説明

光学ピックアップ装置、再生装置、再生方法

【課題】コアキシャル方式によるホログラム記録再生システムにおいて、再生時に再生光と共に撮像素子により受光されてしまう散乱光を抑圧し、SN比の改善を図る。
【解決手段】空間光変調器を用いて生成した信号光、参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介してホログラム記録媒体に照射するホログラム記録再生システムでは、空間光変調器の各ピクセルから出射される光線は或る角度(θ)で拡散する光となり、これに伴い再生時に上記リレーレンズ系を介して撮像素子に導かれる再生光の各ピクセルの光線としても上記の角度(θ)で収束する光となる。そこで、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過する角度選択透過素子を、リレーレンズ系と撮像素子との間の光路中に設ける。これにより、撮像素子により受光されてしまう散乱光を効果的に抑圧することができ、SN比の改善が図られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号光と参照光との干渉縞により情報記録が行われるホログラム記録媒体に対して上記参照光を照射して情報再生を行うための光学ピックアップ装置、及び再生装置に関する。また、ホログラム記録媒体からの情報再生を行うための再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開2007−79438号公報
【特許文献2】特開2004−335044号公報
【0003】
例えば上記特許文献1にあるように、ホログラムの形成によりデータ記録を行うホログラム記録再生方式が知られている。このホログラム記録再生方式において、記録時には、記録データに応じた空間光強度変調(強度変調)を与えた信号光と、予め定められた所定の光強度パターンを与えた参照光とを生成し、これらをホログラム記録媒体に照射することによって、記録媒体にホログラムを形成してデータ記録を行う。
また再生時には、記録媒体に対して上記参照光を照射する。このようにして、記録時に信号光と参照光との照射に応じて形成されたホログラムに対し、記録時と同じ参照光(記録時と同じ強度パターンを有する)が照射されることによって、記録された信号光成分に応じた回折光が得られる。すなわち、これによって記録データに応じた再生像(再生光)が得られる。このようにして得られた再生光を例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどのイメージセンサで検出することで、記録されたデータの再生を行うようにされる。
【0004】
また、このようなホログラム記録再生方式としては、参照光と信号光とを同一光軸上に配置してこれらを共通の対物レンズを介してホログラム記録媒体に照射する、いわゆるコアキシャル方式が知られている。
【0005】
図14、図15は、コアキシャル方式によるホログラム記録再生について説明するための図として、図14は記録手法、図15は再生手法を模式的に示している。
なお、これら図14、図15では、反射膜を備える反射型のホログラム記録媒体100が用いられる場合を例示している。
【0006】
先ず、ホログラム記録再生システムでは、図14、図15に示されるようにして記録時に信号光と参照光、再生時において参照光を生成するために、SLM(空間光変調器)101が設けられる。このSLM101としては入射光に対し画素単位で光強度変調を行う強度変調器を備える。この強度変調器としては、例えば液晶パネルなどで構成することができる。
【0007】
図14に示す記録時には、SLM101の強度変調により、記録データに応じた強度パターンを与えた信号光と、予め定められた所定の強度パターンを与えた参照光とを生成する。コアキシャル方式では、図のように信号光と参照光とが同一光軸上に配置されるようにして入射光に対する空間光変調を行う。このとき、図のように信号光は内側、参照光はその外側に配置するのが一般的とされている。
【0008】
SLM101にて生成された信号光・参照光は、対物レンズ102を介してホログラム記録媒体100に照射される。これによりホログラム記録媒体100には、上記信号光と上記参照光との干渉縞により、記録データを反映したホログラムが形成される。つまり、このホログラムの形成によりデータの記録が行われる。
【0009】
一方、再生時においては、図15(a)に示されるようにして、SLM101にて参照光を生成する(このとき参照光の強度パターンは記録時と同じである)。そして、この参照光を対物レンズ102を介してホログラム記録媒体100に照射する。
【0010】
このように参照光がホログラム記録媒体100に照射されることに応じては、図15(b)に示すようにして、ホログラム記録媒体100に形成されたホログラムに応じた回折光が得られ、これによって記録されたデータについての再生像(再生光)が得られる。この場合、再生像はホログラム記録媒体100からの反射光として、図示するように対物レンズ100を介してイメージセンサ103に対して導かれる。
【0011】
イメージセンサ103は、上記のようにして導かれた再生像を画素単位で受光し、各画素ごとに受光光量に応じた電気信号を得ることで、上記再生像についての検出画像を得る。このようにイメージセンサ103にて検出された画像信号が、記録されたデータについての読み出し信号となる。
【0012】
なお、図14、図15の説明からも理解されるように、ホログラム記録再生方式では、記録データを信号光の単位で記録/再生するようにされている。つまり、ホログラム記録再生方式では、信号光と参照光との1度の干渉により形成される1枚のホログラム(ホログラムページと呼ばれる)が、記録/再生の最小単位とされている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のようにしてホログラム記録再生システムでは、再生時には、参照光を照射してホログラム記録媒体に記録された情報(信号光)に応じた再生光を得るようにされている。
ここで、再生時に上記参照光を照射することによっては、ホログラム記録媒体からは、回折により再生光が出力される一方で、散乱光も発生することになる。また、再生時においては、光路中に設けられたレンズや光学素子に付着した埃などに起因しても散乱光が発生する。
このように再生時に生じた散乱光は、再生光と共にイメージセンサ(撮像素子)に導かれてしまい、SN比を著しく悪化させる要因となる。従って再生時には、このような散乱光を抑圧することが要請される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記のような課題の解決を図るべく、本発明では、光学ピックアップ装置として以下のように構成することとした。
つまり、本発明の光学ピックアップ装置は、信号光と参照光との干渉縞によって情報記録が行われるホログラム記録媒体に対し光を照射するための光源を備える。
また、上記光源からの光に対し空間光変調を施すことで上記参照光を生成する空間光変調部を備える。
また、上記空間光変調部により生成された上記参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介して上記ホログラム記録媒体に照射すると共に、上記参照光の照射に応じて上記ホログラム記録媒体から得られる再生光を、対物レンズとリレーレンズ系とを介して撮像素子に対して導くように構成された光学系を備える。
その上で、上記光学系における上記リレーレンズ系と上記撮像素子との間の光路中に、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過する角度選択透過素子が設けられているものである。
【0015】
また、本発明では再生装置として以下のように構成することとした。
すなわち、信号光と参照光との干渉縞によって情報記録が行われるホログラム記録媒体に対し光を照射するための光源と、上記光源からの光に対し空間光変調を施すことで上記参照光を生成する空間光変調部と、上記空間光変調部により生成された上記参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介して上記ホログラム記録媒体に照射すると共に、上記参照光の照射に応じて上記ホログラム記録媒体から得られる再生光を、対物レンズとリレーレンズ系とを介して撮像素子に対して導くように構成された光学系とを備える共に、上記光学系における上記リレーレンズ系と上記撮像素子との間の光路中に、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過する角度選択透過素子が設けられている光学ピックアップを備える。
また、上記撮像素子による受光結果に基づき、上記ホログラム記録媒体に記録された情報の再生を行う再生部を備えるようにした。
【0016】
ここで、後に詳述するが、空間光変調器を用いて生成した信号光、参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介してホログラム記録媒体に照射するホログラム記録再生システムでは、例えば図6に示すように、空間光変調器の各ピクセルから出射される光線は、或る角度(θ)で拡散する光となり、これに伴い再生時にリレーレンズ系を介して撮像素子に導かれる再生光の各ピクセルの光線としても、上記の角度(θ)により収束する光となる。当然のことながら、データ再生に必要であるのは、このように収束して撮像素子に入射する再生光の各光線のみである。従って、これら再生光の各光線よりも入射角度が大となる光を抑圧できれば、撮像素子に入射する散乱光の大部分は抑圧することができる。
この点に鑑み本発明では、上記のようにして、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過させる角度選択透過素子を、リレーレンズ系と撮像素子との間の光路中に設けるものとしている。これにより、撮像素子により受光されてしまう散乱光を効果的に抑圧することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ホログラム記録媒体の再生時に再生光と共に撮像素子に受光されてしまう散乱光を効果的に抑圧することができ、その結果、SN比の改善を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、発明を実施するための最良の形態(以下実施の形態とする)について説明していく。
なお、説明は以下の順序で行う。

<1.実施の形態のホログラム記録再生システム]
<2.光学系中における光の振る舞い>
<3.散乱光の発生とその抑圧>
[3-1.散乱光の抑圧手法]
[3-2.散乱光抑圧のための具体的な構成例]
<4.変形例>
【0019】
<1.実施の形態のホログラム記録再生システム>

図1は、実施の形態としての記録再生装置の内部構成を示した図である。
実施の形態では、本発明の再生装置がホログラムの記録機能も有する記録再生装置に適用される場合を例示する。図1では、実施の形態の記録再生装置の主に光学系の構成を重点的に示している。
【0020】
図1において、ホログラム記録媒体HMは、信号光と参照光との干渉縞により情報記録が行われる記録媒体とされる。
ここで、図2を参照して、ホログラム記録媒体HMの構造について簡単に説明しておく。なおこの図2では、ホログラム記録媒体HMの断面構造を示している。
【0021】
図2に示されるように、ホログラム記録媒体HMには、上層側から下層側にかけてカバー層L1→記録層L2→反射膜L3→基板L4が形成されている。
なお確認のために述べておくと、ここで言う「上層」「下層」は、記録/再生のための光が入射される面を上面、この上面とは逆側の面を下面として、上記上面側を上層、上記下面側を下層とするものである。
【0022】
上記カバー層L1は、例えばプラスチックやガラスなどで構成され、その下層に形成される記録層L2の保護のために設けられた保護基板である。
上記記録層L2は、その材料として、例えばフォトポリマーなどの、照射光の強度分布に応じた屈折率変化が生じることで情報記録が可能な材料が選定され、後述するレーザダイオード(LD)1を光源とするレーザ光によるホログラムの記録/再生が行われる。
【0023】
また、上記反射膜L3は、再生時の参照光の照射に応じて記録層L2に記録されたホログラムに応じた再生像(再生光)が得られた際に、これを反射光として装置側に戻すために設けられる。
反射膜L3の下層に形成される基板L4は、例えばプラスチックやガラスなどで構成された保護基板である。
【0024】
説明を図1に戻す。
記録再生装置内において、ホログラム記録媒体HMは、図示は省略したスピンドルモータによって回転駆動可能に保持される。記録再生装置では、このように保持された状態のホログラム記録媒体HMに対してホログラムの記録/再生のためのレーザ光が照射される。
【0025】
ホログラム記録媒体HMに対してホログラムの記録/再生のためのレーザ光を照射するための光学系を含む光学ピックアップは、図中において破線で囲った部分が該当する。具体的に、光学ピックアップ内には、レーザダイオード1、コリメーションレンズ2、偏光ビームスプリッタ3、SLM4、偏光ビームスプリッタ5、リレーレンズ6、アパーチャー12、リレーレンズ7、ミラー8、部分回折素子9、1/4波長板10、対物レンズ11、及びイメージセンサ13が設けられている。
【0026】
上記レーザダイオード1は、ホログラムの記録再生のためのレーザ光として、例えば波長λ=405nm程度の青紫色レーザ光を出力する。このレーザダイオード1から出射されたレーザ光は、コリメーションレンズ2を介して偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0027】
偏光ビームスプリッタ3は、入射するレーザ光のそれぞれ直交する直線偏光成分のうち、一方の直線偏光成分を透過、他方の直線偏光成分を反射する。例えばこの場合、p偏光成分は透過しs偏光成分は反射するように構成される。
従って偏光ビームスプリッタ3に入射したレーザ光は、そのs偏光成分のみが反射されてSLM4に導かれる。
【0028】
上記SLM4は、例えばFLC(Ferroelectric Liquid Crystal:強誘電性液晶)としての反射型液晶素子を備えて構成され、入射光に対し、画素単位で偏光方向を制御するように構成されている。
このSLM4は、図中の変調制御部14からの駆動信号に応じて、各画素ごとに入射光の偏光方向を90°変化させる、又は入射光の偏光方向を不変とするようにして空間光変調を行う。具体的には、駆動信号がONとされた画素については偏光方向の角度変化=90°、駆動信号がOFFとされた画素については偏光方向の角度変化=0°となるように、駆動信号に応じ画素単位で偏光方向制御を行うように構成されている。
【0029】
図示するようにして、上記SLM4からの出射光(SLM4にて反射された光)は、偏光ビームスプリッタ3に再度入射する。
【0030】
ここで、図1に示す記録再生装置では、上記SLM4による画素単位の偏光方向制御と、入射光の偏光方向に応じた偏光ビームスプリッタ3の選択的な透過/反射の性質とを利用して、画素単位の空間光強度変調(光強度変調、或いは単に強度変調とする)を行うようにされている。
【0031】
図3は、このようなSLM4と偏光ビームスプリッタ3との組み合わせにより実現される強度変調のイメージを示している。図3(a)はON画素の光について、図3(b)はOFF画素の光についてそれぞれその光線状態を模式的に示している。
上述もしたように、偏光ビームスプリッタ3はp偏光を透過、s偏光を反射するので、上記SLM4に対してはs偏光が入射することになる。
この前提を踏まえると、SLM4にて偏光方向が90°変化された画素の光(駆動信号ONの画素の光)は、偏光ビームスプリッタ3に対しp偏光で入射することになる。このことで、SLM4におけるON画素の光は、偏光ビームスプリッタ3を透過することになり、ホログラム記録媒体HM側に導かれることになる(図3(a))。
一方、駆動信号がOFFとされ偏光方向が変化されなかった画素の光は、偏光ビームスプリッタ3にs偏光で入射する。つまり、SLM4におけるOFF画素の光は偏光ビームスプリッタ3にて反射されて、ホログラム記録媒体HM側には導かれないようになっている(図3(b))。
【0032】
このようにして、偏光方向制御型による空間光変調器としてのSLM4と、偏光ビームスプリッタ3との組み合わせにより、画素単位で光強度変調を施す強度変調部が形成されている。
【0033】
ここで、実施の形態の記録再生装置は、ホログラム記録再生方式として、コアキシャル方式を採用する。すなわち、信号光と参照光とを同一光軸上に配置し、それらを共に所定位置にセットされたホログラム記録媒体に対し共通の対物レンズを介して照射することでホログラムの形成によるデータ記録を行い、また再生時には、上記参照光を対物レンズを介してホログラム記録媒体に対して照射することでホログラムの再生像を得て、記録されたデータの再生を行うものである。
【0034】
コアキシャル方式が採用される場合、SLM4においては、信号光と参照光とを同一光軸上に配置するために、次の図4に示すような各エリアが設定されることになる。
この図4に示されるようにして、SLM4においては、その中心(光軸中心と一致)を含む円形の所定範囲のエリアが、信号光エリアA2として設定される。そして、この信号光エリアA2の外側には、ギャップエリアA3を隔てて、輪状の参照光エリアA1が設定されている。
上記信号光エリアA2、参照光エリアA1の設定により、信号光と参照光とを同一光軸上に配置するようにして照射することができる。
なお、上記ギャップエリアA3は、上記参照光エリアA1にて生成される参照光が信号光エリアA2に漏れ込んで信号光に対するノイズになることを避けるための領域として定められている。
なお確認のために述べておくと、SLM4の画素形状は矩形状であるため、信号光エリアA2は厳密には円形とはならい。同様に参照光エリアA1、ギャップエリアA3としても厳密には輪状にはならい。その意味で信号光エリアA2は略円形のエリアとなり、参照光エリアA1、ギャップエリアA3もそれぞれ略輪状のエリアとなる。
【0035】
図1において、変調制御部14は、上記SLM4に対する駆動制御を行うことで、記録時には信号光と参照光を、また再生時には参照光のみを生成させる。
具体的に、記録時において上記変調制御部14は、上記SLM4における信号光エリアA2の画素は供給される記録データに応じたオン/オフパターンとし、参照光エリアA1の画素は予め定められた所定のオン/オフパターンとし、且つそれ以外の画素はすべてオフとするための駆動信号を生成し、これをSLM4に供給する。この駆動信号に基づきSLM4による空間光変調(偏光方向制御)が行われることで、偏光ビームスプリッタ3からの出射光として、それぞれが同じ中心(光軸)を持つように配置された信号光と参照光とが得られる。
また、再生時において上記変調制御部14は、上記参照光エリアA1内の画素を上記所定のオン/オフパターンとし、それ以外の画素は全てオフとする駆動信号によりSLM4を駆動制御し、これによって上記参照光のみを生成させる。
【0036】
なお、記録時において上記変調制御部14は、入力される記録データ列の所定単位ごとに上記信号光エリアA2内のオン/オフパターンを生成し、これによって上記記録データ列の所定単位ごとのデータを格納した信号光が順次生成されるように動作する。これにより、ホログラム記録媒体HMに対しホログラムページ単位(信号光と参照光の1度の干渉により記録することのできるデータ単位)によるデータの記録が順次行われるようになっている。
【0037】
偏光ビームスプリッタ3及びSLM4による強度変調部にて強度変調が施されたレーザ光は、偏光ビームスプリッタ5に入射する。この偏光ビームスプリッタ5としてもp偏光を透過、s偏光を反射するように構成され、従って上記強度変調部からの出射されたレーザ光(偏光ビームスプリッタ3を透過した光)は、当該偏光ビームスプリッタ5を透過することになる。
【0038】
偏光ビームスプリッタ5を透過したレーザ光は、リレーレンズ6,リレーレンズ7によるリレーレンズ系に入射する。この場合、リレーレンズ系における上記リレーレンズ6とリレーレンズ7との間には、アパーチャー12が挿入されている。
【0039】
図示するようにリレーレンズ6によっては、偏光ビームスプリッタ5を透過したレーザ光の光束が所定の焦点位置に集光するようにされ、リレーレンズ7によっては集光後の拡散光としての上記レーザ光束が平行光となるように変換される。アパーチャー12は、上記リレーレンズ6による焦点位置(フーリエ面:周波数平面)に設けられ、光軸を中心とする所定範囲内の光を透過、それ以外の光を遮断するように構成される。
【0040】
上記アパーチャー12によっては、ホログラム記録媒体HMに記録されるホログラムページのサイズが制限され、ホログラムの記録密度(つまりデータ記録密度)の向上が図られる。また、後述もするように再生時には、ホログラム記録媒体HMからの再生像が上記リレーレンズ系を介してイメージセンサ13に対して導かれることになるが、このとき、上記アパーチャー12によっては、上記再生像と共にホログラム記録媒体HMから出射される散乱光の大部分が遮断され、イメージセンサ13に対して導かれてしまう散乱光の量が大幅に低減される。つまりアパーチャー12は、記録時におけるホログラムの記録密度の向上機能と共に、再生時における散乱光抑圧によるSN比(S/N)の改善機能の双方を担うものとなる。
【0041】
上記リレーレンズ7を介したレーザ光は、ミラー8によってその光軸が90°折り曲げられて、部分回折素子9→1/4波長板10を介して対物レンズ11に導かれる。
上記部分回折素子9及び1/4波長板10は、再生時においてホログラム記録媒体HMにて反射された参照光(反射参照光)が、イメージセンサ13に導かれて再生光に対するノイズとなってしまうことを防止するために設けられている。
なお、これら部分回折素子9及び1/4波長板10による反射参照光の抑圧作用については後述する。
【0042】
対物レンズ11に入射したレーザ光は、ホログラム記録媒体HMに集光するようにして照射される。
なお、図示は省略したが、対物レンズ11は、いわゆる2軸機構などのアクチュエータによってフォーカス方向やトラッキング方向の位置が制御される。これによりレーザ光のスポット位置や焦点位置についての制御が可能とされている。
【0043】
ここで、先にも述べたように、記録時には、強度変調部(SLM4及び偏光ビームスプリッタ3)による強度変調により信号光と参照光とが生成され、これら信号光・参照光が上記により説明した経路によりホログラム記録媒体HMに照射される。これにより、ホログラム記録媒体HMの記録層L2には、これら信号光と参照光との干渉縞により記録データを反映したホログラムが形成され、データ記録が実現される。
【0044】
また、再生時には、強度変調部により参照光のみが生成され、上記した経路によりホログラム記録媒体HMに照射される。このように参照光が照射されることで、記録層L2に形成されたホログラムに応じた再生像(再生光)が反射膜L3からの反射光として得られる。この再生像は、対物レンズ11を介して装置側に戻される。
【0045】
ここで、再生時にホログラム記録媒体HMに対して照射される参照光(往路参照光とする)は、先の強度変調部の動作によれば、p偏光で部分回折素子9に入射することになる。後述もするように部分回折素子9は往路の光は全て透過するように構成されているので、p偏光による往路参照光は、1/4波長板10を介することになる。このように1/4波長板10を介したp偏光による往路参照光は、所定回転方向による円偏光に変換されてホログラム記録媒体HMに照射される。
ホログラム記録媒体HMに照射された参照光は、反射膜L3にて反射され、反射参照光(復路参照光)として対物レンズ11に導かれる。このとき、反射膜L3での反射により、復路参照光の円偏光回転方向は上記所定回転方向とは逆回転方向に変換されるので、復路参照光は、1/4波長板10を介することで、s偏光に変換されることになる。
【0046】
ここで、このような偏光状態の遷移を踏まえた上で、部分回折素子9と1/4波長板10とによる反射参照光の抑圧作用について説明する。
部分回折素子9は、参照光が入射する領域(中心部を除く領域)に例えば液晶回折素子などの、直線偏光の偏光状態に応じた選択回折特性(一方の直線偏光成分は回折し、他方の直線偏光成分は透過する)を有する偏光選択回折素子が形成されて成る。具体的にこの場合、部分回折素子9が備える上記偏光選択回折素子は、p偏光を透過、s偏光を回折するように構成されている。このことで、往路の参照光は部分回折素子9を透過し、復路の参照光のみが部分回折素子9にて回折(抑圧)されるようになっている。
この結果、復路光としての反射参照光が再生像に対するノイズ成分として検出されてSN比が低下してしまうといった事態の防止が図られる。
【0047】
なお確認のために述べておくと、部分回折素子9における信号光が入射する領域(再生像が入射する領域)は、例えば透明材料で構成される、或いは穴部とされるなどして、往路光・復路光の双方を透過するように構成されている。このことで、記録時の信号光と再生時の再生像とが当該部分回折素子9を透過するように図られている。
【0048】
ここで、これまでの説明からも理解されるように、ホログラム記録再生システムでは、記録されたホログラムに対して参照光を照射して、回折現象を利用して再生像を得るようにされるが、この際の回折効率は、一般に数%〜1%未満とされる。このことから、上記のように反射光として装置側に戻される参照光は、再生像に対して非常に大きな強度を有することになる。つまり、上記反射光としての参照光は、再生像の検出にあたって無視できないノイズ成分となる。
従って、上記のような部分回折素子9及び1/4波長板10によって反射参照光の抑圧が図られることで、SN比の大幅な改善が図られる。
【0049】
上述のように再生時に得られた再生光は、部分回折素子9を透過することになる。部分回折素子9を透過した再生光は、ミラー8にて反射された後、先に説明したリレーレンズ7→アパーチャー12→リレーレンズ6を介し、偏光ビームスプリッタ5に入射する。これまでの説明からも理解されるように、ホログラム記録媒体HMからの反射光は、1/4波長板10を介してs偏光に変換されるので、このように偏光ビームスプリッタ5に入射した再生光は、当該偏光ビームスプリッタ5にて反射され、イメージセンサ13に対して導かれることになる。
【0050】
イメージセンサ13は、例えばCCD(Charge Coupled Device)センサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの撮像素子を備えて構成され、上記のようにして導かれたホログラム記録媒体HMからの再生光を受光し、これを電気信号に変換して画像信号を得る。このようにして得られた画像信号は、記録時に信号光に対して与えたオン/オフパターン(つまり「0」「1」のデータパターン)を反映したものとなっている。すなわち、このようにしてイメージセンサ13で検出される画像信号が、ホログラム記録媒体HMに対して記録されたデータの読み出し信号となる。
なお、本実施の形態の場合におけるイメージセンサ13の内部構造については後述する。
【0051】
イメージセンサ13により得られた上記読み出し信号としての画像信号は、データ再生部15に対して供給される。
データ再生部15は、上記イメージセンサ13からの画像信号中に含まれるSLM4の画素単位の値ごとに、「0」「1」のデータ識別、及び必要に応じて記録変調符号の復調処理等を行って、記録データを再生する。
【0052】
以上の構成により、レーザダイオード1を光源とする記録再生光の照射によるホログラムの記録再生動作が実現される。
【0053】
<2.光学系中における光の振る舞い>

図5は、図1に示した記録再生装置の光学系中における光の振る舞いを、SLM4のピクセル単位の光線ごとに表している。
この図5においては、光学系全体の構成のうち、SLM4、リレーレンズ6,7、対物レンズ11、及びイメージセンサ13のみを抽出して示している。図中の平面Spbsは偏光ビームスプリッタ5の反射面を、また平面Smはミラー8の反射面を表すものである。またこの図ではホログラム記録媒体HMも併せて示している。
また、この図5において、ピクセル単位の光線については、信号光及び再生光は3つのみ、参照光は2つのみを代表して示している。具体的に、信号光・再生光に関しては、信号光エリアA2の中心に位置するピクセルの光線(レーザ光束全体の光軸を含む光線)と、信号光エリアA2のそれぞれ最外周部に位置する各ピクセルの光線とを代表して示している。また、参照光については、参照光エリアA1のそれぞれ最外周部に位置する各ピクセルの光線を代表して示している。
【0054】
先ず、図示するように、SLM4の各ピクセルから出射された光線は、拡散光の状態で平面Spbs(偏光ビームスプリッタ5)を介してリレーレンズ6に入射する。このとき、各ピクセルからの出射光線は、それぞれの光軸が平行な状態にある。
【0055】
リレーレンズ6に入射した各ピクセルの光線は、図のように拡散光から平行光となるように変換されると共に、レーザ光軸(レーザ光束全体の光軸)上の光線を除く各光線の光軸が上記レーザ光軸側に折り曲げられる。このことで、平面SFにおいては、各光線が平行光の状態でレーザ光軸を含む中心部に集光されることになる。ここで、上記平面SFは、対物レンズ11による焦点面と同様、平行光による各ピクセルの光線がレーザ光軸上に集光する面であり、フーリエ面(周波数平面)と呼ばれる。
【0056】
ここで、先の図1で説明したように、アパーチャー12は、リレーレンズ6による焦点面に設けられる。すなわちこれを換言すれば、アパーチャー12は、光学系中における上記フーリエ面SFとなる位置に対して設けられるものとなる。
【0057】
上記のようにフーリエ面SFにて平行光の状態で集光した各光線は、リレーレンズ7に入射するが、このとき、リレーレンズ6から出射された各光線(レーザ光軸を含む中央のピクセルの光線は除く)はフーリエ面SF上でレーザ光軸と交差することになる。このことからリレーレンズ6とリレーレンズ7とにおける各光線の入出射位置の関係は、レーザ光軸を中心として軸対称な関係となる。
【0058】
各光線は、リレーレンズ7を介することで図のように収束光に変換されると共に、各光線の光軸がそれぞれ平行となる。リレーレンズ7を介した各光線は、平面Sm(ミラー8)にて反射され、実像面SR上のそれぞれの位置に集光することになる。この実像面SRは、対物レンズ11にとって物体面となる。
このとき、リレーレンズ7を介した各光線は、上記のようにしてそれぞれの光軸が平行な状態とされるので、上記実像面SR上において、各光線の集光位置は重ならずそれぞれ別々の位置となる。
【0059】
上記実像面SR上で集光した各光線は、図示するように拡散光の状態で対物レンズ11に入射する。これら拡散光による各光線は、対物レンズ11を介することで平行光となるようにされ、且つ、各光線(レーザ光軸上の光線は除く)の光軸が、上記レーザ光軸側に折り曲げられる。これにより、各光線は、ホログラム記録媒体HMに形成される対物レンズ11の焦点面上において、レーザ光軸を含む中心部に集光することになる。
【0060】
ここで、このように対物レンズ11の焦点面では、各光線が平行光の状態とされ、且つ各光線が一箇所に集光する。このことからも理解されるように、対物レンズ11による焦点面と上述したフーリエ面SFとは、共役な関係となるものである。
【0061】
なお、図5においては、平面Spbsにて反射されイメージセンサ13に導かれる再生光の各光線を示しているが、図示するようにイメージセンサ13に再生光のみが導かれているのは、先に説明した部分回折素子9(及び1/4波長板10)により反射参照光が抑圧されるためである。
確認のために述べておくと、部分回折素子9は、実像面SRとなる位置に設けられるものである。これは、部分回折素子9は先にも述べたように信号光の領域と参照光の領域とで選択的に光を透過/回折する必要があるため、SLM4(像生成面)と同等の像が得られる位置に配置されなければ適切な選択透過/回折の作用を得ることができなくなってしまうためである。
【0062】
また、再生時において、再生光は、記録時に照射した信号光の各光線と同じ光線領域に得られる。つまり再生光の各光線は、図中の信号光の各光線と同じ位置を辿って平面Spbsに到達し、該平面Spbsにて反射されてイメージセンサ13に導かれる。このとき、リレーレンズ6から平面Spbs側に出射される再生光の各光線は、図のように収束光の状態で且つそれぞれの光軸が平行な状態となっており、これら各光線は、イメージセンサ13の検出面上の別々の位置に集光するようになっている。このことで、イメージセンサ13の検出面上では実像面SRにおける再生像と同様の像が得られる。
【0063】
<3.散乱光の発生とその抑圧>

前述もしたように、ホログラム記録再生システムにおいては、再生時にホログラム記録媒体HMから発生した散乱光や光学系中のレンズ等に付着した埃などに起因した散乱光が、SN比を著しく悪化させる要因となる。
【0064】
ここで、ホログラム記録媒体HMから発生した散乱光については、アパーチャー12によって抑圧することができる。すなわち、図5による説明からも理解されるように、フーリエ面SFにて設けられるアパーチャー12によれば、ホログラム記録媒体HMから得られた再生光の各光線が通過する領域の光を選択的に透過させることができるので、それ以外の領域に得られる散乱光の成分の大部分をアパーチャー12にて遮断することができる。
また、このようなアパーチャー12によれば、ホログラム記録媒体HMからの散乱光の成分のみでなく、例えば対物レンズ11やリレーレンズ7など、アパーチャー12よりも前段側(撮像素子を基準として)に配置される光学素子にて生じる散乱光の成分も抑圧することができる。
【0065】
このことからも理解されるように、記録時のホログラムサイズの縮小化の目的でアパーチャー12を挿入する場合には、再生時において、ホログラム記録媒体HMからの散乱光などアパーチャー12よりも前段側で生じる散乱光を抑圧することができる。
【0066】
しかしながら、アパーチャー12よりも後段側、すなわち撮像素子側となる部分で生じた散乱光については、これを抑圧することができない。
図6は、アパーチャー12よりも後段側で生じた散乱光について説明するための図である。なおこの図6においても、先の図5と同様に光学系のうちSLM4、リレーレンズ6,7、対物レンズ11、イメージセンサ13と、平面Spbs,SF,Sm、ホログラム記録媒体HM、及び信号光,参照光,再生光の各光線を示している。
【0067】
例えば図6の実線矢印により示したように、リレーレンズ6に付着した埃などに起因して散乱光が生じたとする。図示もしているように、このように生じた散乱光は再生光と共にイメージセンサ13に導かれてしまい、従ってこれを何ら対策しない場合には、SN比の悪化を招くことになる。
【0068】
[3-1.散乱光の抑圧手法]

そこで本実施の形態では、再生時に生じる散乱光のうち、特に上述のようにアパーチャー12の後段側にて発生した散乱光の抑圧化を図ることを目的とする。
【0069】
ここで、図6の実線矢印で示したように、散乱光としては、その大部分が再生光とは異なる角度でイメージセンサ13に導かれるものとなる。このとき、再生に必要であるのは、当然のことながら再生光の各光線のみであり、従って図のように収束光でイメージセンサ13に入射する各光線部分の光のみをイメージセンサ13で受光させることができれば、散乱光を最大限に抑圧することができる。
【0070】
この点を考慮し、本実施の形態では、リレーレンズ系と撮像素子との間の光路中に対し、入射角度が所定角度以下の光を選択的に透過する角度選択透過素子を設けることとする。
このとき、先の図5や図6によれば、イメージセンサ13に導かれる再生光の各光線は、その光軸に対し或る角度(θ)を有して収束する光となる。すなわち、入射角度としては、0°〜θまでの範囲となる。このことから、上記のように入射角度が所定角度以下の光を選択的に透過する(つまり入射角度が所定角度より大となる光を非透過とする)角度選択透過素子を設けるものとすれば、入射角度が再生光の最大入射角θより大となる、散乱光の成分の大部分を、効果的に抑圧することができる。
【0071】
ここで、図1に示した光学系のように、空間光変調器を用いて信号光・参照光を生成し、これらをリレーレンズ系及び対物レンズを介してホログラム記録媒体に照射するように構成された光学系においては、再生光の各光線の最大入射角θは、次のように定義することができる。
【0072】
図7は、SLM4の或るピクセルからの出射光線を示している。
この図に示されるように、SLM4の各ピクセルからの出射光線の拡がり角θは、空間光変調器(この場合はSLM4)のピクセルサイズをP、空間光変調器への入射光の波長をλとすると、「θ=λ/P」で表される。
【0073】
ここで、コアキシャル方式によるホログラム記録再生システムでは、先の図5で説明したように、再生光の各光線は、記録時に照射した信号光の各光線とそれぞれ同じ光線領域に得られるものとなる。すなわち、そのように光学系が設計されているものである。このことからも理解されるように、イメージセンサ13に対して収束光により入射する再生光の各光線の最大入射角度は、上記による、SLM4の各ピクセルからの出射光線の拡がり角θと等しくなる。
【0074】
このことを図示すると次の図8のようになる。
なおこの図8では、平面Spbsを介してイメージセンサ13に入射する再生光の各光線のうち、中心の光線のみをして示している。
【0075】
このようにして、空間光変調器を用いて信号光・参照光を生成し、これらをリレーレンズ系及び対物レンズを介してホログラム記録媒体に照射するように構成された光学系においては、再生光の各光線は、θ=λ/Pを最大入射角度としてイメージセンサ13に対して入射する。
前述もしたように、再生にとって必要となるは、少なくとも入射角度がθ以下となる部分のみである。従って、散乱光を最大限に抑圧するとした場合には、角度選択透過素子が透過する光の最大入射角度θは、λ/Pと定義できる。
【0076】
[3-2.散乱光抑圧のための具体的な構成例]

図9により、散乱光抑圧のための具体的な構成例について説明する。
図9は、イメージセンサ13の断面構造を示している。
先ずこの図において、イメージセンサ13としては、その基本構造として、フレーム13Bと、該フレーム13B内に配置された撮像素子13Aと、該撮像素子13Aを保護するためのカバーガラス13Cとを有するものとなる。
【0077】
本実施の形態では、このような基本構造を有するイメージセンサ13の上記カバーガラス13Cに対し、膜状による角度選択透過素子(角度選択透過膜20とする)を成膜するものとしている。
具体的には、上記カバーガラス13Cにおける、上記撮像素子13Aにより近い側の面(撮像素子13Aと対向する面)に対して、上記角度選択透過膜20を成膜する。
【0078】
このようにして、カバーガラス13Cにおける撮像素子13Aと対向する側の面に対して角度選択透過膜20を設ける、換言すれば、撮像素子13Aに最も近い位置に角度選択透過膜20を設けるものとすれば、散乱光の抑圧効果を最も高めることができる。
つまり、上記カバーガラス13Cとしても、散乱光が発生する可能性のある部分となるので、これよりも前段側に角度選択透過素子を設けた場合には、該カバーガラス13Cで生じた散乱光を抑圧することができない。この意味で、角度選択透過素子は、再生光を受光する撮像素子13Aにより近い位置に設けるのが望ましいものである。
【0079】
図10は、角度選択透過膜20の具体的な構造例を示している。
この図10に示すように、角度選択透過膜20としては多層膜構造体で実現することができる。具体的に、この場合の角度選択透過膜20は、TiO2層(図中白抜きの層)とMgF2層とを交互に積層した多層膜構造体となっている。
【0080】
この図10に示す例では、角度選択透過膜20としての多層膜構造体における上層部l1では、TiO2層→MgF2層の順で各層がそれぞれ4層、計8層分繰り返され、その下層の中層部l2にはTiO2層が形成される。さらにその下層の下層部l3では、MgF2層→TiO2層の順で各層がそれぞれ4層、計8層分繰り返されるようにして形成されている。
この場合、上層部l1及び下層部l3での各層の厚みは、記録再生光の波長λの1/4に設定する。また中層部l2に形成されるTiO2層の厚みはその6倍、すなわち3/2λに設定する。
また、MgF2層の屈折率は1.38、TiO2層の屈折率は2.3である。
【0081】
図11は、図10にて説明した多層膜構造体による角度選択透過膜20の透過/非透過特性を示している。なお、図中において、実線で示す特性はs偏光に対する特性であり、破線で示す特性はp偏光に対する特性である。この図では、横軸を入射角、縦軸を透過率として透過/非透過特性を表している。
【0082】
この図11の特性図より、図10にて説明した構造による角度選択透過膜20によれば、p偏光、s偏光の双方に対し、入射角が2°〜3°程度で透過率が急激に低下し始め、入射角が約20°以上となると、透過率はほぼ0となる。ここで、先の図1に示した光学系の構成によれば、イメージセンサ13に対しては再生光がs偏光により入射することになるが、図示するように、特にs偏光に対しては、入射角が50°以上となっても透過率が0近傍を維持する特性となる。
【0083】
先にも述べたように、イメージセンサ13に対して入射する再生光の各光線の入射角θは、SLM4のピクセルサイズPと記録再生波長λとの関係において、θ=λ/Pで表される。前述のように、図1に示した記録再生装置においては記録再生波長λが405nm(0.405μm)とされる。このとき、ピクセルサイズPが6μmであるとすると、入射角θは、
0.405/6=0.0675rad
より、θ=3.867°となる。
図11に示した特性より、先の図10で説明した構造による角度選択透過膜20によれば、記録再生装置側にて例えば上記のような条件が設定される場合に対応して、適正に再生光を選択透過することができる。
【0084】
ここで、例えば図10に示したような多層膜構造体による角度選択透過膜20とする場合には、これを構成する各層の材料(屈折率)や各層の厚みの設定により、透過/非透過の境界となる角度を調整することができる。また、各層の積層数によって透過率の立ち下がり角度(図11で透過率が急激に低下する部分での入射角に対する透過率の低下率)を調整できる。
角度選択反射膜20としては、記録再生波長λと空間光変調器のピクセルサイズPに依存して決まる再生光の最大入射角θに応じて、少なくとも該入射角θ以下の光を選択透過(理想的には入射角θ以下の光のみを透過)するように構成されたものが用いられればよい。
【0085】
なお確認のために述べておくと、図10にて示した角度選択透過素子の構造はあくまで一例を示したものに過ぎず、もちろん角度選択透過素子としては他の構造により実現することもできる。
【0086】
<4.変形例>

以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明としてはこれまでに説明した具体例に限定されるべきものではない。
例えば、これまでの説明では、角度選択透過素子が、再生光を受光する撮像素子のカバーガラスに対して成膜される場合を例示したが、角度選択透過素子は、アパーチャー12以降で生じた散乱光を抑圧することを考慮すれば、少なくともリレーレンズ系と撮像素子との間の光路中に設けるものとすればよい。
【0087】
具体的に、角度選択透過素子(角度選択透過素子21とする)は、次の図12に示すように偏光ビームスプリッタ5とイメージセンサ103との間に設けることができる。或いは図13に示すように、リレーレンズ6と偏光ビームスプリッタ5との間に挿入するといったこともできる。
なおこれら図12、図13において、イメージセンサ103としては、イメージセンサ13から角度選択透過膜20を省略したものとする。また、角度選択透過素子21の具体的な構造としては、例えば、角度選択透過膜20をガラス基板上に成膜したものなどを挙げることができる。
【0088】
また、これまでの説明では、記録時のホログラムサイズの縮小化のためにアパーチャー12が設けられ、再生時におけるホログラム記録媒体HMからの散乱光が、該アパーチャー12によって抑制される場合を例示したが、例えば再生専用装置を想定した場合、このような記録密度向上のためのアパーチャーは必ずしも挿入される必要はなく、アパーチャーを省略した構成とすることもできる。
そして、そのような場合、ホログラム記録媒体からの散乱光は、本発明の角度選択透過素子によって抑制されることになる。換言すれば、この場合の角度選択透過素子によれば、光学系中で生じた埃の付着等に起因する散乱光の抑圧効果と共に、ホログラム記録媒体からの散乱光の抑圧効果も得られるものである。
【0089】
また、これまでの説明では、本発明が反射型のホログラム記録媒体HMについて再生を行う場合に適用される場合を例示したが、本発明としては、反射膜を有さない透過型のホログラム記録媒体について再生を行う場合にも好適に適用することができる。
透過型のホログラム記録媒体に対応するとした場合、再生光は、ホログラム記録媒体全体を透過して参照光の照射側とは逆側に出力されるので、この場合の光学系には、ホログラム記録媒体の裏側に位置し、上記透過光として再生光が入射する対物レンズと、該対物レンズを介した再生光を入射し撮像素子に導くリレーレンズ系とを別途設けることになる。
この場合も、上記リレーレンズ系と撮像素子との間の光路中に角度選択透過素子を設けるものとすれば、同様に、光学系中で生じた埃の付着等に起因する散乱光を効果的に抑圧することができ、SN比の向上を図ることができる。
【0090】
また、これまでの説明では、参照光(及び信号光)生成のための強度変調を、偏光方向制御型の空間光変調器と偏光ビームスプリッタとの組合せで実現する場合を例示したが、強度変調を実現するための構成はこれに限定されるべきではない。例えば、図14や図15で説明した透過型液晶パネルによるSLM101やDMD(Digital Micro mirror Device:登録商標)など、単体で強度変調が可能な空間光変調器を用いて実現することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】実施の形態としての再生装置の内部構成を示した図である。
【図2】実施の形態で用いるホログラム記録媒体の構造例を示した断面図である。
【図3】偏光方向制御型の空間光変調器と偏光ビームスプリッタとの組合せで実現される強度変調について説明するための図である。
【図4】空間光変調器に設定される参照光エリア、信号光エリア、ギャップエリアの各エリアについて説明するための図である。
【図5】図1に示す光学系全体での光の振る舞いについて説明するための図である。
【図6】アパーチャーよりも後段側で生じた散乱光について説明するための図である。
【図7】空間光変調器の或るピクセルからの出射光線を示した図である。
【図8】イメージセンサ(撮像素子)に導かれる再生光の最大入射角について説明するための図である。
【図9】実施の形態の記録再生装置が備えるイメージセンサの断面構造を示した図である。
【図10】角度選択透過膜の具体的な構造例を示した図である。
【図11】図10に示す角度選択透過膜による透過/非透過特性を示した図である。
【図12】角度選択透過素子の挿入位置に関する変形例を示した図である。
【図13】角度選択透過素子の挿入位置に関する他の変形例を示した図である。
【図14】コアキシャル方式によるホログラムの記録手法について説明するための図である。
【図15】コアキシャル方式によるホログラムの再生手法について説明するための図である。
【符号の説明】
【0092】
1 レーザダイオード、2 コリメーションレンズ、3,5 偏光ビームスプリッタ、4 SLM(空間光変調器)、6,7 リレーレンズ、8 ミラー、9 部分回折素子、10 1/4波長板、11 対物レンズ、12 アパーチャー、13 イメージセンサ、14 変調制御部、15 データ再生部、20 角度選択透過膜、21 角度選択透過素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号光と参照光との干渉縞によって情報記録が行われるホログラム記録媒体に対し光を照射するための光源と、
上記光源からの光に対し空間光変調を施すことで上記参照光を生成する空間光変調部と、
上記空間光変調部により生成された上記参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介して上記ホログラム記録媒体に照射すると共に、上記参照光の照射に応じて上記ホログラム記録媒体から得られる再生光を、対物レンズとリレーレンズ系とを介して撮像素子に対して導くように構成された光学系と
を備える共に、
上記光学系における上記リレーレンズ系と上記撮像素子との間の光路中に、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過する角度選択透過素子が設けられている
光学ピックアップ装置。
【請求項2】
上記角度選択透過素子は膜状とされ、上記撮像素子のカバーガラスに対して成膜されている
請求項1に記載の光学ピックアップ装置。
【請求項3】
上記膜状による角度選択透過素子は、上記カバーガラスにおける上記撮像素子に近い側の面に対して成膜されている
請求項2に記載の光学ピックアップ装置。
【請求項4】
上記空間光変調部は、
記録時には上記信号光と上記参照光を生成し、再生時には上記参照光を生成し、
上記光学系には、
上記リレーレンズ系により形成されるフーリエ面となる位置に対して、光軸を含む中心部以外の光を遮断するように構成されたアパーチャーが設けられている
請求項1に記載の光学ピックアップ装置。
【請求項5】
上記角度選択透過素子は、
上記光源の光波長をλ、上記空間光変調部が備える空間光変調器のピクセルサイズをPとしたとき、入射角度がλ/P以下となる光を選択的に透過するように構成されている
請求項1に記載の光学ピックアップ装置。
【請求項6】
上記角度選択透過素子は多層膜構造体である請求項1に記載の光学ピックアップ装置。
【請求項7】
信号光と参照光との干渉縞によって情報記録が行われるホログラム記録媒体に対し光を照射するための光源と、
上記光源からの光に対し空間光変調を施すことで上記参照光を生成する空間光変調部と、
上記空間光変調部により生成された上記参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介して上記ホログラム記録媒体に照射すると共に、上記参照光の照射に応じて上記ホログラム記録媒体から得られる再生光を、対物レンズとリレーレンズ系とを介して撮像素子に対して導くように構成された光学系とを備える共に、上記光学系における上記リレーレンズ系と上記撮像素子との間の光路中に、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過する角度選択透過素子が設けられている光学ピックアップと、
上記撮像素子による受光結果に基づき、上記ホログラム記録媒体に記録された情報の再生を行う再生部と
を備える再生装置。
【請求項8】
信号光と参照光との干渉縞によって情報記録が行われるホログラム記録媒体に対し光を照射するための光源と、上記光源からの光に対し空間光変調を施すことで上記参照光を生成する空間光変調部と、上記空間光変調部により生成された上記参照光をリレーレンズ系と対物レンズとを介して上記ホログラム記録媒体に照射すると共に、上記参照光の照射に応じて上記ホログラム記録媒体から得られる再生光を、対物レンズとリレーレンズ系とを介して撮像素子に対して導くように構成された光学系と、を有する光学ピックアップを備えた再生装置における再生方法であって、
上記光学系における上記リレーレンズ系と上記撮像素子との間の光路中にて、入射角度が所定角度以下となる光を選択的に透過すると共に、
上記撮像素子による受光結果に基づき、上記ホログラム記録媒体に記録された情報の再生を行う
再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−160828(P2010−160828A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−740(P2009−740)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】