説明

光学フィルムの製造方法、及び光学フィルム

【課題】アクリル系樹脂とセルロースアシレート系樹脂とを積層した光学フィルムの製造方法であって、生産性に優れ、ヘイズが低く、かつムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供すること。
【解決手段】熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)、及び(B)を流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に同時または逐次に流延基材上に流延し、溶媒を除去し光学フィルムを製造する方法であって、流延基材表面の温度が5℃以下であり、ドープ(A)はアシル基の置換度が1.2以上3.0以下であるセルロースアシレート系樹脂を含有し、ドープ(B)はアクリル系樹脂を含有する光学フィルムの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムの製造方法、及び光学フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、低消費電力で、薄層化が可能であることから、TVやパーソナルコンピューター等の画像表示装置として広く採用されている。液晶表示装置は液晶セルの両側に偏光板を設置したもので、偏光板はヨウ素や染料を吸着配向させた偏光フィルムの両側を透明な樹脂層で挟み込んだ構成をしている。このような透明樹脂は偏光子を保護する目的をもつが、セルロースエステルフィルムが良く使用されている。
近年液晶表示装置はその普及にともない、更なる薄層化、大型化、また高性能化が求められている。
セルロースエステルフィルムは透過率が高く、アルカリ水溶液に浸漬させてその表面を鹸化し親水化することで、偏光子との優れた密着性を実現している。しかしながら、温湿度変化により吸湿又は脱水により寸法変化しやすいという問題があった。
【0003】
この課題を解決するために、セルロースエステルに代わるフィルムとして、吸湿性が低く、傷が付きにくいという特徴があるアクリル系樹脂フィルムが提案されたが、偏光子との接着性は十分に高いものとは言えず、また割れ等が生じやすく、脆性が不十分なものであった。
そこで、それぞれのフィルムの課題をこれらフィルムを積層することにより解決しようという技術が提案された。
【0004】
特許文献1では、セルローストリアセテートとアクリル系樹脂の積層フィルムを共流延法にて作製する技術が公開されている。
また、特許文献2では、セルローストリアセテートを溶液流延法にて製膜する場合には、流延したドープを冷却することによりゲル化を速め、剥ぎ取りまでの時間を短縮できる技術が開示されている。
また、特許文献3では、アクリル樹脂とセルロースエステル樹脂を特定の割合で相溶状態で含有する光学フィルムの溶液流延の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−215331号公報
【特許文献2】特公平6−51806号公報
【特許文献3】特許第4379547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の方法では、ドープを流延基材上に流延後、流延基材上で3分間に渡って乾燥した後に剥ぎ取る必要があり、一定以上の製膜速度で製造するためには、支持体長の長い大規模な装置が必要になる。また、乾燥速度を上げると発泡を生じ、フィルムの平面性を損なうという問題がある。
【0007】
特許文献2に記載の技術は、アクリル系樹脂フィルムの製膜、更にはアクリル系樹脂、セルローストリアセテートフィルムの共流延製膜に適用しても、剥ぎ取ったフィルムの自己支持性が不十分であるという問題がある。
【0008】
また、特許文献3に記載の製造法による光学フィルムは、鹸化処理により表面を親水化し偏光子と密着させる適性の点では性能不十分であった。またアクリル樹脂とセルロースエステル樹脂は原材料のロット(供給品質のばらつき)や製造条件のばらつきにより相溶性が変化することがあり、ヘイズ上昇などの問題を引き起こしやすいことが分かった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み成されたものであり、その目的は、アクリル系樹脂とセルロースアシレート系樹脂とを積層した光学フィルムの製造方法であって、生産性に優れ、ヘイズが低く、かつムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下の構成により、上記課題は達成することができる。
【0011】
1.
熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)、及び(B)を流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延し、溶媒を除去し光学フィルムを製造する方法であって、流延基材表面の温度が5℃以下であり、ドープ(A)はアシル基の置換度が1.2以上3.0以下であるセルロースアシレート系樹脂を含有し、ドープ(B)はアクリル系樹脂を含有する光学フィルムの製造方法。
2.
ドープ(B)において、アクリル系樹脂の重量平均分子量が80000以上300000以下である上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
3.
ドープ(B)において、アクリル系樹脂の重量平均分子量が250000以上600000以下である上記1に記載の光学フィルムの製造方法。
4.
ドープ(A)、及び(B)に含有される有機溶媒に含まれるアルコールの割合が、有機溶媒全体の10質量%以上50質量%以下である上記1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
5.
ドープが流延基材上を搬送される時間が60秒以内である上記1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
6.
ドープ(B)の固形分濃度が16〜50質量%である上記1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
7.
ドープ(B)の固形分濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内である上記1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
8.
上記1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で製造された光学フィルム。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、アクリル系樹脂とセルロースアシレート系樹脂とを積層した光学フィルムの製造方法であって、生産性に優れ、ヘイズが低く、かつムラが少ない光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ドラム流延装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、数値が物性値、特性値等を表す場合に、「(数値1)〜(数値2)」という記載は「(数値1)以上(数値2)以下」の意味を表す。(メタ)アクリルとは、メタクリル又はアクリルを表し、(メタ)アクリロイルとは、メタクリロイル又はアクリロイルを表す。
【0015】
<光学フィルムの製造方法>
本発明における光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)、及び(B)を流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延し、溶媒を除去し光学フィルムを製造する方法であって、流延基材表面の温度が5℃以下であり、ドープ(A)はアシル基の置換度が1.2以上3.0以下であるセルロースアシレート系樹脂を含有し、ドープ(B)はアクリル系樹脂を含有する光学フィルムの製造方法である。
前記2つのドープ(A)は同じ組成でも異なる組成でもよい。
【0016】
本発明における光学フィルムの製造方法は、熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)、及び(B)を用いる。
ドープ(A)、及び(B)に含まれる好ましい熱可塑性樹脂としては、それぞれセルロースアシレート系樹脂、及びアクリル系樹脂が挙げられる。
【0017】
(セルロースアシレート系樹脂)
本発明に係るドープ(A)に含有されるセルロースアシレート系樹脂は、アシル基の総置換度が1.2以上3.0以下であれば特に定めるものではない。原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば、丸澤、宇田著、「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」日刊工業新聞社(1970年発行)や発明協会公開技報公技番号2001−1745号(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。
【0018】
本発明において、流延時に流延基板に隣接する層に用いられるドープ(A)に含まれるセルロースアシレート系樹脂は、アシル基の総置換度をTA全、炭素数が2のアシル基の置換度をTA2、炭素原子数が3以上7以下のアシル基の置換度をTA3としたときに、以下の条件を満たすことが好ましい。以下の範囲にすることで、隣接層との密着性、ドラム剥離性、フィルムのカール低減の観点で優れた光学フィルムを得ることができる。
2.2≦TA全≦3.0
1.5≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.7
【0019】
また、セルロースアシレート系樹脂は、より好ましくは以下の条件を満たすセルロースアシレート系樹脂である。
2.5≦TA全≦3.0
2.4≦TA2≦3.0
0.0≦TA3≦0.1
【0020】
本発明に係るセルロースアシレート系樹脂としては、特にセルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートベンゾエート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。これらの中でより好ましいセルロースアシレート系樹脂は、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネートであり、更に好ましくはトリアセチルセルロースである。
【0021】
なお、アセチル基の置換度や他のアシル基の置換度は、ASTM−D817−96に規定の方法により求めることができる。
【0022】
本発明に係るセルロースアシレート系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、特にアクリル系樹脂との密着性の観点から、好ましくは75000以上であり、75000〜300000の範囲であることがより好ましく、100000〜240000の範囲内であることが更に好ましく、160000〜240000のものが特に好ましい。セルロースアシレート系樹脂の重要平均分子量(Mw)が75000以上であればセルロースアシレート系樹脂層自身の自己成膜性や密着の改善効果が発揮され、好ましい。本発明では2種以上のセルロースアシレート樹脂を混合して用いることもできる。
【0023】
(アクリル系樹脂)
本発明に係るドープ(B)に含有されるアクリル系樹脂には、メタクリル系樹脂も含まれ、アクリレート/メタクリレートの誘導体、特にアクリレートエステル/メタクリレートエステルの(共)重合体がよく知られている。アクリル系樹脂としては特に制限されるものではないが、メチルメタクリレート単位50〜99質量%、及びこれと共重合可能な他の単量体単位1〜50質量%からなるものが、光弾性係数の小さいフィルムを得るために好ましい。
【0024】
アクリル系樹脂において、前記共重合可能な他の単量体としては、アルキル基の炭素数が2〜18のアルキルメタクリレート、アルキル数の炭素数が1〜18のアルキルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
【0025】
これらの中でも、共重合体の耐熱分解性や流動性の観点から、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、s−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等が好ましく、メチルアクリレートやn−ブチルアクリレートが特に好ましく用いられる。
【0026】
高温、高湿の環境にも性能変化の少ない透明性の高い光学フィルムを形成できる樹脂として、アクリル系樹脂は、共重合成分として脂環式アルキル基を含有するか、又は分子内環化により分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル系樹脂が好ましい。分子主鎖に環状構造を形成させたアクリル樹脂の例としては、一つの好ましい態様としてラクトン環含有重合体を含むアクリル系の熱可塑性樹脂が挙げられ、好ましい樹脂組成や合成方法は特開2006−171464号公報に記載されている。また、別の好ましい態様としてグルタル酸無水物を共重合成分として含有する樹脂が挙げられ、共重合成分や具体的合成方法については特開2004−070296号公報に記載されている。
【0027】
アクリル系樹脂の分子量は特に制限はないが、ドープ(B)中の有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由からは、アクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が80000以上300000以下であることが好ましく、85000以上120000以下であることがより好ましい。
また、ドープ(B)の固形分濃度を前記ドープ(A)の固形分濃度と同程度としたときに、ドープ(B)の粘度を前記ドープ(A)より高い粘度とすることで、優れた面状の光学フィルムが得られるという理由からはアクリル系樹脂の重量平均分子量(Mw)が250000以上600000以下であることが好ましく、400000以上550000以下であることがより好ましい。
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定することができる。
【0028】
アクリル系樹脂の製造方法としては、特に制限は無く、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、あるいは溶液重合等の公知の方法を用いることができる。
アクリル系樹脂としては、市販のものも使用することができる。例えば、デルペット60N、80N(旭化成ケミカルズ(株)製)、ダイヤナールBR52、BR80,BR83,BR85,BR88(三菱レイヨン(株)製)、KT75(電気化学工業(株)製)等が挙げられる。アクリル系樹脂は2種以上を併用することもできる。
【0029】
(アクリル系樹脂と併用できる他の熱可塑性樹脂)
アクリル系樹脂は、更に別の熱可塑性樹脂を含むことができる。本発明において熱可塑性樹脂としては、ガラス転移温度が100℃以上、全光線透過率が85%以上の性能を有するものが、前記アクリル系樹脂と混合してフィルム状にした際に、耐熱性や機械強度を向上させる点において好ましい。
【0030】
上記ドープ(B)中の熱可塑性組成物におけるアクリル系樹脂とその他の熱可塑樹脂成分の含有割合は、[アクリル系樹脂/(アクリル系樹脂熱可塑樹脂)]×100の質量割合で、好ましくは30〜99質量%、より好ましくは50〜97質量%、更に好ましくは60〜95質量%である。ドープ(B)中のアクリル系樹脂の含有割合が30質量%以上であれば、耐熱性を十分に発揮できるため好ましい。
【0031】
上記のその他の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系ポリマー;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系ポリマー;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系ポリマー;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;ポリブタジエン系ゴム、アクリル系ゴムを配合したABS樹脂やASA樹脂等のゴム質重合体;などが挙げられる。ゴム質重合体は、表面に本発明における環重合体と相溶し得る組成のグラフト部を有するのが好ましく、また、ゴム質重合体の平均粒子径は、フィルム状とした際の透明性向上の観点から、100nm以下である事が好ましく、70nm以下である事が更に好ましい。
【0032】
他の熱可塑性樹脂としては、アクリル系樹脂と熱力学的に相溶する樹脂が好ましく用いられる。このような他の熱可塑性樹脂としては、シアン化ビニル系単量体単位と芳香族ビニル系単量体単位とを有するアクリロニトリル−スチレン系共重合体やポリ塩化ビニル樹脂等が好ましく挙げられる。それらの中でもアクリロニトリル−スチレン系共重合体が、ガラス転移温度が120℃以上、面方向の100μm当たりの位相差が20nm以下で、全光線透過率が85%以上である光学フィルムが容易に得られるので好ましい。
アクリロニトリル−スチレン系共重合体としては、具体的には、その共重合比がモル単位で、1:10〜10:1の範囲のものが有用に使用される。
【0033】
本発明においては、アクリル系樹脂をドープ(A)に添加することもできる。セルロースアシレート系樹脂に対する、アクリル系樹脂の割合は、セルロースアシレート系樹脂を基準とした場合に、2〜140質量%が好ましく、より好ましくは4〜100質量%、最も好ましくは6〜60質量%である。また、アクリル系樹脂の分子量は、1000〜20万が好ましく、更に好ましくは1000〜10万、最も好ましくは1500〜5万以下であり、特に好ましくは1500〜1万である。この分子量範囲にすることで、セルロース系樹脂層の透明性に優れる。
【0034】
この目的で使用できるアクリル系樹脂の組成は、脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマー、芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー又はシクロへキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーを主成分として含むことが好ましい。主成分とは、(共)重合体中で他の共重合可能な成分よりも構成質量比率が高いことをいう。
好ましくは、これら成分の構成質量比率が、40〜100質量%、更に好ましくは60〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
【0035】
脂肪族の(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル(i−、n−)、アクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸ペンチル(n−、i−、s−)、アクリル酸ヘキシル(n−、i−)、アクリル酸ヘプチル(n−、i−)、アクリル酸オクチル(n−、i−)、アクリル酸ノニル(n−、i−)、アクリル酸ミリスチル(n−、i−)、アクリル酸(2−エチルヘキシル)、アクリル酸(ε−カプロラクトン)、アクリル酸(2−ヒドロキシエチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(3−ヒドロキシプロピル)、アクリル酸(4−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−ヒドロキシブチル)、アクリル酸(2−メトキシエチル)、アクリル酸(2−エトキシエチル)等、又は上記アクリル酸エステルをメタクリル酸エステルに変えたものを挙げることが出来る。なかでも、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル(i−、n−)、メタアクリル酸ブチル(n−、i−、s−、t−)、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルが好ましい。
【0036】
芳香族環を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えばアクリル酸フェニル、メタクリル酸フェニル、アクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、メタクリル酸(2又は4−クロロフェニル)、アクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、メタクリル酸(2又は3又は4−エトキシカルボニルフェニル)、アクリル酸(o又はm又はp−トリル)、メタクリル酸(o又はm又はp−トリル)、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェネチル、メタクリル酸フェネチル、アクリル酸(2−ナフチル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸ベンジル、メタクリル酸ベンジル、アクリル酸フェニチル、メタクリル酸フェネチルを好ましく用いることが出来る。
【0037】
シクロへキシル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマーとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−メチルシクロヘキシル)、アクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)、メタクリル酸(4−エチルシクロヘキシル)等を挙げることが出来るが、アクリル酸シクロヘキシル及びメタクリル酸シクロヘキシルを好ましく用いることが出来る。
【0038】
上記モノマーに加えて、更に共重合可能な成分としては、アクリル酸、メタクリル酸等のα,β−不飽和酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和基含有二価カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のα,β−不飽和ニトリル、無水マレイン酸、マレイミド、N−置換マレイミド、グルタル酸無水物等が挙げられ、これらは単独で、あるいは2種以上の単量体を併用して共重合成分として用いることができる。
【0039】
アクリル系樹脂で重量平均分子量が1万以下のものを合成するためには、通常の重合では分子量のコントロールが難しい。このような低分子量のポリマーの重合方法としては、クメンペルオキシドやt−ブチルヒドロペルオキシドのような過酸化物重合開始剤を使用する方法、重合開始剤を通常の重合より多量に使用する方法、重合開始剤の他にメルカプト化合物や四塩化炭素等の連鎖移動剤を使用する方法、重合開始剤の他にベンゾキノンやジニトロベンゼンのような重合停止剤を使用する方法、更に特開2000−128911号又は同2000−344823号公報にあるような一つのチオール基と2級の水酸基とを有する化合物、あるいは、該化合物と有機金属化合物を併用した重合触媒を用いて塊状重合する方法等を挙げることが出来、何れも本発明において好ましく用いられるが、特に、該公報に記載の方法が好ましい。
【0040】
(可塑剤)
本発明においては、光学フィルムに柔軟性を与え、寸法安定性を向上させ、耐湿性を向上させるために可塑剤を用いてもよい。
【0041】
光学フィルム用の可塑剤としては、オクタノール/水分配係数(logP値)が0ないし10である可塑剤が特に好ましく用いられる。化合物のlogP値が10以下であれば、ポリマーとの相溶性が良好で、フィルムの白濁や粉吹きなどの不具合を生じることがなく、またlogP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎることがないのでポリマーの耐水性を悪化させるなどの弊害が生じにくいので、上記範囲内のものを用いることが好ましい。logP値として、更に好ましい範囲は1ないし8であり、特に好ましい範囲は2ないし7である。
【0042】
オクタノール/水分配係数(logP値)の測定は、日本工業規格(JIS)Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。
【0043】
好ましく添加される可塑剤としては、上記の物性の範囲内にある分子量190〜5000程度の低分子〜オリゴマー化合物が挙げられ、例えばリン酸エステル、カルボン酸エステル、ポリオールエステル等が用いられる。
【0044】
リン酸エステルの例には、トリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が含まれる。好ましくは、トリフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェートである。
【0045】
カルボン酸エステルとしては、フタル酸エステル及びクエン酸エステルが代表的である。フタル酸エステルの例には、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジフェニルフタレート、ジエチルヘキシルフタレート等が挙げられる。クエン酸エステルの例には、O−アセチルクエン酸トリエチル、O−アセチルクエン酸トリブチル、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル等が挙げられる。
これらの好ましい可塑剤は、25℃においてTPP(融点約50℃)以外は液体であり、沸点も250℃以上である。
【0046】
その他のカルボン酸エステルの例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、種々のトリメリット酸エステルが含まれる。グリコール酸エステルの例としては、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、メチルフタリルメチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレートなどがある。
【0047】
また、特開平5−194788号、特開昭60−250053号、特開平4−227941号、特開平6−16869号、特開平5−271471号、特開平7−286068号、特開平5−5047号、特開平11−80381号、特開平7−20317号、特開平8−57879号、特開平10−152568号、特開平10−120824号の各公報などに記載されている可塑剤も好ましく用いられる。これらの公報によると可塑剤の例示だけでなくその利用方法あるいはその特性についての好ましい記載が多数あり、本発明においても好ましく用いられるものである。
【0048】
その他の可塑剤としては、特開平11−124445号記載の(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、特開平11−246704号記載のグリセロールエステル類、特開2000−63560号記載のジグリセロールエステル類、特開平11−92574号記載のクエン酸エステル類、特開平11−90946号記載の置換フェニルリン酸エステル類、特開2003−165868号等記載の芳香環とシクロヘキサン環を含有するエステル化合物などが好ましく用いられる。
【0049】
また、分子量1000〜10万の樹脂成分を有する高分子可塑剤も好ましく用いられる。例えば、特開2002−22956号公報に記載のポリエステル及び又はポリエーテル、特開平5−197073号公報に記載のポリエステルエーテル、ポリエステルウレタン又はポリエステル、特開平2−292342号公報に記載のコポリエステルエーテル、特開2002−146044号公報等記載のエポキシ樹脂又はノボラック樹脂等が挙げられる。
また、耐揮発性、ブリードアウト、低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、例えば特開2009−98674号公報に記載の両末端が水酸基であるポリエステルジオールを用いるのが好ましい。また、光学フィルムの平面性や低ヘイズなどの点で優れる可塑剤としては、WO2009/031464号公報に記載の糖エステル誘導体も好ましい。
【0050】
これらの可塑剤は単独若しくは2種類以上を混合して用いてもよい。可塑剤の添加量は各ドープに含まれる熱可塑性樹脂100質量部に対して一般的に2〜120質量部使用することができ、2〜70質量部が好ましく、更に好ましくは2〜30質量部、特に5〜20質量部が好ましい。また、本発明に用いるドープ(A)、(B)のうち隣接する層に共通の可塑剤を用いると、流延時のドープの界面の乱れの発生が少なく、界面の密着が良化したりカールが低減し好ましい。特に、ドープ(A)、(B)が共通の可塑剤を含有することが好ましい。
【0051】
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムには、フィルム自身の耐光性向上、或いは偏光板、液晶表示装置の液晶化合物等の画像表示部材の劣化防止のために、更に紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
【0052】
紫外線吸収剤としては、液晶の劣化防止の点より波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な画像表示性の点より波長400nm以上の可視光の吸収が可及的に少ないものを用いることが好ましい。特に、波長370nmでの透過率が、20%以下であることが望ましく、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。このような紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、前記のような紫外線吸収性基を含有する高分子紫外線吸収化合物等があげられるが、これらに限定されない。紫外線吸収剤は2種以上用いてもよい。
【0053】
本発明において紫外線吸収剤の使用量は、光学フィルムに用いられる熱可塑性樹脂100質量部に対し一般的に0.05〜5.0質量部、好ましくは0.5〜4.0質量部、より好ましくは0.8〜2.5質量部である。
【0054】
本発明の光学フィルムには、主原料となる1種又は2種以上の熱可塑性樹脂とともに、添加剤を含有していてもよい。添加剤の例には、フッ素系界面活性剤(好ましい添加量は熱可塑性樹脂に対して0.001〜1質量%)、剥離剤(0.0001〜1質量%)、劣化防止剤(0.0001〜1質量%)、光学異方性制御剤(0.01〜10質量%)、赤外線吸収剤(0.001〜1質量%)等が含まれる。また、本発明の効果を損なわない範囲で、微量の有機材料、無機材料及びそれらの混合物からなる粒子を分散含有していてもよい。これらの粒子は、製膜時におけるフィルムの搬送性向上を目的として(マット剤として)添加される場合には、粒子の粒径は5〜3000nmであるのが好ましく、添加量は1質量%以下であるのが好ましい。
フィルムの表面に凹凸を与えたりフィルム内部に光散乱性を付与するために粒子を添加することもでき、その場合には、粒子の粒径は1〜20μmであるのが好ましく、添加量は2〜30質量%好ましい。これら粒子屈折率は本発明のポリマーフィルムの屈折率との差が0〜0.5であるのが好ましく、例えば、無機材料の粒子の例には、酸化珪素、酸化アルミニウム、硫酸バリウム等の粒子が含まれる。有機材料の粒子の例には、アクリル系樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂、スチレン系樹脂、メラミン系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂等が含まれる。粒子により光学フィルムに光拡散性を付与する際には、ヘイズの値に制限はないが、後方散乱性が高くなり全光透過率の低下が大きくなり過ぎない範囲に設定することが好ましい。具体的には、ヘイズは1〜60%が好ましく、更に好ましくは3〜50%である。
【0055】
(有機溶媒)
本発明の熱可塑性樹脂を溶解しドープを形成する有機溶媒について記述する。用いる有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒が挙げられ、例えば溶解度パラメーターで17〜22の範囲ものが好ましい。溶解度パラメーターは、例えばJ.Brandrup、E.H等の「PolymerHandbook(4th.edition)」、VII/671〜VII/714に記載の内容のものを表す。低級脂肪族炭化水素の塩化物、低級脂肪族アルコール、炭素原子数3から12までのケトン、炭素原子数3〜12のエステル、炭素原子数3〜12のエーテル、炭素原子数5〜8の脂肪族炭化水素類、炭素数6〜12の芳香族炭化水素類、フルオロアルコール類(例えば、特開平8−143709号公報 段落番号[0020]、同11−60807号公報 段落番号[0037]等に記載の化合物)等が挙げられる。
【0056】
本発明で用いられる溶剤は、単独でも併用でもよいが、良溶剤と貧溶剤を混合して使用することが面状安定性を付与するために好ましく、更に好ましくは、良溶剤と貧溶剤の混合比率は良溶剤が60〜99質量%であり、貧溶剤が40〜1質量%である。本発明において、良溶剤とは使用する樹脂を単独で溶解するもの、貧溶剤とは使用する樹脂を単独で膨潤するか又は溶解しないものをいう。本発明に用いられる良溶剤としては、メチレンクロライド等の有機ハロゲン化合物やジオキソラン類が挙げられる。また、本発明に用いられる貧溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン等が好ましく用いられる。
前記ドープ(A)及び(B)に含有される有機溶媒のうちアルコールの割合が有機溶剤全体の10〜50質量%であることが製膜後の支持体(流延基材)上での乾燥時間を短縮し、早く剥ぎ取って乾燥することができるという理由から好ましく、15〜30質量%であることがより好ましい。
【0057】
光学フィルムを形成する材料は、有機溶媒に10〜60質量%の濃度で溶解していることが好ましく、更に好ましくは10〜50質量%である。セルロースアシレート系樹脂を主成分とする場合には、10〜30質量%溶解していることが好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%である。これらの濃度に調製する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように調製してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。更に、予め高濃度の光透過性基材を形成する材料の溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度の溶液としてもよい。
【0058】
(ドープの調製)
本発明の光学フィルムに用いる熱可塑性樹脂の溶液(ドープ)の調製について、その溶解方法は、室温溶解法、冷却溶解法又は高温溶解方法により実施され、更にはこれらの組合せで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にはセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明の熱可塑性樹脂に対しても、これらの技術を適宜適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記の公技番号2001−1745号の22〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。更に熱可塑性樹脂のドープ溶液は、溶液濃縮、濾過が通常実施され、同様に前記の公技番号2001−1745号の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0059】
(共流延)
本発明の光学フィルムの製造方法においては、前記少なくとも2種のドープ(A)、(B)を流延基材側からこの順番に同時に流延基材上に流延することが好ましい。
【0060】
ドープは、ドラム上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。ドラムの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延及び乾燥方法については、米国特許2336310号、同2367603号、同2492078号、同2492977号、同2492978号、同2607704号、同2739069号、同2739070号、英国特許640731号、同736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。
【0061】
図1はドラムを含む流延設備を示す図である。図1は流延設備101の要部を示す概略図であって、側面からの平面図である。図1ではドラム102を用いている。流延ダイ14からの流延ドープ12は、ドラム102上に形成された流延膜が流延開始位置PSから下方に向かうように、ドラム102の最上部よりやや下方に流延されている。この場合も、ドラム102上の流延開始位置PSにおける接線と流延ダイ14からの流延曲線の接線とができるだけ一致するように、流延開始位置PSを定めることが好ましい。
【0062】
ドラム102は、温度調整機能を有している。流延膜の外側には、複数の凝縮板105が設置されており、凝縮板105同士の隙間の傾斜をつたわって、外部の液受け53に入り、回収タンク56に回収される。ドラム102上を走行した流延膜は、フィルム36として剥ぎ取りローラ37により剥ぎ取られ、次の工程である乾燥設備に送られる。これにより、液だれを防止しながら、流延膜を均一に乾燥し、溶媒を高収率で回収することができる。ただし、ドラム102の回転方向を逆として、流延膜の走行方向が流延開始位置PSから上向きになされた場合にも、流延膜の均一乾燥と、フィルム36の厚みの均一化効果は得られる。
【0063】
ドープは、表面温度が5℃以下のドラム上に流延することが好ましい。流延基材(ドラム)の表面温度は−30〜5℃が好ましく、−10〜2℃がより好ましい。
流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムから剥ぎ取り、更に100℃から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶媒を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
【0064】
本発明では、流延基材としてのドラム上に前記2種以上のドープを流延して製膜する。本発明のフィルムの製造方法としては、上記以外に特に制限はなく公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からドープ溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からドープ溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。
【0065】
本発明の製造方法は、積層体の界面密着及びカールの低減の観点から流延基材側から順に少なくとも2種のドープ(A)、(B)を同時共流延することが好ましい。更に、本発明の製造方法は、前記基材側から順に、支持体側から順に、ドープ(A)、(B)、(A)の順に同時共流延することが好ましい。ここで、一つの積層フィルム中の複数の(A)は、組成が全く同一でも異なっていてもよい。
本発明の目的である支持体離型性、界面密着性、低カールを達成するために、少なくともドープ(A)、(B)中の熱可塑性樹脂の組成は、以下の条件を満たすことが好ましい。ドープ(A)中の熱可塑性樹脂中セルロースアシレート系樹脂の占める割合は、50〜100質量%が好ましく、更に好ましくは70〜100質量%、最も好ましくは80〜100質量%である。またドープ(B)中の熱可塑性樹脂中アクリル系樹脂の占める割合は、30〜100質量%が好ましく、更に好ましくは50〜100質量%、最も好ましくは70〜100質量%である。
【0066】
本発明で、ドープ(B)の固形分濃度(ドープ乾燥後、固体となる成分の濃度)はその分子量に応じて適切に選ばれるものであるが、溶液流延製膜を行うのに適切な粘度のドープを得るためには、固形分濃度が16〜50質量%であることが好ましい。有機溶剤の含有量を少なくでき、乾燥時間の短縮ができるという理由からは、固形分濃度が30〜50%であることがより好ましい。
一方、共流延製膜にて良好な面状のフィルムを得るためには、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内であることが好ましく、5質量%以内であることがより好ましい。
特に、ドープ(B)において、乾燥後固体となる成分の和の濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の濃度の差が10質量%以内であることが好ましい。
【0067】
ドープ(A)から形成される層の厚みをLA、ドープ(B)から形成される層の溶媒揮発後の厚みをLBとしたときに、LA<LBの関係を満たすことが好ましい。
また、絶対膜厚としては、LAは1層当り0.5〜20μmが好ましく、更に好ましくは0.5〜15μmであり、最も好ましくは1〜10μmである。LBは1層当り10〜200μmが好ましく、更に好ましくは15〜100μmであり、最も好ましくは20〜60μmである。
また、積層体としての光学フィルム全体の膜厚は、11〜240μmが好ましく、更に好ましくは15〜150μmであり、最も好ましくは20〜100μmであり、特に好ましくは、20〜50μmである。
この関係を満たすことで、流延時の面状が良好で、得られる光学フィルムの界面密着性、カール性、吸水量低減などを満足することができる。
【0068】
共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるドープ溶液を共流延して、積層フィルムを作製することもできる。例えば、マット剤は、支持体面側の表層に多く、又は支持体面側の表層のみに入れることが出来る。可塑剤、紫外線吸収剤は表層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層と表層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えば表層に低揮発性の可塑剤及び/又は紫外線吸収剤を含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、流延時のドープの粘度も表層とコア層で異なっていても良く、表層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度が表層の粘度より小さくてもよい。
【0069】
本発明では、多層流延したドープを乾燥させてから、支持体から剥離することが好ましい。
本発明では、ドープが流延基材上に流延され剥離される時間、すなわち、流延基材上を搬送される時間が60秒以内であることが好ましく、30秒以内であることがより好ましい。
【0070】
(乾燥工程)
ドラム上で乾燥され、剥離されたウェブの乾燥方法について述べる。ドラムが1周する直前の剥離位置で剥離されたウェブは、千鳥状に配置されたロ−ル群に交互に通して搬送する方法や剥離されたウェブの両端をクリップ等で把持させて非接触的に搬送する方法などにより搬送される。乾燥は、搬送中のウェブ(フィルム)両面に所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエ−ブなどの加熱手段などを用いる方法によって行われる。急速な乾燥は、形成されるフィルムの平面性を損なう恐れがあるので、乾燥の初期段階では、溶媒が発泡しない程度の温度で乾燥し、乾燥が進んでから高温で乾燥を行うのが好ましい。支持体から剥離した後の乾燥工程では、溶媒の蒸発によってフィルムは長手方向あるいは幅方向に収縮しようとする。収縮は、高温度で乾燥するほど大きくなる。この収縮を可能な限り抑制しながら乾燥することが、でき上がったフィルムの平面性を良好にする上で好ましい。この点から、例えば、特開昭62−46625号公報に示されているように、乾燥の全工程あるいは一部の工程を幅方向にクリップあるいはピンでウェブの幅両端を幅保持しつつ行う方法(テンタ−方式)が好ましい。上記乾燥工程における乾燥温度は、100〜145℃であることが好ましい。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なるが、使用溶媒の種類、組合せに応じて適宜選べばよい。
【0071】
(延伸)
本発明の製造方法は、前記製膜工程のあとに、製膜した前記積層フィルムを延伸する工程を含んでもよい。
本発明のフィルムの製造では、支持体から剥離したウェブ(フィルム)を、ウェブ中の残留溶媒量が120質量%未満の時に延伸することが好ましい。
【0072】
なお、残留溶媒量は下記の式で表せる。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
ここで、Mはウェブの任意時点での質量、NはMを測定したウェブを110℃で3時間乾燥させた時の質量である。ウェブ中の残留溶媒量が多すぎると延伸の効果が得られず、また、少なすぎると延伸が著しく困難となり、ウェブの破断が発生してしまう場合がある。ウェブ中の残留溶媒量の更に好ましい範囲は10質量%〜50質量%、特に12質量%〜35質量%が最も好ましい。また、延伸倍率が小さすぎると十分な位相差が得られず、大きすぎると延伸が困難となり破断が発生してしまう場合がある。
【0073】
延伸倍率は、一般的に5%〜100%で行うことができ、15%〜40%にすることも好ましい。ここで、一方の方向に対して5%〜100%延伸するとは、フィルムを支持しているクリップやピンの間隔を延伸前の間隔に対して1.05〜2.00倍の範囲にすることを意味している。
また、延伸はフィルム搬送方向(縦方向)に行っても、フィルム搬送方向に直交する方向(横方向)に行っても、両方向に行ってもよい。
【0074】
本発明では、溶液流延製膜したものは、特定の範囲の残留溶媒量であれば高温に加熱しなくても延伸可能であるが、乾燥と延伸を兼ねると、工程が短くてすむので好ましい。本発明では、前記延伸工程における延伸温度は、110〜190℃であることが好ましく、120〜150℃であることがより好ましい。延伸温度が120℃以上であることが低ヘイズ化の観点から好ましく、150℃以下であることが光学発現性を高める観点(薄膜化の観点)から好ましい。
一方、ウェブの温度が高すぎると、可塑剤が揮散するので、可塑剤として揮散しやすい低分子可塑剤を用いる場合は、室温(15℃)〜145℃以下の範囲が好ましい。
【0075】
また、互いに直交する2軸方向に延伸することは、フィルムの光学発現性を高める観点、特にフィルムのRth(レターデーション)の値を高める観点から、有効な方法である。
【0076】
本発明では、延伸工程において同時に2軸方向に延伸してもよいし、逐次に2軸方向に延伸してもよい。逐次に2軸方向に延伸する場合は、それぞれの方向における延伸ごとに延伸温度を変更してもよい。
同時2軸延伸する場合、延伸温度は110℃〜190℃で行った場合でも本発明のフィルムを得ることができ、同時2軸延伸する場合の延伸温度は、120℃〜150℃であることがより好ましく、130℃〜150℃であることが特に好ましい。また、同時2軸延伸することで、ヘイズはある程度高くなるものの、光学発現性を更に高めることができる。
一方、逐次2軸延伸する場合、先にフィルム搬送方向に平行な方向に延伸し、その次にフィルム搬送方向に直交する方向に延伸することが好ましい。前記逐次延伸を行う延伸温度のより好ましい範囲は上記同時2軸延伸を行う延伸温度範囲と同様である。
【0077】
(熱処理工程)
本発明のフィルムの製造方法は乾燥工程終了後に熱処理工程を設けることが好ましい。当該熱処理工程における熱処理は乾燥工程終了後に行われればよく、延伸/乾燥工程後直ちに行ってよいし、あるいは乾燥工程終了後に後述する方法で一旦巻き取った後に、熱処理工程だけを別途設けてもよい。本発明においては乾燥工程終了後に一旦、室温〜100℃以下まで冷却した後において改めて前記熱処理工程を設けることが好ましい。これは熱寸法安定性のより優れたフィルムを得られる点で有利であるからである。同様の理由で熱処理工程直前において残留溶媒量が2質量%未満、好ましくは0.4質量%未満まで乾燥されていることが好ましい。
【0078】
熱処理は、搬送中のフィルムに所定の温度の風を当てる方法やマイクロウエーブなどの加熱手段などを用いる方法により行われる。
熱処理は150〜200℃の温度で行うことが好ましく、160〜180℃の温度で行うことが更に好ましい。また、熱処理は1〜20分間行うことが好ましく、5〜10分間行うことが更に好ましい。
【0079】
(加熱水蒸気処理)
また、延伸処理されたフィルムは、その後、100℃以上に加熱された水蒸気を吹き付けられる工程を経て製造されてもよい。この水蒸気の吹付け工程を経ることにより、製造される光学フィルムの残留応力が緩和されて、寸度変化が小さくなるので好ましい。水蒸気の温度は100℃以上であれば特に制限はないが、フィルムの耐熱性などを考慮すると、水蒸気の温度は、200℃以下となる。
【0080】
<光学フィルム>
本発明に係る光学フィルムは前記本発明に係る製造方法により製造された光学フィルムである。
【0081】
<光学フィルム上への付加的な層の積層>
本発明の光学フィルムは、その上に更に0.1μm以上15μm以下の厚みの硬化性樹脂層を設けることができる。また、本発明の光学フィルムは、該硬化性樹脂層の上に、帯電防止層、高屈折率層、低屈折率層等の光学機能層を設けることもできる。また、硬化性樹脂層が帯電防止層や高屈折率層を兼ねることもできる。
硬化性樹脂層は、電離放射線硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。例えば、電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーを含む塗布組成物を光透過性基材上に塗布し、多官能モノマーや多官能オリゴマーを架橋反応、又は、重合反応させることにより形成することができる。
電離放射線硬化性の多官能モノマーや多官能オリゴマーの官能基としては、光、電子線、放射線重合性のものが好ましく、中でも光重合性官能基が好ましい。
光重合性官能基としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等の不飽和の重合性官能基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
また、硬化性樹脂層には、公知のレベリング剤、防汚剤、帯電防止剤、屈折率調節用無機フィラー、散乱粒子、チキソトロピー剤等の添加剤を用いることができる。
【0082】
また、硬化性樹脂層を設けた光学フィルムの強度は、鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることが更に好ましい。
【0083】
(表面処理)
本発明の光学フィルムを、偏光板の保護フィルムとして使用し、偏光膜と接着させる場合には、偏光膜との接着性の観点から、酸処理、アルカリ処理、プラズマ処理、コロナ処理等の表面を親水的にする処理を実施することが特に好ましい。
【0084】
<偏光板>
[偏光板の構成]
本発明の光学フィルムは、偏光膜とその少なくとも一方の側に配置された保護フィルムとを有する偏光板において、その保護フィルムとして使用することができる。
【0085】
また偏光板の構成として、偏光膜の両面に保護フィルムを配置する形態においては、一方の保護フィルム又は、位相差フィルムとして用いることもできる。
【0086】
[偏光膜]
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜及び染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造することができる。
【0087】
また偏光膜としては、公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作製される。
すなわち、連続的に供給されるポリビニルアルコール系フィルムなどのポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸して、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内で、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20〜70゜傾斜するように、フィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
【0088】
<本発明の使用形態>
〔画像表示装置〕
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や陰極管表示装置(CRT)のような画像表示装置に好適に用いられる。
【0089】
[液晶表示装置]
前記光学フィルム、及び偏光板は、液晶表示装置等の画像表示装置に有利に用いることができ、バックライト側の最表層に用いることが好ましい。
【0090】
一般的に、液晶表示装置は、液晶セル及びその両側に配置された2枚の偏光板を有し、液晶セルは、2枚の電極基板の間に液晶を担持している。更に、光学異方性層が、液晶セルと一方の偏光板との間に一枚配置されるか、又は液晶セルと双方の偏光板との間に2枚配置されることもある。
【0091】
液晶セルは、TNモード、VAモード、OCBモード、IPSモード又はECBモードであることが好ましい。
【実施例】
【0092】
[光学フィルム用ドープの作製]
表1に示したセルロースアシレート系樹脂、及び下記材料を使用して、表2に示す組成でドープを作製した。
【0093】
【表1】

【0094】
・アクリル1:アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、重量平均分子量48万、分子中のメタクリル酸メチル由来のモノマー単位の割合90質量%以上99質量%以下)
・アクリル2:アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、重量平均分子量28万、分子中のメタクリル酸メチル由来のモノマー単位の割合90質量%以上99質量%以下)
・アクリル3:アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、重量平均分子量10万、分子中のメタクリル酸メチル由来のモノマー単位の割合90質量%以上99質量%以下)
・アクリル4:アクリル系樹脂(メタクリル酸メチル−アクリル酸メチル共重合体、重量平均分子量4万、分子中のメタクリル酸メチル由来のモノマー単位の割合90質量%以上99質量%以下)
・添加剤A1:エチレングリコール/アジピン酸との縮合物(数平均分子量1000、水酸基価113)
・添加剤A2/A3としてはトリフェニルホスフェート/ビフェニルジフェニルホスフェート 2:1(質量比)混合物を用いた。
【0095】
【表2】

【0096】
<製膜条件>
表2に記載のドープを用いて、ドラム流延方式にて流延製膜を行い、表3の構成となるように光学フィルムを作製した。具体的には、3層共流延が可能な流延ギーサーを通して、表3に記載した温度に冷却したドラム支持体上に、表3に記載の層構成となるように流延した。このとき、ドラム支持体面側から順に層1、層2、層3となるように流延した。膜厚構成は、各ドープ流量から均一厚みの膜が形成されたと仮定したときの換算膜厚である。ドラム支持体上にある間、ドープを40℃の乾燥風により乾燥してフィルムを形成した後に剥ぎ取り、フィルム両端をピンで固定し、その間を同一の間隔で保ちつつ105℃の乾燥風で更に乾燥した。各構成のフィルムについて、それぞれ流延速度を段階的に変更し、剥げ残りなどが発生することなく剥ぎ取ることのできる最も速い速度で製膜を行った。この時の流延から剥ぎ取りまでの時間を、乾燥時間として表3に記載した。
【0097】
<ヘイズ>
フィルム試料40mm×80mmを準備し、25℃,60%RHの環境下、ヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)により、JIS K−6714に従って全ヘイズ値を測定した。
【0098】
<スジ状故障レベル評価>
得られたフィルムの平面性について、蛍光灯下で目視観察を行い、スジ状故障レベルを3段階で評価した。評価結果を表2に記載した。
○:スジ状故障が全く見えない
△:スジ状故障がわずかに見える箇所が存在する
×:スジ状故障が明確に視認できる箇所が存在する
【0099】
<表示ムラ評価>
(偏光板の作製)
上記のとおり作製したフィルムを、1.5規定の水酸化ナトリウム水溶液に、55℃で2分間浸漬し、室温の水洗浴槽中で洗浄し、30℃で0.05規定の硫酸を用いて中和した。再度、室温の水洗浴槽中で洗浄し、更に100℃の温風で乾燥した。
厚さ80μmのロール状ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液中で連続して5倍に延伸し、乾燥して偏光膜を得た。ポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、アルカリけん化処理した実施例1のフィルムを1枚と、先述と同様にアルカリけん化処理した市販のセルロースアセテートフィルム(フジタック TD60UL;富士フイルム(株)製)を1枚用意して、偏光膜を間にして貼り合わせ、両面がセルロースアシレートフィルムよって保護された偏光板を得た。この際、両側のセルロースアシレートフィルムの遅相軸が偏光膜の透過軸と平行になるように貼り付けた。
実施例2〜15及び比較例1〜3のフィルムについても同様に処理してそれぞれ偏光板を作製した。
いずれも延伸したポリビニルアルコールとの貼合性は十分であり、優れた偏光板加工適性を有していた。
市販のIPS−TVの偏光板を注意して剥がし、上記のとおり作製した偏光板を粘着剤を介しIPSセルの両側に設置した。ここで、実施例1〜15及び比較例1〜3のフィルムがそれぞれIPSセルと偏光子との間に設置されるようにした。
以上のようにして作製した液晶表示装置の表示ムラについて、装置正面から観察した場合の黒表示時の輝度ムラを観察し、以下の基準で評価した。
◎ : 照度100lxの環境下でムラがほとんど視認されない
○ : 照度100lxの環境下で淡いムラが視認される
△ : 照度100lxの環境下で明確なムラが視認される
× : 照度300lxの環境下で明確なムラが視認される
評価結果を下記表3に示す。
【0100】
【表3】

【符号の説明】
【0101】
101 流延設備
102 ドラム
14 流延ダイ
12 ドープ
PS 流延開始位置
105 凝縮板
53 液受け
56 回収タンク
36 フィルム
37 剥ぎ取りローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と有機溶媒を含有する少なくとも2種のドープ(A)、及び(B)を流延基材側から(A)−(B)−(A)の順番に同時又は逐次に流延基材上に流延し、溶媒を除去し光学フィルムを製造する方法であって、流延基材表面の温度が5℃以下であり、ドープ(A)はアシル基の置換度が1.2以上3.0以下であるセルロースアシレート系樹脂を含有し、ドープ(B)はアクリル系樹脂を含有する光学フィルムの製造方法。
【請求項2】
ドープ(B)において、アクリル系樹脂の重量平均分子量が80000以上300000以下である請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項3】
ドープ(B)において、アクリル系樹脂の重量平均分子量が250000以上600000以下である請求項1に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
ドープ(A)、及び(B)に含有される有機溶媒に含まれるアルコールの割合が、有機溶媒全体の10質量%以上50質量%以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項5】
ドープが流延基材上を搬送される時間が60秒以内である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項6】
ドープ(B)の固形分濃度が16〜50質量%である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
ドープ(B)の固形分濃度が16〜30質量%であり、かつ、ドープ(B)とドープ(A)の固形分濃度の差が10質量%以内である請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法で製造された光学フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−236259(P2011−236259A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105925(P2010−105925)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】