説明

光学ガラス

【課題】屈折率(n)が1.75以上で、アッベ数(ν)が15〜40の範囲であり、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスを提供する。
【解決手段】酸化物基準のモル%で、B+SiOを10〜70%、Biを5%以上かつ25%未満、RO+RnOを5〜60%(RはZn、Ba、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す。また、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す。)の範囲で各成分を含有し、可視域での透明性が高く、転移点(Tg)が520℃以下であることを特徴とする光学ガラス。波長が550nmで10mm厚の分光透過率が70%以上であること特徴とする光学ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視域での透明性が高く、屈折率(n)が1.75以上及びアッベ数(ν)が15〜40の範囲の光学定数を有する光学ガラスであって、精密モールドプレス成形に適した光学ガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高屈折率、高分散領域の光学ガラスは酸化鉛を多量に含有する組成系が代表的であり、ガラスの安定性がよく、かつガラス転移点(Tg)が低いため、精密モールドプレス成形用として使用されてきた。例えば、特許文献1には酸化鉛を多量に含有する精密モールドプレス用の光学ガラスが開示されている。
【0003】
しかしながら精密モールドプレス成形を実施する場合の環境は金型の酸化防止のために還元性雰囲気に保たれているため、ガラス成分に酸化鉛を含有しているとガラス表面から還元された鉛が析出し、金型表面に付着してしまい、金型の精密面を維持できなくなるという問題点があった。また、酸化鉛は環境に対して有害であり、フリー化が望まれてきた。
【0004】
その要望に応えて、高屈折率、高分散領域で酸化鉛を含有しないプレス成形用光学ガラスが多く開発されたが、その殆どはNbを高濃度に含有したリン酸塩ガラスである。例えば、特許文献2と特許文献3にP−Nb−WO−(KO,NaO,LiO)系のガラス、特許文献4にP−NbTiO−Bi−NaO系のガラスが開示されている。しかし、これらのガラスはTgが低いといえ、480℃を超えるものが多かった。また、これらのガラスは高屈折率、高分散を得るのに多量なNb含有させなければならないので、耐失透性があまり高くないという欠点もある。
【0005】
一方、Tgの低いガラスとしてBiを多量に含む組成が知られている。例えば、非特許文献1、2、3、4、5にBi−Ga−PbO系のガラス、Bi−Ga−(LiO,KO,CsO)系のガラス、Bi−GeO系のガラスが開示されている。これらのガラスは480℃以下のTgを示すが、ガラスの吸収端が450nmより長くあるため、可視域における透明性が大きく失われ、可視域に高い透明性が要求される光学レンズとして使えない。
【特許文献1】特開平1−308843号公報
【特許文献2】特開2003−321245号公報
【特許文献3】特開平8−157231号公報
【特許文献4】特開2003−300751号公報
【非特許文献1】Physics and Chemistry of Glasses,p119,Vol.27,No.3,June 1986
【非特許文献2】American Ceramic Society,p2315,Vol.75,No.9,October 1992
【非特許文献3】American Ceramic Society,p1017,Vol.77,No.4,October 1994
【非特許文献4】American Ceramic Society Bulletin,p1543,Vol.71,No.10,October 1992
【非特許文献5】Glass Technology,p106,Vol.28,No.2,April 1987
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は屈折率(n)が1.75以上、アッベ数(ν)が15〜40の範囲であり、可視域で高い透明性を有し、ガラス転移点(Tg)が520℃以下で、精密モールドプレス成形に適した新規の光学ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意試験研究を重ねた結果、既存のリン酸塩系と全く異なった硼酸塩系及び/またはケイ酸塩系で、Biと好ましくはアルカリ金属酸化物及び/またはアルカリ土類金属酸化物を組み合わせることにより、可視域において光学レンズに満足できる透明性を示すと同時に、屈折率(n)が1.75以上で、ガラス転移点(Tg)が520℃以下で、かつ環境上好ましくない物質を含まず、精密モールドプレス性が極めて良好である光学ガラスを見いだし、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、本発明の第1の構成は酸化物基準のモル%で、Biを5%以上かつ25%未満含有し、屈折率(n)が1.75以上、アッベ数(ν)が15〜40であることを特徴とする光学ガラスである。
【0009】
本発明の第2の構成は、波長が550nmで10mm厚(光路長10mm)の分光透過率が70%以上であること特徴とする前記構成第1の光学ガラスである。
【0010】
本発明の第3の構成は、転移点(Tg)が520℃以下であることを特徴とする前記構成第1又は2の光学ガラスである。
【0011】
本発明の第4の構成は、酸化物基準のモル%で、B+SiOを10〜70%、及び/またはBiを5%以上かつ25%未満、及び/またはRO+RnOを5〜60%(RはZn、Ba、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す。また、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す。)、及び/またはSb+Asを0〜5%の範囲で各成分を含有し、10mm厚における分光透過率70%を示す波長が520nm以下で、屈折率(n)が1.75以上、アッベ数(ν)が15〜40であることを特徴とする光学ガラスである。
【0012】
本発明の第5の構成は、B、及び/またはSiOの一部または全部をGeOで置き換えることを特徴とする前記構成第1から4の光学ガラスである。
【0013】
本発明の第6の構成は、酸化物基準のモル%で、Al、及び/またはGa成分の1種または2種を0〜20%含有することを特徴とする前記構成第1から5の光学ガラスである。
【0014】
本発明の第7の構成は、酸化物基準のモル%で、Pを0〜8%含有することを特徴とする前記構成第1から6の光学ガラスである。
【0015】
本発明の第8の構成は、酸化物基準のモル%で、TiOを0〜25%含有することを特徴とする前記構成第1から7の光学ガラスである。
【0016】
本発明の第9の構成は、酸化物基準のモル%で、La、及び/またはY、及び/またはGdの成分の1種以上を0〜25%含有することを特徴とする前記構成第1から8の光学ガラスである。
【0017】
本発明の第10の構成は、酸化物基準のモル%で、ZrO、及び/またはSnO、及び/またはNb、及び/またはTa、及び/またはWOの成分の1種以上を0〜10%含有することを特徴とする前記構成第1から9の光学ガラスである。
【0018】
本発明の第11の構成は、吸収端が430nm以下であることを特徴とする前記構成第1から10の光学ガラスである。
【0019】
本発明の第12の構成は、酸化物基準のモル%で、B/SiO値(モル%比)が0.2以上であることを特徴とする前記構成1から11の光学ガラスである。
【0020】
本発明の第13の構成は、前記構成第1から12の精密成形用光学ガラスである。
【0021】
本発明の第14の構成は、前記構成第13の精密成形用ガラスを成型してなる光学素子である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の放射線遮蔽ガラスは、ガラス成分として、Biと好ましくはアルカリ金属酸化物及び/またはアルカリ土類金属酸化物を組み合わせて含有するため、ガラス転移点(Tg)を520℃以下に維持できた上で、可視域において光学レンズに満足できる透過性と高屈折率(n=1.75以上)、低アッベ数(ν=15〜40)を実現できる。これによって、精密モールドプレス成形に好適な光学ガラスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を前記の通りに限定した理由を以下に述べる。各成分は酸化物基準のモル%にて表現する。
【0024】
またはSiO成分はガラス形成酸化物で、安定なガラスを得るのにいずれかが必要不可欠である。安定なガラスを得るためには、これら成分の1種または2種合計の含有量の下限を10%とすることが好ましく、15%とすることがより好ましく、20%とすることが最も好ましい。ただし、1.75以上の屈折率と520℃以下のTgを得るためには、含有量の上限を70%とすることが望ましく、65%とすることがより望ましく、60%とすることが最も望ましい。この二つの成分は単独でガラス中に導入しても本発明の目的の達成が可能であるが、同時に使うことにより、ガラスの溶融性、安定性及び化学耐久性が増すと共に、可視域における透明性も向上するので、同時に使うのが好ましい。また、上記の効果を最大限に引き出すために、B/SiOのモル%比を0.2以上にするのが好ましく、0.5以上にするのがより好ましく、1.0以上にするのが最も好ましい。
【0025】
GeO成分はガラスの安定性と屈折率の向上に効果があり、更に高分散に寄与するので、BまたはSiOの一部または全部と置き換える形でガラス中に導入することができる任意成分である。ただし、高価のため、更にTgを520℃以下に維持するため、含有量の上限を40%とすることが好ましく、35%とすることがより好ましく、30%とすることが最も好ましい。
【0026】
Bi成分はガラスの安定性の向上に大きく寄与し、特に1.75以上の屈折率(n)と520℃以下のTgという本発明の目的に達成するのに欠かせない成分である。本発明の屈折率とTgはBiの含有量に強く依存するので、含有量が少なすぎると、nが1.75に達成しないのみならず、Tgも520℃を超えてしまう。しかし、多すぎると、ガラスの吸収端が長波長側にシフトするため、可視域における透過率が低下する。従って、5%以上かつ25%未満の範囲が好ましい。より好ましい範囲は7%以上かつ25%未満で、最も好ましい範囲は10%以上かつ25%未満である。
【0027】
RO、RnO(RはZn、Ba、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す。また、RnはK、Na、Li、Csからなる群より選択される1種以上を示す。)成分はガラスの溶融性と安定性の向上、低Tg化に効果があり、更に可視域におけるガラス透明性の向上に大きな役割を果たすので、これらの成分のいずれかが必要不可欠である。これら成分の1種または2種合計の含有量が5%未満では効果が得難く、60%を超えるとガラス安定性が悪くなりやすい。従って、これら成分の合計含有量を5〜60%の範囲とすることが好ましい。より好ましくは8〜55%の範囲にあり、最も好ましくは15〜50%の範囲にある。但し、ROを単独に導入する場合、上記の効果を達成するための好適な含有量は5〜50%の範囲であり、より好ましくは10〜40%の範囲にあり、最も好ましくは15〜35%の範囲にある。RO成分の内、BaOとZnO成分が特に効果的であり、どちらかを含有するのが好ましい。更にSrO、CaO、MgOの内の1種または2種を同時に含有させると、ガラスの安定性、化学耐久性と可視域での透過率が更に向上するので、これら成分の1種または2種をBaOとZnOとのどちらかまたは両者と同時に含有するのが特に好ましい。また、RnOを単独に導入する場合、上記の効果を達成するための好適な含有量は5〜40%の範囲であり、より好ましくは8〜40%の範囲にあり、最も好ましくは15〜35%の範囲にある。RnO成分の内、LiOとNaO成分は上記の効果が最も顕著であり、どちらかまたは両者を含有するのが好ましい。更にガラスの化学耐久性を向上させるために、KOと組み合わせて使うのはより好ましい。尚、RnOと同じ役割を果たすCsOを少量添加することも可能である。
【0028】
Al、Ga成分はガラスの溶融性と化学耐久性の向上に効果があるので、任意に添加し得る成分であるが、特にBまたはSiOまたはGeOを置き換える形で導入するのが望ましい。しかし、BまたはSiOまたはGeOの含有量が45%を超える組成にはこれらの成分を導入すると、Tgが520℃を超えるので、これら成分をBまたはSiOまたはGeOの含有量が45%以下、より好ましく40%以下、最も好ましく35%以下の組成に導入すべきである。これら成分の1種または2種合計の含有量が少なすぎると効果が見られず、多すぎるとガラスの溶融性と安定性が悪くなり、Tgも大幅に上昇する。従って、Al及びGaの合計含有量が0〜20%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜20%の範囲にあり、さらに好ましくは0.5〜10%の範囲にあり、最も好ましくは0.5〜5%の範囲にある。
【0029】
成分はガラスの溶融性の改善に効果があるので、任意に添加し得る成分である。しかしその量が多すぎるとガラスの溶融性がかえって悪くなる。従って、0〜8%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜8%の範囲にあり、さらに好ましくは0.5〜5%の範囲にあり、最も好ましくは0.5〜4%の範囲にある。
【0030】
TiO成分はガラス屈折率と化学耐久性の向上、高分散に寄与する効果があるので、任意に添加し得る成分であるが、少なすぎると効果が見られず、多すぎるとガラスの溶融性とガラスの安定性も低下し、Tgも大幅に上昇する。従って、0〜25%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜25%の範囲にあり、さらに好ましくは0.5〜20%の範囲にあり、最も好ましくは0.5〜15%の範囲にある。
【0031】
La、Y、Gdの成分はガラスの屈折率、化学耐久性と透明性の向上、低分散に寄与する効果があるので、任意に添加し得る成分であるが、これら成分の1種または2種以上合計の含有量が少なすぎると効果が見られず、多すぎるとガラスの溶融性と安定性も低下するのみならず、Tgも上昇する。従って、0〜25%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜25%の範囲にあり、さらに好ましくは0.5〜20%の範囲にあり、最も好ましくは0.5〜15%の範囲にある。
【0032】
ZrO、SnO、Nb、Ta、WO成分はガラス屈折率と化学耐久性の向上に効果があるので、任意に添加し得る成分であるが、これら成分の1種または2種以上合計の含有量が少なすぎると効果が見られず、多すぎるとガラスの溶融性と安定性も低下すると共にTgも大幅に上昇する。従って、0〜10%の範囲が好ましい。より好ましくは0.1〜10%の範囲にあり、さらに好ましくは0.5〜8%の範囲にあり、最も好ましくは0.5〜5%の範囲にある。
【0033】
SbまたはAs成分はガラス熔融時の脱泡のために添加し得るが、その量は5%までで十分である。
【0034】
モールドプレス用光学ガラスとして不適当な成分であるPbOを含有しないことが好ましい。
【0035】
本発明の光学ガラスは屈折率(n)1.75以上で、アッベ数(ν)が15〜40の範囲である。nとνのより好ましい範囲はそれぞれ1.77〜2.00と15〜40で、最も好ましい範囲はそれぞれ1.80〜2.00と15〜35である。
【0036】
本発明の光学ガラスは、高屈折率、高分散であると共に、520℃以下の転移点(Tg)を容易に得ることができ、更に、Tgのより好ましい範囲として350〜500℃のもの、最も好ましい範囲のものとして380〜500℃のものを容易に得ることができる。
【0037】
本明細書中において透過率測定は日本光学硝子工業会規格JOGISO2−1975に準拠して行った。本発明の光学ガラスの透明性はガラスの透過率で表すと、厚み10mmのサンプルで分光透過率70%を示す波長が550nm以下、より好ましくは520nm以下、最も好ましくは500nm以下である。
【実施例】
【0038】
本発明の光学ガラスは、以下の方法により製造することができる。すなわち、各出発原料(酸化物、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩、硫酸塩など)を所定量秤量し、均一に混合した後、石英坩堝やアルミナ坩堝や金坩堝や白金坩堝や金または白金の合金坩堝やイリジウム坩堝などに入れて、溶解炉で850〜1250℃で2〜10時間熔融し、撹拌均質化した後、適当な温度に下げて金型等に鋳込み、ガラスを得た。
【0039】
以下に、本発明の実施例について述べるが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
表1〜4に示す所定の組成でガラス400gになるように原料を秤量し、均一に混合した後、石英と白金坩堝を用いて950〜1050℃で2〜3時間溶解した後、800〜900℃に下げて、更に1時間くらい保温してから金型等に鋳込み、ガラスを作製した。得られたガラスの特性を表1〜4に示す。また、実施例5と実施例17について、分光透過率を測定し、その結果を図1に示した。
【0041】
透過率測定については、日本光学硝子工業会規格JOGIS02に準じて行った。尚、本発明においては、着色度ではなく透過率を示した。具体的には、厚さ10±0.1mmの対面平行研磨品をJISZ8722に準じ、200〜800nmの分光透過率を測定した。(透過率70%時の波長)/(透過率5%時の波長)を示し、小数点第一位を四捨五入して求めた。
【0042】
転移点(Tg)については、熱膨張測定器で昇温速度を4℃/minとして測定した。
【0043】
屈折率(n)及びアッベ数(ν)については、転移点(Tg)付近で2時間保持した後、徐冷降温速度を−25℃/Hrとして得られたガラスを、JOCIS01−2003に基づき測定した。
【0044】
また、上記の実施例と類似の方法で、表4に示すように、60B−20SiO−20Bi(in モル%)という組成の比較例を作製したが、ガラスはほぼ完全に失透し、物性の評価にできるようなサンプルを取れなかった。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【0049】
表1〜4より、実施例のすべてのガラスはnが1.75以上で、νが15〜40の範囲で、Tgが490℃以下であることが明らかになった。また、図1の分光透過率曲線より、本発明のガラスは可視域での吸収がなく、高い透明性を有することが分かる。ガラスの吸収端はガラスの厚みが小さくなるにつれて短波長にシフトし、短波長における透明性が厚みにより変わるので、本発明では、厚み10mmで分光透過率70%と5%を示す波長(λ70%とλ5%)でガラスの透明性を評価した。その結果を表1〜4に示した。尚、明細書中では分光透過率5%を示す波長をガラス吸収端と言う。すべてのガラスは分光透過率70%を示す波長が550nm以下で、吸収端が430nm以下であり、可視域での透明性が高いことが明らかになった。
【0050】
また、これらのガラスを用いて精密モールドプレスを実験した結果、精度の高いレンズを得られ、しかも良好な転写性を示し、金型へのガラスの付着などが認められなかった。
【0051】
以上述べた通り、本発明の光学ガラスは、屈折率(n)が1.75以上の光学定数を有し、可視域での透明性が高い光学ガラスであって、転移点(Tg)が520℃以下であり、精密モールドプレス成形用に好適であり、そして溶融ガラスを直接成形してレンズ等の光学素子を得る方法、溶融ガラスから一旦予備成形体(溶融ガラスを型で受けて成型する方法やプレス成形による方法や、研磨、研削工程による方法等で得ることができる)を経てレンズ等の光学素子を得る方法のいずれにも適用できるものである。
【0052】
また、本発明の光学ガラスは、近年急速に需要が増大している光通信用レンズに好適である。光通信用レンズは半導体レーザなどの発光体から放出されるレーザ光を光ファイバーに高効率で結合させるなどの働きをするガラスレンズで、光通信用部材には欠かせない微小光学部品である。このレンズにはボールレンズや非球面レンズなどが用いられるが、その特性として高屈折率であることが求められる。特に、本発明の光学ガラスは、非球面レンズとして使用する場合の精密モールドプレス成形に適している。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例5と17のガラスの分光透過率曲線である。横軸は波長(nm)、縦軸は分光透過率(%)である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物基準のモル%で、Biを5%以上かつ25%未満含有し、屈折率(n)が1.75以上、アッベ数(ν)が15〜40であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
波長が550nmで10mm厚の分光透過率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
転移点(Tg)が520℃以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物基準のモル%で、B+SiOを10〜70%、及び/またはBiを5%以上かつ25%未満、及び/またはRO+RnOを5〜60%(RはZn、Ba、Sr、Ca、Mgからなる群より選択される1種以上を示す。また、RnはLi、Na、K、Csからなる群より選択される1種以上を示す。)、及び/またはSb+Asを0〜5%の範囲で各成分を含有し、10mm厚における分光透過率70%を示す波長が520nm以下で、屈折率(n)が1.75以上、アッベ数(ν)が15〜40であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項5】
、及び/またはSiOの一部または全部をGeOで置き換えることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項6】
酸化物基準のモル%で、Al、及び/またはGa成分の1種または2種を0〜20%含有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項7】
酸化物基準のモル%でPを0〜8%含有することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項8】
酸化物基準のモル%でTiOを0〜25%含有することを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項9】
酸化物基準のモル%でLa、及び/またはY、及び/またはGdの成分の1種または1種以上を0〜25%含有することを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項10】
酸化物基準のモル%でZrO、及び/またはSnO、及び/またはNb、及び/またはTa、及び/またはWOの成分の1種以上を0〜10%含有することを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項11】
吸収端が430nm以下であることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項12】
酸化物基準のモル%で、B/SiO値(モル%比)が0.2以上であることを特徴とする請求項1から11のいずれかに記載の光学ガラス。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の精密成形用光学ガラス。
【請求項14】
請求項13に記載の精密成形用ガラスを成型してなる光学素子。

【図1】
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【公開番号】特開2006−327925(P2006−327925A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−110497(P2006−110497)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000128784)株式会社オハラ (539)
【Fターム(参考)】