説明

光学シートおよびその製造方法

【課題】耐擦性に優れ、なおかつ、ハンドリングが容易な光学シートを低コストで提供すること。
【解決手段】本発明に係る光学シートは、易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層(10)と光学形状を有するフィルムからなる第2層(9)とが積層された光学シートであって、前記保護フィルムからなる第1層(10)が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ前記第2層(9)における光学形状が、前記保護フィルム(10)からなる第1層と接しない面に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学シートおよびその製造方法に関する。本発明の光学シートは、TVをはじめとする各種ディスプレイ装置や、照明機材、デジタルサイネージなど各種装置の輝度向上や視野角改善に好適に用いられる。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイ装置などで使用される光学シートは、装置内部に挿入することにより、輝度向上や視野角改善を行う目的で使用される。
この光学シートは透明なプラスチックシートの片面、もしくは両面に微細なプリズムやレンズの光学形状を設けて構成されるのが一般的である。
【0003】
光学シート表面の光学形状は、予め用意された金属や樹脂などからなる型を用意して、その形状を転写する工法が一般的に用いられる。具体的には温度と熱により、プラスチックシートと型を圧着して形状を熱圧転写・剥離する方法や、放射線などの手段で液状の樹脂を重合硬化する作用を利用することで、型の形状が転写されたシートを得る方法などが一般的である。
これら光学シートの表面は微細な凹凸となるが、微細な凹凸と擦れ合う相手側の硬さによっては、その頂部がコスレなどにより破損し、スクラッチが生じてしまうことがある。
【0004】
液晶ディスプレイなどの製品に搭載された光学シートは、装置に内蔵され外部に露出しないため、スクラッチを防ぐ構成とすることも可能だが、装置内部の構成に工夫が必要となってしまう。
【0005】
当然のことながら、光学シート自体を取り扱う加工工程ではスクラッチが生じ易いため、少なからず収率低下の原因となっている。
また、光学シートを製造する際には、薄物の場合には長尺のロール状に巻き取るのが一般的であり、その場合にはシート同士の接触を防ぐため、粘着性の保護フィルムを巻取り前に光学シートと貼合するなどの対策が必要である。
光学シートが厚く板状で巻取りができない場合には、板状のシートを積載する事となるが、保護フィルムの貼合、あるいはクッション性のある緩衝材を挟むなどの対策を単独もしくは併用して実施する必要がある。
また、マット形状を光学フィルムの裏面側に付与してスクラッチが生じない様にする方法もあるが、金型などによる転写工程が必要となるので、これもまた製造工程の増加となる。
なお、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂を用いた多層の積層体については、例えば下記の特許文献1〜3に開示がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平09−216318号公報
【特許文献2】特開2006−027621号公報
【特許文献3】特表2008−518268号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光学シートの耐擦性を向上させることは、工程内で光学シートのスクラッチを起こしにくくし、ハンドリングを向上させる上で重要である。
光学シートを構成する材料の改質が工程上最も単純な解決法であるが、透明性と耐熱性を両立させる必要があり、それ以外の物理的特性については、元来の物性を生かさざるを得ない場合が多く、耐擦性の向上をシート素材の改質で実施するには、開発期間やコストなどの点で現実的ではない。
ハードコート層を設けることで表面硬度向上を図る方法は、材料と工程の増加を伴うため、望ましくない。
【0008】
光学シート保護の目的で、保護フィルムを貼合したり、クッション材を挟み込んだりする場合にも、梱包材を別途用意しなければならず材料や加工工程が増えるため、やはり製品構成上好ましくないばかりでなく、形状が付与されているシート表面に、保護フィルムなど粘着性フィルムを用いると、光学シートの凹凸形状に伴う密着面積の減少から密着力低下が起こりやすく、結果として巻ズレや荷崩れなどが生じ、保護フィルムを貼合すること自体が難しいケースもある。
【0009】
このように、光学シートをデリバリーする際の梱包には、キズなどに対する特別な配慮が必要であり、保管や運搬時のハンドリングの面から望ましくない。
【0010】
本発明の目的は、耐擦性に優れ、なおかつ、ハンドリングが容易な光学シートを低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とが積層された光学シートであって、
前記保護フィルムからなる第1層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ
前記第2層における光学形状が、前記保護フィルムからなる第1層と接しない面に形成されていることを特徴とする光学シートである。
請求項2に記載の発明は、 前記保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層との境界面が、マット面となっていることを特徴とする請求項1に記載の光学シートである。
請求項3に記載の発明は、前記保護フィルムからなる第1層が、光吸収剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学シートである。
請求項4に記載の発明は、易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とを共押出法により積層させる工程を有し、
前記保護フィルムからなる第1層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ
前記第2層における光学形状が、前記保護フィルムからなる第1層と接しない面に形成されることを特徴とする光学シートの製造方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光学シートは、易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とが積層された光学シートであって、前記保護フィルムからなる第1層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ前記第2層における光学形状が、前記保護フィルムからなる第1層と接しない面に形成されているので、耐擦性に優れ、なおかつ、ハンドリングが容易な光学シートを低コストで提供することができる。
本発明における光学シートは、ロール状に巻いた状態でのシート表裏での擦れ合いが、保護層のクッション性により、スクラッチとなりにくく、良好な表面状態を保つことができる。
【0013】
保護層の密着力は、光学シート製造時の共押出時に溶融した樹脂同士の密着によるものなので、空気層などは含まずに密着するが、光学シートを組み立てる際の保護層剥離では、キッカケを入れることにより容易に可能となる。
すなわち、輸送時の密着性と組立て時の剥離性を兼ね備えた光学シートを保護層と一体化して製造することが可能である。
共押出法により得られる光学シートは、保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とが溶融した状態で積層され、両者が隙間無く密着するばかりでなく、接着剤や粘着材など保護層の接着に関する部材や、塗工等それに伴う加工が必要ない。
【0014】
加えて、保護フィルムを一体に形成するばかりでなく、以下の効果も併せ持つことができる。
一つには、保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層との境界面が、マット面となることである。これにより、光学形状が保護フィルムと接しない面に形成される光学シートの製造にも、本構成を適用する事が可能である。これは、樹脂の相溶性に起因して境界面がマット形状となることを利用したもので、金型等を用いることなくマット形状の付与を行うことができる。
もう一つは、保護フィルムに光吸収剤を混錬することでレーザーによる加工性の向上を図る事ができる。光学シートは断裁や外形加工を施した上で装置へ組み込まれるが、入り組んだ形状に切り落とすには、レーザー加工機が必要だが、その工程効率を向上させる事できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明における光学シートの一例の概略断面図である。
【図2】本発明における光学シートの保護フィルム剥離時の概略を説明するための図である。
【図3】本発明における光学シートの製造方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明において、保護フィルムからなる第1層は、易剥離性を持たせるため、結合力が少ない、すなわち極性の小さい樹脂が望ましい。一般的にはポリエチレン系樹脂もしくはポリプロピレン系樹脂を選定すれば良い。
また、光学形状を有するフィルムからなる第2層は、本発明の効果の点からポリカーボネイトが好ましい。以下、第1層としてポリエチレンまたはポリプロピレンを、第2層としてポリカーボネイトを使用した場合について説明するが、本発明は下記例に制限されない。
【0017】
本発明の光学シートの製造方法は、Tダイによる多層押出法を用いて樹脂膜を作り、冷却ロールで樹脂を冷却しながらシーティングを行う方式を採用する。
多層押出法は、例えばポリカーボネイトとポリエチレンあるいはポリプロピレンをそれぞれ溶融して吐出させる押出機を、フィードブロックに接続、フィードブロック内で合流多層化してTダイから多層樹脂膜として吐出させる方式である。
なお、以下の説明では、2種2層構成を例にとるが、光学形状を有するフィルムからなる第2層を多層構造として層数が増えても、保護フィルムからなる第1層を積層することにより、同様の効果を得る事ができる。
【0018】
この共押出しを行うために、樹脂が溶融したときの流動性を合わせるために、その流動性指標メルトフローレイト(MFR)が近い樹脂を選定する。樹脂の流動性が合わない場合にはTダイ吐出後に流速の違いにより波状の模様、フローマークが生じてしまうので、注意深く選定を行う。
【0019】
Tダイ内で多層化される温度と、その温度におけるメルトフローレイト(MFR)を双方の樹脂で同等となるように調整することで、フローマークが発生せず、2層のシートを得ることが可能である。また、フローマークが生じた場合には、外観検査時にフローマークの模様により検査が難しくなる点があるが、製品となるポリカーボネイト樹脂にフローマークが生じていなければ実用上の問題はない。
【0020】
溶融する樹脂の温度については、樹脂のガラス転移点や融点が重要となるが、一般にポリカーボネイト樹脂の溶融条件に、ポリエチレンもしくはポリプロピレンを揃えると良い。これはポリエチレンやポリプロピレンは物性が安定しているため、加水分解などを起こさず、ポリカーボネイトを加工する温度近辺でも安定して溶融・加工が可能なことを利用している。
【0021】
通常の多層押出では、2種類の種類それぞれ厚さの比率(層比)がTダイの幅方向で変わるが、層比が均等でなくとも、第2層の厚みが均等となるよう、樹脂の流れを、温度分布やリップボルトで調整すればよい。
【0022】
この際に、ポリエチレンやポリプロピレンなど極性の低い樹脂を保護フィルム側の材料として選定することで、多層押出時にイオンによる層間の結合が少ないことから、樹脂同士の相溶性に起因する機械的嵌合と大気圧による密着により、接合した状態を得る事ができる。
【0023】
この樹脂同士の相溶性は、温度や吐出量、樹脂の圧力や流動性などの押出条件により決定され、それに伴い、境界面の表面粗さ、その度合いが強い場合にはそのマット度合いも決定される。つまり、所望の面状態を得られるよう、温度条件などを設定すればよい。
【0024】
光学シートとするには、ポリカーボネイト樹脂層の表面に、プリズムやレンズなどの光学形状を設ける必要がある。光学形状の転写法の一例として、Tダイから吐出した樹脂を引取りながら除冷を行う冷却ロールに、光学形状を刻んでおき、その形状を転写する方法が挙げられる。
【0025】
この形状転写はポリカーボネイト層と接する側で行う事となるが、樹脂が充分に高温で流動性を有した状態で圧着する必要が有るため、できるだけTダイに近い上流側で形状転写を行うことが望ましい。
【0026】
この形状転写を行う冷却ロールは、鉄芯上に銅メッキを施して、その銅の層を彫刻、たとえばダイヤモンドバイトによる切削加工、砥石による研削加工、選択的に腐食を施すエッチング加工やその他多くの既存のパターンニング技術を用いることができる。
この銅メッキ上に、クロムメッキを施すことで、表面硬度の向上による銅層の保護を図ることが可能となる。
このほかにも金属やセラミックをシリンダー表面に溶射、研磨を施して耐久性の高いロールを使用したり、ニッケル表面に形状を刻んだロール等を用いても問題ない。
冷却ロールによって充分に冷やされた光学シートは、フィルム状であれば巻取り加工、板状であれば断裁加工により製品とすることができる。
【0027】
このようにして得られた光学シートは、ディスプレイ装置に搭載する形状に外形を整えた上で、保護フィルムにキッカケを与えて剥離して、装置へ組み立てればよい。
もちろん、この組立工程以前においては、常に一体化した保護フィルムにより、光学シートをスクラッチから保護することができる。
【0028】
次に、本発明について下記に図面を参照しながら詳しく説明する。
【0029】
図1は本発明における光学シートの一例の概略断面図である。
本発明の光学シートは、光学形状(図1ではプリズム形状で示す)を有するフィルムからなる第2層(9)と、これと一体化して接合された易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層(10)の2層から形成されている。
第2層(9)と第1層(10)の境界面は共押出時の溶融した樹脂が若干混ざり合った状態で固まっており、適度なマット面であり、空気層などを挟むことは無く完全に密着した状態となっている。
【0030】
図2は、本発明における光学シートの保護フィルム剥離時の概略を説明するための図である。
保護フィルムの樹脂に極性の低い樹脂を用いることで、分子の結合力を弱くする事ができるため、機械的な嵌合力や大気圧にて接合している面を剥離することは比較的容易である。また、ポリエチレンなど柔軟性に優れた樹脂を保護フィルムの材料に選定することで保護機能と密着性、剥離性を両立する事が可能となる。
【0031】
図3は本発明における光学シートの製造方法を説明するための図である。
光学形状を有するフィルムからなる第2層を構成する樹脂(6)と保護フィルムからなる第1層を構成する樹脂(7)は、それぞれ別の押出機(1)にて溶融され、Tダイ(2)へ供給される。Tダイ(2)の上流部分に設けられるフィードブロック(図示せず)などで合流、多層化を行っても良いし、Tダイ(2)内部で合流多層化させるなど、これまでに実用化されている一般の多層化技術を使用すればよい。
【0032】
Tダイ(2)から吐出される樹脂は、押出機(1)の回転数、温度条件などを調整し、適切な層比、厚みをコントロールできる。
【0033】
引取り機に到達した溶融樹脂は冷却ロール(3)および冷却ロール(4)間で挟み込み、冷却ロール(4)に密着するようにロール温度、トルク、挟圧を調整する。
この際に、冷却ロールで挟み込む力をコントロールすることで、厚みの調整を行うこともあるが、この際には、樹脂が外力で変形可能な温度に保たれている事が必要である。
【0034】
更には、冷却ロール(3)と冷却ロール(4)で挟みこむ際に、冷却ロール(4)表面に転写形状を彫刻したロールを使用することで、第2層に形状の転写を行うことができる。
また、形状転写のために、表面に形状の施されたシートを挟みこんでも同様に第2層に形状の転写を施す事が可能である。
【0035】
冷却ロール(4)と冷却ロール(5)で除熱を行い、冷却リールの温度差や、張力等を用いてシートの反りを矯正しながらシーティングを行い、更に下流部分で巻き取り、もしくは断裁を行うことで、保護フィルム一体型の光学シート(8)を得られる。
【0036】
以下に光学形状を有するフィルムからなる第2層を構成する樹脂としてポリカーボネイト樹脂、保護フィルムからなる第1層を構成する樹脂としてポリエチレン樹脂を用いた場合について詳しく解説する。
【0037】
光学形状を有するフィルムからなる第2層に形状を転写するためには樹脂を高温とすることが望ましい。ポリカーボネイト樹脂の場合には、300℃まで加熱すると転写性が良好であり、吐出量約70Kg/hにて吐出することで、有効幅450mmの光学シートを得る事ができる。
【0038】
各樹脂の吐出量比率はフローマークや形状転写に影響の無い樹脂温度が維持でき、フローマークが生じなければ、任意に設定することが可能で、保護フィルムのクッション性が多く必要な場合にはポリエチレン樹脂の吐出比率を増やして厚い保護フィルムとすればよい。
上記の例では、樹脂の冷却に3本ロール方式の引取り機を使用している。冷却ロール(4)を、光学形状を彫刻した金型とした。したがって、吐出位置は冷却ロール(3)側がポリエチレン樹脂、冷却ロール(4)側をポリカーボネイト樹脂としている。
【0039】
ポリカーボネイト樹脂層とポリエチレン樹脂層の境界面をマット面とするには、樹脂同士が互いに持つ相溶性を利用することにより行う。
相溶性を得るためには、冷却ロールの温度設定を、フィルム形成に影響の無い程度に高温に保ち、樹脂が流動性を維持する距離/時間を長く保つことが重要である。
また、溶融樹脂がロール接触面で冷却されると、樹脂中にアトランダムに発生する微小な核からコロニー状に領域が拡大してゆき、この様な溶融状態と非溶融状態がまだらに配置された状態を経て、全面が非溶融状態となる。
【0040】
この溶融状態と非溶融状態がまだらに配置された状態では、非溶融状態のコロニー部分は収縮していることから、樹脂中の応力もまた収縮に応じた分布となり、溶融状態の他方の樹脂の変形となることから、結果として樹脂界面にマット状の凹凸を刻む事ができる。
【0041】
また、ポリエチレンが結晶化する性質も、界面のマット面形成に寄与する。一般に結晶化は低速で冷却した場合には結晶が大きく、高速で冷却した場合には結晶の粒子が小さくなり、その結果マット面粗さを変化させることができる。
もちろん、機械的な押圧、形状転写などの方式に比べれば、弱いマットとしかならないが、製造プロセス中に、特別な部材、加工装置、あるいは製造工程を付け加えずに実現できるメリットがある。
【0042】
本発明の光学シートの生産直後の荷姿はロール状もしくは断裁された板状の形状で得られるが、ディスプレイの筐体に組付けるためにトリミング加工を施す必要がある。
その加工は、エンドミルなどで外形を切削加工したり、トムソン刃により一括打ち抜きを行ったりするのが一般的だが、出入りの多い複雑な形状への対応に限界があることから、高出力レーザーを用いて断裁を行う場合が多くなっている。レーザー加工機としては、例えば三菱電機社製、MELLASER ML2012LB-5036D(2KWクラス)などがあるが、高出力のレーザー加工機は大型かつ高価なためコスト的な問題が生じる。
一方で、有色の保護フィルムを用いて効率よくレーザー光の吸収を行い、そのエネルギーによって光学シートを加工する方式を用いれば、このような大出力のレーザー加工機は必要ないが、光学シートに保護フィルムを貼合する場合、微細な空隙層が光学フィルムの凹凸部分で残るため、レーザーのエネルギーが保護フィルムから光学シートに伝わらずに、空隙の部分が局所的に加工できない部分が散在する事となり、実質的には使用することができない。
【0043】
本発明品はレーザー光の波長に合わせた光吸収剤を保護フィルム(ポリエチレン)中に配合することで、断裁に使用するレーザー光を効果的に吸収することができ、かつ、光学フィルムとは空隙無く密着している事から、レーザーのエネルギーも均一に光学シートに伝えられるので、実用的な加工が可能である。もちろん、光吸収剤なしの場合と比べて、低出力のレーザーで断裁加工が可能となる。
【0044】
この光吸収剤としては、カーボンブラックであれば、殆ど全ての波長のレーザーが使用できるが、カーボンブラックに限らず、加工用レーザーの波長で吸収を有する色素が有機、無機に関わらず使用可能である。また一般的な加工用レーザーとして広く用いられているCO2レーザーでは可視域から外れた赤外波長域となるため、ポリカーボネイト樹脂など可視域で透明な樹脂に対しても光吸収を有するため、そのまま加工が可能であるが、赤外線吸収剤(たとえば、BASF社製、ルモゲンIR)を混粘することで、更に効率よく行うこともできる。
具体的には加工速度やレーザーの出力から赤外線吸収剤の添加量を決定することができる。
【符号の説明】
【0045】
(1)・・・ 押出機
(2)・・・ Tダイ
(3)・・・ 冷却ロール
(4)・・・ 冷却ロール
(5)・・・ 冷却ロール
(6)・・・ 光学形状を有するフィルムからなる第2層を構成する樹脂
(7)・・・ 保護フィルムからなる第1層を構成する樹脂
(8)・・・ 本発明の光学シート
(9)・・・ 光学形状を有するフィルムからなる第2層
(10)・・・ 易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とが積層された光学シートであって、
前記保護フィルムからなる第1層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ
前記第2層における光学形状が、前記保護フィルムからなる第1層と接しない面に形成されていることを特徴とする光学シート。
【請求項2】
前記保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層との境界面が、マット面となっていることを特徴とする請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
前記保護フィルムからなる第1層が、光吸収剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学シート。
【請求項4】
易剥離性を有する保護フィルムからなる第1層と光学形状を有するフィルムからなる第2層とを共押出法により積層させる工程を有し、
前記保護フィルムからなる第1層が、ポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂からなり、かつ
前記第2層における光学形状が、前記保護フィルムからなる第1層と接しない面に形成されることを特徴とする光学シートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−66410(P2012−66410A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−211173(P2010−211173)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】