光変調器
【課題】PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップをパッケージに収納する光変調器において、コンパクト化を図ること。
【解決手段】光変調器300は、LN変調器310にPLC320が突き合わせ接続されたPLC−LN変調器330と、LN変調器310が固定された凸部340Aを有するパッケージ340と、パッケージ340に固定されたレンズ350を介してLN変調器310の入力ポート311と接続された入力ファイバ361と、PLC320に接続されたファイバブロック370を介してPLC320の出力ポート321と接続された出力ファイバ362とを備える。LN変調器310には、レンズを介して入力ファイバ361と接続される入力ポート311と、入力された光信号を分岐する分岐回路312と、分岐された光信号を変調させる電圧を印加するための信号電極313が形成されている。
【解決手段】光変調器300は、LN変調器310にPLC320が突き合わせ接続されたPLC−LN変調器330と、LN変調器310が固定された凸部340Aを有するパッケージ340と、パッケージ340に固定されたレンズ350を介してLN変調器310の入力ポート311と接続された入力ファイバ361と、PLC320に接続されたファイバブロック370を介してPLC320の出力ポート321と接続された出力ファイバ362とを備える。LN変調器310には、レンズを介して入力ファイバ361と接続される入力ポート311と、入力された光信号を分岐する分岐回路312と、分岐された光信号を変調させる電圧を印加するための信号電極313が形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、より詳細には、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップをパッケージに収納した光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウム(LN)基板上にチタン(Ti)拡散を用いて光導波路を形成したLN変調器は、光通信システムの重要なデバイスであり、例えば40Gbit/s用のDQPSK変調器や100Gbit/s用偏波多重QPSK変調器等の開発が進められている。しかしながら、LN変調器は、伝搬損失や許容曲げ半径がPLCと比べて大きく、可変カプラ、折返し、偏波合成回路等の複雑な光回路の構成に不向きであるという欠点を有する。ここで、「PLC」とは、Si基板上にSiO2系ガラスを主成分とする光導波路を形成した石英系光波回路(Planar Lightwave Circuit)を言う。
【0003】
LN変調器の欠点を補うために、図1に示すようなLN変調器とPLCを組み合わせた光変調器(以下「PLC−LN変調器」という。)を構成する従来例も報告されている(特許文献1及び2参照)。図1では、位相シフタの部分にのみLN変調器120を用い、引き回しのための光導波路には、LN変調器120の両端に接続された第1及び第2のPLC110、130を用いている。このため、LN変調器の優れた特性はそのままで、PLCの優れたパッシブ回路の特徴を生かすことができる。例えば、回路全体をコンパクトにしたり、全体の損失を低減したりすることが可能である。
【0004】
PLC−LN変調器の信頼性には、当該変調器を筐体(パッケージ)に気密封止する実装技術が大きな影響を持ち、高信頼化のための研究が進められている。図2に、従来のPLC−LN変調器がパッケージに収納された光モジュール(光部品)を示す。光モジュール200は、LN変調器211の両端に第1及び第2のPLC212、213が突き合わせ接続(バットジョイント)されたPLC−LN変調器210と、LN変調器211が固定された凸部220Aを有するパッケージ220と、第1のファイバブロック214を介して第1のPLC212と接続されたファイバ231及び第2のファイバブロック215を介して第2のPLC213と接続されたファイバ232とを備える。
【0005】
パッケージ220の材料はステンレス、例えばSUS303として、LNとの熱膨張係数の差を小さくしている。PLCとSUS303の間には大きな熱膨張係数の差が存在するが、第1及び第2のPLC212、213はパッケージ220から浮いており、熱膨張の差に起因する熱応力が抑制される。これにより、LN変調器211自体や、LN変調器211と第1及び第2のPLC212、213との接続部等に対する応力が抑制され、光学的・機械的信頼性が向上する。表1に光モジュール200の構成要素の熱膨張係数を示す。
【0006】
【表1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−195239号公報
【特許文献2】特開2003−121806号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H. Yamazaki, T. Yamada, K. Suzuki, T. Goh, A. Kaneko, A. Sano, E. Yamada , and Y. Miyamoto, ‘‘Integrated 100-Gb/s PDM-QPSK modulator using a hybrid assembly technique with silica-based PLCs and LiNbO3 phase modulators,’’ Proc. ECOC2008, Mo3C1, 2008.
【非特許文献2】K. Suzuki, T. Yamada, O. Moriwaki, H. Takahashi, and M. Okuno, ‘‘Polarization-Insensitive Operation of Lithium Niobate Mach-Zehnder Interferometer With Silica PLC-Based Polarization Diversity Circuit,’’ IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 20, no. 10, pp.773-775, May 15, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2の構造では、ファイバブロック214、215の大きさがコンパクト化を制限しており、改善が望まれる。
【0010】
以上では、PLCとLN変調器とが突き合わせ接続された場合を例に説明してきたが、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続された場合においても同様の問題が生じる。ここで「EO材料基板」とは、電界印加により屈折率または光吸収特性が変化する多元系酸化物、化合物半導体またはポリマを言う。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップをパッケージに収納する光変調器において、コンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップと、前記光素子チップを収納したパッケージであって、前記他の導波路型光素子が固定された凸部を有するパッケージとを備え、前記他の導波路型光素子は、光信号が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された前記光信号を分岐する分岐回路と、前記分岐回路が分岐した光信号を変調させる電界を印加するための信号電極とを有し、前記光信号を供給する入力ファイバが、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して前記入力ポートと接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記PLCは、前記他の導波路型光素子からの光信号を前記他の導波路型光素子に出力する折返し構造を有し、前記他の導波路型光素子は、前記折返し構造からの光信号を出力する出力ポートを前記入力ポートと同一の端面に有し、前記出力ポートは、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して出力ファイバと接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記レンズは前記他の導波路型光素子に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EO材料基板上に形成された他の導波路型光素子に入力ポートを形成し、当該光素子をパッケージの凸部に固定することにより入力ファイバとの接続をファイバブロックではなくレンズを介して行うことができ、コンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のPLC−LN変調器を示す図である。
【図2】従来のPLC−LN変調器がパッケージに収納された光変調器を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る光変調器を示す図である。
【図4】実施形態2に係る光変調器を示す図である。
【図5】実施形態2に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図6】実施形態2に係る光変調器の別の変形形態を示す図である。
【図7】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図8】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図9】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図10】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図11】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【図12】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【図13】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図3に、本発明の実施形態1に係る光変調器を示す。光変調器300は、LN変調器310(「他の導波路型光素子」に対応)の一端にPLC320が突き合わせ接続(バットジョイント)されたPLC−LN変調器330(「光素子チップ」に対応)と、LN変調器310が固定された凸部340Aを有するパッケージ340と、パッケージ340に固定されたレンズ350を介してLN変調器310の入力ポート311と接続された入力ファイバ361と、PLC320に突き合わせ接続されたファイバブロック370を介してPLC320の出力ポート321と接続された出力ファイバ362とを備える。
【0019】
LN変調器310には、レンズを介して入力ファイバ361と接続される入力ポート311と、入力ポート311に入力された光信号を分岐する分岐回路312と、分岐回路312により分岐された光信号を変調させる電圧を印加するための信号電極313が形成されている。図1に示した従来のPLC−LN変調器100では位相シフタの部分のみがLN変調器120に形成されていたが、単純なY分岐ならLN基板上に設けて損失が大きくならないことから、本実施形態の光変調器300では分岐回路312がLN変調器310に形成されている。したがって、入力ファイバ361と接続されるのは、パッケージから浮いたPLCではなく、パッケージに固定されたLN変調器310となる。図2のように、ファイバと接続されるのがパッケージから浮いたPLCである場合には、PLCの振動や熱膨張等を考慮してファイバブロックにより固定する必要があるが、パッケージに固定されたLN変調器310に入力ファイバ361を接続する本実施形態の光変調器300では、入力ファイバ361とLN変調器310の入力ポート311との位置関係が振動や熱膨張の影響を受けにくいため、レンズ350を利用した接続が可能である。
【0020】
入力ファイバ361と入力ポート311との接続にファイバブロックを用いずにレンズ350を用いることにより、ファイバブロックの大きさの分だけコンパクト化が図れる。また、入力ファイバ361のパッケージ340への固定は、メタルフェルール付の入力ファイバを調芯後YAG溶接により行うことができ、高価なファイバメタライズ、半田付け工程が必要であった図2のファイバ231、232の固定等と比較して低コスト化が図れる。
【0021】
なお、PLC320とパッケージ340との間に充填材380を設けて緩く固定することにより、PLC320の振動を低減することができる。
【0022】
また、PLC320には、可変カプラ322を形成して、LN変調器310のY分岐比ズレをPLC320側で吸収することができ、高消光比が達成可能である。
【0023】
(実施形態2)
図4に、実施形態2に係る光変調器を示す。実施形態1に係る光変調器300と異なるのは、PLCにLN導波路からの光信号を再びLN導波路に出力する折返し構造が設けられ、出力ポートが、LN変調器に入力ポートと同一の端面に形成されている点である。LN基板上の光導波路を折り返すのは難しいが、PLCであれば容易に、小型かつ低損失の折返し構造を作製することができる。パッケージに固定されたLN変調器に入力ポート及び出力ポートが共に形成されているので、入力ファイバ及び出力ファイバの両方に、ファイバブロックではなくレンズを介して接続を採用することができる。
【0024】
入力側、出力側の両方にファイバブロックが使用される場合に比べ、レンズ結合のため大幅にコンパクト化が図れる。また、パッケージの片端から入力ファイバ、出力ファイバの両方を取り出す片端出しは、パッケージの両端からそれぞれ入力ファイバ、出力ファイバを取り出す両端出しに比べ、パッケージが取り付けられるボード上でのファイバ取回し面積を半減するメリットもある。
【0025】
位相シフタの配置は、LN変調器でもPLCでもよいが、LN変調器に付ければPLCはメタル層不要なのでプロセスコストを低減することができる。Y分岐は全てLN変調器に入れても良いが、PLCの方が小型かつ低損失に作製できる。
【0026】
図5は、実施形態2に係る光変調器の変形形態を示している。折返し側に、供給されるクロック信号(不図示)に基づいて変調信号をRZパルス化するRZカーバ(「RZ変調器」とも言う。)を集積してもサイズペナルティがない。
【0027】
図6は、実施形態2に係る光変調器の別の変形形態を示している。レンズが、パッケージに固定されているのではなく、LN変調器(「他の導波路型光素子」に対応)に直接取り付けられている。パッケージへの光素子チップの実装前にあらかじめレンズを光素子チップに調芯・固定することができ、調芯・固定が容易である。直接取り付けない場合、パッケージ内の狭い空間でレンズを調芯しなければならない。また、パッケージ底面にレンズを固定することになるため、高さ方向の調芯が難しい。
【0028】
(実施形態3)
図7〜10は、実施形態3に係る光変調器の変形形態を示している。これらの実施形態では、入力ファイバ・入力ポート間、出力ファイバ・出力ポート間の接続を、それぞれ2枚のレンズを用いて行っている点で、実施形態2に係る光変調器を異なる。
【0029】
図7では、第1のレンズが窓の外でパッケージに固定され、第2のレンズがLN変調器に取り付けられている。図8では、第2のレンズが窓の内でパッケージに固定されている。ここで「パッケージの窓」とは、パッケージの一部に気密が保たれるように取り付けられた部材であって、パッケージ外部から入射した光を内部に透過させることのできるものを言う。例えば、ガラスやサファイアなど透明な材料で作製することができる。
【0030】
図9では、第1のレンズが窓の内でパッケージに固定され、第2のレンズがLN変調器に取り付けられている。図10では、第2のレンズも窓の内でパッケージに固定されている。
【0031】
レンズをパッケージの窓の外に設けた方が、窓の内に設けるより調芯・固定が容易である。窓の内、すなわちパッケージ内部は空間が狭いためレンズを調芯しづらい。また、内部に設ける場合にはパッケージ底面に固定する必要があるが、これは光軸に対して高さ方向に非対称な固定であり、高さ方向の調芯が固定時にずれてしまう。このため、一般的には固定によるずれ量を考慮し、わざと調芯をずらした状態で固定する等の対策が必要となる。窓の外、すなわちパッケージ外部は空間的な制約がなく、また光軸に対して対称な固定が可能なため固定による調芯ずれの懸念も小さい。したがって、2枚のレンズを用いてファイバ・ポート間の接続を行う場合には、1つを窓の外に設け、もう1つを図6のように光素子チップに直接取り付けるのが好ましい。
【0032】
(実施形態4)
図11〜13に実施形態4に係る光変調器を示す。PLCに半波長板および偏波合成回路が形成されている点で実施形態1及び2に係る光変調器と異なる。
【0033】
図11は、偏波多重構成の光変調器である。PLCに半波長板(45°)及び偏波合成回路が設けられている。偏波合成回路は非特許文献1で用いられているような幅変調型PBC(Polarization beam Combiner)である。
【0034】
図12は、PLCが折返し構造を有する偏波多重構成の光変調器である。PLCに半波長板(45°)、半波長板(90°)及び偏波合成回路が設けられている。偏波合成回路は非特許文献2で用いられているような波長板挿入型PBCである。PLCの光導波路を折返すことで波長板挿入溝を偏波回転部(45°)と共通化できる。
【0035】
図13は、PLCが折返し構造を有するタイム・インターリーブド偏波多重用構成の光変調器である。偏波Ch間でパルスタイミングを半ビットずらすことで非線形耐力を向上できる。通常はRZ化が必要で、前段に別途RZカーバを接続する必要がある。
【符号の説明】
【0036】
300 光変調器
310 LN変調器(「他の導波路型光素子」に対応)
311 入力ポート
312 分岐回路
313 信号電極
320 PLC
321 出力ポート
322 可変カプラ
330 PLC−LN変調器(「光素子チップ」に対応)
340 パッケージ
340A 凸部
350 レンズ
361 入力ファイバ
362 出力ファイバ
370 ファイバブロック
380 充填材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光変調器に関し、より詳細には、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップをパッケージに収納した光変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
ニオブ酸リチウム(LN)基板上にチタン(Ti)拡散を用いて光導波路を形成したLN変調器は、光通信システムの重要なデバイスであり、例えば40Gbit/s用のDQPSK変調器や100Gbit/s用偏波多重QPSK変調器等の開発が進められている。しかしながら、LN変調器は、伝搬損失や許容曲げ半径がPLCと比べて大きく、可変カプラ、折返し、偏波合成回路等の複雑な光回路の構成に不向きであるという欠点を有する。ここで、「PLC」とは、Si基板上にSiO2系ガラスを主成分とする光導波路を形成した石英系光波回路(Planar Lightwave Circuit)を言う。
【0003】
LN変調器の欠点を補うために、図1に示すようなLN変調器とPLCを組み合わせた光変調器(以下「PLC−LN変調器」という。)を構成する従来例も報告されている(特許文献1及び2参照)。図1では、位相シフタの部分にのみLN変調器120を用い、引き回しのための光導波路には、LN変調器120の両端に接続された第1及び第2のPLC110、130を用いている。このため、LN変調器の優れた特性はそのままで、PLCの優れたパッシブ回路の特徴を生かすことができる。例えば、回路全体をコンパクトにしたり、全体の損失を低減したりすることが可能である。
【0004】
PLC−LN変調器の信頼性には、当該変調器を筐体(パッケージ)に気密封止する実装技術が大きな影響を持ち、高信頼化のための研究が進められている。図2に、従来のPLC−LN変調器がパッケージに収納された光モジュール(光部品)を示す。光モジュール200は、LN変調器211の両端に第1及び第2のPLC212、213が突き合わせ接続(バットジョイント)されたPLC−LN変調器210と、LN変調器211が固定された凸部220Aを有するパッケージ220と、第1のファイバブロック214を介して第1のPLC212と接続されたファイバ231及び第2のファイバブロック215を介して第2のPLC213と接続されたファイバ232とを備える。
【0005】
パッケージ220の材料はステンレス、例えばSUS303として、LNとの熱膨張係数の差を小さくしている。PLCとSUS303の間には大きな熱膨張係数の差が存在するが、第1及び第2のPLC212、213はパッケージ220から浮いており、熱膨張の差に起因する熱応力が抑制される。これにより、LN変調器211自体や、LN変調器211と第1及び第2のPLC212、213との接続部等に対する応力が抑制され、光学的・機械的信頼性が向上する。表1に光モジュール200の構成要素の熱膨張係数を示す。
【0006】
【表1】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−195239号公報
【特許文献2】特開2003−121806号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】H. Yamazaki, T. Yamada, K. Suzuki, T. Goh, A. Kaneko, A. Sano, E. Yamada , and Y. Miyamoto, ‘‘Integrated 100-Gb/s PDM-QPSK modulator using a hybrid assembly technique with silica-based PLCs and LiNbO3 phase modulators,’’ Proc. ECOC2008, Mo3C1, 2008.
【非特許文献2】K. Suzuki, T. Yamada, O. Moriwaki, H. Takahashi, and M. Okuno, ‘‘Polarization-Insensitive Operation of Lithium Niobate Mach-Zehnder Interferometer With Silica PLC-Based Polarization Diversity Circuit,’’ IEEE Photon. Technol. Lett., vol. 20, no. 10, pp.773-775, May 15, 2008.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、図2の構造では、ファイバブロック214、215の大きさがコンパクト化を制限しており、改善が望まれる。
【0010】
以上では、PLCとLN変調器とが突き合わせ接続された場合を例に説明してきたが、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続された場合においても同様の問題が生じる。ここで「EO材料基板」とは、電界印加により屈折率または光吸収特性が変化する多元系酸化物、化合物半導体またはポリマを言う。
【0011】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップをパッケージに収納する光変調器において、コンパクト化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的を達成するために、本発明の第1の態様は、PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップと、前記光素子チップを収納したパッケージであって、前記他の導波路型光素子が固定された凸部を有するパッケージとを備え、前記他の導波路型光素子は、光信号が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された前記光信号を分岐する分岐回路と、前記分岐回路が分岐した光信号を変調させる電界を印加するための信号電極とを有し、前記光信号を供給する入力ファイバが、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して前記入力ポートと接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記PLCは、前記他の導波路型光素子からの光信号を前記他の導波路型光素子に出力する折返し構造を有し、前記他の導波路型光素子は、前記折返し構造からの光信号を出力する出力ポートを前記入力ポートと同一の端面に有し、前記出力ポートは、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して出力ファイバと接続されていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様において、前記レンズは前記他の導波路型光素子に固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、EO材料基板上に形成された他の導波路型光素子に入力ポートを形成し、当該光素子をパッケージの凸部に固定することにより入力ファイバとの接続をファイバブロックではなくレンズを介して行うことができ、コンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】従来のPLC−LN変調器を示す図である。
【図2】従来のPLC−LN変調器がパッケージに収納された光変調器を示す図である。
【図3】本発明の実施形態1に係る光変調器を示す図である。
【図4】実施形態2に係る光変調器を示す図である。
【図5】実施形態2に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図6】実施形態2に係る光変調器の別の変形形態を示す図である。
【図7】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図8】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図9】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図10】実施形態3に係る光変調器の変形形態を示す図である。
【図11】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【図12】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【図13】実施形態4に係る光変調器を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0018】
(実施形態1)
図3に、本発明の実施形態1に係る光変調器を示す。光変調器300は、LN変調器310(「他の導波路型光素子」に対応)の一端にPLC320が突き合わせ接続(バットジョイント)されたPLC−LN変調器330(「光素子チップ」に対応)と、LN変調器310が固定された凸部340Aを有するパッケージ340と、パッケージ340に固定されたレンズ350を介してLN変調器310の入力ポート311と接続された入力ファイバ361と、PLC320に突き合わせ接続されたファイバブロック370を介してPLC320の出力ポート321と接続された出力ファイバ362とを備える。
【0019】
LN変調器310には、レンズを介して入力ファイバ361と接続される入力ポート311と、入力ポート311に入力された光信号を分岐する分岐回路312と、分岐回路312により分岐された光信号を変調させる電圧を印加するための信号電極313が形成されている。図1に示した従来のPLC−LN変調器100では位相シフタの部分のみがLN変調器120に形成されていたが、単純なY分岐ならLN基板上に設けて損失が大きくならないことから、本実施形態の光変調器300では分岐回路312がLN変調器310に形成されている。したがって、入力ファイバ361と接続されるのは、パッケージから浮いたPLCではなく、パッケージに固定されたLN変調器310となる。図2のように、ファイバと接続されるのがパッケージから浮いたPLCである場合には、PLCの振動や熱膨張等を考慮してファイバブロックにより固定する必要があるが、パッケージに固定されたLN変調器310に入力ファイバ361を接続する本実施形態の光変調器300では、入力ファイバ361とLN変調器310の入力ポート311との位置関係が振動や熱膨張の影響を受けにくいため、レンズ350を利用した接続が可能である。
【0020】
入力ファイバ361と入力ポート311との接続にファイバブロックを用いずにレンズ350を用いることにより、ファイバブロックの大きさの分だけコンパクト化が図れる。また、入力ファイバ361のパッケージ340への固定は、メタルフェルール付の入力ファイバを調芯後YAG溶接により行うことができ、高価なファイバメタライズ、半田付け工程が必要であった図2のファイバ231、232の固定等と比較して低コスト化が図れる。
【0021】
なお、PLC320とパッケージ340との間に充填材380を設けて緩く固定することにより、PLC320の振動を低減することができる。
【0022】
また、PLC320には、可変カプラ322を形成して、LN変調器310のY分岐比ズレをPLC320側で吸収することができ、高消光比が達成可能である。
【0023】
(実施形態2)
図4に、実施形態2に係る光変調器を示す。実施形態1に係る光変調器300と異なるのは、PLCにLN導波路からの光信号を再びLN導波路に出力する折返し構造が設けられ、出力ポートが、LN変調器に入力ポートと同一の端面に形成されている点である。LN基板上の光導波路を折り返すのは難しいが、PLCであれば容易に、小型かつ低損失の折返し構造を作製することができる。パッケージに固定されたLN変調器に入力ポート及び出力ポートが共に形成されているので、入力ファイバ及び出力ファイバの両方に、ファイバブロックではなくレンズを介して接続を採用することができる。
【0024】
入力側、出力側の両方にファイバブロックが使用される場合に比べ、レンズ結合のため大幅にコンパクト化が図れる。また、パッケージの片端から入力ファイバ、出力ファイバの両方を取り出す片端出しは、パッケージの両端からそれぞれ入力ファイバ、出力ファイバを取り出す両端出しに比べ、パッケージが取り付けられるボード上でのファイバ取回し面積を半減するメリットもある。
【0025】
位相シフタの配置は、LN変調器でもPLCでもよいが、LN変調器に付ければPLCはメタル層不要なのでプロセスコストを低減することができる。Y分岐は全てLN変調器に入れても良いが、PLCの方が小型かつ低損失に作製できる。
【0026】
図5は、実施形態2に係る光変調器の変形形態を示している。折返し側に、供給されるクロック信号(不図示)に基づいて変調信号をRZパルス化するRZカーバ(「RZ変調器」とも言う。)を集積してもサイズペナルティがない。
【0027】
図6は、実施形態2に係る光変調器の別の変形形態を示している。レンズが、パッケージに固定されているのではなく、LN変調器(「他の導波路型光素子」に対応)に直接取り付けられている。パッケージへの光素子チップの実装前にあらかじめレンズを光素子チップに調芯・固定することができ、調芯・固定が容易である。直接取り付けない場合、パッケージ内の狭い空間でレンズを調芯しなければならない。また、パッケージ底面にレンズを固定することになるため、高さ方向の調芯が難しい。
【0028】
(実施形態3)
図7〜10は、実施形態3に係る光変調器の変形形態を示している。これらの実施形態では、入力ファイバ・入力ポート間、出力ファイバ・出力ポート間の接続を、それぞれ2枚のレンズを用いて行っている点で、実施形態2に係る光変調器を異なる。
【0029】
図7では、第1のレンズが窓の外でパッケージに固定され、第2のレンズがLN変調器に取り付けられている。図8では、第2のレンズが窓の内でパッケージに固定されている。ここで「パッケージの窓」とは、パッケージの一部に気密が保たれるように取り付けられた部材であって、パッケージ外部から入射した光を内部に透過させることのできるものを言う。例えば、ガラスやサファイアなど透明な材料で作製することができる。
【0030】
図9では、第1のレンズが窓の内でパッケージに固定され、第2のレンズがLN変調器に取り付けられている。図10では、第2のレンズも窓の内でパッケージに固定されている。
【0031】
レンズをパッケージの窓の外に設けた方が、窓の内に設けるより調芯・固定が容易である。窓の内、すなわちパッケージ内部は空間が狭いためレンズを調芯しづらい。また、内部に設ける場合にはパッケージ底面に固定する必要があるが、これは光軸に対して高さ方向に非対称な固定であり、高さ方向の調芯が固定時にずれてしまう。このため、一般的には固定によるずれ量を考慮し、わざと調芯をずらした状態で固定する等の対策が必要となる。窓の外、すなわちパッケージ外部は空間的な制約がなく、また光軸に対して対称な固定が可能なため固定による調芯ずれの懸念も小さい。したがって、2枚のレンズを用いてファイバ・ポート間の接続を行う場合には、1つを窓の外に設け、もう1つを図6のように光素子チップに直接取り付けるのが好ましい。
【0032】
(実施形態4)
図11〜13に実施形態4に係る光変調器を示す。PLCに半波長板および偏波合成回路が形成されている点で実施形態1及び2に係る光変調器と異なる。
【0033】
図11は、偏波多重構成の光変調器である。PLCに半波長板(45°)及び偏波合成回路が設けられている。偏波合成回路は非特許文献1で用いられているような幅変調型PBC(Polarization beam Combiner)である。
【0034】
図12は、PLCが折返し構造を有する偏波多重構成の光変調器である。PLCに半波長板(45°)、半波長板(90°)及び偏波合成回路が設けられている。偏波合成回路は非特許文献2で用いられているような波長板挿入型PBCである。PLCの光導波路を折返すことで波長板挿入溝を偏波回転部(45°)と共通化できる。
【0035】
図13は、PLCが折返し構造を有するタイム・インターリーブド偏波多重用構成の光変調器である。偏波Ch間でパルスタイミングを半ビットずらすことで非線形耐力を向上できる。通常はRZ化が必要で、前段に別途RZカーバを接続する必要がある。
【符号の説明】
【0036】
300 光変調器
310 LN変調器(「他の導波路型光素子」に対応)
311 入力ポート
312 分岐回路
313 信号電極
320 PLC
321 出力ポート
322 可変カプラ
330 PLC−LN変調器(「光素子チップ」に対応)
340 パッケージ
340A 凸部
350 レンズ
361 入力ファイバ
362 出力ファイバ
370 ファイバブロック
380 充填材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップと、
前記光素子チップを収納したパッケージであって、前記他の導波路型光素子が固定された凸部を有するパッケージと
を備え、
前記他の導波路型光素子は、光信号が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された前記光信号を分岐する分岐回路と、前記分岐回路が分岐した光信号を変調させる電界を印加するための信号電極とを有し、
前記光信号を供給する入力ファイバが、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して前記入力ポートと接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記PLCは、前記他の導波路型光素子からの光信号を前記他の導波路型光素子に出力する折返し構造を有し、
前記他の導波路型光素子は、前記折返し構造からの光信号を出力する出力ポートを前記入力ポートと同一の端面に有し、
前記出力ポートは、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して出力ファイバと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記レンズは前記他の導波路型光素子に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【請求項1】
PLCとEO材料基板上に形成された他の導波路型光素子とが付き合わせ接続されて構成された光素子チップと、
前記光素子チップを収納したパッケージであって、前記他の導波路型光素子が固定された凸部を有するパッケージと
を備え、
前記他の導波路型光素子は、光信号が入力される入力ポートと、前記入力ポートに入力された前記光信号を分岐する分岐回路と、前記分岐回路が分岐した光信号を変調させる電界を印加するための信号電極とを有し、
前記光信号を供給する入力ファイバが、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して前記入力ポートと接続されていることを特徴とする光変調器。
【請求項2】
前記PLCは、前記他の導波路型光素子からの光信号を前記他の導波路型光素子に出力する折返し構造を有し、
前記他の導波路型光素子は、前記折返し構造からの光信号を出力する出力ポートを前記入力ポートと同一の端面に有し、
前記出力ポートは、前記パッケージ又は前記他の導波路型光素子に固定されたレンズを介して出力ファイバと接続されていることを特徴とする請求項1に記載の光変調器。
【請求項3】
前記レンズは前記他の導波路型光素子に固定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光変調器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−191334(P2011−191334A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54940(P2010−54940)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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