐部334で2つに分岐される。分岐した光は、アーム導波路336a,336bを介して、LN基板310のアーム導波路312a,312bに伝搬する。LN基板の導波路312a,312bを伝搬する光は、電極314a,314bに印加された変調信号により、その位相が変調される。その位相変調量は、変調信号の印加電圧および作用長によって決定される。ここで、この変調信号にDC成分を重畳し、光変調器300の動作点を設定する。本発明においては、石英基板330の電極338a,338bとLN基板310の電極314a,314bとの間に接着剤326a,326bで形成されたキャパシタンスと、石英基板360の電極368a,368bとLN基板310の電極314a,314bとの間に接着剤328a,328bで形成されたキャパシタンスとによってDC成分がブロックされるため、DC電流が抵抗370に流れて熱として消費されることを防ぐことができる。そのため消費電力を小さくすることができる。また、抵抗でDC成分による熱が発生しないため、光変調器の動作が安定する。さらには、抵抗によるDC電圧降下がないため、DCバイアス電圧を小さくすることができる。LN基板と石英基板の微小な接合部によってもDCブロック用のキャパシタンスと同様の機能を実現することから、LN基板のサイズを増加することなくDCブロック用のキャパシタンスを削減できる。そのため装置の小型化が可能となる。本発明においては、接着剤を用いたこれら4箇所の接続部のすべてにおいて、DCブロック用のキャパシタンスを形成する必要はなく、いずれか1箇所でも効果が得られることはいうまでもない。
【0025】
次に、LN基板の導波路312a,312bを伝搬した光は、石英基板360のアーム導波路362a,362bに結合し、Y合波部364で合波され、出力導波路366から出力光が出射される。
【0026】
図4は、第1および第2の実施形態における電極間の接着剤による接合部を拡大した図である。この接合部は、第1の電極410と、第2の電極430とが接着剤420で接合されて形成されている。このとき、接合部に形成されるキャパシタンスCは、次式で与えられる。
【0027】
【数1】

【0028】
ここで、εは、接着剤の誘電率であり、wは電極の幅、hは電極の高さ、dは電極間の距離を表している。接着剤の誘電率εを2.25、電極の幅wおよび高さhをそれぞれ10μm、電極間の距離dを5μmとすると、キャパシタンスは、およそ45μFとなる。
【0029】
このときの接合部でのカットオフ周波数は、終端抵抗を50Ωとすると、次式より、およそ70Hzとなる。
【0030】
【数2】

【0031】
このように、電極間を誘電体の接着剤で接合することにより、DCブロック用のキャパシタンスを形成することができる。また、この接着剤は、電極間の接合のみならず、基板間の接合にも使用することができる。この場合、この接着剤は、導波路を伝搬する光に対して損失の少ないものが望ましい。接着剤の屈折率を、石英導波路の屈折率n=1.5程度とすると、接着剤の誘電率は、ε≒n=2.25となる。このような接着剤には、アクリレート、エポキシ、シリコーンなどが挙げられる。
【0032】
図5に、本発明の第3の実施形態による光変調器を示す。この実施形態では、外部の終端抵抗が基板上に集積されている。この終端抵抗は、TaN,NiCr,Wなどを用いて基板上に形成することができる。これにより、基板および周辺の電気回路の小型化が可能になる。また、レイアウトによっては、電極が導波路と交差する箇所が減るので、クロストークの影響が削減でき、良好な変調特性を達成することができる。なお、終端抵抗は、スパッタ、CVD(Chemical Vapor Deposition)、蒸着等により形成することができる。
【0033】
このマッハツェンダ型光変調器500は、電気光学材料のLN基板510と、2つの石英基板530,560とから構成されている。前段の石英基板530には、入力光が入射される入力導波路532と、入力導波路からの光を分岐するY分岐部534と、分岐した光を導波する2つのアーム導波路536a,536bとが形成されている。LN基板510には、前段の石英基板の2つのアーム導波路536a,536bと光学的に結合される2つのアーム導波路512a,512bが形成され、LN基板のアーム導波路には、変調用の電極514a,514bが設けられている。変調用の電極514bには、コイル529を介してDC電源528が接続されており、変調器の動作点を設定することができる。後段の石英基板560には、LN基板の2つのアーム導波路512a,512bと光学的に結合される2つのアーム導波路562a,562bと、これら2つのアーム導波路からの光を合波するY合波部564と、合波した光を出力する出力導波路566とが形成されている。
【0034】
また、前段の石英基板上には、電極538a,538bが設けられ、外部の高周波信号源524に接続されている。電極538a,538bは、誘電体の接着剤526a,526bを用いてLN基板上の電極512a,512bに接続されている。同様に、後段の石英基板上には、電極568a,568bが設けられ、基板上に形成された終端抵抗570に接続されている。同様に、電極568a,568bは、誘電体の接着剤528a,528bを用いてLN基板上の電極514a,514bに接続されている。前述したように、この接着剤により、これら電極間にDCブロック用のキャパシタンスが形成される。なお、本発明においては、石英基板530,560は、LN基板510と別の基板であればよく、石英系の基板でなくてもよい。
【0035】
入力導波路532に入射した入力光は、Y分岐部534で2つに分岐される。分岐した光は、アーム導波路536a,536bを介して、LN基板510のアーム導波路512a,512bに伝搬する。LN基板の導波路512a,512bを伝搬する光は、電極514a,514bに印加された変調信号により、その位相が変調される。その位相変調量は、変調信号の印加電圧および作用長によって決定される。ここで、この変調信号にDC成分を重畳し、光変調器500の動作点を設定する。本発明においては、石英基板530の電極538a,538bとLN基板510の電極514a,514bとの間に接着剤526a,526bで形成されたキャパシタンスと、石英基板560の電極568a,568bとLN基板510の電極514a,514bとの間に接着剤528a,528bで形成されたキャパシタンスとによってDC成分がブロックされるため、DC電流が抵抗570に流れて熱として消費されることを防ぐことができる。そのため消費電力を小さくすることができる。また、抵抗でDC成分による熱が発生しないため、光変調器の動作が安定する。さらには、抵抗によるDC電圧降下がないため、DCバイアス電圧を小さくすることができる。LN基板と石英基板の微小な接合部によってもDCブロック用のキャパシタンスと同様の機能を実現することから、LN基板のサイズを増加することなくDCブロック用のキャパシタンスを削減できる。そのため装置の小型化が可能となる。本発明においては、接着剤を用いたこれら4箇所の接続部のすべてにおいて、DCブロック用のキャパシタンスを形成する必要はなく、いずれか1箇所でも効果が得られることはいうまでもない。
【0036】
次に、LN基板の導波路512a,512bを伝搬した光は、石英基板560のアーム導波路562a,562bに結合し、Y合波部564で合波され、出力導波路566から出力光が出射される。
【0037】
図6に、本発明の第4の実施形態による光変調器を示す。この実施形態では、複数のマッハツェンダ干渉計から光変調器が構成されている。このように、複数のマッハツェンダ干渉計からなる光変調器では、接着剤を用いたキャパシタンスを形成し、終端抵抗を基板上に形成することによる本発明の効果が顕著になる。
【0038】
このマッハツェンダ型光変調器600は、電気光学材料のLN基板610と、2つの石英基板630,660とから構成されている。前段の石英基板630には、入力光が入射される入力導波路632と、入力導波路からの光を分岐するY分岐部634と、分岐した光をさらに分岐するY分岐部634−1,634−2とが形成されている。LN基板610には、前段の石英基板のY分岐部634−1,634−2からの光が結合する4つのアーム導波路612−1a,612−1b,612−2a,612−2bが形成され、LN基板のアーム導波路にはそれぞれ、変調用の電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bが設けられている。変調用の電極614−1a,614−2bには、それぞれコイル629−1,629−2を解してそれぞれDC電源628−1,628−2が接続されており、変調器の動作点を設定することができる。後段の石英基板660には、LN基板の2つのアーム導波路612−1a,612−1bと光学的に結合されるY合波部664−1と、LN基板の2つアーム導波路612−2a,612−2bと光学的に結合されるY合波部664−2と、2つの合波部からの光をさらに合波するY合波部664と、合波した光を出力する出力導波路666とが形成されている。
【0039】
また、前段の石英基板上には、電極638−1a,638−1b,638−2a,638−2bが設けられ、外部の高周波信号源624−1,624−2に接続されている。電極638−1a,638−1b,638−2a,638−2bは、誘電体の接着剤626−1a,626−1b,626−2a,626−2bを用いてLN基板上の電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bに接続されている。同様に、後段の石英基板上には、電極668−1a,668−1b,668−2a,668−2bが設けられ、基板上に形成された終端抵抗670−1,670−2に接続されている。同様に、電極668−1a,668−1b,668−2a,668−2bは、誘電体の接着剤628−1a,628−1b,628−2a,628−2bを用いてLN基板上の電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bに接続されている。前述したように、この接着剤により、これら電極間にDCブロック用のキャパシタンスが形成される。なお、本発明においては、石英基板630,660は、LN基板610と別の基板であればよく、石英系の基板でなくてもよい。
【0040】
入力導波路632に入射した入力光は、Y分岐部634で2つに分岐される。分岐した光は、それぞれY分岐部634−1,634−2でさらに2つに分岐され、それぞれLN基板610のアーム導波路612−1a,612−1b,612−2a,612−2bに伝搬する。LN基板の導波路612−1a,612−1b,612−2a,612−2bを伝搬する光は、電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bに印加された変調信号により、その位相が変調される。その位相変調量は、変調信号の印加電圧および作用長によって決定される。ここで、この変調信号にDC成分を重畳し、光変調器600の動作点を設定する。本発明においては、石英基板630の電極638−1a,638−1b,638−2a,638−2bとLN基板610の電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bとの間に接着剤626−1a,626−1b,626−2a,626−2bで形成されたキャパシタンスと、石英基板660の電極668−1a,668−1b,668−2a、668−2bとLN基板610の電極614−1a,614−1b,614−2a,614−2bとの間に接着剤628−1a,628−1b,628−2a,628−2bで形成されたキャパシタンスとによってDC成分がブロックされるため、DC電流が抵抗670−1,670−2に流れて熱として消費されることを防ぐことができる。そのため消費電力を小さくすることができる。また、抵抗でDC成分による熱が発生しないため、光変調器の動作が安定する。さらには、抵抗によるDC電圧降下がないため、DCバイアス電圧を小さくすることができる。LN基板と石英基板の微小な接合部によってもDCブロック用のキャパシタンスと同様の機能を実現することから、LN基板のサイズを増加することなくDCブロック用のキャパシタンスを削減できる。そのため装置の小型化が可能となる。本発明においては、接着剤を用いたこれら8箇所の接続部のすべてにおいて、DCブロック用のキャパシタンスを形成する必要はなく、各マッハツェンダ干渉計についていずれか1箇所でも効果が得られることはいうまでもない。
【0041】
次に、LN基板の導波路612−1a,612−1bを伝搬した光は、石英基板660のY合波部664−1で合波され、LN基板の導波路612−2a,612−2bを伝搬した光は、石英基板660のY合波部664−2で合波される。Y合波部664−1,664−2からの光は、さらにY合波部664でさらに合波され、出力導波路666から出力光が出射される。
【0042】
以上、本発明について、具体的にいくつかの実施形態について説明したが、本発明の原理を適用できる多くの実施可能な形態に鑑みて、ここに記載した実施形態は、単に例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。例えば、上記の実施形態では、電気光学材料の基板として、LN基板を例に説明したが、本発明の原理は、タンタル酸リチウム(LiTaO)、KTN(KTa1−xNb)、KTP(KTiOPO)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)などを用いることができる。また、常誘電体の石英基板を、光変調器の出力側に用いた場合と、入力側および出力側の両方に用いた場合を説明したが、入力側だけに用いてもその部分において本発明の効果を得ることができる。さらに、上記の実施形態では、Y分岐に代えて、方向性結合器やカプラ、多モード干渉カプラ(MMI:multimode interferometer)などの回路を用いてもよい。このように、ここに例示した実施形態は、本発明の趣旨から逸脱することなくその構成と詳細を変更することができる。さらに、説明のための構成要素および手順は、本発明の趣旨から逸脱することなく変更、補足、またはその順序を変えてもよい。
【符号の説明】
【0043】
100,200,300,500,600 マッハツェンダ型光変調器
110 光学基板
112,212,332,532,632 入力導波路
114,214,334,534,564,634,634−1,634−2 Y分岐部
116a,116b,216a,216b,232a,232b,312a,312b,336a,336b,362a,362b,512a,512b,536a,536b,562a,562b,612−1a,612−1b,612−2a,612−2b アーム導波路
118,234,364,664,664−1,664−2 Y合波部
120,236,366,566,666 出力導波路
124,224,324,524,624−1,624−2 高周波信号源
127,227 DCバイアス回路
128,228,328,628−1,628−2 DC電源
170,270,370,570,670−1,670−2 終端抵抗
171 DCブロック用のキャパシタ
210,310,510,610 LN基板
222a,222b,238a,238b,314a,314b,338a,338b,368a,368b、410,430,514a,514b,538a,538b,568a,568b,614−1a,614−1b,614−2a,614−2b,638−1a,638−1b,638−2a,638−2b,668−1a,668−1b,668−2a,668−2b 電極
226a,226b,326a,326b,328a,328b,420,526a,526b,528a,528b,626−1a,626−1b,626−2a,626−2b,628−1a,628−1b,628−2a,628−2b 接着剤
230,330,360,530,560,630,660 石英基板
329,529,629−1,629−2 コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マッハツェンダ型の光変調器であって、
アーム導波路が形成された電気光学材料の第1の基板と、
前記アーム導波路に結合したY分岐部およびY合波部の少なくとも一方が形成された第2の基板と
を備え、
前記電気光学材料の第1の基板は、前記アーム導波路上に形成された変調用の第1の電極を備え、前記第2の基板は、前記第1の電極に結合する第2の電極を備え、前記第1および前記第2の電極は、誘電体の接着剤で接合されたことを特徴とする光変調器。
【請求項2】
請求項1に記載の光変調器であって、
前記接着剤は、前記第1および第2の基板の接合に使用されることを特徴とする光変調器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光変調器であって、
前記第2の電極は、終端抵抗を備えたことを特徴とする光変調器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の光変調器であって、
複数のマッハツェンダ干渉計を備えたことを特徴とする光変調器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の光変調器であって、
前記第2の基板は、石英系の基板であることを特徴とする光変調器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の光変調器であって、
前記第1の基板は、ニオブ酸リチウム結晶からなる光学基板であることを特徴とする光変調器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−211060(P2010−211060A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58454(P2009−58454)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】