説明

光学フィルム用の基材フィルムおよび光学フィルム

【課題】
本発明は、一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムにおいて、ハードコート層および近赤外線遮蔽層との優れた接着性を有する基材フィルムを提供することを目的とする。さらに、この光学フィルム用基材フィルムを用いた光学フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】
一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムであって、ハードコート層が積層される面にポリエステル系樹脂で構成された易接着層と、近赤外線遮蔽層が積層される面にアクリル系樹脂で構成された易接着層とを有する基材フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルの光学フィルターに用いられる光学フィルムであり、反射防止性とともに防汚性、耐擦傷性、帯電防止性、近赤外線遮蔽性、色調補正を兼ね備えた光学フィルムに関するものである。
【0002】
また、本発明は、一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムと、その基材フィルムを用いた光学フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略す)の前面に設けられる光学フィルターは、パネルの破損防止、PDPから漏洩する人体や他の電気機器に影響を与える電磁波やリモコンに影響を与える近赤外線の遮蔽、ネオンガスの発光に伴う赤色純度を低下させる波長590nm付近の可視線吸収による色調補正、太陽光や蛍光灯等の外光の表面での反射ならびに映り込みを防止するための表面反射防止、さらに表面の耐擦傷性や防汚性などの機能が要求されている。
【0004】
代表的なPDP用光学フィルターは、基板となる半強化ガラス板に電磁波遮蔽フィルム、近赤外線遮蔽・色調補正フィルムを粘着剤を介して貼り合わせ、反対面に反射防止フィルムを粘着剤を介して貼り合わせたものが挙げられる。反射防止フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート等のフィルム基材にハードコート層を設け、さらにその上に反射防止層として高屈折率層および低屈折率層の薄膜を形成し、光の干渉により反射を防止する方法が行われている(特許文献1,2など参照)。また、近赤外線遮蔽フィルムとしてはポリエチレンテレフタレート等のフィルム基材に、近赤外線を吸収する色素を透明高分子樹脂バインダーに分散した組成物をコーティングし、近赤外線を遮蔽する方法が行われている(特許文献3,4など参照)。さらに、赤色純度を低下させる590nm付近の可視線を吸収する色素を近赤外線吸収色素と混ぜて配合することにより色調補正も行われている(特許文献5,6など参照)。
【0005】
最近、PDP用光学フィルターの低価格化の手段として、部品点数の削減が行われるようになり、その一つの方法として、反射防止フィルムの反射防止層と反対側の面に近赤外線遮蔽層を設けることで、一つのフィルムに反射防止と近赤外線遮蔽、さらに色調補正機能の統合化が図られている(特許文献7など参照)。
【0006】
しかしながら、これらの反射防止層は表面反射率が十分に低いわけではないため反射防止性能が不十分である、さらに表面の耐擦傷性も満足できるレベルには到達していないなどの問題がある。さらに、近赤外線遮蔽層においては、近年益々より高い近赤外線遮蔽性とより高い全光線透過率が求められている。また、ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムとその表面に設けられるプライマー層あるいはハードコート層との間に、屈折率差のある明確な界面が存在するために、視認性に問題、すなわち、ある角度から見た時に部分的な虹彩状反射が発生する問題もある。この現象を改善するために塗膜厚み精度を向上したり、ハードコート層の屈折率を高くし屈折率差を少なくする方法(特許文献8参照)、基材フィルムの表面を熱プレス法によりエンボス加工して表面を粗面化した後、ハードコート層を積層する方法(特許文献9参照)、基材フィルムを溶解する溶剤を用いたハードコート剤を塗布し、基材を溶解または膨潤させることにより干渉縞を低減する方法(特許文献10参照)などが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−108238号公報
【特許文献2】特開平11−60637号公報
【特許文献3】特開平11−326631号公報
【特許文献4】特許3308545号公報
【特許文献5】特開昭58−153904号公報
【特許文献6】特許3311720号公報
【特許文献7】特開2002−138203号公報
【特許文献8】特開2002−241527号公報
【特許文献9】特開平8−197670号公報
【特許文献10】特開2003−205563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、基材フィルムの一方の面に反射防止層を、反対側の面に近赤外線遮蔽層を設けることで、一つのフィルムに反射防止と近赤外線遮蔽、さらに色調補正の機能を併せ持つ多機能な光学フィルムを提供することを目的とするものであり、さらに詳しくは、表面反射率が低く、表面の耐擦傷性に優れ、ハードコート層由来の虹彩模様が低減され、さらに、近赤外線遮蔽能と色調補正能に優れた光学フィルムを提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は、一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムにおいて、ハードコート層および近赤外線遮蔽層との優れた接着性を有する基材フィルムを提供することも目的とする。さらに、この基材フィルムを用いた光学フィルムを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる課題を解決するために本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、本発明の光学フィルムを見出すに至った。すなわち、本発明の光学フィルムは、基材フィルムの一方の面に、基材フィルム側よりハードコート層と反射防止層がこの順に積層されてなり、基材フィルムの他方の面に、近赤外線吸収能を有する色素を透明な高分子樹脂中に分散してなる近赤外線遮蔽層が積層されてなり、該反射防止層が波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルにおいて、(1)最低反射率が0.6%以下、(2)波長400nmにおける反射率が3.5%以下、(3)波長700nmにおける反射率が3%以下、の3条件を全て満たし、かつ、該近赤外線吸収層が(1)波長820nmにおける透過率が20%以下、(2)波長850nmにおける透過率が15%以下、(3)波長950nmから1150nmにおける透過率が10%以下、の3条件を全て満たす光学フィルムである。
【0011】
また、ハードコート層および近赤外線遮蔽層と基材フィルムとの接着性を向上させる課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、本発明の光学フィルム用の基材フィルムを見出すに至った。すなわち、本発明の光学フィルム用の基材フィルムは、一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムであって、ハードコート層が積層される面にポリエステル系樹脂で構成された易接着層と、近赤外線遮蔽層が積層される面にアクリル系樹脂で構成された易接着層とを有する基材フィルムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、反射防止性、耐擦傷性に優れた反射防止層と、近赤外線遮蔽性、色調補正に優れた近赤外線遮蔽層を併せ持つ光学フィルムを提供することが可能であり、PDP用光学フィルターの高性能化を図るとともに生産性向上により価格低減も図った光学フィルムを提供可能となる。
【0013】
また、本発明によれば、一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムにおいて、ハードコート層および近赤外線遮蔽層との優れた接着性を有する基材フィルムを提供することが可能となる。そして、この基材フィルムを用いた、ハードコート層と基材フィルム、近赤外線遮蔽層と基材フィルムとが強固に密着した光学フィルムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の光学フィルムの好ましい態様を模式的に表した図である。
【図2】参考比較例1で述べた反射防止フィルムの表面反射スペクトルの一例を示す。
【図3】参考実施例1で述べた本発明の反射防止フィルムの表面反射スペクトルを示す。
【図4】実施例11で述べる本発明の反射防止フィルムの表面反射スペクトルを示す。
【図5】ハードコートフィルムの反射率のうねり振幅を示した波長/反射率グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明の光学フィルムの好ましい態様の一例を示す模式断面図である。本発明の好ましい態様の一例として、基材フィルム(a)の一方の面にハードコート層(b)が積層され、さらにその上に、高屈折率層(c)、低屈折率層(d)からなる反射防止層(e)が積層されている。さらに、その上に光学フィルターの製造工程での反射防止層の傷付きや汚れを防止するための保護フィルム(f)が積層されていてもよい。基材フィルム(a)の反対面には近赤外線吸収能を有する色素と、さらにはネオンガスの発光に伴う赤色純度を低下させる波長590nm付近の可視線吸収能を有する色素を透明高分子樹脂バインダーに分散させた近赤外線遮蔽層(g)が積層されてなる。さらに、その上に半強化ガラスや、あるいは電磁波遮蔽フィルムなどの他の光学フィルター要素と貼り合わせるための透明粘着層(h)と剥離フィルム(i)が積層されて使用される。
【0016】
本発明の基材フィルム(a)としては、溶融製膜もしくは溶液製膜可能なフィルムが好適に用いられる。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリフェニレンスルフィド、アセテート、ポリカーボネート、アクリル系樹脂などからなるフィルムを挙げることができる。これらの内、特に透明性、機械的強度、寸法安定性などに優れた熱可塑性樹脂からなるフィルムが好ましい。画像表示装置用途に用いるためには、光線透過率が高く、ヘイズ値が低いことが好ましいため、ポリエステル、アセテートおよびアクリル系樹脂より選ばれた少なくとも1種からなるフィルムが好ましい。透明性、ヘイズ値、機械特性の点から、特にポリエステルからなるフィルムが好ましく用いられる。
【0017】
例えば、基材フィルム(a)の400〜800nmでの光線透過率は好ましくは40%以上、より好ましくは60%以上である。また、基材フィルム(a)のヘイズ値は、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下である。これら条件の両方を満たすと、画像表示装置用部材として用いたときに、鮮明性の点でさらに好ましい。また、光線透過率の上限値は99.5%程度まで、またヘイズ値の下限値は0.1%程度までが実用的な範囲である。
【0018】
本発明で好ましく用いられるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどが挙げられる。これらの2種以上が混合されたものであってもよい。また、これらと他のジカルボン酸成分やジオール成分が共重合されたポリエステルであってもよいが、その共重合割合は、結晶配向が完了したフィルムにおいて、その結晶化度が好ましくは25%以上、より好ましくは30%以上、さらに好ましくは35%以上となる範囲が好ましい。結晶化度が25%未満の場合には、寸法安定性や機械的強度が不十分となりやすい。結晶化度は、ラマンスペクトル分析法により測定することができる。
【0019】
また、本発明の基材フィルム(a)は、2層以上の積層構造の複合体フィルムであっても良い。複合体フィルムとしては、例えば、内層部に実質的に粒子を含有せず、表層部に粒子を含有させた層を設けた複合体フィルム、内層部に粗大粒子を有し、表層部に微細粒子を含有させた複合体フィルム、および内層部が微細な気泡を含有した層を有する複合体フィルムなどが挙げられる。また、上記複合体フィルムは、内層部と表層部を構成するポリマーが、化学的に異種のポリマーであっても同種のポリマーであっても良い。
【0020】
本発明の基材フィルム(a)は、フィルムの熱安定性、特に寸法安定性や機械的強度を十分なものとし、平面性を良好にする観点から、二軸延伸により結晶配向されたフィルムであることが好ましい。二軸延伸により結晶配向しているとは、未延伸すなわち結晶配向が完了する前の熱可塑性樹脂フィルムを長手方向および幅方向にそれぞれ好適には2.5〜5倍程度延伸し、その後、熱処理により結晶配向を完了させたものであり、広角X線回折で二軸配向のパターンを示すものをいう。
【0021】
本発明の基材フィルム(a)の厚みは、機械的強度やハンドリング性などの点から、好ましくは10〜500μm、より好ましくは20〜300μmである。
【0022】
本発明の基材フィルム(a)中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種の添加剤や樹脂組成物、架橋剤などを含有しても良い。例えば酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤、有機、無機の粒子、顔料、染料、帯電防止剤、核剤、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ゴム系樹脂、ワックス組成物、メラミン系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、メチロール化、アルキロール化された尿素系架橋剤、アクリルアミド、ポリアミド、エポキシ樹脂、イソシアネート化合物、アジリジン化合物、各種シランカップリング剤、各種チタネート系カップリング剤などを挙げることができる。
【0023】
これらの中でも無機の粒子、例えばシリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、アルミナゾル、カオリン、タルク、マイカ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カーボンブラック、ゼオライト、酸化チタン、金属微粉末などを添加した場合には、易滑性、耐傷性などが向上するので特に好ましい。無機粒子の平均粒子径は、0.005〜5μmが好ましく、より好ましくは0.05〜1μm程度である。ここで言う粒子径とは、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて得られた値である。また、平均粒子径は、50%分布粒子径とする。なお、50%分布粒子径とは粒度分布が50%のところの粒子径を指し、今後特に断りがない限り平均粒子径とはこの粒子径を指す。また、無機粒子の添加量は、基材フィルム100質量部中に0.05〜20質量部、好ましくは0.1〜10質量部であるのが望ましい。
【0024】
本発明の基材フィルム(a)は、ハードコート層(b)や近赤外線遮蔽層(g)との接着性を向上させる目的で、基材フィルムの少なくとも一方の面に易接着層が形成されていることが好ましく、基材フィルムの両面に形成されているとなお好ましい。本発明でいう易接着層とは、基材フィルム(a)の両面に積層構造的に形成されて存在する膜状のものをいう。易接着層を構成する成分としては、ハードコート層(b)あるいは近赤外線遮蔽層(g)と十分な接着性を有するものであれば特に限定されないが、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、アクリル樹脂、尿素樹脂、ウレタン樹脂などを好適に用いることができる。特にポリエステルからなるフィルム基材を用いる場合は、接着性の点から、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂から選ばれる樹脂を用いることがより好ましく、また、異なる2種の樹脂、例えばポリエステル樹脂とウレタン樹脂、ポリエステル樹脂とアクリル樹脂、アクリル樹脂とウレタン樹脂を組み合わせて用いてもよい。また、基材フィルム(a)のそれぞれの面に形成する易接着層は接着性の点から異種の樹脂を用いる方が好ましい。例えば、ハードコート層(b)側にはポリエステル系樹脂を、近赤外線遮蔽層(g)側にはアクリル樹脂を用いるのが好ましい。
【0025】
易接着層は干渉縞を発生させるので、それを低減させる工夫が必要である。そのためには易接着層の屈折率は、(易接着層の屈折率)={(基材フィルムの屈折率)×(ハードコート層若しくは近赤外線遮蔽層の屈折率)}1/2±0.02を満たすことが干渉縞を低減させることから好ましく、基材フィルム(a)がポリエステルの場合には、易接着層の屈折率は1.53〜1.60であることが好ましい。
【0026】
基材フィルム(a)を溶融押出後、二軸延伸して製膜する場合には、易接着層は製膜工程の横延伸工程の前段階で両面に塗工し、製膜と同時に形成する方法が好ましく用いられる。その場合、前記した樹脂は水性エマルジョン塗料として塗工するのが好ましく、易接着層の厚みは0.03〜0.20μmが好適である。
【0027】
本発明の光学フィルムは、基材フィルム(a)の一方の面に、ハードコート層(b)、反射防止層(e)を積層して、まず反射防止フィルムを作製した後、基材フィルム(a)の反対面に、近赤外線遮蔽層(g)を積層するのが好ましい。そうすることでハードコート層(b)や反射防止層(e)の形成時に用いられる紫外線に近赤外線吸収色素を暴露させることなくできる。ここで、反射防止層(e)は低屈折率層(d)だけからなる1層の反射防止層でもかまわないが、反射率をより低くするためには以下に述べるように高屈折率層(c)と低屈折率層(d)の2層構成の反射防止層とすることが好ましい。
【0028】
本発明おける反射防止フィルムは、波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルが、(1)最低反射率が0.6%以下、(2)400nmにおける反射率が3.5%以下、および(3)700nmにおける反射率が3%以下、の3条件を全て満たすものである。最低反射率が0.6%を超えると反射防止機能が不十分となり、また、400nmにおける反射率が3.5%を超えると反射光の色調が青みを帯びる。同様に、700nmにおける反射率が3%を超えると反射光の色調が赤みを帯びる。また、最低反射率としては、0.5%以下であることが好ましく、400nmにおける反射率は3.0%以下、さらには2.5%以下が好ましく、700nmにおける反射率は2.5%以下、さらには2.0%以下が好ましい。図2は従来の反射防止フィルムの表面反射スペクトルの一例であり、図3および図4は本発明の反射防止フィルムの表面反射スペクトルの代表的な例である。図2は、最低反射率も高く反射防止性能としては不十分なうえに、400nmでの反射率も高いために反射光の色調が、青みを帯びていてニュートラルではない。
【0029】
さらに、本発明における反射防止フィルムは、波長400nm〜700nmにおける表面反射スペクトルのうねりの振幅最大値が0.5%以下であることが、干渉縞が目立たなくて好ましい。より好ましくは0.2%以下、さらに好ましくは0.1%以下であり、干渉縞が観察されなくなる。
【0030】
ここで、本発明で述べる波長400〜700nmでのうねりの振幅最大値を図2を用いて説明する。測定面(反射防止層側表面)の反対面を60℃光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるように粗面化した後、可視光線透過率が5%以下となるように黒色に着色し、測定サンプルとする。サンプルの測定面を分光光度計にて、測定面から5度の入射角で、波長380〜800nmにおける表面反射スペクトルを測定すると、図2に見られるようなうねりを持ったスペクトル曲線が観測される。ここで、うねりとは、波長の変化に伴って反射率が上下に振動することをいい、リップルとも呼ぶ。うねりの振幅値が小さいほど干渉縞が目立たなくなる。一つのうねりの山(極大点A)から、その両隣にある谷(極小点B、C)を結ぶ線分BCに向かって垂線を下ろして、該垂線と線分BCが直交する点Dまでの距離ADを振幅値と定義する。うねりの振幅最大値とは、波長400〜700nmの範囲にあるうねりの振幅の最大値を求めたものである。図2に見られるうねりは基材フィルムとその上に設けたハードコート層との界面で生じる干渉縞によって生じる。したがって、基材フィルムとその上に設けたハードコート層との界面で生じる干渉縞を目立たなくすることで振幅が小さくなる。詳細は、後述する。
【0031】
本発明における反射防止フィルムは、通常、PDPの最表面に設置使用されることが多い。その場合、フィルムの表面に付着した粉塵などを布で拭き取ったりした際に傷がつくと困るため、耐擦傷性が3級以上であることが好ましい。好ましくは4級以上である。耐擦傷性は、反射防止フィルムの反射防止層表面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を次の5段階で評価したものである。5級:傷が全く付かない。4級:傷が1本以上5本以下。3級:傷が6本以上10本以下。2級:傷が11本以上。1級:全面に無数の傷。
【0032】
本発明における反射防止フィルムにおいて、波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルの最低反射率、波長400nmにおける反射率、および、波長700nmにおける反射率を前記の範囲とするためには、低屈折率層(d)および高屈折率層(c)の屈折率および厚さを、以下のように調整することが好ましい。低屈折率層(d)の屈折率(n)が1.42以下、かつ、低屈折率層(d)と高屈折率層(c)の屈折率差が0.15以上であることが好ましい。さらには、高屈折率層(c)の屈折率(n)は1.50〜1.70であることが好ましく、さらに好ましくは1.55〜1.69である。また、低屈折率層(d)の屈折率(n)は1.25〜1.42であることが好ましく、さらに好ましくは1.30〜1.38である。
【0033】
さらに、ハードコート層(b)の屈折率も調整することが好ましい。ハードコート層(b)の屈折率(n)は、1.45〜1.55が好ましい。ここで、低屈折率層(d)の屈折率(n)、および高屈折率層(c)の屈折率(n)は、下記式(1)を満足することが最低反射率をより低くできるので好ましい。
(n)=(n)×(n1/2±0.02・・・式(1)。
【0034】
さらに、本発明の反射防止フィルムは、高屈折率層(c)および低屈折率層(d)の屈折率と厚さの積が、可視線の中の任意の波長の1/4となるようにすることが好ましい。したがって、高屈折率層(c)および低屈折率層(d)において、各層の厚さdと屈折率nの積の4倍が400〜700nmの範囲にあることが好ましく、該高屈折率層(c)および低屈折率層(d)における屈折率nと厚さdの関係は、それぞれ下記式(2)を満足する範囲内の厚さであることが、波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルの最低反射率を0.6%以下とし、かつ、波長400nmにおける反射率を3.5%以下、かつ、波長700nmにおける反射率を3%以下とするために好ましい。
n・d=λ/4 ・・・式(2)
(ここで、λは可視線の波長で、通常380nm≦λ≦780nmの範囲となる。)。
【0035】
本発明の積層フィルムに低反射性が付与されるためには、高屈折率層(c)の厚さは0.01〜1.0μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.06〜0.12μmである。また、低屈折率層(d)の好ましい厚さ範囲は0.01〜1.0μmであり、さらに好ましくは0.07〜0.12μmである。高屈折率層(c)および低屈折率層(d)の厚さがこの好ましい範囲であると、容易に上記式(1)を満足することができ、フィルムの表面反射率が低反射性となる。
【0036】
低屈折率層(d)の一例としては、シランカップリング剤[1]、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]を含むことが好ましい。シランカップリング剤[1]成分としては、一般式R(1)R(2)SiX4−(a+b)で表される化合物ないしはその加水分解生成物である。ここで、R(1)、R(2)は各々アルキル基、アルケニル基、アリル基、またはハロゲン基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、メタクリルオキシ基、ないしシアノ基を有する炭化水素基である。Xはアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基ないしアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。a、bは各々0,1または2であり、かつa+bが1,2または3である。アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]は、一般式R(3)R(4)SiX4−(c+d)で表される化合物ないしはその加水分解物生成物である。ここで、R(3)、R(4)は各々フッ素置換したアルキル基、アルケニル基、アリル基、メタクリルオキシ基、ないし(メタ)アクリロイル基を有する炭化水素基である。Xはアルコキシル基、アルコキシアルコキシル基、ハロゲン基ないしアシルオキシ基から選ばれた加水分解可能な置換基である。c、dは各々0、1、2または3であり、かつc+dが1,2または3である。
【0037】
また本発明における低屈折率層(d)には、硬度を高めるために、 シリカ微粒子[3]を併用しても構わない。シリカ微粒子[3]成分は、乾式シリカ、湿式シリカ、コロイド状に分散したシリカ微粒子等が挙げられるが、粒度分布が揃っている球状シリカ微粒子を含有させるのが好ましい。該シリカ微粒子[3]の粒径は平均1次粒子径(球相当径:BET法)が0.001〜0.2μmのものが一般に使用できるが、好ましくは0.005〜0.15μmの粒子径のものが用いられる。
【0038】
これら微粒子を含有させることにより、低屈折率層(d)の表面は、微粒子に由来する凹凸を有する。この凹凸により、干渉による反射防止だけでなく、散乱による反射防止効果も加わることで、波長400〜700nmにおける表面反射スペクトルを全体に低反射率化させることが可能となる。低屈折率層(d)の表面粗さは、中心線平均粗さRaが0.5〜15.0nmが好ましく、さらに最大高さRmaxが5〜150nmが好ましい。RaおよびRmaxがこの範囲より低いと散乱による反射防止効果が少なくなり、逆にこの範囲を超えると、ヘイズや耐擦傷性が悪くなり、また指紋が拭き取りにくくなるので好ましくない。
【0039】
低屈折率化の方法として、上記した組成中に気泡を含有させることも好ましい。この場合、低屈折率層(d)の空隙率が5%以上であることが好ましく、さらには10%以上であることが好ましい。気泡を含有させる方法としては、コーティング膜を乾燥時に発泡させる方法、有機粒子や無機粒子を含有させておき、乾燥時の硬化収縮を利用して粒子界面でボイドを形成する方法、中空もしくは気泡を内在する有機粒子や無機粒子を配合する方法などが挙げられるが、これに限定されるものではない。なお、空隙率を制御して屈折率をコントロールするという点からは、中空もしくは気泡を内在する有機粒子や無機粒子を配合する方法が好ましい。
【0040】
特に、前記シリカ微粒子[3]として、多孔質状、もしくは、中空状シリカ微粒子を用いることが好ましい。その場合、微粒子の空隙率としては、5%以上が好ましく、30%以上がさらに好ましい。
【0041】
このような中空粒子の例としては、例えば、特開2001−233611号公報、J.Am.Chem.soc.2003,125,316−317などの公知文献に記載がある。また、粒子径の異なる粒子を組み合わせることで、さらに、中空粒子の濃度を増加させて、屈折率を下げることができる。
【0042】
本発明における低屈折率層(d)は、前記シリカ微粒子[3]の存在下においてシランカップリング剤[1]とアルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]とを加水分解した後、重縮合を行わせて、前記シリカ微粒子[3]と結合してなるフッ素含有シロキサンポリマーを含有するコーティング膜でとすることが、低屈折率化、すなわち表面反射率をより低減するとともに耐擦傷性をより高めることが可能となることから特に好ましい。
【0043】
また、低屈折率層(d)を形成する場合には、シランカップリング剤[1]、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]、およびシリカ微粒子[3]、もしくはあらかじめこれらの混合物を共重合させたものを含有する組成物を、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトンから選ばれる少なくとも1種以上の溶剤に分散させた液を、塗布した後、乾燥・硬化させ、低屈折率層(d)を形成する方法をとることが好ましい。これにより、耐擦傷性を高くすることができる。
【0044】
この場合の溶剤の量は、必要とする組成物の粘度、目的とする硬化被膜の厚さ、乾燥温度条件などにより適宜変更できる。通常は、塗布液中の有効成分であるシランカップリング剤[1]、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]、シリカ微粒子[3]等の構成成分の合計量1質量部に対して、好ましくは0.05〜100倍質量部、より好ましくは0.1〜50倍質量部、さらに好ましくは、1〜40倍質量部の溶剤を用いる。
【0045】
硬化触媒としては、シランカップリング剤[1]の縮合反応を促進するものが好ましく、このようなものとして酸化合物を挙げることができる。これらの中でルイス酸化合物が好ましい。ルイス酸化合物の例として、アセトアセトキシアルミニウム等の金属アルコキシドや金属キレートを挙げることができる。この硬化触媒の量は、適宜決定することができるが、例えば、シランカップリング剤[1]100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部である。
【0046】
低屈折率層(d)の構成比としては固形分比で、シランカップリング剤[1]が0.2〜0.4、アルコキシシリル基を有するフッ素樹脂[2]が0.2〜0.4、シリカ微粒子[3]が0.2〜0.6であることが反射率などの光学特性、表面硬度などの点からも好ましい。また、塗膜表面のF元素とSi元素との原子比がF/Siが0.5〜5.0であり、さらには0.7〜3.0であることが耐擦傷性と防汚性の点から好ましい。原子比はElectron Spectroscopy for Chemical Analysis(ESCA分析)により求めることができる。
【0047】
本発明では低屈折率層(d)を形成する際に、さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤、酸化防止剤、分散剤等の各種添加剤を含有してもよい。特にレベリング剤の添加は好ましく、例えばシリコーン系レベリング剤、アクリル系レベリング剤、フッ素系レベリング剤などであり、特にフッ素系レベリング剤が少量の添加で有効である。フッ素系レベリング剤としてはフッ素系界面活性剤が好適に用いられ、具体例として、大日本インキ化学工業(株)製の“メガファック F479”、住友3M(株)製“フロラード FC−4430”などが挙げられる。
【0048】
低屈折率層(d)は、上記した組成物からなる塗工液をマイクログラビアコーティング、キスリバースグラビアコーティング、キスダイコーティングなどの方式により高屈折率層(c)上に塗工し、熱硬化あるいは紫外線等の活性線硬化により形成する方法が好ましく行われる。尚、硬化後には低屈折率層(d)の傷付きや埃等の付着を防止するために保護フィルム(f)を貼り合わせるのが好ましい。
【0049】
保護フィルム(f)は特に限定されるものではないが、低屈折率層(d)との90度剥離強度が100〜3000mN/25mmの範囲であるものが好ましく、市販の保護フィルムを使用できる。具体的には、サンエー科研製“サニテクト”、日立化成製“ヒダレックス”、東レフィルム加工(株)製“トレテック”などが挙げられる。
【0050】
高屈折率層(c)の構成成分の一例としては、バインダー成分(A)単体でも構わないが、最終的に得られる反射防止フィルム表面の帯電防止性を付与するために、金属化合物粒子(B)を併用することが好ましい。バインダー成分(A)は、(メタ)アクリレート化合物が用いられる。なお、本明細書において「・・・(メタ)アクリ・・・」とは、「・・・アクリ・・・または・・・メタアクリ・・・」を略して表示したものである。(メタ)アクリレート化合物は、活性光線照射によりラジカル重合し、形成される膜の耐溶剤性や硬度を向上させるため好ましく、さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましい。例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、エチレン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−イソシアヌル酸エステルトリ(メタ)アクリレート等の3官能(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0051】
バインダー成分(A)は、金属化合物粒子の分散性を向上させるため、カルボキシル基や、リン酸基、スルホン酸基等の酸性官能基を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。具体的には、酸性官能基含有モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2−メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和カルボン酸、モノ(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジフェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェート等のリン酸(メタ)アクリル酸エステル、2−スルホエステル(メタ)アクリレート等が挙げられる。その他、アミド結合、ウレタン結合、エーテル結合などの極性を持った結合を有する(メタ)アクリレート化合物が使用できる。
【0052】
ここで用いられる金属化合物粒子(B)としては、導電性の各種金属酸化物粒子が好ましく用いられる。特に好ましくは錫含有酸化アンチモン粒子(ATO)、亜鉛含有酸化アンチモン粒子、錫含有酸化インジウム粒子(ITO)、酸化亜鉛/酸化アルミニウム粒子、酸化アンチモン粒子等である。さらに好ましくは錫含有酸化インジウム粒子(ITO)が用いられる。
【0053】
導電性を構成する導電性金属化合物粒子(B)について、平均1次粒子径(BET法により測定される球相当径)が0.5μm以下の粒子が好適に使用される。より好ましくは、0.001〜0.3μm、さらに好ましくは0.005〜0.2μmの粒子径のものが用いられる。該平均粒子径が、この範囲を超えると生成される被膜(高屈折率層(c))の透明性を低下させ、この範囲未満では、該金属化合物粒子が凝集し易く生成被膜(高屈折率層(c))のヘイズ値が増大する。いずれの場合も、所望のヘイズ値を得ることが困難になる。
【0054】
本発明では、高屈折率層(c)の構成成分に、導電性の効果をさらに向上させることを目的としてポリピロール、ポリチオフェン、およびポリアニリン等の導電性ポリマー、金属アルコレートおよびキレート化合物などの有機金属化合物を、さらに含有させることもできる。
【0055】
本発明で高屈折率層(c)を形成する際に、塗布したバインダー成分の硬化を進めるために開始剤を使用してもよい。該開始剤としては、塗布したバインダー成分を、ラジカル反応、アニオン反応、カチオン反応等による重合および/または架橋反応を開始あるいは促進せしめるものであり、従来から公知のチオキサントン誘導体、アゾ化合物、ジアゾ化合物、芳香族カルボニル化合物、ジアルキルアミノ安息香酸エステル、過酸化物、アクリジン誘導体、フェナジン誘導体、キノキサリン誘導体等の各種光重合開始剤が使用可能である。この光重合開始剤の量は、バインダー成分(A)100質量部に対して、通常、0.1〜20質量部、さらには1〜15質量部の範囲で好ましく添加される。かかる好ましい範囲であると、光重合が十分に早く、硬度および耐擦過性を満足させるために短時間の光照射でよく、一方、塗膜の導電性、耐摩耗性、耐候性等の機能が低下することもない。
【0056】
また、本発明で高屈折率層(c)を形成する際に、上記開始剤の、酸素阻害による感度の低下を防止するために、光重合開始剤にアミン化合物を共存させてもよい。さらに必要に応じて、例えば、重合禁止剤や、硬化触媒、酸化防止剤、分散剤、レベリング剤、シランカップリング剤等の各種添加剤を含有してもよい。また、表面硬度の向上を目的として、アルキルシリケート類およびその加水分解物、コロイダルシリカ、乾式シリカ、湿式シリカ、酸化チタン等の無機粒子、コロイド状に分散したシリカ微粒子等を、さらに含有させることもできる。
【0057】
本発明において、高屈折率層(c)の構成成分の配合割合は、バインダー成分(A)と金属化合物粒子(B)との質量割合〔(A) /(B) 〕が10/90〜30/70であることが好ましく、さらに好ましくは15/85〜25/75である。金属化合物粒子(B)がかかる好ましい範囲であると、得られる膜は透明性十分で、導電性も良好であり、一方、得られる膜の各種物理的、化学的強度が悪くなることもない。
【0058】
本発明の高屈折率層(c)によって所望水準の帯電防止性が付与されるためには、該層の表面抵抗値が1×1011Ω/□以下になるよう添加量を制御することが好ましく、さらには1×1010Ω/□以下になるよう添加量を制御するのが好ましい。
【0059】
本発明における高屈折率層(c)は、鮮明性、透明性の点から、全光線透過率が好ましくは40%以上、さらに好ましくは50%以上の層である。
【0060】
本発明において高屈折率層(c)は、好ましくは溶媒で分散させた塗布液を調整し、その塗布液をハードコート層(b)上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成することができる。
【0061】
本発明における高屈折率層(c)形成において使用される溶剤は、塗布または印刷作業性を改善し、また金属化合物粒子の分散性を改善するために配合するものであり、バインダー成分(A)を溶解するものであれば、従来から公知の各種有機溶媒を使用することができる。特に、本発明においては、組成物の粘度の安定性、乾燥性の観点から沸点が60〜180℃の有機溶媒が好ましく、さらに、そのうち酸素原子を有する有機溶媒が金属化合物粒子との親和性がよいので好適である。かかる有機溶媒としては、具体的には、例えば、メタノールや、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、tert―ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、イソプロピルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジアセチルアセトン、アセチルアセトン等が好適に挙げられる。これらは単一で使用してもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0062】
また、有機溶媒の量は、塗布手段や、印刷手段に応じ作業性のよい状態の粘度に組成物がなるように任意の量配合すればよいが、通常組成物の固形分濃度が60質量%以下、好ましくは、50質量%以下になる程度が適当である。本発明の光硬化性導電膜形成用組成物の調製としては、任意の方法が採用可能であるが、通常バインダー成分(A)を有機溶媒で溶解させた溶液中に、金属化合物粒子(B)を添加し、ペイントシェーカーや、ボールミル、サンドミル、三本ロール、アトライター、ホモミキサー等の分散機により分散させ、しかる後、光重合開始剤を添加し、均一に溶解させる方法が適当である。
【0063】
本発明における反射防止フィルムが高透明性となるためには、ヘイズが1〜3%であることが好ましく、さらに好ましくは1.05〜2.95%である。ヘイズがこの範囲であると、透明性が十分である。
【0064】
ハードコート層(b)は、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリレート化合物を含む組成物が挙げられ、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、n‐ブチル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、などの単官能アクリレート化合物、さらに、(メタ)アクリロイル基が分子内に2個以上の多官能(メタ)アクリレート化合物は、耐溶剤性等が向上するので本発明においては特に好ましい。多官能(メタ)アクリレートの具体例には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの単量体は、1種または2種以上を混合して使用してもよい。さらに、シリカなどの微粒子、テトラエトキシシランなどの反応性珪素化合物を含んでいてもよい。これらのうち、生産性および硬度の点から紫外線硬化型の多官能(メタ)アクリレートを含む組成物が好ましく用いられる。
【0065】
前記のように、基材フィルム(a)とハードコート層(b)の界面で生じる干渉縞を低減させることがうねり振幅を小さくするために重要である。本発明の光学フィルムにおいては、以下に述べる基材フィルムとハードコート層との積層構成であるハードコートフィルムを用いることで、干渉縞のない反射防止フィルムを形成することができるのでより好ましい。
【0066】
本発明におけるハードコートフィルムは、波長400〜600nmでのハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が1%以下であることが好ましい。平均うねり振幅は、より好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。
【0067】
ハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が1%より大きくなると、蛍光灯などの波長強度分布を有する光が反射したときに虹彩模様が発生し、視認性が悪化する。さらに平均うねり振幅が1%を越える構成の場合には、ハードコート層と基材の接着性が低下する。
【0068】
本発明で述べる波長400〜600nmでの反射率の平均うねり振幅とは、以下のようにして測定される。まず、ハードコートフィルムのハードコート層を積層した面を測定面とし、その反対面を60℃光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるように、サンドペーパー等を用いて粗面化する。次に、粗面化した部分について、波長400〜600nmにおける可視光線平均透過率が5%以下となるように黒色に着色して測定サンプルとする。ハードコートフィルムの測定面を、分光光度計にて、測定面から10度の入射角で測定したときに観測される結果を図5に示す。図5において、曲線(c)が、波長と、測定された反射率との関係を表した結果である。反射率において、波長400〜600nmでのうねり、すなわち、波長の変化に伴って反射率が上下に波打つ変動の微積分学的意味での極大値(一次微分係数=0、二次微分係数<0)と極小値(一次微分係数=0、二次微分係数>0)の差をうねり振幅(a)と定義する。図5で示すように、波長400〜600nmにおける反射率のうねりの山頂部分頂点(極大点)を結んだ線(山頂線(b))とうねりの谷底部分(極小点)を結んだ線(谷底線(d))の2つの反射率の折れ線グラフの差、すなわち、うねり振幅(a)を、境界点(400nm、600nm)を含めて20nm間隔のサンプル点11箇所(波長が(400+20*i(i=0〜10の整数))nmとなる箇所)で求め、この11個の値を平均した値を平均うねり振幅と定義する。本発明のハードコートフィルムは、上記に加え、同様にして測定した波長600〜740nmにおけるハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が2%以下、好ましくは1%以下である場合、より虹彩模様が低減できるので好ましい。
【0069】
本発明におけるハードコートフィルムの表面反射率は6%以下であることが好ましい。さらに好ましくは5.5%以下である。表面反射率は低いほど好ましい。表面反射率が6%より大きくなると、銘板、タッチパネルなどに用いたときに太陽光や蛍光灯などが写り込み、視認性が低下し、不快な印象を与える場合があるからである。
【0070】
本発明におけるハードコートフィルムのヘイズは6%以下であることが好ましい。さらに好ましくは3%以下であり、最も好ましくは1%以下である。ヘイズが6%より大きくなると、銘板、タッチパネルなどに用いたときに、透過画像が不鮮明になる場合があるからである。
【0071】
本発明におけるハードコートフィルムにおいては、基材フィルム(a)の少なくとも片面にハードコート層(b)が積層される。ハードコート層(b)は、実用上、好ましくは本願で規定する鉛筆硬度が2H以上、かつ、本願で規定するスチールウール強度が2kg/cm以上が望ましい。基材フィルム(a)とハードコート層(b)との間に、密着性を向上させる目的で易接着層を設けることが良く行われる。しかし、易接着層を設けると、光学的な干渉を起こしやすく、反射率の平均うねり振幅が大きくなるので、本発明のハードコートフィルムにおいては、易接着層を介さずにハードコート層(b)が基材フィルム(a)上に直接積層されていることが好ましい。
【0072】
このハードコート層(b)は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂または金属酸化物などで構成することができる。特に、硬度と耐久性などの点で、シリコーン系樹脂とアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性および生産性の点で、アクリル系樹脂、特に、活性線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0073】
活性線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
【0074】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレートなどであり、また、メラミンやイソシアヌール酸などの剛直な骨格にアクリル基を結合したものなども用いられ得る。
【0075】
また、反応性希釈剤とは、塗布剤の媒体として塗布工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
【0076】
また、市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズなど)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズなど)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズなど)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズなど)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズなど)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズなど)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズなど)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズなど)などの製品を利用することができる。
【0077】
ハードコート層形成組成物を構成するアクリル化合物の代表的なものを例示すると、1分子中に3個以上、より好ましくは4個以上、さらに好ましくは5個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの少なくとも1種と、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の少なくとも1種とからなる混合物を主たる構成成分とし、活性線硬化または熱硬化によって得られるハードコート層が、硬度、耐摩耗性および可撓性に優れている点で好ましく用いられる。(メタ)アクリロイルオキシ基が多すぎる場合には、単量体は高粘度となり取り扱いし難くなり、また、高分子量とならざるを得なくなって塗布液として用いることが困難となるので、1分子中の(メタ)アクリロイルオキシ基は好ましくは10個以下である。
【0078】
1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーとしては、1分子中に3個以上のアルコール性水酸基を有する多価アルコールの該水酸基が、3個以上の(メタ)アクリル酸のエステル化物となっている化合物などを挙げることができる。具体的な例としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートヘキサメチレンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートトルエンジイソシアネートウレタンプレポリマー、ペンタエリスリトールトリアクリレートイソホロンジイソシアネートウレタンプレポリマーなどを用いることができる。これらの単量体およびプレポリマーは、1種または2種以上を混合して使用することができる。特にこれらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物は、後述するイソシアネートとの併用により、ハードコート層(b)と基材フィルム(a)の接着性を向上させることができるので特に好ましい。
【0079】
これらの1分子中に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単量体およびプレポリマーの使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して20〜90質量%が好ましく、より好ましくは30〜80質量%、最も好ましくは30〜70質量%である。
【0080】
上記単量体およびプレポリマーの使用割合が20質量%未満の場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜を得るという点で不十分な場合がある。また、その使用割合がが90質量%を超える場合は、硬化による収縮が大きく、硬化被膜に歪が残ったり、被膜の可撓性が低下したり、硬化被膜側に大きくカールするなどの不都合を招く場合がある。
【0081】
また、これらの内、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物の使用割合は、ハードコート層形成組成物総量に対して10〜80質量%が好ましく、より好ましくは20〜70質量%、最も好ましくは30〜60質量%である。使用割合が10質量%未満の場合には、ハードコート層(b)と基材フィルム(a)の接着性を向上させる効果が小さい。使用割合が80質量%を超える場合は、ハードコート層内の架橋密度が低下して、硬度が低下する傾向がある。
【0082】
なお、本明細書において、ハードコート層形成組成物成分の質量%表示は、原則として、硬化反応などが完了して完成したハードコート層における反応結果物に基づいて算出されるものとする。即ち、モノマーならば反応結果物中のポリマー中残基で計上する。よって、反応終了後に蒸散する溶媒等は塗布液としては含有されるとしても、ハードコート層形成組成物としては計上しない。
【0083】
次に、1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体としては、ラジカル重合性のある通常の単量体ならば特に限定されずに使用することができる。
【0084】
また、分子内に2個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、下記(a)〜(f)の(メタ)アクリレート等を用いることができる。すなわち、
(a)炭素数2〜12のアルキレングリコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートなど;
(b)ポリオキシアルキレングリコールの(メタ)アクリレート酸ジエステル類:ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレートなど;
(c)多価アルコールの(メタ)アクリル酸ジエステル類:ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートなど;
(d)ビスフェノールAあるいはビスフェノールAの水素化物のエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド付加物の(メタ)アクリル酸ジエステル類:2,2’−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−アクリロキシプロポキシフェニル)プロパンなど;
(e)ジイソシアネート化合物と2個以上のアルコール性水酸基含有化合物を予め反応させて得られる末端イソシアネート基含有化合物に、さらにアルコール性水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するウレタン(メタ)アクリレート類など、および;
(f)分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物にアクリル酸またはメタクリル酸を反応させて得られる分子内に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有するエポキシ(メタ)アクリレート類など。
【0085】
分子内に1個のエチレン性不飽和二重結合を有する化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−およびi−プロピル(メタ)アクリレート、n−、sec−、およびt−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドンなどを用いることができる。これらの単量体は、1種または2種以上混合して使用してもよい。
【0086】
これらの1分子中に1〜2個のエチレン性不飽和二重結合を有する単量体の使用割合は、ハードコート層構成成分総量に対して10〜50質量%が好ましく、より好ましくは20〜40質量%である。単量体の使用割合が50質量%を超える場合には、十分な耐摩耗性を有する硬化被膜が得られにくくなる場合がある。また、その使用割合が10質量%未満の場合には、被膜の可撓性が低下したり、基材フィルム上に設けた積層膜との接着性が低下する場合がある。
【0087】
本発明において、ハードコート形成組成物を硬化させる方法としては、例えば、活性線として紫外線を照射する方法や高温加熱法等を用いることができる。これらの方法を用いる場合には、前記ハードコート組成物に、光重合開始剤または熱重合開始剤等を加えることが望ましい。
【0088】
光重合開始剤の具体的な例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、メチルベンゾイルフォルメート、p−イソプロピル−α−ヒドロキシイソブチルフェノン、α−ヒドロキシイソブチルフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのカルボニル化合物、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントンなどの硫黄化合物などを用いることができる。これらの光重合開始剤は単独で使用してもよいし、2種以上組み合せて用いてもよい。また、熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイドまたはジ−t−ブチルパーオキサイドなどのパーオキサイド化合物などを用いることができる。
【0089】
光重合開始剤または熱重合開始剤の使用量は、ハードコート層形成組成物100質量部に対して、0.01〜10質量部が適当である。電子線またはガンマ線を硬化手段とする場合には、必ずしも重合開始剤を添加する必要はない。また220℃以上の高温で熱硬化させる場合には、熱重合開始剤の添加は必ずしも必要ではない。
【0090】
本発明におけるハードコート層形成組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有していることが好ましい。ハードコート層形成組成物中のポリイソシアネート化合物は、ハードコート層と基材フィルムとを易接着層なしで直接接着させる機能および虹彩模様を低減させる機能を有する。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、2,4−および/または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、水添MDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート等の少なくとも2量体以上のものが挙げられる。これらポリイソシアネート化合物は、単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0091】
これらのポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体は、前記したハードコート層形成組成物に混合されて基材フィルムに塗布される。上記ポリイソシアネート化合物および/またはその誘導体の配合量は、接着性、表面硬度、耐湿熱性および虹彩模様低減の点で、ハードコート層形成組成物に対し、好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜30質量%、さらに好ましくは3〜20質量%である。配合量が0.5質量%未満の場合には、接着性向上効果が不足したり、虹彩模様の低減が不十分な場合があり、また配合量が50質量%を超えると表面硬度が低下する場合がある。
【0092】
上記ポリイソシアネートを添加したハードコート層形成組成物は、その硬化効率を高める目的で有機金属触媒を用いるのが好ましい。
【0093】
有機金属触媒は、特に限定されるものではなく、有機錫化合物、有機アルミニウム化合物、有機4A族元素(チタン、ジルコニウムまたはハフニウム)化合物などが挙げられるが、安全性を考慮した場合、非錫系金属触媒である有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、および、有機チタン化合物から選ばれたものが好ましく適用される。有機錫化合物としては、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウリレートなどのジブチル錫脂肪酸塩、ジオクチル錫ジラウリレートなどのジオクチル錫脂肪酸塩が例示できる。
【0094】
有機ジルコニウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ハフニウム化合物、有機チタン化合物としては、これらの金属のオルトエステルとβ−ケトエステル(βジケトン)の反応生成物が例示され、具体的にはジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、アルミニウムテトラ−n−プロポキシド、アルミニウムテトライソプロポキシド、アルミニウムテトラ−n−ブトキシドなどの金属オルトエステルと、アセチルアセトン、メチルアセテート、エチルアセトアセテート、n−プロピルアセトアセテート、イソプロピルアセトアセテート、t−ブチルアセトアセテートなどのβケトエステル(βジケトン)との反応生成物を挙げることができる。金属オルトエステルとβジケトエステル(βジケトン)の混合モル比率は4:1〜1:4程度が好ましく、より好ましくは2:1〜1:4である。4:1より金属オルトエステルが多い場合は触媒の反応性が高すぎてポットライフが短くなりやすく、1:4よりβジケトエステルが多い場合は触媒活性が低下するため好ましい態様では無い。本発明における有機金属系触媒のハードコート組成物中の含有量は0.001〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜2質量%である。0.001質量%より少ない場合には触媒添加効果が低く、10質量%より多くすることは経済的見地から好ましくない。
【0095】
上記した組成物の好ましい態様としては、少なくともひとつの水酸基を有する多官能アクリレート化合物10〜80質量%、イソシアネート化合物1〜30質量%および必要に応じて有機金属系触媒0.001から10質量%の範囲とするのが望ましい。さらに必要に応じて1〜2個のエチレン性不飽和結合を有する単量体を50質量%以下添加しても良い。
【0096】
本発明で述べるハードコート層中には、本発明の効果が損なわれない範囲で、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、レベリング剤および帯電防止剤などを用いることができる。
【0097】
シリコーン系レベリング剤としては、ポリジメチルシロキサンを基本骨格とし、ポリオキシアルキレン基が付加されたものが好ましく、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
【0098】
またハードコート層上にさらに積層膜を設ける場合には、接着性を阻害しないアクリル系レベリング剤を適用するのが好ましい。このようなレベリング剤としては「ARUFON−UP1000シリーズ、UH2000シリーズ、UC3000シリーズ(商品名):東亜合成化学(株)製)などを好ましく用いることができる。レベリング剤の添加量はハードコート組成物100質量部に対し、0.01〜5質量部の範囲とするのが望ましい。
【0099】
本発明におけるハードコートフィルムは、基材フィルム(a)とハードコート層(b)の界面に微細な突起が形成されていることが好ましい。この突起は、山脈状の不連続な突起であり、その突起サイズは長さが0.1〜100μm、好ましくは0.1μm〜30μmであり、幅が0.05μm〜20μm、好ましくは0.05μm〜10μmである。また突起の高さは0.05μm〜2μm、好ましくは0.1μm〜1μm、さらに好ましくは0.2μm〜0.7μmであるのが虹彩模様消去の点で望ましい。この微細な突起は、反射率のうねり振幅を低減することができ、しかもフィルムの透明性に悪影響を及ぼさない程度のものである。
【0100】
このような突起を形成させるには、まず適度に結晶化(フィルム断面からラマン法により測定した結晶化度が3〜25%程度)している基材フィルム表面に、ポリイソシアネート化合物を含有するハードコート形成組成物を塗布する。これにより、基材フィルムの結晶化度の低い部分にハードコート形成組成物が選択的に浸透する。その後、予熱工程を経て幅方向に延伸すると、延伸により浸透部分と非浸透部分との延伸性の違いによる微細な凹凸(山脈状突起)が形成されると推定される。すなわち、発明者らは、ハードコート形成組成物中にポリイソシアネート化合物を含有させることによりこのような現象が発現することを見いだしたものである。このような現象は、ハードコート層(b)と基材フィルム(a)との接着性を向上させる点でも有利である。
【0101】
幅方向に延伸されたフィルムは、連続的に熱処理工程に導かれ、約220〜245℃の高温で熱処理されることにより、ハードコート層(b)が硬化すると共に基材フィルム(a)との接着性を向上させる。熱処理時間は長い方が好ましいが、温度に応じて10〜30秒程度とするのが望ましい。また高速で製膜し、熱量が不足する場合には熱処理後に紫外線などの活性線を照射して硬化させる方法が有効である。
【0102】
また、前記適度に結晶化している基材フィルムを得るためには、溶融押出された未延伸フィルム表面を高温のロール群に接触させたり、ラジエーションヒーターを用いてフィルム面を加熱して長手方向に延伸することによって得ることができる。延伸倍率は2.5〜3.2倍程度が好ましい。またフィルム中に結晶核剤を添加して結晶化を促進させたり、微結晶を形成させる方法も有効である。
【0103】
次に、本発明のハードコートフィルムの製造方法の一例について、基材フィルムとしてポリエチレンテレフタレート(以下PETと略称する)を例にして説明するが、これに限定されるものではない。
【0104】
平均粒子経0.3μmのシリカ粒子を0.2質量%含有するPETペレット(極限粘度0.62dl/g)を、180℃で約2時間真空乾燥して十分に水分を除去した後、押し出し機に供給し、260〜300℃の温度で溶融押し出しし、T字型の口金からシート状に成形する。このようにして得られたシート状物を、鏡面の冷却ドラム上で冷却固化して未延伸シートを得る。このときキャストドラムとの密着性を向上させる目的で静電印加法を用いることが好ましい。その後、得られた未延伸シートを、70〜120℃に加熱したロール群で長手方向に2〜5倍の延伸を行なう。長手方向の延伸は結晶配向を低く、かつ熱結晶化を進行させる条件が好ましく、延伸時にラジエーションヒーターで加熱しつつ延伸する方法が好ましい。次いで、このようにして1軸に延伸されたフィルムの表面に、ポリイソシアネート化合物を配合したハードコート層形成組成物を塗布し、その後、フィルムの両端をクリップで把持しつつテンターに導く。テンター内で予熱後、幅方向に約2〜5倍延伸する。幅方向に延伸された積層フィルムは、さらに3〜10%の弛緩処理を行いつつ、基材フィルムの結晶配向と塗膜硬化を完了させる熱処理(おおよそ、樹脂のガラス転移温度〜融点の温度、PETの場合では200〜245℃)を行なうと、カールが著しく改良されるので特に好ましい。
【0105】
ハードコート層形成組成物の塗布手段としては、各種の塗布方法、例えば、リバースコート法、グラビアコート法、ロッドコート法、バーコート法、ダイコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
【0106】
本発明で用いられる活性線としては、紫外線、電子線および放射線(α線、β線、γ線など)などアクリル系のビニル基を重合させる電磁波が挙げられ、実用的には、紫外線が簡便であり好ましい。紫外線源としては、紫外線蛍光灯、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノン灯、炭素アーク灯などを用いることができる。また、活性線を照射するときに、低酸素濃度下で照射を行なうと、効率よく硬化させることができる。またさらに、電子線方式は、装置が高価で不活性気体下での操作が必要ではあるが、塗布層中に光重合開始剤や光増感剤などを含有させなくてもよい点で有利である。
【0107】
本発明で用いられる熱硬化に必要な熱としては、スチームヒーター、電気ヒーター、赤外線ヒーターあるいは遠赤外線ヒーターなどを用いて温度を少なくとも140℃以上に加温された空気、不活性ガスを、スリットノズルを用いて基材、塗膜に吹きあてることにより与えられる熱が挙げられ、中でも200℃以上に加温された空気による熱が好ましく、さらに好ましくは200℃以上に加温された窒素による熱であることが、硬化速度が早いので好ましい。
【0108】
ハードコート層の厚さは、用途に応じて決定すればよいが、通常0.1μm〜30μmが好ましく、より好ましくは1μm〜15μmである。ハードコート層の厚さが0.1μm未満の場合には十分硬化していても薄すぎるために、表面硬度が十分でなく、傷が付きやすくなる傾向にある。一方、ハードコート層の厚さが30μmを超える場合には、折り曲げなどの応力により、硬化膜にクラックが入りやすくなる傾向にある。
【0109】
なお、本発明では、基材フィルム(a)の反対面に近赤外線遮蔽層(g)との接着性を向上させる易接着層を形成することもできる。この易接着層は、ハードコート層(b)を形成する活性線硬化性または熱硬化性組成物を含む塗液を塗布するときに同時にその裏面に塗布し、乾燥、場合によっては延伸を行ない、設けても良いことは言うまでもない。
【0110】
このようにして得られた本発明のハードコートフィルムは、製膜工程内で一気にハードコート層(b)を設けることができるので生産性が良く、表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、ハードコート層(b)と基材フィルム(a)との密着性が優れており、かつ虹彩模様発生が抑制され視認性に優れているので、広範な用途で使用できるが、特に反射防止フィルム基材として好適に使用される。
【0111】
本発明の光学フィルムは、基材フィルムの、上記したハードコート層(b)と反射防止層(e)を積層した面と反対側の面に近赤外線遮蔽層(g)を積層してなる。
本発明における近赤外線遮蔽層(g)は、透明高分子樹脂バインダーに近赤外線吸収能を有する色素を分散した組成物からなる積層膜であり、(1)波長820nmにおける透過率が20%以下、(2)波長850nmにおける透過率が15%以下、(3)波長950nmから1150nmにおける透過率が10%以下、の3条件を全て満たしている。波長820nmにおける透過率は17%以下が好ましく、波長850nmにおける透過率は11%以下が好ましく、波長950nmから1150nmにおける透過率は7%以下が好ましい。
【0112】
近赤外線吸収色素としては、特公昭43−25335号公報に開示されているようなジイモニウム系化合物が好適であり、中でもヘキサフルオロアンチモン酸イオンを対イオンとする塩が好適に用いられる。具体的には、日本化薬(株)製“KAYASORB”を冠称とする“IRG−022”、“IRG−023”、“IRG−050”などが挙げられる。
【0113】
前記ジイモニウム系化合物は、波長850〜1250nmの近赤外線領域に幅広く有効吸収波長域を有し、波長950nmから1150nmにおける透過率を10%以下とするためには近赤外線遮蔽層(g)の単位面積当たりの該化合物の含有量を0.1〜0.5g/mとするのが好ましく、さらには0.2〜0.3g/mとするのがより好ましい。含有量がこの範囲を下回ると近赤外線遮蔽能が劣ることとなり、また含有量がこの範囲を越えると可視線の透過率が不足し、画像が暗くなるので好ましくない。
【0114】
本発明における近赤外線吸収色素としては、前記ジイモニウム系化合物だけを用いてもかまわないが、単独で波長820nmにおける透過率を20%以下に、波長850nmにおける透過率を15%以下とするためには、含有量を多くする必要があり、可視線透過率が不足する場合もある。そのため本発明では、前記ジイモニウム系化合物とともに波長800nmから900nmの範囲に吸収極大波長を有する近赤外線吸収色素を1種類以上併用することが好ましい。具体的には、1級および/または2級アミノ基、アルコキシ基、フッ素等のハロゲン基の1種以上の置換基を有するフタロシアニン系化合物もしくはナフタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、ジチオールニッケル錯体系化合物などが挙げられる。この中でも耐光性、耐湿熱性の点から含フッ素フタロシアニン系化合物が好適に用いられる。具体的には、日本触媒(株)製“イーエクスカラー”を冠称とする“IR−1”、“IR−10”、“IR−12”、“IR−14”等が挙げられる。
【0115】
また、シアニン系化合物は耐光性に難点があるが、それを改良した色素として、予めシアニン系化合物とクエンチャー剤をカップリングして一体化した色素が本発明においては好適に用いられる。ここでクエンチャー剤とは近赤外線吸収色素の酸化防止剤をいう。一体化することでシアニン系化合物の耐光性を改良するとともにシアニン系色素の特徴である高い吸光係数が得られることから色素の使用量を減量することができる。ここでクエンチャー剤としてはビス(1,2−ジチオフェノレート)銅テトラ−n−ブチルアンモニウム塩がジイモニウム系化合物の耐光性を損なうことがないので好ましい。シアニン系化合物とクエンチャー剤との一体化色素の具体例としては、住友精化(株)製“SD50−E04N”、“SD50−E05N”や旭電化工業(株)製“TZ−111”、“TZ−114”、“TZ−118”などが挙げられる。
【0116】
波長800nmから900nmの範囲に吸収極大波長を有する近赤外線吸収色素化合物の近赤外線遮蔽層(g)の単位面積当たりの含有量は、用いる色素の吸光係数やジイモニウム系化合物の含有量に応じて決められるが、波長820nmにおける透過率を20%以下に、波長850nmにおける透過率を15%以下とするためには、含有量は0.01〜0.3g/mとするのが好ましく、特に、シアニン系化合物とクエンチャー剤との一体化色素を用いる場合は0.01〜0.1g/mとするのが好ましい。含有量がこの範囲を下回ると近赤外線遮蔽能が劣ることとなり、また含有量がこの範囲を越えると可視線の透過率が不足し、画像が暗くなるので好ましくない。
【0117】
本発明で用いる透明な高分子樹脂バインダーは、実質的に可視線の吸収がなく無色透明であり、ポリエステル系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、(メタ)アクリルウレタン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が好ましく用いられ、中でも(メタ)アクリル系樹脂が好適である。
【0118】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−またはisoプロピル(メタ)アクリレート、n−またはsec−またはtert−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸、グリシジル(メタ)アクリレート、含フッ素(メタ)アクリレート、スチレンから選ばれる数種類の不飽和単量体を共重合して得られるものが好適である。さらには近赤外線吸収色素の耐光性を向上させるため、紫外線安定性基であるヒンダードアミンを有する不飽和単量体(例えば旭電化工業(株)製 アデカスタブ LA−82、LA−87等)や、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系等の紫外線吸収基を有する不飽和単量体を共重合したものを用いるか、またはヒンダードアミン系添加剤(例えば三共ライフテック(株)製 サノール LS−765、LS−2626など)や紫外線吸収剤を重合後の樹脂に添加することが好ましい。
【0119】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は、耐熱性の点からガラス転移点が80℃以上に設計されているものが好ましいが、これに限定されるものではない。また、近赤外線吸収色素への水分の影響を小さくするため、樹脂の吸湿性は2%以下であることが好ましい。
【0120】
さらに、本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は耐溶剤性を向上させるために架橋しても良く、この場合、脂肪族ジイソシアネートや脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート、メラミン等の架橋剤が好適に用いられる。また、易接着層との接着性を向上させるためにシランカップリング剤を添加してもよい。シランカップリング剤としては不飽和基やエポキシ基を有するアルコキシシラン化合物が挙げられる。
【0121】
本発明で用いる(メタ)アクリル系樹脂は有機溶剤に可溶であることが好ましく、特にメチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等に可溶であるものが好ましく、これらの単体もしくは2種以上の混合溶媒として用いられる。(メタ)アクリル系樹脂の粘度は、近赤外線吸収色素化合物を調合して塗料化する際の作業性を考慮して、50〜5000mPa.sであることが好ましく、(メタ)アクリル系樹脂の固形分濃度は10〜50質量%であることが好ましい。
【0122】
上記した(メタ)アクリル系樹脂バインダーの具体例としては、三菱レイヨン(株)製 “ダイヤナール BR−80”や日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド IR−G205”などが挙げられる。
【0123】
本発明における近赤外線遮蔽層(g)には、透明高分子樹脂バインダーに近赤外線吸収色素とともにネオンガスの発光に伴う赤色純度を低下させる波長590nm付近の可視線を選択的に吸収する色素を混ぜ合わせることにより、色調補正機能を持たせることが好ましい。その場合、近赤外線遮蔽層(g)は、波長570〜610nmの範囲に主吸収ピークを有し、かつ主吸収ピークの半値幅が50nm以下である色素を含み、波長590nmにおける透過率が35%以下、より好ましくは32%以下で、かつ全光線透過率が55%以上、より好ましくは60%以上であることが好ましい。波長590nmの透過率は低い方が好ましいが、低くなりすぎると全光線透過率も低くなるため、好ましくは25%以上である。
【0124】
色調補正に用いる色素は、例えば特開2002−129052号公報に開示されているようなポルフィラジン系化合物(別名テトラアザポルフィリン化合物)が、耐光性、有機溶剤への溶解性、吸光係数の点から好適に用いられる。具体的には山田化学工業(株)製 “TAP−2”等が挙げられる。近赤外線遮蔽層(g)の単位面積当たりのポルフィラジン化合物の含有量は0.03〜0.07g/mとするのが好ましく、さらには0.04〜0.06g/mとするのがより好ましい。含有量がこの範囲を下回ると色調補正能が劣ることとなり、また含有量がこの範囲を越えると可視線の透過率が不足し、画像が暗くなるので好ましくない。
【0125】
上記した近赤外線吸収色素および色調補正用の色素は染料または顔料のどちらでも使用できるが、透明性や可視線の透過率を考慮すると染料を用いるのが好ましい。染料を用いる場合は、高分子樹脂バインダーが可溶である有機溶媒に溶解するものが好ましい。かかる有機溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0126】
近赤外線吸収色素および色調補正用の色素は、上記有機溶媒に溶解後、高分子樹脂バインダー溶液や有機溶媒と混合され塗料化されて用いられる。さらに、塗料には、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、消泡剤などを配合することも好ましい。
【0127】
前記塗料は、3本リバースコーターや正転またはリバースグラビアコーター、コンマコーター、ダイコーターなどのコーティング方式により、基材フィルム(a)の易接着層上に塗工され、オーブンで乾燥して成膜し、近赤外線遮蔽層(g)が形成される。
【0128】
本発明の近赤外線遮蔽層(g)の厚みは特に限定されるものではないが、3〜30μmが好ましく、さらには4〜15μmが前記(メタ)アクリル系樹脂バインダーのフィルムへの塗工性の点からより好適である。
【0129】
本発明の光学フィルムと半強化ガラスや、あるいは電磁波遮蔽フィルムなどの他の光学フィルター要素と貼り合わせるために、近赤外線遮蔽層(g)の上に透明粘着層(h)が積層され、さらに貼り合わせ工程までの間に他の面との粘着を防ぐために剥離フィルム(i)が積層されているのが好ましい。
【0130】
本発明における透明粘着層(h)としては、2つの物体をその粘着作用により接着させるものであれば特に限定されない。透明粘着層(h)を形成する粘着剤としては、ゴム系、ビニル重合系、縮合重合系、熱硬化性樹脂系、シリコーン系などを用いることができる。この中で、ゴム系の粘着剤としては、ブタジエン−スチレン共重合体系(SBR)、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体系(NBR)、クロロプレン重合体系、イソブチレン−イソプレン共重合体系(ブチルゴム)などを挙げることができる。ビニル重合系の粘着剤としては、アクリル樹脂系、スチレン樹脂系、酢酸ビニル−エチレン共重合体系、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系などを挙げることができる。縮合重合系の粘着剤としては、ポリエステル樹脂系を挙げることができる。熱硬化樹脂系の粘着剤としては、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系、ホルマリン樹脂系などを挙げることができる。これらの樹脂は単独で使用してもよく、また2種以上混合して使用しても良い。さらに、透明粘着剤は、溶剤型粘着剤と無溶剤型粘着剤のいずれでも使用することができる。
【0131】
透明粘着層(h)の形成は、上記のような粘着剤を用いて、塗布等通常行なわれている技術を用いて実施される。さらに、透明粘着層(h)に着色剤を含有させても良い。これは、粘着剤に、例えば、有機顔料や有機染料などの着色剤を混合して用いることによって容易に達成される。耐久性の点からは有機顔料を用いるのが好ましいが、粘着剤への分散性や発色性は有機染料を用いる方が好ましい。これらの着色剤は光学フィルムの最終的な色合わせのために用いられる。本発明の光学フィルムの透過色は特に限定されるものではないが、好ましくは色度xが0.27〜0.34、yが0.27〜0.34とするのが好ましい。
【0132】
本発明における透明粘着層(h)は、アルコール等で予め脱脂した青板ガラス板に光学フィルムを貼り合わせた場合の90度におけるフィルム剥離強度が5〜25N/25mmの範囲であるものが好ましく、さらには10〜20N/25mmの範囲が好ましい。これより低いと粘着力が弱く剥がれやすくなり、逆に強いと樹脂が堅くなる傾向にあり好ましくない。透明粘着層(h)の厚みは10〜50μmが好ましく、さらには20〜30μmが好適である。
【0133】
さらに、透明粘着層(h)は実際に半強化ガラスや電磁波遮蔽フィルムなどと貼り合わされるまでの間、作業性を考慮して離型フィルム(i)と貼り合わされる。離型フィルムとしてはポリエステルなどのフィルム基材にシリコーン等の離型剤がコーティングされたフィルムが好適に用いられる。
【0134】
本発明の離型フィルム(i)の透明粘着層(h)との90度における剥離強度は10〜100mN/25mmの範囲であることが好ましく、さらには30〜70mN/25mmの範囲であることが良好な剥離感が得られる。離型フィルム(i)の具体例としては、東レフィルム加工(株)製“セラピール”などが挙げられる。
【0135】
本発明の透明粘着層(h)は、例えば3本リバースコーターや正転またはリバースグラビアコーター、コンマコーター、ダイコーターなどのコーティング方式により、前記離型フィルム(i)の離型面に塗工され、オーブンで乾燥して成膜した後、近赤外線遮蔽層(g)とラミネートすることにより積層する方法が好ましいが、本方法に限定されるものではない。
【0136】
本発明の光学フィルムは、表面反射率が低く、表面の耐擦傷性に優れ、ハードコート層由来の虹彩模様が低減されると同時に優れた近赤外線遮蔽能と色調補正能を有することからプラズマディスプレイパネル(PDP)の光学フィルターに好適に用いられ、さらにこのように機能統合することで、部品点数および貼り合わせ工程を省略することにより光学フィルターの生産性を向上させ価格低減に寄与することが可能となる。
【0137】
[特性の測定方法および効果の評価方法]
本発明における特性の測定方法および効果の評価方法は次のとおりである。
【0138】
1.反射防止フィルムの評価方法
(1)耐擦傷性;スチールウール硬度評価
耐擦傷性は、反射防止フィルムの反射防止面を#0000のスチールウールに250gの荷重をかけて、ストローク幅10cm、速度30mm/secで10往復摩擦した後、表面を目視で観察し、傷の付き方を次の5段階で評価した。5級:傷が全く付かない。4級:傷が1本以上5本以下。3級:傷が6本以上10本以下。2級:傷が11本以上。1級:全面に無数の傷。
【0139】
(2)ヘイズ測定
スガ試験機製の直読みヘイズコンピューター(NDH 2000)を用いて測定を行った。
【0140】
(3)表面抵抗値(帯電防止性)評価
三菱油化製のHIRESTAを用いて表面抵抗値の測定を行なった。
【0141】
(4)反射率測定
測定面(反射防止層を設けた側の面)の反対側表面を60℃光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるように320〜400番の耐水サンドペーパーで均一に粗面化した後、可視線透過率が5%以下となるように黒色塗料を塗布して着色した。測定面を島津製作所製の分光光度計(UV−3150)にて、測定面から5度の入射角で、波長領域380nm〜800nmにおける絶対反射スペクトルを測定し、波長400nmおよび700nmでの反射率および400nm〜700nmの領域での最低の反射率を求めた。なお、測定した反射スペクトルにうねりのある場合は、うねりの山(極大点)と谷(極小点)の中間地点を結んでいった曲線からそれぞれの反射率を求めた。
【0142】
(5)うねり振幅最大値
反射率測定により求めた波長領域400〜700nmの絶対反射スペクトルにおいて、一つのうねりの山(極大点A)から、その両隣にある谷(極小点B、C)を結ぶ線分BCに向かって垂線を下ろして、該垂線と線分BCが直交する点Dまでの距離ADを振幅値(単位は反射率と同じく[%])と定義する。波長領域400〜700nmの範囲にあるうねりの振幅値の最大値を求め、うねり振幅最大値と定義した。
【0143】
(6)屈折率測定
JIS K 7105に基づき、アッベ屈折率計を用いて測定を行った。
【0144】
(7)表面粗さ測定
Digital Instruments社製の原子間力顕微鏡でフィルム表面形状を観察し、中心線平均表面粗さRaおよび最大高さRmaxを求めた。
【0145】
2.近赤外線遮蔽層の評価方法
(1)透過スペクトル
島津製作所製の分光光度計(U−3410)にて、波長380〜1200nmの範囲でフィルムの透過スペクトルを測定した。その中の特定波長として、590nm、820nm、850nmの透過率、および950〜1150nmの範囲での最高の透過率を求めた。
【0146】
(2)全光線透過率
スガ試験機製の直読みヘイズコンピューター(NDH 2000)を用いて測定を行った。
【0147】
(3)測色
スガ試験機製のSMカラーコンピューター(SM−6)を用いて、C光源2゜視野でフィルムのXYZ刺激値を測定し、透過色度座標(x、y)を求めた。
【0148】
(4)接着性(常態)
常態下(23℃、相対湿度65%RH)で、近赤外線遮蔽層上に1mm のクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、近赤外線遮蔽層の残存した個数により4段階評価(A:100、B:80〜99、C:50〜79、D:0〜49)した。(A)と(B)を接着性良好とした。
【0149】
(5)耐光性評価
スガ試験機製紫外線フェードメーター(FAL−3)を用いて、63±3℃で24時間、フィルムに紫外線を照射した。フィルムの透過スペクトルを測定し、(1)で挙げた特定波長のいずれかで、紫外線照射前後の透過率差が1%未満であるものを合格(○)とし、1%以上である場合は不合格(×)とした。
【0150】
(6)耐湿熱性評価
60℃、90%RHの条件に合わせた恒温恒湿機にフィルムを500時間入れた。フィルムの透過スペクトルを測定し、(1)で挙げた特定波長のいずれかで、耐湿熱性評価前後の透過率差が1%未満であるものを合格(○)とし、1%以上である場合は不合格(×)とした。
【0151】
3.透明粘着層の評価方法
(1)透明粘着層の剥離強度(粘着力)
ガラス板表面をエタノールを含浸した脱脂綿で拭き乾燥させた後、透明粘着層を積層したフィルムサンプル(25mm幅の短冊)の離型フィルムを剥がしてガラス板に貼り付け、23℃、65%RHの条件で24時間放置した。その後、引っ張り試験機にて90度での剥離強度(粘着力)の測定を行った。
【0152】
4.ハードコートフィルムの評価方法
(1)接着性(常態)
常態下(23℃、相対湿度65%RH)で、ハードコートフィルムのハードコート層上に1mmのクロスカットを100個入れ、ニチバン株式会社製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを、荷重19.6Nで3往復させ、押し付けた後、90度方向に剥離し、ハードコート層の残存した個数により4段階評価(A:100、B:80〜99、C:50〜79、D:0〜49)した。(A)と(B)を接着性良好とした。
【0153】
(2)接着性(湿熱)
ハードコートフィルムを、湿熱下(80℃、相対湿度85%)で48時間放置した。処理後、直ちに取り出し、常態下(23℃、相対湿度65%)で5分間放置後、上記(1)接着性(常態)と同様の評価を行なった。
【0154】
(3)耐摩耗性
スチールウール#0000でハードコート層表面を荷重を変更し、それぞれの荷重において一定荷重下で10往復(速度10cm/s)摩擦し、耐傷性(傷が付かなかった)があった最大荷重を測定した。2kg/cmが実用上問題ないレベルであり、合格とした。
【0155】
(4)鉛筆硬度
HEIDON(新東科学株式会社製)を用いてJIS K−5400に従って 測定した。2H以上を合格とした。
【0156】
(5)表面反射率および平均うねり振幅測定
日立製作所製,60mmφ積分球を装備したU−3410型分光光度計を用いて、測定面から10度の入射角における反射率を測定した。
【0157】
測定サンプルは裏面反射の影響をなくすために、測定面(ハードコート層を設けた側の面)の反対側の表面(裏面)を240番のサンドペーパーで粗面化した後、波長400〜600nmの可視光線平均透過率が5%以下となるように黒色マジックインキ(登録商標)にて着色した。裏面反射の影響有無の判定は、処理後の裏面の光沢度(入射角60゜、受光角60゜)が10以下であれば、裏面反射の影響はないと判断した。光沢度はデジタル変角光沢度計UGV−5B(スガ試験機株式会社製)を用いてJIS Z 8741に従って測定した。
【0158】
波長400〜600nmにおける反射率を測定し、そのうねりの山頂部分結んだ線(山頂線)とうねりの谷底部分を結んだ線(谷底線)について、20nm間隔のサンプル点において各波長(11箇所、波長が(400+20*i(i=0〜10の整数))nmとなる箇所)における差(山頂線−谷底線)を求め、その平均を平均うねり振幅とした。また波長600〜740nmについても同様にして平均うねり振幅を求めた。
【0159】
また、波長550nmにおける山頂線と谷底線の平均値を表面反射率とした。表面反射率は6%以下を合格とした。平均うねり振幅が1%以下を合格とした。
【0160】
(6)虹彩模様の有無
裏面反射の影響をなくすために、表面反射率および平均うねり振幅測定時と同様に測定面(ハードコート層面側)の裏面を240番のサンドペーパーで粗面化した後、黒色マジックインキ(登録商標)にて着色してサンプルを調整した。サンプルを、暗室にて、3波長蛍光灯(松下電器産業株式会社製 ナショナル パルック 3波長形昼白色(F.L 15EX-N 15W))の直下30cmに置き、視点を変えながらサンプルを目視したときに、虹彩模様が視認できるか否かで評価した。
・虹彩模様が見えない :A
・非常に弱い虹彩模様が見える :B
・弱い虹彩模様が見える :C
・強い虹彩模様がはっきり見える :D。
【0161】
(7)視認性
ハードコートフィルムの下に写真を置き、ハードコートフィルムを通して写真を見たときの像がはっきり見えるかどうかを調べた。
・像が鮮明に見える :A
・像が少しぼやける :B
・像がぼやけ、見えにくい :C
・像が見えない :D。
【0162】
(8)山脈状突起の観察
測定するハードコートフィルムを常態下(23℃、相対湿度65%RH)で24時間静置する。このサンプルのハードコート面をスチールウール#0000で1kg/cmで20往復(速度20cm/秒)摩耗した後、ハードコート層面に1mmのクロスカットを100個入れる。ニチバン株式会社製セロハンテープをその上に貼り付け、ゴムローラーを荷重19.6Nで3往復させ押しつけた後、90度方向に剥離する「セロハンテープ剥離」を数〜数十回繰り返してハードコート層を剥離する。このフィルムのハードコート層剥離面にアルミニウムを蒸着したサンプルを、微分干渉顕微鏡(倍率×500)で観察することによって、基材フィルムとハードコート層界面に形成した山脈状突起の状態を観察した。
【実施例】
【0163】
次に、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0164】
<ハードコートフィルムの作製>
(ハードコートフィルム−1)
平均粒径0.4μmのコロイダルシリカを0.015質量%と平均粒径1.5μmのコロイダルシリカを0.005質量%含有するポリエチレンテレフタレート(以下PET)(極限粘度0.62dl/g)チップを、180℃で十分に真空乾燥した後、押し出し機に供給し、285℃で溶融後、T字型口金からシート状に押し出した。押出されたシートを、静電印加キャスト法を用いて表面温度20℃の鏡面キャストドラムに巻き付けて冷却固化し未延伸シートとした。このようにして得られた未延伸シートを、105℃に加熱したロール群で長手方向に3.0倍延伸し、1軸延伸フィルムを得た。
【0165】
この1軸延伸フィルムの片面に、水酸基を含有しない多官能アクリレート:DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート)と水酸基を含有する多官能アクリレートDPPO(ジペンタエリスリトールペンタアクリレート)の混合物(商品名:KAYARAD(登録商標)DPHA:日本化薬株式会社製。DPHA/DPPA質量比率:50/50)85質量部、ポリエステルアクリレート(M−7100:東亞合成株式会社製)5質量部、ポリイソシアネート(スミジュール(登録商標)N3300:住化バイエルウレタン株式会社製)10質量部の混合塗布組成物をダイコーター方式で20μm厚に塗布した。また、反対面には易滑剤(粒径0.1μmのコロイダルシリカ固形分比0.5質量%)を含む水分散性アクリル系樹脂を水分比4.5質量%でメタバー方式により塗布した。塗布後、フィルムの両端をクリップで把持しつつ90℃の予熱ゾーンに導き、引き続き100℃の加熱ゾーンで幅方向に3.3倍延伸した。さらに連続的に3%の幅方向の弛緩処理をさせながら230℃の熱処理ゾーンで17秒間の熱処理を施し、塗膜硬化および、フィルムの熱固定を行い、総厚みが125μm、ハードコート層厚みが6μm、易接着層厚みが0.1μmで、透明性に優れたハードコートフィルム−1を作製した。
【0166】
結果を表1に示す。表1に示すとおり、400〜600nm反射率の平均うねり振幅0.2%、表面反射率5.2%、ヘイズ0.8%、常態下接着性および湿熱下接着性はともにAランク、耐摩耗性が3kg/cm、鉛筆硬度は3H、虹彩模様はAランク、視認性はAランクと優れた特性を有し、ハードコート層と基材フィルムとの界面に山脈状突起を多数有するのが観察された。
【0167】
(ハードコートフィルム−2)
両面に異なる樹脂からなる易接着層を有する光学用易接着ポリエステルフィルム(東レ製“ルミラー QT77”、厚み100μm)を用い、ポリエステル系樹脂からなる易接着面側に、市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を設けたハードコートフィルム−2を作製した。このハードコートフィルムは基材フィルムの屈折率が1.66、易接着層の屈折率が1.58、ハードコート層の屈折率が1.52であり、(易接着層の屈折率)={(基材フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.02を満たし、虹彩模様はBランクであった。反射率は5.6%、ヘイズ0.5%、鉛筆硬度3H、耐摩耗性が3kg/cm、常態下接着性および湿熱下接着性はともにAランク、視認性はAランクの特性を有していた。
【0168】
(ハードコートフィルム−3)
両面にアクリル系樹脂からなる易接着層を有する光学用易接着ポリエステルフィルム(東レ製 “ルミラーU34”、厚み100μm)を用い、一方の易接着面側に、市販のハードコート剤(JSR製“デソライトZ7528”)をイソプロピルアルコールで固形分濃度30%に希釈した塗料を、マイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して硬化させ、厚み5μmのハードコート層を設けたハードコートフィルム−3を作製した。このハードコートフィルムは易接着層の屈折率が1.50であり、(易接着層の屈折率)={(基材フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.02を満たさないため、虹彩模様はDランクであった。反射率は5.5%、ヘイズ0.6%、鉛筆硬度3H、耐摩耗性が3kg/cm、常態下接着性および湿熱下接着性はともにAランク、視認性はAランクの特性を有していた。
【0169】
<反射防止塗料の作製>
(高屈折率塗料−1)
錫含有酸化インジウム粒子(ITO)6質量部、多官能アクリレート2質量部、メタノール18質量部とポリプロピレングリコールモノエチルエーテル54質量部、イソプロピルアルコール20質量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.67の高屈折率塗料−1を調整した。
【0170】
(高屈折率塗料−2)
アンチモン含有酸化錫粒子(ATO)6質量部、多官能アクリレート2質量部、メチルエーテルケトン54質量部、イソプロピルアルコール38質量部の混合物を攪拌して塗膜屈折率1.65の高屈折率塗料−2を調整した。
【0171】
(低屈折率塗料−1)
メチルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−13)219質量部を20℃±5℃で攪拌しながら、0.5N蟻酸89質量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール412質量部を混合して処理液(X1)を調整した。
【0172】
同様に3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン製 KBM−7103)158質量部を30℃±10℃で攪拌しながら、1N蟻酸41質量部で加水分解した。60分後にイソプロピルアルコール521質量部を混合して処理液(X2)を調整した。
【0173】
次に、一次粒子径50nmの外殻を有する多孔質シリカ粒子(空隙率40%)144質量部、イソプロピルアルコール560質量部からなるシリカスラリー(X3)を準備した。
【0174】
処理液(X1)720質量部、処理液(X2)720質量部、シリカスラリー (X3)704質量部、メタノール356質量部、イソプロピルアルコール4272質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトアセトキシアルミニウムを15質量部、レベリング剤として大日本インキ化学工業(株)製の“メガファック F479”を5質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.37の低屈折率塗料−1を調整した。
【0175】
(低屈折率塗料−2)
前記処理液(X1)50質量部、前記処理液(X2)50質量部を80℃で1時間混合攪拌し、共重合率が1:1のオリゴマー(X4)100質量部を得た。
【0176】
次に、処理液(X1)720質量部、処理液(X2)720質量部、シリカスラリー(X3)704質量部、オリゴマー(X4)100質量部、メタノール356質量部、イソプロピルアルコール4172質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトアセトキシアルミニウムを15質量部、レベリング剤として大日本インキ化学工業(株)製の“メガファック F479”を5質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.36の低屈折率塗料−2を調整した。
【0177】
(低屈折率塗料−3)
メチルトリメトキシシラン219質量部、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン158質量部、シリカスラリー(X3)704質量部、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル713質量部を攪拌混合し、燐酸1質量部と水130質量部を配合して、30℃±10℃で攪拌しながら60分加水分解し、さらに温度を80℃±5℃に上げて60分攪拌しながら重合し、シリカ粒子含有オリゴマー(X5)を得た。
【0178】
次に、シリカ粒子含有オリゴマー(X5)1200質量部、イソプロピルアルコール5244質量部を攪拌混合した後、硬化触媒としてアセトキシアルミニウムを15質量部、レベリング剤として大日本インキ化学工業(株)製の“メガファック F479”を5質量部添加して再度攪拌混合し、屈折率1.35の低屈折率塗料−3を調整した。
【0179】
(低屈折率塗料−4)
多孔質シリカ粒子の空隙率を50%にする以外は低屈折率塗料−3と同じ条件をとり、屈折率1.31の低屈折率塗料−4を調整した。
【0180】
(低屈折率塗料−5)
多孔質シリカ粒子の空隙率を30%にする以外は低屈折率塗料−3と同じ条件をとり、屈折率1.37の低屈折率塗料−5を調整した。
【0181】
(低屈折率塗料−6)
多孔質シリカ粒子の配合量を14.4質量部にする以外は低屈折率塗料−1と同じ条件をとり、屈折率1.45の低屈折率塗料−6を調整した。
【0182】
<近赤外線遮蔽塗料の作製>
(近赤外線遮蔽塗料−1)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製“KAYASORB IRG−050”を29質量部、日本触媒(株)製“イーエクスカラー IR−10A”を16質量部をメチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド IR−G205”(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して近赤外線遮蔽塗料−1を作製した。
【0183】
(近赤外線遮蔽塗料−2)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製“KAYASORB IRG−050”を29質量部、旭電化工業(株)製“TZ−111”を3質量部、同“TZ−114”を3質量部をメチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド IR−G205”(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して近赤外線遮蔽塗料−2を作製した。
【0184】
(近赤外線遮蔽塗料−3)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製“KAYASORB IRG−050”を29質量部、日本触媒(株)製“イーエクスカラー IR−10A”を16質量部、さらに色調補正用色素として、山田化学工業(株)製“TAP−2”を5.8質量部をメチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド IR−G205”(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して近赤外線遮蔽塗料−3を作製した。
【0185】
(近赤外線遮蔽塗料−4)
近赤外線吸収色素として、日本化薬(株)製“KAYASORB IRG−050”を29質量部、旭電化工業(株)製“TZ−111”を3質量部、同“TZ−114”を3質量部、さらに色調補正用色素として、山田化学工業(株)製“TAP−2”を5.8質量部をメチルエチルケトン2000質量部に攪拌混合して溶解させた。この溶液を透明高分子樹脂バインダー溶液として、日本触媒(株)製“ハルスハイブリッド IR−G205”(固形分濃度29%溶液)2000質量部と攪拌混合して近赤外線遮蔽塗料−4を作製した。
【0186】
[参考実施例1]
ハードコートフィルム−1のハードコート面上にマイクログラビアコーターを用いて高屈折率塗料−1を塗工し、80℃で乾燥後、紫外線1.0J/cmを照射して、塗工層を硬化させ、厚さ約0.1μmの高屈折率層を形成した。次に、その高屈折率層上に低屈折率塗料−1をマイクログラビアコーターで塗工し、80℃で乾燥後、130℃で熱処理し、塗工層を硬化させ、厚さ約0.1μmの低屈折率層を形成して、反射防止フィルムを製造した。得られた反射防止フィルムは、図3に示すように最低反射率は波長580nmの時に0.35%であり、波長400nmにおける反射率は1.0%、波長700nmにおける反射率は1.1%、400〜700nmにおけるうねりの振幅最大値は0.1%以下で干渉縞は観察されず、耐擦傷性は3級と良好な特性を示した。その他の特性も表1に示すとおりであった。
【0187】
[参考実施例2〜10]
高屈折率塗料の種類、低屈折率塗料の種類を表1に示すように変える以外は、参考実施例1と同様にして反射防止フィルムを製造した。フィルムの特性は表1に示したが、いずれも良好なものであった。
【0188】
[実施例11]
参考実施例1において、ハードコートフィルムをハードコートフィルム−2に変える以外は同様にして反射防止フィルムを製造した。得られたフィルムは、図4に示すように最低反射率の波長は570nmで、この時の反射率は0.1%以下と反射防止に優れたものが得られた。また、波長400nmにおける反射率は1.6%、波長700nmにおける反射率は1.4%、400〜700nmにおけるうねりの振幅最大値は約0.1%で干渉縞はほとんど観察されず、耐擦傷性は3級と良好な特性を示した。その他の特性も表1に示すとおりであった。
【0189】
[実施例12〜20]
高屈折率塗料の種類、低屈折率塗料の種類を表1に示すように変える以外は、実施例11と同様にして反射防止フィルムを製造した。フィルムの特性は表1に示したが、いずれも最小反射率が0.1%以下と良好なものであった。
【0190】
[参考実施例21]
参考実施例8で作製した反射防止フィルムの反射防止面に、保護フィルムとしてサンエー科研製“サニテクト”(厚み50μm)を貼り合わせた後、反射防止層と反対側の基材フィルム面(アクリル樹脂系易接着面)に、ダイコーターを用いて近赤外線遮蔽塗料−1を塗工し、120℃で乾燥して、厚み10μmの近赤外線遮蔽層を積層した。得られたフィルムの特性を表2に示す。820nm、850nm、950〜1150nmにおける透過率は良好であり、常態下接着性、耐光性、耐湿熱性ともに優れていた。
【0191】
[参考実施例22〜24]
近赤外線遮蔽塗料の種類を変更する以外は参考実施例21と同様にして厚み10μmの近赤外線遮蔽層を積層した。得られたフィルムの特性を表2に示す。参考実施例23および24では色調補正を行ったものであるが、近赤外線領域の透過率とともに590nmにおける透過率も32%以下と良好であり、その吸収ピークの半値幅も40nmであった。さらに、常態下接着性、耐光性、耐湿熱性ともに優れていた。
【0192】
[実施例25]
実施例18で作製した反射防止フィルムの反射防止面に、保護フィルムとしてサンエー科研製“サニテクト”(厚み50μm)を貼り合わせた後、反射防止層と反対側の基材フィルム面(アクリル樹脂系易接着面)に、ダイコーターを用いて近赤外線遮蔽塗料−1を塗工し、120℃で乾燥して、厚み10μmの近赤外線遮蔽層を積層した。得られたフィルムの特性を表2に示す。820nm、850nm、950〜1150nmにおける透過率は良好であり、常態下接着性、耐光性、耐湿熱性ともに優れていた。
【0193】
[実施例26〜28]
近赤外線遮蔽塗料の種類を変更する以外は実施例25と同様にして厚み10μmの近赤外線遮蔽層を積層した。得られたフィルムの特性を表2に示す。実施例27および28では色調補正を行ったものであるが、近赤外線領域の透過率とともに590nmにおける透過率も32%以下と良好であり、その吸収ピークの半値幅も40nmであった。さらに、常態下接着性、耐光性、耐湿熱性ともに優れていた。
【0194】
[実施例29]
綜研化学(株)製“SKダイン−1310”1000質量部と硬化剤“M5A”33質量部、イソプロピルアルコール300質量部から調整した粘着剤に、着色剤として日本化薬(株)製“Kayaset red”“ Kayaset violet”“ Kayaset blue”を配合して、厚さ75μmの離型フィルム(東レフィルム加工(株)製“セラピール”)の離型面にダイコーターで塗工し、100℃で乾燥した後、実施例23で得られたフィルムの近赤外線遮蔽層とラミネートした。得られたフィルムの透過色度はxが0.292、yが0.294であった。また、得られたフィルムを25mm幅の短冊に切り、粘着層とガラス板を貼り合わせて90度剥離試験を実施した。ガラス板との粘着力は15N/25mmであった。
【0195】
[参考比較例1]
ハードコートフィルムをハードコートフィルム−3に変更し、さらに低屈折率塗料−6を用いる以外は、参考実施例1と同様にして反射防止フィルムを製造した。得られたフィルムは、図2に示すように最低反射率の波長は590nm、この時の反射率は1.2%、波長400nmにおける反射率は4.0%、波長700nmにおける反射率は2.4%、400〜700nmにおけるうねりの振幅最大値は0.8%で虹彩模様がDランクであり、また、耐擦傷性は1級であり、反射率特性、耐擦傷性ともに劣るものであった。
【0196】
[参考比較例2]
参考比較例1で得たフィルムを用いる以外は実施例23と同様にして近赤外線遮蔽層を積層した。得られたフィルムは、特定波長における透過率、全光線透過率、接着性、耐光性、耐湿熱性ともに良好であったが、虹彩模様が非常に目立ち、干渉色のムラが大きいものであった。
【0197】
【表1】

【0198】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0199】
本発明の光学フィルムは、表面反射率が低く、表面の耐擦傷性に優れ、ハードコート層由来の虹彩模様が低減され、さらに、近赤外線遮蔽能と色調補正能に優れたフィルムであり、電磁波遮蔽能を付与されたガラス板に貼り合わせてPDP用光学フィルターとして好適に用いられる。あるいは、本発明の光学フィルムを電磁波遮蔽フィルムと貼り合わせた後、直接PDPの前面板に衝撃吸収粘着層を介して貼り合わせて使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面にハードコート層が、他方の面に近赤外線遮蔽層が積層される光学フィルム用の基材フィルムであって、ハードコート層が積層される面にポリエステル系樹脂で構成された易接着層と、近赤外線遮蔽層が積層される面にアクリル系樹脂で構成された易接着層とを有する基材フィルム。
【請求項2】
請求項1の基材フィルムの前記ポリエステル系樹脂で構成された易接着層の面にハードコート層が積層され、前記アクリル系樹脂で構成された易接着層の面に近赤外線遮蔽層が積層された光学フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−231212(P2010−231212A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−86707(P2010−86707)
【出願日】平成22年4月5日(2010.4.5)
【分割の表示】特願2005−34142(P2005−34142)の分割
【原出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(000222462)東レフィルム加工株式会社 (142)
【Fターム(参考)】