説明

光学ディスプレイを提供するレンズの製造方法

本発明は、表面、裏面を有するレンズ(1、2)であり、前記レンズに、導光体で構成される透明光学インサート(1A、2A、I)によって、光ビーム発生システムの光学エレメントから発生する光ビームが入光面(S1)を介して入射され、着用者の目に向かって情報コンテンツを見させることができ、前記透明光学インサート(I)は、支持体としてのフレーム(3)に取り付けるのに適した最終レンズの形と実質的に等しい形を有するレンズの製造方法に関し、比例変形に従って、前記最終レンズの外形よりも小さな外形を有する前記透明光学インサート(I)を製造するステップと、前記前面と裏面を形成するプラスチック素材と前記透明光学インサート(I)とを結合させてレンズブランク(LB)を製造するステップと、前記透明光学インサート(I)の周囲の前記レンズブランク(LB)をカットするステップからなり、前記レンズブランク(LB)をカットする距離は、前記透明光学インサートの周縁から1mmであり、前記透明光学インサートの周囲の少なくとも50%にあたる

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マルチメディア型の例としてのデジタル画像や、データ型の例としてのGPSデータなどの光学投射を通して、情報へアクセスできるよう設計された光学結像装置(optical imager)を用いて、光学ディスプレイを作成するレンズの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「レンズ」という語は、ここでは特に眼鏡のフレームに取り付けられるのに適した光学システムを示すために使用される。
この「レンズ」という語は、ここでは眼鏡のフレーム上に取り付ける準備が整っているフィニッシュレンズとして使用され、または、使用のためにトリミングによってカットや、表面仕上げ、研磨などの必要のあるアンフィニッシュレンズもしくはレンズブランクという意味で使用される。
【0003】
特許文献1は、電気信号に基づき光ビームを生成する電気光学システムから発生する光ビームを形成する光学結像装置(optical imager)によって構成される投射インサートを公開し、そのシステムは小型スクリーン、レーザーダイオード又は発光ダイオード型などである。
光学結像装置は、情報コンテンツを仮想イメージとして着用者に見せることが可能な光ビームを着用者の眼に向ける。
【0004】
この従来技術による光学結像装置は、光ビームを着用者の目へ向けるため、特にガラスで作られた光透過鉱物基板、入光面から全反射による基板への光結合のために基板が有する波反射基板面、基板に有され、互いに平行で、基板のいずれの縁部とも平行でない複数の部分的な反射面を含む。
【0005】
なぜなら、この型のディスプレイでは光学結像装置をより薄く、特に2ミリメートル以下にすることができ、ディスプレイ機能と視力補正機能を調和することができる。レンズの表面は両方の機能に関与し、例えばディスプレイ機能を損なわずに、視力補正の観点から、一つの面の屈曲の半径を変える事ができる。
【0006】
特許文献2では、ディスプレイ機能と視力補正機能を分離することによって、大量生産においても確実な方法でユーザの視力を修正する事ができる、光学ディスプレイの製造方法を記載している。
この目的のため、この特許文献2では、表面と背面をもった視力補正レンズの製造方法を記載しており、光ビーム発生システムによって発射される光ビームは入光面から入射され、情報コンテンツが見えるように着用者の目に向けられ、光ビームは二つの反射面の間のレンズに入射し、そこから二つの反射面間を複数回反射しながら出射し、二つの反射面は導光体(light guide)によって形成される透明光学インサートの表面である。
【0007】
透明光学インサートは、レンズブランク内に配置されることによって完全にレンズの中に含まれ、レンズブランクは、表面を成型するための第1のモールド部と裏面を成型するための第2のモールド部とを備えるモールドの中にモノマーを流し込むことによって成形され、これを眼鏡に取り付けるフィニッシュレンズの形に形成するため、表面を仕上げ、研磨し、トリミングによるカットによって円形のレンズブランクを得る。
この既知の工程に基づくと、透明光学インサートは長方形で、例えば43ミリメートルの長さ、20ミリメートルの幅である。その結果、表面は最終レンズのカットされた全ての表面よりも小さくなる。
【0008】
このような方法は以下に挙げるような技術的問題を生じさせる。
モノマーの加熱鋳造中に、透明光学インサートのガラスとレンズブランクのモノマーとの間に生じて、レンズブランクの表面の仕上げや研磨による機械的付加力によって明らかとなる機械的励起(mechanical solicitation)によって、透明光学インサートの縁部において光学的な欠点が生じる。この欠点は、レンズの透過率の質を低下させ、これらの区間の光パワーの変異を生じさせる。
【0009】
この問題を解決するため、最終レンズの表面より大きい表面を提供する透明光学インサートが考えられ、レンズブランクを構成するモノマーを配置した後、最終レンズはこの寸法のトリミングによりカットされる。
【0010】
特許文献3は、最終インサートの表面が最終レンズの表面と同等となり、透明光学インサートは他の二つの基板面の間に密着して重ねられ、他の基板面の一つは外側に配置され、一つは着用者の側に配置されて、着用者の目の度数の補正機能を提供する。
このような光学ディスプレイを製造するため、ブランクの透明光学インサートは例えば長さ57ミリメートル、幅35ミリメートルで、同じ寸法の表面で二つのブランク基板面が透明光学インサートに重ねられ、フィニッシュレンズが眼鏡のフレームに取り付けられるよう整えるため、表面を仕上げられ、研磨され、トリミングによってカットされる。この方法により、透明光学インサートは、最終レンズの表面全体に拡張される。
【0011】
このような方法は以下に挙げるような技術的問題を生じさせる。
このカッティングは、透明光学インサートのガラス、二つの基板面のプラスチック材料の二つの材料から構成される全幅の中でなされなければならない。
これら二つの材料は全く異なる硬度を持ち、トリミングによるカッティングはとても難しく、分裂や壊れ、材料の分離が起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第01/95027号
【特許文献2】国際公開第2006/016086号
【特許文献3】欧州特許出願公開第1748305号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そこで、本発明は上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、信頼出来る方法で大量生産を行いながら、最終的にユーザの視力を補正することができ、完全な光学透過を提供し、製造が容易である光学ディスプレイの製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明に基づく工程の好ましい適用は視力補正レンズの製造に関わるものだが、眼鏡や同等の補助具のフレームに取り付けられる光学ディスプレイを得るために、光学インサートなどを含む、視力補正機能をもたないレンズへの適用も可能である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的を達成するため、本発明はレンズの製造方法を提供するものであって、表面、裏面を有するレンズであり、前記レンズに、導光体(light guide)で構成される透明光学インサートによって、光ビーム発生システムの光学エレメントから発生する光ビームが入光面を介して入射され、着用者の目に向かって情報コンテンツを見させることができ、前記透明光学インサートは、支持体としてのフレームに取り付けるのに適した最終レンズ(final lens)の形と実質的に等しい形を有するレンズの製造方法であって、比例変形に従って、前記最終レンズの外形よりも小さな外形を有する前記透明光学インサートを製造するステップと、前記前面と裏面を形成するプラスチック素材と前記透明光学インサートとを結合させてレンズブランクを製造するステップと、前記透明光学インサートの周囲の前記レンズブランクをカットするステップからなり、前記レンズブランクをカットする距離は、前記透明光学インサートの周縁から1mmであり、前記透明光学インサートの周囲の少なくとも50%にあたることを特徴とする。
【0016】
前記レンズブランクを製造するステップは、前記透明光学インサートの周囲に前記プラスチック素材をモールディング(molding)することによって行われることが好ましい。
【0017】
前記レンズブランクを製造するステップは、前記透明光学インサートを二つの平面基板の間に密着して積層することによって行われることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
上記第1のケース(透明光学インサートの周囲にプラスチック素材をモールディングする)では、本発明に基づく工程を適用することにより、光学的欠点のある場所がレンズの最終形態の縁部の近くから取り除かれるため、レンズは一様な透過率となり、これがレンズを通してユーザによって観察される光学的ブレを最小にとどめる。
上記第2のケース(透明光学インサートを二つの平面基板の間に密着して積層する)では、本発明に基づく工程を適用することにより、カッテイングは二つの基板面のプラスチック素材へのみ行われ、硬度の違いによる問題を抑制し、光学的欠点の区間は取り除かれ、ガラスインサートの正確な機械的基準は最終レンズ上に直接アクセスできる。
本発明を用いて、トリミングによるカッティングはトリミングの標準的な機械によって行う事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によるオフサルミック双眼ディスプレイの概略断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態による工程を説明するための図である。
【図3】(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態による工程を説明するための図である。
【図4】本発明に係る変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、オフサルミック(ophthalmic)双眼ディスプレイは二つのレンズ1、2から構成される。
各レンズは電気信号に基づき光ビームを発生させる電気光学システム1B、2Bから発生する光ビームを成形する光学結像装置1A、2Aによって構成される投射インサートを含み、このシステムは小型スクリーン、レーザーダイオード又は発光ダイオード型などである。
【0021】
光学結像装置は、右レンズに点線矢印Aで示すように情報コンテンツを見せるため、入光面S1から出光面S2へ、着用者(viewer)の目に向かって光ビームを向ける。これらのレンズはシースルーで、例えば右レンズの矢印Bで示すように、周囲を見ることができる。
レンズ1、2は、二つのサポートブランチ3A、3Bとノーズサポート3Cから成る眼鏡のフレーム3に取り付けられる。
【0022】
図2の(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態による工程を説明するための図である。
特許文献2(WO2006/016086)に記載されているように、インサート(I)は、表面を成型するための第1のモールド部FMと裏面を成型するための第2のモールド部RMを備えたモールドにモノマーが流し込まれてモールド成形されるレンズブランク内に配置されることによって完全にレンズの中に含まれ、これにより眼鏡のフレームに取り付けられるフィニッシュレンズの形に表面を仕上げ、研磨し、トリミングによるカットを行うことで円形のレンズブランクLBを得る。
【0023】
本発明では、外形は、眼鏡のフレームへ取り付けられるのにふさわしい形態を言う「最終レンズ」の外形と実質的に等しく、ただし比例変形に基づき図2の(c)の破線Lによって描かれるように最終レンズの外形よりも小さい外形としてのインサートIを製造するステップと、
上記で詳細を記したように、前面と裏面を形成するプラスチック素材とインサートとを結合させてレンズブランクを製造するステップと、
図2の(c)に従って、インサートIの周縁から距離をとった破線Lに沿ったインサートの周囲でレンズブランクをトリミングによりカットするステップからなり、
その距離はインサートのすべての周囲から1ミリメートルほどである。
【0024】
図3(a)〜(d)は、本発明の第2の実施形態による工程を説明するための図である。
特許文献3(EP1748305)に記載されているように、インサートIは他の二つの基板FS、RSの間に密着して重ねられ、基板の一つは外側に配置され、他の一つは着用者の側に配置されて、着用者の目の度数の補正機能を提供する。
【0025】
本発明は、眼鏡のフレームへ取り付けられるのにふさわしい「最終レンズ」の外形と実質的に等しく、ただし比例変形に基づき図3(c)内の破線Lによって描かれるように最終レンズの外形よりも小さい外形を有するインサートIを製造するステップと、上記で詳細を記したように、前面と裏面を形成するプラスチック素材とインサートとを結合させてレンズブランクを製造するステップと、図3(c)に基づき、インサートIの端から距離をとった破線Lに沿ったインサートの周囲でレンズブランクをトリミングによりカットするステップからなり、その距離はインサートのすべての周囲から1mmほどである。
【0026】
図3(d)は、図3(c)に示すように、トリミングによるレンズの作成を説明する。
ガラスインサートの基準は、「最終レンズ」に直接、アクセス可能な(accessible)ことである。
【0027】
上記実施形態に基づくトリミングによるカッティング、レンズブランクの表面仕上げ、研磨、トリートメントの後に、“最終”レンズ1、2の縁部は自動的に、特別な作業なしに、溝のベースを形づくる光学インサートIの縁部とともに二つの処理された基板FS’、RS’の間に溝4を作る。
この溝4は、幅2mm、深さ1mmほどで、光学インサートIへの直接アクセスを保証し、光学インサートは着用者の目への光ビームを良好に到達させるという点で高い正確さをもって配置され、機械的基準の正確さを可能とする。
【0028】
この実施形態に基づいて、「最終レンズ」は、光学インサートIへの二つの直接アクセスを提供し、その一つはインサートIの側面である溝4の底面であり、もう一つは「最終レンズ」のもう一つの側面上のインサートIの前方表面5である。これらの直接アクセスは、正確な機械的基準を保証する。
【0029】
上述した本実施形態に従えば、フレーム3は標準的なものであり、つまりレンズをサポートする部分は閉じられており、レンズの全周囲に形成される。
中には閉じた部分を有さないフレームも存在し、例えば、ねじを用いてレンズ上に直接固定されるブランチやノーズサポートなどがある。
【0030】
このような場合、図4に従えば、インサートIの輪郭と「最終レンズ」の輪郭との間の距離は、インサートの周囲の特定の領域に対して1ミリメートルより大きい。
このような特定領域6、7はブランチとノーズサポートの、例えば固定ねじのための穴Hなど、固定用の配置場所として対応し、これら穴Hが開けられるのをプラスチック素材の部分のみとするため、レンズブランクのトリミングによるカッティングはインサートの端からより広く距離をとったインサートの周囲でおこなわれる。
【0031】
実際に、ブランチ及びノーズサポートをレンズに直接固定するような場合、このような特定領域6、7は、レンズの全周囲の50%よりも小さな部分に配置される周辺部分に相当し、上述で詳細に説明した工程は、インサートIの周囲の少なくとも50%に適用される。
【0032】
好ましくは、投射インサートIは、特許文献1(WO01/95027)に記載されているようにインサートの型において、2mmほどの厚さをもつ。
この光学結像装置は、光ビームを着用者の目へ向けるため、ガラスで作られた光透過基板、全反射による入光面から光透過基板への光結合のために光透過基板が有している波反射基板面、光透過基板が有していて、互いに平行で、基板のいずれの縁部のとも平行でない複数の部分的な反射面Sを含む。
【0033】
いうまでも無く、光学インサートIは、フレーム3と着用者の特性に応じて、これら反射面Snによって、着用者の目へ光ビームを良好に到達させることを考慮して高い正確さをもって製造される。
上記インサートの機械的精度はまた、特にインサートの機械的基準が投影された二つの投射像の位置を合わせるのに使用される場合の双眼光学ディスプレイにおいては、必須の基準として必要である。
【符号の説明】
【0034】
1、2 (最終)レンズ
1A、2A 光学結像装置
1B、2B 電気光学システム
3 フレーム
3A、3B サポートブランチ
3C ノーズサポート
4 溝
5 前方表面
6、7 特定領域
H 穴
I インサート
Sn 反射面




【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面、裏面を有するレンズ(1、2)であり、前記レンズに、導光体(light guide)で構成される透明光学インサート(1A、2A、I)によって、光ビーム発生システムの光学エレメントから発生する光ビームが入光面(S1)を介して入射され、着用者の目に向かって情報コンテンツを見させることができ、前記透明光学インサート(I)は、支持体としてのフレーム(3)に取り付けるのに適した最終レンズ(final lens)の形と実質的に等しい形を有するレンズの製造方法であって、
比例変形に従って、前記最終レンズの外形よりも小さな外形を有する前記透明光学インサート(I)を製造するステップと、
前記前面と裏面を形成するプラスチック素材と前記透明光学インサート(I)とを結合させてレンズブランク(LB)を製造するステップと、
前記透明光学インサート(I)の周囲の前記レンズブランク(LB)をカットするステップからなり、
前記レンズブランク(LB)をカットする距離は、前記透明光学インサートの周縁から1mmであり、前記透明光学インサートの周囲の少なくとも50%にあたることを特徴とするレンズの製造方法。
【請求項2】
前記レンズブランク(LB)を製造するステップは、前記透明光学インサート(I)の周囲に前記プラスチック素材をモールディング(molding)することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のレンズの製造方法。
【請求項3】
前記レンズブランク(LB)を製造するステップは、前記透明光学インサートを二つの平面基板(FS、RS)の間に密着して積層することによって行われることを特徴とする請求項1に記載のレンズの製造方法。
【請求項4】
ブランチ(3A、3B)又はノーズサポート(3C)の少なくともいずれか一つによって支持される最終レンズに適応し、
前記透明光学インサート(I)の周囲の前記レンズブランク(LB)をカットするステップは、前記最終レンズにブランチ又はノーズサポートの少なくともいずれか一つを直接固定する少なくとも一つの領域(6、7)を形成するために、前記透明光学インサートの縁部から1mmより長い距離を有するよう行われることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレンズの製造方法。
【請求項5】
前記導光体は、前記光ビームを前記着用者の目へ向けるために、
ガラスで作られた光透過基板と、
前記入光面(S1)から全反射による前記光透過基板への光結合のため、前記光透過基板が有する(carried by)波反射基板面と、
前記光透過基板に有され、互いに平行で、前記光透過基板のいずれの縁部とも平行でない複数の部分的な反射面(Sn)とを含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレンズの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−519110(P2013−519110A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551564(P2012−551564)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050382
【国際公開番号】WO2011/095379
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(507229319)エシロール アンテルナシオナル (コンパニー ジェネラル ドプティック) (37)
【Fターム(参考)】