説明

光学フィルム及びタッチパネル

【課題】ニュートンリングの発生及びギラツキを抑制し、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制され、視認性に優れたタッチパネル及びそのようなタッチパネルに適用可能な光学フィルムを提供すること。
【解決手段】光透過性基材の一面側に、少なくとも1層のハードコート層(A)が設けられている光学フィルムであって、当該ハードコート層(A)の当該光透過性基材とは反対側の面の、JIS B0601(1994)に規定する算術平均粗さ(Ra)が0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在することを特徴とする、光学フィルム。上記光学フィルムのハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面に、透明導電膜が設けられた光学フィルムの当該透明導電膜側に、さらに第二の透明導電膜が設けられていることを特徴とする、タッチパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ディスプレイ(LCD)、陰極管表示装置(CRT)、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ(有機EL)又はプラズマディスプレイ(PDP)等のディスプレイ(画像表示装置)の前面に設置される光学フィルム及びそれを用いたタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のようなディスプレイにおいては、ディスプレイの画像表示面に取扱い時に傷がつかないように硬度を付与することが要求される。これに対して、基材フィルム上にハードコート(HC)層を設けた光学フィルムを利用することにより、ディスプレイの画像表示面に硬度を付与することが一般になされている(例えば、特許文献1)。
【0003】
また、一般的なタッチパネルは、例えば、図1に示すように、2枚の光透過性基材10及び11それぞれに透明導電膜20及び21(以下、ディスプレイ側の透明導電膜21を透明導電膜20と区別するため「第二の透明導電膜」ということがある。)であるスズドープ酸化インジウム(ITO)が設けられ、スペーサー30を介して、透明導電膜20及び21が対向するように配置されている。また、光透過性基材10の入力操作側の面には硬度及び耐擦傷性を付与するためのハードコート層40が設けられている。光透過性基材11の透明導電膜21とは反対側にはディスプレイ80が配置されている。そして、指やスタイラスペン70等によってタッチパネル150のスペーサー30よりも入力操作側に位置するハードコート層40、光透過性基材10及び透明導電膜20を押圧して情報の入力操作を行い、押圧された部分の入力操作側の透明導電膜20とディスプレイ80側の第二の透明導電膜21が接触し、位置情報が検知される。
このとき、入力操作によって接触した透明導電膜部分及びその近傍において、透明導電膜20のディスプレイ側の面50において反射した光と第二の透明導電膜21の入力操作側の面60で反射した光が干渉し合うことによりニュートンリングと呼ばれる干渉縞が生じ、ディスプレイの視認性を低下させてしまう問題があった。
【0004】
この問題に対して、特許文献2では、ニュートンリング発生防止のために、算術平均粗さ(Ra)が0.07〜0.3μm、最大高さ(Ry)が1.5〜2.0μmであるニュートンリング防止層上にいずれか一方または両方の導電性膜を設けたタッチパネルを提案している。
【0005】
しかし、特許文献2で提案されているようなRaの大きいタッチパネルでは、ディスプレイ前面(入力操作側)に設けたとき、ギラツキが生じ、そのギラツキによって視認性が低下する問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−165040号公報
【特許文献2】特開2007−265100号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、ニュートンリングの発生及びギラツキを抑制し、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制でき、視認性に優れたタッチパネル及びそのようなタッチパネルに適用可能な光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討した結果、図1の基材フィルム10に代えて、基材フィルムの一面側に算術平均粗さ(Ra)0.025〜0.05μm、且つ、当該面の一定領域に0.3〜3μmの凸部を10〜250個形成したハードコート層を設けた光学フィルムを用い、当該ハードコート層のその特定形状を有する面上に透明導電膜を設けることで、ニュートンリングの発生及びギラツキを抑制し、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制でき、視認性に優れたタッチパネルが得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明に係る光学フィルムは、光透過性基材の一面側に、少なくとも1層のハードコート層(A)が設けられている光学フィルムであって、
当該ハードコート層(A)の当該光透過性基材とは反対側の面の、JIS B0601(1994)に規定する算術平均粗さ(Ra)が0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在することを特徴とする。
【0010】
ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面に上記算術平均粗さ及び凸部を形成することにより、ニュートンリングの発生とギラツキが抑制される。
【0011】
本発明に係る光学フィルムにおいては、前記領域を均等に100分割し、100個のマスとした際、前記凸部が含まれるマスの当該凸部の存在数の平均値が2.5個未満であることが、ニュートンリングの発生とギラツキの抑制効果をより高める点から好ましい。
【0012】
本発明に係る光学フィルムにおいては、JIS K7105(2006)に準拠した透過鮮明度が180〜310であることが、光学フィルムの透過光の視認性をより高める点から好ましい。
【0013】
本発明に係る光学フィルムにおいては、前記ハードコート層(A)は、バインダー成分100質量部に対して粒子0.05〜1.5質量部を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、ハードコート層(A)において、前記粒子の平均粒径が1.5〜8μmであり、且つ、前記粒子と硬化後のバインダー成分の屈折率差が0.07以内であることが好ましい。
【0014】
本発明に係る光学フィルムにおいては、前記ハードコート層(A)の前記光透過性基材とは反対側の面に、透明導電膜が設けられていることがタッチパネル用途に好適に用いることができるため好ましい。
【0015】
本発明に係るタッチパネルは、上記ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面に、透明導電膜が設けられた光学フィルムの当該透明導電膜側に、さらに第二の透明導電膜が設けられていることを特徴とする。
【0016】
ハードコート層(A)の上記特定の算術平均粗さと凸部を有する面側に透明導電膜が設けられていることにより、当該透明導電膜と第二の透明導電膜が接してもニュートンリングの発生とギラツキが抑制され、視認性に優れたタッチパネルとなる。
【0017】
本発明に係るタッチパネルの好適な実施形態では、液晶セルの一面側に、上記タッチパネルの第二の透明導電膜側が液晶セル側に位置するように当該タッチパネルが設けられており、且つ、前記光透過性基材のハードコート層(A)とは反対側の面に偏光板が設けられている構成とすることも可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るタッチパネルは、ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面が上記特定の算術平均粗さと凸部を有することにより、当該ハードコート層(A)の上記特定の算術平均粗さと凸部を有する面側に設けられた透明導電膜と、当該透明導電膜と対向するように設けられた第二の透明導電膜が接してもニュートンリングの発生とギラツキが抑制され、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制でき、視認性に優れたタッチパネルとなる。また、本発明に係る光学フィルムは、そのようなタッチパネルに容易に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来のタッチパネルの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図2】本発明に係る光学フィルムの構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図3】本発明に係る光学フィルムの構成の他の一例を模式的に示した断面図である。
【図4】本発明に係る光学フィルムの構成の他の一例を模式的に示した断面図である。
【図5】本発明に係る光学フィルムの構成の他の一例を模式的に示した断面図である。
【図6】本発明に係るタッチパネルの層構成の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
【図7】本発明に係るタッチパネルの層構成の他の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
【図8】本発明に係るタッチパネルの層構成の他の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
【図9】本発明に係るタッチパネルの一態様であるインナータッチパネルの層構成の一例を模式的に示した断面図である。
【図10】ギラツキを目視観察する際の視線の動きの例を模式的に示した図である。
【図11】凸部の頂点を中心に22.5°毎に8個の断面を切り出す例を模式的に示した図である。
【図12】凸部の断面において高さhを求めた例を模式的に示した図である。
【図13】粒子とバインダー成分の屈折率差測定のサンプル調製を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光学フィルム及びタッチパネルについて順に説明する。
なお、フィルムとシートのJIS−K6900での定義では、シートとは薄く一般にその厚さが長さと幅の割りには小さい平らな製品をいい、フィルムとは長さ及び幅に比べて厚さが極めて小さく、最大厚さが任意に限定されている薄い平らな製品で、通例、ロールの形で供給されるものをいう。従って、シートの中でも厚さの特に薄いものがフィルムであるといえるが、シートとフィルムの境界は定かではなく、明確に区別しにくいので、本発明では、厚みの厚いもの及び薄いものの両方を含めて、「フィルム」と定義する。
本発明において、「ハードコート層」とは、JIS K5600−5−4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(4.9N荷重)で、「H」以上の硬度を示すものをいう。
【0021】
(光学フィルム)
本発明に係る光学フィルムは、光透過性基材の一面側に、少なくとも1層のハードコート層(A)が設けられている光学フィルムであって、
当該ハードコート層(A)の当該光透過性基材とは反対側の面の、JIS B0601(1994)に規定する算術平均粗さ(Ra)が0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在することを特徴とする。
【0022】
図2は、本発明に係る光学フィルムの層構成の一例を模式的に示した断面図である。
光透過性基材10の一面側に、ハードコート層(A)90が設けられており、ハードコート層(A)90の光透過性基材10とは反対側の面の算術平均粗さ(Ra)は0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在する。
【0023】
図3は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した断面図である。
図2の光学フィルム2のハードコート層(A)90上にさらに透明導電膜20が設けられている。
【0024】
図4は、本発明に係る光学フィルムの層構成の他の一例を模式的に示した断面図である。
光透過性基材10の一面側には図3と同様に特定の算術平均粗さと凸部を有するハードコート層(A)90と透明導電膜20が設けられている。そして光透過性基材10の他方の面には第二のハードコート層41が設けられている。
【0025】
本発明に係る光学フィルムの透過鮮明度は、要求される硬度等の性能に応じて適宜調節すれば良いが、180〜310であることが、光学フィルムの透過光の視認性をより高める点から好ましい。透過鮮明度が180未満の場合、視認性が低下し、かつギラツキが発生する恐れがある。また、透過鮮明度が310より大きい場合、ニュートンリング発生を抑制する効果が低くなる恐れがある。すなわち、透過鮮明度が180〜310であれば、視認性が良く、ギラツキを抑制できて、かつ、ニュートンリング発生を抑制する効果が高い。
なお、本発明において、透過鮮明度は、JIS K7105(2006)の像鮮明度の測定に準拠し、写像性測定器(スガ試験機(株)製の商品名ICM−1PD)を用いて、4種類の光学くし(0.125mm、0.5mm、1mm及び2mm)で測定した数値の合計を意味する。数値が大きいほど透過鮮明度が高く、400が最高値である。この4種類の光学くしの数値を合計した値が、理由は不明であるが、上記したように視認性と相関性がある。
【0026】
本発明に係る光学フィルムは、ヘイズが3%以下であることが好ましい。3%以下であることにより、タッチパネルに用いた際の画像表示面の視認性が良好となる。光学フィルムのヘイズは、0.1〜1.0%であることがより好ましい。
なお、本発明においてヘイズは、JIS K−7136(2000)に準拠し、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(商品名HM−150)を用いて測定した値である。
【0027】
以下、本発明の光学フィルムの必須構成要素である光透過性基材及びハードコート層(A)を説明し、次いで、任意に設けることができる透明導電膜及び第二のハードコート層等のその他の構成要素を説明する。
【0028】
(光透過性基材)
本発明の光透過性基材は、光学フィルムの光透過性基材として用い得る物性を満たすものであれば特に限定されることはなく、従来公知の光学フィルムやタッチパネルに用いられているトリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)又はシクロオレフィンポリマー(COP)等の樹脂を適宜選択して用いることができる。また、光透過性基材は、ガラスでも良い。
可視光域380〜780nmにおける光透過性基材の平均光透過率は、50%以上が好ましく、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。なお、光透過率の測定は、紫外可視分光光度計(例えば、(株)島津製作所製のUV−3100PC)を用い、室温、大気中で測定した値を用いる。
また、光透過性基材には、けん化処理やプライマー層を設ける等の表面処理が施されていても良い。また、光透過性基材には帯電防止剤等の添加剤が添加されていても良い。
光透過性基材の厚さは特に限定されず、通常30〜250μmであり、好ましくは40〜200μmである。
【0029】
本発明に係る光学フィルムはタッチパネル用途に好適に用いられる。タッチパネルの態様によっては、後述するようにタッチパネル内に液晶セル及び偏光板を含むインナータッチパネルとすることも可能である。
このとき、入力操作側の偏光板と接する光透過性基材は、位相差フィルムとしての機能も有するCOPを用いることが層構成の簡略化及び製造コストの低減の点から好ましい。
このようなCOPとしては、日本ゼオン(株)製のゼオノアシリーズ(商品名ZF16及びZF14(等方性膜)、ZM16(λ/4膜))等が好ましく用いられる。
【0030】
(ハードコート層(A))
本発明の光学フィルムに必須のハードコート層(A)は、ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面の、JIS B0601(1994)に規定する算術平均粗さ(Ra)が0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在する。
ハードコート層(A)がこの上記特定の算術平均粗さと凸部を有することにより、図3及び4のように、当該ハードコート層(A)に設けられる透明導電膜にも同様の形状が付与され、後述するタッチパネルに用いた際に、透明導電膜と第二の透明導電膜が接触してもニュートンリングの発生とギラツキが抑制され、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制でき、優れた視認性が得られる。
算術平均粗さ(Ra)が、0.025μm未満であると、タッチパネルに用いた際に十分にニュートンリングの発生を抑制できない。また、当該Raが0.05μmを超えると、タッチパネルに用いた際にギラツキが大きくなり視認性が低下してしまう。
当該Raは、0.030〜0.045μmであることが、ニュートンリングの発生及びギラツキをより抑制する点、透過鮮明度を高くする点、ヘイズを最適な範囲に抑制する点から好ましい。
算術平均粗さ(Ra)は、(株)小坂研究所製の商品名「SE−3400」を用いることにより求めることができる。
なお、光学フィルムをタッチパネルに用いた際のギラツキとは、以下のことをいう。タッチパネル画面で、明室において白色光を出したとき、パネルから30cm離れた地点より、まず真正面から観察する。そして、図10のように、タッチパネル9上への視点はそのままにして、真正面に対して、右、左、右上、左下等、様々な45度斜め方向に連続的に体をずらして、視線を変えながら連続的に観察する。視線を変えながら連続的に観察すると、パネル面のところどころで、特異的にきらきらと強く明るく光って見える部分がある。このように目視観察すると、ある特異点において輝度が上昇して見えることをギラツキという。ギラツキの原因としては、光学フィルムの凹凸形状のどこかがきっかけとなっていることが推測される。
【0031】
ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面の1.08mm四方の領域には、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在する。なお、当該1.08mm四方の領域における凸部の個数及び高さは、非接触表面形状測定機(例えば、Zygo社製の干渉計シリーズ商品名「New View 6000」)を用いることにより求めることができる。
凸部の個数は、当該1.08mm四方の領域における凸部の頂点の数を数えることにより求めることができる。
また、凸部の高さとしては、図11のように、凸部の頂点を中心に22.5°毎に8個の断面を切り出し、図12のように、各断面において(頂点−一番低い谷部)=高さhを求め、当該高さhの平均値を算出して求めることができる。
当該高さ0.3〜3μmの凸部は、1.08mm四方の領域に35〜210個存在することが、ニュートンリングの発現防止と、ギラツキ発生抑制とを両立させる観点から好ましい。また、透過鮮明度やヘイズも好ましい状態にできる。
【0032】
また、当該領域を均等に100分割し、100個のマスとした際、当該凸部が含まれるマスの当該凸部の存在数の平均値が2.5個未満であることが、タッチパネルに用いた際にニュートンリングの発生とギラツキの抑制効果をより高める点から好ましい。また、極端に凸部の凝集した箇所(マス)がないことが、ギラツキを抑制し、外観を良好に保つことができる点から好ましい。つまり、ニュートンリングを防止するために、ある程度の凸部の存在が好ましく、かつ、ギラツキを防止するために、領域内でその凸部は特定部分に集中せず、全体面にまばらに、ランダムに存在しているのが好ましい。
なお、凸部の存在数の平均値において、「平均値」とは相加平均を意味する。
1マスあたりの凸部の存在数の平均値の計算方法は、1.08mm四方の領域に存在する高さ0.3〜3μmの凸部の個数を、高さ0.3〜3μmの凸部を含むマスの個数で除して求める。例えば、100個のマス中、高さが0.3〜3μmの凸部を含むマスが90個あり、その凸部の個数が180個であるとした場合、凸部の存在数の平均値は、180÷90=2より、2個となる。
【0033】
また、ハードコート層(A)は光透過性基材よりも硬度及び耐擦傷性に優れるため、図1のように光透過性基材のディスプレイ側にハードコート層(A)を設けない場合に比べて、傷による光学フィルムの透過光の視認性の低下が抑えられる。
【0034】
当該ハードコート層(A)の積層膜厚は、特に限定されず、ハードコート層の硬度を達成し、且つ、ハードコート層(A)の当該光透過性基材とは反対側の面が上記特定の算術平均粗さと凸部を有するように適宜調整されれば良い。当該ハードコート層(A)の積層膜厚は、通常、2〜13μmであることが好ましく、更に2.5〜8.5μmであることが好ましい。なお、積層膜厚は、レーザー顕微鏡(例えば、ライカ製、共焦点レーザー顕微鏡、型名 TCS SP)にて非破壊測定できる。積層膜厚は、凸部のない箇所の紫外線硬化樹脂表面から基材表面までの距離を測定することにより求める。1つの顕微鏡観察画面において任意の3点を測定し、これを3画面分実施し、合計9点の測定値の平均値を積層膜厚とする。
【0035】
以下、硬化してハードコート層(A)を形成するハードコート層用硬化性樹脂組成物(以下、単に「HC層用組成物」ということがある。)を説明する。
【0036】
(ハードコート層用硬化性樹脂組成物)
HC層用組成物は、少なくともHC層表面に上述の算術平均粗さと凸部を形成するための粒子と光硬化性を有するバインダー成分を含む。
以下、必須成分であるこの粒子とバインダー成分及び任意成分である溶剤、重合開始剤、帯電防止剤、レベリング剤及び硬度付与のための微粒子等について説明する。
【0037】
(粒子)
粒子としては、従来公知の防眩フィルム等に用いられている防眩性粒子を用いることができる。
粒子としては、有機系及び無機系の粒子のいずれも用いることができる。
無機系粒子としては、例えば、珪素、アルミニウム、亜鉛、チタン、ジルコニウム、イットリウム、インジウム、アンチモン、錫、タングステンの中から選ばれる少なくとも1種の金属元素を含有する酸化物が挙げられる。無機系粒子で好ましいものは、酸化珪素(シリカ)粒子であり、形状および結晶状態によらず用いることができる。形状は、球状よりも無定形であることが好ましい。無定形であることで、添加量が少量でも好ましい凹凸形状が得られるからである。また、粒子としては、特許文献1に記載された、少なくとも表面の一部に有機成分が被覆され当該有機成分により導入された反応性官能基を表面に有する無機微粒子(C)も、当該無機微粒子(C)と後述するバインダー成分が架橋反応し、密着性が高まるため好ましく用いられる。
【0038】
また、有機系粒子としては、例えば、特開2009−116336号公報に開示されているメラミンビーズ、ポリスチレンビーズ及びアクリルビーズ等の有機系粒子が挙げられる。
粒子の形状は、HC層(A)表面に上記形状を付与することができるものであれば限定されず、真球状、略球状、針状及び回転楕円体等のいずれを用いても良い。好ましくは、真球状又は略球状である。
【0039】
樹脂組成物において、粒子の粒径は、HC層(A)の厚さや粒子の形状等に応じて適宜調節して用いればよいが、平均粒径が0.5〜8.0μmであることが好ましく、1.5〜8.0μmであることが好ましい。また、硬化後のHC層(A)中の粒子の平均粒径は、1.5〜8.0μmであることが好ましい。当該平均粒径が1.5μm未満である場合には、ニュートンリング発生を抑制する効果が低くなる恐れがある。また、当該平均粒径が8.0μmよりも大きくなる場合には、透過鮮明度が低下し、かつヘイズも上昇することになり、視認性が低下する恐れがある。
また、平均粒径は、形成しようとするHC層の積層膜厚に対して、90〜120%であることが好ましい。この範囲であれば、HC層(A)表面に上記特定の算術平均粗さと凸部を形成し易くなる。平均粒径が形成しようとするHC層の厚さに対して90%未満の場合には、粒子がHC層に埋没してしまうため、ニュートンリング発生を抑制する効果が低くなる恐れがある。また、平均粒径が形成しようとするHC層の厚さに対して120%を超える場合には、透過鮮明度が低下し、かつヘイズも上昇することになり、視認性が低下する恐れがある。
【0040】
なお、粒子の平均粒径は、コールターカウンター法で測定し、体積粒径分布を累積分布で表したときの平均粒径とする。当該平均粒径は、例えば、ベックマン・コールター株式会社製の精密粒度分布測定装置 コールター Multisizer3を用いて測定することができる。
一方、硬化膜(HC層(A))中の粒子の平均粒径は、光学顕微鏡(例えば、キーエンス製、VHX200デジタルマイクロスコープ)にて凹凸表面を透過観察し、観察される粒子の中から任意の10粒子を選択し、その粒径を測定し、平均粒径(μm)を算出して求める。具体的には、個々の粒子の短軸径と長軸径を計測し、その平均をその粒子の粒径とする。これを10粒子分計測し、全平均値を求める。
粒子が有機系粒子の場合、溶剤やモノマーなどの影響で、膨潤又は収縮することがある。一方、粒子が無機系粒子の場合は、有機系粒子のように溶剤やモノマーなどの影響による粒子の物性変化はほぼないが、硬化膜の中で粒子同士が凝集する場合がある。そのため、硬化膜中の粒子の平均粒径が、原料の粒子の平均粒径から変化する場合があるが、硬化膜(HC層(A))において、前記粒子の平均粒径が1.5〜8μmであることが好ましい。硬化膜中においては、凸形状を形成している粒子を、その粒子が1次粒子であっても、2次粒子であっても1個とみなし、その短軸径と長軸径を10粒子分計測し、全平均値を求め、これを硬化膜中の平均粒径とする。
コールターカウンター法で測定した原料の粒子の平均粒径が、好ましい範囲であれば、硬化膜になった後、本発明において好ましい凸部を形成することができ、また、硬化膜中の平均粒径も、1.5〜8μmの範囲とすることができる。
上記粒子は、1種単独で用いても良いし、材料、形状又は粒径の異なる2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0041】
前記ハードコート層(A)は、粒子及びバインダー成分を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、当該バインダー成分100質量部に対して当該粒子が0.05〜1.5質量部含まれていることが好ましく、0.1〜1質量部含まれていることがより好ましい。粒子がバインダー成分に対してこの割合で含まれていることにより、ニュートンリングの発生とギラツキを抑制できるため好ましい。
【0042】
更に、ハードコート層(A)において、前記粒子と硬化後のバインダー成分の屈折率差が0.07以内であることが好ましい。粒子と硬化後のバインダー成分の屈折率差が0.07以内であることにより、ヘイズが低くなり、より透過鮮明度やコントラストが高い、良好な視認性が得られるようになるため好ましい。屈折率差は、コントラストや透過率や透過鮮明度を向上させるためには、この差が小さいほど、例えば0.03以内であることがより好ましい。一方、ギラツキを防止するためには、屈折率差をある程度もたせ、HC層内において内部拡散性を付与するのがよい。屈折率差が0.05以内であるとバランスよく、コントラストや透過率や透過鮮明度を向上させ、かつ、ギラツキ防止性も向上させることが可能になるので最も好ましい。
【0043】
ここで、前記屈折率差は、光学フィルムを作製した後のHC層(A)を、透過型位相シフトレーザー顕微干渉計測装置(例えば、NTTアドバンステクノロジ社製のPLM−OPT)を用いて測定することができる。測定手順としては、後述する実施例に記載した方法を用いることができる。この方法では、HC層を基材からはがすことが必要であるが、HC層を基材からはがすことが出来ない場合には、硬化後のHC層(粒子が存在しない部分)を削り取り、JIS K7142(1996)プラスチックの屈折率測定方法のB法を用いて、硬化後のHCの屈折率を測定し、組成物に用いた粒子の屈折率との差を計算する。また、粒子が無機系粒子である場合や、無定形粒子や屈折率がHCと極めて近い粒子である場合、つまり、粒子の形状がはっきりと光学顕微鏡で見ることのできない粒子である場合にも、上記HC層を基材からはがすことが出来ない場合と同様の方法で、硬化後のHCの屈折率を測定し、組成物に用いた粒子の屈折率との差を計算する。特に無機系粒子の場合には、有機系粒子と異なり、組成物中であっても、モノマーや溶剤による膨潤等がほとんどないため、この計算方法を使用できる。有機系粒子の場合には、材料単独の場合と、組成物を硬化した後では、様々な原因によって、屈折率が異なる場合があるので、上記透過型位相シフトレーザー顕微干渉計測装置を用いた方法が好ましい。
【0044】
(バインダー成分)
HC層用組成物に含まれるバインダー成分は、光硬化性を有するバインダー成分であって、硬化後にHC層として十分な強度を得られるものであれば、特に限定されない。製造コストが低く抑えられ、高い透過鮮明度が得られ、低へイズであり、かつ、HC層の硬度が得られ易い事により安定したニュートンリング発生を抑制する効果が高いため、光硬化性樹脂を用いることが好ましい。光硬化性樹脂は、光硬化性基を有し、好ましくは電離放射線硬化性不飽和基を有する。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。なお、本発明において、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル及び/又はメタアクリロイルを表し、(メタ)アクリレートは、アクリレート及び/又はメタクリレートを表す。
光硬化性樹脂としては、通常、紫外線硬化性樹脂や電子線硬化性樹脂などを使用できる。光硬化性樹脂としては、光で重合(以下、硬化ともいう)反応する少なくとも1つの官能基を有する光硬化性成分を含有させれば良い。該光硬化性成分としては、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が適用でき、1官能モノマー、2官能以上の多官能モノマー、官能オリゴマー、官能ポリマーなどがある。
【0045】
1官能モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸イソブチル、メチルメタクリレート、2−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリ レート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ノニルフェノールEO付加物アクリレート(DNPA)、フェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(HPPA)、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタンなどの(メタ)アクリレート、又はそのアルキル若しくはアリールエステル、スチレン、メチルスチレン、スチレンアクリロニトリルなどが適用できる。
【0046】
2官能モノマーとしては、例えば、1,6‐ヘキサンジオールアクリレート(HDDA)、エチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート(NPGDA)、ジエチレングリコールジアクリレート(DEGDA)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、ポリエチレングリコール400ジアクリレート(PEG400DA)、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート(HPNDA)、ビスフェノールA EO変成ジアクリレート、1,4‐ビス[(3‐エチル‐3‐オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼンなどが適用できる。
【0047】
多官能モノマーとしては、エチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスルトール、エポキシ樹脂等の2官能以上の化合物に(メタ)アクリル酸又はその誘導体を反応させて得られる2官能以上の(メタ)アクリロイルモノマーなどが適用でき、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリメチロールプロパンEO変成トリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレートなどが例示できる。
【0048】
多官能オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)としては、分子量(重量平均)が約300〜5000程度で、分子内中に(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、またはエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリカーボネート系、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系が適用でき、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールの縮合物等の不飽和ポリエステル類、ポリエステル(メタ)アクリレート、 ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ) アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートなどの(メタ)クリレート類、カチオン重合型エポキシ化合物、シロキサン等の珪素樹脂などが挙げられる。
【0049】
多官能ポリマーとしては、分子量(重量平均)が約5000〜30万程度で、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、またはエポキシ基などのラジカル重合性二重結合を有するウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌレート(メタ)アクリレート、ポリエステル‐ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、シロキサン等の珪素樹脂などが適用できる。
上記光硬化性樹脂のモノマー、オリゴマー、ポリマーは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
製造コストが低く抑えられ、HC層の硬度が得られ易い事により安定したニュートンリング発生を抑制する効果が高いため、中でも、2個以上の官能基を有する多官能モノマー、多官能オリゴマー、多官能ポリマーを単独若しくは2種以上組み合わせて用いることが、更に好ましい。
【0050】
HC層用組成物に含まれるバインダー成分には、さらに、上記熱可塑性樹脂、上記熱硬化性樹脂、上記二液混合型樹脂を含んでいても良い。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
例えば、熱可塑性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリエチレン・ポリプロプロピレンなどのオレフィン系樹脂、ウレタン系樹脂、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体;スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体等のスチレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ブタジエン樹脂、イソブチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ABS樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂は適当な溶媒に溶解させて使用する。熱硬化性樹脂としては、フェノール樹脂・ユリア樹脂・メラミン樹脂・エポキシ樹脂・エポキシアクリレート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンアクリレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などが挙げられる。二液混合型樹脂としては、二液ウレタン樹脂、二液エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0051】
(溶剤)
バインダー成分を比較的多量に用いる場合には、バインダー成分中のモノマー及び/又はオリゴマーが、液状媒体としても機能し得るので、溶剤を用いなくてもHC層用組成物を調製できる場合がある。したがって、適宜、固形分を溶解又は分散し、濃度を調整して、塗布性に優れたHC層用組成物を調製するために溶剤を用いれば良い。
溶剤は、バインダー成分や粒子を溶解又は分散できれば特に限定されず、種々の有機溶剤、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール及びエタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン及びシクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル及び酢酸ブチル等のエステル類、ハロゲン化炭化水素、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素並びにこれらの混合溶剤を用いることができる。
上記溶剤は1種単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0052】
(重合開始剤)
バインダー成分や後述する表面処理された光硬化性基を有する反応性シリカ微粒子の架橋反応の促進等のために、必要に応じてラジカル及びカチオン重合開始剤等を適宜選択して用いても良い。これらの重合開始剤は、光照射及び/又は加熱により分解されて、ラジカルもしくはカチオンを発生してラジカル重合とカチオン重合を進行させるものである。例えば、光によるラジカル重合開始剤としては、チバ・ジャパン(株)製の商品名イルガキュア184(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)、イルガキュア907及びイルガキュア369等が挙げられる。
重合開始剤を用いる場合、その含有量は、HC層用組成物の全固形分の合計質量に対して1〜10質量%で用いることが好ましい。
【0053】
(帯電防止剤)
帯電防止剤としては、従来公知の帯電防止剤を用いることができ、例えば、第4級アンモニウム塩等のカチオン性帯電防止剤や、スズドープ酸化インジウム(ITO)等の微粒子を用いることができる。
帯電防止剤を用いる場合、その含有量は、HC層用組成物の全固形分の合計質量に対して1〜30質量%であることが好ましい。
【0054】
(レベリング剤)
本発明のHC層用組成物には、HC層(A)に膜厚均一性を付与する目的で、従来公知のレベリング剤が含まれていても良い。
レベリング剤としては、従来公知のハードコート層や防汚層に用いられているフッ素系又はシリコーン系等のレベリング剤を用いることができる。また、フッ素系及びシリコーン系の両方を含む共重合体であっても良い。
レベリング剤の市販品としては、例えば、DIC(株)製のメガファックシリーズ(商品名MCF350−5)等の電離放射線硬化性基を有しないレベリング剤、信越化学工業(株)製の商品名X22−163A及びX22−164E等の電離放射線硬化性基を有するレベリング剤を挙げることができる。
レベリング剤を用いる場合、その含有量は、HC層用組成物の全固形分の合計質量に対して0.02〜2質量%で用いることが好ましい。
【0055】
(硬度付与のための粒子)
本発明のHC層用組成物には、HC層(A)の硬度向上のために硬度に優れる無機微粒子等の粒子が含まれていても良い。
当該無機微粒子としては、従来公知のHC層に用いられている物を用いればよく、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、ジルコニア及びチタニア等が挙げられる。
また、特許文献1に記載の反応性官能基(光硬化性基)を表面に有する無機微粒子を用いても良い。この反応性無機微粒子を用いることにより、反応性無機微粒子の光硬化性基と上記バインダー成分の光硬化性基が架橋反応し、HC層の硬度をさらに高めることができる。
硬度付与のための無機微粒子としては、シリカが好ましい。更に、粒子は球状よりも無定形であることが、少量の添加で良好な硬度が得られるので好ましい。
硬度付与のための粒子の平均1次粒径は、1〜100nmであることがHC層(A)の透明性の点から好ましい。
【0056】
(透明導電膜)
本発明に係る光学フィルムには、図3に示したようにHC層(A)90の特定の算術平均粗さと凸部を有する面側に、直接又は後述する低屈折率層等の他の層を介して、透明導電膜20が設けられていても良い。
透明導電膜は従来公知のタッチパネルで用いられているものを用いればよい。透明導電膜としては、例えば、特許文献2に記載のIn及びSn等の金属、酸化インジウム及び酸化スズ等の金属化合物、ITO等の金属酸化物、PEDOT−PSS(ポリ−3,4−エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸)、ポリパラフェニレン、ポリアセチレン、カーボンナノチューブ等の導電性高分子等が挙げられる。透明導電膜としては、ITOが好ましい。
透明導電膜の膜厚は、表面抵抗を均一にするように適宜調節すれば良く、例えば、500Ω/□±3%となる膜厚に調整する。
【0057】
(第二のハードコート層)
本発明に係る光学フィルムには、図4に示したように光透過性基材10のHC層(A)90とは反対側の面に第二のHC層41が設けられていても良い。
第二のHC層は、特に限定されず、HC層(A)と同じでも良いし、HC層(A)と異なる従来公知のHC層としても良い。
従来公知のHC層としては、例えば、特許文献1に記載のHC層のようにバインダー成分と反応性無機微粒子を含む組成物の硬化物からなる層が挙げられる。また、反応性無機微粒子を含まず、主にバインダー成分からなる層であっても良い。
第二のハードコート層の膜厚は、要求される性能に応じて適宜調節すれば良く、例えば、1〜20μmとすることができる。
【0058】
(低屈折率層)
本発明に係る光学フィルムには、図5に示すように、第二のHC層41の光透過性基材10とは反対側の面に低屈折率層100が設けられていても良い。
低屈折率層は、タッチパネルに用いた際に、当該低屈折率層のディスプレイ側に隣接する層よりも屈折率が低ければよく、適宜屈折率を調節することができる。低屈折率層の屈折率は好ましくは1.45以下である。
低屈折率層は、シリカやフッ化マグネシウム等の屈折率の低い成分とバインダー成分を含む組成物又はフッ化ビニリデン共重合体等のフッ素含有樹脂を含む組成物の硬化物からなり、従来公知の低屈折率層とすることができる。
低屈折率層を形成するための組成物には、低屈折率層の屈折率を低減させるために中空粒子を含有させても良い。
中空粒子は、外殻層を有し外殻層に囲まれた内部が多孔質組織又は空洞である粒子をいう。当該多孔質組織や空洞には空気(屈折率:1)が含まれており、屈折率1.20〜1.45の中空粒子を低屈折率層に含有させることで低屈折率層の屈折率を低減することができる。
中空粒子の平均粒径は1〜100nmであることが好ましい。
中空粒子は従来公知の低屈折率層に用いられているものを用いることができ、例えば、特開2008−165040号公報に記載の空隙を有する微粒子が挙げられる。
低屈折率層の膜厚は要求される性能に応じて適宜選択すればよく、80〜120nmであり、主に反射率と色味によって調整することが好ましい。
【0059】
(防汚層)
本発明に係る光学フィルムには、図5に示すように、タッチパネルに用いた際に入力操作側の最表面となる位置に、防汚性や耐擦傷性の付与を目的として防汚層110が設けられていても良い。
防汚層は、バインダー成分とレベリング剤等の防汚剤を含む組成物からなり、従来公知の防汚層とすることができる。
バインダー成分及び防汚剤は上記HC層で挙げたものを用いることができる。
防汚剤の含有量は、防汚層用組成物の全固形分の合計質量に対して0.02〜3質量%であることが好ましい。
この他、上記第二のHC層を形成するための組成物に上記HC層(A)で挙げた防汚剤を加えて、第二のHC層に防汚性を付与しても良い。
また、上記低屈折率層を形成するための組成物に上記HC層(A)で挙げた防汚剤を加えて、低屈折率層に防汚性を付与しても良い。これにより、例えば、図示しないが、図5の低屈折率層100と防汚層110を合わせて一層とした構成も可能となる。
【0060】
(光学フィルムの製造方法)
本発明の光学フィルムの製造方法は、上記ハードコート層用硬化性樹脂組成物を準備する工程、
光透過性基材の一面側に、当該ハードコート層用硬化性樹脂組成物を塗布し、塗膜とする工程、及び、
当該塗膜に光照射を行い、硬化させてハードコート層(A)を形成する工程を含む。
【0061】
HC層用組成物を準備する工程においては、上記HC層(A)で述べたHC層用組成物を準備する。
HC層用組成物は、通常、溶剤にバインダー成分の他、粒子や重合開始剤等を一般的な調製法に従って、混合し分散処理することにより調製される。混合分散には、ペイントシェーカー又はビーズミル等を用いることができる。バインダー成分が流動性を有する場合には、溶剤を用いなくともHC層用組成物を光透過性基材に塗布することができるため、適宜、必要に応じて溶剤を用いればよい。
【0062】
HC層用組成物を塗布し、塗膜とする工程において、塗布方法は、従来公知の方法を用いれば良く、特に限定されず、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、ダイコート法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法及びスクリーン印刷法等の各種方法を用いることができる。
【0063】
HC層を形成する工程において、光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線又は電離放射線等が使用される。紫外線硬化の場合には、LED、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク又はメタルハライドランプ等の光源から発する紫外線等を使用する。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50〜500mJ/cm程度である。
光照射に加えて、加熱する場合は、通常40〜120℃の温度にて処理する。
HC層用組成物の塗布後、光照射を行う前に、乾燥を行っても良い。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥又は加熱乾燥、更にはこれらの乾燥を組み合わせる方法等が挙げられる。例えば、HC層用組成物の溶剤としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を用いる場合は、30〜150℃、好ましくは35℃〜100℃の温度で、20秒〜3分、好ましくは30秒〜1分の時間で乾燥工程を行うことができる。
【0064】
(その他の層の形成)
上述した第二のHC層等のその他の層を形成する場合は、その他の層の組成物を準備し、上記HC層(A)の形成と同様に、組成物を塗布して、光照射及び/又は加熱により硬化させその他の層を形成すれば良い。
また、透明導電膜については、ITO等の無機系の透明導電膜の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空製膜法を用いることができる。PEDOT−PSS等の有機系の透明導電膜の場合は、上記HC層(A)と同様のコーティング方法を用いることができる。
透明導電膜以外の第二のハードコート層等のその他の層については、HC層(A)を形成する前に形成しても良いし、HC層(A)を形成した後に形成しても良い。
【0065】
(タッチパネル)
本発明に係るタッチパネルは、上記ハードコート層(A)の光透過性基材とは反対側の面に、透明導電膜が設けられた光学フィルムの当該透明導電膜側に、さらに第二の透明導電膜が設けられていることを特徴とする。
【0066】
上記特定の算術平均粗さと凸部を有するハードコート層(A)上に透明導電膜を設けた光学フィルムを用いることにより、当該透明導電膜と第二の透明導電膜が接触してもニュートンリングの発生とギラツキが抑制され、透過鮮明度が高く、ヘイズが抑制され、視認性に優れたタッチパネルとなる。
【0067】
図6は、本発明に係るタッチパネルの層構成の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
光学フィルム2と、一面側に第二の透明導電膜21を有する第二の光透過性基材11が、透明導電膜20と第二の透明導電膜21が対向するように配置されている。そしてタッチパネル5は、ディスプレイ80の表示面側に位置している。
なお、ディスプレイ80は、LCD、CRT、有機EL、無機EL又はプラズマディスプレイ等の公知のディスプレイのいずれであっても良い。
【0068】
図7は、本発明に係るタッチパネルの層構成の他の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
図7のタッチパネル6は、光学フィルム3と、一面側に第二の透明導電膜21を有する第二の光透過性基材11が、透明導電膜20と第二の透明導電膜21が対向するように配置され、更に当該透明導電膜20と第二の透明導電膜21の間にスペーサー30が配置されている。そしてタッチパネル6は、ディスプレイ80の表示面側に位置している。また、光学フィルム3の光透過性基材10の入力操作側の面に第二のハードコート層41が設けられている。
【0069】
図8は、本発明に係るタッチパネルの層構成の他の一例及びディスプレイとの位置関係を模式的に示した断面図である。
図8のタッチパネル7は、図7のタッチパネル6において、ディスプレイ側の第二の透明導電膜21と第二の光透過性基材11の間に、さらに第三のハードコート層42が設けられている。
【0070】
図9は、本発明に係るタッチパネルの一態様であるインナータッチパネルの層構成の一例を模式的に示した断面図である。
図9のインナータッチパネル8は、液晶セル140の一面側に、図8のタッチパネルの第二の透明導電膜側が液晶セル側に位置するように当該タッチパネルが設けられており、更に、当該タッチパネルの液晶セル側に位相差フィルム(λ/4板)12が設けられている。図9のインナータッチパネルにおいては、図8のタッチパネルにおける光透過性基材10に代えて、光透過性基材も兼ねた位相差フィルム12を設け、この位相差フィルム12のハードコート層(A)90とは反対側の面に、すなわち位相差フィルム12と第二のハードコート層41の間に、偏光板130が設けられている。
また、図示しないが、図9の第三のハードコート層42と第二の透明導電膜21の間には低屈折率層が設けられていても良い。
【0071】
以下、本発明に係るタッチパネルの必須構成要素である光学フィルム及び第二の透明導電膜、そして必要に応じて適宜設けることができるその他の部材について説明する。
【0072】
(タッチパネルにおける光学フィルム)
本発明に係るタッチパネルにおける光学フィルムは、上述した光学フィルムのうち、図3のように、少なくとも光透過性基材の一面側に、当該光透過性基材側からハードコート層(A)及び透明導電膜が設けられているものであれば良い。この少なくとも光透過性基材の一面側に、当該光透過性基材側からハードコート層(A)及び透明導電膜が設けられている形態については上述したのでここでの説明は省略する。
また、光学フィルムには図4及び5のように、光透過性基材に対してタッチパネルに用いた際に光透過性基材よりも入力操作側になる位置にさらに、第二のハードコート層、低屈折率層又は防汚層等が設けられていても良い。
また、後述するように、図9のように偏光板を含んでいても良い。
【0073】
(第二の透明導電膜)
第二の透明導電膜は、図6や図8に示すように上記光学フィルムの光透過性基材とは別の第二の光透過性基材又は第二のハードコート層等の上に設けられ、上記光学フィルムの透明導電膜と対向する位置に配置される。
透明導電膜と第二の透明導電膜は対向する位置関係で、入力操作側から透明導電膜を押圧した際に接触可能であれば良い。そのため、図7に示すように透明導電膜と第二の透明導電膜との間にスペーサーを設けても良く、図示しないがスペーサー以外の絶縁膜等を透明導電膜の縁部分等に設けても良い。また、スペーサーや絶縁膜等を設けずに空気等の気体層のみを介して対向させても良い。
第二の透明導電膜は、上記光学フィルムで挙げた透明導電膜を用いることができる。
透明導電膜と第二の透明導電膜は、材料及び膜厚が同じであっても良いし、異なっていても良い。
【0074】
また、図7〜9に示す第二の透明導電膜の入力操作側の面60は、平滑であっても良いし、ハードコート層(A)の凸部を有する面側に設けられた前記透明導電膜のように凹凸が設けられていても良い。
面60は、平滑であることが好ましい。
【0075】
(タッチパネルのその他の部材)
本発明に係るタッチパネルには、上述した光学フィルムと第二の透明導電膜以外に、要求される性能や態様に応じて適宜、第二の光透過性基材、空気層、スペーサー、第二のハードコート層、偏光板、位相差フィルム及び液晶セル等のその他の部材が含まれていても良い。以下、これらを順に説明する。
【0076】
(第二の光透過性基材)
第二の透明導電膜の基材として、図6に示すように、第二の光透過性基材を用いても良い。
第二の光透過性基材としては、上記光学フィルムにおいて挙げた光透過性基材を用いることができ、好ましくはガラスである。また、軽量化の点から樹脂フィルムも好ましく用いられる。
第二の光透過性基材の厚さは、ガラスを用いる場合は0.2〜2mm、樹脂フィルムを用いる場合は40〜200μmが好ましい。
【0077】
(空気層)
上述したようにタッチパネルにおいて透明導電膜と第二の透明導電膜は対向した位置関係にあれば良く、この透明導電膜と第二の透明導電膜の間は空気層や空隙であっても良く、後述するようにスペーサーが設けられていても良い。
この空隙(空気層)の高さは、特に限定されず適宜調節することができ、例えば、75〜200μmとすることができる。
【0078】
(スペーサー)
スペーサーは、透明導電膜と第二の透明導電膜の空隙の確保、入力操作時の荷重の制御、入力操作後の透明導電膜と第二の透明導電膜の分離の向上等を目的として、設けられる。
スペーサーとしては、特許文献2に記載のウレタン系樹脂や粒子を用いることができる。
スペーサーの寸法は適宜調節すれば良く、例えば、直径30〜50μm、高さ3〜15μmとすれば良い。また、スペーサーの間隔も適宜調節すれば良く、例えば、0.1〜10mmの一定間隔で設ければ良い。
【0079】
(第二の透明導電膜のディスプレイ側に設けられる第三のハードコート層)
本発明に係るタッチパネルにおいては、図8及び図9に示すように、第二の光透過性基材と第二の透明導電膜の間に耐擦傷性等を付与する目的で、第三のHC層42を設けても良い。
第三のHC層42は、上記光学フィルムにおいて挙げた第二のHC層と同様に形成することができる。光学フィルムにおいて挙げた第二のHC層と同様に、当該第三のHC層は、入力操作側の面が平滑であっても良いし、HC層(A)のように凹凸が設けられていても良い。
【0080】
図8及び図9に示すように、光学フィルムの入力操作側の最表面、すなわち光透過性基材10の表面側に第二のHC層41が位置する場合、その第二のHC層41の入力操作側の面120は、平滑であっても良いし、透明導電膜のディスプレイ側の面50と同様に凹凸が形成されていても良い。
また、図示しないが、上記光学フィルムで述べた光透過性基材10の入力表面側に位置する第二のHC層41の更に入力表面側に低屈折率層又は防汚層等を設けることが出来る。上記低屈折率層又は防汚層等は、上記第二のHC層41と同様に、平滑であっても良いし、透明導電膜のディスプレイ側の面50と同様に凹凸が形成されていても良い。
【0081】
(偏光板)
本発明に係るタッチパネルの好適な実施形態においては、図9に示すように、液晶セルの一面側に、上記タッチパネルの第二の透明導電膜側が液晶セル側に位置するように当該タッチパネルが設けられており、且つ、前記光透過性基材のハードコート層(A)とは反対側の面に反射光を低減する目的で、偏光板が設けられているタッチパネル(インナータッチパネル)とすることも可能である。
偏光板としては、液晶ディスプレイに用いられている従来公知の偏光板を用いることができ、例えば、保護フィルム上に偏光子を設けたものを用いることができる。
偏光子としては、特に限定されるものではないが、偏光子としての機能、すなわち、入射光を互いに直交する2つの偏光成分に分け、その一方のみを通過させ、他の成分を吸収または分散させるはたらきを有するものであれば良い。このような偏光子としては、例えば、特開2009−226932号公報に記載のポリビニルアルコール(PVA)・ヨウ素系偏光子等が挙げられる。
保護フィルムは、上記光学フィルムにおいて挙げた光透過性基材のTAC及びPET等を用いることができる。
【0082】
また、インナータッチパネル以外のタッチパネル(例えば、図6のタッチパネル5)においても、LCD、CRT、有機EL、無機EL及びプラズマディスプレイ等のディスプレイの画像表示面側に本発明のタッチパネルを配置する場合、反射光の低減を目的として偏光板を入力操作側の表面又は光学フィルムの第二のハードコート層等を有する表面近傍の位置に配置しても良い。
【0083】
(位相差フィルム)
位相差フィルム(位相差板)は、直線偏光を円偏光や楕円偏光に変換する機能を有するフィルムである。インナータッチパネルにおいては、直交する偏光成分の間に1/4波長(π/2)の位相差を生じさせるλ/4板(4分のλ板又は4分の1λ板ともいう。)を用いることが好ましい。
λ/4板としては、液晶表示分野で一般に採用されている各種高分子物質の一軸延伸フィルムを用いることができる。その材料としては、例えば、PVA、ノルボルネン系樹脂、COP、セルロース系樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
位相差フィルムの一種であるCOPの市販品としては、例えば、日本ゼオン製のゼオノアシリーズ(商品名ZM16)等が挙げられる。COPは、上述した光透過性基材としても機能するため、層構成を簡略化でき、そして製造コストも低減できる点から好ましい。
【0084】
(液晶セル)
液晶セルは、液晶ディスプレイの中でも、光のシャッターの役割を担う部位であり、透明導電膜等を有する2枚のガラス基板の間に液晶分子等の液晶材料を注入したユニットである。液晶セルは、従来公知のものを用いることができる。
【0085】
(タッチパネルの製造方法)
本発明に係るタッチパネルは、従来公知の方法で製造することができ、例えば、上記透明導電膜を備えた光学フィルムと第二の透明導電膜を有する光透過性基材等を、透明導電膜と第二の透明導電膜が対向するように空気層等を介して配置することで製造することができる。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。これらの記載により本発明を制限するものではない。
【0087】
粒子(1)として、アクリル−スチレン架橋粒子(積水化成品工業(株)製 テクポリマー SMXシリーズ、平均粒径7μm、屈折率1.540)を用いた。
粒子(2)として、アクリル−スチレン架橋粒子(積水化成品工業(株)製 テクポリマー SMXシリーズ、平均粒径5.7μm、屈折率1.578)を用いた。
粒子(3)として、有機成分が被覆され反応性官能基を表面に有する無定形非晶質シリカ微粒子(東ソー(株)製 NIPGEL AZ−360、平均粒径3μm、屈折率1.46〜1.47)を用いた。
多官能ポリエステルアクリレートとして、東亞合成(株)製の商品名M9050を用いた。
多官能モノマーとして、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、PET−30(3官能))を用いた。
重合開始剤(1)として、チバ・ジャパン(株)製:イルガキュアー(Irg)184を用いた。
重合開始剤(2)として、チバ・ジャパン(株)製:イルガキュアー(Irg)907を用いた。
レベリング剤として、DIC(株)製のMCF350SF(パーフルオロアルキル基・親水性基・親油性基含有オリゴマー)を用いた。
光透過性基材(1)として、日本ゼオン(株)製のCOPフィルム、商品名ゼオノアZM16(厚さ100μm)を用いた。
光透過性基材(2)として、東洋紡績(株)製のPETフィルム、商品名A4300(厚さ100μm)を用いた。
【0088】
(HC層用硬化性樹脂組成物の調製)
下記に示す組成の成分を配合して、HC層用硬化性樹脂組成物1を調製した。なお、アクリル−スチレン架橋粒子と、バインダー成分の多官能ポリエステルアクリレートと多官能モノマーの混合物との屈折率差は0.03であった。
【0089】
(HC層用硬化性樹脂組成物1)
アクリル−スチレン架橋粒子(粒子(1);平均粒径7μm):0.1質量部
多官能ポリエステルアクリレート(M9050):80質量部
多官能モノマー(PET−30):20質量部
重合開始剤(1)(Irg−184):4.5質量部
重合開始剤(2)(Irg−907):0.5質量部
レベリング剤(MCF−350SF):0.1質量部
メチルイソブチルケトン(MIBK):129質量部
【0090】
(光学フィルムの作製)
(実施例1)
光透過性基材(1)の一面側に、上記HC層用硬化性樹脂組成物1を塗布し、温度70℃の熱オーブン中で60秒間乾燥し、塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線を積算光量が80mJ/cmになるように照射して塗膜を硬化させることにより、膜厚5.9μmのHC層(A)を形成し、光学フィルムを得た。
【0091】
(実施例2〜7及び比較例1〜5)
光透過性基材、粒子の種類及び含有量並びにHC層(A)の積層膜厚を表1に示すように代えた以外は実施例1と同様にして、実施例2〜7及び比較例1〜5の光学フィルムを得た。
【0092】
【表1】

【0093】
【表2】

【0094】
(評価)
実施例1〜7及び比較例1〜5の光学フィルムについて、それぞれ、下記のように、粒子と硬化後のバインダー成分の屈折率差、算術平均粗さ(Ra)、凸部高さ、1.08mm四方の領域における高さ0.3〜3μmの凸部の個数、当該凸部の存在数の平均値、透過鮮明度、ヘイズ及びギラツキの抑制効果、について測定し、ニュートンリングの抑制効果について評価した。その結果を表1及び表2に合わせて示す。なお、比較例3は、高さ0.3〜3μmの凸部の個数が0個であったため、当該凸部の存在数の平均値は評価なし(「−」)とした。
【0095】
(粒子とバインダー成分の屈折率差の測定)
粒子と硬化後のバインダー成分(HC層の粒子のない部分)との屈折率差は、透過型位相シフトレーザー顕微干渉計測装置(NTTアドバンステクノロジ社製、PLM−OPT)を用いて、以下のようにして求めた。
作成した光学フィルムを3cm角に切り取り、フラスコ内に入れて室温でクロロホルムに24時間浸漬し、基材から上記HC層だけを5mm角程度以上の大きさになるように剥離し、乾燥させた。図13に示すように、剥離したHC層202をスライドガラス201に載せ、硬化後のバインダー成分と同程度の屈折率を持つオイル203(モリテックス社製のカーギル標準屈折液)に浸漬し、その上にカバーガラス204を載せた。こうすることにより、上記HC層の厚み方向に対して、HC層の表面凹凸を光学的に平坦化することができ、粒子以外との位相差が生じる要因を除去することができる。なお、バインダー成分と同程度の屈折率を持つオイルは以下のように選択することができる。作成した光学フィルムのハードコート部分(粒子の存在しない部分)を、カッターなどで削り取り、JIS K7142(1996)プラスチックの屈折率測定方法のB法に従い、オイルを削り取ったHCに滴下し、その様子を光学顕微鏡で観察し、削り取った破片が見えなくなるようなオイルを選択する。
こうして得られたサンプルを上記透過型位相シフトレーザー顕微干渉計測装置(測定条件:He−Neレーザー 測定波長633nm、測定倍率200倍)にて、光の入射方向をサンプルの厚み方向として測定して、硬化後のバインダー成分と粒子との位相差を測定した。なお、位相差測定の際、硬化後のバインダー成分と粒子の位置を設定する測定手順があるが、粒子の場合は、粒子中心部を選択し、バインダー成分の場合は、粒子が全く存在しない部分を選択した。
また、光学顕微鏡(キーエンス製、VHX200デジタルマイクロスコープ)にて透過観察を行い、粒子の粒径を10点測定し、平均粒径(μm)を算出し、更に、以下の式から硬化後のバインダー成分と粒子の屈折率差を求めた。
Δn = Δφ・λ/(2π・d)
Δn:硬化後のバインダーと粒子の屈折率差
Δφ:硬化後のバインダー成分と粒子の位相差
λ :測定波長
d :硬化後の粒子の平均粒径
なお、上記方法で求めた硬化後の粒子の平均粒径は、全て1.5〜8.0μm範囲内の粒径であった。
また、実施例4及び5、比較例1及び2においては、用いられたシリカ微粒子が無定形の無機微粒子であり、溶剤やモノマーによる影響を受け難く硬化後の屈折率が変化しないため、屈折率差は、硬化後のハードコート層の屈折率のみをJIS K7142(1996)プラスチックの屈折率測定方法のB法に従って実測し算出した。
【0096】
(算術平均粗さ(Ra)の測定)
算術平均粗さ(Ra)は、JIS B0601(1994)に準拠し、(株)小坂研究所製の商品名SE−3400を用いて測定を行った。表1及び2のRaの結果は、3回測定した平均値である。
【0097】
(凸部の高さ、個数及び平均値の測定)
1.08mm四方の領域における凸部の高さを、Zygo社製の商品名New View 6000を用いて、測定した。
凸部の個数は、当該1.08mm四方の領域における凸部の頂点の数を数えることにより求めた。
また、凸部の頂点を中心に22.5°毎に8個の断面を切り出し(図11参照)、各断面において(頂点−一番低い谷部)=高さhを求め(図12参照)、当該高さhの平均値を凸部の高さとした。なお、表1及び表2には、1.08mm四方の領域における凸部の高さの最低値と最高値を示した。
そして、当該領域内の高さが0.3〜3μmの凸部の個数、当該領域を100等分し、100個のマスとして、当該凸部が含まれるマスの当該凸部の存在数の平均値を測定した。
【0098】
(透過鮮明度の測定)
透過鮮明度は、JIS K7105(2006)の像鮮明度の測定に準拠し、写像性測定器(スガ試験機(株)製の商品名ICM−1PD)を用いて、4種類の光学くし(0.125mm、0.5mm、1mm及び2mm)で測定した数値の合計で表わした。数値が大きいほど透過鮮明度が高く、400が最高値である。
【0099】
(ヘイズの測定)
光学フィルムのヘイズを、JIS K−7136に準拠し、(株)村上色彩技術研究所製のヘイズメーター(商品名HM−150)を用いて測定した。
【0100】
(ギラツキの抑制効果の評価)
モニター(Apple社製15インチLCD)上に、得られた光学フィルムのHC層(A)の凸部を有する面が下になるように置き、明室において白色光をモニターから出し、パネルから30cm離れた地点より、まず真正面から観察した。そして、図10のように、視点はそのままにして、真正面に対して、右、左、右上、左下等、様々な45度斜め方向に連続的に体をずらして、視線を変えながら、ギラツキがないか、目視観察し、下記基準にて評価した。
評価基準
評価◎:ギラツキが認識できなかった。
評価○:視野角がモニター真正面から左右30度方向ではギラツキが認識されなかったが、斜め45度方向ではギラツキが認識された。
評価×:視野角がモニター真正面から左右30度方向でもギラツキが認識され、不良であった。
【0101】
(ニュートンリングの抑制効果の評価)
上記各実施例及び比較例の光学フィルムのHC層(A)の凸部を有する面に透明導電膜としてITOを設け、液晶ディスプレイの上に、その光学フィルムのITO側が接触するように置き、光学フィルムを光透過性基材側から指で押さえ、ニュートンリングの発生の状態で下記のように判断した。「3」以上の評価であれば良好である。
評価5・・・強く押し付けても、ニュートンリングが発生しない。
評価4・・・強く押し付けると、かすかにニュートンリングが発生するところがある。
評価3・・・普通に押し付けた場合、ニュートンリングが発生しない。
評価2・・・普通に押し付けた場合、場所によってはニュートンリングが見える。
評価1・・・普通に押し付けた場合、ニュートンリングが見える。
評価0・・・普通に押し付けた場合、ニュートンリングが目立つ。
なお、強く押し付けるとは、左右両親指で約3cmの間隔を置いて、49〜59N程度の荷重をかけることであり、たとえば両指の設置面積が4cm2とすると、120〜150kPa程度の圧力になる。
普通に押し付けるとは、左右両親指で約3cmの間隔を置いて、14.7〜19.6N程度の荷重をかけることであり、たとえば両指の設置面積が4cm2とすると、40〜50kPa程度の圧力になる。
ここで、左右2本の指で評価するのは、1本の指で押しただけではニュートンリングを観察し難いが、2本の指の間を見ればニュートンリングを観察しやすくなるからである。
【0102】
(実施例及び比較例の結果のまとめ)
本発明の条件で設計した実施例はニュートンリング抑制、ギラツキ抑制ともに良好であった。
しかし、比較例1では、ニュートンリングの発生は抑制されていたが、ギラツキが認識され、透過鮮明度も低く、ヘイズが高かった。これは、比較例1については、HC層の算術平均粗さ(Ra)が0.05μmより大きいためと考えられる。
比較例2については比較例1よりもさらに、透過鮮明度が低く、ヘイズも高く、ギラツキも認識された。これは、HC層の算術平均粗さ(Ra)が比較例1より大きいこと、及び凸部の存在数の平均値が3.1個と高いことが関係しているものと考えられる。
比較例3では、ギラツキは抑制されていたが、ニュートンリングが目立ってしまっていた。これは、比較例1や2とは逆に、HC層の算術平均粗さ(Ra)が0.025μmよりも小さいためと考えられる。
比較例4では、ギラツキが認識され、ニュートンリングも目立ってしまっていた。これは、Raが0.069μmであり0.05μmよりも大きく、高さ0.3〜3μmの凸部の個数も8個と10個未満であることから、ニュートンリングの発生を抑制するのに必要な凸部の数が得られていないためと考えられる。
比較例5では、ギラツキは抑制されていたが、ニュートンリングが目立ってしまっていた。これは、Raが0.012μmであり0.25μmよりも小さく、高さ0.3〜3μmの凸部の個数も5個と10個未満であることから、ニュートンリングの発生を抑制するのに必要な凸部が得られていないためと考えられる。
【符号の説明】
【0103】
1、2、3、4 光学フィルム
5、6、7、9 タッチパネル
8 インナータッチパネル
10 光透過性基材
11 第二の光透過性基材
12 位相差フィルム
20、21 透明導電膜
30 スペーサー
40 従来のハードコート層
41 第二のハードコート層
42 第三のハードコート層
50 透明導電膜のディスプレイ側の面
60 第二の透明導電膜の入力操作側の面
70 スタイラスペン
80 ディスプレイ
90 ハードコート層(A)
100 低屈折率層
110 防汚層
120 光学フィルムの入力操作側の最表面
130 偏光板
140 液晶セル
150 従来のタッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材の一面側に、少なくとも1層のハードコート層(A)が設けられている光学フィルムであって、
当該ハードコート層(A)の当該光透過性基材とは反対側の面の、JIS B0601(1994)に規定する算術平均粗さ(Ra)が0.025〜0.05μmであり、且つ、当該面は1.08mm四方の領域中に、高さ0.3〜3μmの凸部が10〜250個存在することを特徴とする、光学フィルム。
【請求項2】
前記領域を均等に100分割し、100個のマスとした際、前記凸部が含まれるマスの当該凸部の存在数の平均値が2.5個未満であることを特徴とする、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
JIS K7105(2006)に準拠した透過鮮明度が180〜310であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記ハードコート層(A)は、バインダー成分100質量部に対して粒子0.05〜1.5質量部を含むハードコート層用硬化性樹脂組成物の硬化物からなり、且つ、ハードコート層(A)において、前記粒子の平均粒径が1.5〜8μmであり、且つ、前記粒子と硬化後のバインダー成分の屈折率差が0.07以内であることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記ハードコート層(A)の前記光透過性基材とは反対側の面側に、透明導電膜が設けられていることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記請求項5に記載の光学フィルムを含有し、当該光学フィルムの前記透明導電膜側に、さらに第二の透明導電膜が設けられていることを特徴とする、タッチパネル。
【請求項7】
液晶セルの一面側に、前記請求項6に記載のタッチパネルの第二の透明導電膜側が液晶セル側に位置するように当該タッチパネルが設けられており、且つ、前記光透過性基材のハードコート層(A)とは反対側の面に偏光板が設けられていることを特徴とする、タッチパネル。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図10】
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【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−133881(P2011−133881A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265390(P2010−265390)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】