説明

光学フィルム、偏光板および画像表示装置

【課題】基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂から形成される樹脂層を備える光学フィルムであって、ケン化処理による樹脂層表面の対水接触角、基材フィルムと樹脂層との間の密着性、樹脂層の光学機能の低下等がなく、耐ケン化性に優れる光学フィルムを提供する。
【解決手段】基材フィルム101上に、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂層102を備え、樹脂層102がポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有する光学フィルム、ならびにこれを適用した偏光板および画像表示装置である。界面活性剤は、側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有するものであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂層を備える光学フィルムに関する。また本発明は、当該光学フィルムを用いた偏光板および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、携帯電話、パソコン用モニター、テレビ、液晶プロジェクタなどへの用途展開が急速に進んでいる。一般に、液晶表示装置は、バックライト装置と、液晶セル、該液晶セルのバックライト側に配置された背面側偏光板および該液晶セルの視認側に配置された前面側偏光板からなる液晶パネルと、を含んで構成される。
【0003】
偏光板は、通常、偏光フィルムの片面または両面に、接着剤層や粘着剤層を介して、保護フィルム、たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)に代表される透明樹脂フィルムを貼合した構成となっている。保護フィルムの貼合においては、保護フィルムと接着剤層または粘着剤層との接着性を向上させるために、貼合前に保護フィルムをアルカリ水溶液に浸漬するケン化処理を実施することが一般的である。
【0004】
一方、偏光板に各種光学機能を付与するために、上記保護フィルムとして、透明樹脂フィルム等からなる基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂等から形成される樹脂層(光学機能層)を設けた光学フィルムがしばしば用いられる。この場合、光学フィルムの樹脂層もケン化処理に付されることになるが、これにより樹脂層表面の対水接触角が低下したり、樹脂層の構成成分がアルカリ水溶液中に溶出したりすることがあり、その結果、基材フィルムと樹脂層との間の密着性や樹脂層の光学機能が損なわれたり、工程汚染が発生したりする場合があった。
【0005】
上記問題を解決するための方法として、たとえば特許文献1には、TACフィルム上に形成されたハードコート層等の樹脂層の上に、さらにアルカリに対して耐性がある保護層を設けることにより、樹脂層表面の親水化を防止することが開示されている。しかし、この場合、別途に設けた保護層を貼合し、ケン化処理後に剥離する工程が必須となるため、製造コストの増大および製造プロセスの煩雑化を招く。
【0006】
特許文献2には、上記樹脂層の最外層を、架橋性基を有する含フッ素ポリマーの架橋重合物から構成することにより、ケン化処理による基材フィルムと樹脂層との間の密着性や樹脂層の光学機能の低下を抑制することが開示されている。特許文献3には、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化型樹脂を主成分とするハードコート層を備える光学フィルムにおいて、活性エネルギー線硬化型樹脂と化学結合する(メタ)アクリロイル基およびフッ素化アルキル基を有する(メタ)アクリレートをハードコート層に含有させることにより、ハードコート層のケン化処理に対する耐性(耐ケン化性)を向上させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3925877号公報
【特許文献2】特許第4269510号公報
【特許文献3】特開2009−104054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂から形成される樹脂層を備える光学フィルムであって、ケン化処理による樹脂層表面の対水接触角、基材フィルムと樹脂層との間の密着性、樹脂層の光学機能の低下等がなく、耐ケン化性に優れる光学フィルムを提供することを目的とする。また、本発明の他の目的は、上記光学フィルムを適用した偏光板および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、基材フィルムおよび、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂層を備え、該樹脂層がポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有する光学フィルムを提供する。
【0010】
上記界面活性剤は、側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有するものであることが好ましい。
【0011】
上記樹脂層は、好ましくは、基材フィルム上に、活性エネルギー線硬化性樹脂および上記界面活性剤を含有する塗工液を塗工した後、塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てた状態で活性エネルギー線を塗工層に照射することにより硬化させたものである。活性エネルギー線は、たとえば紫外線である。また、鋳型としては、鏡面からなる表面を有する鋳型または凹凸表面を有する鋳型を用いることができる。
【0012】
また本発明は、偏光フィルムと、基材フィルム側が該偏光フィルムに対向するように該偏光フィルム上に積層される上記本発明の光学フィルムとを備える偏光板を提供する。さらに本発明は、上記本発明の偏光板と画像表示素子とを備える画像表示装置を提供する。当該画像表示装置において、偏光板は、その樹脂層側を外側にして画像表示素子上に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂から形成される樹脂層を備える光学フィルムにおいて、当該樹脂層の耐ケン化性に優れた光学フィルムを提供することができる。たとえば本発明により、ケン化処理前後の樹脂層の対水接触角変化が極めて小さい(たとえば5°以下)光学フィルムを提供することができる。本発明の光学フィルムは、樹脂層形成用塗工液に所定の界面活性剤を含有させることにより製造できるため、新たな製造工程の付加を要するなど製造プロセスの煩雑化を伴わず、製造効率および製造コストの面も有利である。本発明の光学フィルムは、偏光板や、液晶表示装置等の画像表示装置に好適に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光学フィルムの好ましい一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の光学フィルムの好ましい他の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の光学フィルムの好ましい他の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の光学フィルムの好ましい他の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の光学フィルムを製造するための装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<光学フィルム>
図1〜図4は、本発明の光学フィルムの好ましい例を示す概略断面図である。本発明に係る図1〜図4に示される光学フィルム100〜400は、基材フィルム101と、基材フィルム101上に積層された樹脂層(光学機能層)102とを備える。樹脂層102は、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物から構成される層であり、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有するものである。本発明の光学フィルムは、図1や図3に示される例のように、樹脂層102の表面が平坦面から構成されていてもよく、あるいは図2や図4に示される例のように、凹凸面から構成されていてもよい。また、図3および図4に示される例のように、樹脂層102に付与する光学機能に応じて、樹脂層102には透光性微粒子103が分散されていてもよい。
【0016】
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置などの画像表示装置に好適に適用されるものであり、たとえば、樹脂層102が様々な外力に起因する傷付きを防止するためのハードコート層であるハードコートフィルム(透光性微粒子を含有する場合がある);樹脂層102が液晶セルから出射する光を拡散させて視野角を改善するための光拡散層(光拡散剤としての透光性微粒子を含有する)である視認側光拡散フィルム;樹脂層102が外光の映り込みやギラツキを防止するための表面凹凸を有する防眩層(透光性微粒子を含有する場合がある)である防眩フィルム;樹脂層102が低屈折率層または屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層(透光性微粒子を含有する場合がある)である反射防止フィルム;樹脂層102が液晶セルに入射する光を拡散させ、バックライトユニットに起因するモアレ等を防止するための光拡散層(光拡散剤としての透光性微粒子を含有する)である背面側光拡散フィルム(拡散板)などであることができる。ハードコートフィルム、視認側光拡散フィルム、防眩フィルムおよび反射防止フィルムは、通常、視認側偏光板の視認側保護フィルムとして偏光フィルムに貼合して用いられる(すなわち、画像表示装置の表面に配置される。)。背面側光拡散フィルムは、通常、バックライト側偏光板のバックライト側保護フィルムとして偏光フィルムに貼合される。
【0017】
以下、本発明の光学フィルムについて、さらに詳細に説明する。
〔基材フィルム〕
基材フィルム101は透光性のものであればよく、たとえばガラスやプラスチックフィルムなどを用いることができる。プラスチックフィルムとしては適度の透明性、機械強度を有していればよい。具体的には、たとえば、TAC(トリアセチルセルロース)等のセルロースアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。基材フィルム101の厚みは、たとえば10〜500μmであり、光学フィルムの薄膜化等の観点から、好ましくは10〜300μmであり、より好ましくは20〜300μmである。
【0018】
〔樹脂層〕
本発明の光学フィルムは、基材フィルム101上に積層された樹脂層(光学機能層)102を備える。樹脂層102は、活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物から構成される層であり、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有するものである。なお、基材フィルム101と樹脂層102との間に他の層(接着剤層を含む)を有していてもよい。
【0019】
(1)活性エネルギー線硬化性樹脂
活性エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂などであることができ、たとえば、多官能(メタ)アクリレート化合物を含有するものを好ましく用いることができる。多官能(メタ)アクリレート化合物とは、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物である。多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、たとえば、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物、エポキシ(メタ)アクリレート化合物等の(メタ)アクリロイル基を2個以上含む多官能重合性化合物等が挙げられる。
【0020】
多価アルコールとしては、たとえば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールのような2価のアルコール;トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトール、ジトリメチロールプロパンのような3価以上のアルコールが挙げられる。
【0021】
多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物として、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、1分子中に複数個のイソシアネート基を有するイソシアネートと、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体のウレタン化反応物を挙げることができる。1分子中に複数個のイソシアネート基を有する有機イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の1分子中に2個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート、それら有機イソシアネートをイソシアヌレート変性、アダクト変性、ビウレット変性した1分子中に3個のイソシアネート基を有する有機イソシアネート等が挙げられる。水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等が挙げられる。
【0023】
ポリエステル(メタ)アクリレート化合物として好ましいものは、水酸基含有ポリエステルと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレートである。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールとしては前述した化合物と同様のものが例示できる。また、多価アルコール以外にも、フェノール類としてビスフェノールA等が挙げられる。カルボン酸としては、ギ酸、酢酸、ブチルカルボン酸、安息香酸等が挙げられる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、マレイン酸、フタル酸、フマル酸、イタコン酸、アジピン酸、テレフタル酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、トリメリット酸、シクロヘキサンジカルボン酸無水物等が挙げられる。
【0024】
以上のような多官能(メタ)アクリレート化合物の中でも、硬化物の強度向上や入手の容易性の点から、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のエステル化合物;ヘキサメチレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;トリレンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;アダクト変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートの付加体;およびビウレット変性イソホロンジイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの付加体が好ましい。さらに、これらの多官能(メタ)アクリレート化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0025】
活性エネルギー線硬化性樹脂は、上記の多官能(メタ)アクリレート化合物のほかに、単官能(メタ)アクリレート化合物を含有していてもよい。単官能(メタ)アクリレート化合物としては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アセチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類を挙げることができる。これらの化合物はそれぞれ単独でまたは2種類以上を併用して用いることができる。
【0026】
また、活性エネルギー線硬化性樹脂は重合性オリゴマーを含有していてもよい。重合性オリゴマーを含有させることにより、樹脂層102の硬度を調整することができる。重合性オリゴマーは、たとえば、前記多官能(メタ)アクリレート化合物、すなわち、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化合物、ウレタン(メタ)アクリレート化合物、ポリエステル(メタ)アクリレート化合物またはエポキシ(メタ)アクリレート等の2量体、3量体などのようなオリゴマーであることができる。
【0027】
その他の重合性オリゴマーとしては、分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレリンジイソシアネートの重合物等が挙げられ、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸のエステル化反応によって得られる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルであって、多価アルコールとして、たとえば、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等であるものが挙げられる。この少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールは、多価アルコールのアルコール性水酸基の一部が(メタ)アクリル酸とエステル化反応しているとともに、アルコール性水酸基が分子中に残存するものである。
【0028】
さらに、その他の重合性オリゴマーの例として、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物と、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとの反応により得られるポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマーを挙げることができる。複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、前記多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレートで記載したものと同様のものが例示できる。また、少なくとも1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多価アルコールとしては、上記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。
【0029】
以上のような重合性オリゴマーに加えて、さらにウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーの例として、水酸基含有ポリエステル、水酸基含有ポリエーテルまたは水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルの水酸基にイソシアネート類を反応させて得られる化合物が挙げられる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエステルは、多価アルコールとカルボン酸や複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物のエステル化反応によって得られる水酸基含有ポリエステルである。多価アルコールや、複数のカルボキシル基を有する化合物および/またはその無水物としては、それぞれ、多官能(メタ)アクリレート化合物のポリエステル(メタ)アクリレート化合物で記載したものと同様のものが例示できる。好ましく用いられる水酸基含有ポリエーテルは、多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドおよび/またはε−カプロラクトンを付加することによって得られる水酸基含有ポリエーテルである。多価アルコールは、前記水酸基含有ポリエステルに使用できるものと同じものであってよい。好ましく用いられる水酸基含有(メタ)アクリル酸エステルとしては、重合性オリゴマーのウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーで記載したものと同様のものが例示できる。イソシアネート類としては、分子中に1個以上のイソシアネート基を持つ化合物が好ましく、トリレンジイソシアネートや、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの2価のイソシアネート化合物が特に好ましい。
【0030】
これらの重合性オリゴマー化合物はそれぞれ単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。
【0031】
(2)界面活性剤
本発明の光学フィルムにおいては、樹脂層102に含有させる界面活性剤として、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を用いる。ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤は、該ポリマーそのものであってもよいし、該ポリマーを溶剤に溶解した溶液であってもよい。この界面活性剤を樹脂層102に含有させることにより、樹脂層102のレベリング性を向上できることはもとより、耐ケン化性を向上させることができる。具体的には、ケン化処理前後の樹脂層102の対水接触角変化を、たとえば5°以下程度まで低減することができる。また、樹脂層102の防汚性や、樹脂層102と基材フィルムとの間の接着性(したがって、光学フィルムの耐久性)、樹脂層102の光学機能のケン化処理による低下を抑制し得る。上記界面活性剤を用いた際の耐ケン化性向上効果は、従来の界面活性剤(ポリアルキルシロキサンを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤など)と比べて顕著に高い。
【0032】
界面活性剤におけるポリマーの主鎖を構成するポリ(メタ)アクリレートは、(メタ)アクリレートを繰り返し単位とするポリマー鎖であり、(メタ)アクリレートとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートや、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートなどの各種(メタ)アクリレートまたはその誘導体を用いることができる。ポリ(メタ)アクリレートは、1種の(メタ)アクリレートから構成される単独重合体であってもよいし、2種以上の(メタ)アクリレートから構成される共重合体であってもよい。
【0033】
上記界面活性剤におけるポリマーは、耐ケン化性およびレベリング性向上の観点から、側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有するものであることが好ましい。このような側鎖は、いかなる形態でフッ素原子および/またはケイ素原子を含有していてもよく、フッ素原子および/またはケイ素原子を含有する側鎖の例は、たとえば、アルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子に置換したフッ化アルキル基、ポリシロキサン基、ポリアルキルシロキサン基、含フッ素ポリシロキサン基、およびこれらの誘導体を含む。このような側鎖の導入方法は特に制限されず、たとえば、界面活性剤におけるポリマーの主鎖を形成する(メタ)アクリレートと共重合可能な末端二重結合(末端(メタ)アクリロイル基、末端(メタ)アクリルアミド基、末端ビニルエーテル基、末端ビニルエステル基など)を有し、含フッ素官能基および/またはシロキサン変性官能基を含む重合性モノマーを共重合させる方法などが挙げられる。
【0034】
側鎖には、界面活性剤の極性や、溶剤との相溶性を調節するために、必要に応じて脂肪族炭化水素基(脂環式炭化水素基を含む)や芳香族炭化水素基などが導入されてもよい。また、側鎖はN、P等のヘテロ原子を含有していてもよい。このような側鎖の導入方法は特に制限されず、たとえば、界面活性剤におけるポリマーの主鎖を形成する(メタ)アクリレートと共重合可能な末端二重結合(末端(メタ)アクリロイル基、末端(メタ)アクリルアミド基、末端ビニルエーテル基、末端ビニルエステル基など)を有するとともに、脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を有する重合性モノマーを共重合させる方法や、界面活性剤におけるポリマーの主鎖を形成する(メタ)アクリレートとして、水酸基等の反応性官能基を含む(メタ)アクリレートを用い、この反応性官能基に脂肪族炭化水素基、芳香族炭化水素基またはヘテロ原子を含む官能基を有する化合物を縮重合させる方法などが挙げられる。
【0035】
ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤のより具体的な例を挙げれば、たとえば、ポリアルキル(メタ)アクリレートを主鎖とする界面活性剤である「BYK−3550」(BYK社製)や、特開2010−196044号公報、特開2010−235784号公報に記載の含フッ素ラジカル重合性共重合体のうち、主鎖が(メタ)アクリレートであるものなどが挙げられる。
【0036】
樹脂層102における上記界面活性剤の含有量はポリマー量として、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部であり、より好ましくは0.2〜3重量部である。界面活性剤の含有量が活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して0.1重量部未満の場合には、十分な耐ケン化性向上効果が得られにくい。また、5重量部を超える場合には、硬度や耐擦傷性が低下するなど樹脂層102の特性や機能が損なわれる可能性がある。
【0037】
(3)透光性微粒子
透光性微粒子103としては、特に限定されるものではなく、たとえば、アクリル系樹脂、メラミン樹脂、ポリエチレン、ポリスチレン、有機シリコーン樹脂、アクリル−スチレン共重合体等からなる有機微粒子や、炭酸カルシウム、シリカ、酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ガラス等からなる無機微粒子などを使用することができる。また、有機重合体のバルーンや中空ビーズを使用することもできる。これらの透光性微粒子103は、1種類を単独で使用してもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。透光性微粒子103の形状は、球状、扁平状、板状、針状、不定形状等のいずれであってもよい。
【0038】
透光性微粒子103の粒子径や屈折率は特に制限されるものではないが、光学フィルムが光拡散フィルムや防眩フィルムである場合は、効果的に内部ヘイズを発現させる点から、粒子径は0.5μm〜20μmの範囲であることが好ましい。また、同様の理由から、硬化後の活性エネルギー線硬化性樹脂の屈折率と透光性微粒子103の屈折率との差は0.04〜0.15の範囲であることが好ましい。透光性微粒子103の含有量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、通常3〜60重量部であり、好ましくは5〜50重量部である。透光性微粒子103の含有量が、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して3重量部未満の場合は、光拡散性または防眩性が充分に付与されないことがある。一方、60重量部を超えると、光学フィルムの透明性が損なわれる場合があり、また、防眩性や光拡散性が高すぎて、コントラストが低下する傾向にある。
【0039】
〔樹脂層の表面形状等〕
樹脂層102の表面形状は、たとえば平坦面からなることができる。このような平坦面は、鋳型として鏡面からなる表面を有する鋳型を用い、該鋳型の表面を硬化前の樹脂層(活性エネルギー線硬化性樹脂および界面活性剤を含む塗工液からなる塗工層)の表面に押し当てた状態で硬化を行ない、樹脂層102の表面に該鏡面を転写することにより形成することができる。また、鋳型を使用することなく、塗工層を硬化させることによっても比較的平坦な表面を有する樹脂層を得ることが可能である。
【0040】
樹脂層102は表面凹凸を有していてもよい。このような表面凹凸は、鋳型として凹凸表面を有する鋳型を用い、該鋳型の凹凸表面を塗工層の表面に押し当てた状態で硬化を行ない、樹脂層102の表面に該凹凸表面を転写することにより形成することができる。また、鋳型を使用することなく、塗工層に透光性微粒子を含有させることによっても表面凹凸を有する樹脂層を得ることが可能である。
【0041】
ここで、樹脂層を形成する際、塗工層表面に鋳型表面を押し当てた状態で活性エネルギー線を塗工層に照射してこれを硬化させると、界面活性剤による耐ケン化性向上効果が高くなることが明らかとなっている。この理由の詳細は定かではないが、鋳型を押し当てることにより、界面活性剤が、鋳型を押し当てないときとは異なる配向状態をとるためと推定される。
【0042】
樹脂層102は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。後者の場合、少なくとも最外層が上記界面活性剤を含有する。単層構造の例としては、たとえば、ハードコート層、光拡散層、防眩層、反射防止層(低屈折率層等)などが挙げられる。多層構造の例としては、たとえば、多層構造からなる反射防止層(屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層等)や、ハードコート層、光拡散層または防眩層と反射防止層との組み合わせなどが挙げられる。
【0043】
〔光学フィルムの製造方法〕
次に、上述の本発明に係る光学フィルムの製造方法について説明する。本発明の光学フィルムは、次の工程(A)および(B)を含む方法によって好適に(効率的にかつ低コストで)製造することができる。
(A)基材フィルム101上に、活性エネルギー線硬化性樹脂およびポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有する塗工液を塗工して塗工層を形成する工程、
(B)活性エネルギー線の照射により、上記塗工層を硬化させる工程。
【0044】
(1)工程(A)
上記工程(A)で用いる塗工液は、活性エネルギー線硬化性樹脂およびポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を少なくとも含有し、通常は、光重合開始剤(ラジカル重合開始剤)をさらに含む。必要に応じて、透光性微粒子103、有機溶剤等の溶剤、レベリング剤、分散剤、帯電防止剤、防汚剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0045】
光重合開始剤としては、たとえば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、オキサジアゾール系光重合開始剤などが用いられる。また、光重合開始剤として、たとえば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、10−ブチル−2−クロロアクリドン、2−エチルアントラキノン、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等も用いることができる。光重合開始剤の使用量は、活性エネルギー線硬化性樹脂100重量部に対して、通常0.5〜20重量部であり、好ましくは1〜5重量部である。
【0046】
有機溶剤としては、ヘキサン、シクロヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル化グリコールエーテル類;2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等のセルソルブ類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール等のカルビトール類などから、粘度等を考慮して選択して用いることができる。溶剤は、単独で用いてもよいし、必要に応じて数種類を混合して用いてもよい。塗工後は、上記有機溶剤を蒸発させる必要がある。そのため、沸点は60℃〜160℃の範囲であることが望ましい。また、20℃における飽和蒸気圧は0.1kPa〜20kPaの範囲であることが好ましい。
【0047】
なお、透光性微粒子103を使用する場合、光学フィルムの光学特性および表面形状を均質なものとするために、塗工液中の透光性微粒子103の分散は等方分散であることが好ましい。
【0048】
塗工液の基材フィルム101上への塗工は、たとえば、グラビアコート法、マイクログラビアコート法、ロッドコート法、ナイフコート法、エアーナイフコート法、キスコート法、ダイコート法などによって行なうことができる。
【0049】
塗工液の塗工性の改良または樹脂層102との接着性の改良を目的として、基材フィルム101の表面(樹脂層側表面)には、各種表面処理を施してもよい。表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、酸表面処理、アルカリ表面処理、紫外線照射処理などが挙げられる。また、基材フィルム101上に、たとえばプライマー層等の他の層を形成し、この他の層の上に、塗工液を塗工するようにしてもよい。
【0050】
(2)工程(B)
本工程では、必要に応じて塗工層の乾燥(溶媒の除去)を行なった後、活性エネルギー線の照射により塗工層を硬化させて樹脂層102を形成する。この際、上述のように、塗工層表面に鋳型表面を押し当てた状態で、基材フィルム101側から活性エネルギー線を照射し、塗工層を硬化させると、界面活性剤による耐ケン化性向上効果をより高くすることができる。鋳型は、樹脂層102表面に所望の形状を付与するためのものであり、当該所望の形状の転写構造からなる表面形状を有している。塗工層の表面に、該表面形状を塗工層表面に押し付けながら塗工層を硬化させることにより、鋳型の表面形状を樹脂層102表面に転写できる。鋳型としては、鏡面からなる表面を有する鋳型(たとえば鏡面ロール)および凹凸表面を有する鋳型(たとえばエンボスロール)を挙げることができる。
【0051】
鋳型が凹凸表面を有する場合において、凹凸形状のパターンは、規則的なパターンであってもよいし、ランダムパターン、あるいは特定サイズの1種類以上のランダムパターンを敷き詰めた、擬似ランダムパターンであってもよいが、表面形状に起因する反射光の干渉により、反射像が虹色に色づくことを防止する点から、ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンであることが好ましい。
【0052】
鋳型の外形形状は特に制限されるものではなく、平板状であってもよいし、円柱状または円筒状のロールであってもよいが、連続生産性の点から、鏡面ロールやエンボスロール等の、円柱状または円筒状の鋳型であることが好ましい。この場合、円柱状または円筒状の鋳型の側面に所定の表面形状が形成される。
【0053】
鋳型の基材の材質は特に制限されるものではなく、金属、ガラス、カーボン、樹脂、あるいはそれらの複合体から適宜選択できるが、加工性等の点から金属が好ましい。好適に用いられる金属材料としては、コストの観点からアルミニウム、鉄、またはアルミニウムもしくは鉄を主体とする合金などが挙げられる。
【0054】
鋳型を得る方法としては、たとえば、基材を研磨し、サンドブラスト加工を施した後、無電解ニッケルめっきを施す方法(特開2006−53371号公報);基材に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、クロムめっきを施す方法(特開2007−187952号公報);銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、サンドブラスト加工を施した後、エッチング工程または銅めっき工程を施し、ついでクロムめっきを施す方法(特開2007−237541号公報);基材の表面に銅めっきまたはニッケルめっきを施した後、研磨し、研磨された面に感光性樹脂膜を塗布形成し、該感光性樹脂膜上にパターンを露光した後、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行ない、感光性樹脂膜を剥離し、さらにエッチング処理を行ない、凹凸面を鈍らせた後、形成された凹凸面にクロムめっきを施す方法;および旋盤等の工作機械を用いて、切削工具により鋳型となる基材を切削する方法(国際公開第2007/077892号パンフレット)等が挙げられる。
【0055】
ランダムパターンまたは擬似ランダムパターンからなる鋳型の表面凹凸形状は、たとえば、FMスクリーン法、DLDS(Dynamic Low−Discrepancy Sequence)法、ブロック共重合体のミクロ相分離パターンを利用する方法またはバンドパスフィルター法等によって生成されたランダムパターンを感光性樹脂膜上に露光、現像し、現像された感光性樹脂膜をマスクとして用いてエッチング処理を行なうことにより形成することができる。
【0056】
活性エネルギー線としては、塗工液に含まれる活性エネルギー線硬化性樹脂の種類に応じて紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができるが、これらの中で紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが得られることから紫外線が好ましい。
【0057】
紫外線の光源としては、たとえば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。これらの中でも、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、キセノンアーク、メタルハライドランプが好ましく用いられる。
【0058】
また、電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0059】
次に、本発明の光学フィルムの製造方法の好ましい実施形態について説明する。当該好ましい実施形態に係る製造方法は、本発明の光学フィルムを連続的に製造するために、ロール状に巻き付けられた基材フィルム101を連続的に送り出す工程、活性エネルギー線硬化性樹脂およびポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有する塗工液を塗工し、必要に応じて乾燥させる工程、鋳型表面を塗工層表面に押し当てながら塗工層を硬化させる工程、および、得られた光学フィルムを巻き取る工程を含む。かかる製造方法は、たとえば図5に示される製造装置を用いて実施することができる。以下、図5を参照しながら、当該好ましい実施形態に係る製造方法について説明する。
【0060】
まず、巻き出し装置201により基材フィルム101が連続的に巻き出される。ついで、巻き出された基材フィルム101上に、塗工装置202およびこれに対向するバックアップロール203を使用して、塗工液が塗工される。次に、塗工液に溶剤が含まれる場合には、乾燥機204を通過させることにより乾燥される。次に、塗工層が設けられた基材フィルム101は、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205とニップロール206との間へ、その塗工層が鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205と密着するように巻き掛けられる。これにより、塗工層の表面に鏡面金属製ロールの鏡面またはエンボス加工用金属製ロールの凹凸面が押し付けられ、表面形状が転写される。ついで、基材フィルム101が鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205に巻き掛けられた状態で、基材フィルム101を通して、紫外線照射装置208から塗工層に紫外線を照射することにより、塗工層を硬化させる。紫外線照射により照射面が高温になることから、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205は、その表面温度を室温〜80℃程度に調整するための冷却装置をその内部に備えることが好ましい。また、紫外線照射装置208は、1機、もしくは複数機を使用することができる。
【0061】
樹脂層102が形成された基材フィルム101(光学フィルム)は、剥離ロール207によって、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205から剥離される。以上のようにして作製された光学フィルムは、巻き取り装置209へ巻き取られる。この際、樹脂層102を保護する目的で、再剥離性を有した粘着剤層を介して、樹脂層102表面にポリエチレンテレフタレートやポリエチレン等からなる保護フィルムを貼着しながら巻き取ってもよい。
【0062】
なお、剥離ロール207によって鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205から剥離された後に、追加の紫外線照射を行なってもよい。また、鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205に巻き掛けられた状態で紫外線照射を行なう代わりに、未硬化の塗工層が形成された基材フィルム101を鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール205から剥離した後に、紫外線を照射して硬化させてもよい。
【0063】
<偏光板>
本発明の偏光板は、偏光フィルムと、基材フィルム101側が該偏光フィルムに対向するように該偏光フィルム上に積層される前述の光学フィルムとを備えるものである。偏光フィルムは、入射光から直線偏光を取り出す機能を有するものであって、その種類は特に限定されない。好適な偏光フィルムの例として、ポリビニルアルコール系樹脂に二色性色素が吸着配向している偏光フィルムを挙げることができる。ポリビニルアルコール系樹脂としては、酢酸ビニルのケン化物であるポリビニルアルコールのほか、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン/酢酸ビニル共重合体のケン化物などが挙げられる。二色性色素としては、ヨウ素または二色性の有機染料が用いられる。また、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のポリエン配向フィルムも、偏光フィルムとなり得る。偏光フィルムの厚さは、通常5〜80μm程度である。
【0064】
本発明の偏光板は、上記偏光フィルムの片面または両面(通常は片面である)に本発明の光学フィルムを積層したものであってもよく、上記偏光フィルムの一方の面に透明保護層を積層し、他方の面に本発明の光学フィルムを積層したものであってもよい。この際、光学フィルムは、偏光フィルムの透明保護層(保護フィルム)としての機能も有する。光学フィルムの樹脂層102に表面凹凸形状が付与されている場合、この樹脂層は防眩層としての機能することができる。透明保護層は、透明樹脂フィルムを、接着剤等を用いて貼合する方法や透明樹脂含有塗工液を塗布する方法などによって偏光フィルム上に形成することができる。同様に、本発明の光学フィルムは、接着剤等を用いて偏光フィルムに貼合することができる。
【0065】
透明保護層となる透明樹脂フィルムは、透明性や機械強度、熱安定性、水分遮蔽性などに優れることが好ましく、このようなものとしては、たとえば、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロースアセテートなどのセルロース系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレートなどの(メタ)アクリル系樹脂;ポリエチレンテレフタラート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどの鎖状ポリオレフィン系樹脂;環状ポリオレフィン系樹脂;スチレン系樹脂;ポリサルフォン;ポリエーテルサルフォン;ポリ塩化ビニル系樹脂などからなるフィルムが例示される。これらの透明樹脂フィルムは、光学的に等方性のものであってもよいし、画像表示装置に組み込んだ際の視野角の補償を目的として、光学的に異方性を有するものであってもよい。
【0066】
<画像表示装置>
本発明の画像表示装置は、上記本発明の偏光板と、種々の情報を画面に映し出す画像表示素子とを組み合わせたものである。本発明の画像表示装置の種類は特に限定されず、液晶パネルを使用した液晶ディスプレイ(LCD)のほか、ブラウン管(陰極線管:CRT)ディスプレイ、プラズマディスプレイ(PDP)、電解放出ディスプレイ(FED)、表面伝導型電子放出素子ディスプレイ(SED)、有機ELディスプレイ、レーザーディスプレイ、プロジェクタテレビのスクリーン等が挙げられる。
【0067】
たとえば、本発明の偏光板を液晶セル上に配置して液晶パネルを製造する場合、偏光板は、その樹脂層102を外側にして液晶セル上に配置される。他の画像表示装置についても同様である。光学フィルムは、画像表示素子の視認側に配してもよいし、バックライト側に配してもよいし、あるいはその両方に配してもよい。光学フィルムを視認側に配した場合、光学フィルムは、ハードコートフィルム、光拡散フィルム、防眩フィルムまたは反射防止フィルムなどとして機能し得る。一方、光学フィルムをバックライト側に配した場合、光学フィルムは、液晶セルに入射する光を拡散させ、モアレ等を防止する光拡散フィルム(拡散板)などとして機能し得る。
【実施例】
【0068】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0069】
<実施例1>
以下の成分を混合して紫外線硬化性の塗工液を調製した。
・紫外線硬化性樹脂:ペンタエリスリトールトリアクリレート60重量部および多官能ウレタン化アクリレート(ヘキサメチレンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの反応生成物) 40重量部、
・光重合開始剤:「ルシリン TPO」(BASF社製、化学名:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド) 5重量部、
・界面活性剤:非反応性界面活性剤「BYK−3550」(BYK社製、ポリアルキルアクリレートを主鎖骨格とするポリシロキサン変性アクリルポリマー) 0.5重量部、
・希釈溶剤:酢酸エチル 100重量部。
【0070】
上記塗工液を、厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(基材フィルム)上にグラビアコーターで塗工して塗工層を形成し、基材フィルムと塗工層との積層体を得た。得られた積層体を乾燥炉で乾燥させた後、表面が鏡面になるように研磨処理したクロムめっきロールを、積層体の塗工層表面にニップロールを用いて押し当て密着させた。この状態で基材フィルム側より、UVAにおける最大照度が700mW/cm2、UVAにおける光積算光量が300mJ/cm2となるように紫外線を照射し、塗工層を硬化させた。その後、クロムめっきロールから積層体を剥離することで、紫外線硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂層の平均膜厚が10μmである光学フィルムを得た。
【0071】
<比較例1>
界面活性剤として、反応性界面活性剤「BYK−UV3500」(BYK社製、アクリロイル基含有ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0072】
<比較例2>
界面活性剤として、非反応性界面活性剤「BYK−UV3510」(BYK社製、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン)を用いたこと以外は実施例1と同様にして光学フィルムを作製した。
【0073】
(耐ケン化性の評価)
実施例および比較例で作製した光学フィルムをケン化処理(40℃に保持した5.0規定の水酸化カリウム水溶液に20秒間浸漬させた後、水洗し、乾燥。)して、ケン化処理前後における樹脂層表面の蒸留水に対する接触角(対水接触角)の変化量を測定した。対水接触角の測定は、協和界面化学株式会社製の接触角計「CA−X型」を使用して行ない、5点測定したうちの最大値と最小値を除く3点の平均値を対水接触角とした。
【0074】
【表1】

【0075】
表1に示されるとおり、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤の使用により、ケン化処理による樹脂層表面の対水接触角の低下が抑制され、耐ケン化性が向上することがわかる。
【符号の説明】
【0076】
100,200,300,400 光学フィルム、101 基材フィルム、102 樹脂層(光学機能層)、103 透光性微粒子、201 巻き出し装置、202 塗工装置、203 バックアップロール、204 乾燥機、205 鏡面金属製ロールまたはエンボス加工用金属製ロール、206 ニップロール、207 剥離ロール、208 紫外線照射装置、209 巻き取り装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムおよび、基材フィルム上に活性エネルギー線硬化性樹脂の硬化物からなる樹脂層を備え、
前記樹脂層が、ポリ(メタ)アクリレートを主鎖とするポリマーから構成される界面活性剤を含有する光学フィルム。
【請求項2】
前記界面活性剤は、側鎖にフッ素原子および/またはケイ素原子を含有するものである請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記樹脂層は、前記基材フィルム上に、前記活性エネルギー線硬化性樹脂および前記界面活性剤を含有する塗工液を塗工した後、塗工層の表面に鋳型の表面を押し当てた状態で活性エネルギー線を塗工層に照射することにより硬化させたものである請求項1または2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記活性エネルギー線は、紫外線である請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記鋳型は、鏡面からなる表面を有する鋳型または凹凸表面を有する鋳型である請求項3または4に記載の光学フィルム。
【請求項6】
偏光フィルムと、
前記基材フィルム側が前記偏光フィルムに対向するように、前記偏光フィルム上に積層される請求項1〜5のいずれかに記載の光学フィルムと、
を備える偏光板。
【請求項7】
請求項6に記載の偏光板と、画像表示素子とを備え、
前記偏光板は、その樹脂層側を外側にして前記画像表示素子上に配置される画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−150459(P2012−150459A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−283312(P2011−283312)
【出願日】平成23年12月26日(2011.12.26)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】